安定なシアニン色素ホスホアミダイト
【課題】生体分子の直接標識用の非常に安定で対費用効果の高いシアニン色素ホスホアミダイト、保護基の導入及び除去のステップを必要としないホスホアミダイトを合成する便利な方法を提供すること。
【解決手段】
本発明は、色素ホスホアミダイト、特に、以下の一般式(I)の置換環状架橋シアニン及び関連する色素のホスホアミダイトを提供する。一般式(I)において、各破線は融合した置換又は未置換の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、R1はアルキル基であり、(PAM)はホスホアミダイト基であり、X−は陰イオンであり、QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、OR2は第2級アルキル基である。前記色素ホスホアミダイトの製造方法及び使用方法も提供される。
【解決手段】
本発明は、色素ホスホアミダイト、特に、以下の一般式(I)の置換環状架橋シアニン及び関連する色素のホスホアミダイトを提供する。一般式(I)において、各破線は融合した置換又は未置換の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、R1はアルキル基であり、(PAM)はホスホアミダイト基であり、X−は陰イオンであり、QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、OR2は第2級アルキル基である。前記色素ホスホアミダイトの製造方法及び使用方法も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはシアニン色素に関し、具体的には、安定化環状架橋シアニン色素ホスホアミダイトと、その合成方法及び生体分子標識におけるその使用方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
生物医学研究及び組換えDNA技術において採用される多くの手順は、プローブ、プライマー、リンカー、アダプター及び遺伝子断片としてのオリゴヌクレオチドの使用に大きく依存する。これらの使用のいくつかは非特許文献1及び2のような一般的な実験マニュアルに説明される。自動化DNA配列決定及びマッピングと、in situハイブリダイゼーション検出と、PCR産物検出と、構造的な研究とのような多くの用途では標識オリゴヌクレオチドが必要である。これらの用途には伝統的に放射能標識が用いられたが、最近、ある種のシアニン色素が生体分子の標識に非常に有用であることが証明された。
【0003】
シアニン色素は、取扱いの安全性と、長波長(longer wavelength)での吸光度と、吸光係数の高さと、比較的高い量子効率と、分子サイズの小ささと、化学的操作の容易性と、試薬、pH及び温度に対する合理的な安定性とを含む、多くの望ましい特性を提供する。生体分子のバックグランド蛍光は低く、スペクトルの長波長部分でシアニン色素の吸光度が高いことのために、シアニン色素は優れた信号対雑音比を提供する。シアニン色素の発色団部分を修飾することによって、400からほぼ1100nmまでの広いスペクトル範囲で吸光及び発光する異なる蛍光標識試薬を得ることができる。シアニン色素に取り込むことができる官能基の多機能性が、前記色素及び標識された産物の可溶性を制御することを可能にし、アッセイ混合液中の無関係な成分への標識された物質の非特異的結合を低減するのに役立つ(特許文献1及び2)。
【0004】
従来、シアニン色素でのオリゴヌクレオチド標識は、手作業の2段階の手順で実行される。まず、オリゴヌクレオチドが合成され、その後、活性化シアニン色素が該合成オリゴヌクレオチドの5’末端に結合される。通常シアニン色素は、シアニン色素をオリゴヌクレオチドに共有結合で結合するのを補助する反応基の導入によって活性化される(例えば特許文献1及び2を参照せよ。)。この2段階法は遅く(4−5日)、手間がかかり、高価で、しばしば望ましくない有機副産物を生成する。代替的なより便利な1段階のアプローチでは、蛍光色素はホスホアミダイトに変換され、オリゴヌクレオチドの合成の際に該オリゴヌクレオチドの直接標識に使用される。しかし、現在利用可能なシアニン色素のホスホアミダイトは、その標準的で未修飾のものよりも実質的により高価で安定性がより低い。
【0005】
特許文献3は、合成オリゴヌクレオチドを標識するためのカルボシアニンホスホアミダイトの使用を開示する。しかし特許文献3のシアニンホスホアミダイトは、トリチル基、4−O−モノメトキシトリチル基、4,4’−O−ジメトキシトリチル基又はアシル基のような保護基を含む。保護基は保存及び取扱いの際の不安定性を伴うのが通常であるので、これらのホスホアミダイトの市場価値を下げる。
【0006】
特許文献4は、合成オリゴヌクレオチド標識へのシアニンホスホアミダイト色素の使用を開示する。特許文献4の色素は商業的に有用ではあるが、それでもやはりやや高価で、少し不安定であるという特徴を有する。
【0007】
特許文献5は、複素環の窒素原子の1つを移動度を修飾する原子団で修飾されたシアニン色素のクラスを開示する。特許文献5は、シアニン色素の内在的な不安定性を認識し、塩基性条件下で分解しやすい(base−labile)除去可能な保護基を用いて環外アミンその他の官能基を保護することを示唆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,569,587号明細書
【特許文献2】米国特許第5,627,027号明細書
【特許文献3】米国特許第5,556,959号明細書
【特許文献4】米国特許第6,331,632号明細書
【特許文献5】米国特許第6,716,994号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Ed.,J.Sambrook,et al.,Eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989
【非特許文献2】Current Protocols In Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,Eds.,Current Publications,1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
関連技術が複数の欠陥を有する点から見て、生体分子の直接標識用の非常に安定で対費用効果の高いシアニン色素ホスホアミダイトを提供することが本発明の目的である。保護基の導入及び除去のステップを必要としないホスホアミダイトを合成する便利な方法を提供することも本発明の目的である。オリゴヌクレオチドの合成の際に直接該オリゴヌクレオチドを標識する方法を提供することも本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上及びその他の目的は、以下の一般式(I)を有する本発明の色素で達成される。
【0012】
【化1】
(I)
【0013】
上記化学式(I)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、R1はアルキル基であり、(PAM)はホスホアミダイト基であり、X▲横一文字の入った丸(上付き)▼(以下では、「(−)」と表記する。)は陰イオンであり、QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、OR2は第2級アルキル基である。
【0014】
本発明の1つの実施態様によると、前記色素は、環状トリカルボシアニン色素(環状Cy7)、ベンゾインドール環状シアニン色素(環状BCy7)及びジベンゾインドール環状シアニン色素(環状DBCy7)からなるグループから選択されるシアニン色素である。前記ホスホアミダイト基は、N,N−ジイソプロポル−O−β−シアノエチル・ホスホアミダイト基の場合がある。
【0015】
本発明の別の局面は色素ホスホアミダイトの合成方法を提供する。該方法は、
(a)化学式(II)を有する、色素の水酸基誘導体を形成するステップと、
(b)化学式(II)の水酸化誘導体の水酸基の水素をホスホアミダイト基で置換するステップとを含む。
【0016】
【化2】
(II)
【0017】
上記化学式(II)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、R1はアルキル基で、X(−)は陰イオンであり、QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、OR2は第2級アルキル基である。
【0018】
本発明の1つの実施態様では、化学式(II)を有する色素の水酸基誘導体を合成するステップは、一般式(XIV)を有する色素の塩素化誘導体の形成を可能にする条件下で化合物(XI)、(XII)及び(XIII)を反応させるステップを含む。
【0019】
【化3】
(XIV)
【0020】
上記化学式(XIV)において、QはL−Clで、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、Clは塩素である。
【0021】
化合物(XI)は以下の一般式を有するいずれの化合物であってもよい。
【0022】
【化4】
(XI)
【0023】
化合物(XII)は以下の化学式を有する
【0024】
【化5】
(XII)
【0025】
上記化学式(XII)において、Phはフェニル基である。
【0026】
化合物(XIII)は以下の一般式を有するいずれの化合物であってもよい。
【0027】
【化6】
(XIII)
【0028】
上記化学式(XIII)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、R1はアルキル基で、X(−)は陰イオンである。
【0029】
本発明の1つの実施態様では、前記色素の水酸基誘導体を合成するステップは、シアニン色素の水酸基誘導体(II)の形成を可能にする条件下で、シアニン色素の塩素化誘導体を還流することを含む。
【0030】
本発明のさらなる局面は、一般式(I)を有する本発明の発光色素ホスホアミダイトがオリゴヌクレオチドを直接標識するのに使用される方法を提供する。
【0031】
本発明は、ポリヌクレオチド、タンパク質及びペプチドのような生体分子の標識における他の色素の使用と比較した、経済及び技術の両方の面での利点を提供する。以下に詳細に説明するとおり、本発明の色素ホスホアミダイトは、オリゴヌクレオチド合成の際に、該オリゴヌクレオチドに前記色素を自動的に添加するために、例えばオリゴヌクレオチドABI394(ベックマン・コールター社、カリフォルニア州)のようないずれかのDNA合成機上で直接使用される場合がある。保護基なしで色素ホスホアミダイトを使用することにより、保護基を除去するステップが除去されるために、標識オリゴヌクレオチド調製に要する全時間が非常に短縮される。さらに、Cy7及びDBCy7ホスホアミダイトのコンジュゲートされた二重結合鎖内にOR2基で置換された環状原子団を取り込むことは、Cy5様分子種への部分的変換を防止し、安定な色素の形成につながる。
【0032】
本発明のホスホアミダイトの安定性は、OR2基で置換された環状架橋を有するので、本発明の発明者の以前の成果を反映する特許文献4に記載のホスホアミダイトのような、未置換環状架橋色素のホスホアミダイトの安定性をはるかに上回る。本発明の置換環状架橋色素のホスホアミダイトは、特許文献4のホスホアミダイトよりも実質的に長期間にわたって純度を維持する。これらはオリゴヌクレオチド結合効率も高い。オリゴヌクレオチド標識に用いるとき、これらは従来技術の色素ホスホアミダイトの半減期よりもはるかに長い半減期を示す。これは、本発明の色素ホスホアミダイトをオリゴヌクレオチドその他の生体分子の標識に利用することのよって提供される費用及び時間に加えて、現在利用可能なホスホアミダイトで標識された生体分子と比較して、より高い標識産物の全体的な収率が達成される。
本発明は例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
化学式(I)を有する色素ホスホアミダイトであって、
【化1】
(I)
上記化学式(I)において、
各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の1個又は複数個の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、
mは1から18までの整数であり、
Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、
R1は第1アルキル基であり、
(PAM)はホスホアミダイト基であり、
X−は陰イオンであり、
QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、R2は第2アルキル基である、色素ホスホアミダイト。
(項目2)
前記芳香族の環は、フェニル基、ナフチル基又は複素環基である、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目3)
前記芳香族の環は、ベンゾインドーリネン、置換インドーリネン及び置換ベンゾインドーリネンからなるグループから選択される、項目2に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目4)
前記第1及び第2アルキル基は、骨格に1ないし18個の炭素原子を有するアルキル基又は置換アルキル基からなるグループから独立に選択される、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目5)
前記第1アルキル基はエチル基である、項目4に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目6)
前記第2アルキル基はメチル基である、項目4に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目7)
前記コンジュゲートされた環状原子団は、シクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロヘプテンからなるグループから選択される、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目8)
前記色素はシアニン色素である、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目9)
前記シアニン色素は、環状トリカルボシアニン色素(環状Cy7)、ベンゾインゾール環状シアニン色素(環状BCy7)及びジベンゾインドール環状シアニン色素(環状DBCy7)からなるグループから選択される、項目8に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目10)
前記陰イオンは、I−又はBr−である、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目11)
前記ホスホアミダイト基は、N,N−ジイソプロピル−O−β−シアノエチル・ホスホアミダイト基である、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目12)
(a)化学式(II)を有する色素の水酸化誘導体を形成するステップと、
(b)前記水酸化誘導体(II)の水酸基の水素をホスホアミダイト基で置換するステップとを含み、
【化2】
(II)
