説明

安全性の高い移動式のFRP製水力変換装置

【課題】コンパクトな形状で軽量であり、効率良く水流のエネルギーを回転力に変えて、高い変換効率を得ることができ、運転時の安全性を高めることができる水力変換装置を提供する。
【解決手段】本発明のFRP製水力変換装置1は、水路4に配置されたFRP製水力変換装置1であって、1枚以上のFRP製円盤部16と、前記FRP製円盤部16と一体または別体として成形され前記FRP製円盤部16に固定されたFRP製パドル部20と、前記FRP製円盤部16の中心に固定された水車軸18とからなる水車12と、前記水車12が水流の水力により回転運動するように前記水車軸18を軸支するとともに前記水路4中に配置されたFRP製導水装置14と、前記FRP製導水装置14内に設置された増速機19bと、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水路等の比較的水量の少ない水路に設置される安全性に優れた移動式FRP製水力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水力エネルギー変換装置としての水力発電機として、農業用水路や排水路等の水路に取り付けて使用する小型の水力発電装置が知られている。このような従来の水力変換装置に備えられる水車は、直径が2mから5m程度で木製や鉄製のものが一般的である。かかる水車は、対向配置された2枚の円盤の周囲に等間隔に放射状に水受け用の羽根板を配置したものであった。
【0003】
従来の一般的な水力変換装置は木製の場合、腐朽して壊れるおそれがあった。また、鉄製の場合、部品点数が多く、重いので、低流量の場合には水車が回転しないという問題点や、回転時のエネルギー損失が大きいという問題点や装置の製造コストが高額であるという問題点があった。さらに、鉄製の場合、農業用水路に設置すると、農業に使用する肥料により錆び易く、耐久性に劣るという問題点があった。その他、重いが故に、設置に重機を要し、設置や移設に費用がかかるという問題点もあった。
【0004】
これに対して、コンクリート又はFRP(Fiber Reinforced Plastics)の成形品であって、少なくとも中心部から周囲近くまでを円形にされた胴体の外周に凹溝を形成するとともに、凹溝の中に等間隔に水受けの羽を配設してなる河川設置用水車が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−24543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で提案されている水車は、発電機を設置した構造については開示が見られず、発電機やギアなどを備えるためには、その回転力を発電機に伝達する歯車や滑車を剥き出しの状態で取り付けることになる。これら水車の歯車や滑車は回転体であり、人や動物が接触すると危険な問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、コンパクトな形状で軽量であり、効率良く水流のエネルギーを回転力に変えて、高いエネルギー変換効率を得ることができ、運転時の安全性を高めることができる水力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のFRP製水力変換装置は、水路に配置されたFRP製水力変換装置であって、1枚以上のFRP製円盤部と、前記FRP製円盤部と一体または別体として成形され前記FRP製円盤部に固定されたFRP製パドル部と、前記FRP製円盤部の中心に固定された水車軸とからなる水車と、前記水車が水流の水力により回転運動するように前記水車軸を軸支するとともに前記水路中に配置されたFRP製導水装置と、前記FRP製導水装置内に設置された増速機と、を備えたことを特徴とする。
(2)本発明のFRP製水力変換装置は、前記水車を覆うカバーが、前記FRP製導水装置の上に設けられていることが好ましい。
(3)本発明のFRP製水力変換装置は、発電装置が、前記FRP製導水装置に付設されていることが好ましい。
(4)本発明のFRP製水力変換装置は、前記FRP製導水装置が、底壁と側壁からなり、上流側の前記底壁上に堰を備えたことが好ましい。
(5)本発明のFRP製水力変換装置は、前記FRP製導水装置の下流側の幅寸法が、前記FRP製導水装置の上流側の幅寸法より広いことが好ましい。
