説明

安定な茶濃縮物

安定な茶濃縮物が紹介される。一実施形態において、茶濃縮物が、約10重量%〜約35重量%の茶固体と、約30重量%〜約70重量%の安定剤と、約15重量%〜約35重量%の水と、を有する溶液を含み、茶固体、安定剤及び水はそれぞれ、溶液から茶固体が沈降しない程度の量で加えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料に関する。より詳しくは、本発明は、飲料を調製するための茶濃縮物及びその製造方法に関する。
【本発明の背景】
【0002】
安定な茶濃縮物は非常に望ましく、例えば、即飲可能な(ready-to-drink)茶製品、小売用茶濃縮物製品及びディスペンサ(dispensing devices)用茶濃縮物製品等の様々な用途に用いられる。一般に、茶濃縮物は、茶粉末又は低濃度茶抽出物より、高品質な味覚特性を有する最終的な茶飲料を作り出す。茶濃縮物は、粉末から作られる製品に付随する公衆衛生問題を減らすことができる。さらに、安定な茶濃縮物は、極小の、茶固体の安定性を保持しながら、冷却なしに運搬又は貯蔵され得る。
【0003】
多くの従来型茶濃縮物は物理的に不安定であり、また、ポンプで移送することができない。これによって、茶濃縮物の多くの茶製品への使用が制限されている。例えば、茶固体は溶液から沈降する傾向があり、これによって、消費者にとって、味覚上及び外観上の美的に望ましくない飲料が調製される。さらに、茶濃縮物にはかなりの粘性があって、ポンプで容易に移送することができる、ディスペンサに簡単に用いることができない。
【0004】
したがって、安定であり、ポンプで移送可能な、且つ、長期間室温において貯蔵可能な改良された茶濃縮物を提供する必要がある。
【本発明の概要】
【0005】
本発明では、安定な飲料濃縮物が提供される。一実施形態において、本発明では、約10重量%〜約35重量%の茶固体と、約30重量%〜約70重量%の安定剤と、約15重量%〜約35重量%の水とを有する溶液を含む飲料濃縮物であって、茶固体、安定剤及び水はそれぞれ、溶液から茶固体が沈降しない程度の量で加えられる飲料濃縮物が提供される。
【0006】
一実施形態において、飲料濃縮物は、約0.01%〜約2.0%の少なくとも一つの緩衝塩を含む。
【0007】
一実施形態において、安定剤は、スクロース、フルクトース、コーンシロップ、マルトデキストリン、D形グルコース、ラクトース、プロピレングリコール及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる。
【0008】
一実施形態において、溶液は約60重量%〜約90重量%の固体含有量を含む。
【0009】
一実施形態において、溶液は約0.75〜約0.85の水分活性を含む。
【0010】
一実施形態において、溶液は脱気されている。
【0011】
一実施形態において、飲料濃縮物は防腐剤を含まない。
【0012】
一実施形態において、溶液は殺菌されている。
【0013】
一実施形態において、茶固体は約15重量%〜約30重量%である。
【0014】
一実施形態において、安定剤は約40重量%〜約60重量%である。
【0015】
一実施形態において、水は約20重量%〜約30重量%である。
【0016】
一実施形態において、本発明では、約10重量%〜約35重量%の茶固体と、約30重量%〜約70重量%の一つ以上の安定剤と、約0.01重量%〜約2.0重量%の緩衝塩と、約15重量%〜約35重量%の水とを有する溶液を含む安定な茶濃縮物であって、茶固体、安定剤、水及び緩衝塩がそれぞれ、溶液から茶固体が沈降しない程度の量で加えられる、安定な茶濃縮物が提供される。
【0017】
一実施形態において、本発明では安定な茶濃縮物の製造方法が提供される。その方法は、溶液を形成するために、約10重量%〜約35重量%の茶固体を、約30重量%〜約70重量%の安定剤及び約15重量%〜約35重量%の水と混合するステップを含み、茶固体、安定剤及び水はそれぞれ、溶液から茶固体が沈降しない程度の量で加えられる。
【0018】
他の実施形態において、本発明では、約10重量%〜約35重量%の茶固体と、約30重量%〜約70重量%の安定剤と、約15重量%〜約35重量%の水とを含有する飲料濃縮物と、茶香料とを含む飲料製品であって、茶固体、安定剤及び水はそれぞれ、溶液から茶固体が沈降しない程度の量で加えられ、消費される前に飲料製品を調製するために、茶香料が飲料濃縮物に混合される、飲料製品が提供される。
【0019】
