説明

安定なタンパク質製剤

【課題】CTLA4Ig分子を含む安定な製剤(凍結乾燥製剤および液体製剤を含む)の提供。
【解決手段】免疫系疾患および寛容誘導を治療するための、例えば、静脈内(IV)および皮下(SC)を含む様々な経路による投与用の、CTLA4Ig分子を含む組成物は糖類特に二糖類を配合し、6〜8のpH範囲とすることにより安定な製剤となる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2005年12月20日に出願された米国特許出願第60/752,150号の優先権を主張する(参照のためその全体を本明細書に引用する)。
【技術分野】
【0002】
本明細書中に言及する全ての特許、特許出願および公報を、参照のためその全体を本明細書に引用する。これら公報の開示は、本明細書に記載および特許請求した本発明の日時における当業者に知られた技術水準をより完全に記載するために、参照のためその全体を本明細書に引用する。
【0003】
本発明は一般に、CTLA4Ig分子を含む安定な製剤に関し、凍結乾燥した製剤、および様々な投与経路、例えば、静脈内(IV)および皮下(SC)などの投与経路による投与のための液体製剤を包含する。
【背景技術】
【0004】
過去20年にわたり、組換えDNA技術は多くのタンパク質治療剤の商品化に導いた。タンパク質医薬の送達のための最も通常の経路は、他の殆どの経路でのバイオアベイラビリティーの低さ、臨床投与の際の一層高い制御、および一層速い薬剤開発(pharmaceutical development)のために静脈内(IV)投与であった。頻繁かつ慢性的な投与を必要とする製品の場合は、代わりの皮下(SC)送達経路がより相応しい。プレ充填注射器およびオートインジェクターデバイス法(pre-filled syringe and autoinjector device technology)と組み合わせた場合は、家庭での投与(home administration)および投与のコンプライアンスの改善が可能になる。
【0005】
1mg/kgまたは投与当たり100mgを超える高投与量での処置では、SC経路により与えることのできる容量が小さい(<1.5ml)ために、100mg/mlを超える濃度での製剤の開発が屡々必要になる。高濃度で凝集する性質を有するタンパク質にとっては、そのような高濃度製剤を達成することは開発上の難題である。大容量の投与が可能なIV送達経路の場合でさえも、高投与処方には1ミリリットル当たり何十ミリグラムものタンパク質濃度が必要であり、このことは幾つかのタンパク質にとって安定性の難題を提示する。
【0006】
タンパク質の溶解性を支配している原理は小さな合成分子の場合よりも一層複雑であり、それゆえタンパク質の溶解性の問題を克服するには異なる戦略が取られる。操作上は、タンパク質の溶解性は、共溶質の存在下で溶液が可視的に透明を保つ(すなわち、タンパク質の沈殿、結晶、またはゲルを示さない)タンパク質の最大量によって記載することができる。イオン強度、塩の形態、pH、温度、およびある種の賦形剤に対するタンパク質溶解性の依存は、Arakawaら(Theory of protein solubility, Methods of Enzymology, 114:49-77, 1985);Schein(Solubility as a function of protein structure and solvent components, BioTechnology 8(4):308-317, 1990);Jenkins(Three solutions of the protein solubility problem, Protein Science 7(2):376-382, 1998;その他により、バルク水表面張力(bulk water surface tension)および自己会合と対比した水およびイオンへのタンパク質の結合における変化によって機械的に説明されている。特定の賦形剤または塩へのタンパク質の結合は、タンパク質のコンホメーションの変化または自己相互作用に関与するある種アミノ酸のマスキングにより、溶解性に影響を及ぼす。タンパク質はまた、ある種の塩、アミノ酸、および糖によって優先的に水和され(そして一層緻密な(compact)コンホメーションとして安定化され)、その溶解性の変化に導く。
【0007】
二分子衝突(bi-molecular collision)を必要とする凝集は、タンパク質溶液での主たる分解経路であると予期される。凝集物の生成に対する濃度の関係は、凝集物のサイズ並びに会合の機構に依存する。タンパク質の凝集は、共有結合での(例えば、ジスルフィド結合)または非共有結合での(可逆的または非可逆的)会合という結果となる。非共有結合的会合による非可逆的凝集は、一般に、疎水性領域が、タンパク質の天然のコンホメーションを変化させる熱的、機械的、または化学的プロセスに暴露されることにより起こる。タンパク質の凝集は、例えば、免疫原性のために、タンパク質の活性、薬動力学および安全性に強い影響を及ぼす。
【0008】
凝集を最小にする典型的なアプローチは、衝突の回数を減らすためにタンパク質の流動性(mobility)を制限することである。適当な賦形剤を用いた凍結乾燥は、タンパク質の流動性を低減することおよびコンホメーションの可撓性を制限することにより、凝集に対してタンパク質の安定性を改善するとともに、水を除去する結果、加水分解反応を最小にするという利点も付与される。凍結保護剤(lyoprotectants)を含む適当な賦形剤の添加は、凍結乾燥のプロセスの際並びに最終製品の貯蔵の際の凝集物の生成を防止することができる。有効な保護のために鍵となるパラメーターは、タンパク質に対する凍結保護剤のモル比である。適当な安定性を得るには、とりわけ室温での貯蔵には、一般に、300:1またはそれ以上のモル比が必要である。しかしながら、そのような比はまた、粘度の所望でない増大に導く。
【0009】
凍結乾燥は、適当な安定性と張性(tonicity)とを有する製剤をデザインすることを可能にする。等張は必ずしもSC投与に必要なわけではないが、投与の際の痛みを最小にするのは望ましい。凍結乾燥物の等張を達成することは困難である、なぜならタンパク質および賦形剤の両者が再構成プロセスの際に濃縮されるからである。500:1の賦形剤:タンパク質モル比は、最終タンパク質濃度>100mg/mlを標的とするなら、高張製剤という結果となるであろう。等張製剤を達成することが所望されるなら、賦形剤:タンパク質の一層低いモル比の選択が潜在的に安定性の一層低い製剤という結果になるであろう。
【0010】
達成可能な最も高いタンパク質濃度を決定することは、タンパク質コンホメーションの不安定な性質、および自身と、表面と、または特定の溶質と反応する性向のために、経験的な課題に留まっている。
【0011】
SC製剤の利益を受ける患者の例は、免疫系疾患、慢性関節リウマチおよび移植片の移植に関連する免疫障害を罹患する患者などの、頻繁かつ慢性的な投与と必要とする患者である。慢性関節リウマチの治療用の市販タンパク質医薬製剤としては、HUMIRAR、ENBRELRおよびREMICADERが挙げられる。
【0012】
HUMIRAR(Abbott)は、皮下投与用の滅菌した保存剤不含液剤として、単回使用の1ml容プレ充填ガラス注射器で提供される。HUMIRARの溶液は透明で無色であり、pHは約5.2である。各注射器は0.8ml(40mg)の医薬製剤を送達する。各0.8mlのHUMIRARは、40mgのadalimumab、4.93mgの塩化ナトリウム、0.69mgの一塩基性リン酸ナトリウム二水和物、1.22mgの二塩基性リン酸ナトリウム二水和物、0.24mgのクエン酸ナトリウム、1.04mgのクエン酸一水和物、9.6mgのマンニトール、0.8mgのポリソルベート80および注射用水、USPを含む。必要に応じてpHを調節するために水酸化ナトリウムを添加されている。
【0013】
ENBRELR(Amgen)は、皮下注射用の滅菌した保存剤不含液剤として、単回使用の1ml容プレ充填ガラス注射器で提供される。ENBRELRの溶液は透明で無色であり、pHは6.3±0.2に調節される。各ENBRELR単回使用プレ充填注射器は、10mg/mlのショ糖、5.8mg/mlの塩化ナトリウム、5.3mg/mlのL-アルギニン塩酸塩、2.6mg/mlのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物および0.9mg/mlのリン酸ナトリウム二塩基性無水物とともに0.98mlのetanercept溶液(50mg/ml)を含む。ENBRELRの1の50mg/mlプレ充填注射器は、推奨によりバイアルを再構成および投与したときに、凍結乾燥ENBRELRの2の25mgバイアルと等価な投与量を提供する。ENBRELR多回使用バイアルは、滅菌した白色で保存剤不含の凍結乾燥粉末を含む。提供した1mlの滅菌静菌注射用水(Sterile Bacteriostatic Water for Injection;BWFI, USP:0.9%ベンジルアルコールを含む)での再構成は、pHが7.4±0.3で25mgのetanercept、40mgのマンニトール、10mgのショ糖、および1.2mgのトロメタミンを含む、多回使用の透明で無色の溶液を生成する。
【0014】
REMICADER(Centocor)は、静注用の滅菌白色凍結乾燥粉末として提供される。10mlの滅菌注射用水(Sterile Water for Injection, USP)で再構成後、得られるpHは約7.2である。各単回使用バイアルは、100mgのinfliximab、500mgのショ糖、0.5mgのポリソルベート80、2.2mgの一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、および6.1mgの二塩基性リン酸ナトリウム二水和物を含む。保存剤は含まない。
【0015】
移植片の移植に関連する免疫障害の治療用の市販タンパク質医薬製剤としては、SIMULECTR、およびZENAPAXRが挙げられる。
【0016】
医薬製剤SIMULECTR(Novartis)は、6ml容の無色ガラスバイアルで利用でき、10mgおよび20mgの強度で利用できる、滅菌凍結乾燥剤である。各10mgバイアルは、10mgのbasiliximab、3.61mgの一塩基性リン酸カリウム、0.50mgのリン酸水素二ナトリウム(無水)、0.80mgの塩化ナトリウム、10mgのショ糖、40mgのマンニトールおよび20mgのグリシンを含み、2.5mlの滅菌注射用水で再構成される。各20mgバイアルは、20mgのbasiliximab、7.21mgの一塩基性リン酸カリウム、0.99mgのリン酸水素二ナトリウム(無水)、1.61mgの塩化ナトリウム、20mgのショ糖、80mgのマンニトールおよび40mgのグリシンを含み、5mlの滅菌注射用水で再構成される。保存剤は無添加である。
【0017】
ZENAPAXR(Roche Laboratories;25mg/5ml)は、さらなる希釈および静脈内投与用の透明滅菌無色濃縮製剤として提供される。各1mlのZENAPAXRは、5mgのdaclizumabおよび3.6mgのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、11mgのリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、4.6mgの塩化ナトリウム、0.2mgのポリソルベート80を含み、pHを6.9に調節するために塩酸または水酸化ナトリウムを含んでいてよい。保存剤は無添加である。
【0018】
CTLA4Ig分子は、CD28-B7相互作用を抑制することによってT細胞コスティミュレーションを妨害する。それゆえ、CTLA4Ig分子は、慢性関節リウマチや移植片の移植に関連する免疫障害などの免疫系疾患の治療用の使用を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
CTLA4Ig分子を含む免疫系疾患治療用の安定かつ有効で便利な製剤に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、CTLA4Ig分子を患者に投与することにより免疫系疾患を治療するための製剤を提供するものであり、CTLA4Ig分子は、B7陽性細胞上のB7分子に結合し、それによって内生のB7分子がT細胞上のCTLA4および/またはCD28に結合するのを抑制する。
【0021】
本発明の凍結乾燥製剤は、CTLA4Ig分子を少なくとも1:2(タンパク質:凍結保護剤)の重量比で含む。凍結保護剤は好ましくは糖であり、さらに好ましくは二糖、最も好ましくはショ糖またはマルトースである。凍結乾燥製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、増量剤および保存剤よりなる群から選ばれた1またはそれ以上の成分を含んでいてもよい。
【0022】
ある種の態様において、凍結乾燥医薬製剤の安定化に有用なショ糖またはマルトースの量は、少なくとも1:2(タンパク質:ショ糖またはマルトース)の重量比、好ましくは1:2〜1:5(タンパク質:ショ糖またはマルトース)の重量比、さらに好ましくは約1:2(タンパク質:ショ糖またはマルトース)の重量比である。
【0023】
本発明の皮下(SC)製剤は、水性担体中にCTLA4Ig分子を、安定化レベルの糖と組み合わせて少なくとも100mg/mlのタンパク質濃度にて、好ましくは安定化レベルの糖と組み合わせて少なくとも125mg/mlのタンパク質濃度にて含む。糖は、少なくとも1:1.1(タンパク質:糖)の重量比であるのが好ましい。安定化剤は、SC注射器での投与にとって望ましくないかまたは適当でない粘度という結果となるものよりも大きくない量で用いるのが好ましい。糖は、好ましくは二糖、最も好ましくはショ糖である。SC製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、および保存剤よりなる群から選ばれた1またはそれ以上の成分を含んでいてもよい。
【0024】
ある種の態様において、CTLA4Ig分子SC医薬製剤の安定化に有用なショ糖の量は、少なくとも1:1(タンパク質:ショ糖)の重量比、好ましくは1:1.3〜1:5(タンパク質:ショ糖)の重量比、さらに好ましくは約1:1.4(タンパク質:ショ糖)の重量比である。
【0025】
本発明の液体製剤は、水性担体中にCTLA4Ig分子を、安定化レベルの糖と組み合わせて少なくとも20mg/mlのタンパク質濃度にて、好ましくは安定化レベルの糖と組み合わせて少なくとも25mg/mlのタンパク質濃度にて含む。糖は、少なくとも1:1(タンパク質:糖)の重量比であるのが好ましい。液体製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、および保存剤よりなる群から選ばれた1またはそれ以上の成分を含んでいてもよい。
【0026】
ある種の態様において、液体医薬製剤の安定化に有用なショ糖の量は、少なくとも1:1(タンパク質:ショ糖)の重量比、好ましくは1:2〜1:10(タンパク質:ショ糖)の重量比、さらに好ましくは約1:2(タンパク質:ショ糖)の重量比である。
【0027】
本発明の他の態様において、製造品が提供され、このものは医薬製剤を含み、好ましくは使用の説明書を提供する。
【0028】
本発明はさらに、本発明のCTLA4Ig分子製剤を投与することによる、免疫系疾患および寛容誘導(tolerance induction)の治療方法を提供する。
【0029】
「安定な」製剤または医薬製品とは、それに含まれるCTLA4Ig分子が貯蔵の間にその物理的および化学的安定性および完全さを本質的に保持しているものをいう。CTLA4Ig分子製剤の安定性は、選択した期間の後の選択した温度にて測定することができる。例えば、凍結乾燥および貯蔵後の凝集物生成の増大は、凍結乾燥したCTLA4Ig分子製剤の不安定性の指標である。凝集物の生成に加えて、貯蔵寿命を通じての本来の清澄さ、色および臭いの保持が、CTLA4Ig分子溶液の安定性をモニターするのに用いることのできる指標である。HMW種はマルチマー(すなわち、テトラマー、ヘキサマーなど)であり、CTLA4Ig分子ダイマーよりも高い分子量を有する。典型的に「安定な」医薬製品は、2-8℃で1年間貯蔵したときに高分子量種のパーセント(%HMW)の増大により測定して、凝集の増大が約5%未満、好ましくは約3%未満であるものである。好ましくは、製造した医薬製品は、約25%HMW種未満、好ましくは約15%HMW種未満、さらに好ましくは約10%HMW種未満、最も好ましくは約5%HMW種未満を含む。
【0030】
CTLA4Ig分子のモノマー、ダイマーおよびHMW種は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分離することができる。SECは、分子を分子サイズに基づいて分離する。分離は、カラムの長さ方向に沿って分子が移動するときの差異的な分子の排除または包括(inclusion)によって達成される。それゆえ、分離度(resolution)はカラムの長さの関数として増大する。CTLA4Ig分子試料は、TSK GelR G3000SWXL(300mm×7.8mm)およびTSK GelR G3000SWXL(40mm×6.0mm)カラム(Tosoh Bioscience、モンゴメリー、ペンシルベニア)を直列に備えた2695 Alliance HPLC(Waters、ミルフォード、マサチューセッツ)を用いて分離できる。10mg/ml(20μlアリコート)の試料は、0.2M KH2PO4、0.9%NaC1、pH6.8からなる移動相を用い、1.0ml/分の流速で分離する。試料を、Water’s 2487 Dual Wavelength検出器を用いて280nmの吸光度でモニターする。このシステムを用い、HMW種は7.5分±1.0分の保持時間を有する。各ピークをピーク下の面積について積分する。%HMW種は、HMWピーク面積を全ピーク面積で除することによって計算する。
【0031】
「再構成した」製剤とは、CTLA4Ig分子が再構成した製剤中に溶解するように、凍結乾燥した製剤を水性担体中に溶解することによって調製したものをいう。再構成した製剤は、それを必要とする患者に静脈内注射(IV)するのに適している。
【0032】
「等張」製剤とは、ヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有するものをいう。等張製剤は、一般に、約250〜350mOsmol/KgH2Oの浸透圧を有するであろう。「高張」なる語は、ヒト血液よりも高い浸透圧を有する製剤を記載するのに用いる。等張性は、例えば、蒸気圧または氷結タイプ(ice-freezing type)の浸透圧計を用いて測定することができる。
【0033】
「緩衝剤」とは、水溶液に加えたときに、酸またはアルカリを加えたときまたは溶媒で希釈したときに溶液pHの変動を保護できる1またはそれ以上の成分をいう。リン酸緩衝液に加えて、グリシネート(glycinate)、炭酸、クエン酸緩衝液などが使用でき、この場合は、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして機能することができる。
【0034】
「酸」は、水溶液中で水素イオンを生成する物質である。「薬理学的に許容しうる塩」は、調合した濃度および仕方で非毒性である無機および有機の酸を包含する。
【0035】
「塩基」は、水溶液中でヒドロキシルイオンを生成する物質である。「薬理学的に許容しうる塩基」は、調合した濃度および仕方で非毒性である無機および有機の塩基を包含する。
【0036】
「凍結保護剤(lyoprotectant)」は、目的のタンパク質と組み合わせたときに、凍結乾燥およびその後の貯蔵後のタンパク質の化学的および/または物理的不安定性を防止または低減する分子である。
【0037】
「保存剤」は、細菌の作用を低減する薬剤であり、本明細書に記載の製剤に任意に添加してよい。保存剤の添加は、例えば、多回使用(多回投与)製剤の製造を容易にする。潜在的な保存剤の例としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ヘキサメトニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド(アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(アルキル基は長鎖化合物である)の混合物)、およびベンゼトニウムクロライドが挙げられる。他のタイプの保存剤としては、フェノール、ブチルアルコールおよびベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3ペンタノール、およびm-クレゾールが挙げられる。
【0038】
