説明

安全な特徴を内在する微小孔性フィルターメディア

本発明は、微生物学的妨害強化因子で処理した微小孔性フィルターメディアに関するが、この微生物学的妨害強化因子は、微小孔性構造の少なくとも一部に吸着された、中度〜高度の電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有する陽イオン性化学物質と、この陽イオン性化学物質に隣接し、またこの微小孔性構造の少なくとも一部の上である生物学的に活性な金属とを含み、このフィルターメディアを通る流体の流速は、流入物に存在するポリアニオン性酸の量に応答して減少する。強固な微生物学的妨害は、流速の低下の結果として、空塔接触時間の延長に起因してさらに維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非飲用水源でみられるポリアニオン性酸のような過剰な天然の有機物質の存在下でセルフ・シール(self seal)を提供するフィルターメディアを含む、安全な特徴を内在する濾過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の要旨)
第一の態様では、本発明は、安全な特徴を内在するフィルターメディアであって、約2ミクロン未満の平均流動細孔サイズを有する微小孔構造と;この微小孔性構造の少なくとも一部に吸着された、中度〜高度の電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有する陽イオン性化学物質を含み、この陽イオン性化学物質が流入物中の過剰のポリアニオン性酸の存在下で副産物を形成し、これによってこのフィルターメディアを通る流量が低下して微生物学的汚染物質の通過が妨げられる微生物学的妨害強化因子と;を含むフィルターメディアに関する。
【0003】
別の態様では、本発明は安全な特徴を内在するフィルターメディアであって、約2ミクロン未満の平均流動細孔サイズを有する微小孔構造と;この微小孔性構造の少なくとも一部に吸着された、中度〜高度の電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有する陽イオン性化学物質、ならびにこの陽イオン性化学物質に隣接する生物学的に活性な金属であって、この生物学的に活性な金属がこの陽イオン性化学物質に会合する対イオンの少なくとも一部との沈殿を生じ、この陽イオン性化学物質が流入物中の過剰のポリアニオン性酸の存在下で副産物を形成し、これによってこのフィルターメディアを通る流量が低下して微生物学的汚染物質の通過が妨げられる、生物学的に活性な金属を含む微生物学的妨害強化因子と;を含む、フィルターメディアに関する。
【0004】
さらに別の態様では、本発明は、微生物学的汚染物質およびポリアニオン性酸を含む流体を濾過する方法に関しており、この方法は、約2ミクロン未満の平均流動細孔サイズを有する微小孔性構造を含む内在性の安全特徴を有するフィルターメディアを設ける工程であって、この微小孔性構造が、この微小孔性構造の少なくとも一部に吸着された、中度〜高度の電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有する陽イオン性化学物質と、この微小孔性構造の少なくとも一部上の陽イオン性化学物質に隣接した生物学的に活性な金属とを含む微生物学的妨害強化因子で処理される工程と;微生物学的汚染物質およびポリアニオン性酸を含む流体を、このフィルターメディアを通過させる工程と;流出物中の微生物学的汚染物質の約4を上回る対数減少を得る工程であって、ここで、このフィルターメディアを通じた流体の流速が、この陽イオン性化学物質とのポリアニオン性酸の反応の結果として低下して、これによって微生物学的汚染物質の妨害の強化を維持したままで微生物学的汚染物質の通過が妨げられる工程と;を包含する。
【0005】
さらに別の態様では、本発明は、流体を処理、貯蔵および分配するための重力流動濾過システムに関しており、このシステムは、濾過されるべき流体を保持するための第一のリザーバと;この第一のリザーバと流体連絡されたフィルターメディアであって、このフィルターメディアが約1ミクロン未満の平均流動細孔サイズを有する微小孔性構造を備え、このフィルターメディアがこのフィルターメディアの平均流動細孔サイズよりも小さい微生物学的汚染物質の少なくとも約4の対数減少を得るように処理されており、このフィルターメディアを通る流体の流速がこの流体に存在するポリアニオン性酸の量に応答して低下する、フィルターメディアと;濾過された流体を収集するためのこのフィルターメディアと流体連絡された第二のリザーバと;を含む。
【0006】
さらに別の態様では、本発明は、流体を処理、および分配するための加圧濾過システムに関しており、このシステムは、濾過された流体を収集するためのリザーバと;このリザーバと流体連絡されたフィルターメディアであって、このフィルターメディアが約2ミクロン未満の平均流動細孔サイズを有する微小孔性構造を備え、このフィルターメディアがこのフィルターメディアの平均流動細孔サイズよりも小さい微生物学的汚染物質の少なくとも約4の対数減少を得るように処理されており、このフィルターメディアを通る流体の流速がこの流体に存在するポリアニオン性酸の量に応答して低下する、フィルターメディアと;を含む。
【0007】
新規であると考えられる本発明の特徴および本発明の特徴的な構成要素は、添付の特許請求の範囲に詳細に示される。図面は、例示の目的だけであり、スケールについては示していない。しかし、本発明自体は、操作の機構および方法の両方に関して、以下の図面と組み合わせて好ましい実施形態の説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の好ましい実施形態の記載では、本明細書における図面の図1〜図4を参考にする。
【0009】
(定義)
本明細書において用いる場合、「吸収剤(absorbent)」とは、物質をその内部構造に吸着できる任意の物質を意味する。
【0010】
本明細書において用いる場合、「吸着剤(adsorbent)」とは、物理的方法によって、かつ共有結合なしに、その表面に対して物質を吸着できる任意の物質を意味する。
【0011】
本明細書において用いる場合、「結合剤(binder)」とは、他の物質を一緒に保持するために主に用いられる物質を意味する。
【0012】
本明細書において用いる場合、「汚染の減少(contaminant reduction)」とは、流体中の不純物の減少、すなわち、例えば、ヒトでの使用のため、または産業上の適用においてさらに有用であるように流体をさらに安全にさせるために、化学的、機械的または生物学的に、妨害、除去および/または不活性にされることを意味する。
【0013】
本明細書において用いる場合、「空塔接触時間(empty bed contact time)」または「EBCT」とは、粒子の層を通じて流体が流れるとき、例えば活性炭のような粒子と、この流体との間でどの程度の接触が生じるかという指標を意味する。
【0014】
