説明

安全キャビネット

【課題】
安全キャビネットの作業空間内に、分析器などの装置を組み込み、設置、固定した場合、作業開口部に形成される吸込み気流(流入気流)の風速、気流の状態が、分析器などのす知の設置位置や大きさに影響されない安全キャビネットを提供する。
【解決手段】
安全キャビネットの作業開口部の下方に空気吸込み口を設け、該空気吸込み口から吸い込まれた空気の流路は送風手段に繋がる作業空間の側壁面に設けた流路に連接し、かつ、空気吸込み口を有した空間は鉛直方向に中央部は浅く、両側にいくに従って段々深くなるように構成にした。また、前記作業開口部の下方に設けた空気吸込み口を有した空間の中央付近にファンを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全キャビネットに関し、特に、感染症の研究や医薬品の開発のために分析器、観察器などの装置を安全キャビネット内に組み込み可能な安全キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
安全キャビネットは、作業空間の前面に形成された前面シャッタ下方の作業開口部より安全キャビネット外の空気を吸い込むことで、エアバリアを形成し、安全キャビネットの作業空間と安全キャビネット外の雰囲気を、物理的に遮断している。作業開口部から吸い込まれた空気は、安全キャビネットの内部を通り、安全キャビネットに設置された排気用HEPAフィルタで、塵埃とともに感染物質を除去し、清浄空気として安全キャビネットの装置外に排気される。作業開口部から排気用HEPAフィルタへ空気を誘導する送風手段は、安全キャビネット装置内部に装備している場合と、安全キャビネット装置外に設置されている場合がある。
【0003】
排気用HEPAフィルタの他に、給気用HEPAフィルタを作業空間上部に装備し、送風手段により清浄化した空気を作業空間に供給した場合、作業空間は無菌状態の空気が供給されるため、無菌操作が可能になる。バイオハザード対策用クラスIIキャビネットの場合、排気用HEPAフィルタと給気用HEPAフィルタに空気を流すために圧力を加えるチャンバを共有し、そのチャンバに送風手段を取り付け、空気を供給している場合が多い。
【0004】
以上の構成により安全キャビネットでは、作業空間で無菌操作を行うと同時に、作業開口部のエアバリアと排気用HEPAフィルタにより、作業空間内で取り扱う感染物質が安全キャビネット外に漏れないよう構成している。
【0005】
安全キャビネットの作業空間内で、装置を取り扱う作業に、遠心分離機の蓋を開けるという作業がある。遠心分離機内では感染性のある実験材料を、回転撹拌するので、内部では飛沫(エアロゾル)が多量に発生している状態である。さらに、遠心分離機の蓋を開ける瞬間に、内部の飛沫(エアロゾル)が遠心分離機外に放出される。このように、感染性の有る飛沫(エアロゾル)が放出される可能性があるため、安全キャビネットの作業空間内で遠心分離機の蓋を開けることで、外部への感染物質の拡大を防止している。
【0006】
従来技術による遠心分離機を安全キャビネットに組み込んだ構造を、特許文献1(特開2007−111596号公報)に示す。遠心分離機の回転分離槽を作業空間の下流側(下面)に配置し、実施の形態に記載のように、シャッタ下の通気孔から入った気流は、作業台下面に形成した遠心分離機下方の分離槽を囲うように流れ、リターンダクトに導かれる。
【0007】
この構成により、遠心分離機上方の作業空間の清浄空気を維持し、かつ、シャッタ下の通気孔によるエアバリアで、作業空間と安全キャビネット外部を隔離している。エアバリアのための気流は、作業空間下面に形成した遠心分離機下方を通り、リターンダクトに導かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−111596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記従来技術の遠心分離機を組み込んだ安全キャビネットを特許文献1(特開2007−111596号公報)に示す。
【0010】
作業空間である清浄空間の下面である作業台面に蓋を形成し、その下方に遠心分離機の分離槽を形成している。作業空間から降りてきた気流は、作業空間の通気孔、作業台面と遠心分離機分離槽の間の空間、シャッタ下の通気孔の3箇所から吸い込まれ、リターンダクトに導かれている。シャッタ下の通気孔から吸い込まれた気流は、遠心分離機の分離槽の下方のリターンダクトを通り、送風機に導かれる。この構成により、作業空間の清浄気流である清浄度を維持しつつ、シャッタ下の気流により、作業空間と安全キャビネット外の空間を、物理的に隔離している。
