説明

孔版印刷装置

【課題】孔版印刷に用いられるインキは、通常、印刷終了から次の印刷開始までの間に長時間経過しても版胴のインキが固化して目詰まりを起こすことのないように、単なる放置では乾燥しないようなインキが用いられる。しかし、用途や用紙によっては、なるべく早く乾燥して欲しい用途もある。紫外線照射などの特殊な装置を用いないで、高価にならず、インキ自身が硬化作用を有するインキを使いたい。
【解決手段】乾燥・硬化の速いインキを用いる版胴ユニットが装着された場合、孔版印刷装置がそれを認識できるようにし、印刷終了後その版胴がすぐ再使用される見込みがない場合、不使用時間を監視して、必要に応じて複数段階で所定の警告を表示するようにし、保管中に版胴が目詰まりを起こして使えなくなってしまうことを極力避けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔版印刷において特定目的のため乾燥定着の速い特殊インキを用いる場合に生じやすい版胴の目詰まりを未然に防ぐ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製版された孔版原紙を外周に巻き付け装着され、自身の中心軸線周りに回転駆動される円筒状版胴と、該円筒状版胴内に設けられて円筒状版胴内面にインキを供給するインキ供給装置と、給紙された印刷用紙を前記版胴外周面に押圧する印圧装置を有して、孔版原紙の穿孔製版部を通過したインキを印刷用紙上に転移させることで印刷画像を形成する方式の孔版印刷装置はすでによく知られている。
こうした孔版印刷装置に用いられているインキは、空気中で放置しても決して固化乾燥することがないようなものが用いられる。具体的には油中水型(W/O型)エマルジョン構造のインキが用いられる。つまり水相が油相中に均一に分散した状態である。印刷機内部のインキが直接に大気と接触していても、インキの成分が変性したり硬化したりするのを防止できる構造であり保存安定性を有している。
これは孔版印刷装置が、特別な清掃動作もしないで使い終えたままで、長期間印刷装置を使用しないで放置していても、再使用時に特別な熟練操作をしないですぐに印刷ができることが求められているためである。そして紙の上に転移したら紙の繊維間への浸透とインキ中の水相の蒸発によって擬似的な乾燥を作るようになっている。しかしあくまでも化学的反応による乾燥や定着ではないので、乾燥は不十分であった。
【0003】
それゆえに、孔版印刷装置による印刷物では、その画像インキ乾燥速度が遅くて印刷物の取り出しやそろえ操作時に手指が汚れてしまうとか、インキが定着していないので印刷物に追加記載したりすると手が黒く汚れてしまうとか、コート紙のように浸透性が悪い用紙の場合には印刷ができないとか、ベタの多い画像を印刷した場合排紙トレイ上で積載時に画像面インキがその上の用紙裏面を汚す裏うつりという不具合が起こるとかの問題があった。
【0004】
そこで孔版印刷の印刷物画像の乾燥性を向上させるために、これまでにも多数の提案がされてきた。たとえば紫外線硬化型インキに変更して印刷後に印刷物に紫外線を照射して硬化させる方法が最も効果的である(例えば、特許文献1、2 参照)。
また印刷物の画像面をヒーターや遠赤外線等で加熱してインキ中の水相蒸発を促進させる方法や、印刷物の画像面インキに高周波を当ててインキ内部の反応を促進させる方法も提案されてきた。
空気中に放置することで、または時間が経過することで、インキ中の溶剤成分が気化する作用を利用して乾燥させるとか、空気中の酸素と反応して硬化する成分を含むインキとか、用紙に転移して薄膜になったインキ内部の硬化反応促進作用や内部樹脂成分の硬化作用を発揮させる方式のインキを使用する方法も知られている。
【0005】
紫外線硬化型インキに変更して印刷後に印刷物に紫外線を照射して硬化させる方法は、紫外線硬化型インキ自体の安全性や匂いの問題や紫外線照射ランプの安全性とオゾン発生の問題があり、更にインキ自体が高価になり紫外線照射装置も高価なものが必要になるという問題点を有している。
印刷物の画像面をヒーターや遠赤外線等で加熱してインキ中の水相蒸発を促進させる方法は、高速印刷なので非常に大きな熱容量の装置が必要になり、用紙自体が保有している水分を蒸発させることに熱が消費されてしまい、効果的なインキの乾燥が期待できないという問題点や、高熱で用紙がカールする問題を有している。
高粘度インキや粉体インキを用いて、印刷時には加熱等で一時的に軟化・低粘度化させて印刷する方法は、インキの安定的な供給が困難で、加熱処理部によるインキの軟化が不安定になり、安定した乾燥硬化を得ることは難しい。印刷物の上に粉末を塗布する方法も一時的な裏うつり防止程度の効果しか期待できない。
【0006】