本明細書において用いる場合「ファイバー(fiber)」とは、例えば数百〜1という長さ対直径の高い縦横比によって特徴付けられる固体を意味する。ファイバーの任意の考察はまた、ウィスカーを包含するとみなされる。
【0015】
本明細書において用いる場合、「フィルターメディア(filter medium)」とは、流体濾過を行なう物質を意味する。
【0016】
本明細書において用いる場合、「流体(fluid)」とは、液体、ガスまたはそれらの組み合わせを意味する。
【0017】
本明細書において用いる場合、「妨害する(intercept)」または「妨害(interception)」とは、妨害するか、または通過を停止して、それによって作用を及ぼす、除去する、不活性化するまたは影響することを意味するととられる。
【0018】
本明細書において用いる場合、「対数減少値(log reduction value)」または「LRV」は、流入物中の生物体の数を、フィルターを通過した後の流出物中の生物体の数で割ったlog10を意味する。
【0019】
本明細書において用いる場合、「平均流動細孔サイズ(mean flow pore size)」とは、Porous Materials,Inc.,Ithaca,New Yorkから入手可能なAutomated Capillary Flow Porometerを用いて決定した場合、所与の圧力で、フィルターメディアを通る流動の半分が、平均流動細孔サイズよりも大きい細孔を通り、その流動の半分が平均流動細孔サイズよりも小さい細孔を通る、乾燥フィルターメディアの細孔サイズを意味する。
【0020】
本明細書において用いる場合、「金属(metal)」とは、所与の金属元素の塩、コロイド、沈殿物、ベースメタル、および他の全ての形態を包含することを意味する。
【0021】
本明細書において用いる場合、「微生物学的妨害強化フィルターメディア(microbiological interception enhanced filter medium)」とは、微小孔性構造を有するフィルターメディアであって、その微小孔性構造の少なくとも一部が微生物学的妨害強化因子で処理されているフィルターメディアを意味する。
【0022】
本明細書において用いる場合、「微生物学的妨害強化因子(microbiological interception enhancing agent)」とは、生物学的に活性な金属と組み合わせて、そこに会合する対イオンを有する陽イオン性化学物質を意味する。
【0023】
本明細書において用いる場合、「微生物(microorganism)」とは、流体に懸濁され得る任意の生きた生物体であって、限定はしないが細菌、ウイルス、真菌、原生動物、ならびにシストおよび芽胞を含むその生殖型を含む生物体を意味する。
【0024】
本明細書において用いる場合、「微小孔性構造(microporous structure)」とは、約2.0ミクロン未満、そしてしばしば約1.0ミクロン未満の平均流動細孔サイズを有する構造を意味する。
【0025】
本明細書において用いる場合、「天然の有機物(natural organic matter)」または「NOM」とは飲用水または非飲用水でしばしば見出される有機物であって、その一部が、正に荷電されたフィルターメディアのストリーミング、またはゼータ、電位を低下するかまたは阻害する有機物を意味する。NOMの例は、ポリアニオン性酸、例えば、限定はしないが、フミン酸およびフルボ酸である。
【0026】
本明細書において用いる場合、「不織布(nonwoven)」とは、中に入れられる個々のファイバーの構造を有するが、編まれた物や織られた物と同じように高度に組織化された方式ではない、織物または線維または他のメディアを意味する。織られていない織物は一般に、当分野で周知の方法によって調製され得る。このようなプロセスの例としては、限定はせず、例示のみであるが、メルトブロウイング(meltblowing)、スパンボンディング(spunbonding)、カーディング(carding)および空気積層(エアレイイング)が挙げられる。
【0027】
本明細書において用いる場合、「粒子(particle)」とは、コロイド状から巨視的なサイズ範囲を有する固体を意味し、形状に特定の制限はないが、一般に長さ対幅の比には限定がある。
【0028】
本明細書において用いる場合、「プレフィルター(prefilter)」とは、他の濾過層、構造またはデバイスから一般に上流に位置しており、流入物がその後の濾過の層、構造またはデバイスに接触する前に粒子状汚染物質を減少させることができるフィルターメディアを意味する。
【0029】
本明細書において用いる場合、「ウィスカー(whisker)」とは、制限された縦横比であって、粒子とファイバーの縦横比の中間の縦横比を有するフィラメントを意味する。ファイバーについての任意の考察はまた、ウィスカーを含むとみなされる。
【0030】
(微生物学的妨害強化フィルターメディア)
本発明のフィルターメディアは、安全な特徴を内在し、ここでこのフィルターメディアを通じた流体の流動は、微生物学的汚染物質を妨害するのにおいてこのフィルターメディアの有効性を低下する過剰な量のポリアニオン性酸の存在下で、徐々に低下される。このフィルターメディアは、適切な細孔構造および化学処理の組み合わせを用いて微生物学的妨害の能力を提供する微小孔性構造を有する。この微小孔性構造は、特定の細孔構造を有する活性な粒子のアレイ、ならびに吸着性および/または吸収性の特性を含む。このアレイは、固体の複合したブロック、モノリス、セラミックキャンドル、結合剤または支持ファイバーを用いて緊密に結び付いたメディアに形成された、結合したかまたは固定された粒子のフラットなシートの複合体、などであってもよい。これらの粒子アレイは、例えば、押し出し、成形またはスリップ鋳込みのような当分野で公知のプロセスによって作製され得る。この微小孔性構造はまた、不織布または紙状の構造に形成された複数のナノファイバーを含んでもよいが、ウィスカーを含んでもよく、またはメンブレンであってもよい。このような微小孔性構造は、必要に応じて参考として本明細書に組み込まれる、2002年11月1日出願の同時係属中の米国特許出願第10/286,695号に開示される。
【0031】
微小孔性構造の表面を処理するために用いられる化学処理プロセスは、組み合わされば、接触の際に微生物学的汚染物質の広域の減少をもたらす、陽イオン性化学物質と生物学的に活性な金属との間の相乗的な相互作用を利用する。フィルターメディアに対して陽イオン性化学物質によって提供される電荷は、微生物学的汚染物質の電気運動学的妨害を補助するが、きつい細孔構造によって拡散経路が短くなり、従って微小孔性構造の表面に対して流体流動中の微生物学的汚染物質の拡散動態が急速になる。この微小孔性構造によってまた、微生物学的汚染物質の追加的な直接の機械的妨害が得られる。極端に小さい粒子の妨害のために拡散の役割が主要であることに起因して、フィルターメディアの厚みに依存するのではなく、ウイルス粒子の対数減少値と、フィルターメディア内の流入物の接触時間との間に直接の相関がある。
【0032】
(微生物学的妨害強化フィルターメディアの特徴)
