安定処理土の造成方法
【課題】蒸気のもつ熱量を確実に地中に投与して、安定処理土の初期温度の昇温化を図る。
【解決手段】バックホウ1に装着された撹拌混合機3にて原位置土と粉体状の固化材とを撹拌混合して安定処理土とすることで、地盤の強度増加を図る造成方法である。水の供給経路18の途中の合流部19にて蒸気の供給経路24を合流させて両者を混合することで高温水とし、さらに合流部20にて圧縮空気の供給経路21を合流させて両者を混合する。吐出ノズル8から粉体状の固化材を地中吐出するとともに、吐出ノズル9から圧縮空気混じりの高温水を地中吐出し、原土と粉体状の固化材と高温水の三者を撹拌混合することで安定処理土の初期温度を昇温させる。
【解決手段】バックホウ1に装着された撹拌混合機3にて原位置土と粉体状の固化材とを撹拌混合して安定処理土とすることで、地盤の強度増加を図る造成方法である。水の供給経路18の途中の合流部19にて蒸気の供給経路24を合流させて両者を混合することで高温水とし、さらに合流部20にて圧縮空気の供給経路21を合流させて両者を混合する。吐出ノズル8から粉体状の固化材を地中吐出するとともに、吐出ノズル9から圧縮空気混じりの高温水を地中吐出し、原土と粉体状の固化材と高温水の三者を撹拌混合することで安定処理土の初期温度を昇温させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントやセメント系の固化材、あるいは石灰(生石灰)や石灰系の固化材(添加材)等のように水に反応して発熱する無機化合物と原土(原位置土または現位置土)とを攪拌混合して、原土の強度増加を図る安定処理土の造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤対策としての安定処理土の造成(地盤改良)では、セメントやセメント系等の固化材を水で混練りしたセメントスラリ(固化材スラリ)として使用するケースや、セメントやセメント系の固化材あるいは生石灰や石灰系の固化材を粉体状で使用するケースとがある。ここでは、後者の粉体状の固化材を原土(原位置土)と撹拌混合する粉体混合撹拌処理による地盤改良方法について述べる。
【0003】
粉体状の固化材の供給方法には、固化材を原土中に地中噴射するケースと原土上に表面散布するケースとの二つのケースがある。また、原土の土質性状が高含水比であったり、泥炭や高有機質土の場合には固化材スラリでは強度発現が気体できないことがあり、このようなケースにおいては粉体状の固化材が使用される事例が多い。
【0004】
セメントやセメント系の固化材は、酸化カルシウム(CaO)を主成分とする固化材(添加材)であって、当該固化材は原土中の水分との反応(水和反応)によって熱(水和熱)を発する無機化合物である。そして、その水和熱が小さい(発熱温度が低い)と、所期の目的である安定処理土の強度不足(増加強度が小さいこと)が起こることは周知である。
【0005】
ここで、本発明の着眼点である安定処理土の温度(水和反応時の温度)と強度の変化との関係に言及した文献として非特許文献1および非特許文献2がある。これらの非特許文献1,2では、本発明とは観点の異なる寒冷地での施工に際して、安定処理土の低温化もしくは凍結の度合いや養生温度が当該安定化処理土の強度発現に影響を与えるとの報告がなされている。
【0006】
一方、安定処理土の高温化を図る技術として特許文献1に記載のものが提案されている。
【0007】
特許文献1に記載の技術は、軟弱地質強化グラウト工事に供する技術であって、薬液注入剤を地盤中に注入後に注入管を通して追加の熱蒸気をビット先端より吐出噴射させることとしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】佐藤厚子、外2名、『安定処理土の養生温度と発現強度について』,社団法人地盤工学会北海道支部技術報告集第46号,平成18年2月
【非特許文献2】城戸優一郎、外3名、『セメント改良した泥炭における養生温度が改良強度へ与える影響』,社団法人地盤工学会北海道支部技術報告集第48号,平成20年2月
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−168717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
蒸気は、飽和状態の圧力下にあっては飽和温度を維持し、飽和圧力が高ければ高いほど飽和温度も高くなり、飽和圧力に比例して保有する熱エネルギーも高くなるといった特徴を有している。しかし、原土(原位置土)中に吐出された蒸気は、圧力が低下(開放)とともに温度低下を起こし、気体から液体(熱湯)に変化する。そして、蒸気の流れ(移動)は、圧力の高い蒸気が圧力の低い側(開放側)へと移動(流入)し、熱エネルギーが奪われることで凝縮(体積減少)して圧力低下する。その圧力低下したところへ蒸気が流れ込む形態が蒸気の流れである。加えて、飽和蒸気(気体)の比重は100℃で0.598であるのに対し、液体である水は100℃で958.4と約1600倍もの差がある。この差は絶対圧力(押しのけようとする力)の差であり、飽和蒸気の持つ絶対圧力は非常に小さいことを示している。つまり、蒸気状態にあっては高い圧力を有してはいるが、その圧力が物体を押しのける力(絶対圧力)とまでにはならないことを示すものである。
【0011】
これを特許文献1に記載の技術に当てはめるならば、ピット先端より地盤中に吐出噴射された蒸気は、熱エネルギーが吸収されると共に凝縮して圧力低下を起こし、蒸気は液体(熱湯)に変化する。そして、地盤中に空隙があれば蒸気は継続して吐出噴射されるが、蒸気から変化した熱湯や地下水により地盤中に空隙が無くなれば、蒸気自らの圧力(絶対圧力)で地盤や地下水を押しのけることはできずにピット先端は閉塞状態となる。つまり、ピット先端からは、蒸気は閉塞状態となり地盤中には吐出噴射はされなくなる。
【0012】
すなわち、これらの特許文献1に記載の技術は、蒸気の持つ熱エネルギーにより処理土の昇温を図り、その昇温効果として処理土の強度増加を図る技術であって、且つ薬液注入剤や固化材の使用量の低減によるコスト縮減を図ろうとする技術であっても、蒸気の吐出または合流・混合の方法(システム)については具体的に述べられていない。
【0013】
蒸気は、熱エネルギーの保有力は高いが、気体であるがために比重は小さく、絶対圧力が非常に小さいと言う特徴は前述したが、これらの特徴を踏まえた方法または手段によらなければ、蒸気の地盤中への吐出噴射や固化材スラリとの合流はできなくなり、地盤または安定処理土の昇温化は図れず、ひいては処理土の強度増加を図るとの所期の目的を達成できないことになる。言い換えるならば、ボイラーにより予め製造した蒸気が吐出されず、地盤温度が予定した温度まで上がらないと、安定処理土の強度増加は望めず、安定処理土は強度の低下をおこすことになり、なおも改善の余地を残している。
【0014】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、とりわけ前述の蒸気の特徴を踏まえて、ボイラーで製造した蒸気が持つ熱量を原土中に確実に吐出させる方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
初めに、本発明の特定にあたって使用される主な用語の定義をしておけば下記のとおりのものとなる。
【0016】
・原土:改良対象または安定処理対象となる原地盤の土。原位置土または現位置土とも言う。
【0017】
・安定処理:原土と固化材の撹拌混合により土の強度増加を図ること。
【0018】
・安定処理土:安定処理を施すことにより造成された土。
【0019】
・固化材:水と反応して発熱する無機化合物であって、原土に添加し、撹拌混合処理して強度増加を図る材料。セメントやセメント系の固化材および石灰(生石灰)や石灰系の固化材等をいう。
【0020】
・水:固化材スラリを製造する常温の水をいう。地下水、河川水、湖沼水、池の水ならびに水道水等であって、当該施工現場において調達し易い水をスラリ製造用または蒸気製造用の水とする。常温の製造水の温度は季節、地域によって異なるが、一般的には2、3℃〜25℃程度である。
【0021】
・蒸気:産業用ボイラー等により水が加熱され、沸騰・蒸発して気体になったものをいう。ボイラーで発生する蒸気は、基本的には飽和蒸気である。
【0022】
・常温施工:常温スラリにて安定処理を施すことをいう。
【0023】
・高温施工:高温スラリにて安定処理を施すことをいう。
【0024】
・全熱:飽和蒸気が保有する全熱量であって、顕熱と潜熱の和をいう。
【0025】
本発明に係る安定処理土の造成方法は、要約するならば、原土と粉体状の固化材とを撹拌混合して安定処理土とすることで地盤の強度増加を図る方法であって、上記安定処理土の温度を常温施工時の安定処理土の温度よりも高くするために、その昇温化に必要な熱量の蒸気を予め用意しておき、この蒸気または蒸気を熱源とする高温水と固化材および原土の三者を撹拌混合することにある。
【0026】
先に定義もしているが、このように蒸気の熱量を添加して安定処理土の昇温を図る施工方法を高温施工とするならば、従来のように蒸気を添加しないで行う施工方法は常温施工ということができる。
【0027】
このいわゆる高温施工により、従来の常温施工よりも強度増加を図ることが可能となる。すなわち、セメント等の粉体状の固化材の添加量が同一であっても、高温施工のほうが常温施工よりも強度増加を図れるようになる。これは、設計基準強度を同じくするならば、セメント等の粉体状の固化材の添加量の低減となり、経済的、環境的(CO2排出量の低減効果)に良好な結果となる。
【0028】
