説明

安定化された眼科用液剤

本発明は、少なくとも1つのペルオキシドを含む、安定化された眼科用液剤に関する。1つの実施形態では、本発明は、pHが約6〜8であり、約50〜約1000ppmの過酸化水素と、約0.005重量%(50ppm)〜約0.05重量%(500ppm)の少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸であって、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩、及びジエチレントリアミン五酢酸の混合カルシウム/亜鉛塩とからなる群から選択される、少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩と、を含む、眼科用液剤に関する。本発明は更に、少なくとも1つのペルオキシドを含む眼科用液剤を保存する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔背景技術〕
多くの市販の眼科用液剤が存在する。液剤は、液剤の消費期限中汚染物質を含まない状態を保たなければならない。この要件を満たすために、液剤は防腐剤成分を含有する、又は1回に使用する用量が無菌でパッケージ化される。コンタクトレンズの洗浄及びケア用液剤、並びに店頭販売の点眼剤では、複数回用量の容器が一般的である。これらの液剤は、防腐剤(点眼剤の場合)、及び消毒組成物(コンタクトレンズの洗浄及びケア用液剤の場合)の含有を必要とする。
【0002】
過酸化水素は、眼科用液剤の消毒剤又は防腐剤として用いられている。しかしながら、過酸化水素は安定ではなく、目を痛める程の濃度で含まれなければならない、又は液剤は過酸化水素を安定化するための追加の成分を含有しなければならない。過酸化物の安定化剤として有用であることが開示されている化合物としては、ホスホン酸塩、リン酸塩、及びスズ酸塩が挙げられ、具体例としては、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸のような、ホスホン酸の生理学的に(physiologoically)適合性のある塩が挙げられる。エチレンジアミン四酢酸のような、アミノポリカルボン酸キレート剤も開示されている。
【0003】
ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(PTPPA)及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、比較的低濃度で細胞傷害性であり、低pHを有する。したがって、これらの安定化剤は、少量しか含むことができず、中和剤を添加して、人間の目に適合性である液剤を提供する必要がある。
【0004】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
したがって、目に直接滴下される液剤の場合、又はレンズを目に入れる前にすすぎ落とす必要のないコンタクトレンズの洗浄及びケア用液剤の場合、過酸化水素安定化剤を追加することが望ましい。
【0005】
〔課題を解決するための手段〕
約50〜約1000百万分率(ppm)の過酸化水素と、約0.005重量%(50ppm)〜約0.05重量%(500ppm)の少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩であって、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩と、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩、並びに、カルシウム、亜鉛及びナトリウムから選択される少なくとも2種の塩を含むジエチレントリアミン五酢酸の混合塩とからなる群から選択される、少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩と、を含む、眼科用組成物。
【0006】
pHが約6〜約8であり、約50〜約1000百万分率(ppm)の過酸化水素と、約0.005重量%(50ppm)〜約0.05重量%(500ppm)の少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩であって、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩と、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩、並びに、カルシウム、亜鉛及びナトリウムから選択される少なくとも2種の塩を含むジエチレントリアミン五酢酸の混合塩とからなる群から選択される、少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩と、を含む、眼科用組成物。
【0007】
