説明

安全運転支援方法およびシステム

【課題】車両運転希望者に対しその車両運転能力に対応して必要とされる運転支援能力をもった車両に限定しての運転許可を行う。
【解決手段】車両運転能力情報入力手段から入力される運転能力情報、あるいは運転者能力情報入力手段から入力される運転希望者IDに対応してあらかじめ登録されている運転能力情報と、車両の有している車種情報および運転支援機能情報を比較・判定し、当該車両の有する運転支援能力が運転希望者の運転能力不足をカバーし得る場合に限って、あるいは当該車両があらかじめ記憶している運転希望者IDが入力された場合に限定して、運転希望者に運転許可を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高齢運転者、運転初心者等がその車両運転能力に見合った適切な運転支援機能を有する車両を合理的にかつ確実に利用することによって一般運転者と同等以上の車両運転能力を発揮し安全運転を行うことができる安全運転支援方法および安全運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両運転者はその年齢、運転履歴、負っている傷害・疾病の種類・程度、によって車両運転能力に大きな開きがある。また過去に大きな交通事故歴あるいは交通違反歴のある運転者も一般運転者に比べて運転能力に不足がある場合がある。
一方、これら運転能力に不足のある運転者に対してその運転能力不足を補って安全運転を行うことができる運転支援方法、運転支援装置が数多く提案されている。
【0003】
例えば高齢運転者に限らず一般運転者に対する安全運転支援策として、停車中の安全を確保するためのドア開閉対策(特許文献1)、進路上の曲路を安全に走行する方策(特許文献2)、また主として高齢運転者に限定しての安全運転支援策として、顔画像からの高齢運転者認定方法、わき見運転の検出方法、障害物あるいは他車検出・警告方法、左右確認傾向方法等(特許文献3)、停止点での確実な停止方法(特許文献4)、あるいは初心者・高齢者等の標識の提示を必要とする運転者に対するアクセルペダル・ブレーキペダル誤操作対策、変速機誤操作対策、方向指示器、操作ミス対策等に対する運転支援システム(特許文献5)等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−001643
【特許文献2】特開2007−133486
【特許文献3】特開2009−015548
【特許文献4】特開2010−026556
【特許文献5】特開2010−055587
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転能力不足による交通事故、交通違反解消策として、運転能力不足の運転者に対して、運転対象車種に対応して、必要性の高い運転支援機能・装置を設定しそれらを全車両に各々装着することができれば交通事故は大幅に削減することができると予測されるが、その場合一般運転者にとっては必ずしも必要でない運転支援装置を装着しなければならない状況も発生し、装置装着に必要な社会全体としての費用は膨大になる。
本願発明は上記問題の解決策を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明による安全運転支援方法においては、車両運転希望者は、運転を希望する車両に自己の運転能力を入力する。
車両においては当該車両の車種および当該車両の有する運転支援能力と前記運転希望者から入力された運転能力を比較し、運転希望者の運転能力に対して当該車両としての運転支援能力に不足がある場合は運転を拒絶する。
このような方法によって、車両の危険運転の可能性を低減し運転希望者は勿論社会全体としての運転能力不足による交通事故・交通違反撲滅に寄与することができる。
【0007】
即ち、高齢運転者、運転初心者等運転能力に不足のある運転希望者に対してその運転能力・レベル毎に交通事故率の高い車両操作ミスあるいは運転中の注意力不足等の事故原因を解析し、その対策として、必要に応じて車種ごとに、安全運転支援効果の高い運転支援機能を設定し、車両にそれを装着する。
【0008】
例えば、高齢運転者用車両には、停止点での停止ミス、アクセル/ブレーキ操作ミス、前進/後退等変速機操作ミス、および前方・後方を含む周辺車両の検知ミスの各対策・支援機能が必須の車両運転支援機能であるとして、車両に前記操作ミスあるいは認知ミス防止対策支援機能、を装備する。