(6)本発明のFRP製水力変換装置は、前記FRP製パドル部が、前記FRP製円盤部の中心から放射状に前記FRP製円盤部に固定され、前記側壁との間に、及び前記堰との間に隙間を配して設けられていることが好ましい。
(7)本発明のFRP製水力変換装置は、前記FRP製導水装置が、水路を流れる水の上に位置して、前記増速機を設置する収納部を備えたことが好ましい。
(8)本発明のFRP製水力変換装置は、前記収納部が、水流が当たらないように隔壁で仕切られていることが好ましい。
(9)本発明のFRP製水力変換装置は、前記隔壁が導水装置と一体成形されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のFRP製水力変換装置は、円盤部とパドル部と導水装置がFRPからなるので、コンパクトな形状で軽量であり、軽量な円盤部とパドル部による水車が少しの水量で容易に回転するので、効率良く水流のエネルギーを回転力に変えて、高いエネルギー変換効率を得ることができる。さらに、本発明のFRP製水力変換装置は、構造が単純であり、製造コストもかからない。従って、小型水車による発電設備として、広く農業用水路や工業用水路等に設置して利用することができる。
また、本発明のFRP製水力変換装置において導水装置の上にカバーを設けた構成であるならば、人や動物が接触してもFRP製水力変換装置内に配置された水車や増速機の歯車に巻き込まれることが無いため、運転時の安全性を高めることができる。
また、本発明のFRP製水力変換装置において発電装置を付設した構造であるならば、外部に設置された装置との接続のために水路中の位置を限定する必要がなく、自由に設置される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係るFRP製水力変換装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るFRP製水力変換装置の一部を断面にした側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るFRP製水力変換装置を下流側から見た正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るFRP製水力変換装置の一部を断面にして下流側から見た正面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るFRP製水力変換装置の他の例の一部を断面にして下流側から見た正面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るFRP製水力変換装置の設置状態の一部を断面にした平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るFRP製水力変換装置の斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係るFRP製水力変換装置の斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るFRP製水力変換装置の設置状態の平面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るFRP製水力変換装置の斜視図である。
【図11】本発明の実施例に係るFRP製水力変換装置のFRP製導水装置の側面図、下流側から見た正面図、及び平面図である。
【図12】本発明の実施例に係るFRP製水力変換装置の水車の側面図、及び正面図である。
【図13】本発明の実施例に係るFRP製水力変換装置の水車における水車軸周辺の断面図である。
【図14】本発明の実施例に係るFRP製水力変換装置の一部を断面にして下流側から見た正面図である。
【図15】本発明の実施例に係るFRP製水力変換装置の側面図である。
【図16】本発明の実施例に係るFRP製水力変換装置のカバーの斜視図である。
【図17】本発明の実施例に係るFRP製水力変換装置の側面図である。
【図18】本発明の実施例に係るFRP製水力変換装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のFRP製水力変換装置の実施形態について説明する。なお、この実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