インキ中の溶剤成分が気化することで樹脂成分が顔料と一体になって硬化するというようなインキを使用する方法、または水性成分が蒸発することで樹脂成分が顔料と一体になって硬化するというようなインキを使用する方法は、印刷物の乾燥性定着性確保の上で効果が大きく、最大の特徴として特別の定着装置を必要としないこと、またインキ自体のコストアップが小さいことが挙げられる。
しかし未使用放置によって、印刷ドラムの円筒状版胴を構成する多孔質金属薄板やスクリーンメッシュが、インキの固化で目詰まりを起こしてしまうことが明らかである。これはインキが広がって表面積を大にする部分では、空気に触れた部分から容易にインキ中の水分や溶剤の蒸発が起こるので、早期に乾燥してしまうためである。
【0007】
こうした乾燥によるトラブルを防止するための本発明者による提案として、乾燥定着性向上型インキ使用においてインキクリーニングモードを選択して所定パターンの通紙印刷や未製版原紙給版排版でインキを消費させて版胴目詰まりを防止する例がある(特許文献3 参照)。
また目的は全く異なるものの、構成と動作の一部が類似している例として、ドラムユニットに時計を設けてその放置時間が予め設定された時間を越えているときに、次回の製版に先立ちオートアイドリング動作を実行するという提案がある(例えば、特許文献4 参照)。目的と使われ方は全く異なるが、印刷終了後に使用済み原紙を剥離排版してしまう考え方について開示されている(特許文献5 参照。)。
【0008】
たとえば印刷機を1週間使用しないでおき、その後に印刷しようとしてもインキが高粘度化してしまい円筒状版胴を通過しにくくなるために画像が薄くなるとか画像が出なくなるといった不具合が発生してしまう。こうなると版胴部の清掃が必要になり多大な時間と労力とコストがかかってしまう問題がある。
またこうした時間経過で定着性が向上する特殊インキではインキ価格が従来インキよりも高くなってしまうという問題もある。
【0009】
そこで、従来型の時間をかけても定着しないが安心できて安価なインキを使用する第一の円筒状版胴ユニットと、その他に印刷後に時間の経過と共に定着する、乾燥固化しやすい新しい特殊インキを使用する第二の円筒状版胴ユニットの両方を準備して、たとえば社外向け印刷物やハガキや封筒やカード類などの本当に定着が必要な用途の場合に、第二の円筒状版胴ユニットを使用するという方法が考えられる。この場合には第二の円筒状版胴ユニットに対しては、長期間不使用状態のままにした場合には版胴やスクリーン部においてインキの高粘度化や固着が起こり、目詰まり状態となって次回使用時に印刷画像が出ないという不具合が発生してしまう可能性が高くなってしまう。
【0010】
また印刷後に時間の経過と共に定着する新しい乾燥固化しやすい特殊インキを使用した場合に発生する不具合として、長期間版胴に装着されたままの孔版原紙の多孔質支持体和紙を伝ってインキを構成する低粘度油性成分が浸透して広がっていった結果、版胴外周に孔版原紙が装着されているかどうかを検知するセンサ部で誤検知が起こりやすくなるということがある。
同様に、長期間版胴に装着されたままの孔版原紙の多孔質支持体和紙を伝ってインキを構成する低粘度油性成分が浸透して広がっていく結果、原紙先端クランプ部で油性成分による固着や粘着が起こり排版ミスや給版ミスといったトラブルが起こりやすくなるということがある。
乾燥固化しやすい特殊インキにおいては、樹脂を追加することになるが、このことでインキの粘度が大きくなりやすい。そこで、粘度を最適値にするために、どうしても低粘度の油性成分を追加するか、または量を多くすることが必要になってしまう。つまり、乾燥固化向上インキの場合には、従来インキに比べてエマルジョンを構成する油相成分比が大になり、同時に、低粘度の油性成分(オイル類)の量が多くなってしまうことになる。ドラム外周に孔版原紙を装着したままで放置すると、この低粘度油性成分がマスタの和紙部内を浸透して広がっていくのである。
【0011】
【特許文献1】実公平4−35188号公報
【特許文献2】特開平5−64878号公報
【特許文献3】特開2007−283705号公報
【特許文献4】特開2006−62376号公報