【0009】
車両の運転を行おうとする高齢者は自己が運転を希望する車両に対して自己の運転能力情報を入力し、車両側では前記入力された運転能力情報と当該車両の車種および当該車両が有している運転支援機能を比較・判定し、当該車両が運転希望者の運転能力に対応した運転支援機能を有している場合は運転許可を与える。但し有していない場合は、エンジン始動を不可能にする等、運転を拒絶する。
【0010】
このように車両の運転支援システムを構成・動作させることによって車両運転希望者は自己の運転能力に適合した車両にのみ運転許可を得て運転を行うことができるが、自己の運転能力に対して運転支援能力が不充分な車両は運転できないことになり、運転者の運転能力不足による交通事故・交通違反の確率を大きく低減することができる。
【0011】
また、上記の如き運転支援システムを運転能力に不足がある運転希望者が使用する車両にその運転能力に対応した形で限定して装着することによって、一般運転者にとって必ずしも必要としない運転支援機能を全車両に装備する必要もなくなる。
【0012】
しかし、本願発明による高齢者運転者用車両等運転支援機能を付加した車両は当然その運転支援機能の装備により一般車両に比べて高価格になる。
この結果、ある意味では、最も自動車の恩恵を被るべき人たちに対して、運転支援機能装着のための高額な費用負担を強いることになるが、これは社会全体として(例えば国からの安全運転支援能力の高い車両購入に対する補助金等の形で)バックアップすることによって解決できると思われる。
【0013】
ここで、各運転希望者の運転能力の判定は、基本的には、運転免許証に記載されている事項、即ち、免許されている車両の種類、年齢、運転歴、運転に際しての条件等、によって行う。運転免許証記載事項に不足のある場合は付加的な運転能力記載媒体を設け、それに不足する情報を記載して用いる。
【0014】
車両への運転能力入力は、前記運転免許証あるいはそれを補足する媒体の読み込みによって行う。但し、入力された運転能力と運転希望者の対応を正確に取るために、指紋認証あるいは顔画像認証等の生体認証を合わせて行う方法もある。
また上記運転能力情報の入力は運転希望者が運転開始毎に行う必要はなく、過去に入力した運転能力データが車両側に記憶されている運転希望者は、運転希望者のID(IDENTIFICATION:身分証明)等運転希望者を正確に特定できる情報の入力のみでよいことは言うまでもない。
【0015】
一方、車両の有している運転支援機能は当該車両の車種情報と合わせてあらかじめ車両側に設けた運転支援機能を管理する装置に登録しておき、運転希望者からの運転可否判定要求があったとき、即ち運転能力情報が入力されたときあるいは運転能力情報に対応するID等が入力されたとき、入力されたあるいは記憶されている車種情報、運転能力情報と比較して、運転可否を判定する。
【0016】
前記運転可否判定結果によって車両は当該運転者の車両運転開始可否の、即ちエンジン始動許可あるいは不許可等の、制御を行う。
合わせて、運転希望者が一般運転者の場合、車両の有している運転支援機能中特に当該運転希望者にとって不必要と思われる運転支援機能についてはその動作を停止させることもできる。
【0017】
ここで、運転希望者の運転能力・レベルに対応した運転支援能力(運転支援機能)の設定は、原則的には公的に制度化されることが望ましいが、それができない間は、例えば自動車メーカ、自動車保険事業体、レンタカー業者、あるいは運転者団体等が自主的に設定し運用する方法も考えられる。但し運転能力入力方法および装置は標準化し全国、全車両に統一した装置として装着されることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によって、車両運転に特定の運転支援機能を必要とする運転希望者は、運転希望車種に対応して必要とされる運転機能を装備した車両に限って運転許可が得られるが、必要とする運転機能を装備していない車両では運転許可が得られないことになり、この結果として車両運転希望者当人の安全はもとより社会全体としての交通安全が図られることになる。
【0019】
