説明

安定な局所医薬伝達組成物の製剤化方法

【課題】医薬または高分子のなかで高分子例えばインスリンを皮膚を通って拡散させて伝達し、その上長期間にわたり有効に保存かつ保持できる安定な局所医薬伝達組成物の提供。
【解決手段】高分子の経皮伝達用組成物を製剤化する方法において、ホスファチジルコリン混合物からマルチラメラ液晶担体を作り、そして該マルチラメラ液晶担体に高分子を、該マルチラメラ液晶担体が室温で該高分子を安定化するように補足することを特徴とする製剤化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所医薬伝達組成物の製剤化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
局所医薬伝達系は周知である。これらの系は、医薬、治療剤及び他の望ましい経皮物質を伝達し、そして適用された点で局所的に作用するかまたは一度身体の血液の循環に入ると全身的に作用するようにデザインできる。これらの系では、伝達は、軟膏などの形の物質または医薬の直接的な局所適用のような手段により、または医薬を保持しそれを時間でコントロールされるやり方で皮膚に放出される貯層などを有するパッチの付着により達成できる。
【0003】
医薬、痛み緩和化合物、ビタミン及び皮膚改善化合物などのような薬剤のための経皮伝達系は、長い間使用されてきた。クリームを使用するこれらの経皮伝達系は、鎮痛薬及び皮膚を清潔にする化合物による使用について開発されてきた。パッチを使用する経皮系は、例えば特許文献1に記載されたエストラジオール技術のようなエストロゲン治療及びニコチンについて開発されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許6521250
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの系は、一般的に、上記の目的に有効であるが、比較的小さい分子の経皮伝達にのみ有用である。皮膚の多孔性の構造は、これらの小さい分子が拡散により表皮から真皮に通過するのを可能にする。しかし大きな分子例えばインスリンは、皮膚を通って拡散できず、そのためこれらの周知の手段では伝達できない。
【0006】
大きな分子例えばインスリンの伝達は研究されてきているが、これらの系は、伝達されるべき医薬の有効性の保存かつ保持を行うことができない。多くの医薬及び生物学的に活性な化合物例えばインスリンは、周囲温度で有効性を保ち変性を防ぐために、冷却をして保存しそして熱を避けねばならない。これらの物質は、使用者が貯蔵または運搬(冷凍なしに)できない。しばしば、インスリンのような医薬は、1日を通して投与されねばならず、そして使用者が容易に入手または所持されねばならず、それは化合物を高温に曝すことになる。そのため、インスリンを含む組成物が、より高い温度に抵抗しそして冷凍の必要なしにこれらの温度で長い有効期間を有するように、それらを安定化することがなお求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
高分子の経皮伝達のための組成物は、高分子を捕捉するホスファチジルコリン担体成分を含み、担体成分は室温で高分子を安定化する。
【0008】
本発明の第1は、高分子の経皮伝達用組成物を製剤化する方法において、ホスファチジルコリン混合物からマルチラメラ液晶担体を作り、そして該マルチラメラ液晶担体に高分子を、該マルチラメラ液晶担体が室温で該高分子を安定化するように補足することを特徴とする製剤化方法である。
【0009】
本発明の第2は、皮膚血管系へのインスリンの経皮伝達用の安定な局所インスリン組成物を製剤化する方法であり、ホスファチジルコリン混合物からマルチラメラ液晶担体を作り、そして該マルチラメラ液晶担体にインスリンを、該マルチラメラ液晶担体が室温で該インスリンを安定化するように補足することを特徴とする該安定な局所インスリン組成物を製剤化する方法である。
【0010】
本発明の第3は、高分子の経皮伝達用組成物を製剤化する方法において、ポリエニルホスファチジルコリン−富化ホスファチジルコリン及びポリグリコール混合物からマルチラメラ液晶担体を作り、そして該マルチラメラ液晶担体に高分子を、該マルチラメラ液晶担体が室温で該高分子を安定化するように補足することを特徴とする製剤化方法である。
【0011】
本発明の第4は、該ホスファチジルコリン混合物がホスファチジルコリン及び少なくとも1つのポリグリコールを含む上記1又は2記載の方法である。