上記化学式(II)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の1個又は複数個の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、
mは1から18までの整数であり、
Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、
R1は第1アルキル基で、
(PAM)はホスホアミダイト基で、
X−は陰イオンであり、
QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、R2は第2アルキル基である、色素ホスホアミダイト基の合成方法。
(項目13)
前記芳香族の環は、フェニル基、ナフチル基又は複素環基である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記第1及び第2アルキル基は、骨格に1ないし18個の炭素原子を有するアルキル基又は置換アルキル基からなるグループから独立に選択される、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記コンジュゲートされた環状原子団は、シクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロヘプテンからなるグループから選択される、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記色素はシアニン色素である、項目12に記載の方法。
(項目17)
前記シアニン色素は、環状トリカルボシアニン色素(環状Cy7)、ベンゾインゾール環状シアニン色素(環状BCy7)及びジベンゾインドール環状シアニン色素(環状DBCy7)からなるグループから選択される、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記ホスホアミダイト基は、N,N−ジイソプロピル−O−β−シアノエチル・ホスホアミダイト基である、項目12に記載の方法。
(項目19)
前記色素の水酸化誘導体を形成するステップは、一般式(XIV)を有する色素の塩素化誘導体の形成を可能にする条件下で、化合物(XI)、(XII)及び(XIII)を反応させるステップを含み、
【化3】
(XIV)
【化4】
(XI)
【化5】
(XII)
【化6】
(XIII)
上記化学式において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、R1はアルキル基で、X−は陰イオンであり、
QはL−Clであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、Clは塩素で、
Phはフェニル基である、項目12に記載の方法。
(項目20)
前記芳香族の環は、フェニル基、ナフチル基又は複素環基である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記陰イオンは、I−又はBr−である、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記アルキル基は、1ないし18個の炭素原子を有する、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記アルキル基はエチル基である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記化合物(XIII)は、化合物(XIII)の形成を可能にする条件下で、化合物(XV)を
【化7】
(XV)
Br(CH2)m−OHと反応させることによって形成され、
上記化学式において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、YはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、mは1から18までの整数である、項目19に記載の方法。
(項目25)
前記色素は環状Cy7で、化合物(XI)はヨウ化1−エチル−2,3,3−トリメチルインドーリニウムで、化合物(XIII)は、臭化1−(1’−ヒドロキシヘキシル)−2,3,3−トリメチルインドーリニウムである、項目19に記載の方法。
(項目26)
前記色素は環状DBCy7で、化合物(XI)はヨウ化1−エチル−1,1,2−トリメチル−H−ベンズインドーリニウムで、化合物(XIII)は臭化1−(6−ヒドロキシヘキシル)−1,1,2−トリメチル−H−ベンズインドーリニウムである、項目19に記載の方法。
(項目27)
前記色素の水酸化誘導体を形成するステップは、化合物(XIV)の塩素を−OR2基で置換するステップを含み、R2は第2アルキル基である、項目19に記載の方法。
(項目28)
前記塩素を置換するステップは、化合物(XIV)と、NaOMe粉末と、無水メタノールとの混合液を加熱還流するステップを含み、項目28に記載の方法。
(項目29)
前記置換するステップ(b)は、化学式(I)の色素ホスホアミダイト基
【化8】
(I)
の形成を可能にする条件下で、前記水酸化誘導体(II)を塩化メチレンと、テトラゾール又はエチルチオテトラゾールと反応させることによって実行され、
上記化学式において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の1個又は複数個の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、
mは1から18までの整数であり、
Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、
R1は第1アルキル基であり、
(PAM)はホスホアミダイト基であり、
X−は陰イオンであり、
QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、R2は第2アルキル基である、項目12に記載の方法。
(項目30)
前記置換するステップ(b)は、化学式(I)の色素ホスホアミダイト基
【化9】
(I)
の形成を可能にする条件下で、前記水酸化誘導体(II)を塩化メチレンと、2−シアノエチル・テトライソプロピルホスホアミダイト(TIPA)と、ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(DIIPT)と反応させることによって実行され、
上記化学式において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の1個又は複数個の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、
mは1から18までの整数であり、
Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、
R1は第1アルキル基であり、
(PAM)はホスホアミダイト基であり、
X−は陰イオンであり、
QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、R2は第2アルキル基である、項目12に記載の方法。
(項目31)
項目1に記載の一般式(I)を有する色素ホスホアミダイト基と生体分子との結合を可能にする条件下で、該色素を該生体分子と反応させるステップを含む、生体分子の標識方法。
(項目32)
前記生体分子はオリゴヌクレオチドである、項目1に記載の方法。
(項目33)
前記生体分子はタンパク質又はペプチドである、項目1に記載の方法。
(項目34)
項目1に記載の一般式(I)を有する色素ホスホアミダイト基で標識されたオリゴヌクレオチドを含む、標識オリゴヌクレオチド。
(項目35)
項目1に記載の一般式(I)を有する色素ホスホアミダイト基で標識されたタンパク質又はペプチドを含む、標識タンパク質又は標識ペプチド。
(項目36)
項目1に記載の一般式(I)を有する色素ホスホアミダイトを含む、オリゴヌクレオチドを標識するためのキット。
(項目37)
項目1に記載の一般式(I)を有する色素ホスホアミダイトを含む、タンパク質およびポリペプチドを標識するためのキット。
【0033】
本発明は、添付した特許請求の範囲に完全な範囲が定義され、その好ましい実施態様に以下のとおり説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の上記の特徴及びその他の特徴と、その入手方法とは、添付する図面とともに、以下の説明を参照することによって最も良く理解されるであろう。
【図1】図1A及び1Bは、本発明の色素ホスホアミダイトの合成方法の模式図である。
【図2】図2は、実施例1、2及び3に記載の本発明のある実施態様の環状(OCH3)−Cy7ホスホアミダイトの合成反応経路図である。
【図3】図3は、実施例1、2及び3に記載の補はの別の実施態様の環状(OCH3)−Cy7ホスホアミダイトの合成反応経路図である。
【図4】図4は、本発明のさらなる実施態様の環状(OCH3)−DBCy7ホスホアミダイトの合成反応経路図である。
【図5】図5は、環状(Cl)−Cy7の水酸化誘導体の31P NMRスペクトルを示す。
【図6】図6は、環状(OCH3)−Cy7の水酸化誘導体の31P NMRスペクトルを示す。
【図7】図7は、環状(OCH3)−Cy7ホスホアミダイトの31P NMRスペクトルを示す。
【図8】図8は、環状(OCH3)−Cy7ホスホアミダイトで標識された24量体のCEQ分析を示す。CEQは完全自動化遺伝子解析システムである。このシステムは、線状ポリアクリルアミドゲルを毛管アレイに自動的に充填し、試料を変性させて装荷し、電圧プログラムを適用して、データを解析する。CEQはサイズに基づいてDNA断片を分析するのが典型的である。
【図9】図9は、環状Cy7(OMe)ホスホアミダイトと、環状Cy7(H)との室温での安定性データを含む表1を示す。
【図10】図10は、環状Cy7(OMe)ホスホアミダイトの37°Cでの安定性データを含む表2と、環状Cy7(H)ホスホアミダイトの37°Cでの安定性データを含む表3とを示す。31P NMRスケールはppm(百万分の1)である。百分率は、144.64ppmでの主ピークの積分値を指す。結合効率は、前記ホスホアミダイトのオリゴヌクレオチドへの結合によって測定される。前記オリゴヌクレオチドは合成された後前記ホスホアミダイトに結合され、穏和な脱保護試薬で切断及び脱保護され、逆相HPLCで分析された。百分率は、HPLC上の標識オリゴヌクレオチドの面積百分率である。
【図11】図11は、時間に対する関数としての標識オリゴの色素比を示すチャートである。オリゴヌクレオチド1−3は、置換環状基(環状Cy7(OMe))か、未置換環状基(環状Cy7(H))かのいずれかを有する、環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識された。前記色素比は、260nmでの吸光度を、最大色素での吸光度(環状Cy7(H)については750nm、環状Cy7(OMe)については763nm)で除算し、前記オリゴヌクレオチドの長さで除算した商として計算される。
【図12】図12は、サイズ標準と比較された百分率信号としてCEQによって測定された時間に対する関数としてのプライマー1−3の安定性を示し、該サイズ標準と比較された百分率信号は、平均対立遺伝子座ピーク高の平均サイズ標準ピーク高に対する比として計算される。オリゴヌクレオチド1−3は環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識され、該環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトは置換環状基又は未置換環状基のいずれかを有する。
【図13】図13は、置換環状基又は未置換環状基のいずれかを有する環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチド1−3の半減期の推定値を含む表4を示す。
【図14】図14は、置換環状基(Cy7(OMe))又は未置換環状基(Cy7(H))のいずれかを有する環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識されたD16S539(オリゴ1)、アメロジェニン(Amelogenin、オリゴ2)及びD19S591(オリゴ3)について、−20°Cで等価な時間の関数として相対色素比を示すチャートを示す。
【図15】図15は、置換環状基(Cy7(OMe))又は未置換環状基(Cy7(H))のいずれかを有する環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識されたD16S539(オリゴ1)、アメロジェニン(オリゴ2)及びD19S591(オリゴ3)について、−20°Cで等価な時間の関数としてPCR増幅の相対収率を示すチャート(図15(1))を示す。図15は、置換環状基(Cy7(OMe))又は未置換環状基(Cy7(H))のいずれかを有する環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識されたD16S539(オリゴ1)、アメロジェニン(オリゴ2)及びD19S591(オリゴ3)についての時間の関数として、PCR増幅産物の百分率として非特異的なノイズのピークを示すチャート(図15(2))も示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
ホスホアミダイトの安定性を増大させるために、本発明はOR2基で置換された環状架橋基を用いる。したがって、本発明は以下の化学式(I)を有する色素ホスホアミダイトを提供する。
【0036】
【化7】
(I)
【0037】
上記化学式(I)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、R1はアルキル基であり、(PAM)はホスホアミダイト基であり、X(−)は陰イオンであり、QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、OR2は第2級アルキル基である。
【0038】
活性化色素は、複素環か、フェニル環のような単環芳香族構造か、ナフチル環のような融合環構造かを含む場合がある。芳香族環は、ベンゾインドーリネン、置換インドーリネン及び置換ベンゾインドーリネンからなるグループから選択される場合がある。第1アルキル基は一般に1ないし18個の炭素原子を有する。本発明の1つの実施態様では、第1アルキル基はエチル基で、2個の炭素原子を含む。第2アルキル基は一般的には1ないし18個の炭素原子を有し、好ましくは1ないし6個の炭素を有する。本発明の1つの実施態様では、第2アルキル基はメチル基で、1個の炭素原子を含む。ホスホアミダイト基は通常はアルキル鎖で前記色素と結合する。該アルキル鎖の長さは炭素原子1ないし12個である。1つの実施態様では、アルキル鎖の長さは炭素原子約6個である。
【0039】
環状原子団Lは周囲の炭素構造にコンジュゲートされる場合がある。本発明の1つの実施態様では、前記環状原子団は、シクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロヘプテンからなるグループから選択される。本発明の化合物(I)は陰イオンX(−)を含む。このイオンはハロゲンであることが好ましいが、他の陰イオンが用いられる場合もある。例えば前記陰イオンは、合成戦略に応じて、I(−)又はBr(−)の場合がある。ホスホアミダイト基はN,N−ジイソプロピル−O−β−シアノエチル・ホスホアミダイト基でかまわないが、当業者に知られた他のホスホアミダイトが使用される場合がある。