本発明のFRP製水力変換装置の第1の実施形態として、図1、図2に示すFRP製水力変換装置を説明する。
図1、図2は、本発明の実施形態に係るFRP製水力変換装置1の斜視図及び一部を断面にした側面図である。図1、2に示すFRP製水力変換装置1は、水2が図中矢印R方向に(図中、左側から右側に)流れる水路4に設置されている。
この実施形態の水路4は、農業用水路や排水路などのように、側壁4A,4Bと底壁4Cにより囲まれて構成された水路である。
FRP製水力変換装置1は、対向配置された2枚のFRP製円盤部16と、前記FRP製円盤部16と一体または別体として成形され前記FRP製円盤部16に固定されたFRP製パドル部20と、前記FRP製円盤部16の中心に固定された水車軸18とからなる水車12と、この水車12が水流の水力により回転運動するように前記水車軸18を軸支するとともに前記水路4中に配置されたFRP製導水装置14と、前記FRP製導水装置14に付設された発電装置19と、前記FRP製導水装置14の上に設けられて前記水車12を覆うカバー11と、を備えている。
【0013】
水車12のFRP製円盤部16とFRP製パドル部20は、FRPにより成形されたもので、FRP製円盤部16,16の中心に金属製の水車軸18が固定され、FRP製円盤部16,16の周囲に等間隔で複数のFRP製パドル部20が設けられている。図2に示すように、本実施形態においては、複数のFRP製パドル部20は、別体として成形され、ボルト23によりFRP製円盤部16に取り付けられているが、FRP製パドル部20は、FRP製円盤部16と一体として成形されてもよい。FRP製パドル部20の枚数は、適宜設定されるが、10枚以上設けられていることが好ましい。
【0014】
図3は、本発明の第1実施形態に係るFRP製水力変換装置1を下流側から見た正面図である。
図3に示すように、FRP製導水装置14は、長方形状の底壁14aとその長辺側から立設された側壁14bからなり、縦断面がコの字形に成形されている。FRP製導水装置14の底壁14aは、水路4の底壁に配置され、一対の側壁14bは、水路4の底壁に対して垂直に配置され、側壁14bの上部側は水路4の上に出されている。第1実施形態として、一対の側壁14bは、互いに平行であって、水流に対し平行に配置される。側壁14bの上部には、軸受け17が設けられており、水車軸18が回転自在に軸支されている。水車軸18は、側壁14bにおいて、水車12が水流により回転運動するような位置に、つまり側壁14bの下部側に位置するFRP製パドル部20が水流に当たるような位置に軸支される必要がある。
また、FRP製導水装置14の底壁14aと側壁14bはいずれもFRPにより成形されたものである。
【0015】
図2に示すように、FRP製導水装置14の底壁14aには、堰22が設けられている。堰22は、水車12より若干上流側に位置し、FRP製パドル部20の先端の回転軌跡近傍に位置した斜面22aと、その上流側に設けられ、より傾斜の急な斜面22bとにより非対称な山形に形成されている。これにより、少ない水流の場合でも落差を得られ、水車12を回転させる事が出来る。
堰22の高さは任意であり、水路や流量によっては設けなくともよい。
【0016】
また、本実施形態において、FRP製パドル部20は、図2に示すようにFRP製円盤部16の中心から放射状に設けられている。さらに図3に示すように、FRP製パドル部20は、側壁14bとの間に隙間Dを配して設けられている。また、図2に示すように、FRP製パドル部20は、堰22との間に隙間Dを配して設けられている。
【0017】
図2に示すように、FRP製導水装置14は、増速機19bを内部に備えている。発電装置19は、水車12の回転力を効率的に伝達できる回転力伝達機構としての増速機19bを介在させて発電できるようにしたものである。本実施形態においては、発電装置19と増速機19bは、別体として存在しているが、一体型のものでもよい。
前記回転力伝達機構は、水車12の回転力を円滑に発電装置19に伝達できる機構であれば特に限定されないが、歯数の異なる複数の歯車とチェーンを組み合わせた機構が好ましい。
【0018】
図2に示すように、FRP製水力変換装置1は、前記水車12を覆うカバー11を前記FRP製導水装置14の上に備えている。カバー11の材質としては、強度を満足するものであれば特に限定されず、熱可塑性プラスチックの板を溶着したものでもよく、木型を用いた強化プラスチック成形体でもよい。