【特許文献5】特開2005−153477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、孔版印刷における印刷物画像の乾燥定着に非常に効果が大きい、乾燥固化しやすい特定のインキを用いた場合にも、長期間版胴に装着されたままの孔版原紙の多孔質支持体和紙を伝ってインキを構成する低粘度油性成分が浸透して広がっていく結果で起こる各種トラブルの発生を防止することを目的とする。また直後排版動作によって版胴やスクリーンが時間経過で目詰まりが起こりやすくなることに対する警告を、適正に実施してトラブルの発生を未然に防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明では、製版された孔版原紙を外周に巻き付け装着され、自身の中心軸線周りに回転駆動される円筒状版胴ユニットが、孔版印刷装置本体に対して着脱可能に構成されている孔版印刷装置において、装着されている円筒状版胴ユニットを識別するための版胴ユニット識別センサと、前記円筒状版胴に装着されている使用済み原紙を剥離して排版する動作を実施する排版動作制御装置と、応答待ち表示もしくは警告表示を行うための表示装置と、前記応答待ち表示に応答するための応答手段と、を有して、前記版胴ユニット識別センサが、乾燥固化しやすいインキを用いている特定の版胴ユニットを使用したことを検知した場合には、その特定の版胴ユニットを使用した印刷が終了した時点で、同じ版胴ユニットを用いた印刷を継続するかどうかの応答を求める、前記表示部による応答待ち表示をすることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の孔版印刷装置において、前記表示部による応答待ち表示に対して、印刷を継続しない旨の応答が選択された場合には直ちに排版を実行するように制御することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の孔版印刷装置において、前記特定の版胴ユニットを所定のドラム保管ケースに入れて保管するように警告表示することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項2に記載の孔版印刷装置において、前記特定の版胴ユニットを今後継続不使用とする期間に限度があることを警告表示することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の孔版印刷装置において、前記特定の版胴ユニットの使用が終了後使用されていない時間間隔を計測する版胴ユニット不使用時間計測装置をさらに有し、前記排版が実行された場合には前記不使用時間計測装置を作動させ、その値が所定値を越えた場合に、表示部によって所定の警告を表示するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、版胴ユニット識別センサが特定の版胴ユニットを使用したことを検知した場合には、その特定の版胴ユニットを使用した印刷が終了した時点で、同じ版胴ユニットを用いた印刷を継続するかどうかを表示部によって確認し、印刷を継続しないことが選択された場合には直ちに排版を実行するようにしたので、長期間放置によって、版胴に装着されたままの孔版原紙の多孔質支持体和紙を伝って、インキを構成する低粘度油性成分が浸透して広がっていった結果、版胴外周に孔版原紙が装着されているかどうかを検知するセンサ部で誤検知が起こりやすくなり、その結果排版ミスや給版ミスといったトラブルが起こりやすくなるということを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明の孔版製版印刷装置における各版胴ユニットの装着の概略図である。
同図において符号1は孔版印刷装置、11は従来インキの版胴ユニットA黒、12は従来インキの版胴ユニットA赤、13は新特殊インキの版胴B黒、15は版胴ユニット識別センサ、16は識別のための突起部をそれぞれ示す。
版胴種類の識別の方法としては、機械的方法や電気的方法がある。機械的方法であれば、例えば、突起部を同図において斜線を施した突起部だけが紙面に垂直な方向にずらす構成にしておくとか、或いは、同図において斜線を施した突起部だけが、ユニット装着の力でユニット側に陥入するようにし、他の突起は動けないように固定しておくことなどで実施できる。また電気的方法であれば、同図において斜線を施した突起部だけが導電性のキャップをはめ込まれているか、或いは逆に絶縁性のキャップをはめ込まれていても良い。要は、他の突起部との違いが識別できる構成になっていればよい。このように、他の突起部と違う状態に置かれた突起部を、突起部がON状態になっていると表現する。
孔版製版印刷装置1に対して3本の円筒状版胴ユニットを保有しており適宜使い分けできるようになっている。本例では、円筒状版胴ユニット11と12は従来型エマルジョン孔版印刷インキが内蔵されたユニットAであり、円筒状版胴ユニット13は乾燥定着性向上型孔版印刷インキが内蔵されたユニットBである。更に11は黒インキがセットされており12は赤インキがセットされている。13は黒インキがセットされている。
ここで版胴ユニット識別センサ15は、従来型エマルジョン孔版印刷インキが内蔵されたユニットAの黒インキドラム11が装着されているか、ユニットAの赤インキドラム12が装着されているか、それとも乾燥定着性向上型孔版印刷黒インキユニットBのドラム13が装着されているかを識別できるようになっている。
