説明

安定化された含ハロゲン樹脂組成物

【課題】プレートアウトの問題も発生しやすい多価アルコールの樹脂中での分散不良、相溶性の悪さ、揮発性を克服し、しかもその配合量を下げた安定化された含ハロゲン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】水酸化カルシウム系固溶体及びハイドロカルマイト類の少なくとも1種以上の水酸化カルシウム系化合物と多価アルコールを混合加熱することにより、多価アルコールが水酸化カルシウム系化合物に吸着反応した複合体を形成し、これを含ハロゲン樹脂に添加することにより、含ハロゲン樹脂の安定化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化された含ハロゲン樹脂組成物および安定剤に関する。さらに詳しくは、水酸化カルシウム系化合物と多価アルコールとの複合体を含有する安定化された含ハロゲン樹脂組成物および安定剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ジペンタエリスリトール等の多価アルコールは、ステアリン酸カルシウム等の金属石けんとかハイドロタルサイト等の無毒性安定剤と併用すると、ポリ塩化ビニル等の含ハロゲン樹脂の熱安定性を相乗的に改良するため必須に近い安定助剤として広く使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、多価アルコールはハロゲン含有樹脂との相溶性と分散性が悪いため、成形体表面に移行し易く、プレートアウトの原因になる。また、安定剤の中では高価で配合量が多い問題もある。したがって、本発明の目的は、多価アルコールの樹脂中での分散不良、相溶性の悪さ、揮発性を克服し、しかもその配合量を下げることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、下記式(1)
【0005】
【化1】

(但し、式中、M2+はMg,ZnおよびCuの2価金属の少なくとも1種以上、An−はn価のアニオンを示し、x,y,mおよびnはそれぞれ次の範囲にある。0≦x<0.3,0≦y<0.4,0≦m<4,nは整数)で表される水酸化カルシウム、水酸化カルシウムに2価金属が固溶した水酸化カルシウム系固溶体および、ハイドロカルマイト類の少なくとも1種以上の水酸化カルシウム系化合物と多価アルコールとの複合体を含有する安定化された含ハロゲン樹脂組成物を提供する。
【0006】
さらに本発明は、該水酸化カルシウム系化合物と多価アルコールとの複合体を有効成分とする安定剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、初期着色性と熱安定性を改善し、高価でしかも配合量が多い多価アルコールの配合量を低減できると共に、プレートアウト性も低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いる水酸化カルシウム系化合物は、水酸化カルシウム、Mg,ZnおよびCuの少なくとも1種以上が固溶した水酸化カルシウム系固溶体、Alが固溶したハイドロカルマイト類のいずれか1種以上、好ましくは、水酸化カルシウムおよび水酸化カルシウム系固溶体である。水酸化カルシウム系固溶体は、水酸化カルシウムに2価金属(Mg,Zn,Cu)の少なくとも1種以上が固溶した、水酸化カルシウムの結晶構造を持つ化合物であり、下記式(2)
【0009】
【化2】

(但し、式中、M2+はMg、ZnおよびCuの少なくとも1種以上、好ましくはZnおよび/またはCuを示し、xは次の範囲にある。0<x<0.3、好ましくは0<x≦0.2、特に好ましくは0<x≦0.1で表される。)
【0010】
ハイドロカルマイト類は下記式(3)
【0011】
【化3】