「界面活性剤」は、疎水性部分(例えば、アルキル鎖)と親水性部分(例えば、カルボキシルおよびカルボン酸基)の両者を含む表面活性な分子である。界面活性剤を本発明の製剤に添加することができる。本発明の製剤に使用するのに適した界面活性剤としては、これらに限られるものではないが、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20または80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);ソルビタンエステルおよび誘導体;Triton;ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−、またはステアリル−スルホベタミン;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−、またはステアリル−サルコシン;リノレイル−、ミリスチル−、またはセチル−ベタイン;ラウロアミドプロピル−、コカミドプロピル−、リノレアミドプロピル−、ミリストアミドプロピル−、パルミドプロピル−、またはイソステラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリストアミドプロピル−、パルミドプロピル−、またはイソステラミドプロピル−ジメチルアミン;メチルココイル−タウレート(taurate)ナトリウムまたはメチルオレイル−タウレート二ナトリウム;およびMONAQUATTM系列(Mona Industries, Inc.、パターソン、ニュージャージー)、ポリエチレングリコール、ポリプロピルグリコール、およびエチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68など)が挙げられる。
【0039】
「医薬物質(drug substance)」とは、最終的な医薬製品の製剤化に利用される出発物質をいう。典型的なCTLA4Ig医薬物質組成物は、20mg/ml〜60mg/mlのタンパク質濃度、7〜8のpHおよび<5%の%HMW種を含む。
【0040】
「製剤化したバルク溶液(formulated bulk solution)」とは、凍結乾燥用バイアルを充填する前の製剤化溶液やSC注射用注射器に充填する前の製剤化溶液などの、容器に充填する前の最終的な製剤をいう。
【0041】
「医薬製品(drug product)」とは、容器中にパッケージングされた最終製剤をいい、使用前に再構成されるもの、例えば、凍結乾燥した医薬製品;使用前にさらに希釈されるもの、例えば、液体医薬製品;またはそのまま使用されるもの、例えば、SC溶液医薬製品をいう。
【0042】
「CTLA4-Ig」または「CTLA4-Ig分子」または「CTLA4Ig分子」なる語は互いに同義で用いられ、少なくともCTLA4細胞外ドメインまたはその一部を有するポリペプチドと免疫グロブリン定常領域またはその一部とを含むタンパク質分子をいう。細胞外ドメインおよび免疫グロブリン定常領域は、野生型であるか、または変異体または修飾されていてよく、ヒトまたはマウスを含む哺乳動物のものであってよい。該ポリペプチドはさらに付加的なタンパク質ドメインを含んでいてよい。CTLA4-Ig分子はまた、該ポリペプチドのマルチマー、例えば、ダイマー、テトラマー、およびヘキサマーであってよい。CTLA4-Ig分子はまた、CD80および/またはCD86に結合することができる。
【0043】
「B7-1」とはCD80をいい、「B7-2」とはCD86をいい、「B7」とはB7-1およびB7-2(CD80およびCD86)の両者をいう。「B7-1-Ig」または「B7-1Ig」とはCD80-Igをいい、「B7-2-Ig」または「B7-2Ig」とはCD86-Igをいう。
【0044】
一つの態様において、「CTLA4Ig」とは、以下の残基のアミノ酸配列を有するタンパク質分子をいう:(i)配列番号2の26-383、(ii)配列番号2の26-382、(iii)配列番号2の27-383、または(iv)配列番号2の27-382、または任意に(v)配列番号2の25-382、または(vi)配列番号2の25-383。モノマーの形態にあるものとして、これらタンパク質は本明細書において「配列番号2モノマー」または「配列番号2の配列を有する」モノマーと称することができる。これら配列番号2モノマーはダイマーであってよく、そのようなダイマーの組み合わせとしては、例えば、(i)と(i);(i)と(ii);(i)と(iii);(i)と(iv);(i)と(v);(i)と(vi);(ii)と(ii);(ii)と(iii);(ii)と(iv);(ii)と(v);(ii)と(vi);(iii)と(iii);(iii)と(iv);(iii)と(v);(iii)と(vi);(iv)と(iv);(iv)と(v);(iv)と((vi);(v)と(v);(v)と(vi);および(vi)と(vi)が挙げられる。これら異なるダイマーの組み合わせはまた互いに会合してテトラマーCTLA4Ig分子を形成することができる。これらモノマー、ダイマー、テトラマーおよび他のマルチマーは、本明細書において「配列番号2タンパク質」または「配列番号2の配列を有する」タンパク質と称することができる(配列番号2に示すCTLA4IgをコードするDNAは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、10801ユニバーシティー・ブールバール、マナサス、バージニア20110-2209に、ブダペスト条約の規定に従い、1991年5月31日に寄託され、ATCC 68629のATCC受託番号を付与されている;配列番号2に示すCTLA4Igを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株は、ATCC同定番号CRL-10762にて1991年5月31日に寄託されている)。本明細書において「Abatacept」は配列番号2タンパク質をいう。
【0045】
一つの態様において、CTLA4-L104EA29Y-Ig(「LEA29Y」または「L104EA29Y」としても知られる)は、配列番号1に示すCTLA4-Ig分子と構造上類似した遺伝子組換え融合タンパク質である。L104EA29Y-Igは、修飾ヒトCTLA4の機能的な細胞外結合ドメインおよびIgG1クラスのヒト免疫グロブリンのFcドメインを有する。2つのアミノ酸修飾、すなわち、104位(配列番号2の130位である)でのロイシンからグルタミン酸(L104E)および29位(配列番号2の55位である)でのアラニンからチロシン(A29Y)がCTLA4ドメインのB7結合領域に施されてL104EA29Yを生成する。配列番号3および4は、それぞれ、シグナルペプチド;CTLA4の変異細胞外ドメイン(+27位のメチオニンから開始し+150位のアスパラギン酸で終了するか、または+26位のアラニンから開始し+150位のアスパラギン酸で終了する);およびIg領域を含むL104EA29YIgのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。L104EA29Y-IgをコードするDNAは、ブダペスト条約の規定に従い、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に2000年6月20日に寄託されている。それはATCC受託番号PTA-2104が付与されている。L104EA29Y-Igはさらに、米国特許第7,094,874号(2006年8月22日発行)およびWO01/923337A2(参照のためその全体を本明細書に引用する)に記載されている。
【0046】
L104EA29YIgの哺乳動物細胞中での発現は、N末端およびC末端変異体の生成という結果となり、生成したタンパク質は、以下の残基のアミノ酸配列を有する:(i)配列番号4の26-383、(ii)配列番号4の26-382、(iii)配列番号4の27-383または(iv)配列番号4の27-382、または任意に(v)配列番号4の25-382、または(vi)配列番号4の25-383。モノマーの形態にあるものとして、これらタンパク質は本明細書において「配列番号4モノマー」または「配列番号4の配列を有する」モノマーと称することができる。これらタンパク質はダイマーを形成することができ、そのようなダイマーの組み合わせとしては、例えば、(i)と(i);(i)と(ii);(i)と(iii);(i)と(iv);(i)と(v);(i)と(vi);(ii)と(ii);(ii)と(iii);(ii)と(iv);(ii)と(v);(ii)と(vi);(iii)と(iii);(iii)と(iv);(iii)と(v);(iii)と(vi);(iv)と(iv);(iv)と(v);(iv)と((vi);(v)と(v);(v)と(vi);および(vi)と(vi)が挙げられる。これら異なるダイマーの組み合わせはまた互いに会合してテトラマーL104EA29YIg分子を形成することができる。これらモノマー、ダイマー、テトラマーおよび他のマルチマーは、本明細書において「配列番号4タンパク質」または「配列番号4の配列を有する」タンパク質と称することができる。本明細書において「Belatacept」は配列番号4タンパク質をいう。
【0047】
CTLA4-Igモノマーおよびマルチマー
CTLA4-Ig分子は、例えば、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、または他のマルチマーの形態にあるCTLA4-Igタンパク質を包含する。CTLA4-Ig分子は、少なくともCTLA4の細胞外ドメインおよび免疫グロブリン定常領域のタンパク質融合を含んでいる。CTLA4-Ig分子は、例えば、CTLA4の細胞外ドメインおよび免疫グロブリン定常領域の配列に関して野生型または変異配列を有する。CTLA4-Igは、単独で、またはダイマー、テトラマーまたは他のマルチマーの形態でグリコシル化されていてよい。
【0048】
幾つかの態様において、本発明は、少なくともあるパーセントのダイマーまたは他のマルチマー分子を有するCTLA4-Ig分子の集合を提供する。例えば、本発明は、CTLA4-Igダイマーが90%, 95%, 96%, 97%, 98%, 99%, または99.5%を超えるCTLA4-Ig分子の集合を提供する。一つの態様において、本発明は、約95%〜約99.5%のCTLA4-Igダイマーおよび約0.5%〜約5%のCTLA4-Igテトラマーを含むCTLA4-Ig分子の集合を提供する。他の態様において、CTLA4-Ig分子の集合は、約98%のCTLA4-Igダイマー、約1.5%のCTLA4-Igテトラマーおよび約0.5%のCTLA4-Igモノマーを含む。
【0049】
一つの態様において、本発明は、CTLA4-Igモノマー分子を実質的に含まないCTLA4-Ig分子の集合を提供する。CTLA4-Igモノマー分子を実質的に含まないとは、1%, 0.5%, または0.1%未満のモノマーを有するCTLA4-Ig分子の集合をいう。
【0050】
一つの態様において、本発明は、テトラマー、ヘキサマーなどのダイマーよりも大きなCTLA4-Igマルチマーを実質的に含まないCTLA4-Ig分子の集合を提供する。CTLA4-Igマルチマー分子を実質的に含まないとは、6%, 5%, 4%, 3%, 2%, 1%, 0.5%, または0.1%未満のダイマー形態よりも大きなCTLA4-Igマルチマーを有するCTLA4-Ig分子の集合をいう。
【0051】
一つの態様において、CTLA4-Igモノマー分子は、例えば、以下のアミノ酸配列を有する:(i)配列番号2の26-383、(ii)配列番号2の26-382、(iii)配列番号2の27-383、または(iv)配列番号2の27-382、または任意に(v)配列番号2の25-382、または(vi)配列番号2の25-383。配列番号1の核酸配列を含む発現カセットがCHO細胞で発現される場合、発現された殆どのモノマー形態はN末端アミノ酸残基にメチオニン(配列番号2の残基27)を有する(これは野生型ヒトCTLA4のN末端アミノ酸残基に対応する)。しかしながら、配列番号1はまたオンコスタチンMシグナル配列のコード配列(配列番号1のヌクレオチド11-88)を含むので、配列番号1から発現されたタンパク質はオンコスタチンMシグナル配列を含む。シグナル配列は、細胞質からのタンパク質輸送のプロセスまたは細胞からの分泌の際に発現されたタンパク質から開裂される。しかしながら、開裂は、アミノ酸残基26と27との間の開裂(N末端残基27となる)と対立するものとして、アミノ酸残基25と26との間の開裂(N末端残基26となる、すなわち「Ala変異体」)、またはアミノ酸残基24と25との間の開裂(N末端残基2となる、すなわち「Met-Ala変異体」)などのN末端変異体という結果となりうる。例えば、Met-Ala変異体はCTLA4-Ig分子の混合物中に約1%で存在することがあり、Ala変異体はCTLA4-Ig分子の混合物中に約8-10%で存在することがある。さらに、配列番号1からの発現タンパク質は、不完全なプロセシングのためにC末端変異体を有しうる。殆どのC末端は配列番号2の残基382のグリシンである。CTLA4-Ig分子の混合物中には、C末端にリシン(配列番号2の残基383)を有する分子が、例えば約4-5%で存在しうる。
【0052】
CTLA4-Igモノマー分子は、ヒトCTLA4の細胞外ドメインを含む。一つの態様において、細胞外ドメインは、配列番号2のアミノ酸27-151をコードする配列番号1のヌクレオチド89-463のヌクレオチド配列を含む。他の態様において、細胞外ドメインは、ヒトCTLA4の変異配列を含む。他の態様において、細胞外ドメインは、保存的なアミノ酸変化が生成するような配列番号1のヌクレオチド89-463に対するヌクレオチド変化を含む。他の態様において、細胞外ドメインは、配列番号1のヌクレオチド89-463に対して少なくとも75%, 80%, 85%, 90%, 95%, 96%, 97%, 98%, または99%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0053】
CTLA4-Igモノマー分子は、ヒト免疫グロブリンの定常領域を含む。この定常領域は定常領域の一部であってよい;この定常領域は野生型または変異体配列を有していてよい。定常領域は、ヒトIgG1, IgG2, IgG3, IgG4, IgM, IgA1, IgA2, IgDまたはIgEからのものであってよい。定常領域は、免疫グロブリンの軽鎖または重鎖からのものであってよい。定常領域がIgG, IgD, またはIgA分子からのものである場合は、定常領域は以下の定常領域ドメインの1またはそれ以上を含む:CL, CH1, ヒンジ, CH2, またはCH3。定常領域がIgMまたはIgEからのものである場合は、定常領域は以下の定常領域ドメインの1またはそれ以上を含む:CL, CH1, CH2, CH3, またはCa4。一つの態様において、定常領域は、IgG, IgD, IgA, IgMまたはIgEから1またはそれ以上の定常領域ドメインを含む。
【0054】
一つの態様において、CTLA4-Igモノマー分子は、配列番号2のアミノ酸残基156, 162, および165のセリンが野生型配列において存在するシステインから遺伝子操作したものである修飾ヒトIgG1ヒンジ領域(配列番号1のヌクレオチド464-508;配列番号2のアミノ酸152-166)を含む。
【0055】
一つの態様において、CTLA4-Igモノマー分子は、修飾ヒトIgG1 CH2領域および野生型CH3領域を含む(修飾ヒトIgG1 CH2ドメインは配列番号1のヌクレオチド509-838および配列番号2のアミノ酸167-276を有する;ヒトIgG1 CH3ドメインは配列番号1のヌクレオチド839-1159および配列番号2のアミノ酸277-383を有する)。
【0056】
一つの態様において、CTLA4-Ig分子の集合は、米国特許第7,094,874号(2006年8月22日発行)および公報第US20030083246号およびUS20040022787号(参照のためその全体を本明細書に引用する)として公開された米国特許出願の図7、8または9のいずれか1またはそれ以上に示す配列を有するモノマーを含む。
【0057】
一つの態様において、CTLA4-Igテトラマー分子は、CTLA4-Ig分子ポリペプチドの2対または2つのダイマーを含み、その際、各ポリペプチドは以下のアミノ酸配列の一つを有する:(i)配列番号2の26-383、(ii)配列番号2の26-382、(iii)配列番号2の27-383、または(iv)配列番号2の27-382、または任意に(v)配列番号2の25-382、または(vi)配列番号2の25-383。ポリペプチドの対またはダイマーの各成員は互いに共有結合により連結され、2対のポリペプチドは互いに非共有結合で会合してテトラマーを形成する。そのようなテトラマー分子は、CD80またはCD86に結合することができる。
【0058】
他の態様において、そのようなテトラマー分子は、CTLA4-Igダイマー(そのモノマーは上記アミノ酸配列の一つを有する)のCD80またはCD86に対する結合アビディティーよりは少なくとも2倍大きなアビディティーでCD80またはCD86に結合する。他の態様において、そのようなテトラマー分子は、野生型CTLA4のCD80またはCD86に対する結合アフィニティーまたはアビディティーよりは少なくとも2倍大きなアビディティーでCD80またはCD86に結合する。そのような大きなアビディティーは、以下に記載する免疫障害または他の疾患を治療するうえでのより高い効能に寄与しうる。さらに、より高いまたは改善されたアビディティーは、医薬のより高い効力の結果を生成しうる。例えば、CTLA4-Igテトラマーを含む治療組成物は、CTLA4-Igモノマーを有する同じ量の治療組成物よりも高いアビディティーそれゆえ高い効力を有するであろう。他の態様において、そのようなテトラマー分子は、CTLA4-Igダイマー(そのモノマーは上記アミノ酸配列の一つを有する)と比べてT細胞増殖に対する抑制が少なくとも2倍大きい。他の態様において、そのようなテトラマー分子は、野生型CTLA4分子と比べてT細胞増殖に対する抑制が少なくとも2倍大きい。
【0059】
T細胞増殖は当該技術分野で公知の標準アッセイを用いて測定することができる。例えば、T細胞増殖を評価する最も一般的な方法の一つは、抗原またはTCRに対する作動性(agonistic)抗体によりT細胞を刺激して、例えば、増殖T細胞中への滴定チミジン(3H-TdR)の取り込みまたは増殖T細胞によって培地中に放出されたサイトカインの量を測定することである。それによってT細胞活性化または増殖に対するCTLA4-Ig分子の抑制効果を測定することができる。
【0060】
CTLA4-Ig分子のアフィニティーは、CD80, CD86, またはCD8OIgまたはCD86Ig融合タンパク質を含む単一リガンドへの該分子の結合の強度である。CTLA4-Igのリガンドへのアフィニティーは、例えば、表面プラズモン法に基づく結合相互作用分析(BIA)を用いて測定することができる。結合強度を測定することとは別に、それは会合定数や解離定数などの結合動力学のリアルタイム決定を可能にする。センサーチップ(薄い金属フィルムをコーティングしたガラススライドからなり、これに表面マトリックスが共有結合している)を、相互作用物質の一つ、すなわち、CTLA4-Igまたはリガンドの一つでコーティングする。その表面に他の相互作用物質を含有する溶液を流れさせる。連続光線を該表面の他方の側に向け、その反射角を測定する。CTLA4-Igがリガンドに結合すると光線の共鳴角は変化する(それはセンサーの反応側に近接した媒質の屈折率に依存するので、それは媒質に溶解した物質の濃度と正の相関関係を有する)。それを引き続きコンピューターの助けを借りて解析する。
【0061】
一つの態様において、CTLA4-Ig結合実験は、BIAcore装置(BIAcore AG、ウプサラ、スウェーデン)での表面プラズモン共鳴(SPR)により行うことができる。CTLA4-IgをBIAcoreセンサーチップ上のカルボキシメチル化デキストランマトリックスに第一級アミノ基により共有結合させ、それによってCTLA4-Igをセンサーチップに固定化させることができる。別のやり方として、抗定常領域抗体を用いてCTLA4-IgをIgフラグメントを介してセンサー表面に間接的に固定化することができる。その後、リガンドをチップに加えてCTLA4-Igのリガンドへの結合を測定する。アフィニティー測定は、例えば、van der Merwe, P.ら、J. Exp. Med. (1997) 185 (3):393-404の記載に従って行うことができる。
【0062】