【0011】
従来技術による遠心分離機を組み込んだ安全キャビネットでは、シャッタ下方から吸い込んだ気流が、遠心分離機の下方を通り、リターンダクトに導かれるため、作業台面の遠心分離機位置から変わると、シャッタ下方から吸い込まれる気流の状態が変わる可能性がある。
【0012】
また、遠心分離機の分離槽が大きい容量のものを導入したい場合、シャッタ下方から吸い込まれた気流が流れる空間を確保できない可能性がある。
【0013】
安全キャビネットの場合、日本工業規格JIS K3800 バイオハザード対策用クラスIIキャビネットに記載のように、気流の状態が変わった場合、枯草菌芽胞を使用した物理的隔離性能を再び評価する必要がある。
【0014】
本発明の目的は、作業空間に組み込む装置の位置、大きさに、安全キャビネットの基本性能を決定する気流の状態が影響されない安全キャビネットを提供することにある。
【0015】
また、作業空間に装置を組み込んだ場合、安全キャビネットが大型化する傾向にある。安全キャビネットが大型化した場合、安全キャビネットを設置場所に搬入できない可能性がある。
【0016】
本発明の他の目的は、安全キャビネットに対し設置場所への搬入路が狭くても、搬入可能な安全キャビネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、送風手段により第1の空気清浄手段を通して作業空間に清浄空気を供給する供給系と、前記作業空間前面に形成する前面シャッタと、該前面シャッタ下部の作業空間に連接する作業開口部と、該作業開口部から空気を吸い込み、第2の空気清浄手段を介して安全キャビネット外へ空気を排気する排気系と、前記第1及び第2の空気清浄手段と前記送風手段に連接する圧力チャンバを有する安全キャビネットにおいて、前記作業開口部の下方に空気吸い込み口を設け、該空気吸い込み口から吸い込まれた空気を前記送風手段に送る流路を、前記作業空間の側壁面に設置した流路に連接したことを特徴とする。
【0018】
また、上記の安全キャビネットにおいて、前記作業開口部の下方に設けた空気吸込み口を有した空間は、鉛直方向に中央部は浅く、両側にいくに従って段々と深くなる構成にしたことを特徴とする。
【0019】
また、上記の安全キャビネットにおいて、前記作業開口部の下方に設けた空気吸込み口を有した空間の中央付近にファンを設けたことを特徴とする。
【0020】
安全キャビネットは、送風機、排気用HEPAフィルタ、吸気用HEPAフィルタ及び圧力チャンバを備えたファンケースと、作業空間の左右の測弊に設けた側面循環流路ケースと、前記作業空間の背面壁に設けた背面循環流路ケースと、前記作業開口部の下方に設置した空気を吸い込む吸込みグリルケースと、安全キャビネット本体を支持する脚部ケースとより構成され、各構成ケースには連結面を設け、前記構成ケースを組立てて使用することを特徴とする。
【0021】
さらに、上記の安全キャビネットにおいて、作業空間の壁面に連接するケースに連結部を有し、該連結部は安全キャビネット使用時に負圧となる部分で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安全キャビネットの作業空間内に、分析器や観察器などの装置を組み込み、配置したり固定したりした場合、作業開口部に形成される吸い込み気流(流入気流)の風速、及び気流の状態が装置の位置、大きさに影響されない安全キャビネットを提供できる。
【0023】
また、感染性のある材料が漏れ出ないことが重要な安全キャビネットにおいて、分割状態で納入し、設置場所にて組み立て可能な安全キャビネットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの構造断面図を示す。
【図2】本発明の第1実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの構造断面図及び正面図を示す。
【図3】本発明の第1実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの正面図である。
【図4】本発明の第2実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの構造断面図及び正面図である。
【図5】本発明の第3実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの構造断面図、及び正面図である。
【図6】本発明の第4実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの構造の分解時の断面図を示す。