この実施形態においては、カバー11を2式製作し、カバー同士の開口部を合わせ、合わせ部の上部に丁番26を2個取り付けている。これにより、点検時には、一方のカバー11の取付ボルトを外し、丁番26を利用して、一方のカバー11を上方に開き、他方のカバー11の上に置くことができる。
【0019】
図4、図5は、本発明の実施形態に係るFRP製水力変換装置1の一部を断面として下流側から見た正断面図である。カバー11については、図示を省略している。
図2に示すように、FRP製導水装置14は、発電機19aを設置する発電機台19dを水路4の上方に備えており、発電装置19は、浸水しない位置に配設されている。また、図4に示すように、導水装置14の一方の側壁14bに、側壁14bの外面から外側に突出した外壁14cが形成され、側壁14bの上端を延長するように隔壁25Aが形成されている。25Aと14cの間には増速機19bの収納部14dが形成されている。増速機19bを設置する収納部14dは、水路を流れる水の上に位置し、FRP製導水装置14の内側から隔壁25Aで仕切られており、水路4からの水流が増速機19b内に入らないようになっている。かかる隔壁25Aは、図4に示すように、FRP製導水装置14と別体に成形され、ボルト24を介してFRP製導水装置14の側壁14bに固定された構成でも、図5に示すように、導水装置14の側壁14bと一体の隔壁25Bであってもよい。
【0020】
図6は、本実施形態の水力変換装置1の設置状態の平面図である。本実施形態においては、FRP製導水装置14内に発電装置19を有するため、水力変換装置1を別途外部の発電装置につなぐ必要が無い。そのため、水路4の幅方向の任意の位置に水力変換装置1を設置することができ、設置場所の制約がない。
【0021】
また、本実施形態の水力変換装置1は、FRP製導水装置14内にバッテリーを設置する空間を有していてもよい。水力変換装置1をよりコンパクトにするために、発電機19aを設置する箱体にバッテリー収納部を設け、該バッテリー収納部にバッテリーを設置してもよい。
【0022】
図7、図8は、本発明の実施形態に係るFRP製水力変換装置1の斜視図である。
本実施形態の水力変換装置1は、FRP製導水装置14の上にカバー11を有する。
カバー11の形状としては、図7に示すような角型(カバー91)でもよく、図8で示すような丸型(カバー51)でもよい。風圧による水力変換装置1の転倒防止対策として、カバー11が角型の場合には、図7に示すようにカバーの正面、背面、及び側面がメッシュの窓構造を有していることが好ましく、図8に示すようにカバー51が丸型の場合には少なくとも側面がメッシュの窓構造を有していることが好ましい。水路4と平行に吹く風による風圧に対しては、カバー51の丸型構造により回避できる。更に、風圧による水力変換装置1の転倒防止対策として、水路4の両側の土壌Gに、ワイヤー27を金具28を用いて固定し、該ワイヤー27を導水装置14の側壁14bの一部に固定することにより、ワイヤー27を介して水力変換装置1を固定してもよい。
【0023】
次に、本発明のFRP製水力変換装置の第2実施形態として、図9に示すFRP製水力変換装置71を説明する。図9は、本実施形態の水力変換装置71の設置状態の平面図である。
本実施形態において、FRP製導水装置34の下流側の幅寸法は、前記FRP製導水装置34の上流側の幅寸法より広くなるように形成されている。即ち、導水装置14の側壁14bと、水車12の側面との隙間において、上流側の隙間Dよりも、下流側の隙間Dを広くしておくことで、Dに落ち葉やごみなどの異物を詰まりにくくすることができる。
また、下流側の水位が上流側より低くなり、パドル部20が上方へ回転するときの下流の水を持ち上げる抵抗を低減できる。
他の構成については第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0024】
次に、本発明のFRP製水力変換装置の第3実施形態として、図10に示すFRP製水力変換装置101を説明する。図10は、本実施形態の水力変換装置101の斜視図である。