完全な微生物学的妨害能力を得るために、本発明の微生物学的妨害強化フィルターメディアは、約2ミクロン未満、さらに好ましくは、約1ミクロン以下の平均流動細孔サイズを有する。平均流動細孔サイズが約2ミクロンより大きいならば、ウイルス粒子の拡散効率は急速に低下して、有効な生物学的妨害が低下する。本発明の微生物学的妨害強化フィルターメディアの容積は、このフィルターメディアを通過する流体の流速に比較して、このフィルターメディアの表面に汚染物質が拡散するのに十分な接触時間が得られるように十分大きくなければならない。大部分が負に荷電されている微生物の電気運動学的妨害の強化を得るために、この微小孔性構造の少なくとも一部を陽イオン性化学物質でコーティングして、このような微小孔性構造の少なくとも一部に正の電荷を得る。この陽イオン性化学物質は、活性な粒子のミクロ細孔(micro−pores)およびメゾ細孔(mezo−pores)の付着を防止するのに十分な分子サイズの物質である。
【0033】
ポリアニオン性酸、すなわちフミン酸およびフルボ酸のような天然の有機物(NOM)は、この微生物学的妨害強化フィルターメディアの荷電を減少させても取り除いてもよいが、好ましくは、NOMを実質的に除去する吸着性のプレフィルターの使用によって、荷電された微小孔性構造と接触することが妨げられる。この微生物学的妨害強化フィルターメディアにNOM除去物質を直接組み込んで、これによって分離吸着性プレフィルターの必要性を排除することが可能である。また、用いられる活性粒子のタイプに依存して、微生物学的妨害強化フィルターメディア自体の上流部分が、同様にNOMを自然に減少させるか除去して、この微生物学的妨害強化フィルターメディアの下流部分の能力の損失を妨げる。
【0034】
過剰な量のポリアニオン性酸が存在する状況では、陽イオン性物質がこのポリアニオン性酸と反応して、副産物を形成し、これが微生物学的妨害強化フィルターメディアを通じた流動を効率的に低下するかまたは縮小し、これによって微生物学的汚染物質の通過を妨げる。NOMは微生物学的妨害強化フィルターメディアの有効性を妨げ得るが、本発明のフィルターメディアの内在性の安全な特徴によって、フィルターメディアを通じた流入物の流速が低下するにつれて、微生物学的汚染物質の通過が妨げられる。流速が減少されるにつれて、フィルターメディアを通じて流れる流体の空塔接触時間(EBCT)が増大する。フィルターメディア上の電荷は減少してもよいが、長いEBCTによって微生物学的妨害の強化が可能になる。この副産物は、フィルターメディアのポリアニオン性酸の総負荷の増大に起因してフィルターメディア中で増えるので、このフィルターメディアを通る流体の流動は、この流体中に存在するポリアニオン性酸の量に応答して受容不能な速度まで低下して、最終的に、フィルターメディアを閉鎖し、これによってフィルターメディアの交換が必要であることが使用者に示される。
【0035】
重力流動水濾過システムの状況で用いる場合、微生物学的妨害強化フィルターメディアを疎水性物質で作製するか、または湿潤剤で処理して良好な自然な湿潤性を得ることが好ましい。あるいは、他の適用では、この微生物学的妨害強化フィルターメディアを、必要に応じて処理して親水性または疎水性のいずれかの特徴を得てもよい。微生物学的妨害強化フィルターメディアは正の電荷および負の電荷および非荷電の領域を有してもよく、そして/または親水性および疎水性の領域を有してもよい。例えば、負に荷電された領域を用いて、まれな正荷電の汚染物質の妨害を強化することが可能であり、そして非荷電の疎水性領域を用いて、疎水性表面に誘引される汚染物質の妨害の強化を得ることができる。
【0036】
(活性粒子)
本発明の強化された微生物学的妨害能力を有する微生物学的妨害強化フィルターは、80×325メッシュの粒子サイズ分布を有する吸着性および/または吸収性の活性粒子のアレイを含み、約20%〜約24%(325メッシュよりも小さい粒子)をピックアップする。活性粒子としては、限定はしないが、活性炭、活性アルミナ、ゼオライト、珪藻土、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、チタン酸塩、骨炭化物、ハイドロキシアパタイトカルシウム、酸化マンガン、酸化鉄、マグネシア、パーライト、滑石、ポリマー性微粒子、粘土、ヨウ素化樹脂、イオン交換樹脂、セラミック、高吸収性ポリマー(SAP)およびそれらの組み合わせを挙げることができる。必須の特性を有する微生物学的妨害強化フィルターメディアは、これらの活性粒子のうちの1つ以上を組み合わせることによって得ることができる。
【0037】
1つの好ましい微小孔性構造は、NOMによる付着に天然に抗し、内部領域を保護したままでこの微小孔性構造の末梢領域の潜在的に妨害するNOMを吸着するのに有効である、活性炭の活性粒子を含む。好ましくは、活性炭は酸で洗浄された、瀝青炭ベースの活性炭である。本発明における使用に適切な市販の活性炭は、TOG−NDSの商品名で、Pittsburgh,PennsylvaniaのCalgon Carbon Corporationから、または1240ALCの商品名でWilmington,CaliforniaのCalifornia Carbon Companyから入手できる。最も好ましくは、活性粒子は、以下のような粒子サイズ分布を有する、Calgon Carbon Corporationの、酸洗浄された瀝青炭ベースの活性炭からなる:約3%〜約7%、好ましくは約5%、80メッシュサイズの粒子;約12%〜約18%、好ましくは約15%、100メッシュサイズの粒子;約44%〜約50%、好ましくは47%、200メッシュサイズの粒子;約8%〜約14%、好ましくは約11%、325メッシュサイズの粒子;そして約20%〜約24%ピックアップ、好ましくは約22%をピックアップする。
【0038】
(微生物学的妨害強化因子)
微小孔性構造の活性粒子は、活性粒子の表面上に正の電荷を生じ得る微生物学的妨害強化因子で化学的に処理される。化学処理は、ストリーミング電位解析を用いて測定される場合、この処理された表面上に強力な正の荷電を生じ、そしてこの正の電荷は、10未満のpH値で保持される。陽イオン性金属錯体は、活性粒子を陽イオン性化学物質で処理することによって、この活性粒子の表面の少なくとも一部の上で形成される。この陽イオン性化学物質は、荷電された低分子であってもよいし、またはポリマー鎖の長さにそって正に荷電した原子を有する、直線もしくは分枝したポリマーであってもよい。
【0039】
陽イオン性化学物質がポリマーである場合、この電荷密度は好ましくは、分子の長さおよそ20オングストロームごとにほぼ1より多い荷電原子、好ましくはおよそ10オングストロームごとにほぼ1より多い荷電原子、そしてより好ましくはおよそ5オングストロームごとにほぼ1より多い荷電原子である。陽イオン性化学物質上の電荷密度が高いほど、それに会合する対イオンの濃度が高い。高い濃度の適切な対イオンを用いて、金属錯体の沈殿をもたらすことができる。陽イオン性ポリマーの高い電荷密度によって、炭素のような活性粒子の正常な負の荷電を吸着して有意に逆転する能力が得られる。陽イオン性化学物質は、高いpH環境でも低いpH環境でも、ストリーミングまたはゼータ電位分析装置によって決定した場合、微小孔性構造に対して高度に正の荷電表面を一貫してもたらすはずである。