他の実施形態において、本発明は、約10重量%〜約35重量%の茶固体と、約30重量%〜約70%の安定剤と、約15重量%〜約35重量%の濃縮された茶香料とを含む飲料濃縮物であって、茶固体、安定剤及び濃縮された茶香料はそれぞれ、溶液から茶固体が沈降しない程度の量で加えられる、飲料濃縮物を提供する。
【0020】
本発明の利点は、安定な、ポンプ移送可能な、改良された茶濃縮物を提供することにある。
【0021】
本発明の他の利点は、長期間室温において貯蔵可能な、改良された茶濃縮物を提供することにある。
【0022】
本発明のさらに他の利点は、長期間貯蔵するための防腐剤を必要としない、改良された茶濃縮物を提供することにある。
【0023】
本発明の更なる特徴及び利点を、以下の本発明の詳細な説明の欄にて説明し、これにより明らかとなろう。
【本発明の詳細な説明】
【0024】
本発明は一般的に、飲料濃縮物及びその製造方法に関する。一実施形態において、本発明では、安定であり、且つ、ポンプで移送可能な茶飲料濃縮物が提供される。茶濃縮物は防腐剤を含まなくてもよく、長期間室温において貯蔵され得る。本明細書で用いられる「安定性」は、病原性微生物の成長を抑制する能力及び/又は溶液からの茶固体の沈降を防ぐ能力である。
【0025】
本明細書において、用語「濃縮物」は、飲料を調製するために水のような液体で希釈することができる、一つ以上の抽出物から得られる製品(例えばお茶等)であるとして理解されたい。一実施形態において、茶濃縮物は約10%〜約35%の茶固体を含んでもよい。茶濃縮物は、約15重量%〜約30重量%の茶固体を含むことが好ましい。
【0026】
本明細書において、用語「茶飲料」は、水等のいずれかの適当な液体で茶濃縮物を希釈することによって調製される飲料として理解されたい。茶飲料を調製するために、茶濃縮物は任意適量の水又は他の液体で希釈され得る。液体は、熱いもの、冷たいもの又は室温のものとすることができる。最終的な茶飲料を調製するために、茶濃縮物は、最低約0.1%〜約0.4%の茶固体に希釈されることが好ましい。
【0027】
本明細書において、用語「茶固体」は、茶抽出物に存在する固体として理解されたい。一般に、ポリフェノール性化合物(例えば、タンニン)は茶固体の主成分である。しかしながら、茶固体は、お茶から得られるカフェイン、プロテイン、アミノ酸、ミネラル、炭水和物及び他の化合物も含むことができると考えられる。溶液からの茶固体の沈降を防ぐということは、溶液からの茶固体の微量又は僅かな量での沈降を防ぐということではないことに注意されたい。例えば、溶液から沈降する茶固体の微量又は僅かな量は、安定な茶濃縮物の全体的な風味又は外観特性に悪影響を与えない程度の量である。
【0028】
本明細書において、用語「安定剤」は、水分活性の調節が可能であり、溶液からの茶固体沈降の防止が可能である、いずれかの適当な試剤であると理解されたい。安定剤は、例えば、スクロース、フルクトース、コーンシロップ、マルトデキストリン、D形グルコース、ラクトース、プロピレングリコール又はこれらの組み合わせであることができる。安定剤は、化学保存料を含まないことが好ましい。
【0029】
茶固体と水の溶液において、茶固体は、0.5重量%茶固体を下回る溶液又は50重量%茶固体を上回る溶液からは一般的に沈降しない。しかし、0.5重量%と50重量%の間では、溶液への任意付加的な変更もなしに、茶固体が溶液から一般的に沈降される。意外なことであるが、約10重量%〜約30重量%の茶固体濃度(例えば、この範囲では、茶固体が順当に沈降される)を有することによって、溶液から茶固体が沈降しない安定な茶濃縮物が調製されることを見出した。
【0030】
一実施形態において、安定な茶濃縮物は、茶味の濃い液体(tea heavy liquor)又は茶粉末と、安定剤及び水とを混合することによって調製され得る。茶固体は、約10重量%〜約35重量%であり、約15重量%〜約30重量%であることが好ましい。安定剤は、約30重量%〜約70重量%であり、約40重量%〜約60重量%であることが好ましい。水は、約15重量%〜約35重量%であり、約20重量%〜約30重量%であることが好ましい。一実施形態において、安定な茶濃縮物は、約0.01重量%〜約2.0重量%の緩衝塩を含むことが可能であり、約0.1重量%〜2.0重量%であることが好ましい。緩衝塩は、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸ジナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ジカリウム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸ジナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸ジカリウム等のような任意適当な塩とすることができる。