本発明は、更に、眼科用液剤を保存する方法であって、前記液剤中に、約50〜約1000ppmの過酸化水素と、約0.005重量%(50ppm)〜約0.05重量%(500ppm)の少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩であって、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩と、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩と、ジエチレントリアミン五酢酸の混合カルシウム/亜鉛塩とからなる群から選択される、少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩と、を提供することを含む、眼科用液剤を保存する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、低濃度の過酸化水素を含む眼科用液剤を安定化するための方法に関する。本発明は、更に、保管安定性である、低濃度の過酸化水素を含む眼科用液剤に関する。
【0009】
本明細書で使用するとき、保管安定性とは、約40℃未満の温度のような保管条件下で、30日間を超えて30%未満、いくつかの実施形態では、30日間で約25%未満しか液剤が失われないことを意味する。
【0010】
眼科組成物は、目に直接滴下することができる、又は、目の中、若しくは上で用いることができる、若しくは定置することができる任意の眼科用装置を浸漬、洗浄、すすぎ、保管又は処理するために用いることができる、任意の組成物である。眼科組成物の例としては、眼科用装置の梱包用(packing)溶液、洗浄溶液、調整溶液、保管溶液、点眼剤、洗眼剤、並びに眼科用懸濁液、ゲル及び軟膏等が挙げられる。本発明の1つの実施形態では、眼科用組成物は、眼科用液剤である。
【0011】
眼科用装置は、目上、又は眼瞼下若しくは涙点(puncta)内等であるが、これらに限定されない、目の任意の部分に定置することができる任意の装置を含む。眼科用装置の例としては、コンタクトレンズ、眼帯、眼科用挿入物、涙点用プラグ等が挙げられる。
【0012】
本発明の眼科用組成物は、約50〜約1000ppmの過酸化水素を含む。いくつかの実施形態では、過酸化水素は、約100〜約500ppm、他の実施形態では、約100〜約300ppmの濃度で存在する。
【0013】
あるいは、組成物は過酸化水素源を含んでもよい。好適な過酸化水素源は既知であり、水中で加水分解されたペルオキシ化合物が挙げられる。
【0014】
上記量の過酸化水素を含む眼科用組成物は、約0.005重量%(50ppm)〜約0.05重量%(500ppm)の、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩、亜鉛塩、又は混合カルシウム/亜鉛塩の少なくとも1種を含む、少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩を含むことにより安定化できることが見出されている。本明細書で使用するとき、用語、カルシウム塩、亜鉛塩又は混合カルシウム/亜鉛塩は、DTPAが少なくとも1つの特定のカチオンを含むことを意味する。よって、例えば、DTPAのカルシウム塩は、少なくとも1つのカルシウムイオンを含むDTPA塩を含む。例としては、DTPAの二カルシウム塩、DTPAの二カルシウム−三ナトリウム塩、及びこれらの混合物が挙げられる。DTPAの亜鉛塩の例としては、DTPAの一亜鉛塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の塩は、更に、ナトリウム、マグネシウム、これらの組み合わせ等のような、任意の追加の眼科的に適合性のあるカチオンを含んでもよい。1つの実施形態では、DTPA塩はDTPA二カルシウムを含む。ジエチレントリアミン五酢酸塩の濃度は、約50〜約300ppmである。
【0015】
驚くべきことに、ジエチレントリアミン五酢酸二カルシウムは、過酸化水素含有眼科用液剤の安定化において、少なくともジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPPA)と同程度有効であり、いくつかの濃度ではそれよりも有効であることが見出されている。ジエチレントリアミン五酢酸二カルシウムは、また、DTPPAより細胞傷害性が低く、pHはより中性である。
【0016】
本発明の眼科用組成物は、また、約6〜8、いくつかの実施形態では約6.5〜約7.5のpHを有する。これにより、本発明の組成物を直接目に滴下し、接眼環境に定置すべき眼科用装置に用いることが可能になる。
【0017】
眼科用組成物は、少なくとも1種の追加のペルオキシド安定化剤を更に含んでもよい。使用する濃度で細胞傷害性ではなく、他の眼科用組成物の成分と適合性である限り、任意の既知のペルオキシド安定化剤を用いてもよい。例えば、追加のペルオキシド安定化剤は、組成物中に含まれる任意の他の成分の機能を干渉すべきではなく、また任意の他の成分と反応すべきではない。好適な追加のペルオキシド安定化剤の例としては、ホスホン酸塩、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、任意の前述の眼科的に適合性である水溶性塩、これらの混合物等が挙げられる。1つの実施形態では、追加のペルオキシド安定化剤は、DTPPA又は少なくとも1種のDTPPAの薬剤として許容される塩を含む。
【0018】