(但し、式中、M2+はMg,ZnおよびCuの2価金属の少なくとも1種以上、An−はn価のアニオン、好ましくはOHおよび/またはCO2−を示し、x,y,mおよびnはそれぞれ次の範囲にある。0≦x<0.3、好ましくは0≦x<0.2,0≦y<0.4、好ましくは0.2≦y<0.4,0≦m<4,nは整数)で表されるハイドロカルマイト:CaAl(OH)14・4HO[An−がOHである]と同じ結晶構造を有する層状化合物。
【0012】
水酸化カルシウム系固溶体の製造は、CaとMg,ZnおよびCuの少なくとも1種以上の塩化物、硝酸塩等の水溶液と、これとほぼ当量以上のアルカリ、例えば水酸化ナトリウムとを共沈反応させ、その後、ろ過、水洗、脱水、乾燥、粉砕、分級等の慣用の手段を適宜選択して用いて実施できる。上記以外の製造方法として、水酸化カルシウムを、アルカリとCaの両成分の代わりとして用い、これとMg,ZnおよびCuの少なくとも1種以上の水溶性塩の水溶液とで共沈させる方法も適用できる。
【0013】
ハイドロカルマイト類の製造は、水酸化カルシウムと塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のAlの水溶性塩の水溶液との共沈反応、または、水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムの混合物を約60℃以上で加熱する方法、さらには、AlまたはAlと2価金属M2+の水溶性塩の混合水溶液に当量以上のアルカリ、例えば水酸化ナトリウム水溶液を加えて共沈させる方法によって製造できる。
【0014】
本発明で用いられる多価アルコールは、多価アルコールまたはその部分エステルであり、好ましくは多価アルコールである。多価アルコールとしては、分子内に2個以上のOH基を有する有機化合物であり、例えばグリセリン、キシリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリメチルロールプロパン、ジペンタエリスリトール・アジピン酸エステル等を挙げることができる。この中でも好ましくは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、特に好ましくはジペンタエリスリトールである。多価アルコールの部分エステルは、これら多価アルコールの少なくとも1種と、モノまたはポリカルボン酸の少なくとも1種とを反応して得られる。
【0015】
本発明の水酸化カルシウム系化合物と多価アルコールとの複合体の製造は、両者を、好ましくは両者の微粉体を均一に混合し、好ましくは水とかアルコールの溶媒を加えて混合し、さらに好ましくは90℃以上で加熱下に混合する。この後、好ましくは乾燥(90℃以上)し、粉砕する。以上の均一混合、好ましくはその後、加熱(乾燥)することにより、水酸化カルシウム系化合物に多価アルコールが吸着または化学結合し、本発明の複合体が得られる。
【0016】
本発明の複合体は、それを構成する多価アルコールと水酸化カルシウム系化合物の単なる混合物ではなく、両者が相互作用していることは次の事実から言える。例えば水酸化カルシウムとジペンタエリスリトールを2:1で単純に混合した場合と、本発明複合体にした場合のX線回析強度を比較すると、ジペンタエリスリトールの回析強度が、本発明の複合体では混合物の約半分以下に低下している。また、TG−DTA分析を行うと、ジペンタエリスリトールが約310℃に吸熱ピークがあり、縮合反応減量するのに対し、本発明の複合体は約220℃の吸熱ピーク温度で反応、減量する。このような約90℃の縮合温度の低下は、炭酸カルシウムとかハイドロタルサイトでは殆ど見られない。このような多価アルコールに対する強い相互作用は、本発明の水酸化カルシウム系化合物に特有の性質であることを発見したことにより、本発明が行われた。
【0017】
本発明の複合体形成により、多価アルコールはその欠点である含ハロゲン樹脂中での分散性、相溶性の悪さおよびプレートアウトし易い性質が改善される。分散性が良くなるため、熱安定効果も改善される。その結果、配合量を減らせる。
【0018】
本発明の複合体の組成は、水酸化カルシウム系化合物100重量部に対し、0.1〜1000重量部、好ましくは1〜500重量部、特に好ましくは5〜200重量部の多価アルコールである。
【0019】
本発明で用いる水酸化カルシウム系化合物はそのままで用いることができるが、水酸化カルシウム系化合物に対して、0.1〜10重量%のアニオン系界面活性剤等で表面処理することが好ましい。表面処理剤としては、例えば高級脂肪酸、高級脂肪酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩または亜鉛塩、リン酸エステル、シラン系またはチタン系またはアルミニウム系カップリング剤、好ましくは高級脂肪酸およびそれ等のアルカリ金属塩、等が例示される。
【0020】
本発明で用いる水酸化カルシウム系化合物は、1次粒子および2次粒子の両方が小さいことが好ましい。1次粒子に関係するBET比表面積が1〜40m/gであることが好ましく、特に好ましくは5〜20m/gである。2次粒子径は、累積50%の平均2次粒子径が好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下である。
【0021】
表面処理は、それ自体公知の湿式法または乾式法により実施できる。湿式法は、水酸化カルシウム系化合物を水とかアルコールに分散後、攪拌下に前記表面処理剤を水またはアルコールに溶解、または分散させたものを添加することにより行う。乾式法は、水酸化カルシウム系化合物をヘンシエルミキサー等を用いて、攪拌下に前記表面処理剤を水またはアルコールに溶解、または分散させたものを添加することにより実施できる。
【0022】
本発明の安定化された含ハロゲン樹脂組成物は、本発明の複合体以外に、(a)0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部のハイドロタルサイト類、Li,Na,K,Mg,Ca等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の金属石けん類、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、有機スズ系安定剤の中から選ばれた少なくとも1種以上の安定剤、(b)0.01〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部の有機酸、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の亜鉛塩類、(c)0.001〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部の下記一般式(4)で表されるβ−ジケトン類、
【0023】
【化4】