その上、高温施工によれば、常温施工よりも早く目標強度が得られることになる。すなわち、粉体状の固化材の添加量が同一であっても、高温施工では常温施工よりも早く設計基準強度を満たすことができる。例えば、粉体状の固化材の添加量が同一であっても、常温施工の長期強度(28日強度)が高温施工ならば、3〜7日の短期養生にて設計基準強度とすることができる。
【0029】
結果として、同一の設計基準強度とした時に用いるセメント等の粉体状の固化材の添加量の低減と併せて、例えばセメントの製造に伴い排出されるCO2排出量の低減が図れ、このセメントの添加量の低減が当該セメントに含まれる六価クロムの低減にも繋がることになる。
【0030】
ここで、強度増加または早期強度を求めるためには粉体状の固化材の使用量(添加量)の増量に頼らざるを得ない実情は、セメントおよびセメント系または石灰および石灰系の固化材を用いる地盤改良工法全般において言えることであって、原土と粉体状の固化材との撹拌混合方式の違いによって大きな差異は生じないことは先に述べたとおりである。
【0031】
したがって、本発明は、水と発熱反応する無機化合物であるセメントおよびセメント系の固化材や生石灰(CaO)系の固化材を添加材として原土と撹拌混合して、軟弱な原土の強度増加を図る工法全般に用いることが可能である。撹拌混合方法としては、いわゆるトレンチャー式の撹拌混合機等を用いた垂直撹拌(パワーブレンダー工法)、撹拌ロッドに取り付けられた水平撹拌翼による水平撹拌(CDM工法)等の機械撹拌方式から、固化材スラリを撹拌ロッドから高圧噴射させながらその撹拌ロッドを回転させて撹拌混合する高圧噴射撹拌方式のいずれにも適用可能である。
【発明の効果】
【0032】
いわゆる高温施工を基本とする本発明によれば、セメント等の粉体状の固化材の使用量(添加量)を増量せずとも常温施工に比べて強度増加を図ることが可能であり、経済性に優れるほか、例えば固化材使用量が同一であれば常温施工よりも強度増加が図れる。また、蒸気の使用を前提としていることにより、従来技術よりも熱エネルギーが大きく、これによってもまた熱源設備の低廉化と経済性に寄与することができる。
【0033】
さらに、常温施工よりも早く所期の目標強度(早期強度)が得られることから、早強固化材や固化材の増量をしなくても早い時期に設計基準強度を満たすことができるようになる。加えて、同一設計基準強度を目標とした時に用いる固化材使用量の低減により、材料費の低減、固化材の製造に伴うCO2の排出量の低減、ひいては六価クロムの低減にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る造成方法に用いるトレンチャー式の撹拌混合機の概略構造を示す説明図。
【図2】図1の要部の詳細を示す図で、(A)は図1の要部拡大説明図、(B)は同図(A)の側面説明図。
【図3】本発明に係る造成方法の好ましい実施の形態としてその実施例1を示す図で、図1の撹拌混合機を用いていわゆる高温施工を行う場合の固化材および蒸気の供給システムの概略を示す説明図。
【図4】図3を模式化したフローチャート。
【図5】図3の変形例として供給システムの概略を示す説明図。
【図6】図5を模式化したフローチャート。
【図7】図3,5のシステムにおいて固化材と蒸気の最適な合流位置を検証するための説明図。
【図8】本発明に係る造成方法の好ましい実施の形態としてその実施例2を示す図で、図1の撹拌混合機を用いて高温施工を行う場合の固化材および蒸気の供給システムの概略を示す説明図。
【図9】図8を模式化したフローチャート。
【図10】図8のシステムにおいて圧縮空気と蒸気の最適な合流位置を検証するための説明図。
【図11】図3,5,8における合流部の拡大説明図。
【図12】本発明に係る造成方法の好ましい実施の形態としてその実施例3(表面散布方式)を示す説明図。
【図13】図12の変形例を示す説明図(表面散布方式)。
【図14】図12または図13の表面散布に続く撹拌混合時の説明図。
【図15】図14の撹拌混合に続く整正・転圧時の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明のより具体的な実施の形態について詳しく説明する。
【実施例1】
【0036】
本発明に係る安定処理土の造成方法の実施工に際しては、例えば図1に示すようないわゆるトレンチャー式の撹拌混合機3を用いて行うものとする。
【0037】
撹拌混合機3は、そのフレーム6をベースマシンであるバックホウ1のアーム2に支持させてあり、フレーム6の上下の駆動輪7aおよび従動輪7b間にエンドレスなドライブチェーン4を巻き掛けてあるとともに、そのドライブチェーン4にそれとほぼ直交する複数の撹拌混合翼5(図3参照)を装着してあり、これらの撹拌混合翼5がドライブチェーン4とともに上下方向に周回駆動されることになる。
【0038】
撹拌混合機3におけるフレーム6の先端部には、図2に示すように、周回駆動される複数の撹拌混合翼5と干渉しないように粉体状の固化材のための吐出ノズル8と、水(常温水)と蒸気の合流・混合により製造される高温水のための吐出ノズル9を設けてある。粉体状の固化材のための吐出ノズル8は、後述するように粉体状の固化材を供給するための供給経路17(図3参照)である供給管またはホースの末端に接続されていて、同様に高温水のための吐出ノズル9は高温水を供給するための供給経路18(図3参照)である供給管またはホースの末端に接続されている。
【0039】
そして、この撹拌混合機3をほぼ鉛直姿勢にて原土G中に貫入して、その撹拌混合機3の先端の吐出ノズル8から粉体状の固化材を、吐出ノズル9から高温水をそれぞれ噴射・吐出しながら、撹拌混合機3を同1の左右方向に移動させて、粉体状の固化材と高温水および原土Gとの三者の撹拌混合処理を施すものとする。
【0040】
蒸気の使用を前提とした本発明のいわゆる高温施工では、図3の粉体状の固化材および高温水の供給システムのもとで行うものとする。なお、図3を模式化したフローチャートを図4に示す。
【0041】
図3において、10はセメント等の粉体状の固化材が貯留された固化材サイロ、11はコンプレッサー12が付帯する粉体供給機、13は水(常温水)の貯留部としての水槽、14はグラウトポンプ(圧送ポンプ)、15はボイラー、16はコンプレッサーである。
【0042】
このシステムでの基本機能としては、同図に示すように、固化材供給経路17の最上位に位置する粉体供給機11には、固化材サイロ10から粉体状の固化材が投入されるほか、コンプレッサー12からの圧縮空気が導入されるようになっていて、吐出ノズル8側に向けて粉体状の固化材が圧縮空気を搬送媒体として直接的に空気圧送されることになる。
【0043】
他方、水槽13内の水(常温水)はグラウトポンプ14にて圧送され、そのグラウトポンプ14の後段、すなわち高温水のための吐出ノズル9に向かう供給経路18の途中においてボイラー15からの供給経路24が合流し、水はボイラー15から供給される蒸気(飽和蒸気)と合流・混合される。なお、合流部を符号19で示す。この水と蒸気との合流・混合のために両者は高温水と化した上でなおも吐出ノズル9に向けて圧送される。
【0044】
水の供給経路18は合流部19以降では高温水の供給経路18となり、高温水の供給経路18のうち吐出ノズル9よりも上流側においてコンプレッサー16からの圧縮空気の供給経路21が合流し、高温水にはコンプレッサー16からの圧縮空気が合流・混合される。この圧縮空気の合流・混合のために供給経路18内の高温水は昇圧とともに加速されて吐出ノズル9側に供給されることになる。なお、高温水と圧縮空気との合流部を符号20で示す。つまり、グラウトポンプ14による高温水の供給経路18とコンプレッサー16からの圧縮空気の供給経路21を合流部20にて合流させて、圧縮空気混じりの高温水を吐出ノズル9に向けて圧送することになる。
【0045】
これらの粉体状の固化材と高温水とはそれぞれに独立した供給経路17または供給経路18にて吐出ノズル8または吐出ノズル9に圧送され、粉体状の固化材は吐出ノズル8から原土G中に、高温水は吐出ノズル9から原土G中にそれぞれ吐出された上で、撹拌混合翼5の周回駆動によりその原土Gと撹拌混合されることになる。この粉体状の固化材と高温水との撹拌混合のために原土Gは安定処理土と化し、しかも元々は蒸気が保有していた熱量が投与されることでその安定処理土の昇温化または高温化が図れることになる。つまり、蒸気の熱エネルギーにて固化材の水和反応を助長(水和反応熱をより高く)することが可能となる。
【0046】
なお、図3に示す事例は、粉体状の固化材を粉体供給機11により空気圧送して、その固化材を原土中に吐出しながら撹拌混合するもので、粉体供給機11は本出願人による特開平10−292363号公報にて、粉体状の固化材の吐出ノズル8は特開2006−90119号公報等にてそれぞれ公知のものである。また、撹拌混合機3のほか高温水の吐出ノズル9は特開2003−206526号公報等で公知のものである。もちろん、撹拌混合機3や吐出ノズル8,9は上記以外の任意のタイプのものを用いることもちろん可能である。
【0047】
ここで、グラウトポンプ14によって合流部19に向けて圧送される水はそれ自体で所定の圧力を有しているので、グラウトポンプ14側と吐出ノズル9側との間に所定の圧力差(ヘッドまたは落差)があれば、合流部20でのコンプレッサー16からの圧縮空気の合流は必ずしも必要としない。
【0048】
その一方、グラウトポンプ14と水槽13との間ではグラウトポンプ14の吸入負圧が作用してサクション部(負圧部)となっており、水の供給管内圧力は大気圧と同等または大気圧よりもやや低い状態となっている。故に、水槽13での水の貯留状態によっては、蒸気が水槽13側に逆流することもある。よって、図5に示すように、グラウトポンプ14と合流部19の位置を相互に入れ替えるとともに、合流部19と水の貯留部である水槽13との間に蒸気の逆流防止を目的とする水中ポンプ22を設けるか、または水中ポンプ22に代えてコンプレッサー16からの圧縮空気の供給経路23との合流部23aを設けることが望ましい。