本実施形態において、水車102は、FRPにより、FRP製円盤部106とFRP製パドル部120が一体に成形されたものである。パドル部120は、水流を捕らえやすくするためにL字状に形成されている。更に水流を捕らえやすくする工夫として、FRP製導水装置104の上流側の開口部104aに、2枚の集水板110が上流側に向かって開くようにハの字状に取り付けられている。
また、FRP製導水装置104に箱体の発電機台139dが設置されている。この箱体の傾斜した天井部には、発電機19aが取り付けられており、下部にはバッテリー90を収納するバッテリー収納部が設けられている。発電機19aは、回転力を取出すための歯車42、増速機の2枚の歯車41、発電機19aの歯車43を介して水車軸18の回転がチェーン58を介し、伝達され発電する。
更に、FRP製導水装置104の上部には、丸型のカバー191が設置されている。このカバー191は、2式のカバー側部191aとカバー中央部191bからなる。2式のカバー側部191aの開口部は、カバー中央部191bの開口部と合わされ、各々の合わせ部の上部に丁番126が2個取り付けられている。これにより点検時には、2つのカバー側部191aを同時に開けることができる。転倒防止対策として、2式の丸型のカバー側部191aは、側面にメッシュ窓191cを有している。
他の構成については第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
この第3実施形態のFRP製水力変換装置101においても、第1実施形態のFRP製水力変換装置1と同等の作用効果を得ることができる。
【0025】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
[FRP製導水装置の製造]
図11〜図16に本発明のFRP製水力変換装置71の一実施例を示す。図11(a)はFRP製導水装置34の側面図、図11(b)はFRP製導水装置34を下流側から見た正面図、図11(c)はFRP製導水装置34の平面図を示す。図11に示す如く、全体がプラスチック成形体からなり、歯車取り付け部39c(収納部14d)を側部に有するFRP製導水装置34を凸型の木型を用い次の積層順で成形した。
図11(c)に示す如く、水流の入り口34aを左側とし、その幅W400mm、水流の出口34bを右側とし、その幅W420mm、高さH800mm、入り口端から出口端までの長さL1700mmの木型に離型ワックス(米国マグアイアーズ社製)を塗布した。
次いで、飽和ポリエステル樹脂製ゲルコート(商品名:NC−15、東罐マテリアル 株式会社製)にメチルエチルケトンパーオキサイドを主成分とする硬化剤(商品名:パーメックN、日油株式会社製)を1重量%配合し、スプレーガンにより、木型に厚さ0.3mmに塗布した。
次いで、この木型を60℃の恒温槽にいれて60分加熱し、ゲルコート樹脂を硬化させた。恒温槽から木型を取り出し、常温に戻した後、ガラス繊維からなるチョップドストランドマット(商品名:MC−450A、日東紡株式会社製)を木型の形状に切断し、木型に適用した。
次いで、不飽和ポリエステル樹脂(商品名:サンドーマ2188、ディーエイチマテリアル株式会社製)に硬化剤(商品名:パーメックN、日油株式会社製)を1重量%配合し、木型に適用したチョップドストランドマットに塗布し、ハンドローラーで気泡を除去し、密着させた。チョップドストランドマットと不飽和ポリエステル樹脂の比率は、重量比で1:2とした。
次いで、ロービングクロス(商品名:WR 570 C−100、日東紡株式会社製)を先のチョップドストランドマットの上に適用し、前記硬化剤(商品名:パーメックN、日油株式会社製)を1重量%配合した前記不飽和ポリエステル樹脂(商品名:サンドーマ2188、ディーエイチマテリアル株式会社製)を塗布し、ハンドローラーで気泡を除去し、密着させた。このときのロービングクロスと不飽和ポリエステル樹脂の比率は、重量比で1:1とした。
次いで、チョップドストランドマット3層と、ロービングクロス1層を同様に積層した。その後、60℃の恒温槽に収容して60分加熱し、樹脂を硬化させた。恒温槽から木型を取り出し、常温に戻した後、木型から積層した成形体を剥離し、FRP製導水装置34を得た。FRP製導水装置34の肉厚は5mmだった。
【0027】
[水車の製造]
図12に本発明のFRP製水力変換装置71の一実施例の一部である水車12を示す。図12(a)は水車12の側面図、図12(b)は水車12の正面図を示す。図12に示すようなプラスチック成形体からなる水車12を、平板の木型、及び平板とその平板の左右から立ち下がり面のある凸型の木型を用い、部品を成形する木型に離型ワックス(米国マグアイアーズ社製)を塗布した。