【0040】
十分に高い分子量のポリマーの使用によって、活性粒子のメゾ細孔およびミクロ細孔の吸着的な能力に基づいて、重篤な影響を伴うことなく、活性粒子の表面の処理が可能になる。陽イオン性化学物質は、約5000ダルトン以上、好ましくは100,000ダルトン以上、より好ましくは、約400,000ダルトン以上の分子量を有してもよく、そして約5,000,000ダルトン以上であってもよい。
【0041】
陽イオン性化学物質としては、限定はしないが、四級化アミン、四級化アミド、四級アンモニウム塩、四級化イミド、ベンザルコニウム化合物、ビグアニド、カチオン性アミノシリコン化合物、カチオン化セルロース誘導体、カチオン化デンプン、四級化ポリグリコールアミン縮合物、四級化コラーゲンポリペプチド、カチオン性キチン誘導体、カチオン性グアールガム、コロイド、例えば、カチオン性メラミン−ホルムアルデヒド酸コロイド、無機処理されたシリカコロイド、ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂、カチオン性アクリルアミド、そのポリマーおよびコポリマー、それらの組み合わせなどが挙げられる。本出願に有用な荷電分子は、単一荷電単位を有し、そして微小孔性構造の少なくとも一部に結合され得る低分子であってもよい。陽イオン性化学物質は好ましくは、そこに会合された1つ以上の対イオンを有し、この対イオンは生物学的に活性な金属塩溶液に曝露された場合、この陽イオン性の表面に近接する金属の優先的な沈殿を生じ、カチオン性金属沈殿錯体を形成する。
【0042】
アミンの例は、ピロール、エピクロルヒドリン誘導アミン、そのポリマーなどであってもよい。アミドの例は、国際特許出願第01/07090に開示されるポリアミドなどであってもよい。四級アンモニウム塩の例は、ジアリルジメチルハロゲン化アンモニウムのホモポリマー、エピクロロヒドリン誘導ポリ四級アミンポリマー、ジアミンおよび二ハロゲン化物由来の四級アンモニウム塩、例えば、その全てが参考として組み込まれる米国特許第2,261,002号、同第2,271,378号、同第2,388,614号および同第2,454,547号に、そしてこれも参考として組み込まれる国際特許出願第WO97/23594号に開示されるもの、ポリヘキサメチレンジメチルアンモニウムブロミドなどであってもよい。陽イオン性化学物質は、それ自体に対して、および/または活性な粒子に対して化学的に結合、吸着または架橋されてもよい。
【0043】
さらに、陽イオン性化学物質としての使用に適切な他の物質としては、BioShield Technologies,Inc,Norcross,Georgiaから入手可能なBIOSHIELD(登録商標)が挙げられる。BIOSHIELD(登録商標)は、約5重量%のオクタデシルアミノジメチルトリメトキシシリルプロピル塩化アンモニウムおよび3%未満のクロロプロピルトリメトキシシランを含むオルガノシラン生成物である。用いられ得る別の材料は、Surfacine Development Company LLC,Tyngsboro,Massachusettsから入手可能なSURFACINE(登録商標)である。SURFACINE(登録商標)は、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)と、PHMBをポリマー表面に共有結合するための架橋剤である4,4’−メチレン−ビス−N,N−ジリシジルアニリン(MBGDA)との反応によって得られる三次元のポリマーの網目状構造を含む。銀は、ヨウ化銀の形態で網目状構造に導入されて、ミクロン未満のサイズの粒子として補足される。この組み合わせは、本発明において用いられ得る有効な殺生剤である。活性粒子次第で、MBGDAは微小孔性構造にPHMBを架橋してもしなくてもよい。
【0044】
陽イオン性化学物質は、金属塩溶液に曝され、その結果この金属は、この陽イオン性化学物質に隣接して、この金属は、この陽イオン性化学物質と会合した対イオンの少なくとも一部と、この微小孔性構造の少なくともいくつかの表面のうちの少なくとも一部に沈殿する。この目的のために、生物学的に活性な金属が好ましい。このような生物学的に活性な金属としては限定はしないが、銀、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、アンチモン、金、アルミニウム、白金、パラジウムおよびそれらの組み合わせが挙げられる。最も好ましい生物学的に活性な金属は銀および銅である。生物学的に活性な金属塩溶液は好ましくは、この金属および陽イオン性化学物質の対イオンが水性環境に実質的に不溶性であり、金属沈殿物の沈殿を生じるように選択される。好ましくは、この金属は、総組成物に対して約0.01重量%〜約2.0重量%の量で存在する。
【0045】
特に有用な微生物学的妨害強化因子は銀−アミン−ハロゲン化物複合体である。陽イオン性アミンは好ましくは、約400,000ダルトンの分子量を有するジアリルジメチルハロゲン化アンモニウムのホモポリマー、または同様の電荷密度および分子量を有する他の四級アンモニウム塩である。本発明において有用なジアリルジメチル塩化アンモニウムのホモポリマーは、商品名MERQUAT(登録商標)100としてNalco Chemical Company of Neperville,Illinoisから市販されている。塩化物の対イオンは、臭化物またはヨウ化物の対イオンで置換されてもよい。硝酸銀溶液と接触した場合、この銀−アミン−ハロゲン化物複合体沈殿物は、微生物学的妨害強化フィルターメディアの微小孔性構造の活性粒子の少なくとも一部に沈殿する。
【0046】
活性粒子が活性炭を含む場合、この陽イオン性化学物質は好ましくは、高い荷電密度ならびに十分高い分子量を有して、この活性炭の負に荷電された表面基と強力な誘引および高い配位エネルギーを生じる。また、生物学的に活性な金属のコロイドの存在下で、活性炭の荷電された表面を用いる妨害の強化は、この活性炭の疎水性吸着機構によって補われる。この疎水性機構は一般に、NOMによる付着の影響に抵抗して、実際には高いイオン強度の条件下でさらに有効である。炭素表面の未処理部分は、その酸素に富んだ化学によって、正に荷電した粒子を吸着し続けることができる負の荷電を有する傾向である。正、負および疎水性の表面の組み合わせは、小さい粒子を行路決定するための、ほぼ乗り越え不能な障壁である。微生物学的妨害強化因子での炭素の処理後、活性な粒子上の生物学的に活性な金属およびその関連する対イオンの存在は、蛍光X線を用いて検出できる。
【0047】
(微生物学的妨害強化フィルターメディアを作製する方法)
本発明の微生物学的妨害強化フィルターメディアは、当業者に公知のプロセスに従って作製できる。このようなプロセスとしては、押し出し成形、成形、スリップ鋳込み(slip casting)、基板上に活性粒子を固定することなどが挙げられる。例示的なプロセスは、米国特許第5,019,311号および同第5,792,513号に開示される。
【0048】