少なくとも1種の追加のペルオキシド安定化剤は、約1000ppm以下、いくつかの実施形態では約100〜約500ppmの濃度で存在してもよい。追加のペルオキシド安定化剤がDTPPA又は少なくとも1種のDTPPAの薬剤として許容される塩を含むとき、それは約1000ppm以下、いくつかの実施形態では約100〜約500ppmの濃度で存在する。
【0019】
本発明の眼科用組成物は、pH調整剤、張度調整剤、緩衝剤、活性剤、潤滑剤、消毒剤、粘度調整剤、界面活性剤及びこれらの混合物等であるが、これらに限定されない追加の成分を更に含んでもよい。眼科用組成物が眼科用液剤であるとき、本発明の眼科用液剤中の全ての成分は水溶性であるべきである。本明細書で使用するとき、水溶性とは、成分が、単独で又は他の成分と組み合わせて、選択された濃度で、眼科用液剤の製造、滅菌及び保管に一般的な、温度及びpHレジメ(regime)にわたって、人間の目に見える沈殿又はゲル粒子を形成しないことを意味する。
【0020】
眼科用組成物のpHは、塩酸のような鉱酸及び水酸化ナトリウムのような塩基のような、酸及び塩基を用いて調整してもよい。
【0021】
眼科用組成物の張度は、張度調整剤を含むことにより調整できる。いくつかの実施形態では、眼科用組成物は、正常な人間の涙と等張又はほぼ等張であることが望ましい。好適な張度調整剤は当該技術分野において既知であり、アルカリ金属ハロゲン化物、リン酸塩、リン酸水素及びホウ酸水素が挙げられる。張度調整剤の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0022】
眼科用組成物は、ジエチレントリアミン五酢酸塩と適合性である、少なくとも1種の緩衝剤を更に含んでもよい。好適な緩衝剤の例としては、ホウ酸塩緩衝剤、硫酸塩緩衝剤、これらの組み合わせ等が挙げられる。1つの実施形態では、緩衝剤はホウ酸塩緩衝剤を含む。
【0023】
眼科用組成物は、また、過酸化水素に加えて、少なくとも1種の消毒剤を含んでもよい。消毒剤は、使用濃度で目を痛める又は損傷を与えるべきではなく、他の組成物成分に対して不活性であるべきである。好適な消毒成分としては、高分子ビグアニド、高分子四級アンモニウム化合物、亜塩素酸塩、ビスビグアニド、四級アンモニウム化合物及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
1つの実施形態では、消毒成分は、少なくとも1種の亜塩素酸塩化合物を含む。好適な亜塩素酸塩化合物としては、水溶性アルカリ(alkali)金属亜塩素酸塩、水溶性アルカリ(alkaline)金属亜塩素酸塩及びこれらの混合物が挙げられる。亜塩素酸塩化合物の具体例としては、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム及びこれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態では、亜塩素酸塩化合物は、亜塩素酸ナトリウムを含む。
【0025】
亜塩素酸塩化合物の好適な濃度としては、約100〜約2000ppm、いくつかの実施形態では、約100〜約2000ppm、約100〜約1000ppm、他の実施形態では、約100〜約500ppmの濃度が挙げられる。
【0026】
1種又はそれ以上の潤滑剤を眼科用組成物に含んでもよい。潤滑剤としては、水溶性セルロース性化合物、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸誘導体、キトサン、水溶性ポリウレタンを含む水溶性有機ポリマー、ポリエチレングリコール、これらの組み合わせ等が挙げられる。好適な潤滑剤の具体例としては、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グリセロール、ポリエチレングリコール、これらの混合物等が挙げられる。潤滑剤を用いるとき、それは約5重量%以下、いくつかの実施形態では約100ppm〜約2重量%の量が含まれてもよい。
【0027】
1種又はそれ以上の活性剤を眼科用組成物に含んでもよい。選択された活性剤がペルオキシドの存在下で不活性である限り、広範な治療剤を用いてもよい。好適な治療剤としては、目の前部及び後部を含む、接眼環境の任意の部分を治療又は標的とするものが挙げられ、医薬品、ビタミン、栄養補助食品、これらの組み合わせ等が挙げられる。活性剤の好適な部類としては、抗ヒスタミン剤、抗生物質、緑内障の治療薬、炭酸脱水酵素阻害剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、非ステロイド抗炎症薬、抗真菌薬、麻酔薬、縮瞳剤、散瞳剤、免疫抑制剤、駆虫薬、抗原生動物薬、これらの組み合わせ等が挙げられる。活性剤が含まれるとき、それは所望の治療結果を得るのに十分な量(「治療的に有効な量」)含まれる。
【0028】