【0031】
一実施形態において、溶液(例えば、10%〜35%の間にある)からの茶固体の沈降を防ぐために、茶濃縮物の総固体の濃度は、約60重量%〜約90重量%の範囲にすべきであり、約70重量%~約80重量%であることが好ましく、茶濃縮物の水分活性は、約0.70〜約0.85の範囲にすべきであり、約0.78〜0.84であることが好ましい。
【0032】
他の実施形態において、飲料濃縮物は、約10重量%〜約35重量%の茶固体と、約30重量%〜約70重量%の安定剤と、約15重量%〜約35重量%の濃縮された茶香料とを有する溶液を含む。上記茶固体、安定剤及び濃縮された茶香料(例えば、茶蒸留液)はそれぞれ、溶液から茶固体が沈降しない程度の量で加えられる。
【0033】
代替的な実施形態において、飲料製品は茶香料又は茶蒸留液と、飲料濃縮物とを含む。初期、飲料濃縮物は茶香料とは別々に貯蔵される。飲料濃縮物は、約10重量%〜約35重量%の茶固体と、約30重量%〜約70重量%の安定剤と、約15重量%〜約35重量%の水とを有する溶液を含んでもよい。茶固体、安定剤及び水はそれぞれ、溶液から茶固体が沈降しない程度の量で加えられる。飲料製品を調製するために、消費者に飲用される前の任意時点で、茶香料又は茶蒸留液が飲料濃縮物に混合され得る。消費者が望む適当な風味を飲料製品に与えるために、飲料製品は水等のような付加的な液体を含んでもよい。
【0034】
一例としてこれらに制限されることなく、次の表は、本発明の種々の実施形態を例証し、さらに、本発明の実施形態によって実行された実験的な試験を示している。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
種々の実施例では、スクロースが茶固体の沈降物なしに最低粘度における最高安定性を提供していることを示した。しかしながら、茶固体の沈降を防ぐために、茶安定性、水分活性及び粘度の間にはあるバランスがある。最終の安定な茶濃縮物製剤における含有物の変数(例えば、茶固体、安定剤、水)の一つを変更すると、溶液からの沈降又は溶液の粘性の変化が起こり得る。例えば、1%の茶濃縮物を用意し、最終茶濃縮物製剤からの茶固体に投入すると、茶固体が沈降し、最終茶濃縮物製剤からの茶固体が1%増加すると、溶液が粘度制限を上回る。
【0038】
閉じ込められた空気を除去し、溶液の密度を増加させるために、茶濃縮物は脱気されてもよい。茶固体が連続的に酸化されることを防ぐために、気体は除去されてもよい。全ての植物性微生物を殺すために、茶濃縮物は殺菌されてもよい。茶濃縮物は、使用される袋の中に、無菌状態で充填される(例えば、インタセプト充填包装機)ことができ、また、無菌充填される(例えば、ショレ充填包装機)ことができる。例えば、配給装置には、そのような濃縮物を扱うための装置が整えている。
【0039】
安定な茶濃縮物を用いて茶飲料を作る実施例において、希釈水と茶濃縮物が一緒に混合されて、アイス含有容器の中に供給されるとき、ディスペンサからの希釈水含有茶濃縮物の標的供給強度(a targeted dispensing strength)は、約0.176%茶固体であることができる。この場合のディスペンサ用の希釈比率(例えば、水:濃縮物)は100:1〜150:1である。この方法において、茶濃縮物は初期的に約17.6%〜約26.4%の茶固体を有してもよい。最終的に冷やした飲料容器において、茶固体の濃度は、例えば、約0.16%であってもよい。
【0040】
当然のことながら、ここに記載されている好ましい実施形態は、当業者によって種々に変更又は修正されるかもしれない。このような変更及び修正は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、そして、意図された利点を減らすことなく行われることができる。したがって、このような変更及び修正は、添付されている特許請求の範囲によってカバーされると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10重量%〜約35重量%の茶固体と、
約30重量%〜約70重量%の安定剤と、
約15重量%〜約35重量%の水と、
を有する溶液を含む飲料濃縮物であって、