同図では各版胴ユニットが3個の突起部16を有して、円筒状版胴毎にどの突起部がON状態になっているかによって3種類を識別可能にしている場合を示す。
【0020】
本発明の印刷装置で使用する特定の定着性向上インキについて説明する。
デジタル孔版印刷装置用のインキとしては従来から油中水型エマルジョンインキが使用されているが、通常はその中に常温で硬化するような性質の樹脂を含有していない。これは印刷機を長期間そのまま不使用状態で放置しても、次に再使用する場合に版胴やスクリーンや版胴内部でインキが高粘度化して固着することが起こらず、いつでも再使用時に画像が出るようにというためである。
しかし逆にいえばこうしたインキを用いた印刷物の画像はいつまで経っても乾燥しないし定着しないことになる。特にハガキや名刺やカードなどへの印刷では画像が定着しないことは汚れを発生させるので問題となる。
【0021】
そこで本発明では、その乾燥性定着性を向上させる方法として、油相成分にアルキド樹脂やロジン変性フェノール等の樹脂を入れる方法や、水相成分に各種の水溶性樹脂や樹脂エマルジョンラテックスを入れるといった方法を採用することで時間経過とともに高粘度化させて乾燥定着するようにした特定のインキを使用するものである。もちろんこうした樹脂を入れたインキの場合には、長期間放置によって版胴やスクリーン部でインキの固着が起こり目詰まりとなって画像が出なくなるリスクを有している。
上記の乾燥定着性を向上させるためのインキ処方においては、エマルジョンを構成する油相成分の比率が従来のインキに比較して多くなってしまう。その結果使用済み原紙が長期間版胴外周面に装着されたままでいれば、版胴とスクリーンが保有するインキから低粘度性の油分が分離してきてそれが前記使用済み原紙の和紙繊維部分の中を浸透しながら広がっていくことになる。乾燥定着性を向上させたインキはこの傾向が大きいのである。
【0022】
図2は本発明の孔版製版印刷装置における円筒状版胴ユニットの外表面に装着された状態の孔版原紙部分を示す模式図である。
同図において符号17は円筒状版胴、18は孔版原紙、19は開閉式クランパ、20は検出ポイントをそれぞれ示す。
孔版原紙18は、円筒状版胴17の外周に巻き付け装着され、孔版原紙18の先端部は開閉式クランパ19によりクランプされている。
18aは孔版原紙18の製版されたエリアを示し、この部分には版胴開孔部を通過したインキがその和紙部分を満たしているためインキで黒くなっている。18a以外の部分はインキが付着しておらず、和紙部分のため白くなって見える。
そして円筒状版胴ユニットの外表面に孔版原紙が装着されていることを検出するポイントが20であり、孔版印刷装置本体側に設けられた図示しない光反射式センサによって孔版原紙の和紙の白を検知するようになっている。
【0023】
図3は印刷終了状態のままで1週間ほど放置された後の孔版原紙部分を示す模式図である。
この場合、円筒状版胴17上に卷回されたままの孔版原紙18の製版エリア18aのインキオイル成分がエリア18a以外の部分エリア18bに浸透して広がっている。低粘度性の油分が分離して和紙部を浸透して広がり、18bのエリアが白ではなく若干黄色に濡れたように変色してしまっている。
このためにポイント20の部分を使って原紙有無を検知センサで検出する時に、反射率の値が低下してしまい原紙が装着されているのに原紙がないと誤検知してしまうことになる。
この誤検知が起きると製版開始時に、排版工程が実施されないままに新しい製版原紙が巻きつけられてしまい、孔版原紙の二重巻きになってしまう。
【0024】
長期間の放置によって低粘度性の油分が分離して和紙部を浸透して広がり、やがてクランパ19部分まで到達してしまうことになればクランパ19の部材と孔版原紙18のフィルム面が油分で密着して剥れにくくなってしまうことになる。クランパ19の部材はゴムマグネットから成るので、油分の影響を受けやすく、オイルが介在すれば原紙とピッタリ密着して剥れにくくなる。更には排版剥離時にクランパ部分で原紙が破れてしまう可能性もありこの場合には大きな問題になる。
したがって、定着性向上の特殊インキを有する版胴ユニットにおいては、使用済み原紙をそのままクランプして放置すると上記の問題を発生するので、不使用放置にする場合には印刷が終了したら排版させてしまおうというのが本発明の主旨である。
印刷が終了した時点でそのまま継続印刷をするかどうかを確認して、応答結果により不使用状態になることが分かれば排版動作を行うようにするのである。
【0025】
図4は本発明の孔版製版印刷装置における各部のブロック図である。
同図において符号21は版胴ユニット13の不使用時間計測装置、22は記憶装置、30は制御装置、31は排版駆動装置、32は操作パネル、33は液晶表示部、34は応答部をそれぞれ示す。
