説明

安全なEV用普通充電スタンド

【課題】経済性を追及すると同時に、利用者の電気的な安全を備えた充電スタンドを提供する。
【解決手段】コンセントタイプの充電スタンドにおいて、コンセントへの電気出力をオン、オフする電磁開閉器を設け、常時は電磁開閉器をオンの状態にしておくが、利用者が充電用ケーブルをコンセントにつなぐ、あるいは外す際に、前もって一時停止ボタンを押すことにより、電源とコンセント間の接続を一時的にオフできるようにした。このため利用者は、ボタンを押すだけの簡単な操作だけで無電圧でコンセントへの接続ができ安全であるほか、一定時間後に自動的に充電が開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を動力とする電気自動車(EVおよびPHV)の充電スタンドに関する。

【背景技術】
【0002】
従来の自動車は、主に化石燃料を使った内燃機関を動力源としている。近年の中国や、開発途上国におけるモータリゼーションの急速な進行や、経済の発展に伴い、エネルギーの消費は急増し、炭酸ガスの増加など地球環境の悪化が大きな社会課題になっているほか、化石燃料の枯渇が現実味を帯び、内燃機関を動力とする従来型の自動車の将来が危惧される時代となってきた。一方2次電池の技術開発が進み、化石燃料の使用を減らすハイブリッド自動車や電気自動車が主役になる時代がやってきた。従来のガソリン等を燃料とした内燃機関を動力とする自動車は、各所に設置されたガソリンスタンドなどで短時間に燃料の補給が可能であるが、電気自動車は、ガソリン車がガソリンスタンドで簡単に燃料を補給するように短時間で充電することができない。したがって、充電に時間がかかる電気自動車の充電場所としては、比較的長時間車を止めておく駐車場がもっとも適しており、駐車場に安全な充電スタンドを設置することは、従来のガソリンスタンドに変わるインフラとして大きな意義がある。特に、公共の駐車場や事業所の駐車場では、誰でもが使いやすく、設置費用が安価でかつ安全な充電装置が求められる。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2009-242422
【特許文献2】特願2009-138062
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.meti.go.jp/policy/automobile/evphv/what/charge/index.html
【非特許文献2】http://www.e-cha.biz/index.html
【非特許文献3】http://www.kawamura.co.jp/products/evcompo/index.php
【0005】
200Vや100Vで充電する普通充電スタンドについては、すでに多くの製品が発表されている。これらの中には、非特許文献1に示されているように単に100Vや200Vのコンセントだけを備えた最も簡単な充電スタンドでEV充電用のプラグをコンセントに差し込むとすぐ充電ができるタイプ、非特許文献2にあるようにEVと充電スタンド間をケーブルで接続したあと充電開始ボタン(スィッチ)を押して充電を始めるタイプ、あるいは夜間の安価な電力で充電を始められるようにタイマースィッチの動作で充電を始めるタイプ、特願2009-242422や非特許文献3にあるように、キーを持った人だけが充電できるキー操作タイプ、特願2009-138062にあるように利用者をカードで認識した後給電するタイプなどがある。しかし、公共の充電スタンドでは、複雑で多機能なサービスを提供する高価で複雑な操作の充電スタンドではなく、安価で、安全なシンプルな充電スタンドが望まれる。このような充電スタンドの方が、市中に多数の充電スタンドを設置するという国の政策にマッチする。

【0006】
すなわち、充電スタンドは極力安価であること、しかし安価であっても利用者の安全を確保できるものでなければならない。然るに安価にするためにコンセントだけの充電スタンドを、コインパーキング場、事業所や商業施設の駐車場、公共の駐車場などに設置した場合、コンセントには常時電圧が印加されているので、充電スタンドを利用する際には荷電状態にある電源とEV充電用のケーブルとコンセントを直接つなぐことになるため、雨天時などに漏電や感電の危険があり、安全とは言えない。

【0007】
一方、無電圧のコンセントに充電用のプラグを差し込んでから充電開始ボタンを押して充電を開始し、充電終了時に停止ボタンを押す方式の充電スタンドでは、安全ではあるが充電開始には人手によるボタンスィッチの操作が必要であるので、ボタンの押し間違いや押し忘れで充電ミスをする場合や、停止ボタンを押し忘れたり、充電開始ボタンと間違えたりして荷電状態のコンセントと充電ケーブルを着脱する場合が考えられるなど安全性にはやや問題が残っていること、複数の操作ボタンスィッチを設ける必要があるなどコスト高になるなどの問題がある。