CTLA4-Ig分子のアビディティーもまた測定することができる。アビディティーは、2つの分子または細胞の相互の複数部位での結合の強度の合計として定義することができる。アビディティーは、分子上の一つの部位のそのリガンドへの結合の強度であるアフィニティーとは区別される。理論によって拘束されるものではないが、より高いCTLA4-Ig分子のアビディティーは、T細胞の増殖および活性化に対するCTLA4-Ig分子による抑制の増大した効力に導きうる。アビディティーは、例えば、2つのカテゴリーの固相アッセイ:(a)競合抑制アッセイ、および(b)溶出アッセイにより測定することができる。両アッセイともにリガンドを固相支持体に結合させる。競合抑制アッセイでは、ついでCTLA4-Ig分子を溶液中の所定濃度にて種々の濃度の遊離のリガンドとともに加え、固相結合を50%抑制するリガンドの量を測定する。必要なリガンドの量が少ないほど、アビディティーは強くなる。溶出アッセイでは、リガンドを溶液中で加える。平衡状態を達成した後、カオトロピック剤または界面活性剤(例えば、イソチオシアネート、尿素、またはジエチルアミン)を種々の濃度で加えてCTLA4-Ig/リガンド相互作用を妨害させる。その後、溶出に抵抗するCTLA4-Igの量をELISAで決定する。アビディティーが高いほど、一定量のCTLA4-Igを溶出させるのに必要なカオトロピック剤が多くなる。CTLA4-Ig分子の不均一な混合物の相対アビディティーはアビディティー指数(AI)として表すことができ、これは結合したCTLA4-Ig分子の50%を溶出するのに必要な溶出剤の濃度に等しい。データの精密分析は、溶出剤の様々な濃度で溶出したCTLA4-Igのパーセントを決定することにより行うことができる。
【0063】
本発明のCTLA4Ig分子の製造方法
CTLA4Ig分子の発現は原核細胞で行うことができる。原核生物は、最も屡々、細菌の様々な株によって表される。細菌はグラム陽性またはグラム陰性であってよい。典型的に、大腸菌などのグラム陰性細菌が好ましい。他の微生物もまた用いることができる。
【0064】
CTLA4Ig分子をコードする上記配列を、大腸菌などの原核細胞中で外来配列を発現するようにデザインしたベクターに挿入することができる。これらベクターは一般に用いられる原核生物調節配列を含んでいることができ、該配列は、本明細書において、リボソーム結合部位配列とともに転写開始のためのプロモーター(場合によりオペレーターとともに)を含むものとして定義され、ベータ−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プロモーター系(Changら、(1977) Nature 198:1056)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、(1980) Nucleic Acids Res. 8:4057)およびラムダ由来PLプロモーターおよびN-遺伝子リボソーム結合部位(Shimatakeら、(1981) Nature 292:128)などの一般に用いられるプロモーターを含む。
【0065】
そのような発現ベクターはまた、ベクターが細菌中で複製できるように、またプラスミドを含む細胞が抗生物質(アンピシリンやカナマイシンなど)の存在下で増殖したときに選択することができるように、複製起点および選択可能なマーカー(抗生物質に対する耐性を付与するベータ−ラクタマーゼまたはネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子など)をも含んでいるであろう。
【0066】
発現プラスミドの原核細胞中への導入は、これらに限られるものではないが、CaCl2-ショック(Cohen, (1972) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:2110, およびSambrookら(編)、“Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 第2版、コールドスプリングハーバープレス, (1989))およびエレクトロポレーションを含む様々な標準法により行うことができる。
【0067】
本発明の実施に従えば、真核細胞もまた適当な宿主細胞である。真核細胞の例としては、初代または不死化のいずれを問わず、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe, およびPichia pastoris)、および植物細胞が挙げられる。ミエローマ、COS細胞およびCHO細胞が、宿主として用いることのできる動物細胞の例である。具体的なCHO細胞としては、これらに限られるものではないが、DG44(Chasinら、1986 Som. Cell. Molec. Genet. 12:555-556; Kolkekar 1997 Biochemistry 36:10901-10909)、CHO-K1(ATCC No. CCL-61)、CHO-K1 Tet-On細胞株(Clontech)、ECACC 85050302と称するCHO(CAMR, ソールスベリー、ウィルトシャー、英国)、CHOクローン13(GEIMG, ジェノバ、イタリア)、CHOクローンB(GEIMG, ジェノバ、イタリア)、ECACC 93061607と称するCHO-K1/SF(CAMR, ソールスベリー、ウィルトシャー、英国)、およびECACC 92052129と称するRR-CHOK1(CAMR, ソールスベリー、ウィルトシャー、英国)が挙げられる。例示的な植物細胞としては、タバコ(全植物、細胞培養、またはカルス)、トウモロコシ、ダイズ、およびコメ細胞が挙げられる。トウモロコシ、ダイズ、およびコメの種子もまた許容される。
【0068】
CTLA4Ig分子をコードする上記配列はまた、真核細胞中で外来配列を発現するようにデザインしたベクターに挿入することができる。ベクターの調節配列は、具体的な真核宿主によって変わりうる。
【0069】
発現ベクターに使用するために一般的に用いられる真核調節配列としては、哺乳動物と適合しうるプロモーターおよび調節配列、例えば、CMVプロモーター(CDM8ベクター)およびトリ肉腫ウイルス(ASV)(πLNベクター)が挙げられる。他の一般に用いられるプロモーターとしては、シミアンウイルス40 (SV40)からの初期および後期プロモーター(Fiersら、(1973) Nature 273:113)、または他のウイルスプロモーター、例えば、ポリオーマ、アデノウイルス2、およびウシ乳頭腫ウイルスからのプロモーターが挙げられる。hMTII(Karinら、(1982) Nature 299:797-802)などの誘導性プロモーターもまた用いることができる。
【0070】
真核生物中でCTLA4Ig分子を発現するためのベクターはまた、エンハンサー領域と呼ばれる配列を有していてもよい。これらは遺伝子発現を最適化するのに重要であり、プロモーター領域の上流かまたは下流のいずれかに見出される。
【0071】
真核宿主細胞のための発現ベクターの例としては、これらに限られるものではないが、哺乳動物宿主細胞のためのベクター(例えば、BPV-1, pHyg, pRSV, pSV2, pTK2 (Maniatis); pIRES (Clontech); pRc/CMV2, pRc/RSV, pSFV1 (Life Technologies); pVPakc Vectors, pCMVベクター, pSG5ベクター (Stratagene))、レトロウイルスベクター (例えば、pFBベクター (Stratagene)), pCDNA-3 (Invitrogen) またはその修飾形、アデノウイルスベクター; アデノ随伴ウイルスベクター, バキュロウイルスベクター, 酵母ベクター (例えば、pESCベクター(Stratagene))が挙げられる。
【0072】
CTLA4Ig分子をコードする核酸配列は、真核宿主細胞細胞のゲノムに組み込み、宿主ゲノムの複製とともに複製することができる。別のやり方として、CTLA4Ig分子を運ぶベクターは、染色体外複製を可能とすべく複製起点を含んでいてよい。
【0073】
Saccharomyces cerevisiae中で核酸配列を発現させるには、内生酵母プラスミド, 2μ環(circle)からの複製起点を用いることができる(Broach, (1983) Meth. Enz. 101:307)。別のやり方として、自己複製を促進することのできる酵母ゲノムからの配列を用いることができる(例えば、Stinchcombら、(1979) Nature 282:39); Tschemperら、(1980) Gene 10:157; およびClarkeら、(1983) Meth. Enz. 101:300を参照)。
【0074】
酵母ベクターのための転写調節配列としては、解糖酵素の合成のためのプロモーター(Hessら、(1968) J. Adv. Enzyme Reg. 7:149; Hollandら、(1978) Biochemistry 17:4900)が挙げられる。当該技術分野で知られたさらなるプロモーターとしては、CDM8ベクターにおいて提供されるCMVプロモーター(ToyamaおよびOkayama, (1990) FEBS 268:217-221); 3-ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモーター(Hitzemanら、(1980) J. Biol. Chem. 255:2073), および他の解糖酵素のプロモーターが挙げられる。
【0075】
他のプロモーターは、環境刺激または細胞の増殖培地によって制御することができるので誘導性である。これら誘導性プロモーターとしては、熱ショックタンパク質、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素異化と関連する酵素、およびマルトースおよびガラクトースの利用を担う酵素の遺伝子からのものが挙げられる。
【0076】
調節配列はまた、コード配列の3'末端側に配置してもよい。これら配列はメッセンジャーRNAを安定化させる作用がある。そのようなターミネーターは、幾つかの酵母由来および哺乳動物遺伝子においてコード配列に続く3'非翻訳領域に見出される。
【0077】
植物および植物細胞のための例示的ベクターとしては、これらに限られるものではないが、アグロバクテリウムTiプラスミド、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、およびトマトゴールデンモザイクウイルス(tomato golden mosaic virus;TGMV)が挙げられる。
【0078】
哺乳動物細胞は、これらに限られるものではないが、リン酸カルシウムの存在下でのトランスフェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、またはウイルスベクターを用いた形質導入を含む方法により形質転換することができる。
【0079】
外来DNA配列を植物および酵母ゲノム中に導入する方法としては、(1)機械的方法、例えば、単一細胞またはプロトプラスト中へのDNAのマイクロインジェクション、DNAの存在下での細胞のガラスビーズを用いた攪拌、またはDNAコーティングしたタングステンまたは金の球体の細胞またはプロトプラスト中への射出など;(2)ポリエチレングリコール処理または高電圧電気パルスに供すること(エレクトロポレーション)で細胞膜を巨大分子に透過性にすることによるDNAの導入;または(3)細胞膜に融合するリポソーム(cDNAを含有する)の使用が挙げられる。
【0080】
米国特許出願公開第20050019859号および米国特許出願公開第20050084933号には、動物または哺乳動物細胞培養による本発明のタンパク質、とりわけ組換え糖タンパク質産物の製造方法が教示されており、参照のため本明細書に引用する。
【0081】
細胞培養プロセスのタンパク質産生相に従い、CTLA4Ig分子を当業者に理解られた方法を用いて細胞培養培地から回収する。とりわけ、CTLA4Ig分子を分泌されたポリペプチドとして培地から回収する。
【0082】
培地を最初に遠心分離して細胞破砕片および粒状物を取り除く。引き続き、所望のタンパク質を当該技術分野で十分に確立された以下の非制限的精製法を用いて混入DNA、可溶性タンパク質、およびポリペプチドから精製する:SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;エタノール沈殿;イムノアフィニティーまたはイオン交換カラムでの分画;逆相HPLC;シリカまたは陰イオン交換樹脂(QAEやDEAEなど)上のクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;例えば、Sephadex G-75TMカラムを用いたゲル濾過;およびIgGなどの混入物を除去するプロテインA SepharoseTMカラム。フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)などのプロテアーゼインヒビター、またはプロテアーゼインヒビターカクテル混合物の添加もまた、精製の際のタンパク質加水分解を抑制するのに有用である。当業者であれば、目的タンパク質、例えば糖タンパク質に適した精製法が、組換え細胞培養中での発現の際にタンパク質の性質が変化するのに対処すべく変更を要することを認識するであろう。
【0083】
糖タンパク質の炭化水素基を選択する精製技術および方法もまた、本発明との関連で有用である。例えば、そのような技術としては、HPLCまたは陽イオンまたは陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィーが挙げられ、選択すべき炭化水素に応じてより塩基性またはより酸性の画分が回収される。そのような技術の使用はまた、混入物の同時除去という結果となりうる。
【0084】
精製方法はさらに、哺乳動物細胞株の細胞培養培地中に潜在的に存在するかもしれないウイルスおよび/またはレトロウイルスを不活化および/または除去するさらなる工程を含んでいてよい。相当数のウイルスクリアランス工程を利用でき、カオトロピック剤、例えば、尿素またはグアノシンによる処理、界面活性剤、さらなる限外濾過/ダイアフィルトレーション工程、常法の分離、例えば、イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィー、極端なpH、加熱、プロテアーゼ、有機溶媒またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0085】
精製したCTLA4Ig分子は、貯蔵またはさらに処理する前に濃縮または緩衝液交換を必要とする。Pall Filtron TFFシステムを用いて、濃縮および前の精製カラムからの溶出緩衝液を医薬物質に望ましい最終緩衝液での交換を行うことができる。
【0086】
一つの態様において、濃縮しダイアフィルトレーション工程に供した精製CTLA4Ig分子を、2-L BiotainerRボトル、50-Lバイオプロセスバッグまたは他の適当な容器に充填することができる。そのような容器中のCTLA4Ig分子を、凍結前に2℃〜8℃にて約60日間貯蔵することができる。2℃〜8℃でのさらに長期の精製CTLA4Ig分子の貯蔵は、HMW種の比率の増大に導く。それゆえ、長期の貯蔵のためには、CTLA4Ig分子を貯蔵前に約-70℃で凍結し、約-40℃の温度で貯蔵することができる。凍結温度は約-50℃〜約-90℃で変わってよい。凍結時間は、CTLA4Ig分子を入れた容器の容量および冷凍庫に収容した容器の数によって変わり、大きく依存する。例えば、一つの態様において、CTLA4Ig分子を2-L BiotainerRボトルに入れる。4つ未満の2-L BiotainerRボトルを冷凍庫に収容すると、約14〜少なくとも約18時間の凍結時間が必要である。少なくとも4つの2-L BiotainerRボトルを冷凍庫に収容すると、約18〜少なくとも約24時間の凍結時間が必要である。凍結CTLA4Ig分子を入れた容器は、約-35℃〜約-55℃の温度で貯蔵する。約-35℃〜約-55℃の温度での貯蔵時間は様々であり、18時間もの短い時間であってよい。凍結した医薬物質は、医薬物質の製剤化のために制御した仕方で解凍することができる。
【0087】
同時継続中の米国特許出願第60/752,267号(2005年12月20日出願)および同第06/849,543号(2006年10月5日出願)およびPCT特許出願(代理人事件番号10734 PCT;発明の名称:細胞株、組成物および組成物の製造方法;発明者Kirk Leister;2006年12月19日出願)には、動物または哺乳動物細胞培養による本発明のタンパク質、とりわけ組換え糖タンパク質産物の製造方法が教示されており、参照のため本明細書に引用する。
【0088】
本発明の凍結乾燥製剤
本発明の凍結乾燥製剤は、CTLA4Ig分子を少なくとも1:2(タンパク質:凍結保護剤)の重量比で含む。凍結保護剤は、好ましくは糖、さらに好ましくは二糖、最も好ましくはショ糖またはマルトースである。凍結乾燥製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、増量剤および保存剤よりなる群から選ばれた成分の1またはそれ以上をも含んでいてよい。
【0089】
製剤開発研究の過程で、CTLA4Ig分子の溶液状態でのおよび凍結乾燥固体状態での安定性に対する種々の賦形剤の効果を評価した。
【0090】
安定化剤の不在下での凍結乾燥CTLA4Ig分子の不安定さは、製剤中に凍結保護剤を含ませることの必要性を明らかに強調した。初期のスクリーニング研究は、医薬製品がショ糖やマルトースなどの糖およびアルギニンやリシンなどのアミノ酸の存在下で安定であることを示した。マンニトールなどのポリオールやデキストラン40などの多糖は安定性にとって有害であった。好ましい凍結保護剤は、二糖のマルトースおよびショ糖である。
【0091】
実施例VIは、マルトースの存在下、50℃で貯蔵した凍結乾燥Abatacept医薬製品の安定性研究を記載している。高分子量(HMW)種の増大を安定性指示サイズ排除クロマトグラフィー(stability-indicating size exclusion:SE-HPLC)アッセイを用いてモニターした。その結果は、凍結乾燥固体状態のCTLA4Ig分子の安定性がマルトースの存在下で促進されることを示している。
【0092】
凍結乾燥医薬製品の安定化に有用なショ糖またはマルトースの量は、少なくとも1:2(タンパク質:ショ糖またはマルトース)の重量比、好ましくは1:2〜1:5(タンパク質:ショ糖またはマルトース)の重量比、さらに好ましくは約1:2(タンパク質:ショ糖またはマルトース)の重量比である。
【0093】
必要なら、凍結乾燥の前に、薬理学的に許容しうる酸および/または塩基を添加して製剤のpHを設定する。好ましい薬理学的に許容しうる酸は塩酸である。好ましい塩基は水酸化ナトリウムである。
【0094】
製剤開発の際に、凍結乾燥医薬製品の安定性をpHの関数として調べた。実施例VIは、凍結乾燥Abatacept医薬製品を用いたpHの関数としての安定性研究を記載している。凍結乾燥する前に溶液のpHを6〜8に調節した。試料を安定性試験に供し、構成製品バイアルを、安定性指示サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)アッセイを用いて種々の時点での高分子量種の増大についてモニターした。推奨された2〜8℃の貯蔵条件ではHMW種の生成割合に有意の変化は観察されなかった。さらに、初期の開発の際に得られた溶液状態の安定性データは、最大安定性のpHが7〜8であることを示していた。凍結乾燥医薬製品について許容しうるpH範囲は7〜8であり、好ましい標的は7.5のpHであった。
【0095】
他の態様において、塩または緩衝液成分を、少なくとも約10mM、好ましくは10〜200mMの量で加えてよい。塩および/または緩衝液は薬理学的に許容しうるものであって、「塩基形成」金属またはアミンとともに種々の公知の酸(無機および有機)に由来する。リン酸緩衝液に加えて、グリシネート、炭酸、クエン酸緩衝液などを利用することができ、その場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして機能しうる。
【0096】
「増量剤」は、凍結乾燥した混合物に嵩(mass)を付加し、凍結乾燥ケーキの物理的構造に寄与する(例えば、開孔構造を維持した本質的に均一な凍結乾燥ケーキの生成を容易にし、)化合物である。例示的な増量剤としては、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびソルビトールが挙げられる。本発明の凍結乾燥製剤は、そのような増量剤を含んでいてよい。
【0097】
保存剤は、細菌の活性を低減させるために本発明の製剤に任意に添加することができる。保存剤の添加は、例えば、多回使用(多回投与)製剤の製造を容易にする。
【0098】
当業者であれば、バイアルに充填すべき医薬製品の量を必要とする投与量や特定の処置のための投与スケジュールに応じて選択できるであろう。例えば、バイアル当たりのCTLA4Igの濃度は、50〜300mg/バイアル、好ましくは100〜250mg/バイアルの範囲であってよい。
【0099】
凍結乾燥Abatacept医薬製品の典型的な組成物を下記表1に列記する。
【0100】
表1:凍結乾燥abatacept(250mg/バイアル)医薬製品の組成
【表1】