また本願発明による運転支援システムは、上記の如く車両運転希望者運転能力と運転希望車両の車種に対応した運転支援装備の整合を図ることによって交通安全に寄与できるのみならず、運転能力の入力あるいは運転者IDの入力によってあらかじめ車両に登録されている運転者に対して従来のエンジンキーの代替機能をもたせることができる。
さらに、本願発明による運転支援システムは、その始動に運転希望者の運転免許証あるいは生体認証が必要であることから盗難防止機能を有するシステムとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明による車両運転システム構成例、
【図2】本願発明による車両運転システム処理手順例、である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記の如く、本願発明による安全運転支援方法およびシステムは、車両運転希望者によって車両運転能力情報入力手段から入力される運転能力情報、あるいは運転者能力情報入力手段から入力される運転者IDに対応してあらかじめ車両側に登録されている運転能力情報と、車種および車両の有している運転支援機能、を比較・判定し、当該車両の有する運転支援能力が運転希望者の運転能力不足を補えると判断できる場合に限って運転希望者に運転許可を与える。
以下に、本願発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0022】
図1に、本願発明実施例1としての運転支援システム構成例を、図2に前記図1に示す運転支援システム構成例の基本的動作の流れを、各々示す。
【0023】
図1において、
100は、以下の101〜105の各装置から構成される運転支援システム、
101は、運転免許証あるいは付加情報媒体から運転希望者IDと合わせて運転能力情報を読み込む運転能力情報入力装置であり、本装置には必要に応じて指紋認証あるいは顔画像認証機能を付加するための指紋読み取り機能あるいは顔画像撮影読み取り機能を付加することもできる。
【0024】
102は、運転能力情報入力装置101で読み込んだ運転能力情報と、後述の運転支援制御装置104が制御する当該車両の車種および当該車両の有する運転支援能力(本例の場合は、運転支援機能1、運転支援機能2、運転支援機能3、および運転支援機能4)を比較して運転希望者の当該車両運転可否を判定するとともにその結果を運転支援制御装置104および表示装置105に出力する運転可否判定装置、
【0025】
103は、運転能力情報入力装置101から読み込んだ運転能力情報を、運転希望者のIDに対応して、記憶するとともにその記憶内容を運転可否判定装置102に出力する記憶装置であり、前記運転能力入力装置101によって指紋認証データあるいは顔画像認証データを読み込み生体認証を行う場合には認証を行うに必要な認証データ及び認証判定のための比較データも記憶しておく。
また、本記憶装置には運転希望者が当該車両の運転を希望する毎に運転能力情報を入力する手間を省くため、あらかじめ当該車両の運転が許容されている運転者の運転能力情報を運転希望者IDに対応して記憶しておくことによって運転希望者は都度運転能力情報の入力を行う煩雑さを省略して自己のIDのみを入力するだけで運転許可判定を得るようにすることもできる。
【0026】
104は、当該車両の運転支援能力(運転支援機能1、運転支援機能2、運転支援機能3、および運転支援機能4)を運転可否判定装置102に出力するとともに、運転可否判定装置102での判定結果を入力して車両の始動及び必要に応じて運転支援機能の動作/不動作を制御する運転支援制御装置、
105は、運転可否判定装置102出力を運転者希望者に対して表示出力する表示装置(必要に応じて車両外部に対して表示出力してもよい)、である。
【0027】
次に、前記図1に示す運転支援システム構成例の基本的動作の流れを示す図2において、
201は、運転支援システムの基本的動作開始点、
202は、図1の運転能力情報入力装置101から運転能力情報が入力されたか否かの判定を行う運転能力入力判定処理、
203は、処理202で運転能力情報が入力されていないと判定した場合、運転能力入力に代えて運転希望者のIDが入力されているか否かの判定を行う運転希望者ID入力判定処理、
204は、処理203で運転希望者IDが入力されたと判定した場合、入力されたIDに対応した運転能力を図1に示す記憶装置103から読み出す運転能力読み出し処理、
【0028】