【0008】
さらに、キー操作や認証カードで充電操作を行う充電スタンドでは、充電スタンドが高価になる欠点があるほか、キーの紛失や故障による使用不能なケースが考えられほか、これらを持たない利用者は充電ができないなどの利便性に問題がある。


【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
EV充電用のスタンドは、EVと充電スタンドのコンセント間を充電用ケーブルで電気的に接続することにより充電を開始するが、充電用ケーブルのプラグを充電スタンドのコンセントに接続する際にコンセントに電気が来ていると、電気火花が発生し接続プラグを損傷する心配や、降雨時には感電の心配がある。また、充電後充電スタンドとEVとの接続を外す場合、すなわち充電用プラグをコンセントから抜くときにも、接続時と同様な問題がある。本発明の目的は、公共用で誰もがボタンスィッチを押すなどの一時停止装置の簡単な操作で、一時的にある時間だけコンセントと電源の接続を切断し、EVと充電スタンドとの接続や切り離しを無電圧のもとで行うことができような安全な充電スタンドを提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0010】
安全で使い易い充電スタンドを最小のコストで製造するために、充電スタンドは電磁開閉器、一時停止ボタンスィッチ、タイマーリレー、給電状況を表示する表示灯などの手段、およびコンセントという最小のパーツで構成し、コンセントへの給電は常時行われているが、コンセントと充電ケーブルをプラグで接続する際に、一時停止ボタンを押すことにより一定の時間(タイマーリレーで設定する時間)だけ、コンセントへの給電を絶って、プラグとコンセントの接続を安全に行えるようにするものでる。

【発明の効果】
【0011】
公共の場においた電気を動力として利用する電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)用のコンセントタイプの普通充電スタンドにおいて、充電スタンドのコンセントにケーブルを接続する直前に一時停止ボタンを押すだけでコンセントへの給電が一時的に一定の時間停止するので、この間に利用者は充電用ケーブルを安全に充電用コンセントとに接続し、自動的に充電を開始することができる。

【0012】
また、本発明の充電スタンドでは、充電開始や、充電停止などの充電操作が不要なので、充電開始操作の忘れや、充電開始と停止操作の間違いで充電に失敗する恐れや、あるいは他人による充電停止ボタンの操作で充電が途中でストップしてしまう恐れもない。さらに、利用者を特定する認証カードやキーなどの所持の必要がないので、誰でも充電スタンドを使うことができる。
【0013】
さらに、本発明の充電スタンドは、複雑な装置を装備しないので、充電スタンドは極めて安価に製造でき、将来市中に数多く設置するのに最適な充電スタンドを提供できる。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】は、本発明の充電スタンドの概要を示す図である。
【図2】は、充電スタンドの操作面を示す図である。
【図3】は、本発明の電気回路を示す図である。
【図4】は、本発明の充電スタンド内の実態配線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の経済的で安全性が高い一つのスタンドで2台のEVを充電できる充電スタンドの電気回路の概要を示すものである。100Vまたは200Vの電源1から供給される電気は、分電盤内の主スィッチ3から漏電スィッチ4,6を経て二つに分かれ、配線5,7により支柱11に支えられた充電スタンドに入り、電磁開閉器9,12を経てコンセント10,13から、EVの充電用ケーブルへ出力される。電磁開閉器9,12は、常時オンにしてあるので、コンセント10,13には常時100Vまたは200Vの電気が来ている。したがって、EV充電用のケーブルのプラグをコンセントにつなげば充電できる状態になるのであるが、充電スタンドを屋外に設置した場合に雨天でプラグが濡れていると接続作業の時に感電の恐れや電気火花が出る恐れがある。本発明では、このような危険を避けるため、プラグをコンセントにつなぐ直前に、給電を一時停止する一時停止装置を備えた。

【0016】
図2は、本充電スタンド8の前面操作部を示したもので、15,17は表示灯兼用の一時停止ボタンスィッチ、16,18はEV充電用のケーブルと接続する耐候性のコンセント口を示す。表示灯兼用の一時停止ボタン15,17は、接続用のプラグを片手で持ったままでも押せるようにコンセントの近傍に配置される。表示灯兼用の一時停止ボタン15,17を押すと、充電スタンドの内部に設置したタイマーリレーが始動する。