【図7】本発明の第4実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの組み立て時の構造断面図を示す。
【図8】本発明の第4実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの連結部を示す図である。
【図9】本発明の安全キャビネットの前面下部を示す斜視図である。
【図10】本発明の第5実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの構造断面図及び正面図である。
【図11】本発明の第5実施の形態を示す安全キャビネットの前面下部を示す斜視図である。
【図12】本発明の第6実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの構造断面図及び正面図である。
【図13】本発明の第6実施の形態を示す安全キャビネットの前面下部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の第1実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの構造の側面断面図及び正面断面図である。また、図2は、本発明の第1実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの構造の側面断面図及び正面図である。ここで、図1(a)は図1(b)のA−A断面図を示している。
【0027】
図1及び図2において、1は安全キャビネット、2は作業する作業台面、3は作業空間、4は上下に開閉可能な前面シャッタ、5は送風機、6は前面シャッタ4の下方の作業開口部、7は作業開口部6のキャビネット外から入る流入気流、8は安全キャビネット1の上面に設けられた排気口、9は排気口8より排気される排気空気である。
【0028】
10は感染物質、11は作業空間3の上側に設置された清流板、12aは排気用HEPAフィルタ、12bは吸気用HEPAフィルタ、13は圧力チャンバ29が正圧、14は送風機5が設置されている空間が負圧であることを示している。また、15は作業開口部6の下側の吸い込みグリル、16は吸込みグリル下方流路、17は吸気用HEPAフィルタ12bより吹き出された吹き出し空気、18は安全キャビネット1の脚部、19は作業空間の背面に設置された背面循環流路、20は作業空間の左右に設置された側面循環流路、22は背面循環流路を流れるリターンエア、23は作業空間3の背面吸込み口、24aは分析器や観察器などの装置である。
【0029】
次に安全キャビネットの構成について説明する。
【0030】
図1及び図2において、安全キャビネットの構成は、作業空間3の上面に整流板11を配置し、作業空間3の下面には作業台面2が形成されている。整流板11の上方には給気用HEPAフィルタ12bを配置し、給気用HEPAフィルタ12bは圧力チャンバ29に連接している。圧力チャンバ29には排気用HEPAフィルタ12a、送風機5も連接している。送風機5を運転することにより、圧力チャンバ29内は、正圧13となり、排気用HEPAフィルタ12a、給気用HEPAフィルタ12bを加圧し、各フィルタが塵埃をろ過し、清浄空気を流すことになる。
【0031】
作業空間3の前面には前面シャッタ4を配置し、前面シャッタ4の下方には、作業開口部6を形成し、作業者(図示せず)は、前面シャッタ4より作業空間3の内部をのぞき、作業開口部6から腕を作業空間3内に挿入し、感染物質10などを取り扱い、実験を行う。
【0032】
気流の構成は、前面シャッタ4の作業開口部6の下面に吸い込みグリル15を形成し、吸い込みグリル15から安全キャビネットの外の空気と、作業空間3内の一部の空気を一緒に吸い込み、流入気流7を形成している。吸い込みグリル15から吸い込まれた空気は、吸い込みグリル下方流路16を通り、左右に分かれ、左右の作業空間側面3aに連接している側面循環流路20を通り、送風機5が配置されている負圧14部に導かれる。この流入気流7により、作業空間3内の感染物質10が装置外に出ようとした場合、吸い込みグリル15に吸い込まれ、作業空間3内と安全キャビネット1外を遮断することができる。
【0033】
送風機5に吸い込まれる気流は、外部空気の塵埃と感染物質10を含んでいる。送風機5から吹き出した空気は、圧力チャンバ29に入り、排気用HEPAフィルタ12a、給気用HEPAフィルタ12bを加圧する。作業開口部6から入る空気量と同じ空気量が、排気用HEPAフィルタ12aから排気口8を通り、安全キャビネット1外に排気空気9として排気され、送風機5の総風量の残った空気量が、給気用HEPAフィルタ12bから整流板11を通り、吹き出し空気17として作業空間3に供給される。作業空間3に供給される空気は、給気用HEPAフィルタ12bでろ過されているので、清浄な空気である。作業空間3の空気は、作業開口部6の手前から吸い込みグリル15に吸い込まれ、他は、装置24aの周囲を通り、作業空間3背面の背面吸い込み口23に吸い込まれ、リターンエア22なって背面循環流路19を通り、送風機5に吸い込まれる。