この活性粒子は、当業者に公知の手段、例えば、スプレーコーティングなどを用いて、陽イオン性化学物質で処理される。好ましくは、この活性粒子は、微生物学的妨害強化フィルターメディアの総重量の約0.5重量%〜約3重量%で、より好ましくは約1重量%でコーティングされる。一旦この陽イオン性化学物質が、活性粒子の少なくとも一部にコーティングされれば、この粒子は生物学的に活性な金属塩に曝される。金属塩の溶液は、粒子に浸潤されて、活性粒子の表面の少なくとも一部に生物学的に活性な金属の沈殿を生じる。この沈殿プロセスは陽イオン性コーティングに隣接する金属コロイドのほとんどを的確に沈着する。なぜならこのコーティングに会合する対イオンは、加えられた金属塩と反応してコロイド粒子を形成するからである。金属塩は、処理された粒子に噴霧されてもよいし、そうでなければ当業者に公知の方法を用いて加えられてもよい。陽イオン性化学物質および金属塩の溶液は好ましくは、ほぼイオンのない水で作成され、その結果この陽イオン性化学物質に会合する対イオンは、処理された活性粒子の陽イオン性表面に対して緊密に引き付けられて、陽イオン性表面から遠い場所への生物学的に活性な金属の制御されない沈殿を生じ得る所望されないイオンが排除される。
【0049】
次いで、一般には加熱によりまたは減圧下で、所望の湿度まで過剰の湿気を粒子から除去する。この粒子が引き続いて押し出されるかまたは熱可塑性結合剤を用いて成形される場合、好ましくは、湿度は、約10%未満、さらに好ましくは約5%未満でなければならない。
【0050】
一旦、この微生物学的妨害強化因子が、活性粒子の少なくとも一部にコーティングされれば、この活性粒子を、所望のサイズに粉砕し、結合物質と強力に混合して、必要な微小孔性構造を有する所望の最終形態に活性粒子を固定する前に均一な混合物を形成する。この結合剤は、結合物質の融点が活性粒子の融点よりも十分低く、その結果この微生物学的妨害強化フィルターメディアを加熱して結合物質を活性化できるが、微小孔性構造は融解されず、従って多孔性も失われないように、選択される。この結合粒子は好ましくは、活性粒子を通じて最終的に十分分布されて、その結果、後になって微小孔性構造に対する変換の際に、この結合粒子は捕捉されるかまたは実質的に全ての活性粒子に結合される。
【0051】
微小孔性構造に活性粒子を合体させるのにおいて、本発明で有用な結合物質は潜在的に、当分野で公知の任意の熱可塑性または熱硬化性の物質をファイバー、粉末または粒子のいずれかの形態で含んでもよい。有用な結合物質としては、限定はしないが、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリ硫酸ビニル、ポリリン酸ビニル、ポリビニルアミン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオキシジアゾール、ポリオキシジアゾール、ポリトリアゾール、ポリカルボジイミド、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリエーテル、酸化ポリアリーレン、ポリエステル、ポリアリレート、フェニル−ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ホルムアルデヒド尿素、エチル−ビニルアセテートコポリマー、そのコポリマーおよびブロックインターポリマーのような物質、ならびにそれらの組み合わせを挙げることができる。上記の物質および他の有用なポリマーのバリエーションとしては、ヒドロキシル、ハロゲン、低級アルキル基、低級アルコキシ基、単環系アリール基などの基の置換が挙げられる。
【0052】
本発明において有用であり得る結合剤のさらに詳細なリストには、エンドキャップポリアセタール、例えば、ポリ(オキシメチレン)またはポリホルムアルデヒド、ポリ(トリクロロアセトアルデヒド)、ポリ(n−バレルアルデヒド)、ポリ(アセトアルデヒド)およびポリ(プロピノンアルデヒド);アクリルポリマー、例えばポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(エチルアクリラート)、およびポリ(メチルメタクリラート);フルオロカーボンポリマー、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン)、過フッ化エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)およびポリ(フッ化ビニル);ポリアミド、例えば、ポリ(6−アミノカプロン酸)またはポリ(e−カプロラクタム)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)、およびポリ(11−アミノウンデカン酸);ポリアラミド、例えば、ポリ(イミノ−1,3−フェニレンイミノイソフタロイル)またはポリ(m−フェニレンイソフタルアミド);パリレン、例えば、ポリ−2−キシレン、およびポリ(クロロ−1−キシレン);ポリアリールエーテル、例えば、ポリ(オキシ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)またはポリ(p−フェニレンオキシド);ポリアリールスルホン、例えば、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンスルホニル−1,4−フェニレンオキシ−1,4−フェニレンイソプロピリデン−1,4−フェニレン)、およびポリ(スルホニル−1,4−フェニレン−オキシ−1,4−フェニレンスルホニル4,4’−ビフェニレン);ポリカーボネート、例えば、ポリ−(ビスフェノールA)またはポリ(カルボニルジオキシ−1,4−フェニレンイソプロピリデン−1,4−フェニレン);ポリエステル、例えば、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(テトラメチレンテレフタラート)、およびポリ(シクロヘキシレン−1,4−ジメチレンテレフタラート)またはポリ(オキシメチレン−1,4−シクロヘキシレンメチレンオキシテレフタロイル);硫化ポリアリール、例えば、ポリ(p−フェニレンスルフィド)またはポリ(チオ−1,4−フェニレン);ポリイミド、例えば、ポリ(ピロメリットイミド−1,4−フェニレン);ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、およびポリ(4−メチル−1−ペンテン);ビニルポリマー、例えば、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、およびポリ(塩化ビニリデン);ジエン重合体、例えば、1,2−ポリ−1,3−ブタジエン、1,4−ポリ−1,3−ブタジエン、ポリイソプレン、およびポリクロロプレン;ポリスチレン;ならびに前述のコポリマー、例えば、アクリロニトリルブタジエン−スチレン(ABS)コポリマーを含む。有用であり得るポリオレフィンとしては、ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などが挙げられる。
【0053】