【0017】
図3は、本充電スタンド内の図1の2系統の中の5,9,10の系統についての内部回路図を示す。7,12,13の系統についても回路は同じである。受電盤のスィッチ3,4が閉じている通常の状態では、A、B間には交流100Vまたは200Vが図1に示した配線5により常時供給されている。A,B間にはタイマーリレー(TRL)19が表示灯兼用の一時停止ボタンスィッチ(B.Sw)15を経由して接続されている。当該タイマーリレー(TRL)19は、表示灯兼用の一時停止ボタンスィッチ15が押されて電圧が加わると、タイマーリレー(TRL)19のb接点21が開き、a接点20が閉じ、その後あらかじめ設定する設定する短い時間を経過すると最初の状態に戻るように動作する。表示灯兼用の一時停止ボタンスィッチ(B.Sw)15は瞬間的に押しても、タイマーリレー19のa接点20が閉じるため電圧が継続してタイマーリレーに加わり続ける。

【0018】
一方、図1の電磁開閉器9の励磁コイル(MCx)22は、タイマーリレーのb接点21により、表示灯兼用の一時停止ボタンスィッチ15が押される前は電圧が加わっているので、電磁開閉器(MC)24は閉じており、コンセント(CON.)10には電圧が供給されている。

【0019】
しかし、表示灯兼用の一時停止ボタンスィッチ(B.Sw)15が押されると、タイマーリレー(TRL)19のb接点が開くので、電磁開閉器(MC)24の励磁コイル(MCx)22への電圧供給は遮断されて電磁開閉器(MC)24(図1の9と同じ)はオフになり、コンセント10は無電圧の状態になる。一時停止時間は、タイマーリレー19の時間設定で任意に設定できる。したがって電磁開閉器24がオフしている間に、無電圧のコンセント10と充電プラグをつなぐことができるので、EVに充電する人の感電や電気火花が出るなどの問題は全くなく安全が保証される。

【0020】
電磁開閉器24の励磁コイル(MCx)22と並列に押しボタンスィッチと兼用の表示灯(D)25が接続されている。したがって、この表示灯25は励磁コイル22が励磁されているとき、言い換えればコンセント10に電圧が供給されているときには点灯している。しかし、一旦表示灯兼用の一時停止ボタンスィッチ15が押されると、電磁開閉器24の励磁コイル(MCx)22への電圧印加が遮断され、それと同時に表示灯も消える。利用者は、表示灯25が消えている間に、EV充電用ケーブルをコンセント10につなげばよく安全が保証される。もしケーブル接続まで時間がかかってしまう時も、もう一度一時停止ボタンスィッチ15を押せば、その時点から新たに一定に時間コンセント10への給電が停止する。

【0021】
図4は、充電スタンド内部の実態配線の一回路分を示す。A,Bは図3に示した100Vまたは200Vの電源線である。この電気は、電磁開閉器(MC)24の接点が閉じるとコンセント23に電圧が供給される。28,29は電磁開閉器(MC)24の励磁端子であり、タイマーリレー(TRL)19のb接点21を介し、28,29と接続されている。このため、タイマーリレー(TRL)19が動作していないときは、電磁開閉器(MC)24の励磁コイル22が励磁される。したがってコンセント23には電圧が供給されている。

【0022】
表示灯兼用の一時停止ボタンスィッチ(B.Sw)15が押されるとタイマーリレー(TRL)19の電源端子26,27間に電圧が供給され、これによりタイマーリレー(TRL)19が一定の時間だけ動作する。すなわちb接点が開いて励磁コイル(MCx)への電圧供給がなくなるので、電磁開閉器24はオフになりコンセント23は無電圧になる。表示灯兼用の一時停止ボタンスィッチ15は、一度押すとタイマーリレー(TRL)19のa接点20が閉じるのでa接点20を介して端子26,27には電圧が加わり続けるので、押し続ける必要はない。そしてあらかじめ設定した一定の時間が経過すると、タイマーリレーはもとの状態に復帰する。すなわち、b接点21が閉じ、a接点20が開くので電磁開閉器24の励磁コイル(MCx)22は励磁され、再びコンセントに電力が供給される。一時停止の時間は、コンセントにつなぐ作業時間を考慮して決めればよく、30秒から2分程度が良いと考えられる.