次いで、飽和ポリエステル樹脂製ゲルコート(商品名:NC−15、東罐マテリアル 株式会社製)にメチルエチルケトンパーオキサイドを主成分とする硬化剤(商品名:パーメックN、日油株式会社製)を1重量%配合し、スプレーガンにより、木型に厚さ0.3mmに塗布した。
次いで、この木型を60℃の恒温槽にいれて60分加熱し、ゲルコート樹脂を硬化させた。恒温槽から木型を取り出し、常温に戻した後、ガラス繊維からなるチョップドストランドマット(商品名:MC−450A、日東紡株式会社製)を木型の形状に切断し、木型に適用した。
次いで、不飽和ポリエステル樹脂(商品名:サンドーマ2188、ディーエイチマテリアル株式会社製)に硬化剤(商品名:パーメックN、日油株式会社製)を1重量%配合し、木型に適用したチョップドストランドマットに塗布し、ハンドローラーで気泡を除去し、密着させた。チョップドストランドマットと不飽和ポリエステル樹脂の比率は、重量比で1:2とした。
次いで、ロービングクロス(商品名:WR 570 C−100、日東紡株式会社製)を先のチョップドストランドマットの上に適用し、前記硬化剤(商品名:パーメックN、日油株式会社製)を1重量%配合した前記不飽和ポリエステル樹脂(商品名:サンドーマ2188、ディーエイチマテリアル株式会社製)を塗布し、ハンドローラーで気泡を除去し、密着させた。このときのロービングクロスと不飽和ポリエステル樹脂の比率は、重量比で1:1とした。
次いで、チョップドストランドマット3層と、ロービングクロス1層を同様に積層した。その後、60℃の恒温槽にいれて60分加熱し、樹脂を硬化させた。恒温槽から木型を取り出し、常温に戻した後、木型から積層した成形体を剥離し、1300mmx1300mmの板を得た。この板を2枚作製し、直径1200mmの円盤状にジグゾーにより切断し、FRP製円盤部16を得た。
次いで、平板とその平板の左右から立ち下がり面のある凸型の木型に離型ワックス(米国マグアイアーズ社製)を塗布した。
次いで、飽和ポリエステル樹脂製ゲルコート(商品名:NC−15、東罐マテリアル 株式会社製)にメチルエチルケトンパーオキサイドを主成分とする硬化剤(商品名:パーメックN、日油株式会社製)を1重量%配合し、スプレーガンにより、木型に厚さ0.3mmに塗布した。
次いで、この木型を60℃の恒温槽にいれて60分加熱し、ゲルコート樹脂を硬化させた。恒温槽から木型を取り出し、常温に戻した後、ガラス繊維からなるチョップドストランドマット(商品名:MC−450A、日東紡株式会社製)を木型の形状に切断し、木型に適用した。
次いで、不飽和ポリエステル樹脂(商品名:サンドーマ2188、ディーエイチマテリアル株式会社製)に硬化剤(商品名:パーメックN、日油株式会社製)を1重量%配合し、木型に適用したチョップドストランドマットに塗布し、ハンドローラーで気泡を除去し、密着させた。チョップドストランドマットと不飽和ポリエステル樹脂の比率は、重量比で1:2とした。
次いで、ロービングクロス(商品名:WR 570 C−100、日東紡株式会社製)を先のチョップドストランドマットの上に適用し、前記硬化剤(商品名:パーメックN、日油株式会社製)を1重量%配合した前記不飽和ポリエステル樹脂(商品名:サンドーマ2188、ディーエイチマテリアル株式会社製)を塗布し、ハンドローラーで気泡を除去し、密着させた。このときのロービングクロスと不飽和ポリエステル樹脂の比率は、重量比で1:1とした。
次いで、チョップドストランドマット3層と、ロービングクロス1層を同様に積層した。その後、60℃の恒温槽にいれて60分加熱し、樹脂を硬化させた。恒温槽から木型を取り出し、常温に戻した後、木型から積層した成形体を剥離し、FRP製パドル部20を得た。同様の方法でFRP製パドル部20を11枚製造した、2枚のFRP製円盤部の間にこの11枚のFRP製パドル部20を等角度で配置し、ボルト23、座金、ばね座金、ナット(図示省略)で固定した。
次いで、図13に示すように、FRP製円盤部16の中心点に直径25mmの孔を設け、その孔の内面側にリング状の軸受け部材36を仮置きし、ボルト37を介してFRP製円盤部16に固定した。後述するように、水車軸18をFRP製円盤部16の中心点に設けた孔に通した後、ボルト35を介してリング状の軸受け部材36に固定した。