(式中、RおよびRは同一、または異なっていてもよく、30個までの炭素原子を有する直鎖、または分枝状のウルキル基、アルケニル基を表す)このようなβ−ジケトン類の中で好ましく用いられる物として、例えばジベンゾイルメタン(DBM)、ステアロイルベンゾイルメタン(SBM)、ベンゾイルアセトン、アセチルアセトン、デヒドロ酢酸等を挙げることができる。
【0024】
本発明で用いる含ハロゲン樹脂としては次のようなものが例示される。ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アルリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アルリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体等の含塩素合成樹脂。これらの含塩素合成樹脂相互の、あるいは他の塩素を含まない合成樹脂とのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体等。
【0025】
本発明の樹脂組成物には、慣用の他の添加剤を配合することもできる。このような他の添加剤としては例えば次のものを例示できる。ビスフェノールAテトラC12−15アルキルジホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルフォスファイト、トリス(モノフェニル)ホスファイト等のホスファイト系安定助剤。エポキシ化植物油、エポキシ化オレイン酸エステル類、エポキシ化エルシン酸エステル類等のエポキシ系安定助剤。チオジプロピオン酸、ジエチルチオジプロピオン酸エステル等の含硫黄化合物系安定助剤。アルキルガレート、アルキル化フェノール等のフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系安定助剤。グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、グリシンアミド、ヒスチジンエチルエステル、トリプトファンベンジルエステル等のα−アミノ酸およびその官能性誘導体系安定助剤。スチレン化ハーラクレゾール、2,6−ジ第3級ブチル−4−メチルフェノール、ブチル化アニソール、4,4‘−メチレンビス(6−第3級ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’メチレンビス(6−第3級ブチル−4−メチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[3−(4−ヒドロキシ−3,5−第3級ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチレン]メタン等の酸化防止剤。
【0026】
これら添加剤の配合量は適宜選択することができ、例えば含ハロゲン樹脂100重量部に対して約0.01〜約5重量部の安定助剤類、約0.01〜約2重量部の酸化防止剤が例示される。本発明は、前記添加物以外に慣用の他の添加剤、例えば可塑剤、滑剤、加工助剤、耐候性改良剤、帯電防止剤、防曇剤、強化剤、充填剤、顔料等を配合してもよい。本発明において、含ハロゲン樹脂と本発明の添加剤、および他の添加剤との混合混練は、両者を均一に混合できる慣用の方法を採用すればよい。例えば一軸または二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー等の任意の混合混練手段を採用できる。成形方法にも特別の制約は無く、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、回転成形、カレンダー成形、シートフォーミング成形、トランスファー成形、積層成形、真空成形等の任意の成形手段を採用できる。
【0027】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。以下の実施例において、%は重量%を意味する。
【実施例1】
【0028】
高純度生石灰300gを5リットルの温水(約60℃)に攪拌下に加え、約20分攪拌を継続し、水酸化カルシウムとした後、約70℃に温度調整後、純度98%のステアリン酸12gを約2gの水酸化ナトリウムと一緒に、約200mlの水に加えて、約70℃に加温溶解した液を攪拌下に加え表面処理を行った。この後、200メッシュの金網で水篩した。水篩後のスラリーから、表面処理された100gの水酸化カルシウムを容量2リットルの容器に入れ、攪拌下にジペンタエリスリトールの粉末30gを加え、20分攪拌を継続した。この後、室温まで冷却後、ろ過、120℃で8時間乾燥した後、アトマイザーで粉砕した。(水篩後のスラリーを一部採り、ろ過、乾燥、粉砕した物は、BET=14m/g、累積50%の平均2次粒子径=0.87μmであった。)粉砕物の累積50%の平均2次粒子径は0.92μmであった。この複合体を昇温速度10℃/分、雰囲気N=150ml/分、O=50ml/分、で熱分析を行い、(縮重合が起き)重量が減少する吸熱ピーク温度を測定した結果を表1に示す。この複合体を下記処方で、ポリ塩化ビニルに安定剤とジペンタエリスリトールとして配合し、混合後、オープンロールを用いて165℃で3分間混練し、厚さ約1mmのシートを作成した。
[処方1]ポリ塩化ビニル(信越化学製、分子量700) 100重量部
ステアリン酸亜鉛 0.2重量部
ステアロイルベンゾイルメタン 0.15重量部
安定剤 1.0重量部
多価アルコール 0.2〜1.0重量部
