説明

安定な美白用の皮膚外用剤

【課題】
アスコルビン酸グルコシドとメチルパラベンを併用することによる澱の生成が抑制され、しかも防腐効果の優れた美白用皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】
アスコルビン酸グルコシド含有化粧料において、1,2−オクタンジオールを0.01〜10質量%添加することにより、アスコルビン酸グルコシドとメチルパラベンとの併用に起因する澱の生成が抑制された美白用の皮膚外用剤が得られた。しかもこの皮膚外用剤は防腐効果の高いものであった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白用の皮膚外用剤に関し、更に詳細には、製剤系の安定性の高い皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アスコルビン酸グルコシドは、メラニン生成抑制作用があり美白用の化粧料・医薬部外品に使用されている。しかし、アスコルビン酸グルコシドを含有した製剤系においては、その防腐力が低下し、メチルパラベンなどの防腐剤を多めに使用する必要があり、このようにメチルパラベンの含有量を増やした系において、特に低温保存時において、しばしば澱が生じて、製品の質を低下させることがあることを本発明者らは見出している。このような状況を回避するため、アスコルビン酸グルコシドとメチルパラベンの併用系に、1,3−ブタンジオールやプロピレングリコールなどを多量に添加することにより、澱の生成を抑える試みがなされているが、未だ十分とはいえない状況である。一方、防腐剤として1,2−アルカンジオールを配合した化粧料(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)、また美白化粧料において、非イオン界面活性剤と1,2−ペンタンジオールを組み合わせて、刺激感の少ない化粧料を得ること(例えば、特許文献3を参照)、さらにはアスコルビン酸リン酸エステル塩含有系において防腐力を高めるために1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールの添加が有効であること(例えば、特許文献4を参照)は知られている。また、1,2−ペンタンジオールや1,2−ヘキサンジオールとアスコルビン酸誘導体などの有効成分を組み合わせることにより、これらの有効成分の皮膚透過性が亢進すること(例えば、特許文献5を参照)。さらに、アルブチンやアスコルビン酸グルコシドに1,2−ペンタンジオールや1,2−ヘキサンジオールを添加し、さらにファルネソールのようなセスキテルペン類を配合することによって、一過性の刺激感の緩和された化粧料を得ること(例えば、特許文献6を参照)ができることも知られている。
【0003】
しかし、アスコルビン酸グルコシドを含有した製剤系においては、メチルパラベンの添加による防腐効果が十分に発揮できず、そのためメチルパラベンなどの防腐剤を多めに使用する必要があり、このようにメチルパラベンの含有量を増やした系においては、特に低温保存時において、澱が生成して、その製品価値を著しく低下させてしまうことがあることは知られておらず、このような澱の生成に対して、1,2−オクタンジオールを併用することにより、製剤系の防腐力を低下させずに、澱の生成を防止できる効果のあることは知られていなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−310506号公報
【特許文献2】特開平11−322591号公報
【特許文献3】特開2000−204017号公報
【特許文献4】特開2002−3330号公報
【特許文献5】特開2002−87926号公報
【特許文献6】特開2004−115396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下なされたものであり、アスコルビン酸グルコシドを含有する皮膚外用剤において、メチルパラベンなどの防腐剤の使用量を低減、若しくは使用しないで十分な防腐力を発揮させることにより、澱の生成を防止できるような皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、アスコルビン酸グルコシド含有製剤系の防腐力を高め、さらにメチルパラベンの使用量を低減することにより、澱の生成しにくい皮膚外用剤を提供することを課題として、鋭意研究努力を重ねた結果、以下に示すような皮膚外用組成物が、アスコルビン酸グルコシドを含有していても、十分な防腐効果を示し、澱の生成がないことを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は以下に示すとおりである。
(1) アスコルビン酸配糖体と1,2−オクタンジオールを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(2) アスコルビン酸配糖体がアスコルビン酸グルコシドであることを特徴とする、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3) さらに、メチルパラベンの含有量が0.2質量%以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4) アスコルビン酸配糖体とメチルパラベンによる澱の生成を抑制することを特徴とする、(1)〜(3)の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(5) 前記皮膚外用剤が美白用化粧料であることを特徴とする、(1)〜(4)の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(6) 前記皮膚外用剤が医薬部外品であることを特徴とする、(1)〜(5)の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アスコルビン酸配糖体とメチルパラベンの共存によって生じる澱の生成が、1,2−オクタンジオールを併用することにより抑制され、外観上も良く、しかも防腐効果の優れた皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるアスコルビン酸配糖体