【0040】
一般的には本発明の色素は、ホスホアミダイト基及びアルキル基を取り込み、かつ、OR2基で置換された環状架橋を有するかぎり、標識の目的に慣用されるいかなる蛍光色素であってもかまわない。ホスホアミダイト基及び第1アルキル基が本色素のインドール又はベンゾインドール部分の窒素と結合することが必要である。本色素の吸光及び発光波長はスペクトルの特定領域に限定されず、近紫外から近赤外又はそれらの間を超えたどこであってもかまわない。
【0041】
本発明の実施態様によると、本色素はシアニン及びこれに関連する色素の場合がある。シアニン色素は、長波長での吸収(安価な検出システムが使えること、及び、これらの波長での生物学的試料からのバックグランドが低いことにつながる。)と、高い吸光係数と、比較的高い量子効率と、小さな分子サイズと、蛍光特性を低下させることなく化学的操作が容易であること、試薬、pH及び温度に合理的な安定性があることを含む、敏感な検出標識として機能するうえで望ましい複数の特性を有する。
【0042】
本発明の1つの実施態様では、ホスホアミダイト色素は、環状トリカルボシアニン色素(環状Cy7)、ベンゾインドール環状シアニン色素(環状BCy7)及びジベンゾインドール環状シアニン色素(環状DBCy7)からなるグループから選択される。ベンゾインドール環状シアニンCBy7は1個のベンゼン基置換を有し、ジベンゾインドール環状DBCy7は対応するインドールシアニンである、環状Cy7に対して、2個の余分なベンゼン基置換を有する。このように、ベンゾインドール環状シアニンは、インドールの対応化合物よりも最大吸光及び発光波長が長い。
【0043】
OR2基を色素ホスホアミダイトのコンジュゲートされた環状原子団に導入することが未置換の環状原子団を有する色素ホスホアミダイトよりも安定性をさらに増大させることが本発明の発見である。前記コンジュゲートされた環状基は、シクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロヘプテンからなるグループから選択される場合がある。1つの実施態様では、前記環状原子団は、以下の構造(XVa)を有する。
【0044】
【化8】
(XVa)
【0045】
この実施態様では、得られたホスホアミダイト色素の合成コストは、未置換環状原子団を用いる対応する色素の合成コストの60%にすぎない。
【0046】
本明細書の実施例5により詳細に説明するとおり、本発明のホスホアミダイトは当業者に知られたホスホアミダイトより安定性において勝っている。例えば1つの実施態様では、置換環状シアニン色素(環状Cy−7(OMe))及び未置換環状シアニン色素(環状Cy−7(H))のホスホアミダイトがテストされた。環状Cy−7(H)のホスホアミダイトは、加速された安定性試験が実施されたとき、本発明の環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトよりも安定性が悪かった。HPLCにより測定(図9、表1に表す)したところでは、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトの純度は、67.60%で始まって、室温、4週間で52.11%まで低下したが、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトの純度は、もっと高い81.94%ではじまって、室温、4週間で68.92%と高い値にとどまった。さらに、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトのオリゴヌクレオチド結合効率は、室温、4週間で44.83%から15%まで落ち込んだが、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトのオリゴヌクレオチド結合効率は、室温、4週間で46.00%から35.49%までしか下がらなかった(図9、表1)。室温で4週間は、4°Cで13ヶ月に等しい。したがって、このデータは、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトが環状Cy−7(H)のホスホアミダイトよりはるかに安定であることを示す。本発明の色素の純度の増加と、製造から長期間経過後のオリゴヌクレオチド結合能力の増大とによって、本発明の色素はオリゴヌクレオチドを標識する能力について従来技術より勝れている。
【0047】
環状Cy−7(OMe)ホスホアミダイトは、環状Cy−7(H)ホスホアミダイトで標識されたものと比較して37°Cでの安定性の増大という同じ傾向を示した(図10、表2及び3)。環状Cy−7(H)のホスホアミダイトの純度は、49.93%で始まって、37°C、7日間で20.92%まで低下したが、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトの純度はもっと高い61.65%で始まって、37°C、7日間で59.95%という高い値にとどまった。さらに、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトのオリゴヌクレオチド結合効率は、37°C、7日間で30%から0%まで低下したが、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトのオリゴヌクレオチド結合効率は、37°C、7日間で43%から17%までしか低下しなかった。環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトの結合効率は第5日目で37.42%であったが、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトの結合効率は第5日目では既に2%まで低下していた。これは、本発明のホスホアミダイトが37°Cで環状Cy−7(H)のホスホアミダイトよりもはるかに安定なため、オリゴヌクレオチド標識により有用であることを示す。
【0048】
発光/吸光比及び31P NMRのデータも、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトは環状Cy−7(H)のホスホアミダイトよりも安定であることを証明する。発光/吸光比の変化は、色素自体の変化を反映する。前記比が大きく変化するほど、色素の安定性は低い。表2でわかるように、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトが7日間で1210から1088に色素比が変化するのに対し、環状Cy−7(H)は同じ期間で1882から1295まで色素比が変化した(表3)。31P NMRデータはホスホアミダイトの純度を反映する。環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトは7日間で15%ポイントだけしか低下しなかったのに対し、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトは40%ポイントも低下したという事実は、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトが純度を保持する傾向が高いことを示す。このデータは、本発明のホスホアミダイトが環状Cy−7(H)のホスホアミダイトより37°Cではるかに安定性が高いことを再確認する。
【0049】
本発明の色素ホスホアミダイトは、該色素をオリゴヌクレオチドに自動的に添加するためにいずれかのDNA合成機に直接用いる場合がある。本発明の色素ホスホアミダイトはいかなる保護基も含まない。保護基なしでの色素ホスホアミダイトの使用によって、保護基を除去するステップが削除されるので、標識オリゴヌクレオチド調製に要する全時間は非常に短縮される。オリゴヌクレオチドその他の生体分子を標識するために本発明の色素ホスホアミダイトを使用することによって提供されるコスト及び時間に加えて、従来の2段階法より高い標識産物の全収率も達成される。
【0050】
本発明の別の局面は、色素ホスホアミダイトの合成方法を提供する。該方法は、
(a)以下の化学式(II)を有する色素の水酸化誘導体を形成するステップと、
(b)その水酸基の水素をホスホアミダイト基で置換するステップとを含む。
【0051】
【化9】
(II)
【0052】
上記化学式(II)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、R1はアルキル基で、X(−)は陰イオンであり、QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、OR2は第2級アルキル基である。
【0053】
水酸基誘導体(II)は、複素環か、フェニル環のような単環芳香族構造か、ナフチル環のような融合環構造かを含む場合がある。1つの実施態様では、第1及び第2アルキル基は、主鎖の1個ないし18個の炭素を有する、アルキル基及び置換アルキル基からなるグループから独立に選択される。具体的には、ある実施態様では、第1アルキル基は2個の炭素を含み、第2アルキル基は1個の炭素を含む。特に関心があるのは、環状Cy7、環状BCy7及び環状DBCy7を含む、上記のとおり説明されたシアニン色素である。
【0054】
本発明の1つの実施態様によると、前記シアニン色素の水酸化誘導体を形成するステップ(a)は、一般式(XIV)を有するシアニン色素の塩素化誘導体の形成を可能にする条件下で、化合物(XI)、(XII)及び(XIII)を反応させるステップを含む。
【0055】
【化10】
(XIV)
【0056】
化合物(XI)は以下の一般式を有するいかなる化合物でもかまわない。
【0057】
【化11】
(XI)
【0058】
化合物(XII)は以下の化学式を有する。
【0059】
【化12】
(XII)
【0060】
上記化学式(XII)において、Phはフェニル基である。
【0061】
化合物(XIII)は以下の化学式を有する。
【0062】
【化13】
(XIII)
【0063】
上記化学式において、各破線は融合した置換又は未置換芳香族環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、R1はアルキル基で、X(−)は陰イオンである。
【0064】
特定の化合物(XI)及び(XIII)の選択は、合成されるべき色素ホスホアミダイトのタイプに依存する。環状Cy7ホスホアミダイトの合成のためには、化合物(XII)と、未置換の化合物(XI)及び(XIII)とを使って、その後、所望のOR2基を置換する場合がある。環状DBCy7ホスホアミダイトは、ベンズ置換された化合物(XI)及び(XIII)と、化合物(XII)とを使い、その後所望のOR2基に置換することによって合成される場合がある。
【0065】
本発明の1つの実施態様は、環状Cy7ホスホアミダイトの合成を伴う(図2)。この実施態様では、化合物(XI)がヨウ化1−エチル−2,3,3−トリメチルインドーリニウム、化合物(XIII)が臭化1−(6−ヒドロキシヘキシル)−1,1,2−トリメチルインドーリニウムの場合がある。別の実施態様では、環状DBCy7(図4)が合成される。この実施態様では、化合物(XI)がヨウ化1−エチル−1,1,2−トリメチル−H−ベンズインドーリニウムで、化合物(XIII)が臭化1−(6−ヒドロキシヘキシル)−1,1,2−トリメチル−H−ベンズインドーリニウムの場合がある。当業者は、適当な化合物(XI)、(XII)及び(XIII)を選択することによって他のホスホアミダイトが合成できることを了解するであろう。
【0066】
塩素化誘導体(IV)の形成を可能にするかぎりいかなる反応条件でも使用してかまわないが、1つの実施態様では、化合物(XI)、化合物(XIII)及び無水エタノールが、全ての固形物が溶解するまで室温で撹拌される。その後化合物(XII)が溶液に添加され、該溶液は全ての固形物が溶解するまで再度撹拌された。その後、無水酢酸ナトリウムが前記溶液に添加され、1時間加熱還流される。その後、溶媒が除去され、混合物は真空乾燥される。その後、前記混合物はCH2Cl2に溶解され、エーテル中で沈殿され、再度真空乾燥される。再度前記混合物はCH2Cl2に溶解され、得られた溶液はシリカゲルカラム上に装荷される。該カラムは、CH2Cl2、メタノール、アセトン及び酢酸エチルを含む溶媒の勾配で溶出され、産物が分画として回収される。その後、前記産物は室温で終夜乾燥される。
【0067】
本発明の水酸化誘導体(II)を形成するステップは、さらに、背水酸化誘導体(II)の形成を可能にする条件下で、前記色素の塩素化誘導体(XIV)を試薬と反応させるステップを含む場合がある。誘導体(II)の形成を可能にするかぎりいかなる反応条件を使用してもかまわないが、本発明の1つの実施態様では使用される試薬はNaOR2である。R2はいかなるアルキル基でもかまわないが、1つの実施態様では、メチル基(Me)が用いられる。この実施態様では、OMe環状シアニン色素の水酸化誘導体は一般式(IIa)を用いて製造される。
【0068】
【化14】
(IIa)
【0069】
上記化学式(IIa)において、QはL−OMeで、Lはコンジュゲートされた環状原子団である。
【0070】
1つの実施態様では、NaOMeがアルゴン存在下で保護されたコンデンサ内で無水メタノールと混合され、NaOMeが完全に溶解するまで撹拌される。その後、前記色素の水酸化及び塩素化誘導体がフラスコ内に混合され、混合物が1時間加熱還流される。この溶液が冷却され、溶媒は真空蒸散される。その後、残渣はCH2Cl2に溶解され、シリカゲルカラム上に装荷される。前記カラムは溶出され、産物が回収される。溶媒は真空蒸散され、前記産物は室温で終夜乾燥される。この実施態様では、このようにして、実施例2で説明されるとおり前記色素の水酸化誘導体が得られる。
【0071】
本発明の目的のためには、前記色素の水酸化誘導体(II)は、色素ホスホアミダイト(I)を形成するのに十分な条件下で適当な試薬と反応させられる場合がある。本発明の実施態様によると、適当な試薬は、テトラゾール、エチルチオテトラゾール、2−シアノエチル・テトラ・イソプロピル・ホスホアミダイト(TIPA)及びジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(DIIPT)からなるグループから選択される場合がある。
【0072】
1つの実施態様では、水酸化誘導体(II)は、前記ホスホアミダイト色素の形成を可能にする条件下で、塩化メチレンと、テトラゾール(図2に示す)か、エチルチオテトラゾールかのいずれかと反応させられる。このステップで製造されるホスホアミダイト色素の一般的な構造は上記のとおり化学式(I)に示される。
【0073】
本発明のホスホアミダイト色素(I)の形成を可能にする異なる反応条件を使ってもかまわないが、実施例3で詳細に説明される1つの実施態様では、水酸化誘導体(II)と、無水塩化メチレンとがアルゴン存在下で保護されたフラスコ内に入れられて、0°Cで15分間撹拌される。その後TIPAがシリンジを使って前記フラスコに添加され、その後、テトラゾール溶液かエチルチオテトラゾールかのいずれかが添加される(図3)。反応液は0°C1時間撹拌される。その後、混合液は室温まで温められ、反応が室温で20時間継続される。その後前記混合液は10%重炭酸ナトリウム溶液で2回洗浄され、有機層はさらに2回蒸留水で洗浄される。有機層は回収され、無水硫酸ナトリウムで約1時間乾燥される。前記硫酸ナトリウムは濾過して除去され、溶媒は真空下で除去され、混合物は真空下で乾燥される。残渣は無水塩化メチレンに溶解され、無水エーテルに添加されて、その後約30分間静置される。その後溶媒は除去され、生成物は終夜真空下で乾燥される。実施例3は適当な反応条件についてのさらなる詳細を提供する。