本発明の眼科用組成物は、また、1種又はそれ以上の界面活性剤を含んでもよい。好適な例としては、BASFから市販されている、ポロキソマー(ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(プロピレンオキシド))型界面活性剤及び、ポロキサミン型界面活性剤(BASFから商品名テトロニック(Tetronic)として市販されている、一級ヒドロキシル基で終端する、エチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドに基づく、非イオン性、四官能性ブロックコポリマー)が挙げられる。具体例は、プルロニック(Pluronic)F−147及びテトロニック(Tetronic)1304である。界面活性剤は、約5重量%以下、いくつかの実施形態では約2重量%以下の量を用いてもよい。
【0029】
更に、眼科用組成物は、1種又はそれ以上の粘度調整剤又は増粘剤を含んでもよい。好適な粘度調整剤は当該技術分野において既知であり、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、グアーガム、これらの組み合わせ等が挙げられる。粘度調整剤は、所望の粘度を実現するのに必要な量で用いてもよい。
【0030】
本発明の眼科用液剤は、選択された成分を水と混合することにより形成できる。他の眼科用組成物は、選択された成分を好適なキャリアと混合することにより形成できる。
【0031】
本発明を例証するために、以下の実施例が含まれる。これらの実施例は、本発明を限定するものではない。それらは、本発明を実施する方法を提案することのみを意図する。コンタクトレンズ並びに他の専門における当業者は、本発明を実施する他の方法を見い出すことができる。しかしながら、それらの方法は、本発明の範囲内に含まれると見なされる。
【実施例】
【0032】
実施例1〜3、並びに比較例1及び2
以下の表1に示す塩基溶液を以下のように作製した。HPMCを約100mLの脱イオン水に計って入れ、穏やかに加熱して、材料全てを溶解させた。HPMC溶液を冷却し、更に〜500mLの脱イオン水を添加した。
【0033】
表1に列挙した量のNaCl、ホウ酸、及びポロキサマーを、溶液に添加した。表2に列挙した量のデクエスト(Dequest)2060(CAS番号15827−60−8、フルカ・シグマ・アルドリッチ(Fluka Sigma Aldrich)製)DTPAの二カルシウム塩(ISPコロンバス(ISP Columbus))又は2つの混合物を添加した。全ての成分が完全に溶解するまで、溶液を十分に混合した。溶液を、pHが7.2〜7.4になるまで、NaOH溶液(0.1N)で滴定した。
【0034】
脱イオン水を添加して、合計をおよそ950mLにした。pHを検査し、必要に応じて7.2〜7.4に修正した。表1に列挙した量の亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素を添加し、十分に混合した。pHを再検査し、必要に応じてNaOH溶液で中和した。脱イオン水を添加して、合計1000gにした。溶液を不透明なポリプロピレン又は高密度ポリエチレンの容器に保管した。
【0035】
【表1】

【0036】
以下の表2に示すような量の、DTPPA、DTPA又は両方を含有する溶液の100gのアリコートを、不透明なプラスチックの容器に入れ、ラベルを付けた。
【0037】
各容器から5mLのサンプルを取り出し、タランタ(Talanta)66巻1号86〜91頁、2005年3月31日に開示された方法に従って、メタバナジン酸比色分析法を用いて過酸化水素を分析した。これは、以下の表2の4列目に報告した、ベースライン(t=0)の過酸化水素濃度である。各容器を計量し、ベースラインの重量を記録した。容器を40℃で保管した。表2に示した各間隔で、各容器を計量し、上記過酸化水素測定のために5mLのサンプルを取り出した。結果を表2に示す。そのサンプルの元の過酸化水素濃度から、表2に示す時点で測定された各溶液中の過酸化水素を引くことにより、Δppmの値を算出した。表2に示す時点で測定された各溶液中の過酸化水素の濃度を、そのサンプルの元の過酸化水素濃度で割ることにより、Δ%を算出した。
【0038】
実施例4〜9及び比較例3〜4
安定化剤の添加後であるが、亜塩素酸塩を添加する前に、5ppmの硫酸鉄又は硫酸銅のいずれかを添加したことを除き、実施例1〜3及び比較例1を繰り返した。実施例1〜3のようにペルオキシドの安定性を評価し、以下の表3(銅)及び4(鉄)に結果を示す。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
以上の表2のデータは、DTPAの二カルシウム塩で安定化されたペルオキシド溶液は、安定化されていない溶液又はDTPPAで安定化された溶液よりも失うペルオキシドが少ないことを示す。本発明の安定化した溶液は、40℃で約30日にわたって、25%未満、場合によっては約20%未満のペルオキシドしか失わない。表3及び4のデータは、DTPAの二カルシウム塩で安定化されたペルオキシド溶液が、安定化されていない溶液よりも、失われるペルオキシドが実質的に少ないことを示す。評価の過程中の蒸発により、約0.4gを超えて失われる溶液は存在しなかった。
【0043】
実施例10〜11
以下の表3に示すようにDTPAの二カルシウム塩濃度を変化させ、DTPA塩の添加後にpHを調整しなかったことを除いて、実施例2を繰り返した。以下の表3に列挙した間隔で、サンプルを取り出し、実施例2に記載のように試験した。
【0044】
【表5】

【0045】
〔実施態様〕