本発明の皮膚外用剤は、アスコルビン酸配糖体を含有することを特徴とする。アスコルビン酸はビタミンCとも言われ、ビタミン作用さらには還元性を有しているため、多くの食品や化粧料に配合されている。しかしアスコルビン酸は、水溶液の状態での安定性が悪いためリン酸エステル体やグリコシド体などの安定な誘導体が作られている。本発明の皮膚外用剤の必須成分であるアスコルビン酸配糖体もこのような誘導体の1種であり、配糖体としては、グルコシド体、マルトシド体、ガラクトシド体などが例示できるが、このうちグルコシド体が好ましい。これは市販品が存し、容易に入手可能であるからである。このようなアスコルビン酸配糖体の配合濃度は0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。これは、この濃度以下では、美白用の皮膚外用剤としての十分なメラニン産生抑制効果が得られず、これ以上でも効果が飽和してしまうからである。
【0009】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分である1,2−オクタンジオール
本発明の1,2−オクタンジオールは、保湿剤としての保湿性の他に、大腸菌、黄色ブドウ球菌、枯草菌などの一般細菌、さらにはコウジ菌、カビなどの真菌類に対して抗菌作用を有していることが知られている。また、1,2−オクタンジオールの類縁物質である1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールに関しても保湿作用や抗菌作用は知られているが、これらの中でも1,2−オクタンジオールがアスコルビン酸グルコシドとの併用時の効果が一番優れており、さらに揮発性が一番低くて、原体の臭いが少なく、商品へ配合しやすいなどの特徴を有している。本発明による皮膚外用剤への1,2−オクタンジオールの配合量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されないが、組成物中、0.01〜10.0質量%が好ましく、0.1〜5.0質量%がより好ましい。この理由は、0.01質量%未満の配合量では乳化組成物の防腐効果・澱の生成抑制効果がなくなり、また、10.0質量%を超えて配合すると、原料臭や組成物への着色の問題が生じる場合があるため、いずれの場合も好ましくないからである。このような性質を有する、1,2−オクタンジオールは、市販品されているので、市販品を購入して使用することができる。
【0010】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、上記必須成分である1,2−オクタンジオールとアスコルビン酸配糖体を含有することにより、パラベンの含有量が0.2質量%以下、若しくは実質的に含有しないことにより、アスコルビン酸グルコシドとパラベンによる、澱の生成が抑制され、さらにパラベンによる皮膚刺激性が少なくなることが期待でき、美白用の皮膚外用剤に適用することが好適である。
【0011】
本発明の皮膚外用剤に於いては、上記必須成分以外に、皮膚外用剤で使用される任意成分を、本発明の効果を損ねない範囲において含有することが出来る。かかる任意成分としては、例えば、スクワラン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィンなどの炭化水素類、ジメチコン、フェメチコン、シクロメチコン、アモジメチコン、ポリエーテル変性シリコーンなどのシリコーン類、ホホバ油、カルナウバワックス、モクロウ、ミツロウ、ゲイロウ、オレイン酸オクチルドデシル、イソプロピルミリステート、ネオペンチルグリコールジイソステアレート、リンゴ酸ジイソステアレートなどのエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの脂肪酸類、ベヘニルアルコール、セタノール、オレイルアルコール、オクタデシルアルコールなどの高級アルコール類、ヒマシ油、椰子油、水添椰子油、椿油、小麦胚芽油、イソステアリン酸トリグリセライド、イソオクタン酸トリグリセライド、オリーブオイル等のトリグリセライド類、1,3−ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどの多価アルコール類、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル、ポリエキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤、ソジウムラウリルステアレート、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、スルホコハク酸エステル塩などのアニオン界面活性剤、4級アルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、アルキルベタイン等の両性界面活性剤類、結晶セルロースや架橋型メチルポリシロキサン、ポリエチレン粉末、アクリル樹脂粉体等の有機粉体類、タルク、マイカ、セリサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化鉄、紺青、群青、チタンマイカ、チタンセリサイト、シリカ等の表面処理されていても良い粉体類、アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマー及び/又はその塩、カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩、キサンタンガムやヒドロキシプロピルセルロースなどの増粘剤、レチノール、レチノイン酸、トコフェロール、リボフラビン、ピリドキシン、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル塩などのビタミンやグリチルリチン酸塩、グリチルレチン、ウルソール酸、オレアノール酸などのテルペン類、エストラジオール、エチニルエストラジオール、エストリオールなどのステロイド類などの有効成分、ジメチルアミノ安息香酸エステル類、桂皮酸エステル類、ベンゾフェノン類などの紫外線吸収剤、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール、ヒビテンなどの防腐剤類などが例示できる。防腐剤の使用形態として、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類に関しては、澱の生成の原因となるため、使用する場合には0.2質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましく、パラベンを含有しないパラベンフリーの形態が最も好ましい。