【0012】
本発明の第5は、200の分子量をもつポリグリコール及び400の分子量をもつポリグリコールを混ぜ合わせ、ポリクリコールの混合物を形成し;該ホスファチジルコリン成分をポリグリコール混合物中に混ぜて合わせてホスファチジルコリン混合物を形成し;そして該ホスファチジルコリン混合物を該混合物が透明になるまで混合することによって該担体を作る上記1〜4のいずれか1項記載の方法である。
【0013】
本発明の第6は、該ホスファチジルコリンがポリエニルホスファチジルコリン−富化ホスファチジルコリンである上記1、2及び4のいずれか1項記載の方法である。
【0014】
本発明の第7は、該ホスファチジルコリン混合物を40℃に暖めそして該暖めた溶液をすりつぶし;界面活性剤及び潤滑剤を混ぜ合わせて流体を形成し;該流体を該暖めた該ホスファチジルコリン混合物に加えそして該溶液が透明になるまですりつぶし;メチルパラベンを該ホスファチジルコリン混合物に加えそして該メチルパラベンが該溶液に溶解するまですりつぶし;水を40℃に温め、該温めた水を該溶液にゆっくり加え;そして該溶液のミリングを止め、該溶液を洗い流して室温にまで冷却すること;をさらに含むことによって該マルチラメラ液晶担体を作成する上記1〜6のいずれか1項記載の方法である。
【0015】
本発明の第8は、該インスリンが50mg/mlで0.01NHClの溶液中で作成されたヒト組換えインスリンであり且つ該インスリン溶液が少なくとも1時間の間室温で担体中に混合されている上記2記載の方法である。
【0016】
本発明の第9は、該安定な局所用インスリン組成物が20mg/mlの濃度のインスリンを含有する上記2又は8記載の方法である。
【0017】
ホスファチジルコリンは、本発明の実施においてポリペプチド及び高分子の局所医薬伝達のための担体として使用される。ホスファチジルコリンは、細胞膜の二分子層の基本的な成分であり、血漿中を循環する主なホスホリピドである。ホスファチジルコリンは、非常に吸収性であり、そして動物の細胞膜を通る油脂の運動を助けそしてそれを維持するのに必要なコリンを供給する。
【0018】
本発明の局所医薬伝達組成物は、非極性であり、そして処方されてホスファチジルコリンに可溶なポリペプチド及び高分子を含み、それは次に高分子の経皮伝達のために皮膚に適用される。本発明の局所医薬伝達組成物は、インスリン及びソマトトロピン、プロスタグランディン、グルココルチコイド、エストロゲン、アンドロゲンなどのようなポリペプチドを含むがこれらに限定されない高分子の医薬(従来、筋肉内、静脈内または経口で投与されている)の伝達に有効である。
【0019】
組成物の局所投与及びその中の医薬の経皮伝達が、とりわけ長い間にわたってまたは生存中患者に投与されねばならないインスリンのような医薬にとって、投与経路として注射より容易かつ楽なことは、本発明の利点である。その上、実質的な量の医薬が消化過程で破壊される経口投与とは異なり、局所投与での医薬は浪費されない。局所投与は、経口または非経口で投与された医薬にとり一般的な周期的な投与なしに、所望の目的域への医薬の一定した拡散を可能にする。
【0020】
用語「ホスファチジルコリン」は、本明細書で使用されるとき、レシチンと通常呼ばれている、燐酸のコリンエステルに結合したステアリン酸、パルミチン酸及びオレイン酸のジグリセリドの混合物を意味する。レシチンは食品工業で広く使用されているので、多くの市販のレシチン製品が利用可能であり、例えばLecithol(商標)、Vitellin(商標)、Kelecin(商標)及びGranulestin(商標)がある。本発明の組成物は、合成または天然のレシチンまたはこれらの混合物を含む。所望の物理的特性を示しそして経済的かつ非毒性であるため、天然の製品が好ましい。
【0021】