潜在的に適用可能な他の物質としては、ポリマー、例えば、ポリスチレンおよびアクリロニトリル−スチレンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、および他の非結晶性またはアモルファスのポリマーおよび構造が挙げられる。
【0054】
好ましい結合物質としては、ポリエチレン、ポリ(エチレンビニルアセテート)、およびナイロンが挙げられる。結合剤として特に好ましいのは、MICROTHENE(登録商標)Fの商品名で、Equistar Chemicals,L.P.,Tuscola,Illinoisから市販されている、FN 510等級の極微細ポリエチレンである。
【0055】
結合剤は、約0.1ミクロン〜約250ミクロン、好ましくは約1ミクロン〜約100ミクロン、さらに好ましくは約5ミクロン〜約20ミクロンの平均粒子サイズを有し得る。この結合物質は、活性粒子の軟化点よりも有意に低い軟化点を有し、その結果、微小孔性構造が溶融せず、従って多孔性を失わないままで、微生物学的妨害強化フィルターメディアを加熱して結合物質を活性化することができる。
【0056】
用いられる結合物質の量は、微小孔性構造が、押し出し、成形または他のいずれのプロセスによって、どのように形成されるかに依存する。例えば、活性粒子が固体複合体ブロックに押し出されるか成形される場合、結合物質は好ましくは、微生物学的妨害強化フィルターメディアの約15重量%〜約22重量%、さらに好ましくは約17重量%から約19重量%の量で存在する。活性粒子が、基板、例えば、不織物質などに固定される場合、結合物質は好ましくは、全組成物の約5重量%〜約20重量%、好ましくは約9重量%〜約15重量%の量で存在する。
【0057】
粒子、ファイバー、ウィスカーまたは粉末のいずれかの形態の1つ以上の添加物をまた、この活性粒子と混合して、微小孔性構造の形成における他の汚染物質または関係物質の吸着または吸収、および微生物学的汚染物質の妨害を補助してもよい。有用な添加物としては、限定はしないが、金属性粒子、活性アルミナ、活性炭、シリカ、ポリマー性粉末およびファイバー、ガラスビーズまたはファイバー、セルロースファイバー、イオン交換樹脂、人工樹脂、セラミック、ゼオライト、珪藻土、活性ボーキサイト、フラー土、硫酸カルシウム、他の吸着または吸収物質、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。添加物はまた、特定の適用に応じて、微生物学的妨害能力に影響するために化学的に処理されてもよい。このような添加物は好ましくは、濾過適用で用いる場合、得られた微生物学的妨害強化フィルターメディアの流体の流動が実質的に妨げられないように十分な量で存在する。添加物の量は、濾過システムの特定の用途に依存する。
【0058】
最終の微小孔性構造はまた、粒子またはファイバーまたはこのような混合物をスリップ鋳込みまたは湿式抄造することによって、そして引き続いて結合剤または粒子を一緒に成分に焼結することによって形成できる。ある場合には、この粒子は、二成分のファイバーにおいてのように、または低融点樹脂としてそれ自体結合剤を形成し得る。ある場合には、結合剤は、水溶性であっても、または架橋可能な樹脂であっても、あるいは乾燥もしくは加熱させられるか、または反応させられた場合、必要な結合を形成する塩であってもよい。化学的結合剤が用いられてもよいし、同様に特定のリン酸塩のような沈殿された結合剤が用いられてもよい。
【0059】
あるいは、微小孔性構造は、同時係属の米国特許出願第10/286,695号に従ってナノファイバーを用いて作製してもよい。
【0060】
(微生物学的妨害強化フィルターメディアを利用する濾過システム)
本発明の微生物学的妨害強化フィルターメディアは、固体複合体のブロック、平面、らせんまたはプリーツシート、モノリスまたはキャンドルとして固定された微粒子の濾過メディアを利用する先行技術の濾過システムに容易に組み込むことができる。好ましくは、特定のプレフィルターを、この微生物学的妨害強化フィルターメディアと組み合わせて、この微生物学的妨害強化フィルターメディアから上流に配置して用いて、流入物がこの微生物学的妨害強化フィルターメディアに接触する前にこの流入物からできるだけ多くの微粒子状汚染物質を除去する。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供しており、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0062】
ポロメトリー(porometry)研究は、Porous Materials,Inc.,Ithaca,New Yorkから入手可能な自動化キャピラリーフローポロメーター(Automated Capillary Flow Porometer)で行なった。装置の製造業者によって公開された標準的手順を用いて決定したパラメーターとしては、平均の流動細孔サイズおよびガス(空気)透過性が挙げられる。空気の流動は、乾燥した微生物学的妨害強化フィルターメディアおよび湿潤な微生物学的妨害強化フィルターメディアの両方で可変性の圧力でアッセイした。
【0063】
微生物学的妨害強化フィルターメディアの細菌チャレンジは、Klebsiella terrigena ATCC No.33527の懸濁物を用いて行い、細菌チャレンジに対する応答を評価した。ウイルスチャレンジに対する応答は、MS2大腸菌ファージATCC No.15597−B1およびPRD−1 ATCC No.19585−B1を用いて評価した。細菌およびバクテリオファージの増殖のためには、ATCCの標準操作手順(Standard Operating Procedures)を用い、そして同様に当分野で周知の標準的微生物学的手順を、微生物の懸濁物をチャレンジしたフィルターの流入物および流出物の両方において微生物を調製および定量するために用いた。
【0064】
個々のフィルターを、NSF国際標準53シスト減少試験プロトコール(NSF International Standard 53 cyst reduction test protocol)の改変バージョンで各々の微生物で二重に試験した。このプロトコールは、汚れの蓄積をシミュレートするために、微細な微粒子に対する加速的な曝露の間にフィルターの能力を評価するように設計される。フィルターを逆浸透性/脱イオン(RO/DI)水でフラッシュして、0.5〜1.0ガロン/分(gpm)の初期流速に較正した。フィルターメディアの平均流動細孔サイズは全て、約0.9ミクロン〜1.1ミクロンであった。
【0065】
試験の間、スタートアップシステムのフラッシング期間の間に流入物および流出物の両方のサンプリングポートから初期サンプルを取り出して、消毒の不適当な試験装置からのバックグラウンドの干渉がないことを確認した。次いでこのフィルターを微生物の懸濁物でチャレンジしたが、このサンプルは最低21のチャレンジ溶液の後に取って、サンプリングの前に試験標準の全体にわたってチャレンジ水の通過を確認した。
【0066】
全ての流入および流出サンプルを、必要に応じて、連続希釈し、三連でおいた。特定の場合には、所与の設計の炭素ブロックを数回の流速で試験して、流速の変化に対するその応答を確認した。