(1) pHが約6〜約8であり、約50〜約1000ppmの過酸化水素と、約0.005重量%(50ppm)〜約0.05重量%(500ppm)の少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩であって、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩と、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩と、カルシウム、亜鉛及びナトリウムから選択される少なくとも2種の塩を含むジエチレントリアミン五酢酸の混合塩とからなる群から選択される、少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩と、を含む、眼科用組成物。
(2) 前記過酸化水素が、約100〜約500ppmの濃度で存在する、実施態様1に記載の液剤。
(3) 前記過酸化水素が、約100〜約300ppmの濃度で存在する、実施態様1に記載の液剤。
(4) 前記pHが約6.5〜約7.5である、実施態様1に記載の液剤。
(5) 前記ジエチレントリアミン五酢酸が、約50〜約300ppmの濃度で存在する、実施態様1に記載の液剤。
(6) 更に、水を含む、実施態様1に記載の液剤。
(7) 更に、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸を含む、実施態様1に記載の液剤。
(8) 前記ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸が、約1000ppm以下の濃度で存在する、実施態様7に記載の液剤。
(9) 前記ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸が、約100ppm〜約500ppmの濃度で存在する、実施態様7に記載の液剤。
(10) 更に、少なくとも1種の追加の安定化剤を含む、実施態様1に記載の液剤。
(11) 前記少なくとも1種の追加の安定化剤が、ホスホン酸塩、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、前述のもののうちいずれかの眼科的に適合性である水溶性塩、及びこれらの混合物から選択される、実施態様1に記載の液剤。
(12) 張度調整剤、緩衝剤、活性剤、潤滑剤、消毒剤、界面活性剤及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の追加成分を更に含む、実施態様1に記載の液剤。
(13) 前記ジエチレントリアミン五酢酸の二カルシウム塩に適合性である、少なくとも1種の緩衝剤を更に含む、実施態様1に記載の液剤。
(14) 前記緩衝剤が、ホウ酸塩緩衝剤及び硫酸塩緩衝剤からなる群から選択される、実施態様13に記載の液剤。
(15) 前記緩衝剤が、ホウ酸塩緩衝剤を含む、実施態様13に記載の液剤。
(16) 高分子ビグアニド、高分子四級アンモニウム化合物、亜塩素酸塩、ビスビグアニド、四級アンモニウム化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の消毒剤を更に含む、実施態様1に記載の液剤。
(17) 更に、少なくとも1種の亜塩素酸塩化合物を含む、実施態様1に記載の液剤。
(18) 前記亜塩素酸塩化合物が、水溶性アルカリ金属亜塩素酸塩、水溶性アルカリ金属亜塩素酸塩及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様17に記載の液剤。
(19) 前記亜塩素酸塩化合物が、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様17に記載の液剤。
(20) 前記亜塩素酸塩化合物が亜塩素酸ナトリウムを含む、実施態様17に記載の液剤。
(21) 前記亜塩素酸塩化合物が、約100〜約2000ppmの量で存在する、実施態様17に記載の液剤。
(22) 前記亜塩素酸塩化合物が、約100〜約2000ppmの量で存在する、実施態様20に記載の液剤。
(23) 前記亜塩素酸塩化合物が、約100〜約1000ppmの量で存在する、実施態様20に記載の液剤。
(24) 前記亜塩素酸塩化合物が、約100〜約500ppmの量で存在する、実施態様20に記載の液剤。
(25) 前記組成物が眼科用液剤である、実施態様1に記載の組成物。
(26) 前記ジエチレントリアミン五酢酸塩が、ジエチレントリアミン五酢酸の二カルシウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸の二カルシウム−三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸の一亜鉛塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様1に記載の組成物。
(27) 前記ジエチレントリアミン五酢酸塩が、ジエチレントリアミン五酢酸の二カルシウム塩である、実施態様1に記載の組成物。
(28) 眼科用液剤を保存する方法であって、