【0012】
また、1,3−ブタンジオールは、多価アルコールの1種であり、化粧料においては、保湿性を付与するために多用されているものであり、防腐作用を有していることも知られているが、その防腐作用は弱いものであり、製剤の特性にもよるが20〜30質量%以上を配合することによって防腐作用を付与することが可能である。このような1,3−ブタンジオールを1,2−オクタンジオールと併用することにより、1,2−オクタンジオールの防腐活性を向上させることができる。かかる1,3−ブタンジオールの好ましい含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対して、1〜20質量%であり、更に好ましくは、2〜10質量%である。これは、少なすぎると添加効果が得られない場合があり、多すぎると効果が頭打ちになり、特に系の安定性を損なう場合があるからである。
【0013】
本発明は、アスコルビン酸配糖体を含有する皮膚外用剤において、さらに1,2−オクタンジオールを含有させることにより、防腐剤であるパラベンの含有量を少なくし、若しくは使用しないことにより、澱の生成を抑制し、且つ製剤系の防腐力を発揮できるような外用剤に関するものである。このような、外用剤の剤型に関しては特に制限はなく、ローション、乳液、クリームなどの剤型が可能であるが、特に、ローション剤型への適用が好ましい。これは、ローション剤型において、特に澱の生成が、問題となるためである。ここでいう、ローション剤型とは、水溶性の成分のみからなり油分を含有していないか、若しくは界面活性剤によって可溶化されうる少量の油分を含有する透明若しくは半透明の水性剤型である。
【0014】
以下に実施例をあげて本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限定されないことはいうまでもない。
【実施例1】
【0015】
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤(実施例1;透明ローション)を得た。
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
メチルパラベン 0.2 質量%
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
アスコルビン酸グルコシド 3.0 質量%
1,2−オクタンジオール 0.3 質量%
水 75.9 質量%
【実施例2】
【0016】
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤(実施例2;透明ローション)を得た。
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
アスコルビン酸グルコシド 3.0 質量%
1,2−オクタンジオール 0.5 質量%
水 75.9 質量%
【0017】
(比較例1)
実施例1の1,2−オクタンジオールを水に置換して比較例1の皮膚外用剤を得た。
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
メチルパラベン 0.2 質量%
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
アスコルビン酸グルコシド 3.0 質量%
水 76.2 質量%
【0018】
(比較例2)
実施例1のメチルパラベンを0.3質量%とし、1,2−オクタンジオールを水に置換して比較例2の皮膚外用剤を得た(水の量で100%に調整)。
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
メチルパラベン 0.3 質量%
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
アスコルビン酸グルコシド 3.0 質量%
水 76.1 質量%
【0019】
(比較例3)
実施例1のメチルパラベンを0.4質量%とし、1,2−オクタンジオールを水に置換して比較例3の皮膚外用剤を得た(水の量で100%に調整)。
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
メチルパラベン 0.4 質量%
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
アスコルビン酸グルコシド 3.0 質量%
水 76.0 質量%
【実施例3】
【0020】
実施例1の1,2−オクタンジオールを1.0質量%とし、メチルパラベンを水に置換して実施例3の皮膚外用剤を得た。
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
アスコルビン酸グルコシド 3.0 質量%
1,2−オクタンジオール 1.0 質量%
水 75.4 質量%
【0021】
(比較例4)
実施例1のメチルパラベンを0.4質量%とし、アスコルビン酸グルコシドと1,2−オクタンジオールを水に置換して比較例4の皮膚外用剤を得た(水の量で100%に調整)。
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
メチルパラベン 0.4 質量%
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
水 79.0 質量%
【0022】
(比較例5)
実施例1の1,2−オクタンジオールを1,2−ペンタンジオールに置換して、比較例5の皮膚外用剤を得た。
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
メチルパラベン 0.2 質量%
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
アスコルビン酸グルコシド 3.0 質量%
1,2−ペンタンジオール 0.3 質量%
水 75.9 質量%
【0023】
(比較例6)
実施例1の1,2−オクタンジオールを1,2−ヘキサンジオールに置換して、比較例6の皮膚外用剤を得た。
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
メチルパラベン 0.2 質量%
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
アスコルビン酸グルコシド 3.0 質量%