【0067】
微生物学的妨害能力が強化されている活性炭ブロックフィルターを以下のとおり調製した。Calgon Carbon Companyから入手した、二十(20)ポンドの12×40メッシュの酸洗浄した瀝青炭ベースの活性炭、Grade TOG−NDSを1% MERQUAT(登録商標)100を含む脱イオン水の溶液と穏やかに混合して、炭素粒子を徹底的にコーティングして、MERQUAT(登録商標)100が炭素粒子の少なくとも一部に吸着されていたことを確認した。その後に、硝酸銀の溶液である35gの結晶性硝酸銀を含む1.0Lの脱イオン水をMERQUAT(登録商標)処理した炭素に加えて、塩化銀コロイドの形態で、炭素粒子の少なくとも一部の表面上に銀の沈殿をさせた。この硝酸銀溶液で0.25重量%の銀が得られる。処理した炭素粒子を、炭素粒子中に存在する湿度が5%未満になるまで135℃で乾燥した。乾燥時間は、約3〜5時間で変化した。乾燥した炭素は、約14重量%が325メッシュサイズでピックアップされる、80×325メッシュにダブル−ロール・グラインダー中で粉砕して、低密度ポリエチレン結合剤物質である、約17重量%のMICROTHENE(登録商標)FN510と混合した。この混合物を、米国特許第5,019,311号に記載されるような適切な熱、圧力および温度条件下で押し出した。種々のサイズの得られた炭素ブロックフィルターを、当分野で周知のとおり、ホットメルト樹脂を用いて適切なエンドキャップを加えることによって水フィルターシステムを構築するために用いた。
【0068】
元の清浄なフィルターで測定した流速に比較して流速が25%、50%および75%まで低下した後、微生物学的妨害能力についてフィルターをアッセイした。
【0069】
(実施例1〜3:初期流速に対するフミン酸負荷の効果)
上記の手順に従って作製された、各々が0.60ガロン/分の初期流速を有する、2.6インチ(6.6cm)の外径×1.25インチ(3.2cm)の内径×9.30インチ(23.6cm)の長さの押し出し成形された炭素ブロックフィルターメディアを含むフィルターシステムを、種々の濃度のフミン酸溶液でチャレンジし、その後に微生物学的チャレンジした。フィルターシステムの流速はフミン酸の総量が増えるにつれて低下した。表Iは、フィルターシステムの流速を75%まで低下させるのに必要なフミン酸の総量を示す。
【0070】
【表1】

【0071】
フィルターメディアを漸増する量のフミン酸に曝した場合、流速は許容不能な容積まで一貫して低下する。高分子量の陽イオン性化学物質は、存在するフミン酸または他のポリアニオン性酸と反応して、このフィルターメディアを通る流体の流速を低下する副産物を形成し、最終的に流動を閉止するという仮説が立てられる。
【0072】
フミン酸の存在下でさえ、フィルターメディアでは、フミン酸溶液(2.5mg/LRO/DI水)を用いて調製したMS2、PRD−1およびK.terrigenaの断続的な3つの生物体のカクテルの受容可能な対数減少値が依然として得られた。流出物を、滅菌の250mlエーレンマイヤーフラスコに収集して、希釈して、標準的手順に従ってペトリ皿に入れて、一晩置いた。各々のチャレンジの前後に、フミン酸溶液を各々のフィルターに通した。図1では、MS2でチャレンジした場合、このフィルターメディアでは全ての濃度のフミン酸で約6.3より大きい対数減少が得られた。図2では、PRD−1でチャレンジした場合、約4.5より大きい対数減少値がこのフィルターメディアで得られた。図3では、このフィルターメディアでは、K.terrigenaでチャレンジした場合、約7.4より大きい対数減少値が得られた。
【0073】
(実施例4〜10:微生物学的汚染物質の対数減少値と空塔接触時間との間の直線関係)
押し出し成形された炭素ブロックフィルターメディアを含むフィルターシステムを、上記の手順に従って作製したが、ただし、70gの硝酸銀を用いて、MERQUAT(登録商標)処理した炭素を処理して、0.5重量%の銀を得た。このフィルターを微生物学的妨害能力についてアッセイした。本発明のフィルターメディアの有効性は、以下の表IIに示す。
【0074】
【表2】

【0075】
本発明の活性炭ブロックフィルターメディアによって、B.diminuta、E.coliおよびB.subtilisのようなより大きい生物体の8を上回る対数減少が得られる。実際には、これらの生物体の妨害は、全ての場合に試験プロトコールの感度を上回った。MS2浸透の結果によって、壁の厚みと妨害のレベルとの間には明白な関係がないことが示される。これによって、伝統的な機械的な妨害機構がMS2妨害の原因ではなく、むしろ対数妨害とフィルターの空塔接触時間(EBCT)との間の直接の関係であることが示される。図4は、MS2の対数減少とフィルターのEBCTとの間の実質的に直線の関係を示しており、これによって、拡散性の妨害機構は、約0.9〜約1.1ミクロンの平均流動細孔サイズを有する微生物学的妨害強化フィルターメディアで、このバクテリオファージの有効な減少を達成するために約6秒というEBCTの要件を有することが示される。
【0076】
本発明のフィルターメディアの拡散性の性質によって、対数妨害とフィルターのEBCTとの間の直接の関係が得られる。微生物学的汚染物質の対数減少の値とEBCTとの間の実質的に直線の関係によって、フミン酸の総量がフィルターシステムを通過して流速が低下する場合、微生物学的汚染物質の減少はEBCTの延長に起因して依然として維持されることが示唆される。強固な微生物学的妨害はさらに、微生物学的汚染物質の妨害においてフィルターメディアの有効性を低下させたフミン酸または他のポリアニオン性酸に対して長期に曝露される場合でも達成される。
【0077】
本発明は、特定の好ましい実施形態と組み合わせて詳細に記載してきたが、多くの代替、改変および変形が前述の説明に照らして当業者に明らかであることが明白である。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲および精神におさまる場合は、任意のこのような代替、改変および変形を包含することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のフィルターシステムを通る初期流速の割合に対してMS2大腸菌ファージの対数減少の値をプロットしているグラフである。
【図2】本発明のフィルターシステムを通る初期流速の割合に対してPRD−1の対数減少の値をプロットしているグラフである。
【図3】本発明のフィルターシステムを通る初期流速の割合に対してKlebsiella terrigenaの対数減少の値をプロットしているグラフである。
【図4】本発明のフィルターメディアのMS2バクテリオファージの対数減少の値に対して空塔接触時間をプロットしているグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約2ミクロン未満の平均流動細孔サイズを有する微小孔構造と;