【0049】
ここまでに説明した事例では、高温水の熱源となる蒸気と常温水の安定的な合流・混合のためには、それぞれの供給過程における管内圧力のバランスが重要となる。蒸気の供給管内圧力をSpとし、常温水の供給(圧送)管内圧力をCpとしたとき、SpがCpよりも大きくなる箇所、すなわちSp>Cpの条件を満たす箇所で両者を合流・混合させる必要がある。
【0050】
図7を参照しながら上記Sp>Cpの条件を満たす最適な箇所を検討してみる。水の圧送管内圧力Cpは管内抵抗に大きく依存し、圧送管径や水の圧送量(吐出量)、グラウトポンプ14からの圧送距離、さらには改良深度によっても異なる。改良深度が5m前後であれば、通常の施工範囲におけるグラウトポンプ14の下流側での常温水の圧送管内圧力Cpは、原土G中に臨んでいる高温水のための吐出ノズル9の位置では0.1MPa程度であるが、上流側、すなわちグラウトポンプ14に向かって徐々に高くなり、グラウトポンプ14の直近位置では1.0MPaを超えることもある。
【0051】
他方、蒸気の圧力は、ボイラー15として簡易ボイラーの使用を前提とした場合、その製造圧力は1MPa以下(この値は、ボイラーに関する関連法規にて示されている値)である。よって、安全管理上、簡易ボイラーのゲージ圧力にて0.7〜0.9MPaの範囲にて運転している。さらに、図3,5に示したボイラー15から水との合流部19までに供給される過程でも減圧されることから、その合流部19近くの蒸気の供給管内圧力は0.6〜0.8MPa程度となる。
【0052】
通常の施工範囲におけるグラウトポンプ14の下流側での水の圧送管内圧力Cpは、原土G中に臨んでいる高温水のための吐出ノズル9の位置で0.1MPa程度と最も小さく、グラウトポンプ14側に向かって徐々に大きくなることは先に述べた。本発明者等が測定を行ったところ、図7において、高温水のための吐出ノズル9の位置から上流側100〜200mの範囲、すなわち図7のL1の範囲では常温スラリの圧送管内圧力Cpは概ね0.1〜0.6MPaとなることが判明した。したがって、グラウトポンプ14の下流側においてSp>Cpの条件を満たす箇所は、図7のL1の範囲ということになり、先に説明した図3,4の事例は水と蒸気との合流・混合位置に関してこの条件を満たしていることになる。
【0053】
また、グラウトポンプ14よりも上流側では、水槽13からグラウトポンプ114に自然流入した水が当該グラウトポンプ14によって下流側に圧送されるのに伴って負圧が発生することから、グラウトポンプ14よりも上流側での水の供給管内圧力Cpは大気圧または大気圧以下、すなわち0.1MPa以下となっている。したがって、グラウトポンプ14よりも上流側、すなわち図7のL2の範囲においてもSp>Cpの条件を満たしており、且つ両者の圧力差も大きいことから、当該部位でのいわゆるサクション効果またはエジェクター効果をもって水に対して蒸気を効率良く合流・混合させることができ、図7のL2の範囲が常温水と蒸気との合流・混合位置として最適ということができる。先に説明した図5,6の事例は水と蒸気との合流・混合位置に関してこの条件を満たしていることになる
しかし、前述したように蒸気の圧力と水槽13内の水の貯留状態によっては、蒸気が水槽13側へ逆流することもある。よって、図5,6のように合流部19と水槽13との中間部に水中ポンプ22または圧縮空気の合流部23aを設けることにより蒸気の逆流防止が図れる。合流部19より上流側(水槽側)の水の管内圧力は前述したように大気圧と同等または大気圧以下であるが、水中ポンプ22または圧縮空気との合流により圧送圧力を蒸気の供給管内圧力よりもやや低い圧力に制御し、双方の圧力バランス(Sp>Cp)を維持することで、蒸気の逆流もなく、水と蒸気との合流・混合が安定して行えることになる。
【0054】
なお、ここで用いる水中ポンプ22は、水槽13内の水を自吸できるポンプならば、ロータリーポンプ、モーノポンプ(登録商標)、撹拌ポンプ等のいずれであっても良い。
【0055】
これまでに説明した事例では、高温水が100℃を超えない温度にて施工することが、本発明を実施する上での安全管理上重要なポイントとなる。水が100℃を超えて蒸気化(気化)したときは体積膨張を起こし、その結果として供給管の管内圧力は急上昇する。本発明が対象とする地盤改良現場でのグラウトポンプ14や供給経路には、環境温度を考慮しなければいけない部品等が使われている。例えばグラウトポンプ14には各種のパッキンやメカニカルシールが使われているほか、供給管にはゴム製のグラウトホースが使われていて、多くの場合にその耐熱温度は100℃以下とされる。これらを踏まえて、高温水の温度は100℃を超えないことが望ましく、より安全に本発明を実施するには95℃以下とすることが望ましい。
【実施例2】
【0056】
図8は実施例2として図3のシステムの変形例を示す図であり、図3と共通する部分には同一符号を付してある。なお、図8を模式化したフローチャートを図9に示す。
【0057】
図8のシステムでは、先の実施例1と同様に、セメントや石灰等の粉体状の固化材を直接原土G中に吐出する一方で、蒸気と圧縮空気を合流・混合させた上で直接原土G中に吐出することを前提としたものである。
【0058】
図8のシステムでは、図3では必須とされ水槽13が廃止されていて、コンプレッサー16からの圧縮空気の供給経路21とボイラー15からの蒸気の供給経路24とが、後述する蒸気のための吐出ノズル25の上流側の合流部26にて合流している。また、先に図2に基づいて説明したように、撹拌混合機3の先端には二種類の吐出ノズル8,9が付帯していて、一方の吐出ノズル8が粉体状の固化材のための吐出ノズルとなっていることから、本実施の形態では、粉体状の固化材のための吐出ノズル8はそのまま用いる一方で、先に高温水のための吐出ノズルとして用いた他方の吐出ノズル9を蒸気のための吐出ノズル25として用いることになる。つまり、一方の吐出ノズル8から粉体状の固化材を、他方の吐出ノズル25から蒸気をそれぞれ個別に原土G中に吐出することになる。
【0059】
図10に示すように、通常使用するコンプレッサーにて製造される圧縮空気の圧力は約0.7MPaであるが、実際にコンプレッサーから吐出される時には0.4MPa程度まで減圧される。よって、先の実施例1において図7に基づいて説明したように、蒸気と圧縮空気との合流部26での圧力バランスは、蒸気の供給管内圧力をSpとし、圧縮空気の供給管内圧力をCpとしたとき、SpがCpよりも大きくなる箇所、すなわちSp>Cpの条件を満たす箇所での合流・混合とする。
【0060】
そして、粉体状の固化材および蒸気は、図8の固化材のための吐出ノズル8および蒸気のための吐出ノズル25からそれぞれ個別に原土G中に吐出された上で、撹拌混合機3自体の撹拌混合作用により原土Gと撹拌混合される。これらの粉体状の固化材および蒸気との撹拌混合のために原土Gは安定処理土と化し、しかも元々は蒸気が保有していた熱量が投与されることでその安定処理土の昇温化または高温化が図れることになる。
【0061】
ここで、図3,5の合流部19のほか図8の合流部26として好ましい形態を図11に示す。同図に示すように、水または圧縮空気の供給経路(図3,5の供給経路25または図8の供給経路21)の供給管径をD1とし、蒸気の供給経路(図3,5の供給経路24または図8の供給経路24)の供給管径をD2としたとき、D1>D2となる管径にて合流させることにより、よりスムースな合流・混合が可能となる。加えて、水または圧縮空気の供給経路25または21の供給管に所定曲率の滑らかな曲がり部(屈曲部)27を設けて、該曲がり部27の曲率の外周側にて蒸気の供給経路24となる供給管を合流させることが望ましい。これは、水または圧縮空気の供給経路24となる供給管に曲がり部27を具備させることにより、該曲がり部27の曲率の外周側ほど圧送速度が増加して、その接線方向で負圧状態となるいわゆるエジェクター効果を期待できるようになるからである。
【0062】
次に、原土の土質性状等に応じて、蒸気と水の合流を基本とする実施例1が好ましい場合と、蒸気と圧縮空気の合流を基本とする実施例2が好ましい場合とがあり、これらの実施例1,2の適用範囲について検討してみる。
【0063】
軟弱地盤対策工法としての地盤改良工法では、粉体状の固化材と水とを混練りした固化材スラリと原土とを撹拌混合するケースと、粉体状の固化材と原土と撹拌混合するケースとの二つのケースがある。前者は、比較的扱いやすさもあって多くの地盤改良工法に利用されている。しかしながら、原土の含水比が高い場合や泥炭や高有機質土を改良対象土とする場合には、固化材スラリでは強度の発現が低いこともあり、粉体状の固化材を利用することがある。
【0064】
本発明による技術は、粉体状の固化材と原土とを撹拌混合するケースにおいて、さらに蒸気の熱量を付加することにより安定処理土の昇温化をはかり、強度発現の促進を図ろうとするものである。蒸気と水の合流を基本とする実施例1と、蒸気と圧縮空気の合流を基本とする実施例2の適用範囲は次のとおりである。
【0065】
・実施例1の場合
1)蒸気の長距離圧送には熱量のロスと危険が伴う。よって、ボイラーの設置可能箇所から撹拌混合箇所までの距離が50m以上となる場合には、水との合流による方が安全である。水との合流により蒸気は高温水または熱湯と変化するが、熱エネルギーの長距離供給が可能となると共に、量の増大により熱量のロスが少なくなる。
【0066】