前記液剤に、約50〜約1000ppmの過酸化水素と、約0.005重量%(50ppm)〜約0.05重量%(500ppm)の少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩であって、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩と、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩と、カルシウム、亜鉛及びナトリウムから選択される少なくとも2種の塩を含むジエチレントリアミン五酢酸の混合塩とからなる群から選択される、少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩と、を提供することを含む、眼科用液剤を保存する方法。
(29) 約50〜約1000ppmの過酸化水素と、約0.005重量%(50ppm)〜約0.05重量%(500ppm)の少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩であって、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩と、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩と、カルシウム、亜鉛及びナトリウムから選択される少なくとも2種の塩を含むジエチレントリアミン五酢酸の混合塩とからなる群から選択される、少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩と、を含む、眼科用組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが約6〜約8であり、約50〜約1000ppmの過酸化水素と、約0.005重量%(50ppm)〜約0.05重量%(500ppm)の少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩であって、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩と、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩と、カルシウム、亜鉛及びナトリウムから選択される少なくとも2種の塩を含むジエチレントリアミン五酢酸の混合塩とからなる群から選択される、少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩と、を含む、眼科用組成物。
【請求項2】
前記過酸化水素が、約100〜約500ppmの濃度で存在する、請求項1に記載の液剤。
【請求項3】
前記過酸化水素が、約100〜約300ppmの濃度で存在する、請求項1に記載の液剤。
【請求項4】
前記pHが約6.5〜約7.5である、請求項1に記載の液剤。
【請求項5】
前記ジエチレントリアミン五酢酸が、約50〜約300ppmの濃度で存在する、請求項1に記載の液剤。
【請求項6】
更に、水を含む、請求項1に記載の液剤。
【請求項7】
更に、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸を含む、請求項1に記載の液剤。
【請求項8】
前記ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸が、約1000ppm以下の濃度で存在する、請求項7に記載の液剤。
【請求項9】
前記ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸が、約100ppm〜約500ppmの濃度で存在する、請求項7に記載の液剤。
【請求項10】
更に、少なくとも1種の追加の安定化剤を含む、請求項1に記載の液剤。
【請求項11】
前記少なくとも1種の追加の安定化剤が、ホスホン酸塩、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、前述のもののうちいずれかの眼科的に適合性である水溶性塩、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の液剤。
【請求項12】
張度調整剤、緩衝剤、活性剤、潤滑剤、消毒剤、界面活性剤及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の追加成分を更に含む、請求項1に記載の液剤。
【請求項13】
前記ジエチレントリアミン五酢酸の二カルシウム塩に適合性である、少なくとも1種の緩衝剤を更に含む、請求項1に記載の液剤。
【請求項14】
前記緩衝剤が、ホウ酸塩緩衝剤及び硫酸塩緩衝剤からなる群から選択される、請求項13に記載の液剤。
【請求項15】
前記緩衝剤が、ホウ酸塩緩衝剤を含む、請求項13に記載の液剤。
【請求項16】
高分子ビグアニド、高分子四級アンモニウム化合物、亜塩素酸塩、ビスビグアニド、四級アンモニウム化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の消毒剤を更に含む、請求項1に記載の液剤。
【請求項17】
更に、少なくとも1種の亜塩素酸塩化合物を含む、請求項1に記載の液剤。
【請求項18】