【0034】
以上が安全キャビネット1内の気流の流れである。給気用HEPAフィルタ12bの下流に配置されている整流板11は、作業空間3に供給される吹き出し空気17の風速を均一化する目的で配置されている。
【0035】
作業空間3の最下面には、作業台面2が形成され、作業台面2の下方には、脚部18を形成し、安全キャビネット1の本体を支持している。
【0036】
作業台面2には、装置24aが配置されている。気流の構成で示したように、流入気流7は、装置24aの作業空間3内での位置に影響されず、また、装置24aが、作業空間3内に入る大きさであれば、装置24aの大きさも、流入気流7の風速に無関係である。装置24aが作業上、高さ方向に低い位置にあるのであれば、装置24aと作業台面2の間に、台を置くなどの処置が可能である(図示せず)。
【0037】
図3は、本発明の第1実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの正面図である。
【0038】
従来の安全キャビネット1では、作業開口部6から吸い込まれる流入気流7は、作業台面2の下方を循環流路として吸い込まれるため、作業開口部6の左右方向に、比較的均一な風速分布をしている。これに対し、本発明では、循環流路を作業台面の下方に持たず、側面循環流路20から作業開口部6に対して、左右方向から吸い込まれるため、吸い込みグリル下方流路16の大きさ、深さによっては、流入気流7の風速に、側面循環流路20に近い方が速く、側面循環流路20に遠い方が遅いという分布ができる可能性がある。その風速分布を解消するため、図3では、吸い込みグリル下方流路16に傾斜を持たせている。
【0039】
作業開口部6の中央付近の吸い込みグリル下方流路16には、作業開口部6中央付近の気流しか吸い込まないため、流路内の風量は小25aである。側面循環流路20に近い吸い込みグリル下方流路16には、前記流路真上の吸い込みグリル15から吸い込まれた気流の他に、作業開口部6の中央付近で吸い込まれ、側面循環流路20に流れていく気流も流れている。したがって、吸い込みグリル下方流路16に流れる風量は、作業開口部6の中央付近が最も少なく、両側の側面循環流路20に近づくに従って多くなる(25b)。図3では、その多くなっていく風量に合わせ、吸い込みグリル下方流路16の深さに分布を持たせ、作業開口部6から吸い込まれる力を均一化し、流入気流7風速分布の改善を図っている。すなわち、吸い込みグリル下方流路16で、鉛直方向に中央付近では浅く、両側にいくに従って段々と深くなるような構成にしている。
【0040】
図3では、吸い込みグリル下方流路16の深さに分布を持たせているが、吸い込みグリル下方流路16の深さ、気流が側面循環流路に流れる方法の断面積が大きく、吸い込みグリル下方流路16を流れる風速を遅くすることが可能な場合、分布を持たせたくとも、流入気流7風速分布の改善を図ることができる。
【実施例2】
【0041】
次に分析器などの装置が大型化した場合について説明する。
【0042】
図4は、本発明の第2実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの構造断面図及び正面図である。
【0043】
図4において、気流の流れは、実施例1と同じように、吸い込みグリル15から吸い込まれた気流は、側面循環流路20を通り、送風機5に吸い込まれる。脚部18を廃止し、作業台面2を下方に構成しているが、気流の流れる部分のケース寸法は、実施例1と同一寸法にて製作可能である。
【0044】
この構成により実施例1より大きな大型装置24bを作業空間3内に配置することが可能となる。装置24aと24bでは大きさが異なるが、流入気流7を含む気流構成は全く同じであることから、作業空間3と安全キャビネット1外の気流は遮断され、作業空間3内の感染物質10は外部に漏れ出ることはない。
【0045】
作業台面2は、安全キャビネット1の本体ケース1aの一部として構成しなくとも、安全キャビネット1を置く、床面を利用しても良い。
【実施例3】
【0046】
次に、吸込みグリル下方流路16の別の実施例について説明する。
【0047】
図5は、本発明の第3実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの構造断面図及び正面図である。