2)比較的高含水な原土に用いるものの、粉体状の固化材を撹拌混合することにより原土中の水が固化材に吸収され、撹拌混合土は粘性度が増加する。これは、撹拌混合機の撹拌抵抗ともなり、混合不良を招く原因ともなる。このようなケースにおいて高温水や熱湯の供給は、撹拌混合土の粘性度低下に有効的な手段となる。ひいては、良好な撹拌混合が可能となり、均質な安定処理土の造成が可能となる。
【0067】
3)上記の目安としては、原土の自然含水比wが該原土の液性限界比WLよりも小さい場合(w≦WL)には、蒸気と水による合流が望ましい。
【0068】
4)粉体状の固化材の水分吸収量と撹拌混合時の固化材の水和反応による発熱および撹拌混合による蒸発等を加味すると0.5w≦WLであっても、蒸気と水の合流による方がよい場合もある。
【0069】
5)上記の3)および4)のケースよりも原土の自然含水比が高い場合であっても、作業の都合上(供給経路が長い場合、蒸気の供給管の配置が困難な場合等)実施例1の方が望ましい場合もある。
【0070】
・実施例2の場合
1)実施例2では、蒸気と圧縮空気を合流させるものの、供給経路中の状態は蒸気の状態である。よって、安全上、熱量損失上ボイラーからの供給距離はできるだけ短い方が好ましい(最大距離であっても、50〜100m以下)。
【0071】
2)原土の土質性状が泥炭や高有機質土であって、水分量の増加が強度の発現に大きく影響を及ぼす場合。
【0072】
3)原土の自然含水比wが該原土の液性限界比WLよりも大きい場合(w≧WL)には、蒸気と圧縮空気による合流が望ましい。
【実施例3】
【0073】
図12〜14は、粉体状の固化材を先の実施例のように地中吐出することなしに地表面に散布する場合の実施例を示す。
【0074】
例えば、図12では容量が1t程度のフレコンバッグ(フレキシブル・コンテナ・バッグ)31に予め収容されている粉体状の固化材をバックホウ32等にて吊り上げた上で、地盤Gの地表面の所定箇所に散布する。小規模工事ではこうしたフレコンバッグ31による表面散布が多い。
【0075】
また、図13はタンクローリー車33を使用した表面散布方式を示し、タンクローリー車33にて積載・入荷した粉体状に固化材を、バックホウ等のベースマシン34に持たせた集塵機付きの散布器35を用いて地表面の所定箇所に散布する。タンクローリー車33の場合には、一車当たり10t程度の固化材を積載収容することが可能であるので、一車分の固化材散布領域を区割りして、その区割り内に散布する。こうしたタンクローリー車33による表面散布は比較的大規模な工事に適用する。
【0076】
フレコンバッグ方式であるかタンクローリー車方式であるかの表面散布方式の相違にかかわらず、地表面に粉体状の固化材が散布されたならば、図14に示すように、図1と同様のトレンチャー式の撹拌混合機3を用いて、所定の深度まで原土と撹拌混合する。この場合、表面に散布した固化材を深度方向へ均一に撹拌混合する必要があることから、必然的に最大深度は3m前後までとなる。
【0077】
先に述べた実施例1および実施例2のいわゆる地中噴射方式の場合には、撹拌混合機3の先端より固化材を吐出させるので、施工可能深度は撹拌混合機3の長さまでは可能である。また、DJM方式ならばさらに深く可能となる。
【0078】
上記の撹拌混合機3による撹拌混合時に、撹拌混合機3の先端部に装着された高温水のための吐出ノズル9(図3参照)または蒸気のための吐出ノズル25(図8参照)より、高温水または蒸気を吐出させて撹拌混合する。この場合に使用するシステムは、図3〜6および図8,9に示すシステムのうちから粉体状の固化材の供給系が省略された同図の枠Q内のものを使用する。
【0079】
この後、図15に示すように、改良後の時地盤Gをバックホウ32等にて整正・転圧して仕上げることになる。
【0080】
ここで、上記各実施例1〜3で使用するボイラー15に着目した場合、日本機械学会が定める水および水蒸気の熱的性質のうち、圧力基準飽和蒸気表での飽和蒸気の圧力、温度および全熱(熱量)は次のとおりである。
【0081】
・蒸気圧400kPa:蒸気温度143.61℃、全熱2738.06kJ/kg
・蒸気圧500kPa:蒸気温度151.84℃、全熱2748.11kJ/kg
・蒸気圧600kPa:蒸気温度165.03℃、全熱2762.10kJ/kg
労働安全衛生法で定めるボイラーの取り扱いには、ボイラー技師免許者やボイラー取扱技能講習修了者でなければ取り扱いできない区分と、特別教育受講者若しくは無資格者であっても取り扱い可能な区分とがある。地盤改良等の現場では、無資格者であっても取り扱い可能な区分となる簡易ボイラーが便宜上使用される。簡易ボイラーの仕様を例示すれば下記のとおりである。
【0082】
一般的には、熱出力として188、251、313、434、459、470kW/台・時の能力を有する簡易ボイラー(例えば、三浦工業(株)社製のもの)が市販されている。これらのボイラーを単独若しくは複数台を組み合わせて使用することにより、必要に応じた幅広い熱量の供給が可能となる。これは、撹拌混合直後の安定処理土の初期温度をより高くする上できわめて有効である。なお、使用するボイラーの能力と発生熱量との関係の一例を示せば下記のとおりである。
【0083】
・例1.熱出力188kWの簡易ボイラー1台での発生熱量
188×(3.6×103)=676800kJ/時=676MJ/時
・例2.熱出力470kWの簡易ボイラー2台での発生熱量
{470×(3.6×103)}×2=3384000kJ/時=3384MJ/時
このように、現場の諸条件を考慮して、機種選択並びに適宜複数台の組み合わせにより676〜3384MJ/時と幅広い熱量の供給が可能となる。
【0084】
これらは、あくまでいわゆる簡易ボイラーを使用した場合の一例にすぎず、簡易ボイラー以外の小型ボイラーあるいはそれよりの大型のボイラー等が使用可能な場合には、さらに大きな発生熱量の供給が可能となる。
【0085】
また、これらの各実施例1〜3においては、粉体状の固化材と撹拌混合した安定処理土に蒸気の保有する熱量(熱エネルギー)を投与する高温施工であって、この蒸気の保有する熱量の投与によって、撹拌混合処理直後の安定処理土の昇温化または高温化を図り、もって施工後の地盤の強度増加を目的とするものであることは先に述べたとおりである。この目的達成にために、先に提示した非特許文献1,2の記載からの示唆および経験的な知見によれば、撹拌混合処理直後の安定処理土の初期温度としては、常温施工(常温施工の定義は先に述べたとおりである。)の場合の撹拌混合直後の安定処理土の初期温度と比べて、少なくとも5℃以上、望ましくは10℃以上高くなるように施工するものとする。そして、その常温施工と比べた場合の昇温量に応じて、蒸気の混合をもって投与すべき熱量、すなわち昇温化に必要な蒸気量を決定する。
【符号の説明】
【0086】
1…バックホウ(ベースマシン)
3…撹拌混合機
8…吐出ノズル
9…吐出ノズル
11…粉体供給機
12…コンプレッサー
13…水槽(水の貯留部)
14…グラウトポンプ
15…ボイラー
18…水(高温水)の供給経路
19…合流部
21…圧縮空気の供給経路
24…蒸気の供給経路
25…吐出ノズル
26…合流部
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントやセメント系の固化材、あるいは石灰(生石灰)や石灰系の固化材(添加材)等のように水に反応して発熱する無機化合物と原土(原位置土または現位置土)とを攪拌混合して、原土の強度増加を図る安定処理土の造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤対策としての安定処理土の造成(地盤改良)では、セメントやセメント系等の固化材を水で混練りしたセメントスラリ(固化材スラリ)として使用するケースや、セメントやセメント系の固化材あるいは生石灰や石灰系の固化材を粉体状で使用するケースとがある。ここでは、後者の粉体状の固化材を原土(原位置土)と撹拌混合する粉体混合撹拌処理による地盤改良方法について述べる。
【0003】
粉体状の固化材の供給方法には、固化材を原土中に地中噴射するケースと原土上に表面散布するケースとの二つのケースがある。また、原土の土質性状が高含水比であったり、泥炭や高有機質土の場合には固化材スラリでは強度発現が気体できないことがあり、このようなケースにおいては粉体状の固化材が使用される事例が多い。
【0004】
セメントやセメント系の固化材は、酸化カルシウム(CaO)を主成分とする固化材(添加材)であって、当該固化材は原土中の水分との反応(水和反応)によって熱(水和熱)を発する無機化合物である。そして、その水和熱が小さい(発熱温度が低い)と、所期の目的である安定処理土の強度不足(増加強度が小さいこと)が起こることは周知である。
【0005】
ここで、本発明の着眼点である安定処理土の温度(水和反応時の温度)と強度の変化との関係に言及した文献として非特許文献1および非特許文献2がある。これらの非特許文献1,2では、本発明とは観点の異なる寒冷地での施工に際して、安定処理土の低温化もしくは凍結の度合いや養生温度が当該安定化処理土の強度発現に影響を与えるとの報告がなされている。
【0006】
一方、安定処理土の高温化を図る技術として特許文献1に記載のものが提案されている。
【0007】
特許文献1に記載の技術は、軟弱地質強化グラウト工事に供する技術であって、薬液注入剤を地盤中に注入後に注入管を通して追加の熱蒸気をビット先端より吐出噴射させることとしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】佐藤厚子、外2名、『安定処理土の養生温度と発現強度について』,社団法人地盤工学会北海道支部技術報告集第46号,平成18年2月