【0074】
別の実施態様では、水酸化誘導体(II)が、図3のステップ3に示すとおり、ホスホアミダイト色素の形成を可能にする条件下で、塩化メチレンと、2−シアノエチル・テトライソプロピルホスホアミダイト(TIPA)と、ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(DIIPT)とともに反応される。
【0075】
ホスホアミダイト色素の形成を可能にするかぎりいかなる反応条件を使ってもかまわないが、1つの実施態様では、水酸化誘導体(II)と無水塩化メチレンとがアルゴン存在下で保護されたフラスコ内に入れられ、室温で15分間撹拌される。TIPA及びDIIPTが添加され、混合液が室温で2時間アルゴン又は窒素雰囲気下で撹拌される。その後、前記混合液は3時間25−30°Cに加熱される。前記混合液は冷却され反応が終夜継続される。前記混合液は重炭酸ナトリウムで2回洗浄され、水で2回洗浄される。有機層は回収され、無水硫酸ナトリウムで乾燥される。硫酸ナトリウムはアルゴン保護下の加圧漏斗で除去され、残渣は真空中で乾燥される。前記残渣は無水塩化メチレンに溶解され、無水エーテルに添加される。懸濁液は15分間静置され、溶媒はアルゴンによって保護された加圧漏斗を用いて除去される。この工程は繰り返され、30分間の静置時間が許される。エーテルは濾過して除去され、混合物は真空下で乾燥される。生成物はビンに回収され、室温、高真空下で終夜乾燥される。実施例4は適当な反応条件についてさらなる詳細を提供する。
【0076】
本発明の別の局面は生体分子の標識方法を提供する。該方法は、上記のとおりの一般式(I)を有する本発明の色素ホスホアミダイトが前記生体分子に結合することを可能にする条件下で、該色素ホスホアミダイトを該生体分子と反応させるステップを含む。前記生体分子は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド又は核酸からなるグループから選択される場合がある。当業者は、本発明の開示を参照して、過度の実験を要することなく標識条件を調べることができる。
【0077】
本発明のホスホアミダイトは適当な条件下で広範囲の生体分子を標識するのに利用できるが、実施例6でより詳細に説明される1つの実施態様では、環状Cy7(OMe)のホスホアミダイトがオリゴヌクレオチドを標識するのに用いられた。前記色素ホスホアミダイトは無水アセトニトリル中に溶解され、5’末端との結合を可能にするために前記オリゴヌクレオチドと10分間結合された。
【0078】
実施例6により詳細に説明されるとおり、標識されたプライマーの安定性の研究が実施され、本発明の1つの実施態様の環状Cy7(OMe)のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドは、環状Cy7(H)のホスホアミダイトで標識されたプライマーよりも機能的な安定性が向上することを示す。図13、表4に示すとおり、環状Cy7(OMe)のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドの平均半減期は3.7週間であるが、環状Cy7(H)のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドの平均半減期は1.3週間である。同様の傾向はPCR産物収率(図15)及び色素比(図14)のデータによって証明される。これらの結果は、本発明のホスホアミダイトは従来技術よりも効率的にオリゴヌクレオチドを標識する能力において優れていることを示す。
【0079】
当業者は、本発明の色素のホスホアミダイトがオリゴヌクレオチド配列のどこにでも導入できることを了解するであろう。しかし、付加の好ましい場所は、色素標識による雑種形成との干渉が最小となる、オリゴヌクレオチドの5’末端である。多色標識オリゴヌクレオチドを提供するために第2の色素を付加することは、商業的に入手可能なリンカーを利用することによって可能である。したがって本発明は、生体分子の蛍光検出用の安定で便利な標識を提供する。該標識は、いずれかのDNA合成機上で単一の自動化されたステップでオリゴヌクレオチドに付加でき、従来用いられてきた保護−脱保護のステップを必要としない。
【0080】
本発明の色素のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドは、DNA又はRNAを含む試料中の特異的な相補的ヌクレオチド配列の有無及び量を同定するための蛍光雑種形成プローブとして利用される場合がある。これら及び多くの他の可能なシアニン色素標識の用途の詳細な説明は、係属中の「効率的な活性化シアニン色素」という名称の米国特許第6,110,630号明細書と、「発光法による生物学的その他の材料の検出用標識試薬としてのシアニン色素」という名称の米国特許第5,627,027号明細書と、「発光アリルスルホン酸シアニン色素を用いる材料の標識及び検出方法」という名称の米国特許第5,569,587号明細書に提供され、これらの関連する内容は引用によって本明細書に取り込まれる。
【0081】
上記に説明されたオリゴヌクレオチド以外の生物学的材料を標識するために異なる反応条件が使われる場合があるが、1つの実施態様では、ペプチド及びタンパク質は無水条件下で標識される。かかる標識ペプチド及びタンパク質も、従来技術のホスホアミダイトで標識されたペプチド及びタンパク質と比較うsると安定性が向上すると予測される。
【0082】
以下の実施例は、本発明の範囲を例示することを意図するものであって、限定する意図はない。かかる実施例は使用されるかもしれない実施態様の典型的なものではあるが、代替的に、当業者に知られた他の手順が利用されてもかまわない。実際、当業者は、本明細書の開示内容に基づいて、過度の実験を伴うことなく、さらなる実施態様を容易に想到し作成することができる。
【0083】
これらの実施例に用いられる一般的な分析方法及び特徴付けの技術は、以下に示される。1H NMRスペクトルは、300MHzで(ブルカー社)分光装置により記録された。化学的シフトはTMSに対して百万分の1部(ppm、δ)で記録された。31P NMRスペクトルは300MHzで(ブルカー社)分光装置により記録された。化学シフトはリン酸に対して百万分の1部(ppm、δ)で記録された。分析用逆相HPLCによる分析は、46MM X 25CM(ベックマン カタログ番号#235329)C18ウルトラスフェアカラム(5μ 粒子)を取り付けたベックマン高圧液体クロマトグラフィ装置で実施された。
【実施例1】
【0084】
環状Cy7(Cl)−OHの合成
磁気スターラー・バー及びコンデンサ付きのオーブン乾燥済み500mL丸底フラスコ中に、10.28gの臭化1−(1’−ヒドロキシヘキシル)−2,3,3−トリメチルインドーリウム(30.2ミリモル)と、9.52gのヨウ化エチル−2,3,3−トリメチルインドーリウム(30.2ミリモル)と、160mLの無水エタノールとが添加された。全ての固形物は室温で混合液を撹拌することによって溶解された。その後、10.86gのN−[(3−アニリノメチレン)−2−クロロ−1−シクロヘキセネル・メチレン」アニリン・モノヒロドクロリド(リンカー)(30.2ミリモル)が前記フラスコ中に添加された。前記混合液は室温で撹拌され、溶液中の全ての固形物が溶解された。その後6gの無水酢酸ナトリウムが前記フラスコ中に添加された。前記溶液は110−120°Cの油浴中で1時間加熱還流され、その後室温まで冷却された。反応が完了したかどうかを知るために、前記混合液は薄層クロマトグラフィ(TLC、溶媒システム CH2Cl2:メタノール:アセトン:酢酸エチル=85:5:5:5)によってチェックされた。溶媒は真空下で除去され、混合液は真空下で2時間乾燥された。その後、得られた混合物は30mLのCH2Cl2に溶解され、300mLのエーテル中で沈殿された。溶媒は濾過によって除去され、全ての固形物が回収され、真空下で1時間乾燥された。その後、残った固形物は40mLのCH2Cl2中に溶解され、シリカゲルカラム内に装荷された。該カラムは勾配溶媒システム(塩化メチレン:アセトニトリル:アセトン、体積比は100:0:0から60:20:20まで変化させた)で、100%塩化メチレン(約2L)で開始して、徐々に溶媒システムを変化させて溶出した。分画が緑色になったとき、分画あたり約250mLのセグメントに分取され、薄層クロマトグラフィ(TLC、溶媒システム CH2Cl2:メタノール:アセトン:酢酸エチル=85:5:5:5)によって監視された。生成物を含む分画は丸底フラスコにプールされ、溶媒が蒸散された。その後、生成物は室温で高真空下で終夜乾燥された。結果は、9.0gの生成物で、環状Cy(Cl)−OHの47%の収率であった。以下の物理的特性が観察された。
【0085】
1H NMR (CDCl3): δ1.46 (t, 3H−CH2CH3), δ1.6 (m, 4H, 2CH2) δ1.8 (s, 12H, (CH3)4), δ1.85 (m, 4H, 2CH2), δ2.0 (m, 2H, 環のCH2), δ2.8 (t, 4H, 環の(CH2)2), δ3.75 (t, 2H, CH2), δ4.2 (m, 4H, (CH2−N)2), δ6.2 (t, 2H), δ7.2−7.55 (m, 8H, 芳香族)及びδ8.4 (d, 2H). (図5).
VIS−NIR λmaz 778nm.
【実施例2】
【0086】
環状Cy−7(OMe)−OHの合成
アルゴン存在下でパージされ保護された磁気スターラー・バー及びコンデンサ付きのオーブン乾燥済み250mL丸底フラスコ中に、5gのNaOMe粉末と、200mLの無水メタノールとが添加された。溶液は、NaOMeが完全に溶解することを担保するために撹拌された。これに、10gの環状Cy(Cl)−OH(15.08ミリモル)が添加された。得られた混合液は80−100°Cの油浴中で1時間加熱還流され、その後、室温まで冷却された。溶媒は真空下で蒸散され、残渣は真空下で乾燥された。その後乾燥固形物が20−30mLの塩化メチレンに溶解された。試料はシリカゲルカラム内に装荷された。該カラムは、100%塩化メチレンから開始して、1%メタノールから5%メタノールまでの勾配に沿って徐々に変化させながら溶出された。分画は薄層クロマトグラフィ(TLC、溶媒システム CH2Cl2:メタノール:アセトン:酢酸エチル=85:5:5:5)を用いてチェックされ、予想された分画が250mLフラスコ内に回収された。その後前記予想された分画はプールされ、全ての溶媒が真空下で蒸散された。生成物を室温で終夜真空下で乾燥させる。結果は、生成物8.1gで、環状Cy−7(OMe)−OHの81%の収率であった。
【0087】
以下の物理的特性が観察された。
1H NMR (CDCl3): δ1.45 (t, 3H, CH2−CH3), δ1.55 (m, 2CH2), δ1.63 (s, 12H, (CH3)4), δ1.8−1.9 (m, 6H, 3−CH2), δ2.5 (t, 4H, 環の2CH2), δ3.75 (t, 2H, CH2), δ3.92 (s, 3H, O−CH3), δ4.2 (m, 4H, (CH2−N)2), δ6.1 (dd, 2H), δ7.2−7.55 (m, 8H, 芳香族)及びδ8.0(d, 2H). (図5)
VIS−NIR λmax 750 nm.
【実施例3】
【0088】
環状Cy−7(OMe)−ホスホアミダイトの合成(方法1)
アルゴン存在下でパージされ保護された、磁気スターラーバー付きのオーブン乾燥済み250mL丸底フラスコに、5gの環状Cy−7(OMe)−OH(7.58ミリモル)と、200mLの無水塩化メチレンとが添加された。溶液は0°Cで(温度は氷浴で制御された)15分間撹拌された。その後4.57gのTIPA(0.015ミリモル)がシリンジを使って前記フラスコ内に添加され、その後、15.2mLの0.5Mテトラゾール溶液か、24.6gmの4%エチルチオテトラゾールかが添加された。反応混合液は0°Cで1時間撹拌された。その後前記混合液は、反応を約20時間(終夜)室温で継続させるために、室温まで温められた。前記反応混合液は、生成物が開始材料よりも高いRFを有することを確かめるために、TLC(溶媒システム CH2Cl2:メタノール:アセトン:酢酸エチル=85:5:5:5)によってチェックされた。その後前記反応混合液は、分離漏斗に移され、200mLの10百分率重炭酸ナトリウム溶液で2回洗浄された。その後有機層は300mLの蒸留水で2回洗浄され、有機相が回収された。その後有機溶液は約1時間20gの無水硫酸ナトリウムで乾燥され、その後、該硫酸ナトリウムは濾過して除去された。その後残存する溶媒はRoto−vap(回転式エバポレータ)によって真空下で除去され、残渣は真空下で1時間乾燥された。前記残渣は最少量の無水塩化メチレン(約10−20mL)に溶解され、この溶液が500mLの無水エーテルに添加された。混合液は約30分間静置され、前記エーテルがアルゴンによって保護された加圧漏斗によって除去された。残った固形物は30分間真空下で乾燥され、上述の沈殿の手順が1回繰り返された。その後最終生成物が室温で終夜真空下で乾燥された。3.6gの生成物環状Cy7(OMe)−ホスホアミダイトが55%の収率で回収された。
【実施例4】
【0089】
OMe−環状−Cy7−ホスホアミダイトの合成(方法2)
アルゴン存在下でパージ及び保護された、磁気スターラーバー付きのオーブン乾燥済み250mL丸底フラスコに5gの環状Cy7(OMe)−OH(7.58ミリモル)と、200mLの無水塩化メチレンとが添加された。溶液は室温で15分間撹拌された。シリンジを用いて、6±0.4gのTIPA(6.0±0.2mL、又は、0.015モル)が前記フラスコに添加され、その後、1.5gのジイソプロピルアンモニウムテトラリド(DIIPT、活性化剤)が添加された。その後、反応混合液はアルゴン又は窒素雰囲気下で2時間室温で撹拌され、その後、25−30°Cまで3時間加熱された。その後、混合液は室温まで冷却され、反応は室温で約16時間(終夜)継続された。前記反応混合液は、生成物が開始材料よりも高いRFを有することを確認するために、薄層クロマトグラフィ(溶媒システム CH2Cl2:メタノール:アセトン:酢酸エチル=85:5:5:5)によってチェックされた。前記反応混合液は分離漏斗に移され、200mLの10%重炭酸ナトリウム溶液で2回洗浄された。有機層は2回300mLの蒸留水で洗浄された。有機相は回収され、40gの無水硫酸ナトリウムで約1時間乾燥された。前記硫酸ナトリウムはアルゴンによって保護された加圧漏斗を用いて濾過して除去さrえ、溶媒は濾液から回転式エバポレータによって除去された。残渣は高真空下で1時間乾燥され、その後、該残渣は最少量の無水塩化メチレン(約20−30mL)に溶解された。その後この溶液は500mLの無水エーテルに1滴ずつ添加され、懸濁液は15分間静置された。溶媒はアルゴンによって保護された加圧漏斗を用いて除去され、残った混合物は真空下で1時間乾燥された。その後上述の沈殿の手順が1回繰り返され、混合液は約30分間静置された。その後無水エーテルはアルゴンで保護された加圧漏斗を用いて濾過して除去された。その後残存固形物は真空下で1時間乾燥された。生成物はビンに回収され、該生成物は室温で終夜高真空下で乾燥された。この工程は、4.6gの生成物を、OMe−環状−Cy7−ホスホアミダイトの70%の収率で提供した。以下の物理的特性が観察された。P31 NMR (CDCl3): δ144.24 (純度95%). (図6).