(注)a:バイアル、針、注射器損失のための5%過剰充填(overfill)を含む。
b:これら成分は、abatacept医薬溶液に存在する。
【0101】
凍結乾燥Belatacept医薬製品の典型的な組成物を下記表2に列記する。
【0102】
表2:凍結乾燥Belatacept100mg/バイアル医薬製品の組成
【表2】

(注)a:各バイアルは、再構成溶液のバイアル、針および注射器での残留のための10%過剰充填を含む。
【0103】
凍結乾燥医薬製品は水性担体で構成する。本発明において興味のもたれる水性担体は、薬理学的に許容しうるものであって(ヒトに投与するのに安全で非毒性)、凍結乾燥後に液体製剤を調製するのに有用なものである。例示的な希釈剤としては、注射用滅菌水(sterile water for injection:SWFI)、注射用静菌水(bacteriostatic water for injection:BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水)、滅菌食塩水、リンゲル液またはデキストロース液が挙げられる。
【0104】
好ましくは、本発明の凍結乾燥医薬製品は、注射用滅菌水, USP (SWFI)かまたは0.9%塩化ナトリウム注射液, USPのいずれかで構成する。構成の際に、凍結乾燥粉末は速やかに溶解して透明で無色の溶液を提供する。
【0105】
典型的には、本発明の凍結乾燥医薬製品は、10mlの注射用滅菌水, USP (SWFI)かまたは0.9%塩化ナトリウム注射液, USPのいずれかで約25mg/mlに構成する。構成した溶液は、0.9%塩化ナトリウム注射液, USPでさらに1〜10mg/mlの医薬製品濃度に希釈する。希釈した注射用医薬製品は等張であり、静脈内注入による投与に適している。
【0106】
初期の臨床開発に際して、凍結乾燥医薬製品の構成溶液は、非経口製品の製造および投与に一般に用いられる使い捨てシリコーン処理注射器に適合しないことがわかった。とりわけ、構成した医薬製品溶液は、10〜15分を超えてこれら注射器に貯蔵したときに糸状のゼラチン様粒子を生成した。さらに研究を進めたところ、この不適合が、医薬製品とシリコーン油(ジメチルシロキサン;これら注射器の滑沢剤として使用される)との相互作用によるものであることが示された。これら粒子の生成は、医薬製品溶液の効力に対してその使用期間にわたって影響を及ぼさなかった。医薬製品の構成およびバイアルから静脈注射バッグへの構成溶液の移し替えにはシリコーン不含の注射器を利用するのが好ましい。
【0107】
別法として、構成した医薬製品とシリコーン処理注射器との相互作用を低減または防止するため、界面活性剤を例えばその目的に十分な量で製剤に添加することができる。
【0108】
推奨される凍結乾燥製剤の貯蔵条件は2〜8℃であり、推奨される貯蔵寿命は少なくとも12ヶ月である。
【0109】
凍結乾燥製剤の調製
凍結乾燥医薬製品の製造法は、凍結乾燥用製剤化バルク溶液のバッチ処理(batching)、無菌濾過、バイアルへの充填、凍結乾燥チャンバでのバイアルの凍結、ついで凍結乾燥、栓をし、キャッピングすることを含む。
【0110】
実施例IIIおよびIVは、それぞれ、凍結乾燥AbataceptおよびBelatacept医薬製品の製造を記載している。
【0111】
製剤化バルク溶液は、所望のバイアル充填容量を一定に保持できるよう、典型的に所定のタンパク質濃度に設定する。凍結保護剤の添加に際しては、バッチ処理溶液の泡立ちを最小にし、かつ10〜20分以内に凍結保護剤の完全な溶解を確実にするため、ミキサーの速度は250±50rpmに制御する。製剤化バルク溶液は、凍結乾燥前に少なくとも32時間、2〜8℃または室温にて室内光で貯蔵することができる。
【0112】
製剤化バルク溶液は、CTLA4Ig分子の熱感受性のため、最終的に滅菌することはない。製剤化バルク溶液は、凍結乾燥用にバイアルに充填する前に、2つの直列の0.22μm Millipore MillipakR滅菌グレードフィルターを用いて滅菌する。
【0113】
この製品用に選択した凍結乾燥サイクルは、製品の品質を損なうことなく、乾燥の第一相および第二相の際に有効な昇華および蒸発がそれぞれ得られるように最適化する。
【0114】
凍結乾燥粉末の速やかな溶解を助けるため、また医薬製品の構成の際の過剰な泡の生成を防ぐため、凍結乾燥バイアルを凍結乾燥サイクルの終了時に500±100ミクロン室内圧で栓をする。
【0115】
当業者であれば、調製および注射の際のバイアル、針、注射器残留を補償すべく容器を過剰充填する必要があることを認識するであろう。例えば、Abatacept医薬製品(250mg/ml)の各バイアルは、再構成および回収時の損失のため、5%余剰の医薬製品を含む。
【0116】
液体皮下製剤
当業者であれば、頻繁で慢性的な治療が必要な患者にとってのIV製剤の不都合さを認識するであろう。患者は、1時間もの長きにわたるIV注入による医薬投与を受けるために病院に頻繁に出かけなければならない。その結果、家庭で自分でも投与できるSC製剤は、そのような患者にとって非常に都合がよい。
【0117】
皮下投与のためには、高タンパク質濃度の剤型が望まれる。1mg/kg(投与量当たり>100mg)を超える高投与量での治療は、SC経路で投与できる量が小さいため(<1.5ml)、100mg/mlを超える濃度の製剤を開発する必要がある。高分子量種の生成に対して高濃度での長期にわたる安定性を最適化するため、製剤開発研究を行って本発明の液体SC製剤の溶液状態安定性に対する種々の賦形剤の効果を評価した。
【0118】
本発明のSC製剤は、水性担体中に、安定化レベルの糖と組み合わせた少なくとも100mg/mlのタンパク質濃度、好ましくは安定化レベルの糖と組み合わせた少なくとも125mg/mlのタンパク質濃度のCTLA4Ig分子を含む。糖は少なくとも1:1.1(タンパク質:糖)の重量比であるのが好ましい。安定化剤は、SC注射器での投与に望ましくないかまたは適当でない粘度という結果となる量よりも少ない量で用いるのが好ましい。糖は好ましくは二糖、最も好ましくはショ糖である。SC製剤はまた、緩衝液、界面活性剤、および保存剤よりなる群から選ばれた1またはそれ以上の成分をも含んでいてよい。
【0119】
SC製剤の安定性プロフィールを、糖、多糖、アミノ酸、界面活性剤、ポリマー、シクロデキストラン、タンパク質を含む種々の安定化剤の存在下で評価した。評価した全ての賦形剤の中で、ショ糖、マンニトールおよびトレハロースなどの糖が、高分子量種の生成に対して良好な安定化効果を有していた。
【0120】
実施例VおよびVIIIは、それぞれ、ショ糖の存在下、種々の温度で種々の時間貯蔵したSC BelataceptおよびAbatacept医薬製品の安定性試験を記載している。高分子量種の増大を、安定性指示サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)アッセイを用いてモニターした。その結果は、SC製剤中のCTLA4Ig分子の安定性がショ糖の存在によって促進されることを示していた。ショ糖による安定化は、ショ糖:タンパク質重量比が高いほど良好であった。これら研究に基づき、ショ糖を、過度の高張SC溶液という結果となることなく最適な安定性を付与する比での安定化剤として選択した。
【0121】
SC医薬製品の安定化剤として有用なショ糖の量は、少なくとも1:1(タンパク質:ショ糖)の重量比、好ましくは少なくとも1:1.3〜1:5(タンパク質:ショ糖)の重量比、さらに好ましくは少なくとも約1:1.4(タンパク質:ショ糖)の重量比である。
【0122】
必要なら、薬理学的に許容しうる酸および/または塩基を添加して製剤のpHを調節する。好ましい薬理学的に許容しうる酸は塩酸である。好ましい塩基は水酸化ナトリウムである。
【0123】
製剤開発の際に、SC医薬製品の安定性をpHの関数として調べた。実施例Vは、SC Belatacept医薬製品を用いたpHの関数としての安定性試験を記載している。SC製剤のpHを7〜8.2に調節し、試料を安定性試験に供し、医薬製品を、安定性指示サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)アッセイを用いて種々の時点での高分子量種の増大についてモニターした。推奨された2〜8℃の貯蔵条件ではHMW種の生成割合に有意の変化は3ヶ月後に観察されなかった。
【0124】
凝集に加えて、脱アミド化が、発酵、回収/細胞清澄化、精製、医薬物質/医薬製品貯蔵の際および試料分析の際に生じるペプチドおよびタンパク質の一般的な変異体である。脱アミド化はタンパク質からのNH3の喪失であり、加水分解を担いうるスクシンイミド中間体を生成する。スクシンイミド中間体は、親ペプチドの17u質量の低下という結果となる。引き続く加水分解は、18u質量の増大という結果となる。スクシンイミド中間体の単離は、水性条件下での不安定性のために困難である。そのようなものであるので、脱アミド化は典型的に1u質量の増大として検出することができる。アスパラギンの脱アミド化は、アスパラギン酸かまたはイソアスパラギン酸のいずれかという結果となる。脱アミド化の速度に影響を及ぼすパラメーターとしては、pH、温度、溶媒の誘電率、イオン強度、一次配列、局部的なポリペプチドのコンホメーションおよび三次構造が挙げられる。ペプチド鎖中のAsnに隣接するアミノ酸残基は脱アミド化速度に影響を及ぼす。タンパク質配列中のAsnに続くGlyおよびSerは、脱アミド化に対するより高い感受性という結果となる。
【0125】
予備的な実験室スケールの安定性試験は、pH7.8でのSC abatacept製剤を用い、24ヶ月の時点でペプチドマッピング試験法の参照レベルよりも脱アミド化が上回ることを示唆している。2-8℃および25℃の両者でのおよび60%の湿度での6ヶ月でのデータは、脱アミド化速度が、pH7.8でのSC abatacept試料と比較したときに、pH7.2ではより低く、pH8ではより高いことを示した。実施例IXおよびXIIは、6.3〜7.2のpH範囲でのSC医薬製品製剤の脱アミド化を評価すべくデザインした実験室スケールのpH研究を記載したものである。
【0126】
SC医薬製品の許容しうるpH範囲は、6〜8、好ましくは6〜7.8、さらに好ましくは6〜7.2である。
【0127】
他の側面において、塩または緩衝液成分を少なくとも10mM、好ましくは10〜200mMの量で加えてよい。塩および/または緩衝液は薬理学的に許容しうるものであって、「塩基形成」金属またはアミンとともに種々の公知の酸(無機および有機)に由来する。リン酸緩衝液に加えて、グリシネート、炭酸、クエン酸緩衝液などを利用することができ、その場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして機能しうる。
【0128】
実施例VIIIは、Abatacept SC医薬製品に対して及ぼす緩衝液の強度の効果を記載している。安定性は、pH7.5で100mg/mLのabatacept医薬製品濃度では、5mMリン酸緩衝液に比べて10mMリン酸緩衝液の方が良かった。さらに、10mMリン酸緩衝液のより高い緩衝能は、5mM緩衝液に比べて製剤に対するより高いpH制御を付与した。
【0129】
本発明において興味のもたれる水性担体は、薬理学的に許容しうるものであって(ヒトに投与するのに安全で非毒性)、液体製剤を調製するのに有用なものである。例示的な担体としては、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水)、滅菌食塩水、リンゲル液またはデキストロース液が挙げられる。
【0130】
保存剤は、細菌の作用を低減するために、本明細書に記載の製剤に任意に添加してよい。保存剤の添加は、例えば、多回使用(多回投与)製剤の製造を容易にする。
【0131】
凍結乾燥医薬製品に関して検討したように、CTLA4Ig分子は、シリコーンと相互作用して可視性の粒子を生成し、それによって患者がシリコーン不含の注射器の使用に制限されるという点で標準的な注射器に認められるシリコーンとは適合しない。SC製剤は、シリコーンの存在下で可溶性の粒子が生成するのを防ぐために界面活性剤を任意に含んでいてよい。
【0132】
実施例VおよびVIIIは、それぞれ、belataceptおよびabatacept医薬製品の溶液安定性に対するポリソルベート80およびポロキサマー188などの界面活性剤の効果を記載しており、界面活性剤はSC製剤中のCTLA4Ig分子の安定性に対して影響を及ぼさないことがわかった。種々のレベルのポロキサマー188を評価したところ、4mg/ml〜8mg/ml、好ましくは8mg/mlの濃度が、製剤においてシリコーンの関連する粒子形成を適切に防ぐことがわかった。
【0133】
belatacept SC医薬製品、125mg/ml(100mg/バイアル)医薬製品の典型的な組成を下記表3に示す。
表3:belatacept SC医薬製品、125mg/ml(100mg/バイアル)の組成
【表3】

(注):バイアル、針、注射器損失のための40%過剰充填を含む。
【0134】
abatacept SC医薬製品、125mg/ml(125mg/バイアル)医薬製品の典型的な組成を下記表4に示す。
表4:Abatacept SC医薬製品、125mg/ml(125mg/バイアル)の組成
【表4】

(注):バイアル、針、注射器損失のための40%過剰充填を含む。
【0135】
注射器に充填したabatacept SC医薬製品、125mg/mlの典型的な組成を下記表5に示す。
表5:Abatacept SC医薬製品、125mg/ml(125mg/注射器)の組成
【表5】