このシートを約3cm×3cmの大きさに切り出しテストピースとし、これを185℃にコントロールされたギヤオーブンに入れ、10分間隔で取り出し、10分後の色相を初期着色として、そして、黒化するまでの時間(分)を熱安定時間として、それぞれ目視で評価した結果を表1に示す。
【0029】
[比較例1]
実施例1で作成した表面処理された水酸化カルシウムを安定剤として処方1に従って、実施例1で用いたのと同じジペンタエリスリトールおよび他の成分と一緒に混合し、その後、実施例1と同様に処理を行い、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0030】
[比較例2]
市販のハイドロタルサイト類(商品名:アルカマイザー1)200gを容量2リットルのビーカーに入れ、これに100mlのエチルアルコールと60gのジペンタエリスリトールを加え、約20分間ケミスターラーで均一に混合後、120℃のオーブンに入れ、約5時間乾燥後、粉砕した。この物を処方1の安定剤とジペンタエリスリトールとして配合し、テストピースを作成し評価を行った結果を表1に示す。
【0031】
[比較例3]
比較例1において、水酸化カルシウムの代わりにステアリン酸カルシウムを用いる以外は比較例1と同様に行い評価した。その結果を表1に示す。
【実施例2】
【0032】
実施例1の水酸化カルシウム複合体の代わりに、BET比表面積10m/g、累積50%の平均2次粒子径が0.72μmの水酸化カルシウム系固溶体;Ca0.98Zn0.02(OH)を用い、同一重量のジペンタエリスリトールとエタノール溶媒中で混合、乾燥(100℃)、粉砕した複合体を用いる以外は実施例1と同様に行った。その評価結果を表1に示す。なお、固溶体の調製は、2モルの消石灰を4リットルの水に攪拌分散しているところに0.04モルの塩化亜鉛を溶解している500mlの水を加え、その後、約70℃に昇温し、4gのステアリン酸ソーダを溶解した200mlの温水(約70℃)を加え表面処理を行い、その後、ろ過、水洗、乾燥、粉砕する方法で行った。
【0033】
[比較例4]
実施例2において、水酸化カルシウム系固溶体とジペンタエリスリトールを同じ割合で、その他は処方1に従って、他の成分と混合しただけの物を用いた場合の評価結果を表1に示す。
【実施例3】
【0034】
BET比表面積16m/g、累積50%の平均2次粒子径が0.67μmの水酸化カルシウム500gに、200gのペンタエリスリトールを混ぜ、これ等を容量2リットルの容器に入れ、これに水を約500g加え、約95℃に攪拌下に加熱し、約20分間この条件を維持した。この後、ろ過、乾燥(100℃で8時間)、粉砕した。得られた複合体粉末を安定剤と多価アルコールとして用いる以外は処方1に従って混合し、実施例1と同様に行って評価した。その結果を表1に示す。
【0035】
[比較例4]
実施例3で用いた水酸化カルシウムとペンタエリスリトールを同じ割合で、その他は処方1に従って、単に混合した場合の評価結果を表1に示す。
【実施例4】
【0036】
実施例2において、塩化亜鉛の代わりに、硝酸第2銅を用いる以外は同様に行い、合成された水酸化カルシウム系固溶体;Ca0.98Cu0.02(OH)、を用いて、しかもこの固溶体に対し20%のペンタエリスリトールをジペンタエリスリトールの代わりに用いて評価した結果を表1に示す。なお、この固溶体のBET比表面積は9m/g、累積50%の平均2次粒子径が1.0μmであった。
【0037】
[比較例5]
実施例4で用いた水酸化カルシウム系固溶体とペンタエリスリトールを同じ割合で、その他は処方1に従って、単に混合した物を用いた場合の評価結果を表1に示す。
【実施例5】
【0038】
実施例2において、処方1に30重量部のジオクチルフタレートと0.1重量部のカーボンブラックをさらに添加する以外は、実施例2と同様に行って、厚さ約1mmの塩ビのシートを作成した。このシートを5cm×5cmに裁断し、これを容量200mlのビーカーに入れ、脱イオン水を200ml入れ、ラップでシールした後、70℃のオーブン中で24時間静置した。テストピースを取り出し、表面の白化度を目視した結果、表面は黒色で白色折出物は全く認められなかった。したがって、プレートアウトは無かった。
【0039】
[比較例6]
実施例5において、水酸化カルシウム系化合物の代わりに、比較例2で用いたハイドロタルサイトを用いて実施例5と同様に行った。ビーカーから取り出したテストピースは、全面白色の折出物で覆われており、プレートアウト性が高かった。
【0040】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(但し、式中、M2+はMg、ZnおよびCuの2価金属の少なくとも1種以上を示し、An−はn価のアニオンを示し、x,y,mおよびnはそれぞれ次の範囲を示す。0≦x<0.3,0≦y<0.4,0≦m<4,nは整数)で表される水酸化カルシウム、水酸化カルシウム系固溶体およびハイドロカルマイト類の少なくとも1種以上の水酸化カルシウム系化合物と、多価アルコールとの複合体を有効成分とする安定化された含ハロゲン樹脂組成物。
【請求項2】
複合体の組成が、水酸化カルシウム系化合物と多価アルコールの重量比で100:0.1〜1000である請求項1記載の安定化された含ハロゲン樹脂組成物。
【請求項3】
複合体の組成が、水酸化カルシウム系化合物と多価アルコールの重量比で100:5〜200である請求項1記載の安定化された含ハロゲン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1の水酸化カルシウム系化合物が下記式(2)
【化2】