図5a、bは本発明の孔版製版印刷装置における制御フロー図である。
ここで実際の印刷動作を事例にしながら制御のプロセスを説明する。
孔版製版印刷装置1に円筒状版胴ユニット13(乾燥定着性向上型孔版印刷インキ黒)を装着して、この円筒状版胴ユニット13で500枚の印刷を行った。つまり原稿をセットし操作パネル32から印刷部数を500とセットして製版スタートキーを押した。製版工程から印刷工程が行われて500枚の印刷動作が終了した。
孔版印刷装置1の制御装置30は、特殊インキの版胴ユニット13が装着された状態で印刷が行われ、それが終了したことを確認した段階で、予め設定された通り必要な表示をするように制御される。表示に必要な情報や、現在の装置の状態等はすべて記憶装置22に保管されている。
【0026】
つまり操作パネルの液晶表示部(タッチパネル式)33には確認のための下記のような文章が表示される。これが「第一の確認表示」である。
「この版胴ユニットのままで印刷を継続使用しますか?」→「はい」、「いいえ」
たとえば今日の印刷はこれで終了なので応答部34から「いいえ」を選択指示する。
もしも「はい」を選択した場合には同じ版胴ユニットで印刷が実施されるはずなので、使用済みの版の排版を行い、次の製版動作と印刷動作を継続的に使用することができる。その印刷が終了した時点で再び上の確認文章が表示されることになる。
【0027】
「いいえ」を選択指示したので、下記のような「第二の確認表示」が出る。
「排版動作を実施しますが宜しいですか?」→「はい」、「いいえ」
そこで応答部34から「はい」を選択指示する。
もしも「いいえ」を選択した場合は、排版動作は行われないが継続して使用するものと判断されてしまうので、その後12時間以内に次の印刷動作が開始されれば問題なしだが、もしもそのまま放置で12時間後にも次の印刷が開始されない場合には「第一の警告表示」が出る。この警告は例えば、
「版胴ユニットを外してドラムケースに保管してください」である。
【0028】
応答部34から「はい」を選択したので、孔版印刷装置1の制御装置30は、排版駆動装置31に指令を送り、自動的に現在版胴に装着されている使用済み原紙の排版剥離と収納動作を実施する。その後制御装置30は操作パネル32の液晶表示部33において「第一の警告表示」と「第二の警告表示」文章を表示するように制御する。例えば以下の2つの文章である。
「版胴ユニットを外してドラムケースに保管してください」
「この版胴ユニットは2週間以内に再度印刷に使用して下さい」
【0029】
そこでオペレータは排版動作を行った後、版胴ユニットを外して、これを専用のドラム保管ケースに収納する。
孔版印刷装置1の制御装置30は、版胴ユニット識別センサ15によって版胴ユニットが外されたことを検知したら、不使用時間計測装置21を用いてそこからの経過時間計測を開始する。
もちろん版胴ユニットが外されなかった場合にもそこからの経過時間計測を開始する。
経過時間計測の結果その値が設定値1(たとえば300時間:約2週間)を経過した場合には、その時点で液晶表示部33により「第三の警告」を表示する。その時点で電源がOFFされていた場合には、その後電源がONされたらすぐに「第三の警告」を表示するように制御する。
【0030】
「第三の警告」は例えば次のような表示である。
「特定インキ版胴ユニットの不使用時間が許容限度を越えましたので、直ちに新しい原紙を装着して印刷を実施してください」
経過時間計測の結果その値が設定値1を経過する前に、特定インキ版胴ユニットが装着されて製版印刷動作が行われた場合には、その時点で経過時間計測をキャンセルしてしまう。そしてその印刷が終了したところで前記と同様に「第一の確認表示」を行う。以下は上記と同じである。
「第二の警告表示」である「版胴ユニットを外してドラムケースに保管してください」が表示されたのに、その版胴ユニットが外されなかった場合には、不使用時間計測装置34を用いてそこからの経過時間を計測してその値が設定値2(設定値1より短い時間、たとえば150時間:約1週間)を経過した時点で液晶表示部33により「第三の警告」を表示する。これらの各警告を所定の警告と呼ぶ。
版胴ユニットが外された場合には専用のドラムケースに保管されたものと判断するが、版胴ユニットが外されなかった場合にはより短い時間で不具合の発生が起こる可能性があるので、設定値1ではなく、それより短い時間である設定値2を使用する。これらの値を所定値と呼ぶ。所定値の具体的な数値は、使用されるインキの特性によって異なるので、そのインキ毎に記憶装置に設定しておくことになる。このような設定は、例えば、後述の操作パネル32の「機能キー」を押すことによって、液晶表示部に必要な機能一覧が出て、その中から所望の機能をタッチすることにより、数値を数値入力テンキー35から入力できるようにしておく。