1,2−ヘキサンジオール 0.3 質量%
水 75.9 質量%
【0024】
(比較例7)
実施例1のメチルパラベンを0.4質量%とし、1,2−オクタンジオールを1,2−ペンタンジオールに置換して比較例7の皮膚外用剤を得た(水の量で100%に調整)。
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
メチルパラベン 0.3 質量%
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
アスコルビン酸グルコシド 3.0 質量%
1,2−ペンタンジオール 0.3 質量%
水 75.8 質量%
【0025】
(比較例8)
実施例1のメチルパラベンを0.4質量%とし、1,2−オクタンジオールを1,2−ヘキサンジオールに置換して比較例8の皮膚外用剤を得た(水の量で100%に調整)。
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
メチルパラベン 0.3 質量%
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
アスコルビン酸グルコシド 3.0 質量%
1,2−ヘキサンジオール 0.3 質量%
水 75.8 質量%
【0026】
<試験例1> 低温経時安定性試験
低温保存条件下での澱の生成状況に関しては、−10℃の保存場所に2週間、各試験サンプルを放置後、肉眼にて澱の生成状況を判断した。澱の生成状況は、以下の基準にて判断した。○:澱の生成が認められない。△:かすかな澱の生成を認めた。×:明確な澱の生成を認めた。結果を表1に示す。
【0027】
<試験例2> 防腐力試験
防腐力の検定方法は、枯草菌(B:Bacillus subtilis IFO 13721)、黄色ブドウ球菌(S:Stahylococcus aureus IFO 13275)、大腸菌(E:Escherichia coli IFO 3972)及び緑膿菌(P:Pseudomonas aeruginosa IFO 13275)はTSA培地を用い、酵母菌(C:Candida albicans IFO 0583)及びカビ(H:Aspergillus niger IFO 0122)はSDA培地を用いた。方法は、上記平板培地に検体を0.1ml塗抹し、白金耳で接種し、接種後1日よりコロニー数をカウントし、以下のランクに従ってランキングした。即ち、ランク0:0、ランク0.5:1〜10、ランク1:11〜200、ランク1.5:201〜500、ランク2:501〜1000、ランク2.5:1001〜3000、ランク3:3001〜5000、ランク3.5:5001〜10000、ランク4:10000〜のランクを使用した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
比較例1,2,3より、メチルパラベンの量が少なければ澱の生成は見られないが、防腐効果は劣り、メチルパラベンの量が多くなると防腐効果は得られるが、澱が生成してしまうことが判る。実施例1より、1,2−オクタンジオールを併用することにより、メチルパラベン量が少なく、澱が生成しない状況でも十分な防腐効果を有していることが判る。実施例2より、1,2−オクタンジオールを0.5質量%含有することにより、澱の生成もなく、メチルパラベンを添加しなくても十分な防腐作用を有していることが判る。比較例3,4,実施例3より、澱の生成にはアスコルビン酸グルコシドとメチルパラベンが関与していることが判る。実施例1及び比較例5,6より、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール0.3質量%の配合では、澱の生成は認められないが、防腐効果は十分ではなく、また、比較例7,8より、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール0.3質量%配合系において、メチルパラベンの配合量を増やすと、防腐効果は上がってくるが、澱の生成が十分には抑制できていないことが判る。これらのことから、1,2−オクタンジオールは、アスコルビン酸グルコシドとメチルパラベンの配合系において、澱の生成を起こさずに十分な防腐効果を達成できることが判った。
【実施例4】
【0030】
以下に示す処方に従って、(A)を75℃に加温して均一に混合し、これに75℃に加温した(B)を加えて可溶化して、本発明の皮膚外用剤(半透明ローション)を得た。
(A)
スクワラン 0.1 質量%
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 2.5 質量%
ポリエチレングリコール(1500) 2.5 質量%
1,3−ブタンジオール 8.0 質量%
グリセリン 10.0 質量%
メチルパラベン 0.2 質量%
(B)
リン酸水素ナトリウム 0.1 質量%
アスコルビン酸グルコシド 3.0 質量%
1,2−オクタンジオール 0.3 質量%
水 73.3 質量%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸配糖体と1,2−オクタンジオールを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
アスコルビン酸配糖体がアスコルビン酸グルコシドであることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
さらに、メチルパラベンの含有量が0.2%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
アスコルビン酸配糖体とメチルパラベンによる澱の生成を抑制することを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記皮膚外用剤が美白用化粧料であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記皮膚外用剤が医薬部外品であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2006−143687(P2006−143687A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338835(P2004−338835)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】