【非特許文献2】城戸優一郎、外3名、『セメント改良した泥炭における養生温度が改良強度へ与える影響』,社団法人地盤工学会北海道支部技術報告集第48号,平成20年2月
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−168717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
蒸気は、飽和状態の圧力下にあっては飽和温度を維持し、飽和圧力が高ければ高いほど飽和温度も高くなり、飽和圧力に比例して保有する熱エネルギーも高くなるといった特徴を有している。しかし、原土(原位置土)中に吐出された蒸気は、圧力が低下(開放)とともに温度低下を起こし、気体から液体(熱湯)に変化する。そして、蒸気の流れ(移動)は、圧力の高い蒸気が圧力の低い側(開放側)へと移動(流入)し、熱エネルギーが奪われることで凝縮(体積減少)して圧力低下する。その圧力低下したところへ蒸気が流れ込む形態が蒸気の流れである。加えて、飽和蒸気(気体)の比重は100℃で0.598であるのに対し、液体である水は100℃で958.4と約1600倍もの差がある。この差は絶対圧力(押しのけようとする力)の差であり、飽和蒸気の持つ絶対圧力は非常に小さいことを示している。つまり、蒸気状態にあっては高い圧力を有してはいるが、その圧力が物体を押しのける力(絶対圧力)とまでにはならないことを示すものである。
【0011】
これを特許文献1に記載の技術に当てはめるならば、ピット先端より地盤中に吐出噴射された蒸気は、熱エネルギーが吸収されると共に凝縮して圧力低下を起こし、蒸気は液体(熱湯)に変化する。そして、地盤中に空隙があれば蒸気は継続して吐出噴射されるが、蒸気から変化した熱湯や地下水により地盤中に空隙が無くなれば、蒸気自らの圧力(絶対圧力)で地盤や地下水を押しのけることはできずにピット先端は閉塞状態となる。つまり、ピット先端からは、蒸気は閉塞状態となり地盤中には吐出噴射はされなくなる。
【0012】
すなわち、これらの特許文献1に記載の技術は、蒸気の持つ熱エネルギーにより処理土の昇温を図り、その昇温効果として処理土の強度増加を図る技術であって、且つ薬液注入剤や固化材の使用量の低減によるコスト縮減を図ろうとする技術であっても、蒸気の吐出または合流・混合の方法(システム)については具体的に述べられていない。
【0013】
蒸気は、熱エネルギーの保有力は高いが、気体であるがために比重は小さく、絶対圧力が非常に小さいと言う特徴は前述したが、これらの特徴を踏まえた方法または手段によらなければ、蒸気の地盤中への吐出噴射や固化材スラリとの合流はできなくなり、地盤または安定処理土の昇温化は図れず、ひいては処理土の強度増加を図るとの所期の目的を達成できないことになる。言い換えるならば、ボイラーにより予め製造した蒸気が吐出されず、地盤温度が予定した温度まで上がらないと、安定処理土の強度増加は望めず、安定処理土は強度の低下をおこすことになり、なおも改善の余地を残している。
【0014】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、とりわけ前述の蒸気の特徴を踏まえて、ボイラーで製造した蒸気が持つ熱量を原土中に確実に吐出させる方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
初めに、本発明の特定にあたって使用される主な用語の定義をしておけば下記のとおりのものとなる。
【0016】
・原土:改良対象または安定処理対象となる原地盤の土。原位置土または現位置土とも言う。
【0017】
・安定処理:原土と固化材の撹拌混合により土の強度増加を図ること。
【0018】
・安定処理土:安定処理を施すことにより造成された土。
【0019】
・固化材:水と反応して発熱する無機化合物であって、原土に添加し、撹拌混合処理して強度増加を図る材料。セメントやセメント系の固化材および石灰(生石灰)や石灰系の固化材等をいう。
【0020】
・水:固化材スラリを製造する常温の水をいう。地下水、河川水、湖沼水、池の水ならびに水道水等であって、当該施工現場において調達し易い水をスラリ製造用または蒸気製造用の水とする。常温の製造水の温度は季節、地域によって異なるが、一般的には2、3℃〜25℃程度である。
【0021】
・蒸気:産業用ボイラー等により水が加熱され、沸騰・蒸発して気体になったものをいう。ボイラーで発生する蒸気は、基本的には飽和蒸気である。
【0022】
・常温施工:常温スラリにて安定処理を施すことをいう。
【0023】
・高温施工:高温スラリにて安定処理を施すことをいう。
【0024】
・全熱:飽和蒸気が保有する全熱量であって、顕熱と潜熱の和をいう。
【0025】
本発明に係る安定処理土の造成方法は、要約するならば、原土と粉体状の固化材とを撹拌混合して安定処理土とすることで地盤の強度増加を図る方法であって、上記安定処理土の温度を常温施工時の安定処理土の温度よりも高くするために、その昇温化に必要な熱量の蒸気を予め用意しておき、この蒸気または蒸気を熱源とする高温水と固化材および原土の三者を撹拌混合することにある。
【0026】
先に定義もしているが、このように蒸気の熱量を添加して安定処理土の昇温を図る施工方法を高温施工とするならば、従来のように蒸気を添加しないで行う施工方法は常温施工ということができる。
【0027】
このいわゆる高温施工により、従来の常温施工よりも強度増加を図ることが可能となる。すなわち、セメント等の粉体状の固化材の添加量が同一であっても、高温施工のほうが常温施工よりも強度増加を図れるようになる。これは、設計基準強度を同じくするならば、セメント等の粉体状の固化材の添加量の低減となり、経済的、環境的(CO2排出量の低減効果)に良好な結果となる。
【0028】
その上、高温施工によれば、常温施工よりも早く目標強度が得られることになる。すなわち、粉体状の固化材の添加量が同一であっても、高温施工では常温施工よりも早く設計基準強度を満たすことができる。例えば、粉体状の固化材の添加量が同一であっても、常温施工の長期強度(28日強度)が高温施工ならば、3〜7日の短期養生にて設計基準強度とすることができる。
【0029】
結果として、同一の設計基準強度とした時に用いるセメント等の粉体状の固化材の添加量の低減と併せて、例えばセメントの製造に伴い排出されるCO2排出量の低減が図れ、このセメントの添加量の低減が当該セメントに含まれる六価クロムの低減にも繋がることになる。
【0030】
ここで、強度増加または早期強度を求めるためには粉体状の固化材の使用量(添加量)の増量に頼らざるを得ない実情は、セメントおよびセメント系または石灰および石灰系の固化材を用いる地盤改良工法全般において言えることであって、原土と粉体状の固化材との撹拌混合方式の違いによって大きな差異は生じないことは先に述べたとおりである。
【0031】
したがって、本発明は、水と発熱反応する無機化合物であるセメントおよびセメント系の固化材や生石灰(CaO)系の固化材を添加材として原土と撹拌混合して、軟弱な原土の強度増加を図る工法全般に用いることが可能である。撹拌混合方法としては、いわゆるトレンチャー式の撹拌混合機等を用いた垂直撹拌(パワーブレンダー工法)、撹拌ロッドに取り付けられた水平撹拌翼による水平撹拌(CDM工法)等の機械撹拌方式から、固化材スラリを撹拌ロッドから高圧噴射させながらその撹拌ロッドを回転させて撹拌混合する高圧噴射撹拌方式のいずれにも適用可能である。
【発明の効果】
【0032】
いわゆる高温施工を基本とする本発明によれば、セメント等の粉体状の固化材の使用量(添加量)を増量せずとも常温施工に比べて強度増加を図ることが可能であり、経済性に優れるほか、例えば固化材使用量が同一であれば常温施工よりも強度増加が図れる。また、蒸気の使用を前提としていることにより、従来技術よりも熱エネルギーが大きく、これによってもまた熱源設備の低廉化と経済性に寄与することができる。
【0033】
さらに、常温施工よりも早く所期の目標強度(早期強度)が得られることから、早強固化材や固化材の増量をしなくても早い時期に設計基準強度を満たすことができるようになる。加えて、同一設計基準強度を目標とした時に用いる固化材使用量の低減により、材料費の低減、固化材の製造に伴うCO2の排出量の低減、ひいては六価クロムの低減にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る造成方法に用いるトレンチャー式の撹拌混合機の概略構造を示す説明図。
【図2】図1の要部の詳細を示す図で、(A)は図1の要部拡大説明図、(B)は同図(A)の側面説明図。
【図3】本発明に係る造成方法の好ましい実施の形態としてその実施例1を示す図で、図1の撹拌混合機を用いていわゆる高温施工を行う場合の固化材および蒸気の供給システムの概略を示す説明図。
【図4】図3を模式化したフローチャート。
【図5】図3の変形例として供給システムの概略を示す説明図。
【図6】図5を模式化したフローチャート。
【図7】図3,5のシステムにおいて固化材と蒸気の最適な合流位置を検証するための説明図。
【図8】本発明に係る造成方法の好ましい実施の形態としてその実施例2を示す図で、図1の撹拌混合機を用いて高温施工を行う場合の固化材および蒸気の供給システムの概略を示す説明図。
【図9】図8を模式化したフローチャート。
【図10】図8のシステムにおいて圧縮空気と蒸気の最適な合流位置を検証するための説明図。
【図11】図3,5,8における合流部の拡大説明図。
【図12】本発明に係る造成方法の好ましい実施の形態としてその実施例3(表面散布方式)を示す説明図。
【図13】図12の変形例を示す説明図(表面散布方式)。