【0028】
[発電装置の製造]
図14に示すように、FRP製導水装置34の歯車取り付け部39c(収納部14d)に、同様の方法で成形した仕切り板31(隔壁25A)を当て、水が流れる区域と分離した。次いで、図15に示すように、FRP製導水装置34の下面より上方に高さH610mm、右端より長さL700mmの位置に直径30mmの孔をFRP製導水装置34の両側に設けた。さらに、その外面に、ひしフランジ形軸受け17(商品名:F−UCFM204/LP03、NTN株式会社製)をボトルで取り付けた。この孔からさらに左に長さL250mmの位置に直径30mmの孔を設け、増速機19bとして2枚組みの歯車40、41を取り付けるためのひしフランジ形軸受け17を取り付けた。
次いで、水車12をFRP製導水装置34の中に仮置きし、FRP製導水装置34に取り付けた軸受け17に、ステンレス製で直径25mmの水車軸18を通し、回転力を取出すための直径200mmの歯車42を取り付け、さらに、水車12のFRP製円盤部16の中心を位置合わせし、水車軸18を反対側のひしフランジ形軸受けまで通し、固定金具と軸受けのセットボルトを締め、水車軸18と固定した。
次いで、径の異なる歯車を組み合わせてなる増速機19bを水車軸18より、左に長さL250mmの位置に取り付けた。丸棒やひしフランジ軸受けとしては、水車軸18と同様の部品を用いた。
次いで、FRP製導水装置34に発電機台19dを設置した。FRP製パドル部20と概略同形状のコの字成形体をオス木型より成形し、かかる成形体をFRP製導水装置34の歯車取り付け部39c(収納部14d)の左端の上面から角度45度でM5ボルト44を用いて取り付けた。この上に、直径70mmの歯車43を備えた直流12V発電機19aを取り付けた。そして、水車軸18の歯車42と増速機19bの直径50mmの歯車40をチェーン50で結び、増速機39bの直径200mmの歯車41と発電機39aの直径70mmの歯車43を同様のチェーン58で結んだ。
【0029】
[カバーの製造]
次いで、FRP製導水装置34の上部に取り付けるためのカバー11を製造した。図16に示すように、肉厚5mm、幅850mm、長さ1610mmの透明アクリル板(商品名:アクリライト、三菱レイヨン株式会社製)を用い、曲げ部をヒーターで250℃に昇温し、軟化させた後、曲げ加工を行ってコ字型のカバー本体60に加工した。
カバー本体60の面の無い開口部の一方に、410mmx600mmの透明アクリル板60aを合わせた。
次いで、メチルメタアクリレートを隙間に注入し、双方の透明アクリル板を溶解させ、溶着させた。図17に示すように、このカバー11を2式製作し、FRP製導水装置34の上部に載せた。この2つのカバー11の開口部を合わせ、合わせ部の上部に丁番56を2個取り付け、カバー11のフランジ部61をFRP製導水装置34のフランジ部62とボトル固定した。点検時は、一方のカバー11のボルト55を外し、丁番26を利用して、他方のカバー11の上に置くことができる。
【0030】
このようにして組み立てた本実施例の水力変換装置71を幅500mm、水深400mm、平均流速500mm/秒の水路に設置し、水流により水車を回転させたところ、発電機に回転力が伝達され、12V、2Aの発電をすることができた。
【0031】
(実施例2)
[FRP製導水装置の製造]
繊維を敷き詰めた合わせ型に樹脂を注入するRTM法(レジントランスファーモールディング法)を用いて、実施例1と同形のFRP製導水装置14を製造したことに加えて、図18に示すように、FRP製導水装置14の底壁14aに堰22を設けた。
【0032】
[水車の製造]
上記と同様にRTM法を用いてFRP製円盤部16及びFRP製パドル部20を別体として製造した後、2枚のFRP製円盤部16の間に11枚のFRP製パドル部20を等角度で配置し、ボルト23、座金、ばね座金、ナット(図示省略)で固定し、水車12を得た。
【0033】
[発電装置の製造]
実施例1と同様の方法で、増速機19bをFRP製導水装置14に設置した。
次いで、FRP製導水装置14に箱体の発電機台39dを設置し、この箱体の上部に、直径70mmの歯車43を備えた直流12V発電機19aを取り付け、下部にバッテリー90を収納するバッテリー収納部を設けた。水車軸の歯車、増速機、発電機のチェーンによる結び方は実施例1と同様である。