205は、図1に示す運転支援制御装置104から当該車両の車種情報および当該車両の有している運転支援能力情報を読みだす運転支援能力読み出し処理、
206は、入力されたあるいは記憶装置から読み出された運転希望者の運転能力情報と、図1運転支援制御装置能力読み出しから読み出された車種情報および運転支援能力情報の比較を行う運転能力/運転支援能力比較処理、
【0029】
207は、当該車両の運転支援能力が当該車両運転希望者の運転能力に不足がある場合それをカバーしているか否か、即ち運転希望者に当該車両の運転許可を出してもよいか否か、の判定を行う運転可否判定処理、
208は、処理207で運転可と判定した場合、運転支援制御装置104および表示装置
105に運転許可信号を出力をする運転許可信号出力処理、
209は、処理207で運転不可と判定した場合、運転支援制御装置104および表示装置105に運転不許可信号を出力をする運転不許可出力出力処理、
210は、運転支援システムの基本的動作終了点、
である。
【実施例2】
【0030】
実施例1においては、安全運転支援システムは車両側ですべて構成するものとしているが、安全運転支援システムを車両装置とセンター装置に分け、センター装置側に、例えば、運転可否判定装置102および記憶装置103、を設け、運転能力情報入力装置101、運転支援制御装置104、および表示装置105からなる車両装置とセンター装置を無線通信で接続することによって、センター装置において車両管理者、運行管理者、あるいは交通管理者等が複数の車両、運転希望者の運転支援能力、運転能力を一括して総合的に管理・運用・制御するシステムとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上記の如き方法・構成・動作によって、高齢運転者等運転支援を必要とする運転者のみならず、必ずしも運転支援を必要としない運転者を含む一般運転者にも合理的に対応できる、調和のとれた安全運転支援システムを構築・運用することができる。
【0032】
本願発明は、たとえば自動車保険事業体が、本願発明による安全運転支援システムを装備している車両に対してその保険料を適切に設定することによって、安全運転支援能力の高い車両の普及に役立てると同時に自動車保険事業体の利益拡大にもつなげることもできる。
また、レンタカー会社がレンタカーを希望する客に対して安全運転支援車両か否かによって料金の設定あるいは車両選択の手段として使用することもできる。
【0033】
また、本願発明による運転支援方法、運転支援システムは、運転希望者の運転能力入力あるいはID入力をもって従来の車両始動用エンジンキーの代替とすることもできる。
さらには本安全運転支援システムを、車両があらかじめ記憶している運転希望者IDが入力された場合に限定して、運転希望者に運転許可を与えることによって車両盗難防止システムとすることもできる。
【符号の説明】
【0034】
図1において、
100:運転支援システム、
101:運転能力情報入力装置、
102:運転可否判定装置、
103:記憶装置、
104:運転支援制御装置、
105:表示装置、
である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両運転希望者の車両運転能力と運転希望車両の車種およびその有している車両運転支援機能を対比することによって、車両運転希望者の当該車両運転可否の判定および制御を行うことを特徴とする車両運転支援方法およびシステム。
【請求項2】
車両運転能力の入力は、運転免許証に記載されている免許車両、年齢、運転歴、性別、および運転免許証交付に際しての付帯条件等の各種情報の読み込みを基本とすること、を特徴とする請求項1記載の車両運転支援方法およびシステム。
【請求項3】
車両運転支援機能とは、高齢運転者、運転初心者、身体障害者、あるいはその他車両運転に際して特定の条件を付加されている人、等が運転を希望する車両を安全に運転するに際して必要な運転支援機能、あるいは車両運転条件を満足するために車両に要求される車両機能、であることを特徴とする請求項1記載の車両運転支援方法およびシステム。

【図1】
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【図2】
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