本発明の好ましい局所医薬伝達組成物は、表皮の浸透を高めるために、ポリエニルホスファチジルコリン(本明細書では「PPC」と略称される)をさらに含む。用語「ポリエニルホスファチジルコリン」は、本明細書で使用されるとき、2つの脂肪酸置換基(少なくとも1つは少なくとも2つの二重結合を有する不飽和脂肪酸例えばリノール酸である)を有する任意のホスファチジルコリンを意味する。或るタイプの大豆レシチン及び大豆フラクションは、例えば、従来の食品グレードのレシチンよりも、最も豊富なホスファチジルコリン種としてのジリノレオイルホスファチジルコリン(18:2−18:2ホスファチジルコリン)とともに、高いレベルのポリエニルホスファチジルコリンを含み、そして本発明の局所医薬伝達組成物を処方するのに有用である。別の方法として、従来の大豆レシチンが、高いレベルのポリエニルホスファチジルコリンを含む大豆抽出物を添加されることにより、ポリエニルホスファチジルコリンを強化される。本明細書で使用されるとき、このタイプのホスファチジルコリンは、たとえ用語が通常の大豆種より高いポリエニルホスファチジルコリンレベルを示す天然の源から得られるレシチンを包含する場合でも、「ポリエニルホスファチジルコリン強化」ホスファチジルコリン(本明細書ではPPC強化ホスファチジルコリンと呼ばれる)と呼ばれる。これらの製品は、American Lecithin Company、Rhone−Poulenc及び他のレシチン業者から市販されている。American Lecithin Companyは、高レベルの不飽和を示す「U」の名称を有するその製品を販売し、Rhone−Poulencの製品は、主なホスファチジルコリン成分として約42%のジリノレオイルホスファチジルコリン及び約24%のパルミトイルリノレイルホスファチジルコリン(16:0−18:2PC)を含む大豆抽出物である。
【0022】
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、PPC強化ホスファチジルコリンは、ポリペプチドまたは高分子を包む二分子層を形成して、局所医薬伝達組成物を生じさせ、活性分子の安定化に助けになりそして浸透を高めるものと思われる。さらに、局所医薬伝達組成物は、液体の結晶相にあり、PPC強化ホスファチジルコリンは、マルチフィラメントの形に緩く配置され、さらにポリペプチドまたは高分子は、その場に形成されたリピド二分子層内に結合かつ捕捉されている。これは、緩く配置されているが安定なPPC強化ホスファチジルコリン−医薬錯体を形成し、それは表皮の脈管構造へのポリペプチドまたは高分子の浸透及び伝達をさらに増大させる。
【0023】
本発明の局所医薬伝達組成物は、かなり容易かつ楽に、従来のインスリン駐車より顕著な改善である投与経路をもたらす。本発明の組成物はまた室温で安定であり、それは過去において市販の冷凍されたインスリン製品を取り扱わねばならなかったインスリンの使用者にとりかなりな好都合をもたらすというさらなる利点である。また、本発明によるインスリン組成物は、長い貯蔵寿命(室温で貯蔵されてもまたは冷凍されても)を有し、そして従来のインスリン治療におけるような室温で変性しないだろう。
【0024】
本発明の局所医薬伝達組成物で有用なインスリンは、種々の源から市販されており、特に商標名Humulin、Novolin、Humalog、Inutralで市販されている。これらの製品のいくつかは、ブタの配列を含む。本発明の組成物は、好ましく、Sigma Co.,Spectrum Chemicals and Laboratories及び同様な販売者から得られるもののような組み換えヒトポリペプチドにより処方され、そして以下の実施例で使用される。インスリンを有する局所医薬伝達組成物が市販されている成分により処方されることが本発明の利点である。
【0025】
局所医薬伝達組成物は、一般に、商品名NAT8729(販売者例えばAmerican Lecithin Company及びRhone−Poulencから市販されている)を有するPPC強化ホスファチジルコリン材料及び少なくとも1つのポリグリコール(モノマー性グリコールの多価アルコール例えばポリエチレングリコール(PEG)200、300、400、600、1000、1450、3350、4000、6000、8000及び20000)を含む担体と処方される。その上、この担体は、例えばDow Corningのような販売者から市販されているジメチル、メチル(プロピルポリエチレンオキシドプロピレンオキシド、アセテート)シロキサンを含むシロキシレート化ポリエーテルのような界面活性剤(Dow Corning190界面活性剤)並びに例えばDow Corningのような販売者から市販されている低粘度ポリジメチルシロキサンポリマー、メチルパラベン(p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル)を含むシリコーン流体のような潤滑剤(Dow Corning200シリコーン流体)を含むことができる。さらに、精製水が担体に添加できる。担体は、次に最終の組成物中で所望の濃度を得る量で、特定の1つ以上のポリペプチドまたは1つ以上の高分子の調製物と混合される。以下の実施例は、本発明をさらに説明かつ証明するために提供され、本発明を限定するものと決して考えてはならない。