【0031】
図6は本発明の孔版製版印刷装置における操作部を示す図である。
同図において符号35は数値入力テンキー、36は製版スタートキー、37は印刷スタートキー、38はストップキー、39は印刷設定枚数表示部、40は赤ランプをそれぞれ示す。
通常の基本的印刷時操作では、スキャナ部に原稿をセットして印刷したい枚数を数値入力テンキー35で指示して印刷設定枚数表示部39に印刷設定枚数を表示させ、製版スタートキー36で製版動作を実施させ、次にプリントスタートキー37を押すだけで必要枚数の印刷が自動的に実施されるようになっている。特殊印刷用のインキの種類を変更して、所定値も変更する必要があるときは、機能キーを押すことで、液晶表示部に機能の一覧を表示させ、その中から所望のキーを選択してタッチすることで、数値入力テンキー35から必要な数値が入力できるようにしておく。入力された数値は、記憶装置に保存され、警告表示のときに使用される。定常的に使用される特殊インキが定まっている場合は、そのインキに対応した所定値を既定値として記憶装置に保存しておき、特に変更の指示がない限り、その既定値が用いられるようにすると良い。
確認表示や警告表示の場合には赤ランプ40が点灯して更に液晶表示部32において、前記の各種文章が表示される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の孔版製版印刷装置における各版胴ユニットの装着の概略図である。
【図2】円筒状版胴ユニットの外周に装着された状態の孔版原紙を示す図である。
【図3】印刷終了状態のままで1週間放置された後の孔版原紙を示す図である。
【図4】本発明の孔版製版印刷装置における各部のブロック図である。
【図5a】本発明の孔版製版印刷装置における制御フロー図である。
【図5b】本発明の孔版製版印刷装置における制御フロー図である。
【図6】本発明の孔版製版印刷装置における操作部を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 孔版印刷装置
11 版胴ユニットA黒
12 版胴ユニットA赤
13 版胴ユニットB黒
15 版胴ユニット識別センサ
17 円筒状版胴
18 孔版原紙
20 検出ポイント
33 液晶表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製版された孔版原紙を外周に巻き付け装着され、自身の中心軸線周りに回転駆動される円筒状版胴ユニットが、孔版印刷装置本体に対して着脱可能に構成されている孔版印刷装置において、
装着されている円筒状版胴ユニットを識別するための版胴ユニット識別センサと、
前記円筒状版胴に装着されている使用済み原紙を剥離して排版する動作を実施する排版動作制御装置と、
応答待ち表示もしくは警告表示を行うための表示装置と、
前記応答待ち表示に応答するための応答手段と、
を有して、
前記版胴ユニット識別センサが、乾燥固化しやすいインキを用いている特定の版胴ユニットを使用したことを検知した場合には、その特定の版胴ユニットを使用した印刷が終了した時点で、
同じ版胴ユニットを用いた印刷を継続するかどうかの応答を求める、前記表示部による応答待ち表示をすることを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の孔版印刷装置において
前記表示部による応答待ち表示に対して、印刷を継続しない旨の応答が選択された場合には直ちに排版を実行するように制御することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の孔版印刷装置において、
前記特定の版胴ユニットを所定のドラム保管ケースに入れて保管するように警告表示することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項4】
請求項2に記載の孔版印刷装置において、
前記特定の版胴ユニットを今後継続不使用とする期間に限度があることを警告表示することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1つに記載の孔版印刷装置において、
前記特定の版胴ユニットの使用が終了後使用されていない時間間隔を計測する版胴ユニット不使用時間計測装置をさらに有し、
前記排版が実行された場合には前記不使用時間計測装置を作動させ、その値が所定値を越えた場合に、表示部によって所定の警告を表示するように制御することを特徴とする孔版印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6】
image rotate