【実施例5】
【0090】
環状Cy7(OMe)対環状Cy−7(H)の加速安定性試験
環状Cy7(OMe)対環状Cy−7(H)ホスホアミダイトの加速安定性試験は37°C及び室温で行われた。試料は37°C又は室温で保存され、異なる時間ポイントでリンNMRと、C1カラム上の高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)と、オリゴヌクレオチドへの結合とが実施された。前記オリゴヌクレオチドは、穏和な切断及び脱保護試薬である、0.05M K2CO3/MeOHを用いて切断及び脱保護され、蒸散され、C−18 HPLCのUV−VISスペクトル及び%面積によって解析された。データは図9及び10の表1―3に要約される。
【0091】
表2及び3の発光/吸光比は、保存温度での色素の吸光及び発光特性を示す。前記比は、環状Cy−7(H)については経時的に環状Cy7(OMe)ホスホアミダイトと比べてより実質的に変化するが、これは、環状Cy7(OMe)の安定性がより高いことを示す。同様に、環状Cy7(OMe)ホスホアミダイトの場合に色素の分解と関連する31P NMR測定値の百分率の低下が少ないことは、環状Cy7(OMe)よりも安定性が高いことを示す。
【実施例6】
【0092】
色素ホスホアミダイトのN末端への結合
標識プライマーの加速安定性試験は、37°C及び室温で実行された。ポリヌクレオチドは、Apac、Gipr−pac、Cac及びTホスホアミダイトを使ってABI394で合成された。100mgの環状Cy7(OMe)又は環状Cy−7(H)ホスホアミダイトは1mLの無水アセトニトリル(AcCN)に溶解され、配列の5’末端に10分間結合された。前記オリゴヌクレオチドは0.05M K2CO3/MeOHを用いて終夜室温で切断及び脱保護され、蒸散され、逆相高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)で精製された。精製されたオリゴヌクレオチドは安定性試験のために37°C及び室温で保存された。異なる時点で試料が取り出され、色素比及び機能性試験が実施された。色素比は260nmの吸光度/763nmの吸光度/オリゴヌクレオチドの長さによって測定された。プライマーの配列は以下のとおりである。
オリゴヌクレオチド1:5’ GATCCCAAGCTCTTCCTCTT 3’(配列番号1)
オリゴヌクレオチド2:5’ CCCTGGGCTCTGTAAAGAATAGTG 3’(配列番号2)
オリゴヌクレオチド3:5’ TTCCAGCCTAGGTAGCAGTG 3’(配列番号3)
【0093】
本試験に関するデータは図11−15に要約される。
【0094】
環状Cy7(OMe)のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドは、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトで標識されたプライマーよりも高い安定性を示す。例えば、本発明のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドの勝れた安定性は、機能的安定性試験(図15)及び色素比に基づく安定性試験(図14)によって証明される。本発明のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドは、37°Cで5日間(−20°Cで7.18年間に等しい)インキュベーションされたとき、約2.5倍安定性が高い。ノイズのレベルは環状Cy7(OMe)又は環状Cy−7(H)のいずれの合成とも相関しないようであった(図15)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはシアニン色素に関し、具体的には、安定化環状架橋シアニン色素ホスホアミダイトと、その合成方法及び生体分子標識におけるその使用方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
生物医学研究及び組換えDNA技術において採用される多くの手順は、プローブ、プライマー、リンカー、アダプター及び遺伝子断片としてのオリゴヌクレオチドの使用に大きく依存する。これらの使用のいくつかは非特許文献1及び2のような一般的な実験マニュアルに説明される。自動化DNA配列決定及びマッピングと、in situハイブリダイゼーション検出と、PCR産物検出と、構造的な研究とのような多くの用途では標識オリゴヌクレオチドが必要である。これらの用途には伝統的に放射能標識が用いられたが、最近、ある種のシアニン色素が生体分子の標識に非常に有用であることが証明された。
【0003】
シアニン色素は、取扱いの安全性と、長波長(longer wavelength)での吸光度と、吸光係数の高さと、比較的高い量子効率と、分子サイズの小ささと、化学的操作の容易性と、試薬、pH及び温度に対する合理的な安定性とを含む、多くの望ましい特性を提供する。生体分子のバックグランド蛍光は低く、スペクトルの長波長部分でシアニン色素の吸光度が高いことのために、シアニン色素は優れた信号対雑音比を提供する。シアニン色素の発色団部分を修飾することによって、400からほぼ1100nmまでの広いスペクトル範囲で吸光及び発光する異なる蛍光標識試薬を得ることができる。シアニン色素に取り込むことができる官能基の多機能性が、前記色素及び標識された産物の可溶性を制御することを可能にし、アッセイ混合液中の無関係な成分への標識された物質の非特異的結合を低減するのに役立つ(特許文献1及び2)。
【0004】
従来、シアニン色素でのオリゴヌクレオチド標識は、手作業の2段階の手順で実行される。まず、オリゴヌクレオチドが合成され、その後、活性化シアニン色素が該合成オリゴヌクレオチドの5’末端に結合される。通常シアニン色素は、シアニン色素をオリゴヌクレオチドに共有結合で結合するのを補助する反応基の導入によって活性化される(例えば特許文献1及び2を参照せよ。)。この2段階法は遅く(4−5日)、手間がかかり、高価で、しばしば望ましくない有機副産物を生成する。代替的なより便利な1段階のアプローチでは、蛍光色素はホスホアミダイトに変換され、オリゴヌクレオチドの合成の際に該オリゴヌクレオチドの直接標識に使用される。しかし、現在利用可能なシアニン色素のホスホアミダイトは、その標準的で未修飾のものよりも実質的により高価で安定性がより低い。
【0005】
特許文献3は、合成オリゴヌクレオチドを標識するためのカルボシアニンホスホアミダイトの使用を開示する。しかし特許文献3のシアニンホスホアミダイトは、トリチル基、4−O−モノメトキシトリチル基、4,4’−O−ジメトキシトリチル基又はアシル基のような保護基を含む。保護基は保存及び取扱いの際の不安定性を伴うのが通常であるので、これらのホスホアミダイトの市場価値を下げる。
【0006】
特許文献4は、合成オリゴヌクレオチド標識へのシアニンホスホアミダイト色素の使用を開示する。特許文献4の色素は商業的に有用ではあるが、それでもやはりやや高価で、少し不安定であるという特徴を有する。
【0007】
特許文献5は、複素環の窒素原子の1つを移動度を修飾する原子団で修飾されたシアニン色素のクラスを開示する。特許文献5は、シアニン色素の内在的な不安定性を認識し、塩基性条件下で分解しやすい(base−labile)除去可能な保護基を用いて環外アミンその他の官能基を保護することを示唆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,569,587号明細書
【特許文献2】米国特許第5,627,027号明細書
【特許文献3】米国特許第5,556,959号明細書
【特許文献4】米国特許第6,331,632号明細書
【特許文献5】米国特許第6,716,994号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Ed.,J.Sambrook,et al.,Eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989
【非特許文献2】Current Protocols In Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,Eds.,Current Publications,1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
関連技術が複数の欠陥を有する点から見て、生体分子の直接標識用の非常に安定で対費用効果の高いシアニン色素ホスホアミダイトを提供することが本発明の目的である。保護基の導入及び除去のステップを必要としないホスホアミダイトを合成する便利な方法を提供することも本発明の目的である。オリゴヌクレオチドの合成の際に直接該オリゴヌクレオチドを標識する方法を提供することも本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上及びその他の目的は、以下の一般式(I)を有する本発明の色素で達成される。
【0012】
【化1】
(I)
【0013】
上記化学式(I)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、R1はアルキル基であり、(PAM)はホスホアミダイト基であり、X▲横一文字の入った丸(上付き)▼(以下では、「(−)」と表記する。)は陰イオンであり、QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、OR2は第2級アルキル基である。
【0014】
本発明の1つの実施態様によると、前記色素は、環状トリカルボシアニン色素(環状Cy7)、ベンゾインドール環状シアニン色素(環状BCy7)及びジベンゾインドール環状シアニン色素(環状DBCy7)からなるグループから選択されるシアニン色素である。前記ホスホアミダイト基は、N,N−ジイソプロポル−O−β−シアノエチル・ホスホアミダイト基の場合がある。
【0015】
本発明の別の局面は色素ホスホアミダイトの合成方法を提供する。該方法は、
(a)化学式(II)を有する、色素の水酸基誘導体を形成するステップと、
(b)化学式(II)の水酸化誘導体の水酸基の水素をホスホアミダイト基で置換するステップとを含む。
【0016】
【化2】
(II)
【0017】
上記化学式(II)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、R1はアルキル基で、X(−)は陰イオンであり、QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、OR2は第2級アルキル基である。
【0018】
本発明の1つの実施態様では、化学式(II)を有する色素の水酸基誘導体を合成するステップは、一般式(XIV)を有する色素の塩素化誘導体の形成を可能にする条件下で化合物(XI)、(XII)及び(XIII)を反応させるステップを含む。
【0019】
【化3】
(XIV)
【0020】
上記化学式(XIV)において、QはL−Clで、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、Clは塩素である。
【0021】
化合物(XI)は以下の一般式を有するいずれの化合物であってもよい。
【0022】
【化4】
(XI)
【0023】
化合物(XII)は以下の化学式を有する
【0024】
【化5】
(XII)
【0025】
上記化学式(XII)において、Phはフェニル基である。
【0026】
化合物(XIII)は以下の一般式を有するいずれの化合物であってもよい。
【0027】
【化6】
(XIII)
【0028】
上記化学式(XIII)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、R1はアルキル基で、X(−)は陰イオンである。
【0029】
本発明の1つの実施態様では、前記色素の水酸基誘導体を合成するステップは、シアニン色素の水酸基誘導体(II)の形成を可能にする条件下で、シアニン色素の塩素化誘導体を還流することを含む。
【0030】
本発明のさらなる局面は、一般式(I)を有する本発明の発光色素ホスホアミダイトがオリゴヌクレオチドを直接標識するのに使用される方法を提供する。
【0031】
本発明は、ポリヌクレオチド、タンパク質及びペプチドのような生体分子の標識における他の色素の使用と比較した、経済及び技術の両方の面での利点を提供する。以下に詳細に説明するとおり、本発明の色素ホスホアミダイトは、オリゴヌクレオチド合成の際に、該オリゴヌクレオチドに前記色素を自動的に添加するために、例えばオリゴヌクレオチドABI394(ベックマン・コールター社、カリフォルニア州)のようないずれかのDNA合成機上で直接使用される場合がある。保護基なしで色素ホスホアミダイトを使用することにより、保護基を除去するステップが除去されるために、標識オリゴヌクレオチド調製に要する全時間が非常に短縮される。さらに、Cy7及びDBCy7ホスホアミダイトのコンジュゲートされた二重結合鎖内にOR2基で置換された環状原子団を取り込むことは、Cy5様分子種への部分的変換を防止し、安定な色素の形成につながる。
【0032】
本発明のホスホアミダイトの安定性は、OR2基で置換された環状架橋を有するので、本発明の発明者の以前の成果を反映する特許文献4に記載のホスホアミダイトのような、未置換環状架橋色素のホスホアミダイトの安定性をはるかに上回る。本発明の置換環状架橋色素のホスホアミダイトは、特許文献4のホスホアミダイトよりも実質的に長期間にわたって純度を維持する。これらはオリゴヌクレオチド結合効率も高い。オリゴヌクレオチド標識に用いるとき、これらは従来技術の色素ホスホアミダイトの半減期よりもはるかに長い半減期を示す。これは、本発明の色素ホスホアミダイトをオリゴヌクレオチドその他の生体分子の標識に利用することのよって提供される費用及び時間に加えて、現在利用可能なホスホアミダイトで標識された生体分子と比較して、より高い標識産物の全体的な収率が達成される。
本発明は例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
化学式(I)を有する色素ホスホアミダイトであって、
【化1】
(I)
上記化学式(I)において、
各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の1個又は複数個の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、
mは1から18までの整数であり、
Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、
R1は第1アルキル基であり、
(PAM)はホスホアミダイト基であり、
X−は陰イオンであり、
QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、R2は第2アルキル基である、色素ホスホアミダイト。
(項目2)
前記芳香族の環は、フェニル基、ナフチル基又は複素環基である、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目3)
前記芳香族の環は、ベンゾインドーリネン、置換インドーリネン及び置換ベンゾインドーリネンからなるグループから選択される、項目2に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目4)
前記第1及び第2アルキル基は、骨格に1ないし18個の炭素原子を有するアルキル基又は置換アルキル基からなるグループから独立に選択される、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目5)
前記第1アルキル基はエチル基である、項目4に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目6)
前記第2アルキル基はメチル基である、項目4に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目7)
前記コンジュゲートされた環状原子団は、シクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロヘプテンからなるグループから選択される、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目8)
前記色素はシアニン色素である、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目9)
前記シアニン色素は、環状トリカルボシアニン色素(環状Cy7)、ベンゾインゾール環状シアニン色素(環状BCy7)及びジベンゾインドール環状シアニン色素(環状DBCy7)からなるグループから選択される、項目8に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目10)
前記陰イオンは、I−又はBr−である、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目11)
前記ホスホアミダイト基は、N,N−ジイソプロピル−O−β−シアノエチル・ホスホアミダイト基である、項目1に記載の色素ホスホアミダイト。
(項目12)
(a)化学式(II)を有する色素の水酸化誘導体を形成するステップと、
(b)前記水酸化誘導体(II)の水酸基の水素をホスホアミダイト基で置換するステップとを含み、
【化2】
(II)
上記化学式(II)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の1個又は複数個の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、
mは1から18までの整数であり、
Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、
R1は第1アルキル基で、
(PAM)はホスホアミダイト基で、
X−は陰イオンであり、
QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、R2は第2アルキル基である、色素ホスホアミダイト基の合成方法。
(項目13)
前記芳香族の環は、フェニル基、ナフチル基又は複素環基である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記第1及び第2アルキル基は、骨格に1ないし18個の炭素原子を有するアルキル基又は置換アルキル基からなるグループから独立に選択される、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記コンジュゲートされた環状原子団は、シクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロヘプテンからなるグループから選択される、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記色素はシアニン色素である、項目12に記載の方法。
(項目17)
前記シアニン色素は、環状トリカルボシアニン色素(環状Cy7)、ベンゾインゾール環状シアニン色素(環状BCy7)及びジベンゾインドール環状シアニン色素(環状DBCy7)からなるグループから選択される、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記ホスホアミダイト基は、N,N−ジイソプロピル−O−β−シアノエチル・ホスホアミダイト基である、項目12に記載の方法。