【0026】
(実施例)
実施例 1:安定なインスリン組成物の製造
安定なインスリン局所調製物は、まず基本溶液を調製することにより処方された。80.6%のPPC強化ホスファチジルコリン及び4.9%のリソホスファチジルコリンを含んだNAT8729と名付けられたポリエニルホスファチジルコリン材料をRhone−Poulencから得た。NAT8729(45%w/w)を振盪しそしてDow Corningからともに得られたポリグリコールE200(50%w/w)及びポリグリコールE400(5%w/w)の混合物に添加した。基本溶液を次に十分にカバーしそしてわずかに加熱して800rpmで徐々に特殊な崩壊ヘッドインペラーによりライトニング(lightning)混合した。温度は40℃より高くしなかった。一般的な混合時間は5時間であった。最終の溶液は、沈殿または分離のない結晶のように透明かつ粘度のあるアンバー色の溶液である。
【0027】
この基本溶液(97.25%w/w)に、次にDow Corning Fluid190(1.00%w/w)[ジメチル、メチル(プロピルポリエチレンオキシドプロピレンオキシド、アセテート)シロキサンを含むシロキシレート化ポリエーテル]、200−5または10sctと命名されたDow Corningシリコーン流体(1.00%w/w)[低粘度ポリジメチルシロキサンポリマーを含むシリコーン流体]並びにMalinckrodtから得られるメチルパラベン[p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル](0.75%w/w)を混合した。成分を、以下のように0.45ミクロンスクリーンで3850rpmでホモゲナイズした。メチルパラベンをまず基本溶液に添加し、そして完全な溶液が形成されるまで少なくとも1時間混合した。次に、Dow Corning200−5または10cstを徐々に添加しそして透明な溶液が得られるまで混合した。次に、Dow Corning Fluid190を徐々に添加しそして溶液中に混合して担体を形成した。
【0028】
担体中にSigmaから得られたRNA由来組み換えヒトインスリンを単に溶解することにより、本発明のインスリン調製物を次に2つの濃度すなわち50単位及び100単位で担体を使用して製造した。それは担体に容易に可溶であった。
【0029】
安定なインスリン組成物の安定性をテストするには、インスリン標品は、Sigmaインスリンを使用して0.01HC1中で1mg/mLで製造された。(この物質の1mgは28インスリン単位の活性を示す。)安定なインスリン組成物のサンプルは、60分間室温で混合することにより1mg/mLのベースで製造された。この混合物は、次に2つに分割され、その半分は、4℃で貯蔵し、他の半分は室温で貯蔵した。インスリン標品及び本発明のインスリン組成物(異なる時間で異なる温度で貯蔵された)の分離分析、高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)及び高速毛管電気泳動(HPCE)を行った。
【0030】
RP−HPLC及びHPCEの分析は、4℃または−20℃で貯蔵されたインスリン標品が65日後で安定であったが、室温で貯蔵されたインスリン標品が7日以内に変性を開始したことを示した。一方、本発明のインスリン組成物のRP−HPLC及びHPCEプロフィルは、室温及び4℃の両者で安定であり、65日後でも変化しなかった。結果は、担体が室温で貯蔵されたインスリンの変性を防いだことを明らかに示した。
【0031】
実施例 2:安定なインスリン組成物の製造
安定なインスリン組成物は、まず基本溶液を製造することにより処方された。ポリグリコールE200(PEG−200)(50%w/w)を秤量し、そしてポリグリコールE400(PEG−400)(5%w/w)を同じ容器に添加して所望の重量を得た(両者ともDow Corningから得た)。PEG−200及びPEG−400を800rpm(速度1)で徐々に崩壊ヘッドインペラーを使用してIKAモデルRW20により38−40℃でライトニング混合し、PEG−200/PEG−400溶液を得た。80.6%のPPC強化ホスファチジルコリン及び4.9%のリソホスファチジルコリンを含んだNAT8729と名付けられたPPC強化ホスファチジルコリン材料をRhone−Poulencから得た。NAT8729(45%w/w)を振盪しそしてPEG−200/PEG−400溶液に添加し、カバーしそして沈殿または分離のない透明かつ粘度のあるアンバー色の溶液を得るまで、40℃を越えない温度で混合した。混合時間は約5時間であった。別の混合物を、95−96%の収率で加熱なしに1晩溶液をカバーし混合することにより製造できる。溶液を冷まし、そして最小のメッシュスクリーンを使用してRoss Homogenizer(モデルHSM100LC)に移した。