【0023】
以上説明したように、本充電スタンドのコンセントには、充電用ケーブルを接続する間だけ、表示灯兼用の一時停止ボタンにより給電を停止し、コンセントと充電用プラグの接続を安全に行わせるが、そのあとはタイマーリレーの復帰によって自動的に給電が開始されるので、充電開始や停止の操作を行う必要がない。

【実施例2】
【0024】
本発明では、給電中に点灯するボタンスィッチと兼用の表示灯25は、電磁開閉器24の励磁コイル22に並列に接続されているので、コンセントに電気が供給されているときは点灯している。そして表示灯兼用の一時停止ボタンスィッチ15を押してタイマーリレー19が動作すると消灯する。しかし、給電中を示すランプを常時点灯とし、表示灯兼用の一時ボタンスィッチ15を押して、電源供給が止まっている間だけ点灯する表示灯を別に設けてもよい。また、一時停止ボタンと表示灯を兼用するのをやめて、一時停止押しボタンスィッチと表示灯を独立して設けてもよい。電気回路としては、新たな表示灯をタイマーリレーの端子26,27間につなげばよい。

【実施例3】
【0025】
本発明では、受電盤から充電スタンドへは、常時給電されている場合を例にしたが、コインパーキング場に本充電スタンドを設置する場合には、電磁開閉器の励磁と車室への入庫とを連動させ、入庫中にのみ電磁開閉器をオンする方法もあるが、本発明の表示灯兼用の一時停止ボタンとタイマーリレーを追加することにより、コンセンとプラグの接続は無電圧で安全に行うことができる。

【実施例4】
【0026】
押しボタンスィッチと兼用の表示灯は、100Vまたは200Vの給電電力で直接点灯するような回路としたが、別にスィッチグレギュレータを設け、24V等の低圧直流電源を使い、直流で励磁する電磁開閉器と直流で点灯するランプを使ってもよい。

【実施例5】
【0027】
一時停止中を知らせる方法としては、表示ランプの点灯や消灯のような手段ではなくてもよく、タイマーリレーのa接点にブザー回路を接続し、一時停止中はブザーが鳴って安全を音響で伝えることもできる。この場合は、コンセントとプラグの接続だけに集中できるので、ランプとコンセント接続の両方に注意を向ける必要がない利点もある。音響と表示灯を併用することももちろん可能である。



【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、電気を動力とする自動車(電気自動車あるいはプラグインハイブリッド車)に対して、経済的で安全に確実に充電をする設備を提供するものであり、製造業の生産活動を増進するほか、電気自動車に便利で安全な充電システムを提供することから、大いに産業発展に貢献し、CO2削減など環境改善にも貢献できる。

【符号の説明】
【0029】
1電源線 2分電盤 3主スィッチ 4 漏電スィッチ 5 充電スタンドへの配線
6 漏電スィッチ 7充電スタンドへの配線 8 充電スタンド
9 電磁開閉器(MCS) 10 コンセント 11充電スタンドの支柱
12 電磁開閉器 13 コンセント 14 アース
15 表示灯兼用のボタンスィッチ 16 耐候性コンセント口
17 表示灯兼用のボタンスィッチ
18 耐候性コンセント口 19タイマーリレー(TRL)
20 タイマーリレーのa接点 21 タイマーリレーのb接点
22 電磁開閉器(MCS)の励磁コイル 23 保護装置
24 電磁開閉器(MCS) 25 ボタンスィッチ兼用の表示灯
26、27 タイマーリレーの電圧入力端子
28、29 電磁開閉器の励磁コイルの端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
200Vまたは100Vの電力を受電する分電盤から、ブレーカおよび漏電ブレーカを経由し充電スタンドに達する電気配線と、該充電スタンド内で同配線と充電スタンドのコンセント間の電気的接続を制御する電磁開閉器と、当該電磁開閉器を一時的にオフすることができる一時停止装置により構成される電気自動車用の充電スタンド。

【請求項2】
請求項1の充電スタンドにおいて、一時停止装置は、一時停止ボタンスィッチなどの操作により起動し、調整可能な一定時間後に復帰できるようなタイマーリレーなどの時限装置により構成されていることを特徴とする電気自動車用の充電スタンド。

【請求項3】
請求項1の充電スタンドにおいて、一時停止ボタンスィッチは充電用コンセントの近傍に設け、利用者が一時停止ボタンスィッチを押したときコンセントへの給電が一時的に停止する、あるいは停止していることを容易に確認できる表示装置または音声手段を備えた電気自動車用の充電スタンド。

【請求項4】
請求項3の充電スタンドにおいて、コンセントへの給電状況を確認できる表示装置は、電磁開閉器の一次側に電圧が来ていればその電圧で点灯し、一時停止装置の起動後一定の時間だけ電磁開閉器の開閉を制御するタイマーリレー等の動作と連動して消灯するようにした電気自動車用の充電スタンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−85314(P2013−85314A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221456(P2011−221456)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(599164916)日本システムバンク株式会社 (7)
【Fターム(参考)】