【図14】図12または図13の表面散布に続く撹拌混合時の説明図。
【図15】図14の撹拌混合に続く整正・転圧時の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明のより具体的な実施の形態について詳しく説明する。
【実施例1】
【0036】
本発明に係る安定処理土の造成方法の実施工に際しては、例えば図1に示すようないわゆるトレンチャー式の撹拌混合機3を用いて行うものとする。
【0037】
撹拌混合機3は、そのフレーム6をベースマシンであるバックホウ1のアーム2に支持させてあり、フレーム6の上下の駆動輪7aおよび従動輪7b間にエンドレスなドライブチェーン4を巻き掛けてあるとともに、そのドライブチェーン4にそれとほぼ直交する複数の撹拌混合翼5(図3参照)を装着してあり、これらの撹拌混合翼5がドライブチェーン4とともに上下方向に周回駆動されることになる。
【0038】
撹拌混合機3におけるフレーム6の先端部には、図2に示すように、周回駆動される複数の撹拌混合翼5と干渉しないように粉体状の固化材のための吐出ノズル8と、水(常温水)と蒸気の合流・混合により製造される高温水のための吐出ノズル9を設けてある。粉体状の固化材のための吐出ノズル8は、後述するように粉体状の固化材を供給するための供給経路17(図3参照)である供給管またはホースの末端に接続されていて、同様に高温水のための吐出ノズル9は高温水を供給するための供給経路18(図3参照)である供給管またはホースの末端に接続されている。
【0039】
そして、この撹拌混合機3をほぼ鉛直姿勢にて原土G中に貫入して、その撹拌混合機3の先端の吐出ノズル8から粉体状の固化材を、吐出ノズル9から高温水をそれぞれ噴射・吐出しながら、撹拌混合機3を同1の左右方向に移動させて、粉体状の固化材と高温水および原土Gとの三者の撹拌混合処理を施すものとする。
【0040】
蒸気の使用を前提とした本発明のいわゆる高温施工では、図3の粉体状の固化材および高温水の供給システムのもとで行うものとする。なお、図3を模式化したフローチャートを図4に示す。
【0041】
図3において、10はセメント等の粉体状の固化材が貯留された固化材サイロ、11はコンプレッサー12が付帯する粉体供給機、13は水(常温水)の貯留部としての水槽、14はグラウトポンプ(圧送ポンプ)、15はボイラー、16はコンプレッサーである。
【0042】
このシステムでの基本機能としては、同図に示すように、固化材供給経路17の最上位に位置する粉体供給機11には、固化材サイロ10から粉体状の固化材が投入されるほか、コンプレッサー12からの圧縮空気が導入されるようになっていて、吐出ノズル8側に向けて粉体状の固化材が圧縮空気を搬送媒体として直接的に空気圧送されることになる。
【0043】
他方、水槽13内の水(常温水)はグラウトポンプ14にて圧送され、そのグラウトポンプ14の後段、すなわち高温水のための吐出ノズル9に向かう供給経路18の途中においてボイラー15からの供給経路24が合流し、水はボイラー15から供給される蒸気(飽和蒸気)と合流・混合される。なお、合流部を符号19で示す。この水と蒸気との合流・混合のために両者は高温水と化した上でなおも吐出ノズル9に向けて圧送される。
【0044】
水の供給経路18は合流部19以降では高温水の供給経路18となり、高温水の供給経路18のうち吐出ノズル9よりも上流側においてコンプレッサー16からの圧縮空気の供給経路21が合流し、高温水にはコンプレッサー16からの圧縮空気が合流・混合される。この圧縮空気の合流・混合のために供給経路18内の高温水は昇圧とともに加速されて吐出ノズル9側に供給されることになる。なお、高温水と圧縮空気との合流部を符号20で示す。つまり、グラウトポンプ14による高温水の供給経路18とコンプレッサー16からの圧縮空気の供給経路21を合流部20にて合流させて、圧縮空気混じりの高温水を吐出ノズル9に向けて圧送することになる。
【0045】
これらの粉体状の固化材と高温水とはそれぞれに独立した供給経路17または供給経路18にて吐出ノズル8または吐出ノズル9に圧送され、粉体状の固化材は吐出ノズル8から原土G中に、高温水は吐出ノズル9から原土G中にそれぞれ吐出された上で、撹拌混合翼5の周回駆動によりその原土Gと撹拌混合されることになる。この粉体状の固化材と高温水との撹拌混合のために原土Gは安定処理土と化し、しかも元々は蒸気が保有していた熱量が投与されることでその安定処理土の昇温化または高温化が図れることになる。つまり、蒸気の熱エネルギーにて固化材の水和反応を助長(水和反応熱をより高く)することが可能となる。
【0046】
なお、図3に示す事例は、粉体状の固化材を粉体供給機11により空気圧送して、その固化材を原土中に吐出しながら撹拌混合するもので、粉体供給機11は本出願人による特開平10−292363号公報にて、粉体状の固化材の吐出ノズル8は特開2006−90119号公報等にてそれぞれ公知のものである。また、撹拌混合機3のほか高温水の吐出ノズル9は特開2003−206526号公報等で公知のものである。もちろん、撹拌混合機3や吐出ノズル8,9は上記以外の任意のタイプのものを用いることもちろん可能である。
【0047】
ここで、グラウトポンプ14によって合流部19に向けて圧送される水はそれ自体で所定の圧力を有しているので、グラウトポンプ14側と吐出ノズル9側との間に所定の圧力差(ヘッドまたは落差)があれば、合流部20でのコンプレッサー16からの圧縮空気の合流は必ずしも必要としない。
【0048】
その一方、グラウトポンプ14と水槽13との間ではグラウトポンプ14の吸入負圧が作用してサクション部(負圧部)となっており、水の供給管内圧力は大気圧と同等または大気圧よりもやや低い状態となっている。故に、水槽13での水の貯留状態によっては、蒸気が水槽13側に逆流することもある。よって、図5に示すように、グラウトポンプ14と合流部19の位置を相互に入れ替えるとともに、合流部19と水の貯留部である水槽13との間に蒸気の逆流防止を目的とする水中ポンプ22を設けるか、または水中ポンプ22に代えてコンプレッサー16からの圧縮空気の供給経路23との合流部23aを設けることが望ましい。
【0049】
ここまでに説明した事例では、高温水の熱源となる蒸気と常温水の安定的な合流・混合のためには、それぞれの供給過程における管内圧力のバランスが重要となる。蒸気の供給管内圧力をSpとし、常温水の供給(圧送)管内圧力をCpとしたとき、SpがCpよりも大きくなる箇所、すなわちSp>Cpの条件を満たす箇所で両者を合流・混合させる必要がある。
【0050】
図7を参照しながら上記Sp>Cpの条件を満たす最適な箇所を検討してみる。水の圧送管内圧力Cpは管内抵抗に大きく依存し、圧送管径や水の圧送量(吐出量)、グラウトポンプ14からの圧送距離、さらには改良深度によっても異なる。改良深度が5m前後であれば、通常の施工範囲におけるグラウトポンプ14の下流側での常温水の圧送管内圧力Cpは、原土G中に臨んでいる高温水のための吐出ノズル9の位置では0.1MPa程度であるが、上流側、すなわちグラウトポンプ14に向かって徐々に高くなり、グラウトポンプ14の直近位置では1.0MPaを超えることもある。
【0051】
他方、蒸気の圧力は、ボイラー15として簡易ボイラーの使用を前提とした場合、その製造圧力は1MPa以下(この値は、ボイラーに関する関連法規にて示されている値)である。よって、安全管理上、簡易ボイラーのゲージ圧力にて0.7〜0.9MPaの範囲にて運転している。さらに、図3,5に示したボイラー15から水との合流部19までに供給される過程でも減圧されることから、その合流部19近くの蒸気の供給管内圧力は0.6〜0.8MPa程度となる。
【0052】
通常の施工範囲におけるグラウトポンプ14の下流側での水の圧送管内圧力Cpは、原土G中に臨んでいる高温水のための吐出ノズル9の位置で0.1MPa程度と最も小さく、グラウトポンプ14側に向かって徐々に大きくなることは先に述べた。本発明者等が測定を行ったところ、図7において、高温水のための吐出ノズル9の位置から上流側100〜200mの範囲、すなわち図7のL1の範囲では常温スラリの圧送管内圧力Cpは概ね0.1〜0.6MPaとなることが判明した。したがって、グラウトポンプ14の下流側においてSp>Cpの条件を満たす箇所は、図7のL1の範囲ということになり、先に説明した図3,4の事例は水と蒸気との合流・混合位置に関してこの条件を満たしていることになる。
【0053】
また、グラウトポンプ14よりも上流側では、水槽13からグラウトポンプ114に自然流入した水が当該グラウトポンプ14によって下流側に圧送されるのに伴って負圧が発生することから、グラウトポンプ14よりも上流側での水の供給管内圧力Cpは大気圧または大気圧以下、すなわち0.1MPa以下となっている。したがって、グラウトポンプ14よりも上流側、すなわち図7のL2の範囲においてもSp>Cpの条件を満たしており、且つ両者の圧力差も大きいことから、当該部位でのいわゆるサクション効果またはエジェクター効果をもって水に対して蒸気を効率良く合流・混合させることができ、図7のL2の範囲が常温水と蒸気との合流・混合位置として最適ということができる。先に説明した図5,6の事例は水と蒸気との合流・混合位置に関してこの条件を満たしていることになる
しかし、前述したように蒸気の圧力と水槽13内の水の貯留状態によっては、蒸気が水槽13側へ逆流することもある。よって、図5,6のように合流部19と水槽13との中間部に水中ポンプ22または圧縮空気の合流部23aを設けることにより蒸気の逆流防止が図れる。合流部19より上流側(水槽側)の水の管内圧力は前述したように大気圧と同等または大気圧以下であるが、水中ポンプ22または圧縮空気との合流により圧送圧力を蒸気の供給管内圧力よりもやや低い圧力に制御し、双方の圧力バランス(Sp>Cp)を維持することで、蒸気の逆流もなく、水と蒸気との合流・混合が安定して行えることになる。