【0136】
推奨されるSC製剤の貯蔵条件は2〜8℃であり、推奨される貯蔵寿命は少なくとも12ヶ月である。
【0137】
SC医薬製品および適合する(matching)プラシーボの密度を、Mettler-Toledo密度計を用いて周囲温度で決定した。測定は、5mL試料を3つずつ用いて行った。abatacept SC製剤の密度は1.1g/ccであり、プラシーボ製品の密度は1.065g/ccであることがわかった。典型的に、SC CTLA4Ig製剤の密度は約1.0g/cc〜約1.2g/cc、好ましくは約1.0g/cc〜約1.15g/cc、さらに好ましくは約1.095g/cc〜約1.105g/ccである。
【0138】
abatacept SC製剤の粘度を、Brookfieldレオメーターを用いて周囲温度で決定した。9.3cpsの参照標準を測定に用いた。125mg/mLのabatacept濃度でのSC医薬製品の粘度は13±2cpsであることがわかった。典型的にSC CTLA4Ig製剤の粘度は、125mg/mLで約9〜約20cps、好ましくは約9〜約15cps、さらに好ましくは12〜約15cpsである。
【0139】
SC abataceptおよびプラシーボ製剤のオスモル濃度(Osmolality)を、蒸気圧法を用いて測定した。データは、125mg/mLの濃度において、abatacept SC製剤のオスモル濃度が770±25mOsm/kgH2Oであることを示している。典型的に、125mg/mLでのSC CTLA4Ig製剤のオスモル濃度は、約250〜約800mOsm/kgH2O、好ましくは約700〜約800mOsm/kgH2O、さらに好ましくは約750〜約800mOsm/kgH2Oである。
【0140】
SC製剤の調製
SC製剤の製造法は、典型的に、糖および界面活性剤とともに圧錠し、ついで無菌的な滅菌濾過およびバイアルまたは注射器への充填、それに先だつ任意の限外濾過ユニットを用いたダイアフィルトレーション(緩衝液の交換)および医薬物質の濃縮を含む。
【0141】
実施例IおよびIIは、それぞれ、SC BelataceptおよびAbatacept医薬製品の製造を記載している。
【0142】
当業者であれば、調製および注射の際のバイアル、針、注射器残留を補償すべく容器を過剰充填する必要があることを認識するであろう。例えば、回収時の損失のため40%の医薬製品をSC液体製剤の各バイアルに導入し、100mgのbelataceptを含む0.8mlの溶液をバイアルから回収できることを保証する。
【0143】
液体製剤
IV製剤が、特定の場合、例えば、患者が移植後に入院していてすべての医薬をIV経路で投与されるときなどの場合に好ましい投与経路である。当業者であれば、製造業者およびヘルスケア専門家の両者にとって、それぞれ凍結乾燥製剤の不利およびリスクを認識するであろう。再構成と関連したヘルスケア専門家にとってのリスクおよび不利としては、汚染、泡立ちおよび製品の損失並びにIV製剤を調製するのに要するヘルスケア専門家の時間が挙げられる。さらに、製造プロセスの凍結乾燥工程をなくすことにより、製造業者の装置の費用および被用者の時間を低減できる。これら理由はすべて、IV用液体製剤をデザインするのに十分な動機付けとなる。
【0144】
開発すべき好ましい液体製剤は、約25mg/mlのタンパク質濃度に最初に構成した後の凍結乾燥医薬製品を擬態する製剤であろう。購入した液体製剤は、使用時にヘルスケア専門家により、0.9%塩化ナトリウム注射液, USPを用いて1〜10mg/mlの所望の医薬製品濃度にさらに希釈される。希釈した注射用医薬製品は等張であり、静脈内注入による投与に適している。
【0145】
上記で検討したように、液体製剤の長期の安定性はタンパク質医薬製品にとって問題である。高分子量種の生成に対する溶液の長期安定性を確認するため、製剤開発研究を行って本発明の液体製剤の溶液状態安定性を評価した。
【0146】
本発明の液体製剤は、水性担体中にCTLA4Ig分子を、安定化レベルの糖と組み合わせて少なくとも20mg/mlのタンパク質濃度にて、好ましくは安定化レベルの糖と組み合わせて少なくとも25mg/mlのタンパク質濃度にて含む。糖は、少なくとも1:1(タンパク質:糖)の重量比であるのが好ましい。糖は、好ましくは二糖、最も好ましくはショ糖である。液体製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、および保存剤よりなる群から選ばれた1またはそれ以上の成分を含んでいてもよい。
【0147】
液体製剤の安定化に有用なショ糖の量は、少なくとも1:1(タンパク質:ショ糖)の重量比、好ましくは1:2〜1:10(タンパク質:ショ糖)の重量比、さらに好ましくは約1:2(タンパク質:ショ糖)の重量比である。
【0148】
必要なら、薬理学的に許容しうる酸および/または塩基を添加して製剤のpHを設定する。好ましい薬理学的に許容しうる酸は塩酸である。好ましい塩基は水酸化ナトリウムである。
【0149】
製剤開発の際に、液体医薬製品の安定性を7.5の標的pHで調べた。実施例VIIは、液体Belatacept医薬製品を用いたpH7.5での安定性研究を記載している。液体製剤のpHを7.5に調節し、試料を安定性試験に供し、医薬製品を、安定性指示サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)アッセイを用いて種々の時点での高分子量種の増大についてモニターした。推奨された2〜8℃の貯蔵条件ではHMW種の生成割合に有意の変化は観察されなかった。
【0150】
凝集に加えて、脱アミド化および断片化が、発酵、回収/細胞清澄化、精製、医薬物質/医薬製品貯蔵の際および試料分析の際に生じるペプチドおよびタンパク質の生成物変異体である。予備的な実験室スケールの安定性試験は、2〜8℃で貯蔵したbelatacept(20mg/ml、pH7.5)を用い、24ヶ月の時点で脱アミド化がペプチドマッピング試験法の参照レベルよりも上回ること(5%T26aまたはT26b(%T30)の最大を超える上昇)および断片化がSDS−PAGE試験法の参照レベルよりも上回ること(96%の主要バンド最小を下回る低下)を示唆している。液体製剤からのデータ(上記SCデータを参照)は、本発明の製剤で認められる脱アミド化の速度が製剤のpHが下がると低下することを示した。
【0151】
液体医薬製品の許容しうるpH範囲は、6〜8、好ましくは6〜7.8、さらに好ましくは6〜7.2である。
【0152】
他の側面において、塩または緩衝液成分を少なくとも10mM、好ましくは10〜200mMの量で加えてよい。塩および/または緩衝液は薬理学的に許容しうるものであって、「塩基形成」金属またはアミンとともに種々の公知の酸(無機および有機)に由来する。リン酸緩衝液に加えて、グリシネート、炭酸、クエン酸緩衝液などを利用することができ、その場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして機能しうる。
【0153】
本発明において興味のもたれる水性担体は、薬理学的に許容しうるものであって(ヒトに投与するのに安全で非毒性)、液体製剤を調製するのに有用なものである。例示的な担体としては、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水)、滅菌食塩水、リンゲル液またはデキストロース液が挙げられる。
【0154】
細菌の作用を低減するため、本明細書に記載の製剤に保存剤を任意に添加してよい。保存剤の添加は、例えば、多回使用(多回投与)製剤の製造を容易にする。
【0155】
凍結乾燥医薬製品に関して検討したように、CTLA4Ig分子は、シリコーンと相互作用して可視性の粒子を生成し、それによって患者がシリコーン不含の注射器の使用に制限されるという点で標準的な注射器に認められるシリコーンとは適合しない。液体製剤は、シリコーンの存在下で可溶性の粒子が生成するのを防ぐために界面活性剤を任意に含んでいてよい。
【0156】
Belatacept液体医薬製品、20mg/ml(250mg/バイアル)医薬製品の典型的な組成を下記表6に示す。
表6:Belatacept液体医薬製品、20mg/ml(250mg/バイアル)の組成
【表6】

(注)a:バイアル、針、注射器損失のための4%過剰充填を含む。
【0157】
推奨される液体製剤の貯蔵条件は2〜8℃であり、推奨される貯蔵寿命は少なくとも12ヶ月である。
【0158】
液体製剤の調製
液体医薬製品の製造法は、典型的に、糖および任意に界面活性剤との混合、ついで無菌濾過およびバイアルへの充填、栓をし、キャッピングすることを含む。
【0159】
製剤化バルク溶液は、所望のバイアル充填容量を一定に保持できるよう、典型的に所定のタンパク質濃度に設定する。医薬物質への糖の添加に際しては、バッチ処理溶液の泡立ちを最小にし、かつ10〜20分以内に糖の完全な溶解を確実にするため、ミキサーの速度は250±50rpmに制御する。製剤化バルク溶液は、充填前に少なくとも24時間、2〜8℃または室温にて室内光で貯蔵することができる。
【0160】
バルク溶液は、CTLA4Ig分子の熱感受性のため、最終的に滅菌することはない。バルク溶液は、バイアルに充填する前に、2つの直列の0.22μm Millipore MillipakR滅菌グレードフィルターを用いて滅菌する。
【0161】
当業者であれば、調製および注射の際のバイアル、針、注射器残留を補償すべく容器を過剰充填する必要があることを認識するであろう。例えば、Belatacept医薬製品、20mg/mL(250mg/バイアル)の各バイアルは、再構成および回収時の損失のため、4%余剰の医薬製品を含む。
【0162】
製造品
本発明の他の態様において、製造品(an article of manufacture)が提供され、これは医薬製品および好ましくはその使用説明書を含む。製造品は容器を含む。適当な容器としては、例えば、びん、バイアル、注射器および試験管が挙げられる。容器は、ガラス、プラスチックまたは金属などの様々な材料から生成してよい。
【0163】
容器には凍結乾燥製剤または液体製剤を収容する。容器上のまたは容器に結合したラベルは、再構成および/または使用の指示を示す。例えば、ラベルは、25mg/mlのbelatacept医薬製品を上記タンパク質濃度に希釈すべきことを示していてよい。ラベルはさらに、SC製剤が皮下投与に適していることまたは皮下投与を意図していることを示していてよい。製剤を収容した容器は多回使用バイアルであってよく、このものは例えば皮下製剤の繰り返し投与(例えば、2〜6回の投与)を可能にする。別のやり方として、容器は、例えば皮下製剤を入れたプレ充填注射器であってよい。
【0164】
製造品はさらに、例えば凍結乾燥製剤に適した担体を入れた第二の容器を含んでいてよい。
【0165】
製造品はさらに、他の緩衝液、希釈剤、充填剤、針、注射器、および使用説明書を付したパッケージインサートを含む、商業および使用者の観点から望ましい他の材料を含んでいてよい。
【0166】
界面活性剤不含の医薬製品には、例えば、凍結乾燥医薬製品の再構成の際および/またはバイアルから静脈注射バッグへの溶液の移し替えの際などに、シリコーン不含の注射器を利用するのが好ましく、医薬製品バイアルとともにパッケージングしてよい。
【0167】
使用法
本発明はさらに、本発明のCTLA4Ig分子製剤の有効量を投与することを含む、免疫系疾患および寛容誘導の治療方法を提供する。特別の態様において、免疫系疾患は、CD80/CD86-陽性細胞とのCD28-および/またはCTLA4-陽性細胞の相互作用によって媒体される。さらなる態様において、T細胞相互作用は抑制される、免疫系疾患としては、これらに限られるものではないが、自己免疫疾患、免疫増殖疾患(immunoproliferative diseases)、および移植片関連障害が挙げられる。これら方法は、患者に本発明のCTLA4Ig分子製剤を投与してCD80-および/またはCD86-陽性細胞とのT細胞相互作用を制御することを含む。移植片関連障害の例としては、移植片対宿主病(GVHD)(例えば、骨髄移植の結果として生じるもの、または寛容の誘導におけるもの)、移植片移植の拒絶、慢性拒絶、および組織または細胞の同種移植または異種移植(固形臓器、皮膚、島(islets)、筋肉、肝細胞、ニューロンを含む)と関連する障害が挙げられる。免疫増殖疾患の例としては、これらに限られるものではないが、乾癬;T細胞リンパ腫;T細胞急性リンパ芽球性白血病;精巣血管中心(testicular angiocentric)T細胞リンパ腫;良性リンパ球血管炎(benign lymphocytic angiitis);および自己免疫疾患、例えば、狼瘡(例えば、エリテマトーデス、ループス腎炎)、橋本甲状腺炎、原発性粘液水腫、グレーヴズ病、悪性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、アディソン病、糖尿病(例えば、インスリン依存性糖尿病、I型糖尿病)、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、天疱瘡、クローン病、交感性眼炎、自己免疫性ブドウ膜炎、多発性硬化症、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少症、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、潰瘍性大腸炎、シェーグレン病、リウマチ性疾患(例えば、慢性関節リウマチ)、多発性筋炎、および混合結合組織病が挙げられる。
【0168】
本発明はさらに、患者(移植組織のレシピエントである)による固形臓器および/または組織移植の拒絶を抑制する方法を提供する。典型的に、組織移植においては、移植片の拒絶はT細胞による異物としての認識によって開始され、ついで移植片を破壊する免疫応答が続く。本発明のCTLA4Ig分子製剤は、Tリンパ球の増殖および/またはサイトカイン分泌を抑制することにより、低減した組織破壊という結果となり、抗原特異的なT細胞非応答性の誘発は、全身的な免疫抑制を要することなく長期の移植片受容という結果となる。さらに、本発明のCTLA4Ig分子製剤は、他の医薬(コルチコステロイド、シクロスポリン、ラパマイシン、ミコフェノール酸mofetil、アザチオプリン、tacrolismus、basiliximab、および/または他の生物製剤を含むが、これらに限られるものではない)とともに投与することができる。
【0169】
本発明はまた、患者において移植片対宿主病を抑制する方法をも提供する。この方法は、患者に、本発明の製剤を単独でまたはIL-2、IL-4、またはγ-インターフェロンと反応性のさらなるリガンドとともに投与することを含む。例えば、ドナーT細胞のアロ反応性を抑制するために、本発明のCTLA4Ig分子SC製剤を骨髄移植レシピエントに投与してよい。別のやり方として、骨髄移植片中のドナーT細胞を、移植前にレシピエントのアロ抗原に対してイクスビボで寛容にすることができる。
【0170】
本発明のCTLA4Ig分子製剤によるT細胞応答の抑制はまた、自己免疫疾患を治療するのに有用である。多くの自己免疫疾患は、自己抗原に反応性で、疾患の病理に関与するサイトカインおよび自己抗体の産生を促進するT細胞の不適切な活性化の結果である。自己免疫疾患を罹患するかまたは罹患しやすい患者へのCTLA4Ig分子製剤の投与は、自己反応性T細胞の活性化を防ぎ、疾患徴候を低減もしくは排除できる。この方法はまた、患者に、本発明の製剤を単独でまたはIL-2、IL-4、またはγ-インターフェロンと反応性のさらなるリガンドとともに投与することを含む。
【0171】
本発明の製剤の最も有効な投与法および投与処方は、疾患の重篤度および経過、患者の健康状態および処置への応答および処置する医師の判断に依存する。本発明の実施に従えば、患者を処置するための有効量は、約0.1〜約10mg/kg(患者の体重)である。また、有効量は、約1〜約10mg/kg(患者の体重)の量である。
【0172】
本発明のCTLA4Ig分子製剤は、患者において内生のB7(例えば、CD80および/またはCD86)分子がそれぞれのリガンドと結合するのを抑止するのに十分な量および時間(例えば、時間の長さおよび/または複数回)で投与する。内生B7/リガンド結合の抑止は、それによってB7-陽性細胞(例えば、CD80-および/またはCD86-陽性細胞)とCD28-および/またはCTLA4-陽性細胞との相互作用を抑制する。CTLA4Ig分子の投与量は、罹患した組織の種類、処置しようとする疾患の種類、疾患の重篤度、患者の健康状態、および薬剤での処置に対する患者の応答を含む(これらに限られるものではない)多くの因子に依存する。従って、薬剤の投与量は患者および投与方法によって変わりうる。米国特許出願公開第US2003/0083246号および米国特許出願公開第US2004/0022787号は、慢性関節リウマチなどのリウマチ性疾患の治療のための配列番号2に示すアミノ酸配列を有するCTLA4Igの投与量および投与スケジュールを教示する。これらすべてを参照のため本明細書に引用する。
【0173】
CTLA4Ig分子の有効量を、必要に応じて患者に毎日、毎週、毎月および/または毎年、時間/日/週/月/年当たり単回または多回にて投与してよい。例えば、一つの態様において、CTLA4Ig分子の有効量を、最初は2週間に1回、1ヶ月、ついでその後は毎月1回投与してよい。
【0174】
CTLA4Ig分子の有効量は、約0.1〜100mg/kg(患者の体重)である。他の態様において、有効量は約0.1〜20mg/kg(患者の体重)である。特別の態様において、CTLA4Ig分子の有効量は、約2mg/kg(患者の体重)である。他の特別の態様において、CTLA4Ig分子の有効量は、約10mg/kg(患者の体重)である。他の特別の態様において、CTLA4Ig分子の有効量は、体重60kg未満の患者では500mgであり、体重60〜100kgの患者では750mgであり、体重100kgを超える患者では1000mgである。
【0175】
米国特許出願第60/668,774号(2005年4月6日出願)および米国特許出願第11/399,666号(2006年4月6日出願)は、移植片の移植と関連する免疫疾患の治療ための配列番号4に示すアミノ酸配列を有するCTLA4Igの投与量および投与スケジュールを教示する。これらすべてを参照のため本明細書に引用する。
【0176】
典型的に、本発明のCTLA4Ig分子製剤の投与量は体重に基づいており、投与処方は標的血清トラフプロファイル(target serum trough profiles)により記述することができる。典型的に、移植後、約3〜6ヶ月にわたって約3μg/mL〜約30μg/mL、好ましくは約5μg/mL〜約20μg/mLの本発明のCTLA4Ig分子の標的トラフ血清濃度が、同種移植の機能を維持するのに十分である。典型的に、維持相の間の本発明のCTLA4Ig分子の標的トラフ血清濃度は、約0.2μg/mL〜約3μg/mL、好ましくは約0.25μg/mL〜約2.5μg/mLである。
【0177】
本発明のLEA29YIg分子は、約0.1〜約20.0mg/kg(患者の体重)、典型的に約1.0〜約15.0mg/kgの量で投与してよい。例えば、L104EA29YIgは、初期相の間、移植後の高リスクの期間は10mg/kg(患者の体重)で投与し、維持投与量では5mg/kg(患者の体重)に減らしてよい。
【0178】
本発明のCTLA4Ig分子の投与は、30分〜1またはそれ以上の時間の静脈内注入によるものであってよい。別のやり方として、単回または複数回の皮下注射が、必要な投与量を送達できる。典型的に、30分の静脈内注入は、治療の初期相の間、患者が入院しているかおよび/またはモニタリングのためにヘルスケア専門家を定期的に訪問するときに利用される投与経路である。皮下注射は、維持相の間に利用される典型的な投与法であり、それによって静脈内注入のためのヘルスケア専門家への訪問を減らすことで患者を通常のスケジュールに戻すことができる。
【0179】
実施例10は、健常者と慢性関節リウマチ(RA)を罹患する患者での凍結乾燥IV CTLA4Ig製剤の薬動力学を記載する。RA患者および健常者でのabataceptの薬動力学は類似であると思われる。RA患者では、複数の静脈内注入後、abataceptの薬動力学は、2mg/kg〜10mg/kgの投与量の範囲にわたってCmaxおよびAUCの正比例増加を示した。10mg/kgでは、血清濃度は24mcg/mLの平均(範囲)トラフ濃度(約1〜約66mcg/mL)で60日目までに定常状態に達すると思われる。RA患者で1ヶ月毎に10mg/kgで連続して繰り返し処置してもabataceptの全身的な蓄積は起こらなかった。
【0180】
本発明は、以下の実施例を参照することによりさらに十分に理解されるであろう。しかしながら、これら実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。本明細書に開示したすべての引用文献は、参照のため特に本明細書に引用される。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1A】図1は、CTLA4-Ig分子の発現カセットの一部のヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。該核酸によってコードされるアミノ酸配列(配列番号2)も示す。この発現カセットから製造することのできるCTLA4-Ig分子としては、以下のアミノ酸残基を有する分子が挙げられる:(i)配列番号2の26-383、(ii)配列番号2の26-382、(iii)配列番号2の27-383、または(iv)配列番号2の26-382、または任意に(v)配列番号2の25-382、または(vi)配列番号2の25-383。発現カセットは以下の領域を含む:(a)オンコスタチンMシグナル配列(配列番号1のヌクレオチド11-88;配列番号2のアミノ酸1-26);(b)ヒトCTLA4の細胞外ドメイン(配列番号1のヌクレオチド89-463;配列番号2のアミノ酸27-151);(c)ヒトIgG1定常領域の修飾部分(配列番号1のヌクレオチド464-1159;配列番号2のアミノ酸152-383)[修飾ヒンジ領域(配列番号1のヌクレオチド464-508;配列番号2のアミノ酸152-166)、修飾ヒトIgG1 CH2ドメイン(配列番号1のヌクレオチド509-838;配列番号2のアミノ酸167-276)、および修飾ヒトIgG1 CH3ドメイン(配列番号1のヌクレオチド839-1159;配列番号2のアミノ酸277-383)を含む]。
【0182】
【図1B】図1は、CTLA4-Ig分子の発現カセットの一部のヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。該核酸によってコードされるアミノ酸配列(配列番号2)も示す。この発現カセットから製造することのできるCTLA4-Ig分子としては、以下のアミノ酸残基を有する分子が挙げられる:(i)配列番号2の26-383、(ii)配列番号2の26-382、(iii)配列番号2の27-383、または(iv)配列番号2の26-382、または任意に(v)配列番号2の25-382、または(vi)配列番号2の25-383。発現カセットは以下の領域を含む:(a)オンコスタチンMシグナル配列(配列番号1のヌクレオチド11-88;配列番号2のアミノ酸1-26);(b)ヒトCTLA4の細胞外ドメイン(配列番号1のヌクレオチド89-463;配列番号2のアミノ酸27-151);(c)ヒトIgG1定常領域の修飾部分(配列番号1のヌクレオチド464-1159;配列番号2のアミノ酸152-383)[修飾ヒンジ領域(配列番号1のヌクレオチド464-508;配列番号2のアミノ酸152-166)、修飾ヒトIgG1 CH2ドメイン(配列番号1のヌクレオチド509-838;配列番号2のアミノ酸167-276)、および修飾ヒトIgG1 CH3ドメイン(配列番号1のヌクレオチド839-1159;配列番号2のアミノ酸277-383)を含む]。
【0183】
【図2】図2は、シグナルペプチド;CTLA4の変異細胞外ドメイン(+1位のメチオニンから開始し+124位のアスパラギン酸で終了するか、または-1位のアラニンから開始し+124位のアスパラギン酸で終了する);およびIg領域を含むCTLA4-L104EA29Y-Ig(「L104EA29YIg」および「LEA29Y」としても知られる)のヌクレオチド(配列番号3)およびアミノ酸(配列番号4)配列を示す。配列番号3および配列番号4は、それぞれ、シグナルペプチド;CTLA4の変異細胞外ドメイン(+27位のメチオニンから開始し+150位のアスパラギン酸で終了するか、または+26位のアラニンから開始し+150位のアスパラギン酸で終了する);およびIg領域を含むL104EA29YIgのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。L104EA29YIgは、以下の残基のアミノ酸配列を有する:(i)配列番号4の26-383、(ii)配列番号4の26-382、(iii)配列番号4の27-383または(iv)配列番号4の27-382、または任意に(v)配列番号4の25-382、または(vi)配列番号4の25-383。
【0184】
実施例I
Belatacept SC, 125mg/ml(100mg/バイアル)医薬製品を、皮下注射に適した滅菌非発熱性(non-pyrogenic)レディトゥユーズ(ready-to-use)溶液として製剤化する。
【0185】
Belatacept SC医薬製品、125mg/ml(100mg/バイアル)を2.2kgスケール(1500バイアル)で製造する。バッチの組成を下記表7に示す。
表7:代表的なバッチ組成
【表7】