【0032】
Dow Corning Fluidを次に製造した。190と命名されたDow Corning Fluid(1.00%w/w)[ジメチル、メチル(プロピルポリエチレンオキシドプロピレンオキシド、アセテート)シロキサンを含むシロキシレート化ポリエーテル]及び200−5または10cstと命名されたDow Corningシリコーン流体(1.00%w/w)[低粘度ポリジメチルシロキサンポリマーを含むシリコーン流体]を、きれいなスパチュラにより容器中でともに混合した。
【0033】
溶液(53.25%w/w)を40℃に加温し、そして800rpmで混合した。一般的な混合時間は約5時間であった。溶液を次に3800rpmで摩砕し、Dow Corning Fluid混合物を、透明な溶液が生ずるまで非常に徐々に添加した。Mallinckrodtから得たメチルパラベン(p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル)(0.75%w/w)を一度に添加しそして完全な溶液が生ずるまで混合した。40℃に加温した精製水を、約3分間7500rpmで摩砕しつつ、溶液に非常に徐々に添加した。摩砕の終わりに、停止する数秒前に速度を10000rpmに上げた。溶液を取り出し、室温に冷めるまでIKAモデルRW−20を使用してパドルヘッドにより撹拌した。この段階は、非常に重要であり、もしそれが適切になされないならば、二相の最終生成物を生ずるだろう。代表的なやり方は、ホモゲナイザーのヘッドが溶液中に十分に潜るように、溶液の体積の2倍の体積を有する容器を使用することである。溶液を次に室温に冷却した。
【0034】
Spectrum Chemicals and Laboratories(Product#11247)から得られた米国薬局方組み換えインスリンを50mg/mLで0.01NのHC1で調製し、そして穏やかであるが十分に混合した。このインスリン製品を次に上記の溶液に非常に徐々に添加して、500単位/mLすなわち20mg/mLの最終濃度を得た。混合を少なくとも1時間室温で続けた。最終の安定なインスリン組成物を、アンバー色の密封容器で4℃で貯蔵した。
【0035】
異なる温度で異なる時間貯蔵されたインスリン標品(0.01NのHC1中5mg/mLで製造)及び本発明の安定なインスリン組成物のRP−HPLC及びHPCEの分析を行った。結果は、4℃で貯蔵された標準のインスリン標品は22週まで安定であって34週後に変性を始めたことを示したのに対し、室温で貯蔵されたときにはわずか1週以内に変性し始めた。しかし、室温で貯蔵された本発明の安定なインスリン組成物は、少なくとも22週まで安定であり、それは標準よりも21週長かった。結果は、4℃で貯蔵された標準から安定なインスリン組成物では貯蔵期限に変化がなかったことを示した(34週後でも変化なし)。
【0036】
本発明の安定な医薬伝達組成物は、経皮的にポリペプチドを伝達かつ安定化するのに使用でき、それらは、インスリン、オキシトシン、バソプレシン、ソマトトロピン、カルシトニン、絨毛性ゴナドトロピン、メノトロピン、フォリトロピン、ソマトスタチン、プロゲスチン、ペプチド、ポリマー及びこれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。これらの医薬は、種々の工業上の源から容易に入手できる。ソマトトロピン(下垂体成長ホルモン)は、商品名Gentropin(商標)、Humatrope(商標)、Nutropin(商標)及びSerostim(商標)の下市販されている。
【0037】
ソマトトロピンにより処方された医薬伝達組成物は、リポ酸及びアスコルビルパルミテートが添加された85%ホスファチジルコリンにより1つの試験で処方された。ソマトとピンは、ホスファチジルコリンに容易に分散しそしてその中で安定のままであった。組成物が局所的に適用されたとき、成長ホルモンは、皮膚に十分に浸透したようにみえた。