【0054】
なお、ここで用いる水中ポンプ22は、水槽13内の水を自吸できるポンプならば、ロータリーポンプ、モーノポンプ(登録商標)、撹拌ポンプ等のいずれであっても良い。
【0055】
これまでに説明した事例では、高温水が100℃を超えない温度にて施工することが、本発明を実施する上での安全管理上重要なポイントとなる。水が100℃を超えて蒸気化(気化)したときは体積膨張を起こし、その結果として供給管の管内圧力は急上昇する。本発明が対象とする地盤改良現場でのグラウトポンプ14や供給経路には、環境温度を考慮しなければいけない部品等が使われている。例えばグラウトポンプ14には各種のパッキンやメカニカルシールが使われているほか、供給管にはゴム製のグラウトホースが使われていて、多くの場合にその耐熱温度は100℃以下とされる。これらを踏まえて、高温水の温度は100℃を超えないことが望ましく、より安全に本発明を実施するには95℃以下とすることが望ましい。
【実施例2】
【0056】
図8は実施例2として図3のシステムの変形例を示す図であり、図3と共通する部分には同一符号を付してある。なお、図8を模式化したフローチャートを図9に示す。
【0057】
図8のシステムでは、先の実施例1と同様に、セメントや石灰等の粉体状の固化材を直接原土G中に吐出する一方で、蒸気と圧縮空気を合流・混合させた上で直接原土G中に吐出することを前提としたものである。
【0058】
図8のシステムでは、図3では必須とされ水槽13が廃止されていて、コンプレッサー16からの圧縮空気の供給経路21とボイラー15からの蒸気の供給経路24とが、後述する蒸気のための吐出ノズル25の上流側の合流部26にて合流している。また、先に図2に基づいて説明したように、撹拌混合機3の先端には二種類の吐出ノズル8,9が付帯していて、一方の吐出ノズル8が粉体状の固化材のための吐出ノズルとなっていることから、本実施の形態では、粉体状の固化材のための吐出ノズル8はそのまま用いる一方で、先に高温水のための吐出ノズルとして用いた他方の吐出ノズル9を蒸気のための吐出ノズル25として用いることになる。つまり、一方の吐出ノズル8から粉体状の固化材を、他方の吐出ノズル25から蒸気をそれぞれ個別に原土G中に吐出することになる。
【0059】
図10に示すように、通常使用するコンプレッサーにて製造される圧縮空気の圧力は約0.7MPaであるが、実際にコンプレッサーから吐出される時には0.4MPa程度まで減圧される。よって、先の実施例1において図7に基づいて説明したように、蒸気と圧縮空気との合流部26での圧力バランスは、蒸気の供給管内圧力をSpとし、圧縮空気の供給管内圧力をCpとしたとき、SpがCpよりも大きくなる箇所、すなわちSp>Cpの条件を満たす箇所での合流・混合とする。
【0060】
そして、粉体状の固化材および蒸気は、図8の固化材のための吐出ノズル8および蒸気のための吐出ノズル25からそれぞれ個別に原土G中に吐出された上で、撹拌混合機3自体の撹拌混合作用により原土Gと撹拌混合される。これらの粉体状の固化材および蒸気との撹拌混合のために原土Gは安定処理土と化し、しかも元々は蒸気が保有していた熱量が投与されることでその安定処理土の昇温化または高温化が図れることになる。
【0061】
ここで、図3,5の合流部19のほか図8の合流部26として好ましい形態を図11に示す。同図に示すように、水または圧縮空気の供給経路(図3,5の供給経路25または図8の供給経路21)の供給管径をD1とし、蒸気の供給経路(図3,5の供給経路24または図8の供給経路24)の供給管径をD2としたとき、D1>D2となる管径にて合流させることにより、よりスムースな合流・混合が可能となる。加えて、水または圧縮空気の供給経路25または21の供給管に所定曲率の滑らかな曲がり部(屈曲部)27を設けて、該曲がり部27の曲率の外周側にて蒸気の供給経路24となる供給管を合流させることが望ましい。これは、水または圧縮空気の供給経路24となる供給管に曲がり部27を具備させることにより、該曲がり部27の曲率の外周側ほど圧送速度が増加して、その接線方向で負圧状態となるいわゆるエジェクター効果を期待できるようになるからである。
【0062】
次に、原土の土質性状等に応じて、蒸気と水の合流を基本とする実施例1が好ましい場合と、蒸気と圧縮空気の合流を基本とする実施例2が好ましい場合とがあり、これらの実施例1,2の適用範囲について検討してみる。
【0063】
軟弱地盤対策工法としての地盤改良工法では、粉体状の固化材と水とを混練りした固化材スラリと原土とを撹拌混合するケースと、粉体状の固化材と原土と撹拌混合するケースとの二つのケースがある。前者は、比較的扱いやすさもあって多くの地盤改良工法に利用されている。しかしながら、原土の含水比が高い場合や泥炭や高有機質土を改良対象土とする場合には、固化材スラリでは強度の発現が低いこともあり、粉体状の固化材を利用することがある。
【0064】
本発明による技術は、粉体状の固化材と原土とを撹拌混合するケースにおいて、さらに蒸気の熱量を付加することにより安定処理土の昇温化をはかり、強度発現の促進を図ろうとするものである。蒸気と水の合流を基本とする実施例1と、蒸気と圧縮空気の合流を基本とする実施例2の適用範囲は次のとおりである。
【0065】
・実施例1の場合
1)蒸気の長距離圧送には熱量のロスと危険が伴う。よって、ボイラーの設置可能箇所から撹拌混合箇所までの距離が50m以上となる場合には、水との合流による方が安全である。水との合流により蒸気は高温水または熱湯と変化するが、熱エネルギーの長距離供給が可能となると共に、量の増大により熱量のロスが少なくなる。
【0066】
2)比較的高含水な原土に用いるものの、粉体状の固化材を撹拌混合することにより原土中の水が固化材に吸収され、撹拌混合土は粘性度が増加する。これは、撹拌混合機の撹拌抵抗ともなり、混合不良を招く原因ともなる。このようなケースにおいて高温水や熱湯の供給は、撹拌混合土の粘性度低下に有効的な手段となる。ひいては、良好な撹拌混合が可能となり、均質な安定処理土の造成が可能となる。
【0067】
3)上記の目安としては、原土の自然含水比wが該原土の液性限界比WLよりも小さい場合(w≦WL)には、蒸気と水による合流が望ましい。
【0068】
4)粉体状の固化材の水分吸収量と撹拌混合時の固化材の水和反応による発熱および撹拌混合による蒸発等を加味すると0.5w≦WLであっても、蒸気と水の合流による方がよい場合もある。
【0069】
5)上記の3)および4)のケースよりも原土の自然含水比が高い場合であっても、作業の都合上(供給経路が長い場合、蒸気の供給管の配置が困難な場合等)実施例1の方が望ましい場合もある。
【0070】
・実施例2の場合
1)実施例2では、蒸気と圧縮空気を合流させるものの、供給経路中の状態は蒸気の状態である。よって、安全上、熱量損失上ボイラーからの供給距離はできるだけ短い方が好ましい(最大距離であっても、50〜100m以下)。
【0071】
2)原土の土質性状が泥炭や高有機質土であって、水分量の増加が強度の発現に大きく影響を及ぼす場合。
【0072】
3)原土の自然含水比wが該原土の液性限界比WLよりも大きい場合(w≧WL)には、蒸気と圧縮空気による合流が望ましい。
【実施例3】
【0073】
図12〜14は、粉体状の固化材を先の実施例のように地中吐出することなしに地表面に散布する場合の実施例を示す。
【0074】
例えば、図12では容量が1t程度のフレコンバッグ(フレキシブル・コンテナ・バッグ)31に予め収容されている粉体状の固化材をバックホウ32等にて吊り上げた上で、地盤Gの地表面の所定箇所に散布する。小規模工事ではこうしたフレコンバッグ31による表面散布が多い。
【0075】
また、図13はタンクローリー車33を使用した表面散布方式を示し、タンクローリー車33にて積載・入荷した粉体状に固化材を、バックホウ等のベースマシン34に持たせた集塵機付きの散布器35を用いて地表面の所定箇所に散布する。タンクローリー車33の場合には、一車当たり10t程度の固化材を積載収容することが可能であるので、一車分の固化材散布領域を区割りして、その区割り内に散布する。こうしたタンクローリー車33による表面散布は比較的大規模な工事に適用する。
【0076】
フレコンバッグ方式であるかタンクローリー車方式であるかの表面散布方式の相違にかかわらず、地表面に粉体状の固化材が散布されたならば、図14に示すように、図1と同様のトレンチャー式の撹拌混合機3を用いて、所定の深度まで原土と撹拌混合する。この場合、表面に散布した固化材を深度方向へ均一に撹拌混合する必要があることから、必然的に最大深度は3m前後までとなる。
【0077】
先に述べた実施例1および実施例2のいわゆる地中噴射方式の場合には、撹拌混合機3の先端より固化材を吐出させるので、施工可能深度は撹拌混合機3の長さまでは可能である。また、DJM方式ならばさらに深く可能となる。
【0078】
上記の撹拌混合機3による撹拌混合時に、撹拌混合機3の先端部に装着された高温水のための吐出ノズル9(図3参照)または蒸気のための吐出ノズル25(図8参照)より、高温水または蒸気を吐出させて撹拌混合する。この場合に使用するシステムは、図3〜6および図8,9に示すシステムのうちから粉体状の固化材の供給系が省略された同図の枠Q内のものを使用する。
【0079】
この後、図15に示すように、改良後の時地盤Gをバックホウ32等にて整正・転圧して仕上げることになる。
【0080】