(注)
a:全バッチサイズ2.2kg(2-L)。溶液の密度は1.10g/ml(20〜25℃にて)である。
b:Belatacept医薬物質:タンパク質濃度25mg/ml、25mMリン酸ナトリウム、10mM塩化ナトリウム、pH7.5、<5%HMW種。
【0186】
Belatacept SC医薬製品, 125mg/ml(100mg/バイアル)医薬製品の製造プロセスは、25mMリン酸ナトリウム、10mM塩化ナトリウム緩衝液、pH7.5から10mMリン酸ナトリウム、pH7.5緩衝液へのバルク医薬物質の緩衝液交換、ついで緩衝液の除去による〜25mg/mlから〜150mg/mlへのタンパク質の濃縮を含む。緩衝液の交換は、新たな10mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.5に対するバルク医薬物質の5回のダイアフィルトレーション、ついで緩衝液の除去による〜150mg/mlへのタンパク質の濃縮により行う。ステンレス鋼Peliconミニフィルターホルダー(Millipore)は、ステンレス鋼圧力ゲージおよびメンブレンバルブ(フィード上)、リテンテイトおよび浸透ポート(retentate and permeates port)を備えている。Pelliconミニモデュールとともに用いる2つの濾過カセットを、0.1m2面積Biomaxポリエーテルスルホンメンブレンで30kDa名目分子量カットオフ限界で適合させる。濾過カセットを製造業者の推奨に従って設置する。医薬物質のためのフィード容器は、磁気攪拌棒を備えた4リットルガラス溶液である。MasterFlex高性能シリコーン管(tubing)を、フィード容器のフィルターホルダーへの連結および浸透ライン(permeate line)のために用いる。フィードフロー(Feed flow)が、フィードラインに設置した蠕動ポンプにより提供される。ついで、ショ糖およびポロキサマー188を濃縮タンパク質溶液に溶解し、最終バッチ重量を10mMリン酸緩衝液、pH7.5で調節する。バルク溶液を0.22ミクロン滅菌フィルターで濾過し、滅菌および非発熱性処理した(depyrogenated)5-cc I型フリントガラスバイアルに充填し、20mmゴム栓で栓をし、20mmアルミニウムフリップオフ(flip-off)シールで密封する。Belatacept SC医薬製品、125mg/ml(100mg/バイアル)医薬製品の組成を下記表8に示す。
【0187】
表8:Belatacept SC医薬製品、125mg/ml(100mg/バイアル)の組成
【表8】

(注)d:バイアル、針、注射器損失のための40%過剰充填を含む。
【0188】
実施例II
Abatacept SC, 125mg/ml(125mg/バイアル)医薬製品を、皮下投与に適した滅菌非発熱性レディトゥユーズ溶液として製剤化する。Abatacept SC, 125mg/ml(125mg/バイアル)医薬製品のバッチを5-Lスケール(3,500バイアル)で製造する。バッチの組成を下記表9に示す。
表9:バッチ組成
【表9】

(注)a:Abatacept医薬物質:タンパク質濃度50mg/ml、25mMリン酸ナトリウム、50mM塩化ナトリウム、pH7.5、<5%HMW種。
【0189】
上記実施例Iに記載したように、Abatacept SC医薬製品, 125mg/ml(125mg/バイアル)医薬製品の製造プロセスは、25mMリン酸ナトリウム、50mM塩化ナトリウム緩衝液、pH7.5から10mMリン酸ナトリウム、pH7.8緩衝液へのバルク医薬物質の緩衝液交換、ついで緩衝液の除去による〜50mg/mlから〜150mg/mlへのタンパク質の濃縮を含む。ついで、ショ糖およびポロキサマー188を濃縮タンパク質溶液に溶解し、最終バッチ重量を10mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.8で調節する。バルク溶液を0.22ミクロン滅菌フィルターで濾過し、滅菌および非発熱性処理した5-cc I型フリントガラスバイアルに充填し、20mmゴム栓で栓をし、20mmアルミニウムフリップオフシールで密封する。
【0190】
Abatacept SC医薬製品、125mg/ml(125mg/バイアル)の組成を下記表10に示す。
表10:Abatacept SC、125mg/ml(125mg/バイアル)医薬製品の組成
【表10】

(注)d:バイアル、針、注射器損失のための40%過剰充填を含む。
【0191】
実施例III
Abatacept凍結乾燥,(250mg/バイアル)医薬製品は、静脈内(IV)投与に適した滅菌非発熱性凍結乾燥物である。各単回使用バイアルは250mgのabataceptを含み、これを使用時に滅菌注射用水, USPで構成し、さらに0.9%注射用塩化ナトリウム,USPで希釈する。
【0192】
115リットルバッチサイズ用バッチ組成を下記表11に示す。
表11:バッチ組成
【表11】

(注)d:abatacept医薬物質:タンパク質濃度50mg/ml、25mMリン酸ナトリウム、50mM塩化ナトリウム、pH7.5、<5%HMW種。
【0193】
必要な量のabatacept医薬物質を、ミキサーを備えた清浄滅菌ステンレス鋼混合容器に加える。医薬物質の溶液を5〜25℃の溶液温度に保持しながら250±50rpmで混合する。
【0194】
必要な量のマルトース一水和物粉末を混合容器に加える。溶液を15〜25℃で10分間混合する。
【0195】
必要なら、1N水酸化ナトリウム溶液または1N塩酸溶液を用いて上記溶液のpHを7.3〜7.7に調節する。注射用水, USPを用いてバッチを最終バッチ重量(最終全量)とし、8分間混合する。製剤化したバルク溶液をpHについてサンプリングする。
【0196】
製剤化したバルク溶液を0.45μmフィルターで前濾過する。0.45μmフィルター後の製剤化バルク溶液を生物量(bioburden)および細菌内毒素(BET)についてサンプリングする。
【0197】
前濾過した製剤化バルク溶液を、充填前に2つの直列の0.22-μmフィルターで滅菌濾過する。
【0198】
滅菌濾過した製剤化バルク溶液を、完全自動化充填/付栓装置により、充填し、20nm-Daikyoグレーブチルストッパーで部分的に栓をする。15-cc I型フリント管ガラスバイアルを洗浄し、滅菌/非発熱性処理する。
【0199】
充填し部分的に栓をした医薬製品バイアルを滅菌する。abatacept医薬製品の凍結乾燥の際に用いた凍結乾燥サイクルの概要を下記表12に示す。
【0200】
表12:abatacept凍結乾燥医薬製品の凍結乾燥サイクル
【表12】

【0201】
凍結乾燥サイクルの終了時に滅菌濾過窒素を用いてチャンバ圧を500ミクロンに上げ、バイアルの付栓を真空下で行う。付栓したバイアルを凍結乾燥機の内部に少なくとも4時間留置する。凍結乾燥し付栓したバイアルを、キャッピング装置により20-mmアルミニウム白色フリップオフシールでHEPA濾過空気下、密封する。密封したバイアルを外部バイアル洗浄機により脱イオン水で濯ぐ。洗浄した医薬製品バイアルを2〜8℃で貯蔵する。
【0202】
凍結乾燥abatacept (250mg/バイアル)医薬製品の組成を下記表13に列記してある。
表13:凍結乾燥abatacept (250mg/バイアル)医薬製品の組成
【表13】

(注)
a:バイアル、針、注射器損失のための5%過剰充填を含む。
b:これら組成物はabatacept医薬物質溶液中に存在する。
【0203】
実施例IV
Belatacept凍結乾燥,(100mg/バイアル)医薬製品は、静脈内(IV)投与に適した滅菌非発熱性凍結乾燥物である。各単回使用バイアルは100mgのBelataceptを含み、これを4.2mlの滅菌注射用水, USPで構成して25mg/mlの濃度とする。これをさらに使用時に0.9%注射用塩化ナトリウム,USPで1mg/mlの低濃度まで希釈することができる。
【0204】
医薬製品のバッチサイズは、20リットル〜120リットルで変えてよい。66リットル(12,000バイアル)のバッチサイズ用の代表的なバッチ組成を下記表14に示す。
表14:66リットル(12,000バイアル)のバッチサイズの組成
【表14】

(注)d:Belatacept医薬物質:タンパク質濃度25mg/ml、25mMリン酸ナトリウム、10mM塩化ナトリウム、pH7.5、<5%HMW種。
【0205】
Belatacept凍結乾燥医薬製品を上記実施例IIIの記載と同様にして製造する。
【0206】
凍結乾燥belatacept医薬製品, 100mg/バイアルの組成を下記表15に列記してある。
表15:凍結乾燥belatacept 100mg/バイアル医薬製品の組成
【表15】

(注)a:各バイアルは、再構成溶液のバイアル、針、注射器残留のための10%過剰充填を含む。
【0207】
実施例V
Belatacept医薬製品のSC液体製剤の安定性研究を、製剤を種々の温度および種々の時間、安定性試験に供することにより行った。
【0208】
ショ糖の効果
製剤開発研究を、種々のレベルのショ糖がbelatacept医薬製品の溶液安定性に及ぼす影響を評価すべく行った。試料を-70℃, 8℃および25℃/60%湿度の条件下、安定性試験に供し、種々の時点でモニターした。評価したショ糖に対するタンパク質の比は、1:1, 1:1.7および1:1.75であった。belataceptの高分子量(HMW)種の生成を利用して溶液中のタンパク質安定性を決定した。結果を下記表16に示す。
【0209】
表16:100mg/mlでのBelatacept医薬製品に対する種々のレベルのショ糖の効果
【表16】

(注)a:10mMリン酸ナトリウム緩衝液中のBelatacept医薬製品,100mg/ml, pH 7.5
【0210】
これら試験の結果は、タンパク質に対するショ糖の比を増大させるとタンパク質安定性が改善されることを示した。1:1.36(重量:重量)のショ糖に対するタンパク質の比をSC溶液の開発のために選択した。なぜなら、このものが、過度に高張の医薬製品という結果になることなく最適の安定性を付与したからである。
【0211】
界面活性剤の効果
ポリソルベート80やポロキサマー188などの市販製品中の種々の界面活性剤がbelatacept医薬製品の溶液安定性に及ぼす影響を評価した。ポロキサマー188は4, 6および8mg/ml、ポリソルベート80は1および2mg/mlの最終製剤濃度で評価した。試料を-70℃, 8℃および25℃/60%湿度の条件下、安定性試験に供し、種々の時点でモニターした。結果を下記表17に示す。
【0212】
表17:Belatacept医薬製品(100mg/ml)に対する種々のレベルおよび種類の界面活性剤の効果
【表17】

(注)a:タンパク質:ショ糖(1:1.7),100mg/ml, pH7.5
【0213】
界面活性剤の効果の結果は、belatacept医薬製品溶液の安定性に対して界面活性剤が有意の効果を有しないことを示唆した。評価したポロキサマー188のレベルのうち、8mg/mlの濃度が製剤中のシリコーン関連粒状物の生成を防ぐのに適切であることがわかった。
【0214】
pHの効果
Belatacept SC, (125mg/ml, タンパク質:ショ糖;1:1.36, 8mg/ml Pluronic F68)医薬製品の安定性を、pHの関数として評価した。溶液のpHを、1N水酸化ナトリウムかまたは1N塩酸のいずれかを用いて7〜8.2に調節した。試料を2〜8℃および25℃/60%RHの条件下、安定性試験に供し、種々の時点でモニターした。分析試験にはpHおよびSE-HPLCが含まれ、高分子量(HMW)種の増大をモニターした。これら結果を下記表18に要約する。
【0215】
表18:Belatacept SC医薬製品に対するpHの効果
【表18】

(注):タンパク質:ショ糖(1:1.36), 125mg/ml, +8mg/ml Pluronic F68
【0216】
2-8℃の推奨貯蔵条件下、HMW種の生成比に有意の変化は観察されなかった。さらに、溶液状態の安定性データは、最大安定性のpHが7〜8であることを示した。これに基づき、7-8のpH範囲で7.5の標的pHを、この製剤のために選択した。
【0217】
オスモル濃度
種々の緩衝液中、異なるタンパク質濃度および別々の製剤化プロセス工程からのbelatacept医薬製品溶液のオスモル濃度を、蒸気圧法を用いて測定した。これら結果を下記表19に要約する。
【0218】
表19:種々の緩衝液および濃度でのBelatacept医薬製品溶液のオスモル濃度の決定
【表19】

【0219】
攪拌/振盪の効果
100mg/mlおよび125mg/mlの濃度のbelatacept SC医薬製品の溶液安定性に対する攪拌の効果を決定した。5cc容管状バイアル中の約1mlを含む溶液のアリコートを、速度3のリストアームシェーカー(wrist arm shaker)で2-8℃にて振盪した。シェーカーを冷室に置くとによりシェーカーの温度を2-8℃に保持した。適当な時間間隔で試料を取り、pHおよび外観をアッセイし、同時に試料を30日の攪拌後の生物活性についても評価した。
【0220】
100mg/mlおよび125mg/mlの濃度で30日まで攪拌した試料は、2-8℃で攪拌したときに、HMW種、SDS-PAGEプロフィール、ペプチドマッピング、B7結合アッセイ、pH、外観またはタンパク質濃度に変化を示さない。
【0221】
複数の凍結/解凍の効果
belatacept SC医薬製品製剤の安定性に対して複数の凍結および解凍が及ぼす効果を、7.0〜8.2の範囲のpHの試料で調べた。pH7.0, 7.4, 7.8および8.2のbelatacept SC医薬製品製剤(125mg/ml)の約10μlアリコートを、30ml容Nalgene PETG容器に分注した。バイアルを-70で貯蔵後に周囲温度(25℃)で10分間解凍することにより、複数の凍結および解凍を行った。このサイクルを5日間繰り返した。各凍結/解凍サイクル後に、バイアルの内容物をpH、%HMW種および外観について分析した。
【0222】
5回の凍結/解凍サイクルの間に、試料のpH、外観または%高分子量種の内容量に変化は観察されなかった。
【0223】
推奨貯蔵条件
Belatacept SC医薬製品, 100mg/バイアル (125mg/ml)の推奨貯蔵条件は2-8℃であり、推奨貯蔵寿命は12ヶ月である。
【0224】
注射器能試験
注射器能試験(Syringe-ability study)を、2-8℃の条件下、belatacept SC医薬製品(125mg/ml)で行った。1mlおよび0.5mLの注射器サイズで種々の針サイズを評価した。注射器充填時間および送達力(delivery force)を下記表20に記録してある。
【0225】
表20:2-8℃でのBelatacept SC医薬製品, 125mg/mlの注射器能(Syringeability)試験
【表20】

【0226】
注射器能試験に基づき、結果を表20に示す。21ゲージ×1 1/2インチ滅菌皮下針が、この製品をバイアルから回収するのに推奨され、27ゲージ×1/2インチ針が、その後の投与に推奨される。
【0227】
実施例VI
Abatacept医薬製品の凍結乾燥製剤の安定性研究を、製剤を種々の温度および種々の時間、安定性試験に供することにより行った。
【0228】
マルトースの効果
製剤開発研究を、種々のレベルのマルトースがabatacept医薬製品の安定性に及ぼす影響を評価すべく行った。試料を50℃にて安定性試験に供し、種々の時点でモニターした。評価したマルトースに対するタンパク質の比は、1:1, 1:2および1:5であった。abataceptの高分子量(HMW)種の生成を利用して固相状態でのタンパク質安定性を決定した。結果を下記表21に示す。
【0229】
表21:50℃でのAbatacept医薬製品の凍結乾燥固相状態安定性に対するマルトースの効果
【表21】