【0034】
[カバーの製造]
次いで、FRP製導水装置の上部に取り付けるためのカバー91をFRPを用いて、メス木型より成形した。カバー91に開口を設け、風を通すエキスパンドメタルを設置した以外は、実施例1と同様の形態のカバーを製造した。
【0035】
このようにして組み立てた本実施例の水力変換装置81を幅500mm、水深400mm、平均流速500mm/秒の水路に設置し、水流により水車12を回転させたところ、実施例1と同様に発電機19aに回転力が伝達され、12V、2Aの発電をすることができた。更に、FRP製導水装置14に堰22を設けていることから、水路を流れる異物によって水車12がロックされることがなくなった。また、カバー91がメッシュ構造を有しているため、軽量であっても風圧により水力変換装置81の転倒を防止することができた。
【符号の説明】
【0036】
1、71、81、101 FRP製水力変換装置
2 水
4 水路
4A、4B、14b 側壁
11、51、91、191 カバー
12、102 水車
14、34、104 FRP製導水装置
14a、4C 底壁
14c 外壁
14d 収納部
16、106 FRP製円盤部
17 軸受け
18 水車軸
19 発電装置
19a 発電機
19b 増速機
19d、39d、139d 発電機台
20、120 FRP製パドル部
22 堰
22a、22b 斜面
23、24、35、37、44、55 ボルト
25A、25B 隔壁
26、126 丁番
27 ワイヤー
28 金具
31 仕切り板
34a 水流の入り口
34b 水流の出口
36 軸受け部材
39c 歯車取り付け部
40、41、42、43 歯車
50、58 チェーン
60 カバー本体
60a 透明アクリル板
61、62 フランジ部
90 バッテリー
104a 開口部
110 集水板
191a カバー側部
191b カバー中央部
191c メッシュ窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路に配置されたFRP製水力変換装置であって、
1枚以上のFRP製円盤部と、前記FRP製円盤部と一体または別体として成形され前記FRP製円盤部に固定されたFRP製パドル部と、前記FRP製円盤部の中心に固定された水車軸とからなる水車と、前記水車が水流の水力により回転運動するように前記水車軸を軸支するとともに前記水路中に配置されたFRP製導水装置と、前記FRP製導水装置内に設置された増速機と、を備えたことを特徴とするFRP製水力変換装置。
【請求項2】
前記水車を覆うカバーが、前記FRP製導水装置の上に設けられている請求項1に記載のFRP製水力変換装置。
【請求項3】
発電装置が、前記FRP製導水装置に付設されている請求項1又は2に記載のFRP製水力変換装置。
【請求項4】
前記FRP製導水装置は、底壁と側壁からなり、上流側の前記底壁上に堰を備えた請求項1〜3のいずれか一項に記載のFRP製水力変換装置。
【請求項5】
前記FRP製導水装置の下流側の幅寸法は、前記FRP製導水装置の上流側の幅寸法より広い請求項1〜4のいずれか一項に記載のFRP製水力変換装置。
【請求項6】
前記FRP製パドル部は、前記FRP製円盤部の中心から放射状に前記FRP製円盤部に固定され、前記側壁との間に、及び前記堰との間に隙間を配して設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載のFRP製水力変換装置。
【請求項7】
前記FRP製導水装置は、水路を流れる水の上に位置して、前記増速機を設置する収納部を備えた請求項1〜6のいずれか一項に記載のFRP製水力変換装置。
【請求項8】
前記収納部は、水流が当たらないように隔壁で仕切られている請求項7に記載のFRP製水力変換装置。
【請求項9】
前記隔壁はFRP製導水装置と一体成形された請求項8に記載のFRP製水力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−92750(P2012−92750A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241022(P2010−241022)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(301050924)株式会社ハウステック (234)
【Fターム(参考)】