前記微小孔性構造の少なくとも一部に吸着された、中度〜高度の電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有する陽イオン性化学物質を含む微生物学的妨害強化因子であって、前記陽イオン性化学物質が流入物中の過剰のポリアニオン性酸の存在下で副産物を形成し、これによって前記フィルターメディアを通る流量が低下して微生物学的汚染物質の通過が妨げられる、微生物学的妨害強化因子と;
を含む、フィルターメディア。
【請求項2】
前記微小孔性構造が粒子のアレイを含み、前記陽イオン性化学物質が高分子量ポリマーを含む、請求項1に記載のフィルターメディア。
【請求項3】
前記微小孔性構造が約1ミクロン以下の平均流動細孔サイズを有する複数のファイバーを含む、請求項1に記載のフィルターメディア。
【請求項4】
前記陽イオン性化学物質が対イオンを有し、前記対イオンの少なくとも一部が臭化物、ヨウ化物または塩化物を含む、請求項1に記載のフィルターメディア。
【請求項5】
前記微生物学的妨害強化因子が、前記陽イオン性化学物質に隣接する生物学的に活性な金属をさらに含み、前記生物学的に活性な金属が前記陽イオン性化学物質に会合する対イオンの少なくとも一部との沈殿を生じる、請求項1に記載のフィルターメディア。
【請求項6】
前記生物学的に活性な金属が、銀、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、アンチモン、金、アルミニウム、白金、パラジウムまたはそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載のフィルターメディア。
【請求項7】
前記フィルターメディアを通る流体の流速が、流入物に存在するポリアニオン性酸の量に応答して低下する、請求項1に記載のフィルターメディア。
【請求項8】
前記フィルターメディアが微生物学的汚染物質の妨害の強化を保持する、請求項7に記載のフィルターメディア。
【請求項9】
約2ミクロン未満の平均流動細孔サイズを有する微小孔構造と;
前記微小孔性構造の少なくとも一部に吸着された、中度〜高度の電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有する陽イオン性化学物質、ならびに前記陽イオン性化学物質に隣接する生物学的に活性な金属であって、前記生物学的に活性な金属が前記陽イオン性化学物質に会合する対イオンの少なくとも一部との沈殿を生じ、前記陽イオン性化学物質が流入物中の過剰のポリアニオン性酸の存在下で副産物を形成し、これによって前記フィルターメディアを通る流量が低下して微生物学的汚染物質の通過が妨げられる、生物学的に活性な金属を含む微生物学的妨害強化因子と;
を含む、フィルターメディア。
【請求項10】
前記生物学的に活性な金属が銀を含む、請求項9に記載のフィルターメディア。
【請求項11】
前記フィルターメディアを通る流体の流速が、流入物に存在するポリアニオン性酸の量に応答して低下する。請求項9に記載のフィルターメディア。
【請求項12】
前記フィルターメディアが微生物学的汚染物質の妨害の強化を保持する、請求項9に記載のフィルターメディア。
【請求項13】
微生物学的汚染物質およびポリアニオン性酸を含む流体を濾過する方法であって、
約2ミクロン未満の平均流動細孔サイズを有する微小孔性構造を含む内在性の安全特徴を有するフィルターメディアを設ける工程であって、前記微小孔性構造が、前記微小孔性構造の少なくとも一部に吸着された、中度〜高度の電荷密度および約5000ダルトンより大きい分子量を有する陽イオン性化学物質、ならびに前記微小孔性構造の少なくとも一部上の陽イオン性化学物質に隣接した生物学的に活性な金属を含む微生物学的妨害強化因子で処理される工程と;
微生物学的汚染物質およびポリアニオン性酸を含む流体を、前記フィルターメディアを通過させる工程と;
流出物中の微生物学的汚染物質の約4を上回る対数減少を得る工程と;を包含し、
前記フィルターメディアを通じた流体の流速が、前記陽イオン性化学物質とのポリアニオン性酸の反応の結果として低下し、これによって微生物学的汚染物質の妨害の強化を維持したままで微生物学的汚染物質の通過が妨げられる、方法。
【請求項14】
前記フィルターメディアを設ける工程において、前記陽イオン性化学物質が、約400,000ダルトンの分子量を有するジアリルジメチルアンモニウムハライドのホモポリマーを含み、前記生物学的に活性な金属が、銀、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、アンチモン、金、アルミニウム、白金、パラジウムまたはそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
濾過されるべき流体を保持するための第一のリザーバと;
前記第一のリザーバと流体連絡されたフィルターメディアであって、前記フィルターメディアが約1ミクロン未満の平均流動細孔サイズを有する微小孔性構造を含み、前記フィルターメディアが前記フィルターメディアの平均流動細孔サイズよりも小さい微生物学的汚染物質の少なくとも約4の対数減少を得るように処理されており、前記フィルターメディアを通る流体の流速が前記流体に存在するポリアニオン性酸の量に応答して低下する、フィルターメディアと;
濾過された流体を収集するための前記フィルターメディアと流体連絡された第二のリザーバと;
を含む、流体を処理、貯蔵および分配するための重力流動濾過システム。
【請求項16】
前記フィルターメディアが微生物学的汚染物質の妨害の強化を保持する、請求項15に記載の重力流動濾過システム。
【請求項17】
濾過された流体を収集するためのリザーバと;
前記リザーバと流体連絡されたフィルターメディアであって、前記フィルターメディアが約2ミクロン未満の平均流動細孔サイズを有する微小孔性構造を備え、前記フィルターメディアが前記フィルターメディアの平均流動細孔サイズよりも小さい微生物学的汚染物質の少なくとも約4の対数減少を得るように処理されており、前記フィルターメディアを通る流体の流速が前記流体に存在するポリアニオン性酸の量に応答して低下する、フィルターメディアと;
を含む、流体を処理、および分配するための加圧濾過システム。
【請求項18】
前記フィルターメディアが微生物学的汚染物質の妨害の強化を保持する、請求項17に記載の加圧濾過システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−524500(P2007−524500A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509694(P2006−509694)
【出願日】平成16年4月3日(2004.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/010401
【国際公開番号】WO2004/092076
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(505348304)コスロウ テクノロジーズ コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】