【0048】
図5において、気流の構成は、前面シャッタ4の作業開口部6の下面に吸い込みグリル15を形成し、吸い込みグリル15から装置外の空気と、作業空間3内の一部の空気を一緒に吸い込み、流入気流7を形成している。吸い込みグリル15から吸い込まれた空気は、吸い込みグリル下方流路16を通り、作業空間側面3aの片側に連接している側面循環流路20を通り、送風機5が配置されている負圧14部に導かれる。この流入気流7により、作業空間3内の感染物質10が安全キャビネット1外に出ようとした場合、吸い込みグリル15に吸い込まれ、作業空間3内と安全キャビネット1外を遮断することができる。
【0049】
送風機5から吹き出した後の気流は、実施例1と同じ構成であるため説明は省略する。
【0050】
流入気流7が吸い込まれる風速を作業開口部6の左右方向に均一化するため、吸い込みグリル15から吸い込まれる吸引力を、作業開口部6の左右方向に均一化する必要がある。そのため、吸い込みグリル下方流路16の深さを、側面循環流路20に近いほうを深く、側面循環流路20から遠いほう即ち中央付近を浅くし、吸い込みグリル下方流路16の各断面に流れる風量に合わせ、吸い込みグリル下方流路16の深さに傾斜を持たせている。
【0051】
この構成は、安全キャビネット1片側の側面循環流路20のスペースが取れない場合や、図5(c)に示すように、側面循環流路20の反対側に、装置出し入れ口30、装置出し入れ口扉31を設け、大型装置24bを作業空間3の側面から出し入れする場合に有効である。
【0052】
図5において、左側に側壁に僅かの幅を持たせているがこれは側壁である。
【実施例4】
【0053】
次に、安全キャビネットが大型化し、使用する実験室等に搬入できない場合について説明する。
【0054】
図6は、本発明の第4実施の形態を示す分析器などの装置を組み込んだ安全キャビネットの分解時の構造を示す図である。
【0055】
作業空間3内部に配置する分析器などの装置24が大型化した場合、当然、装置24を内部に組み込む安全キャビネット1も大型化する。安全キャビネット1が大型化した場合、使用する実験室に搬入できない可能性があるので、安全キャビネット1を分解可能な構造にすることも有効である。
【0056】
安全キャビネット1をファンケース26、側面循環流路ケース20a、背面循環流路ケース19a、吸い込みグリルケース15a、脚部ケース18aにより構成する。
図6(a)は安全キャビネットの構造の側面断面図で、図6(b)は正面断面図である。
図6(a),(b)において、安全キャビネット1は、ファンケース26、側面循環流路ケース20a,背面循環流路ケース19a、吸込みグリルケース15a、
脚部ケース18aより構成される。そして、各構成要素には、連結面27が構成されている。ファンケース26は、安全キャビネット1で最も重要な送風機5、排気用HEPAフィルタ12a、給気用HEPAフィルタ12b、圧力チャンバ29で構成している。圧力チャンバ29、及び各HEPAフィルタの圧力チャンバ29との連結面は、搬入時などに分割する必要がないため、HEPAフィルタ部分からのリークや、圧力チャンバ29の正圧13部からのリークなどの要因を排除している。
【0057】
図7は、図6において分解した安全キャビネットの各ケースを組立てた構造の断面図を示している。
【0058】
図7において、ファンケース26、側面循環流路ケース20a、背面循環流路ケース19a、吸い込みグリルケース15a、脚部ケース18aの各要素を連結面27で連結する。連結面は、送風機5運転時は、負圧14となる部分で連結している。これは、圧力チャンバ29をファンケース26内に一体で構成したことにより実現可能となっている。
【0059】
連結面を負圧14部で構成することにより、安全キャビネット1運転中は、負圧14部分から感染物質10を含む気流が漏れることはないため、感染物質10の漏洩を防止することが可能となる。
【0060】
次に、本発明の第4実施の形態である安全キャビネットの連結面について説明する。
【0061】
図8(a)は第4実施の形態の安全キャビネットの側面断面図で、図8(b)は安全キャビネットの各ケースの連結面を示す。
【0062】
図8(a)において、上記の通り、ファンケース26、側面循環流路ケース20a、背面循環流路ケース19a、吸い込みグリルケース15a、脚部ケース18aの各要素の連結面をボルト・ナット32で連結する。そして、連結部分が安全キャビネット1の内側になる部分は、側面循環流路ケース20a、背面循環流路ケース19aなどに、カバー28を設け、連結時にはカバー28を外し、連結面27をボルト・ナット32で締結し、その後、カバー28で塞ぐことで連結が可能である。連結面27は負圧部分であるが、連結面27をコーキング材料でコーキングして、密閉性を高めても良い。