(注)a:1:5のマルトースに対する医薬重量比での医薬製品の安定性を、初期開発の際に50mg/バイアル強度で評価した。この研究で用いた医薬物質ロットは、この表の他の結果に用いたものと異なっていた。このことが、これら試料において高分子量種の初期レベルが異なる理由である。
【0230】
これらの結果は、凍結乾燥固相状態でのabatacept医薬製品の安定性がマルトースの存在下で促進されることを示している。さらに、abataceptの安定化に有用なマルトースの最小量は、1:2のマルトースに対するタンパク質重量比であると決定された。
【0231】
pHの効果
凍結乾燥Abatacept医薬製品, (250mg/バイアル, タンパク質:マルトース;1:2)の安定性を、pHの関数として評価した。溶液のpHを、1N水酸化ナトリウムかまたは1N塩酸のいずれかを用いて6〜8に調節した。試料を2〜8℃の条件下、安定性試験に供し、種々の時点でモニターした。分析試験にはpHおよびSE-HPLCが含まれ、高分子量(HMW)種の増大をモニターした。これら結果を下記表22に要約する。
【0232】
表22:高分子量(HMW)種の生成に対するpHの効果
【表22】

(注)a:pH6.0および6.5の試料で用いた医薬物質ロットは、pH7.0. 7.5および8,0の試料で用いたものとは異なっていた。このことが、これら試料において高分子量種の初期レベルが異なる理由である。
【0233】
2〜8℃の推奨貯蔵条件下、HMW種の生成比に有意の変化は観察されなかった。さらに、初期開発の際に得られた溶液状態の安定性データは、最大安定性のpHが7〜8であることを示した。
【0234】
実施例VII
belatacept (20mg/ml)医薬製品の液体製剤の安定性研究を、製剤を種々の温度および種々の時間、安定性試験に供することにより行った。
【0235】
ショ糖の効果
製剤開発研究を、種々のレベルのショ糖がbelatacept液体医薬製品の溶液安定性に及ぼす影響を評価すべく行った。試料を8℃, 25℃/60%湿度および30℃/60%湿度の条件下、安定性試験に供し、種々の時点でモニターした。評価したショ糖に対するタンパク質の比は、1:1, 1:2, 1:5および1:10であった。belataceptの高分子量(HMW)種の生成を利用して溶液中のタンパク質安定性を決定した。これら研究の結果を下記表23に要約する。
【0236】
表23:液体belatacept医薬製品, 20mg/mlに対する種々のレベルのショ糖の効果
【表23】

(注):蒸発のために分析に利用できなかった試料
【0237】
これら試験の結果は、タンパク質に対するショ糖の比を増大させるとタンパク質安定性が改善されることを示した。1:2(重量:重量)のショ糖に対するタンパク質の比を液体溶液の開発のために選択した。なぜなら、このものが、過度に高張の医薬製品という結果になることなく最適の安定性を付与したからである。
【0238】
安定性試験
3つの液体belataceptバッチを調製し、2〜8℃および25℃/60%RHの条件下、安定性試験に供し、種々の時点でモニターした。ショ糖に対するタンパク質の重量比は、1:2であった。belataceptの高分子量(HMW)種の生成を利用して液体製剤中のタンパク質安定性を決定した。安定性データを下記表24に要約する。
【0239】
表24:液体belatacept医薬製品の安定性
【表24】

【0240】
データは、2-8℃で12ヶ月にて、ショ糖なしのBelatacept医薬製品では0.2%の高分子量種の増大であったのと比較して、液体製剤では0.1%のみの増大であったことを示している。これら結果もまた、ショ糖の添加が高分子量種の生成を低減させるのに役立つことを示している。
【0241】
実施例VIII
Abatacept医薬製品のSC製剤の安定性研究を、製剤を種々の温度および種々の時間、安定性試験に供することにより行った。
【0242】
緩衝液強度の効果
SC Abatacept医薬製品, (100mg/ml)を、緩衝液強度の関数として評価した。緩衝液系は、5または10mMのいずれかのリン酸緩衝液であった。試料を2〜8℃および30℃/60%RHの条件下、安定性試験に供し、種々の時点でモニターした。分析試験にはpHおよびSE-HPLCが含まれ、高分子量(HMW)種の増大をモニターした。これら結果を下記表25に要約する。
【0243】
表25:Abatacept医薬製品(100mg/ml, pH7.5)に対する緩衝液強度の効果
【表25】

【0244】
abatacept SC医薬製品の安定性は、pH7.5、100mg/mL abataceptの濃度で、5mMリン酸緩衝液に比べて10mMリン酸緩衝液の方が良好であった。さらに、10mMリン酸緩衝液のより高い緩衝能は5mM緩衝液に比べてより良好なpH制御を与えた。このデータに基づき、10mMリン酸緩衝液を製剤開発のために選択した。
【0245】
糖類の効果
製剤開発研究を、種々の糖類がabatacept SC医薬製品の溶液安定性に及ぼす影響を評価すべく行った。試料を2〜8℃および30℃/60%湿度の条件下、安定性試験に供し、種々の時点でモニターした。評価した糖類は、ショ糖、トレハロースおよびマンニトールであった。abataceptの高分子量(HMW)種の生成を利用して溶液中のタンパク質安定性を決定した。結果を下記表26に示す。
【0246】
表26:100mg/ml, pH7.5のAbatacept SC医薬製品に対する種々の糖類の効果
【表26】

(注)
a:10mMリン酸ナトリウム緩衝液中のAbatacept医薬製品,100mg/ml, pH7.5
b:マンニトール製剤、pH7.8
【0247】
これら研究の結果は、ショ糖、トレハロースおよびマンニトールの3つの糖が糖なしの対照と比較してabataceptにより良好な安定性を付与することを示した。30℃の促進条件下でのこれら研究の結果は、マンニトールがショ糖およびトレハロースに比べてabataceptにより良好な安定性を付与することを示した。ショ糖はトレハロースよりもわずかに良好であった。冷蔵下では、3つのすべての糖による安定化に有意の差異はなかった。マンニトール製剤はショ糖製剤の2倍の等張を有していたので、ショ糖を糖として選択した。安定化のためのショ糖の選択は、2倍の量のショ糖を添加して同じ比でマンニトールと同じ等張を達成するが凝集に対してはるかに大きな安定性を達成することを可能にする。1:1.36(重量:重量)のショ糖に対するタンパク質の比をSC医薬製品の開発のために選択した。なぜなら、このものが、過度に高張の医薬製品という結果になることなく最適の安定性を付与したからである。
【0248】
ショ糖の効果
製剤開発研究を、種々のレベルのショ糖がabatacept SC医薬製品の溶液安定性に及ぼす影響を評価すべく行った。試料を2〜8℃および30℃/60%湿度の条件下、安定性試験に供し、種々の時点でモニターした。評価したショ糖に対するタンパク質の比は、1:1および1:2であった。abataceptの高分子量(HMW)種の生成を利用して溶液中のタンパク質安定性を決定した。結果を下記表27に示す。
【0249】
表27:100mg/ml, pH7.5のAbatacept SC医薬製品に対する種々のレベルのショ糖の効果
【表27】

(注)a:10mMリン酸ナトリウム緩衝液中のAbatacept医薬製品,100mg/ml, pH7.5
【0250】
これら試験の結果は、タンパク質に対するショ糖の比を増大させるとタンパク質安定性が改善されることを示した。1: 1.36(重量:重量)のショ糖に対するタンパク質の比をRTU溶液の開発のために選択した。なぜなら、このものが、過度に高張の医薬製品という結果になることなく最適の安定性を付与したからである。
【0251】
界面活性剤の効果
ポリソルベート80(TweenR 80)やポロキサマー188(PluronicR F68)などの市販製品中の種々の界面活性剤がabatacept SC医薬製品の溶液安定性に及ぼす影響を評価した。ポロキサマー188は4および8mg/ml、ポリソルベート80は1および2mg/mlの最終製剤濃度で評価した。試料を2〜8℃および25℃/60%湿度の条件下、安定性試験に供し、種々の時点でモニターした。結果を下記表28に示す。
【0252】
表28:125 mg/mlでのabatacept SC医薬製品に対する種々のレベルおよび種類の界面活性剤の効果
【表28】

(注)a:タンパク質:ショ糖(1:1),125mg/ml, pH7.8
【0253】
界面活性剤の効果の結果は、abatacept SC医薬製品の安定性に対して界面活性剤が有意の有害な効果を有しないことを示唆した。評価したポロキサマー188のレベルのうち、8mg/mlの濃度が製剤中のシリコーン関連粒状物の生成を防ぐのに適切であることがわかった。
【0254】
オスモル濃度
種々の緩衝液中、異なるタンパク質濃度および別々の製剤化プロセス工程からのabataceptのオスモル濃度を、蒸気圧法を用いて測定した。これら結果を下記表29に要約する。
【0255】
表29:種々の緩衝液および濃度でのAbatacept SC溶液のオスモル濃度の決定
【表29】

【0256】
攪拌/振盪の効果
100mg/mlおよび125mg/mlの濃度のabatacept SC医薬製品の溶液安定性に対する攪拌の効果を決定した。5cc容管状バイアル中の約1mlを含む溶液のアリコートを、速度3のリストアームシェーカー(wrist arm shaker)で2-8℃にて振盪した。シェーカーを冷室に置くとによりシェーカーの温度を2-8℃に保持した。適当な時間間隔で試料を取り、pHおよび外観をアッセイし、同時に試料を30日の攪拌後の生物活性についても評価した。
【0257】
100mg/mlおよび125mg/mlの濃度で30日まで攪拌した試料は、2-8℃で攪拌したときに、HMW種、SDS-PAGEプロフィール、ペプチドマッピング、B7結合アッセイ、pH、外観またはタンパク質濃度に変化を示さない。
【0258】
推奨貯蔵条件
abatacept SC医薬製品, 125mg/注射器(125mg/ml)の推奨貯蔵条件は2-8℃であり、推奨貯蔵寿命は少なくとも12ヶ月である。
【0259】
実施例IX
脱アミド化および凝集がCTLA4Ig分子で観察される2つの分解経路である。このプロトコールは、6.3-7.2のpH範囲、とりわけpH6.3, 6.6, 6.9, 7.2でSC医薬製品製剤を評価すべくデザインした実験室スケールのpH安定性研究の概略を記載する。この研究の目的は、脱アミド化および高分子量種の生成に関し、CTLA4Ig SC製剤の最小18ヶ月の貯蔵寿命を達成する最適の低pH製剤を同定することである。この研究に用いたSC医薬製品製剤を下記表30に記載してある。
【0260】
表30:pH6.9でのSC医薬製品製剤の組成
【表30】

【0261】
Abatacept SC医薬製品は、pH6.3, 6.6, 6.9, 7.2で製剤化される。医薬製品は、上記のようにショ糖およびポロキサマー188とともに製剤化され、最終バッチ濃度は10mMリン酸緩衝液(pH6.9)を用いて調節される。pHは1N HClを用い、それぞれ6.3および6.6に酸性側に滴定される。別法として、pHは1N NaOHを用い、6.9, 7.2, および7.65にアルカリ性側に滴定される。医薬製品を1mL容の長いPhysiolisTM注射器(1.0ml充填容量)に充填し、2-8℃、15℃、25℃、60%湿度、および35℃にて安定性ステーションに置く。試料は、茶色の遮光バッグで覆うかバッグに入れることにより、つねに光から保護しなければならない。
【0262】
2-8℃で貯蔵した医薬製品は、0, 2, 4, 6, 12 18, 24ヶ月および任意に9ヶ月でサンプリングする。15℃で貯蔵した医薬製品は、1, 2, 4, 6ヶ月および任意に9ヶ月でサンプリングする。25℃および60%湿度で貯蔵した医薬製品は、1, 2, 4および6ヶ月でサンプリングする。35℃で貯蔵した医薬製品は、1, 2および4ヶ月でサンプリングする。2-8℃で貯蔵した医薬製品は、外観(最初および最後の試料のみ)、pH(最初、4ヶ月および最後の試料のみ)、A280(最初、4ヶ月および最後の試料のみ)、サイズ排除HPLC、SDS-PAGE、トリプシン消化ペプチドマッピング(TPM)、Biacore B7結合(最初、4ヶ月および最後の試料のみまたは必要に応じて)および等電点電気泳動(IEF)(最初および最後の試料のみ)について試験する。15℃および25℃および60%湿度で貯蔵した医薬製品は、A280(最初、4ヶ月および最後の試料のみ)、サイズ排除HPLC、SDS-PAGEおよびトリプシン消化ペプチドマッピング(TPM)について試験する。35℃で貯蔵した医薬製品は、サイズ排除HPLC、SDS-PAGEおよびトリプシン消化ペプチドマッピング(TPM)について試験する。
【0263】
安定性試料を研究の最初の時点、4ヶ月、12ヶ月および終了時点でさらに特徴付けるべく、非日常的試験法を用いる。傾向性や予期しない結果が観察される場合は、これら方法の幾つかを特定の試料を試験するのに用いてもよい。非日常的試験法としては以下のものが挙げられる:多角光散乱を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-MALS)、動力学的結合(kinetic binding;SPR)、マススペクトロメトリー、CD、AUC、分別スキャニング熱量計(Differential Scanning Calorimeter;DSC)、FFF、FTIR、サイズ排除HPLC(変性)およびSDS-PAGE(銀染色)。
【0264】
実施例X
PK補助研究(substudy)をフェーズ2B, マルチセンター(multi-center), 無作為化, 二重盲検, プラシーボ制御試験に導入し、メトトレキセートの投薬を受けながら活性な慢性関節リウマチ患者に静脈内投与した2つの異なる投与量のabataceptの安全性および臨床的効力を評価した。この平行デザイン研究では、患者はMTXと組み合わせて2つの異なる投与量(2および10mg/kg)のabataceptまたはプラシーボを投与された。Abataceptは、同時継続中の米国特許出願第60/752,267号(2005年12月20日出願)(本発明のタンパク質、とりわけ糖タンパク質産物の動物または哺乳動物細胞培養による製造方法を教示)の記載に従って製造し、200mgのabataceptを含有する個々のバイアル中にて本明細書に記載のように凍結乾燥の形態で提供された。Abataceptは患者に1日目, 15日目, および30日目、およびその後1年間は30日毎に静脈内投与した。多回投与PKは、部位特異的(site-specific)PK補助研究に登録された患者から60日目〜90日目の投与の際に得られた血清濃度vs時間データに由来した。PK補助研究における患者については、60日目に投与する前、および60日目に始まるPKプロフィールについては30分(abatacept注入の終点に対応する)、注入開始4時間後、およびその後毎週、90日目まで、血液試料を回収した。合計90人の患者がPK補助研究に参加すべく登録されていた。しかしながら、60日目〜90日目の投与期間での完全なPKプロフィールは29人の患者から得られた(15人の患者は2mg/kgで投与された;14人の患者は10mg/kgで投与された)。
【0265】
PKパラメーターの要約を表31に示す。この研究からの結果は、CmaxおよびAUC(TAU)(ここでTAU = 30日)ともに投与量に比例して上昇することを示した。名目投与量は1: 5の比で上昇し、Cmaxの幾何平均は1: 5.2の比で上昇したのに対し、AUC(TAU) の幾何平均は1: 5.0の比で上昇した。さらに、T-HALF値、CLT値、およびVss値は、投与量に依存しないと思われた。これらRA患者において、平均T-HALF値、CLT値、およびVss値は、それぞれ、約13日、〜0.2mL/h/kg、および〜0.07L/kgであった。Vss値の低いことは、abataceptが主として細胞外液容量に限られることを示している。最初の注入の2週および4週後、ついでその後1ヶ月に1回投与する投与スキームに基づき、abataceptの定常状態が3回目の月毎投与により達成された。また、投与スキームの結果として、処置の最初の2ヶ月間は血清濃度が定常トラフ濃度を超えていた。60, 90, および180日目のトラフ(Cmin)値の比較は、abataceptが月毎の投与の後に蓄積するとは思われなかった。2および10mg/kgのabataceptを毎月静脈内投与された全ての患者の平均Cmin定常値は、それぞれ、4.4〜6.7mcg/mLおよび22.0〜28.7mcg/mLの範囲であった。
【0266】
表31:慢性関節リウマチ患者における複数のPK研究の要約
【表31】

abataceptの薬動力学を、10mg/kg単回静脈内注入後の健常な成人被験者および10mg/kg多回静脈内注入後のRA患者で調べた(表32を参照)。
【0267】
表32:10mg/kg静脈内注入後の健常被験者およびRA患者における薬動力学パラメーター(平均、範囲)
【表32】

(注)a:多回静脈内投与は、1日目、15日目、30日目、およびその後毎月、投与した。
【0268】
RA患者および健常な被験者におけるabataceptの薬動力学は類似していると思われた。RA患者では、多回静脈内注入後、abataceptの薬動力学は、2mg/kg〜10mg/kgの投与量にわたってCmaxおよびAUCの正比例した上昇を示した。10mg/kgでは、血清濃度は、60日目までに24(1-66)mcg/mLの平均(範囲)トラフ濃度で定常状態に達すると思われた。RA患者で10mg/kgを1ヶ月の間隔で連続して繰り返し処置しても、abataceptの全身蓄積は生じなかった。
【0269】
RA患者での集団薬動力学的分析は、体重が増大するとともにabataceptのクリアランスも高くなる傾向が明らかとなった。年齢および性別(体重に対して補正したときに)はクリアランスに影響を及ぼさなかった。同時に投与したメトトレキセート(MTX)、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、コルチコステロイド、およびTNF抑制剤は、abataceptのクリアランスに影響を及ぼさなかった。
【0270】
Abataceptの血清アッセイ
全部で25の分析を行って、血清試料をabataceptについて酵素結合抗体免疫アッセイ(ELISA)により分析した。分析結果はすべて、試料分析の前に確立された許容基準に合致しており、ELISA法が研究試料中のabataceptの定量について正確かつ精密であることを示していた。血清中のabataceptについての標準曲線パラメーターおよび平均QCデータの要約を表33に示す。試行間および試行内でのabataceptの分析QCの変動性は、それぞれ、4.5%および3.5%CVであった。分析したQC試料の平均観察濃度の名目値からの偏差は、±8.9%未満であった(表33)。
【0271】
表33:ヒト血清におけるAbataceptのアッセイ品質管理データの要約
【表33】