(但し、式中、M2+はMg、ZnおよびCuの2価金属の少なくとも1種以上を示し、xは次の範囲を示す。0≦x<0.3)で表される水酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウム固溶体である請求項1記載の安定化された含ハロゲン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1の多価アルコールがジペンタエリスリトールである請求項1記載の安定化された含ハロゲン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1の多価アルコールがペンタエリスリトールである請求項1記載の安定化された含ハロゲン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1の水酸化カルシウム系化合物が高級脂肪酸、または高級脂肪酸のアルカリ金属塩で表面処理されていることを特徴とする請求項1記載の安定化された含ハロゲン樹脂組成物。
【請求項8】
下記式(1)
【化1】

(但し、式中、M2+はMg、ZnおよびCuの2価金属の少なくとも1種以上を示し、An−はn価のアニオンを示し、x,y,mおよびnはそれぞれ次の範囲を示す。0≦x<0.3,0≦y<0.4,0≦m<4,nは整数)で表される水酸化カルシウム、水酸化カルシウム系固溶体およびハイドロカルマイト類の少なくとも1種以上の水酸化カルシウム系化合物100重量部に、0.1〜1000重量部の多価アルコールを混合、吸着させた複合体を有効成分とする含ハロゲン樹脂の安定剤。

【公開番号】特開2007−277427(P2007−277427A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106522(P2006−106522)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(391001664)株式会社海水化学研究所 (26)
【Fターム(参考)】