(項目19)
前記色素の水酸化誘導体を形成するステップは、一般式(XIV)を有する色素の塩素化誘導体の形成を可能にする条件下で、化合物(XI)、(XII)及び(XIII)を反応させるステップを含み、
【化3】
(XIV)
【化4】
(XI)
【化5】
(XII)
【化6】
(XIII)
上記化学式において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、R1はアルキル基で、X−は陰イオンであり、
QはL−Clであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、Clは塩素で、
Phはフェニル基である、項目12に記載の方法。
(項目20)
前記芳香族の環は、フェニル基、ナフチル基又は複素環基である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記陰イオンは、I−又はBr−である、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記アルキル基は、1ないし18個の炭素原子を有する、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記アルキル基はエチル基である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記化合物(XIII)は、化合物(XIII)の形成を可能にする条件下で、化合物(XV)を
【化7】
(XV)
Br(CH2)m−OHと反応させることによって形成され、
上記化学式において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、YはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、mは1から18までの整数である、項目19に記載の方法。
(項目25)
前記色素は環状Cy7で、化合物(XI)はヨウ化1−エチル−2,3,3−トリメチルインドーリニウムで、化合物(XIII)は、臭化1−(1’−ヒドロキシヘキシル)−2,3,3−トリメチルインドーリニウムである、項目19に記載の方法。
(項目26)
前記色素は環状DBCy7で、化合物(XI)はヨウ化1−エチル−1,1,2−トリメチル−H−ベンズインドーリニウムで、化合物(XIII)は臭化1−(6−ヒドロキシヘキシル)−1,1,2−トリメチル−H−ベンズインドーリニウムである、項目19に記載の方法。
(項目27)
前記色素の水酸化誘導体を形成するステップは、化合物(XIV)の塩素を−OR2基で置換するステップを含み、R2は第2アルキル基である、項目19に記載の方法。
(項目28)
前記塩素を置換するステップは、化合物(XIV)と、NaOMe粉末と、無水メタノールとの混合液を加熱還流するステップを含み、項目28に記載の方法。
(項目29)
前記置換するステップ(b)は、化学式(I)の色素ホスホアミダイト基
【化8】
(I)
の形成を可能にする条件下で、前記水酸化誘導体(II)を塩化メチレンと、テトラゾール又はエチルチオテトラゾールと反応させることによって実行され、
上記化学式において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の1個又は複数個の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、
mは1から18までの整数であり、
Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、
R1は第1アルキル基であり、
(PAM)はホスホアミダイト基であり、
X−は陰イオンであり、
QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、R2は第2アルキル基である、項目12に記載の方法。
(項目30)
前記置換するステップ(b)は、化学式(I)の色素ホスホアミダイト基
【化9】
(I)
の形成を可能にする条件下で、前記水酸化誘導体(II)を塩化メチレンと、2−シアノエチル・テトライソプロピルホスホアミダイト(TIPA)と、ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(DIIPT)と反応させることによって実行され、
上記化学式において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の1個又は複数個の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、
mは1から18までの整数であり、
Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、
R1は第1アルキル基であり、
(PAM)はホスホアミダイト基であり、
X−は陰イオンであり、
QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、R2は第2アルキル基である、項目12に記載の方法。
(項目31)
項目1に記載の一般式(I)を有する色素ホスホアミダイト基と生体分子との結合を可能にする条件下で、該色素を該生体分子と反応させるステップを含む、生体分子の標識方法。
(項目32)
前記生体分子はオリゴヌクレオチドである、項目1に記載の方法。
(項目33)
前記生体分子はタンパク質又はペプチドである、項目1に記載の方法。
(項目34)
項目1に記載の一般式(I)を有する色素ホスホアミダイト基で標識されたオリゴヌクレオチドを含む、標識オリゴヌクレオチド。
(項目35)
項目1に記載の一般式(I)を有する色素ホスホアミダイト基で標識されたタンパク質又はペプチドを含む、標識タンパク質又は標識ペプチド。
(項目36)
項目1に記載の一般式(I)を有する色素ホスホアミダイトを含む、オリゴヌクレオチドを標識するためのキット。
(項目37)
項目1に記載の一般式(I)を有する色素ホスホアミダイトを含む、タンパク質およびポリペプチドを標識するためのキット。
【0033】
本発明は、添付した特許請求の範囲に完全な範囲が定義され、その好ましい実施態様に以下のとおり説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の上記の特徴及びその他の特徴と、その入手方法とは、添付する図面とともに、以下の説明を参照することによって最も良く理解されるであろう。
【図1】図1A及び1Bは、本発明の色素ホスホアミダイトの合成方法の模式図である。
【図2】図2は、実施例1、2及び3に記載の本発明のある実施態様の環状(OCH3)−Cy7ホスホアミダイトの合成反応経路図である。
【図3】図3は、実施例1、2及び3に記載の補はの別の実施態様の環状(OCH3)−Cy7ホスホアミダイトの合成反応経路図である。
【図4】図4は、本発明のさらなる実施態様の環状(OCH3)−DBCy7ホスホアミダイトの合成反応経路図である。
【図5】図5は、環状(Cl)−Cy7の水酸化誘導体の31P NMRスペクトルを示す。
【図6】図6は、環状(OCH3)−Cy7の水酸化誘導体の31P NMRスペクトルを示す。
【図7】図7は、環状(OCH3)−Cy7ホスホアミダイトの31P NMRスペクトルを示す。
【図8】図8は、環状(OCH3)−Cy7ホスホアミダイトで標識された24量体のCEQ分析を示す。CEQは完全自動化遺伝子解析システムである。このシステムは、線状ポリアクリルアミドゲルを毛管アレイに自動的に充填し、試料を変性させて装荷し、電圧プログラムを適用して、データを解析する。CEQはサイズに基づいてDNA断片を分析するのが典型的である。
【図9】図9は、環状Cy7(OMe)ホスホアミダイトと、環状Cy7(H)との室温での安定性データを含む表1を示す。
【図10】図10は、環状Cy7(OMe)ホスホアミダイトの37°Cでの安定性データを含む表2と、環状Cy7(H)ホスホアミダイトの37°Cでの安定性データを含む表3とを示す。31P NMRスケールはppm(百万分の1)である。百分率は、144.64ppmでの主ピークの積分値を指す。結合効率は、前記ホスホアミダイトのオリゴヌクレオチドへの結合によって測定される。前記オリゴヌクレオチドは合成された後前記ホスホアミダイトに結合され、穏和な脱保護試薬で切断及び脱保護され、逆相HPLCで分析された。百分率は、HPLC上の標識オリゴヌクレオチドの面積百分率である。
【図11】図11は、時間に対する関数としての標識オリゴの色素比を示すチャートである。オリゴヌクレオチド1−3は、置換環状基(環状Cy7(OMe))か、未置換環状基(環状Cy7(H))かのいずれかを有する、環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識された。前記色素比は、260nmでの吸光度を、最大色素での吸光度(環状Cy7(H)については750nm、環状Cy7(OMe)については763nm)で除算し、前記オリゴヌクレオチドの長さで除算した商として計算される。
【図12】図12は、サイズ標準と比較された百分率信号としてCEQによって測定された時間に対する関数としてのプライマー1−3の安定性を示し、該サイズ標準と比較された百分率信号は、平均対立遺伝子座ピーク高の平均サイズ標準ピーク高に対する比として計算される。オリゴヌクレオチド1−3は環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識され、該環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトは置換環状基又は未置換環状基のいずれかを有する。
【図13】図13は、置換環状基又は未置換環状基のいずれかを有する環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチド1−3の半減期の推定値を含む表4を示す。
【図14】図14は、置換環状基(Cy7(OMe))又は未置換環状基(Cy7(H))のいずれかを有する環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識されたD16S539(オリゴ1)、アメロジェニン(Amelogenin、オリゴ2)及びD19S591(オリゴ3)について、−20°Cで等価な時間の関数として相対色素比を示すチャートを示す。
【図15】図15は、置換環状基(Cy7(OMe))又は未置換環状基(Cy7(H))のいずれかを有する環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識されたD16S539(オリゴ1)、アメロジェニン(オリゴ2)及びD19S591(オリゴ3)について、−20°Cで等価な時間の関数としてPCR増幅の相対収率を示すチャート(図15(1))を示す。図15は、置換環状基(Cy7(OMe))又は未置換環状基(Cy7(H))のいずれかを有する環状架橋Cy7色素のホスホアミダイトで標識されたD16S539(オリゴ1)、アメロジェニン(オリゴ2)及びD19S591(オリゴ3)についての時間の関数として、PCR増幅産物の百分率として非特異的なノイズのピークを示すチャート(図15(2))も示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
ホスホアミダイトの安定性を増大させるために、本発明はOR2基で置換された環状架橋基を用いる。したがって、本発明は以下の化学式(I)を有する色素ホスホアミダイトを提供する。
【0036】
【化7】
(I)
【0037】
上記化学式(I)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZは、S、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから独立に選択され、R1はアルキル基であり、(PAM)はホスホアミダイト基であり、X(−)は陰イオンであり、QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、OR2は第2級アルキル基である。
【0038】
活性化色素は、複素環か、フェニル環のような単環芳香族構造か、ナフチル環のような融合環構造かを含む場合がある。芳香族環は、ベンゾインドーリネン、置換インドーリネン及び置換ベンゾインドーリネンからなるグループから選択される場合がある。第1アルキル基は一般に1ないし18個の炭素原子を有する。本発明の1つの実施態様では、第1アルキル基はエチル基で、2個の炭素原子を含む。第2アルキル基は一般的には1ないし18個の炭素原子を有し、好ましくは1ないし6個の炭素を有する。本発明の1つの実施態様では、第2アルキル基はメチル基で、1個の炭素原子を含む。ホスホアミダイト基は通常はアルキル鎖で前記色素と結合する。該アルキル鎖の長さは炭素原子1ないし12個である。1つの実施態様では、アルキル鎖の長さは炭素原子約6個である。
【0039】
環状原子団Lは周囲の炭素構造にコンジュゲートされる場合がある。本発明の1つの実施態様では、前記環状原子団は、シクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロヘプテンからなるグループから選択される。本発明の化合物(I)は陰イオンX(−)を含む。このイオンはハロゲンであることが好ましいが、他の陰イオンが用いられる場合もある。例えば前記陰イオンは、合成戦略に応じて、I(−)又はBr(−)の場合がある。ホスホアミダイト基はN,N−ジイソプロピル−O−β−シアノエチル・ホスホアミダイト基でかまわないが、当業者に知られた他のホスホアミダイトが使用される場合がある。
【0040】
一般的には本発明の色素は、ホスホアミダイト基及びアルキル基を取り込み、かつ、OR2基で置換された環状架橋を有するかぎり、標識の目的に慣用されるいかなる蛍光色素であってもかまわない。ホスホアミダイト基及び第1アルキル基が本色素のインドール又はベンゾインドール部分の窒素と結合することが必要である。本色素の吸光及び発光波長はスペクトルの特定領域に限定されず、近紫外から近赤外又はそれらの間を超えたどこであってもかまわない。
【0041】
本発明の実施態様によると、本色素はシアニン及びこれに関連する色素の場合がある。シアニン色素は、長波長での吸収(安価な検出システムが使えること、及び、これらの波長での生物学的試料からのバックグランドが低いことにつながる。)と、高い吸光係数と、比較的高い量子効率と、小さな分子サイズと、蛍光特性を低下させることなく化学的操作が容易であること、試薬、pH及び温度に合理的な安定性があることを含む、敏感な検出標識として機能するうえで望ましい複数の特性を有する。
【0042】
本発明の1つの実施態様では、ホスホアミダイト色素は、環状トリカルボシアニン色素(環状Cy7)、ベンゾインドール環状シアニン色素(環状BCy7)及びジベンゾインドール環状シアニン色素(環状DBCy7)からなるグループから選択される。ベンゾインドール環状シアニンCBy7は1個のベンゼン基置換を有し、ジベンゾインドール環状DBCy7は対応するインドールシアニンである、環状Cy7に対して、2個の余分なベンゼン基置換を有する。このように、ベンゾインドール環状シアニンは、インドールの対応化合物よりも最大吸光及び発光波長が長い。
【0043】
OR2基を色素ホスホアミダイトのコンジュゲートされた環状原子団に導入することが未置換の環状原子団を有する色素ホスホアミダイトよりも安定性をさらに増大させることが本発明の発見である。前記コンジュゲートされた環状基は、シクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロヘプテンからなるグループから選択される場合がある。1つの実施態様では、前記環状原子団は、以下の構造(XVa)を有する。
【0044】
【化8】
(XVa)
【0045】
この実施態様では、得られたホスホアミダイト色素の合成コストは、未置換環状原子団を用いる対応する色素の合成コストの60%にすぎない。
【0046】
本明細書の実施例5により詳細に説明するとおり、本発明のホスホアミダイトは当業者に知られたホスホアミダイトより安定性において勝っている。例えば1つの実施態様では、置換環状シアニン色素(環状Cy−7(OMe))及び未置換環状シアニン色素(環状Cy−7(H))のホスホアミダイトがテストされた。環状Cy−7(H)のホスホアミダイトは、加速された安定性試験が実施されたとき、本発明の環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトよりも安定性が悪かった。HPLCにより測定(図9、表1に表す)したところでは、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトの純度は、67.60%で始まって、室温、4週間で52.11%まで低下したが、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトの純度は、もっと高い81.94%ではじまって、室温、4週間で68.92%と高い値にとどまった。さらに、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトのオリゴヌクレオチド結合効率は、室温、4週間で44.83%から15%まで落ち込んだが、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトのオリゴヌクレオチド結合効率は、室温、4週間で46.00%から35.49%までしか下がらなかった(図9、表1)。室温で4週間は、4°Cで13ヶ月に等しい。したがって、このデータは、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトが環状Cy−7(H)のホスホアミダイトよりはるかに安定であることを示す。本発明の色素の純度の増加と、製造から長期間経過後のオリゴヌクレオチド結合能力の増大とによって、本発明の色素はオリゴヌクレオチドを標識する能力について従来技術より勝れている。
【0047】
環状Cy−7(OMe)ホスホアミダイトは、環状Cy−7(H)ホスホアミダイトで標識されたものと比較して37°Cでの安定性の増大という同じ傾向を示した(図10、表2及び3)。環状Cy−7(H)のホスホアミダイトの純度は、49.93%で始まって、37°C、7日間で20.92%まで低下したが、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトの純度はもっと高い61.65%で始まって、37°C、7日間で59.95%という高い値にとどまった。さらに、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトのオリゴヌクレオチド結合効率は、37°C、7日間で30%から0%まで低下したが、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトのオリゴヌクレオチド結合効率は、37°C、7日間で43%から17%までしか低下しなかった。環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトの結合効率は第5日目で37.42%であったが、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトの結合効率は第5日目では既に2%まで低下していた。これは、本発明のホスホアミダイトが37°Cで環状Cy−7(H)のホスホアミダイトよりもはるかに安定なため、オリゴヌクレオチド標識により有用であることを示す。