【0272】
実施例XI
この研究の目的は、健常な被験者において50〜150mgの範囲の単回SC投与後のbelataceptのPKを評価すること;皮下投与したbelataceptのPKに対する注射溶液の注射容量および濃度の影響を評価すること;belataceptの単回SC投与の安全性および許容性を評価すること;皮下投与したbelataceptの免疫原性を評価することであった。
【0273】
これは、健常な被験者での、二重盲検、無作為化、プラシーボ制御、平行群、単回投与研究であった。全部で42人の被験者を、6つの処置群の一つに無作為化する。1日目に各7人の群内で、belataceptまたはプラシーボの単回SC注射を受けるべく5:2の比に無作為化する。被験者は体重が≦100kgである必要がある。これら6の処置群を表34に示す。
【0274】
表34:処置群
【表34】

【0275】
被験者は、1日目の投与の28日内での適格性を決定すべくスクリーニング評価を引き受ける。被験者は、投与の1日前(−1日目)にMLRを含むベースライン評価について臨床施設に収容される。被験者は、5日目に処置後評価が完了するまで臨床施設に留まり、その後、この研究から解放されるまで、各研究訪問のために臨床施設に戻る。
【0276】
1日目に、被験者は処置について無作為化されて単回SC投与のbelataceptまたはプラシーボが投与され、詳細なPKおよび免疫原性サンプリングを受ける。被験者はすべて大腿前部にSC注射を受ける。研究医薬投与後、研究者は注射部位について局所的な刺激および炎症の徴候を評価する。
【0277】
身体検査、生命徴候測定、および臨床検査評価を、本研究を通じて選択した時点で行う。研究医薬投与後の56日目まで、血液試料をPK分析および免疫原性評価のために回収する。被験者をAEについて本研究を通じてモニターする。約265mLの血液を本研究を通じて各被験者から採取する。
【0278】
投与および追跡調査(follow-up)を全投与群について同時に行う。どの被験者も単回投与を超える投与を受けることはない。研究を完遂しなかった被験者(AEのために中止した者を除く)は入れ替えてよい。
【0279】
これは単回投与研究である。各被験者は、研究医薬を投与する日の最大28日前であるスクリーニング期間を引き受ける。各被験者は、最後の訪問である研究医薬投与後の56日目(±2日)まで本研究に留まる。試験を受ける最後の被験者の最後の訪問は、本研究の終了とされる。
【0280】
本明細書に記載し、同時継続中の米国特許出願第06/849543号(2006年10月5日出願)(動物または哺乳動物細胞培養による本発明のタンパク質、とりわけ組換え糖タンパク質産物の製造方法を教示)に従って製造したBelatacept 100mg/バイアル(125mg/mL)は、SC投与用の適当なサイズの通常の注射器および針を用いて回収および投与するためのガラスバイアルにて提供される、レディトゥユーズ液体製品である。回収損失を補償すべく各バイアル中に十分な過剰量のbelataceptを導入して、100mgを含有する0.8mLの溶液をSC投与用に回収できるようにする。
【0281】
Belatacept注射液, 100mg/バイアル(125mg/mL)は、IV注入を意図したものではない。
【0282】
病歴、身体検査、12-リード(12-lead)心電図、および臨床検査評価によって健常と決定された被験者は、本研究に参加する資格がある。本研究は、男性および女性を含む。被験者は、無作為化の時点で年齢が少なくとも18歳で、体重は≦100kgでなければならない。女性被験者は、投与の少なくとも1ヶ月前、本研究の間および本研究の終了後4週まで、授乳中であってはならず、妊娠していてはならず、認可された避妊法を使用していなければならない。妊娠の可能性のある女性は、研究医薬の投与前24時間以内に血清妊娠試験が陰性でなければならない。被験者は、妊娠の潜在的リスクをアドバイスされる。男性被験者は、その伴侶の妊娠のリスクを最小にするため、本研究の間および本研究の終了後4週まで、適切な避妊法を使用しなければならない。包含および排除の基準の詳細なリストについては、セクション5を参照のこと。
【0283】
参画前4週間内に取られる投薬は、CRFに記録しなければならない。同時投薬(処方、OTCまたは薬草(herbal))は、経口避妊薬を除いて、特別の臨床事象の治療のために研究者が処方しない限り、本研究の間投与されることはない。同時に行われる治療はすべてCRFに記録しなければならない。
【0284】
SC注射後のbelataceptのPKは、血清濃度vs時間データから得られる。評価すべき単回投与PKパラメーターとしては以下のものが挙げられる:
Cmax:観察された最大の血清濃度
Tmax:最大の血清濃度の観察された時間
AUC(0-T):時間0から最後の定量可能な濃度の時間までの血清濃度−時間曲線下の面積
AUC(INF):時間0から無限大の時間まで外挿した血清濃度−時間曲線下の面積
半減期:血清半減期
CLT/F:みかけの全身体クリアランス(Apparent total body clearance)
VSS/F:定常状態での分布のみかけの容量(Apparent volume of distribution at steady state)
【0285】
個々の被験者のPKパラメーター値は、確認された(validated)PK分析プログラムであるeToolbox Kineticaプログラム(Innaphase Corp、フィラデルフィア、ペンシルベニア)による非区画法(non-compartmental methods)によって得られる。投与量正規化AUC(Dose normalized AUC)もまた報告される。
【0286】
血清試料を経時的に回収し、2つのELISAアッセイを用いてbelataceptに対する抗体力価の存在についてアッセイする。一方のアッセイは分子全体に対する応答を評価し、他方はLEA29Y-T部分のみに対する応答を評価する。
【0287】
研究投薬を受けた全ての被験者は、安全性およびPDデータセットに含められる。いずれかのパネルにおいてプラシーボを投与された被験者は、注射部位の評価を除いてPD評価および安全性評価のための単一プラシーボ処置群にプールされる。プラシーボを投与された被験者からの全ての利用できるデータは、PDデータセットに含められ、要約統計および統計分析に含められる。
【0288】
ベースラインは-1日目とされる。性別および人種の頻度分布は、処置(注射容量および投与量)により表にまとめられる。年齢、体重、および身長の統計の要約は、処置により表にまとめられる。
【0289】
記録した全てのAEを列挙し、好ましい用語(term)、組織器官クラス(system organ class)、および処置により表にまとめられる。生命徴候および臨床検査結果は列挙され、処置により表にまとめられる。いかなる有意の身体検査上の所見および臨床検査結果も列記される。注射部位の評価(浮腫、発熱、腫脹、疼痛および掻痒)は、処置および重篤度の程度により表にまとめられる。プラシーボ被験者は各投与量群にわたってプールし、注射部位の評価についても独立して分析する。
【0290】
要約統計は、PKパラメーターについて処置により表にまとめられる。幾何平均および変動係数は、Cmax, AUC(0-T), およびAUC(INF)について示す。中央値、最小値、および最大値は、Tmaxについて示す。平均および標準偏差は、他のPKパラメーターについて提供される。SC投与後の投与量に対する依存性を評価すべく、用量に対するCmaxおよびAUC(INF)の分散プロット(scatter plots)が提供される。注射容量にわたるAUC(INF)およびCmaxの分散プロットを構築して、belataceptのPKに対するこの効果を評価する。また、一定の容量の投与量に対するCmaxおよびAUC(INF)、および投与量内での容量に対するCmaxおよびAUC(INF)の分散プロットも必要に応じて提供される。
【0291】
要約統計を、処置および抗belataceptおよび抗LEA29Y-T抗体値の研究日およびベースライン(1日目、0時)からのその変化より表にまとめられる。免疫原性と暴露との間の可能な関連性を調べるべく、belataceptの濃度に対する抗belataceptおよび抗LEA29Y-T抗体の変化のプロットが提供される。
【0292】
PKおよび免疫原性の血液サンプリングスケジュールの概要を表35に示す。
表35:薬動力学および免疫原性血液サンプリングスケジュール
【表35】

(注)a:1日目の免疫原性(抗belatacept抗体)試料は、薬剤を投与する前に採取しなければならない。28, 35, 42および56日目の試料は、±2日内に採取できる。
【0293】
上記表35は、PKの評価のために従うべきサンプリングスケジュールを列記している。血液試料(試料当たり〜3mL)を、直接静脈穿刺によりまたは食塩水ロック(saline lock)から、前もってラベルを付した上部が赤およびグレーの(red and gray top)(SST) VacutainerR管に回収する。血液の回収に食塩水ロックシステムを使用する場合は、約0.5mLの血液を体内留置カテーテルで採取し、各PK試料を得る前に廃棄しなければならない。PK試料が得られたら、血液をVacutainerR管中、室温で15-30分間凝血させる。凝血後、試料を冷蔵遠心管(4℃)中、1500xgで15分間遠心分離しなければならない。遠心分離が完了したら、各PK試料時点からの少なくとも0.5mLの血清をピペットにより取り、前もってラベルを付した、ねじ蓋のポリプロピレン製PK貯蔵および輸送(storage and shipping)管に移す。各試料時点の血清をアリコートするには清浄なピペットを使用しなければならない。PK血清試料を入れたポリプロピレン製管は、-20℃またはそれ以下で最大1ヶ月、ついでその後は-70℃で凍結保存してよい。試料の回収から血清の凍結までに許された時間は12時間である。感度があり確認されたエンザイムイムノアッセイ(EIA)法を用いて血清中のbelataceptの濃度を測定する。
【0294】
表35は、免疫原性の評価のために従うべきサンプリングスケジュールを列記している。血清試料は、1, 14, 28, 35, 42, および56日目の訪問で得られる。1日目の免疫原性(抗belatacept)試料は、研究医薬を投与する前に採取しなければならない。試料を抗belatacept抗体および抗LEA29Y-T抗体の存在についてアッセイする。各試料について、血液(試料当たり〜3mL)を、直接静脈穿刺によりまたは食塩水ロック(体内留置カテーテル)から、前もってラベルを付した上部が赤およびグレーの(SST) VacutainerR管に回収する。血液の回収に食塩水ロックシステムを使用する場合は、約0.5mLの血液を体内留置カテーテルで採取し、各免疫原性試料を得る前に廃棄しなければならない。試料が得られたら、血液をVacutainerR管中、室温で15-30分間凝血させる。凝血後、試料を冷蔵遠心管(4℃)中、1500xgで15分間遠心分離しなければならない。遠心分離が完了したら、少なくとも1mLの血清をピペットにより取り、前もってラベルを付した、ねじ蓋のポリプロピレン製血清試料貯蔵および輸送管に移す。血清試料を入れたポリプロピレン製管は、-20℃またはそれ以下で貯蔵しなければならない。2つの感度のある、確認された酵素結合抗体免疫アッセイ(ELISA)法を用い、血清中のbelataceptに対する抗体力価を測定する。一方のアッセイは分子全体に対する応答を評価し、他方はLEA29Y-T部分のみに対する応答を評価する。
【0295】
実施例XII
脱アミド化、断片化および凝集が、LEA29YIg分子の観察される分解経路である。このプロトコールは、6.3-7.5のpH範囲でのbelatacept SC医薬製品製剤を評価すべくデザインした、さらなる実験室スケールのpH安定性研究の概略を示す。この研究の目的は、belatacept SC製剤の最小でも18ヶ月の貯蔵寿命を達成する最適のpH製剤を同定することである。
【0296】
この研究のため、belatacept SC製品をpH6.3, 6.6, 6.9, 7.2および7.5で製剤化する。〜25mg/mLのbelatacept医薬物質をまず〜100mg/mLに濃縮し、ついで10mMリン酸緩衝液、pH6.9にダイアフィルトレーションし、ついで第二の濃縮を行って>160mg/mLの中間医薬製品(drug product intermediate:DPI)を得る。このDPIをショ糖およびポロキサマー188で製剤化し、最終バッチ濃度を10mMリン酸緩衝液(pH6.9)で調節する。得られた製剤化バルクを、研究デザインにおいて概略を示したように、5つのサブバッチにさらに分ける。1N HClを用いてサブバッチのpHをそれぞれ6.3および6.6の酸性側に滴定する。さらに2つのサブバッチのpHを1N NaOHで6.9, 7.2および7.5まで塩基性側に滴定する。製品バッチを1-mL容のPhysiolisTMに充填する。試料は、茶色の遮光バッグで覆うかバッグに入れることにより、つねに光から保護しなければならない。本研究に使用するSC医薬製品製剤を下記表36に記載してある。
【0297】
表36:pH6.9でのSC医薬製品製剤の組成
【表36】

【0298】
2-8℃で貯蔵した医薬製品を、0, 2, 4, 6, 12 18, 24ヶ月および任意に9ヶ月でサンプリングする。15℃で貯蔵した医薬製品は、1, 2, 4, 6ヶ月および任意に9ヶ月でサンプリングする。25℃および60%湿度で貯蔵した医薬製品は、1, 2, 4および6ヶ月でサンプリングする。35℃で貯蔵した医薬製品は、1, 2および4ヶ月でサンプリングする。2-8℃で貯蔵した試料は、外観(最初および最後の試料のみ)、pH(最初、4ヶ月および最後の試料のみ)、A280(最初、4ヶ月および最後の試料のみ)、サイズ排除HPLC、SDS-PAGE、トリプシン消化ペプチドマッピング(TPM)、Biacore B7結合(最初、4ヶ月および最後の試料のみまたは必要に応じて)および等電点電気泳動(IEF)(最初および最後の試料のみ)について試験する。15℃および25℃および60%湿度で貯蔵した試料は、A280(最初、4ヶ月および最後の試料のみ)、サイズ排除HPLC、SDS-PAGEおよびトリプシン消化ペプチドマッピング(TPM)について試験する。35℃で貯蔵した試料は、サイズ排除HPLC、SDS-PAGEおよびトリプシン消化ペプチドマッピング(TPM)について試験する。
【0299】
安定性試料を研究の最初の時点、4ヶ月、12ヶ月および終了時点でさらに特徴付けるべく、非日常的試験法を用いる。傾向性や予期しない結果が観察される場合は、これら方法の幾つかを特定の試料を試験するのに用いてもよい。非日常的試験法としては以下のものが挙げられる:多角光散乱を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-MALS)、動力学的結合(SPR)、マススペクトロメトリー、CD、AUC、分別スキャニング熱量計(DSC)、FFF、FTIR、サイズ排除HPLC(変性)およびSDS-PAGE(銀染色)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下投与に適した安定な製剤であって、少なくとも100mg/mlのCTLA4Ig分子、有効濃度で該製剤を安定化することのできる糖および薬理学的に許容しうる水性担体を含む製剤。
【請求項2】
糖が、ショ糖、乳糖、マルトース、マンニトールおよびトレハロースおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
糖が二糖である、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
二糖がショ糖である、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
薬理学的に許容しうる緩衝液をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
6〜8のpH範囲を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
該CTLA4Ig分子が、配列番号2において27位のメチオニンまたは26位のアラニンから開始し、383位のリシンまたは382位のグリシンで終了するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
該CTLA4Ig分子が、配列番号4において27位のメチオニンまたは28位のアラニンから開始し、383位のリシンまたは382位のグリシンで終了するアミノ酸配列を有するL104EA29YIgである、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
糖が、ショ糖、乳糖、マルトース、マンニトールおよびトレハロースおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項7または8に記載の製剤。
【請求項10】
糖が二糖である、請求項7または8に記載の製剤。
【請求項11】
二糖がショ糖である、請求項7または8に記載の製剤。
【請求項12】
タンパク質:糖の比が少なくとも1:1.3である、請求項1、7または8に記載の溶液。
【請求項13】
薬理学的に許容しうる緩衝液をさらに含む、請求項7または8に記載の製剤。
【請求項14】
6〜8のpH範囲を有する、請求項7または8に記載の製剤。
【請求項15】
静脈内注射前に希釈するのに適した安定な製剤であって、少なくとも20mg/mlのCTLA4Ig分子、有効濃度で該製剤を安定化することのできる糖および薬理学的に許容しうる水性担体を含む製剤。
【請求項16】
糖が、ショ糖、乳糖、マルトース、およびトレハロースおよびこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
糖が二糖である、請求項15に記載の製剤。
【請求項18】
二糖がショ糖である、請求項15に記載の製剤。
【請求項19】
薬理学的に許容しうる緩衝液をさらに含む、請求項15に記載の製剤。
【請求項20】
6〜8のpH範囲を有する、請求項15に記載の製剤。
【請求項21】
該CTLA4Ig分子が、配列番号2において27位のメチオニンまたは26位のアラニンから開始し、383位のリシンまたは382位のグリシンで終了するアミノ酸配列を有する、請求項15に記載の製剤。
【請求項22】
該CTLA4Ig分子が、配列番号4において27位のメチオニンまたは26位のアラニンから開始し、383位のリシンまたは382位のグリシンで終了するアミノ酸配列を有するL104EA29YIgである、請求項15に記載の製剤。
【請求項23】
糖が、ショ糖、乳糖、マルトース、およびトレハロースよりなる群から選ばれ5、請求項21または22に記載の製剤。
【請求項24】
糖がショ糖である、請求項21または22に記載の製剤。
【請求項25】
タンパク質:糖の比が少なくとも1:2である、請求項15、21または22に記載の溶液。
【請求項26】
薬理学的に許容しうる緩衝液をさらに含む、請求項21または22に記載の製剤。
【請求項27】
6〜8のpH範囲を有する、請求項21または22に記載の製剤。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−246470(P2011−246470A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141983(P2011−141983)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2008−547721(P2008−547721)の分割
【原出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】