【0038】
本発明は、また医薬以外の活性剤例えばスキンケア剤の局所伝達をもたらすのに使用できる。本発明は、ペプチド及びポリマーを含むいくつかの化粧品処方に使用される大きな分子で特に有用である。
【0039】
上述は、本発明をいかに実施するかについて当業者に教示することを目的とし、そして記述を読んで当業者に明らかになるその明白なすべての改変及び変化を詳述することを目的としていない。しかし、すべてのこれらの改変及び変化は本発明の範囲内に含まれることを目的とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子の経皮伝達用組成物を製剤化する方法において、ホスファチジルコリン混合物からマルチラメラ液晶担体を作り、そして該マルチラメラ液晶担体に高分子を、該マルチラメラ液晶担体が室温で該高分子を安定化するように補足することを特徴とする製剤化方法。
【請求項2】
皮膚血管系へのインスリンの経皮伝達用の安定な局所インスリン組成物を製剤化する方法であり、ホスファチジルコリン混合物からマルチラメラ液晶担体を作り、そして該マルチラメラ液晶担体にインスリンを、該マルチラメラ液晶担体が室温で該インスリンを安定化するように補足することを特徴とする該安定な局所インスリン組成物を製剤化する方法。
【請求項3】
高分子の経皮伝達用組成物を製剤化する方法において、ポリエニルホスファチジルコリン−富化ホスファチジルコリン及びポリグリコール混合物からマルチラメラ液晶担体を作り、そして該マルチラメラ液晶担体に高分子を、該マルチラメラ液晶担体が室温で該高分子を安定化するように補足することを特徴とする製剤化方法。
【請求項4】
該ホスファチジルコリン混合物がホスファチジルコリン及び少なくとも1つのポリグリコールを含む請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
200の分子量をもつポリグリコール及び400の分子量をもつポリグリコールを混ぜ合わせ、ポリクリコールの混合物を形成し;該ホスファチジルコリン成分をポリグリコール混合物中に混ぜて合わせてホスファチジルコリン混合物を形成し;そして該ホスファチジルコリン混合物を該混合物が透明になるまで混合することによって該担体を作る請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
該ホスファチジルコリンがポリエニルホスファチジルコリン−富化ホスファチジルコリンである請求項1、2及び4のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
該ホスファチジルコリン混合物を40℃に暖めそして該暖めた溶液をすりつぶし;界面活性剤及び潤滑剤を混ぜ合わせて流体を形成し;該流体を該暖めた該ホスファチジルコリン混合物に加えそして該溶液が透明になるまですりつぶし;メチルパラベンを該ホスファチジルコリン混合物に加えそして該メチルパラベンが該溶液に溶解するまですりつぶし;水を40℃に温め、該温めた水を該溶液にゆっくり加え;そして該溶液のミリングを止め、該溶液を洗い流して室温にまで冷却すること;をさらに含むことによって該マルチラメラ液晶担体を作成する請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
該インスリンが50mg/mlで0.01NHClの溶液中で作成されたヒト組換えインスリンであり且つ該インスリン溶液が少なくとも1時間の間室温で担体中に混合されている請求項2記載の方法。
【請求項9】
該安定な局所用インスリン組成物が20mg/mlの濃度のインスリンを含有する請求項2又は8記載の方法。

【公開番号】特開2010−159278(P2010−159278A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47781(P2010−47781)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【分割の表示】特願2004−565850(P2004−565850)の分割
【原出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【出願人】(508332081)トランスダーマル バイオテクノロジ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】