【0063】
図9は、安全キャビネット1の前面シャッタ4の下方の吸込みグリルを示す斜視図である。
【0064】
図9において、前面シャッタ4と吸い込みグリル15の作業開口部6を有し、吸い込みグリル15は空気を吸い込みやすいようにメッシュ構造とする。吸い込みグリル15に流入する空気は、安全キャビネットの外部の空気と作業空間3内の空気であり、この吸い込みグリル15で流入気流7が存在するため、作業空間3から安全キャビネットの外部へ流れ出す空気はない。
【0065】
また、吸い込みグリル15に吸い込まれる空気の風量が均一でなく、吸い込みグリル15の中央付近の風量が小さく、両側にいくに従って段々と風量が大きくなる分布を示す。
【0066】
本発明は、吸い込みグリル15に吸い込まれる空気の風量が均一化されるように、吸い込みグリル15の下方の構造を、吸い込みグリル下方流路16で鉛直方向に中央付近を浅くし、両側にいくに従って段々と深くなるように構成する。すなわち、中央部が頂点となり、両側にそれぞれ下がっていく斜面を形成する構成となる。
【0067】
このような構成であれば、図3で説明したように吸い込みグリル下方流路16で中央付近は風量小25aで、両側は風量台25bとなり、流入気流7は均一化される。
吸い込みグリル下方流路16の空気は、安全キャビネット1の作業空間3の両側面に設置された側面循環流路20に連通され、送られる。
【実施例5】
【0068】
次に、本発明の第5実施の形態を図10及び図11に示す。
【0069】
図10及び図11は、本発明の第1実施の形態の図1及び図2と異なる点は、安全キャビネット1の作業開口部6の下方の吸い込みグリル下方流路16の中央付近にファン33を設置したことである。
【0070】
図において、ファン33は、図10(b)に示すように安全キャビネット1の吸い込みグリル下方流路16で中央より少し離れた位置に2個設置している。
【0071】
ファン33は、作業開口部6より流入する流入気流7が少ないときに動作させ、吸い込みグリル15より吸い込む空気の量を多くし、流入気流7を増加させるものである。ファンとしてプロペラファンなどを用いる。
【実施例6】
【0072】
次に、ファンを設置した構成について説明する。
【0073】
図12(a)の安全キャビネット1の構成において、作業空間3の上面には清流板11を配置し、下面には作業台面2を形成している。整流板11の上方には給気用HEPAフィルタ12bを配置し、給気用HEPAフィルタ12bには圧力チャンバに連接している。
圧力チャンバには、排気用HEPAフィルタ12a、送風機5を連接している。送風機5を運転することにより、圧力チャンバ内は、正圧となり、排気用HEPAフィルタ12a,給気用HEPAフィルタ12bを加圧し、それぞれのフィルタが塵埃をろ過し、清浄空気を生成する。作業空間3の前面には、前面シャッタ4を配置し、前面シャッタ4の下方には作業開口部6を形成し、作業者は前面シャッタ4より作業空間4の内部をのぞき、作業開口部6から手を作業空間内に挿入し、感染物質10などを取り扱い、実験を行っている。
【0074】
次に本安全キャビネット1の気流について説明する。
【0075】
気流の構成は、前面シャッタ4の作業開口部6の下面に吸い込みグリル15を形成し、吸い込みグリル15から安全キャビネット1の外の空気と作業空間内の一部の空気を一緒に吸い込み、流入気流7を形成する。
吸い込みグリル15から吸い込まれた空気は、吸い込みグリル下方流路16を通り、左右に分かれ、左右の作業空間側面に連接している側面循環流路20を介して送風機5が配置されている負圧部へ導かれる。
【0076】
流入気流7により作業空間3内の感染物質10が安全キャビネット1外へ出ようとした場合、吸い込みグリル15に吸い込まれ、作業空間3内と安全キャビネット1とを遮断している。
【0077】
送風機5に吸い込まれる気流は、外部空気の塵埃と感染物質10を含んでいる。
送風機5から吹き出された空気は、圧力チャンバに入り、排気用HEPAフィルタ及び吸気用HEPAフィルタを加圧する。作業開口部6から入る空気量と同じ空気量が、排気用HEPAフィルタから排気口8を通り安全キャビネット1外へ排気され、送風機5の総風量の残った空気量が給気用HEPAフィルタから整流板11を通り、吹き出し空気17として作業空間3内に供給される。
作業空間3に供給される空気は、給気用HEPAフィルタ12bでろ過されるため清浄空気である。