ここで、上記各実施例1〜3で使用するボイラー15に着目した場合、日本機械学会が定める水および水蒸気の熱的性質のうち、圧力基準飽和蒸気表での飽和蒸気の圧力、温度および全熱(熱量)は次のとおりである。
【0081】
・蒸気圧400kPa:蒸気温度143.61℃、全熱2738.06kJ/kg
・蒸気圧500kPa:蒸気温度151.84℃、全熱2748.11kJ/kg
・蒸気圧600kPa:蒸気温度165.03℃、全熱2762.10kJ/kg
労働安全衛生法で定めるボイラーの取り扱いには、ボイラー技師免許者やボイラー取扱技能講習修了者でなければ取り扱いできない区分と、特別教育受講者若しくは無資格者であっても取り扱い可能な区分とがある。地盤改良等の現場では、無資格者であっても取り扱い可能な区分となる簡易ボイラーが便宜上使用される。簡易ボイラーの仕様を例示すれば下記のとおりである。
【0082】
一般的には、熱出力として188、251、313、434、459、470kW/台・時の能力を有する簡易ボイラー(例えば、三浦工業(株)社製のもの)が市販されている。これらのボイラーを単独若しくは複数台を組み合わせて使用することにより、必要に応じた幅広い熱量の供給が可能となる。これは、撹拌混合直後の安定処理土の初期温度をより高くする上できわめて有効である。なお、使用するボイラーの能力と発生熱量との関係の一例を示せば下記のとおりである。
【0083】
・例1.熱出力188kWの簡易ボイラー1台での発生熱量
188×(3.6×103)=676800kJ/時=676MJ/時
・例2.熱出力470kWの簡易ボイラー2台での発生熱量
{470×(3.6×103)}×2=3384000kJ/時=3384MJ/時
このように、現場の諸条件を考慮して、機種選択並びに適宜複数台の組み合わせにより676〜3384MJ/時と幅広い熱量の供給が可能となる。
【0084】
これらは、あくまでいわゆる簡易ボイラーを使用した場合の一例にすぎず、簡易ボイラー以外の小型ボイラーあるいはそれよりの大型のボイラー等が使用可能な場合には、さらに大きな発生熱量の供給が可能となる。
【0085】
また、これらの各実施例1〜3においては、粉体状の固化材と撹拌混合した安定処理土に蒸気の保有する熱量(熱エネルギー)を投与する高温施工であって、この蒸気の保有する熱量の投与によって、撹拌混合処理直後の安定処理土の昇温化または高温化を図り、もって施工後の地盤の強度増加を目的とするものであることは先に述べたとおりである。この目的達成にために、先に提示した非特許文献1,2の記載からの示唆および経験的な知見によれば、撹拌混合処理直後の安定処理土の初期温度としては、常温施工(常温施工の定義は先に述べたとおりである。)の場合の撹拌混合直後の安定処理土の初期温度と比べて、少なくとも5℃以上、望ましくは10℃以上高くなるように施工するものとする。そして、その常温施工と比べた場合の昇温量に応じて、蒸気の混合をもって投与すべき熱量、すなわち昇温化に必要な蒸気量を決定する。
【符号の説明】
【0086】
1…バックホウ(ベースマシン)
3…撹拌混合機
8…吐出ノズル
9…吐出ノズル
11…粉体供給機
12…コンプレッサー
13…水槽(水の貯留部)
14…グラウトポンプ
15…ボイラー
18…水(高温水)の供給経路
19…合流部
21…圧縮空気の供給経路
24…蒸気の供給経路
25…吐出ノズル
26…合流部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原土と粉体状の固化材とを撹拌混合して安定処理土とすることで地盤の強度増加を図る安定処理土の造成方法であって、
水の供給経路の途中に蒸気の供給経路を合流させて高温水とした上で原土中に吐出して、
原土と粉体状の固化材と高温水の三者を撹拌混合することで安定処理土の初期温度を昇温させることを特徴とする安定処理土の造成方法。
【請求項2】
前記水と蒸気との合流箇所において、
蒸気の供給経路の管内圧力をSpとし、水の供給経路の管内圧力をCpとしたとき、Sp>Cpなる箇所にて水の供給経路と蒸気の供給経路とを合流させることを特徴とする請求項1に記載の安定処理土の造成方法。
【請求項3】
前記水と蒸気との合流箇所から水の貯留部までの中間部において蒸気の逆流防止措置を施すことを特徴とする請求項2に記載の安定処理土の造成方法。
【請求項4】
前記水の供給経路の管径をD1、蒸気の供給経路の管径をD2としたときに、D1>D2となる管径にて合流させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の安定処理土の造成方法。
【請求項5】
原土と粉体状の固化材とを撹拌混合して安定処理土とすることで地盤の強度増加を図る安定処理土の造成方法であって、
圧縮空気の供給経路の途中に蒸気の供給経路を合流させた上で原土中に吐出して、
原土と粉体状の固化材と蒸気の三者を撹拌混合することで安定処理土の初期温度を昇温させることを特徴とする安定処理土の造成方法。
【請求項6】
前記圧縮空気と蒸気との合流箇所において、
蒸気の供給経路の管内圧力をSpとし、圧縮空気の供給経路の管内圧力をCpとしたとき、Sp>Cpなる箇所にて圧縮空気の供給経路と蒸気の供給経路とを合流させることを特徴とする請求項5に記載の安定処理土の造成方法。
【請求項7】
前記圧縮空気の供給経路の管径をD1、蒸気の供給経路の管径をD2としたときに、D1>D2となる管径にて合流させることを特徴とする請求項5または6に記載の安定処理土の造成方法。
【請求項8】
前記原土との撹拌混合に先立って、圧縮空気により圧送されてくる粉体状の固化材を原土中に吐出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の安定処理土の造成方法。
【請求項9】
前記原土との撹拌混合に先立って、原土の表面上に粉体状の固化材を散布することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の安定処理土の造成方法。
【請求項1】
原土と粉体状の固化材とを撹拌混合して安定処理土とすることで地盤の強度増加を図る安定処理土の造成方法であって、
水の供給経路の途中に蒸気の供給経路を合流させて高温水とした上で原土中に吐出して、
原土と粉体状の固化材と高温水の三者を撹拌混合することで安定処理土の初期温度を昇温させることを特徴とする安定処理土の造成方法。
【請求項2】
前記水と蒸気との合流箇所において、
蒸気の供給経路の管内圧力をSpとし、水の供給経路の管内圧力をCpとしたとき、Sp>Cpなる箇所にて水の供給経路と蒸気の供給経路とを合流させることを特徴とする請求項1に記載の安定処理土の造成方法。
【請求項3】
前記水と蒸気との合流箇所から水の貯留部までの中間部において蒸気の逆流防止措置を施すことを特徴とする請求項2に記載の安定処理土の造成方法。
【請求項4】
前記水の供給経路の管径をD1、蒸気の供給経路の管径をD2としたときに、D1>D2となる管径にて合流させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の安定処理土の造成方法。
【請求項5】
原土と粉体状の固化材とを撹拌混合して安定処理土とすることで地盤の強度増加を図る安定処理土の造成方法であって、
圧縮空気の供給経路の途中に蒸気の供給経路を合流させた上で原土中に吐出して、
原土と粉体状の固化材と蒸気の三者を撹拌混合することで安定処理土の初期温度を昇温させることを特徴とする安定処理土の造成方法。
【請求項6】
前記圧縮空気と蒸気との合流箇所において、
蒸気の供給経路の管内圧力をSpとし、圧縮空気の供給経路の管内圧力をCpとしたとき、Sp>Cpなる箇所にて圧縮空気の供給経路と蒸気の供給経路とを合流させることを特徴とする請求項5に記載の安定処理土の造成方法。
【請求項7】
前記圧縮空気の供給経路の管径をD1、蒸気の供給経路の管径をD2としたときに、D1>D2となる管径にて合流させることを特徴とする請求項5または6に記載の安定処理土の造成方法。
【請求項8】
前記原土との撹拌混合に先立って、圧縮空気により圧送されてくる粉体状の固化材を原土中に吐出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の安定処理土の造成方法。
【請求項9】
前記原土との撹拌混合に先立って、原土の表面上に粉体状の固化材を散布することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の安定処理土の造成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−17625(P2012−17625A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156723(P2010−156723)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【特許番号】特許第4610676号(P4610676)
【特許公報発行日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000140694)株式会社加藤建設 (50)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【特許番号】特許第4610676号(P4610676)
【特許公報発行日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000140694)株式会社加藤建設 (50)
【Fターム(参考)】
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