前記亜塩素酸塩化合物が、水溶性アルカリ金属亜塩素酸塩、水溶性アルカリ金属亜塩素酸塩及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載の液剤。
【請求項19】
前記亜塩素酸塩化合物が、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載の液剤。
【請求項20】
前記亜塩素酸塩化合物が亜塩素酸ナトリウムを含む、請求項17に記載の液剤。
【請求項21】
前記亜塩素酸塩化合物が、約100〜約2000ppmの量で存在する、請求項17に記載の液剤。
【請求項22】
前記亜塩素酸塩化合物が、約100〜約2000ppmの量で存在する、請求項20に記載の液剤。
【請求項23】
前記亜塩素酸塩化合物が、約100〜約1000ppmの量で存在する、請求項20に記載の液剤。
【請求項24】
前記亜塩素酸塩化合物が、約100〜約500ppmの量で存在する、請求項20に記載の液剤。
【請求項25】
前記組成物が眼科用液剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記ジエチレントリアミン五酢酸塩が、ジエチレントリアミン五酢酸の二カルシウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸の二カルシウム−三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸の一亜鉛塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記ジエチレントリアミン五酢酸塩が、ジエチレントリアミン五酢酸の二カルシウム塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
眼科用液剤を保存する方法であって、
前記液剤に、約50〜約1000ppmの過酸化水素と、約0.005重量%(50ppm)〜約0.05重量%(500ppm)の少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩であって、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩と、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩と、カルシウム、亜鉛及びナトリウムから選択される少なくとも2種の塩を含むジエチレントリアミン五酢酸の混合塩とからなる群から選択される、少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩と、を提供することを含む、眼科用液剤を保存する方法。
【請求項29】
約50〜約1000ppmの過酸化水素と、約0.005重量%(50ppm)〜約0.05重量%(500ppm)の少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩であって、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩と、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩と、カルシウム、亜鉛及びナトリウムから選択される少なくとも2種の塩を含むジエチレントリアミン五酢酸の混合塩とからなる群から選択される、少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸塩と、を含む、眼科用組成物。

【公表番号】特表2010−532349(P2010−532349A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514762(P2010−514762)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/007674
【国際公開番号】WO2009/005601
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(591175675)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (44)
【出願人】(310017758)
【氏名又は名称原語表記】COLLINS, Gary L.
【住所又は居所原語表記】4313 Windswept Court, Jacksonville, FL 32257, United States of America
【出願人】(310017769)
【氏名又は名称原語表記】MAHADEVAN, Shivkumar
【住所又は居所原語表記】1905 White Dogwood Lane,Orange Park, FL 32003, United States of America
【出願人】(310017770)
【氏名又は名称原語表記】MOLOCK, JR., Frank F.
【住所又は居所原語表記】1543 Wildfern Drive, Orange Park, FL 32003, United States of America
【Fターム(参考)】