作業空間3の空気は、手前より吸い込みグリル15に吸い込まれ、他は分析器などの装置24の周囲を通り、作業空間3の背面吸込み口23に吸い込まれリターンエア22となって背面循環流路19を通り、送風機5に吸い込まれる。
【0078】
以上が安全キャビネット1内の気流の流れの説明である。
【0079】
また、図12(b)において、実施例6は作業開口部6の下方の吸い込みグリル15から吸い込まれる空気は、吸い込みグリル下方流路16を介して作業空間3の側面に設置した側面循環流路20に連接され、送風機5側に送られる。
また、吸い込みグリル5に吸い込まれる空気の風量は、中央付近よりも側面循環流路20が両側にあるため側面循環流路20に近い両サイドの方が大きい。
実施例6では、この吸い込みグリル5から吸い込まれる風量を均一にするため中央付近にファン33を設けている。
【0080】
図13は、安全キャビネット1の前面の吸い込みグリル下方流路16の部分を示す部分斜視図である。
【0081】
図13において、作業開口部6の下方の吸い込みグリル15は空気抵抗の小さいメッシュなどで形成する。また、吸い込んだ空気の空間部である吸い込みグリル下方流路16の両サイドには側面循環流路20に連接する開口部を有している。
さらに、側面循環流路20の中央付近には、吸い込みグリル15から吸込み空気を均一にするためファン33を設置している。このような構成により、均一な風量を吸い込むことができる。
【符号の説明】
【0082】
1‥安全キャビネット 1a‥本体ケース
2‥作業台面 3‥作業空間
3a‥作業空間側面 4‥前面シャッタ
5‥送風機 6‥作業開口部
7‥流入気流 8‥排気口
9‥排気空気 10‥感染物質
11‥整流板 12a‥排気用HEPAフィルタ
12b‥給気用HEPAフィルタ 13‥正圧
14‥負圧 15‥吸い込みグリル
15a‥吸い込みグリルケース
16‥吸い込みグリル下方流路
17‥吹き出し空気 18‥脚部
18a‥脚部ケース 19‥背面循環流路
19a‥背面循環流路ケース 20‥側面循環流路
20a‥側面循環流路ケース 21‥作業者
22‥リターンエア 23‥背面吸い込み口
24a‥装置 24b‥大型装置
25a‥流路内の風量少 25b‥流路内の風量多
26‥ファンケース 27‥連結面
28‥カバー 29‥圧力チャンバ
30‥装置出し入れ口 31‥装置出し入れ口扉
32‥ボルト・ナット 33‥ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風手段により第1の空気清浄手段を通して作業空間に清浄空気を供給する供給系と、
前記作業空間前面に形成する前面シャッタと、
該前面シャッタ下部の作業空間に連接する作業開口部と、
該作業開口部から空気を吸い込み、第2の空気清浄手段を介して安全キャビネット外へ空気を排気する排気系と、
前記第1及び第2の空気清浄手段と前記送風手段に連接する圧力チャンバを有する安全キャビネットにおいて、
前記作業開口部の下方に空気吸い込み口を設け、該空気吸い込み口から吸い込まれた空気を前記送風手段に送る流路を、前記作業空間の側壁面に設置した流路に連接したことを特徴とする安全キャビネット。
【請求項2】
請求項1記載の安全キャビネットにおいて、
前記作業開口部の下方に設けた空気吸込み口を有した空間は、鉛直方向に中央部は浅く、両側にいくに従って段々と深くなる構成にしたことを特徴とする安全キャビネット。
【請求項3】
請求項1記載の安全キャビネットにおいて、
前記作業開口部の下方に設けた空気吸込み口を有した空間の中央付近にファンを設けたことを特徴とする安全キャビネット。
【請求項4】
安全キャビネットは、送風機、排気用HEPAフィルタ、吸気用HEPAフィルタ及び圧力チャンバを備えたファンケースと、作業空間の左右の測弊に設けた側面循環流路ケースと、前記作業空間の背面壁に設けた背面循環流路ケースと、前記作業開口部の下方に設置した空気を吸い込む吸込みグリルケースと、安全キャビネット本体を支持する脚部ケースとより構成され、
各構成ケースには連結面を設け、前記構成ケースを組立てて使用することを特徴とする安全キャビネット。
【請求項5】
請求項4記載の安全キャビネットにおいて、
作業空間の壁面に連接するケースに連結部を有し、
該連結部は安全キャビネット使用時に負圧となる部分で構成されていることを特徴とする安全キャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−85994(P2013−85994A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226864(P2011−226864)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】