【0048】
発光/吸光比及び31P NMRのデータも、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトは環状Cy−7(H)のホスホアミダイトよりも安定であることを証明する。発光/吸光比の変化は、色素自体の変化を反映する。前記比が大きく変化するほど、色素の安定性は低い。表2でわかるように、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトが7日間で1210から1088に色素比が変化するのに対し、環状Cy−7(H)は同じ期間で1882から1295まで色素比が変化した(表3)。31P NMRデータはホスホアミダイトの純度を反映する。環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトは7日間で15%ポイントだけしか低下しなかったのに対し、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトは40%ポイントも低下したという事実は、環状Cy−7(OMe)のホスホアミダイトが純度を保持する傾向が高いことを示す。このデータは、本発明のホスホアミダイトが環状Cy−7(H)のホスホアミダイトより37°Cではるかに安定性が高いことを再確認する。
【0049】
本発明の色素ホスホアミダイトは、該色素をオリゴヌクレオチドに自動的に添加するためにいずれかのDNA合成機に直接用いる場合がある。本発明の色素ホスホアミダイトはいかなる保護基も含まない。保護基なしでの色素ホスホアミダイトの使用によって、保護基を除去するステップが削除されるので、標識オリゴヌクレオチド調製に要する全時間は非常に短縮される。オリゴヌクレオチドその他の生体分子を標識するために本発明の色素ホスホアミダイトを使用することによって提供されるコスト及び時間に加えて、従来の2段階法より高い標識産物の全収率も達成される。
【0050】
本発明の別の局面は、色素ホスホアミダイトの合成方法を提供する。該方法は、
(a)以下の化学式(II)を有する色素の水酸化誘導体を形成するステップと、
(b)その水酸基の水素をホスホアミダイト基で置換するステップとを含む。
【0051】
【化9】
(II)
【0052】
上記化学式(II)において、各破線は融合した置換又は未置換の芳香族の環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、R1はアルキル基で、X(−)は陰イオンであり、QはL−Wであり、Lはコンジュゲートされた環状原子団で、WはOR2で、OR2は第2級アルキル基である。
【0053】
水酸基誘導体(II)は、複素環か、フェニル環のような単環芳香族構造か、ナフチル環のような融合環構造かを含む場合がある。1つの実施態様では、第1及び第2アルキル基は、主鎖の1個ないし18個の炭素を有する、アルキル基及び置換アルキル基からなるグループから独立に選択される。具体的には、ある実施態様では、第1アルキル基は2個の炭素を含み、第2アルキル基は1個の炭素を含む。特に関心があるのは、環状Cy7、環状BCy7及び環状DBCy7を含む、上記のとおり説明されたシアニン色素である。
【0054】
本発明の1つの実施態様によると、前記シアニン色素の水酸化誘導体を形成するステップ(a)は、一般式(XIV)を有するシアニン色素の塩素化誘導体の形成を可能にする条件下で、化合物(XI)、(XII)及び(XIII)を反応させるステップを含む。
【0055】
【化10】
(XIV)
【0056】
化合物(XI)は以下の一般式を有するいかなる化合物でもかまわない。
【0057】
【化11】
(XI)
【0058】
化合物(XII)は以下の化学式を有する。
【0059】
【化12】
(XII)
【0060】
上記化学式(XII)において、Phはフェニル基である。
【0061】
化合物(XIII)は以下の化学式を有する。
【0062】
【化13】
(XIII)
【0063】
上記化学式において、各破線は融合した置換又は未置換芳香族環を形成するのに必要な炭素原子を表し、mは1から18までの整数であり、Y及びZはS、O、N、CH2及びC(CH3)2からなるグループから選択され、R1はアルキル基で、X(−)は陰イオンである。
【0064】
特定の化合物(XI)及び(XIII)の選択は、合成されるべき色素ホスホアミダイトのタイプに依存する。環状Cy7ホスホアミダイトの合成のためには、化合物(XII)と、未置換の化合物(XI)及び(XIII)とを使って、その後、所望のOR2基を置換する場合がある。環状DBCy7ホスホアミダイトは、ベンズ置換された化合物(XI)及び(XIII)と、化合物(XII)とを使い、その後所望のOR2基に置換することによって合成される場合がある。
【0065】
本発明の1つの実施態様は、環状Cy7ホスホアミダイトの合成を伴う(図2)。この実施態様では、化合物(XI)がヨウ化1−エチル−2,3,3−トリメチルインドーリニウム、化合物(XIII)が臭化1−(6−ヒドロキシヘキシル)−1,1,2−トリメチルインドーリニウムの場合がある。別の実施態様では、環状DBCy7(図4)が合成される。この実施態様では、化合物(XI)がヨウ化1−エチル−1,1,2−トリメチル−H−ベンズインドーリニウムで、化合物(XIII)が臭化1−(6−ヒドロキシヘキシル)−1,1,2−トリメチル−H−ベンズインドーリニウムの場合がある。当業者は、適当な化合物(XI)、(XII)及び(XIII)を選択することによって他のホスホアミダイトが合成できることを了解するであろう。
【0066】
塩素化誘導体(IV)の形成を可能にするかぎりいかなる反応条件でも使用してかまわないが、1つの実施態様では、化合物(XI)、化合物(XIII)及び無水エタノールが、全ての固形物が溶解するまで室温で撹拌される。その後化合物(XII)が溶液に添加され、該溶液は全ての固形物が溶解するまで再度撹拌された。その後、無水酢酸ナトリウムが前記溶液に添加され、1時間加熱還流される。その後、溶媒が除去され、混合物は真空乾燥される。その後、前記混合物はCH2Cl2に溶解され、エーテル中で沈殿され、再度真空乾燥される。再度前記混合物はCH2Cl2に溶解され、得られた溶液はシリカゲルカラム上に装荷される。該カラムは、CH2Cl2、メタノール、アセトン及び酢酸エチルを含む溶媒の勾配で溶出され、産物が分画として回収される。その後、前記産物は室温で終夜乾燥される。
【0067】
本発明の水酸化誘導体(II)を形成するステップは、さらに、背水酸化誘導体(II)の形成を可能にする条件下で、前記色素の塩素化誘導体(XIV)を試薬と反応させるステップを含む場合がある。誘導体(II)の形成を可能にするかぎりいかなる反応条件を使用してもかまわないが、本発明の1つの実施態様では使用される試薬はNaOR2である。R2はいかなるアルキル基でもかまわないが、1つの実施態様では、メチル基(Me)が用いられる。この実施態様では、OMe環状シアニン色素の水酸化誘導体は一般式(IIa)を用いて製造される。
【0068】
【化14】
(IIa)
【0069】
上記化学式(IIa)において、QはL−OMeで、Lはコンジュゲートされた環状原子団である。
【0070】
1つの実施態様では、NaOMeがアルゴン存在下で保護されたコンデンサ内で無水メタノールと混合され、NaOMeが完全に溶解するまで撹拌される。その後、前記色素の水酸化及び塩素化誘導体がフラスコ内に混合され、混合物が1時間加熱還流される。この溶液が冷却され、溶媒は真空蒸散される。その後、残渣はCH2Cl2に溶解され、シリカゲルカラム上に装荷される。前記カラムは溶出され、産物が回収される。溶媒は真空蒸散され、前記産物は室温で終夜乾燥される。この実施態様では、このようにして、実施例2で説明されるとおり前記色素の水酸化誘導体が得られる。
【0071】
本発明の目的のためには、前記色素の水酸化誘導体(II)は、色素ホスホアミダイト(I)を形成するのに十分な条件下で適当な試薬と反応させられる場合がある。本発明の実施態様によると、適当な試薬は、テトラゾール、エチルチオテトラゾール、2−シアノエチル・テトラ・イソプロピル・ホスホアミダイト(TIPA)及びジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(DIIPT)からなるグループから選択される場合がある。
【0072】
1つの実施態様では、水酸化誘導体(II)は、前記ホスホアミダイト色素の形成を可能にする条件下で、塩化メチレンと、テトラゾール(図2に示す)か、エチルチオテトラゾールかのいずれかと反応させられる。このステップで製造されるホスホアミダイト色素の一般的な構造は上記のとおり化学式(I)に示される。
【0073】
本発明のホスホアミダイト色素(I)の形成を可能にする異なる反応条件を使ってもかまわないが、実施例3で詳細に説明される1つの実施態様では、水酸化誘導体(II)と、無水塩化メチレンとがアルゴン存在下で保護されたフラスコ内に入れられて、0°Cで15分間撹拌される。その後TIPAがシリンジを使って前記フラスコに添加され、その後、テトラゾール溶液かエチルチオテトラゾールかのいずれかが添加される(図3)。反応液は0°C1時間撹拌される。その後、混合液は室温まで温められ、反応が室温で20時間継続される。その後前記混合液は10%重炭酸ナトリウム溶液で2回洗浄され、有機層はさらに2回蒸留水で洗浄される。有機層は回収され、無水硫酸ナトリウムで約1時間乾燥される。前記硫酸ナトリウムは濾過して除去され、溶媒は真空下で除去され、混合物は真空下で乾燥される。残渣は無水塩化メチレンに溶解され、無水エーテルに添加されて、その後約30分間静置される。その後溶媒は除去され、生成物は終夜真空下で乾燥される。実施例3は適当な反応条件についてのさらなる詳細を提供する。
【0074】
別の実施態様では、水酸化誘導体(II)が、図3のステップ3に示すとおり、ホスホアミダイト色素の形成を可能にする条件下で、塩化メチレンと、2−シアノエチル・テトライソプロピルホスホアミダイト(TIPA)と、ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(DIIPT)とともに反応される。
【0075】
ホスホアミダイト色素の形成を可能にするかぎりいかなる反応条件を使ってもかまわないが、1つの実施態様では、水酸化誘導体(II)と無水塩化メチレンとがアルゴン存在下で保護されたフラスコ内に入れられ、室温で15分間撹拌される。TIPA及びDIIPTが添加され、混合液が室温で2時間アルゴン又は窒素雰囲気下で撹拌される。その後、前記混合液は3時間25−30°Cに加熱される。前記混合液は冷却され反応が終夜継続される。前記混合液は重炭酸ナトリウムで2回洗浄され、水で2回洗浄される。有機層は回収され、無水硫酸ナトリウムで乾燥される。硫酸ナトリウムはアルゴン保護下の加圧漏斗で除去され、残渣は真空中で乾燥される。前記残渣は無水塩化メチレンに溶解され、無水エーテルに添加される。懸濁液は15分間静置され、溶媒はアルゴンによって保護された加圧漏斗を用いて除去される。この工程は繰り返され、30分間の静置時間が許される。エーテルは濾過して除去され、混合物は真空下で乾燥される。生成物はビンに回収され、室温、高真空下で終夜乾燥される。実施例4は適当な反応条件についてさらなる詳細を提供する。
【0076】
本発明の別の局面は生体分子の標識方法を提供する。該方法は、上記のとおりの一般式(I)を有する本発明の色素ホスホアミダイトが前記生体分子に結合することを可能にする条件下で、該色素ホスホアミダイトを該生体分子と反応させるステップを含む。前記生体分子は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド又は核酸からなるグループから選択される場合がある。当業者は、本発明の開示を参照して、過度の実験を要することなく標識条件を調べることができる。
【0077】
本発明のホスホアミダイトは適当な条件下で広範囲の生体分子を標識するのに利用できるが、実施例6でより詳細に説明される1つの実施態様では、環状Cy7(OMe)のホスホアミダイトがオリゴヌクレオチドを標識するのに用いられた。前記色素ホスホアミダイトは無水アセトニトリル中に溶解され、5’末端との結合を可能にするために前記オリゴヌクレオチドと10分間結合された。
【0078】
実施例6により詳細に説明されるとおり、標識されたプライマーの安定性の研究が実施され、本発明の1つの実施態様の環状Cy7(OMe)のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドは、環状Cy7(H)のホスホアミダイトで標識されたプライマーよりも機能的な安定性が向上することを示す。図13、表4に示すとおり、環状Cy7(OMe)のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドの平均半減期は3.7週間であるが、環状Cy7(H)のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドの平均半減期は1.3週間である。同様の傾向はPCR産物収率(図15)及び色素比(図14)のデータによって証明される。これらの結果は、本発明のホスホアミダイトは従来技術よりも効率的にオリゴヌクレオチドを標識する能力において優れていることを示す。
【0079】
当業者は、本発明の色素のホスホアミダイトがオリゴヌクレオチド配列のどこにでも導入できることを了解するであろう。しかし、付加の好ましい場所は、色素標識による雑種形成との干渉が最小となる、オリゴヌクレオチドの5’末端である。多色標識オリゴヌクレオチドを提供するために第2の色素を付加することは、商業的に入手可能なリンカーを利用することによって可能である。したがって本発明は、生体分子の蛍光検出用の安定で便利な標識を提供する。該標識は、いずれかのDNA合成機上で単一の自動化されたステップでオリゴヌクレオチドに付加でき、従来用いられてきた保護−脱保護のステップを必要としない。
【0080】
本発明の色素のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドは、DNA又はRNAを含む試料中の特異的な相補的ヌクレオチド配列の有無及び量を同定するための蛍光雑種形成プローブとして利用される場合がある。これら及び多くの他の可能なシアニン色素標識の用途の詳細な説明は、係属中の「効率的な活性化シアニン色素」という名称の米国特許第6,110,630号明細書と、「発光法による生物学的その他の材料の検出用標識試薬としてのシアニン色素」という名称の米国特許第5,627,027号明細書と、「発光アリルスルホン酸シアニン色素を用いる材料の標識及び検出方法」という名称の米国特許第5,569,587号明細書に提供され、これらの関連する内容は引用によって本明細書に取り込まれる。
【0081】
上記に説明されたオリゴヌクレオチド以外の生物学的材料を標識するために異なる反応条件が使われる場合があるが、1つの実施態様では、ペプチド及びタンパク質は無水条件下で標識される。かかる標識ペプチド及びタンパク質も、従来技術のホスホアミダイトで標識されたペプチド及びタンパク質と比較うsると安定性が向上すると予測される。
【0082】
以下の実施例は、本発明の範囲を例示することを意図するものであって、限定する意図はない。かかる実施例は使用されるかもしれない実施態様の典型的なものではあるが、代替的に、当業者に知られた他の手順が利用されてもかまわない。実際、当業者は、本明細書の開示内容に基づいて、過度の実験を伴うことなく、さらなる実施態様を容易に想到し作成することができる。
【0083】
これらの実施例に用いられる一般的な分析方法及び特徴付けの技術は、以下に示される。1H NMRスペクトルは、300MHzで(ブルカー社)分光装置により記録された。化学的シフトはTMSに対して百万分の1部(ppm、δ)で記録された。31P NMRスペクトルは300MHzで(ブルカー社)分光装置により記録された。化学シフトはリン酸に対して百万分の1部(ppm、δ)で記録された。分析用逆相HPLCによる分析は、46MM X 25CM(ベックマン カタログ番号#235329)C18ウルトラスフェアカラム(5μ 粒子)を取り付けたベックマン高圧液体クロマトグラフィ装置で実施された。
【実施例1】
【0084】
環状Cy7(Cl)−OHの合成
磁気スターラー・バー及びコンデンサ付きのオーブン乾燥済み500mL丸底フラスコ中に、10.28gの臭化1−(1’−ヒドロキシヘキシル)−2,3,3−トリメチルインドーリウム(30.2ミリモル)と、9.52gのヨウ化エチル−2,3,3−トリメチルインドーリウム(30.2ミリモル)と、160mLの無水エタノールとが添加された。全ての固形物は室温で混合液を撹拌することによって溶解された。その後、10.86gのN−[(3−アニリノメチレン)−2−クロロ−1−シクロヘキセネル・メチレン」アニリン・モノヒロドクロリド(リンカー)(30.2ミリモル)が前記フラスコ中に添加された。前記混合液は室温で撹拌され、溶液中の全ての固形物が溶解された。その後6gの無水酢酸ナトリウムが前記フラスコ中に添加された。前記溶液は110−120°Cの油浴中で1時間加熱還流され、その後室温まで冷却された。反応が完了したかどうかを知るために、前記混合液は薄層クロマトグラフィ(TLC、溶媒システム CH2Cl2:メタノール:アセトン:酢酸エチル=85:5:5:5)によってチェックされた。溶媒は真空下で除去され、混合液は真空下で2時間乾燥された。その後、得られた混合物は30mLのCH2Cl2に溶解され、300mLのエーテル中で沈殿された。溶媒は濾過によって除去され、全ての固形物が回収され、真空下で1時間乾燥された。その後、残った固形物は40mLのCH2Cl2中に溶解され、シリカゲルカラム内に装荷された。該カラムは勾配溶媒システム(塩化メチレン:アセトニトリル:アセトン、体積比は100:0:0から60:20:20まで変化させた)で、100%塩化メチレン(約2L)で開始して、徐々に溶媒システムを変化させて溶出した。分画が緑色になったとき、分画あたり約250mLのセグメントに分取され、薄層クロマトグラフィ(TLC、溶媒システム CH2Cl2:メタノール:アセトン:酢酸エチル=85:5:5:5)によって監視された。生成物を含む分画は丸底フラスコにプールされ、溶媒が蒸散された。その後、生成物は室温で高真空下で終夜乾燥された。結果は、9.0gの生成物で、環状Cy(Cl)−OHの47%の収率であった。以下の物理的特性が観察された。
【0085】
1H NMR (CDCl3): δ1.46 (t, 3H−CH2CH3), δ1.6 (m, 4H, 2CH2) δ1.8 (s, 12H, (CH3)4), δ1.85 (m, 4H, 2CH2), δ2.0 (m, 2H, 環のCH2), δ2.8 (t, 4H, 環の(CH2)2), δ3.75 (t, 2H, CH2), δ4.2 (m, 4H, (CH2−N)2), δ6.2 (t, 2H), δ7.2−7.55 (m, 8H, 芳香族)及びδ8.4 (d, 2H). (図5).