前記茶固体、前記安定剤及び前記水はそれぞれ、前記溶液から前記茶固体が沈降しない程度の量で加えられる、飲料濃縮物。
【請求項2】
約0.01%〜約2.0%の少なくとも一つの緩衝塩を含む、請求項1に記載の飲料濃縮物。
【請求項3】
前記緩衝塩が、リン酸ナトリウム、リン酸ジナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ジカリウム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸ジナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ジカリウム及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項2に記載の飲料濃縮物。
【請求項4】
前記安定剤が、スクロース、フルクトース、コーンシロップ、マルトデキストリン、D形グルコース、ラクトース、プロピレングリコール及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項1に記載の飲料濃縮物。
【請求項5】
前記溶液が、約60重量%〜約90重量%の固体含有量を含む、請求項1に記載の飲料濃縮物。
【請求項6】
前記溶液が、約0.75〜約0.85の水分活性を含む、請求項1に記載の飲料濃縮物。
【請求項7】
前記溶液が脱気されている、請求項1に記載の飲料濃縮物。
【請求項8】
前記飲料濃縮物が防腐剤を含まない、請求項1に記載の飲料濃縮物。
【請求項9】
前記溶液が殺菌されている、請求項1に記載の飲料濃縮物。
【請求項10】
前記茶固体が約15重量%〜約30重量%である、請求項1に記載の飲料濃縮物。
【請求項11】
前記安定剤が約40重量%〜約60重量%である、請求項1に記載の飲料濃縮物。
【請求項12】
前記水が約20重量%〜約30重量%である、請求項1に記載の飲料濃縮物。
【請求項13】
約10重量%〜約35重量%の茶固体と、
約30重量%〜約70重量%のスクロースと、
約0.01重量%〜約2.0重量%の緩衝塩と、
約15重量%〜約35重量%の水と、
を有する溶液を含む、安定な茶濃縮物。
【請求項14】
前記溶液が、約60重量%〜約90重量%の固体含有量を含む、請求項13に記載の飲料濃縮物。
【請求項15】
前記溶液が、約0.75〜約0.85の水分活性を含む、請求項13に記載の飲料濃縮物。
【請求項16】
前記飲料濃縮物が防腐剤を含まない、請求項13に記載の飲料濃縮物。
【請求項17】
溶液を形成するために、約10重量%〜約35重量%の茶固体と、約30重量%〜約70重量%の安定剤及び約15重量%〜約35重量%の水とを混合するステップを含む、安定な茶濃縮物の製造方法であって、
前記茶固体、前記安定剤及び前記水はそれぞれ、前記溶液から前記茶固体が沈降しない程度の量で加えられる、安定な茶濃縮物の製造方法。
【請求項18】
前記溶液に約0.01%〜約2.0%の少なくとも一つの緩衝塩を加えるステップを含み、前記茶固体、前記安定剤、前記水及び前記緩衝塩はそれぞれ、前記溶液から前記茶固体が沈降しない程度の量で加えられる、請求項19に記載の安定な茶濃縮物の製造方法。
【請求項19】
約10重量%〜約35重量%の茶固体と、
約30重量%〜約70重量%の安定剤と、
約15重量%〜約35重量%の水と、
を有する溶液を含有する飲料濃縮物と、茶香料とを含む飲料製品であって、
前記茶固体、前記安定剤及び水はそれぞれ、前記溶液から前記茶固体が沈降しない程度の量で加えられており、
前記茶香料は、前記飲料濃縮物とは別に貯蔵されており、消費される前に前記飲料製品を調製するために、前記飲料濃縮物に混合される、飲料製品。
【請求項20】
約10重量%〜約35重量%の茶固体と、
約30重量%〜約70重量%の安定剤と、
約15重量%〜約35重量%の濃縮された茶香料と、
を有する溶液を含む飲料濃縮物であって、
前記茶固体、前記安定剤及び前記濃縮された茶香料はそれぞれ、前記溶液から前記茶固体が沈降しない程度の量で加えられる、飲料濃縮物。

【公表番号】特表2009−500024(P2009−500024A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519807(P2008−519807)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002878
【国際公開番号】WO2007/006352
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】