VIS−NIR λmaz 778nm.
【実施例2】
【0086】
環状Cy−7(OMe)−OHの合成
アルゴン存在下でパージされ保護された磁気スターラー・バー及びコンデンサ付きのオーブン乾燥済み250mL丸底フラスコ中に、5gのNaOMe粉末と、200mLの無水メタノールとが添加された。溶液は、NaOMeが完全に溶解することを担保するために撹拌された。これに、10gの環状Cy(Cl)−OH(15.08ミリモル)が添加された。得られた混合液は80−100°Cの油浴中で1時間加熱還流され、その後、室温まで冷却された。溶媒は真空下で蒸散され、残渣は真空下で乾燥された。その後乾燥固形物が20−30mLの塩化メチレンに溶解された。試料はシリカゲルカラム内に装荷された。該カラムは、100%塩化メチレンから開始して、1%メタノールから5%メタノールまでの勾配に沿って徐々に変化させながら溶出された。分画は薄層クロマトグラフィ(TLC、溶媒システム CH2Cl2:メタノール:アセトン:酢酸エチル=85:5:5:5)を用いてチェックされ、予想された分画が250mLフラスコ内に回収された。その後前記予想された分画はプールされ、全ての溶媒が真空下で蒸散された。生成物を室温で終夜真空下で乾燥させる。結果は、生成物8.1gで、環状Cy−7(OMe)−OHの81%の収率であった。
【0087】
以下の物理的特性が観察された。
1H NMR (CDCl3): δ1.45 (t, 3H, CH2−CH3), δ1.55 (m, 2CH2), δ1.63 (s, 12H, (CH3)4), δ1.8−1.9 (m, 6H, 3−CH2), δ2.5 (t, 4H, 環の2CH2), δ3.75 (t, 2H, CH2), δ3.92 (s, 3H, O−CH3), δ4.2 (m, 4H, (CH2−N)2), δ6.1 (dd, 2H), δ7.2−7.55 (m, 8H, 芳香族)及びδ8.0(d, 2H). (図5)
VIS−NIR λmax 750 nm.
【実施例3】
【0088】
環状Cy−7(OMe)−ホスホアミダイトの合成(方法1)
アルゴン存在下でパージされ保護された、磁気スターラーバー付きのオーブン乾燥済み250mL丸底フラスコに、5gの環状Cy−7(OMe)−OH(7.58ミリモル)と、200mLの無水塩化メチレンとが添加された。溶液は0°Cで(温度は氷浴で制御された)15分間撹拌された。その後4.57gのTIPA(0.015ミリモル)がシリンジを使って前記フラスコ内に添加され、その後、15.2mLの0.5Mテトラゾール溶液か、24.6gmの4%エチルチオテトラゾールかが添加された。反応混合液は0°Cで1時間撹拌された。その後前記混合液は、反応を約20時間(終夜)室温で継続させるために、室温まで温められた。前記反応混合液は、生成物が開始材料よりも高いRFを有することを確かめるために、TLC(溶媒システム CH2Cl2:メタノール:アセトン:酢酸エチル=85:5:5:5)によってチェックされた。その後前記反応混合液は、分離漏斗に移され、200mLの10百分率重炭酸ナトリウム溶液で2回洗浄された。その後有機層は300mLの蒸留水で2回洗浄され、有機相が回収された。その後有機溶液は約1時間20gの無水硫酸ナトリウムで乾燥され、その後、該硫酸ナトリウムは濾過して除去された。その後残存する溶媒はRoto−vap(回転式エバポレータ)によって真空下で除去され、残渣は真空下で1時間乾燥された。前記残渣は最少量の無水塩化メチレン(約10−20mL)に溶解され、この溶液が500mLの無水エーテルに添加された。混合液は約30分間静置され、前記エーテルがアルゴンによって保護された加圧漏斗によって除去された。残った固形物は30分間真空下で乾燥され、上述の沈殿の手順が1回繰り返された。その後最終生成物が室温で終夜真空下で乾燥された。3.6gの生成物環状Cy7(OMe)−ホスホアミダイトが55%の収率で回収された。
【実施例4】
【0089】
OMe−環状−Cy7−ホスホアミダイトの合成(方法2)
アルゴン存在下でパージ及び保護された、磁気スターラーバー付きのオーブン乾燥済み250mL丸底フラスコに5gの環状Cy7(OMe)−OH(7.58ミリモル)と、200mLの無水塩化メチレンとが添加された。溶液は室温で15分間撹拌された。シリンジを用いて、6±0.4gのTIPA(6.0±0.2mL、又は、0.015モル)が前記フラスコに添加され、その後、1.5gのジイソプロピルアンモニウムテトラリド(DIIPT、活性化剤)が添加された。その後、反応混合液はアルゴン又は窒素雰囲気下で2時間室温で撹拌され、その後、25−30°Cまで3時間加熱された。その後、混合液は室温まで冷却され、反応は室温で約16時間(終夜)継続された。前記反応混合液は、生成物が開始材料よりも高いRFを有することを確認するために、薄層クロマトグラフィ(溶媒システム CH2Cl2:メタノール:アセトン:酢酸エチル=85:5:5:5)によってチェックされた。前記反応混合液は分離漏斗に移され、200mLの10%重炭酸ナトリウム溶液で2回洗浄された。有機層は2回300mLの蒸留水で洗浄された。有機相は回収され、40gの無水硫酸ナトリウムで約1時間乾燥された。前記硫酸ナトリウムはアルゴンによって保護された加圧漏斗を用いて濾過して除去さrえ、溶媒は濾液から回転式エバポレータによって除去された。残渣は高真空下で1時間乾燥され、その後、該残渣は最少量の無水塩化メチレン(約20−30mL)に溶解された。その後この溶液は500mLの無水エーテルに1滴ずつ添加され、懸濁液は15分間静置された。溶媒はアルゴンによって保護された加圧漏斗を用いて除去され、残った混合物は真空下で1時間乾燥された。その後上述の沈殿の手順が1回繰り返され、混合液は約30分間静置された。その後無水エーテルはアルゴンで保護された加圧漏斗を用いて濾過して除去された。その後残存固形物は真空下で1時間乾燥された。生成物はビンに回収され、該生成物は室温で終夜高真空下で乾燥された。この工程は、4.6gの生成物を、OMe−環状−Cy7−ホスホアミダイトの70%の収率で提供した。以下の物理的特性が観察された。P31 NMR (CDCl3): δ144.24 (純度95%). (図6).
【実施例5】
【0090】
環状Cy7(OMe)対環状Cy−7(H)の加速安定性試験
環状Cy7(OMe)対環状Cy−7(H)ホスホアミダイトの加速安定性試験は37°C及び室温で行われた。試料は37°C又は室温で保存され、異なる時間ポイントでリンNMRと、C1カラム上の高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)と、オリゴヌクレオチドへの結合とが実施された。前記オリゴヌクレオチドは、穏和な切断及び脱保護試薬である、0.05M K2CO3/MeOHを用いて切断及び脱保護され、蒸散され、C−18 HPLCのUV−VISスペクトル及び%面積によって解析された。データは図9及び10の表1―3に要約される。
【0091】
表2及び3の発光/吸光比は、保存温度での色素の吸光及び発光特性を示す。前記比は、環状Cy−7(H)については経時的に環状Cy7(OMe)ホスホアミダイトと比べてより実質的に変化するが、これは、環状Cy7(OMe)の安定性がより高いことを示す。同様に、環状Cy7(OMe)ホスホアミダイトの場合に色素の分解と関連する31P NMR測定値の百分率の低下が少ないことは、環状Cy7(OMe)よりも安定性が高いことを示す。
【実施例6】
【0092】
色素ホスホアミダイトのN末端への結合
標識プライマーの加速安定性試験は、37°C及び室温で実行された。ポリヌクレオチドは、Apac、Gipr−pac、Cac及びTホスホアミダイトを使ってABI394で合成された。100mgの環状Cy7(OMe)又は環状Cy−7(H)ホスホアミダイトは1mLの無水アセトニトリル(AcCN)に溶解され、配列の5’末端に10分間結合された。前記オリゴヌクレオチドは0.05M K2CO3/MeOHを用いて終夜室温で切断及び脱保護され、蒸散され、逆相高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)で精製された。精製されたオリゴヌクレオチドは安定性試験のために37°C及び室温で保存された。異なる時点で試料が取り出され、色素比及び機能性試験が実施された。色素比は260nmの吸光度/763nmの吸光度/オリゴヌクレオチドの長さによって測定された。プライマーの配列は以下のとおりである。
オリゴヌクレオチド1:5’ GATCCCAAGCTCTTCCTCTT 3’(配列番号1)
オリゴヌクレオチド2:5’ CCCTGGGCTCTGTAAAGAATAGTG 3’(配列番号2)
オリゴヌクレオチド3:5’ TTCCAGCCTAGGTAGCAGTG 3’(配列番号3)
【0093】
本試験に関するデータは図11−15に要約される。
【0094】
環状Cy7(OMe)のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドは、環状Cy−7(H)のホスホアミダイトで標識されたプライマーよりも高い安定性を示す。例えば、本発明のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドの勝れた安定性は、機能的安定性試験(図15)及び色素比に基づく安定性試験(図14)によって証明される。本発明のホスホアミダイトで標識されたオリゴヌクレオチドは、37°Cで5日間(−20°Cで7.18年間に等しい)インキュベーションされたとき、約2.5倍安定性が高い。ノイズのレベルは環状Cy7(OMe)又は環状Cy−7(H)のいずれの合成とも相関しないようであった(図15)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−116998(P2011−116998A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−44535(P2011−44535)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【分割の表示】特願2007−521520(P2007−521520)の分割
【原出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44535(P2011−44535)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【分割の表示】特願2007−521520(P2007−521520)の分割
【原出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】
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