説明

安定化された農薬組成物

連続的な実質的に水混和性液層、分散された水非混和性液層、及びコロイド状の固体を含む流動性非水分散濃厚物を含む安定化された液体農薬組成物が提供される。1の実施態様では、分散された相が、少なくとも1の水感受性農薬活性成分及び前記コロイド状の固体が、分散された相及び連続層の間の界面に配置される。別の実施態様では、水感受性農薬活性成分が、固体であって、分散された相内に存在する油状液体に溶解されるものか、固体であって、分散相内に分散されるものであるか、又は農薬と分子複合化剤との固体複合体であって、分散相内に配置されるものである。本発明の組成物は、直接又は希釈して、害虫を防除するため、又は植物成長調整物質として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化された液体の農薬組成物、そのような組成物の製造、および有害生物に対抗するためのまたは植物成長調整剤としてのそのような組成物の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業活性成分は、しばしば水による希釈に好適な濃縮物の形態で提供される。多くの形態の農業用濃縮物が知られており、これらは、活性成分および担体で構成され、様々な成分を含むことができる。水性濃縮物は、農業活性専門物質を水に溶解、乳化、および/または懸濁することにより得られる。作物保護剤の比較的複雑なサプライチェーンの故に、このような濃縮物製剤は、長期保存されることがあり、また、保存および輸送中に極端な温度変化、高剪断および反復的振動パターンにさらされることがある。そのようなサプライチェーン条件は、例えば水を介した分解および安定性の問題のため製剤損傷の可能性を増大させ得る。
【0003】
したがって、或る種の農薬および作物保護剤を伴う水溶液系の効率的な使用は、保存中に水に暴露された場合のそれらの劣悪な化学的安定性のために限定される。典型的には加水分解が最も一般的な水仲介性分解機序であるが、しかし、水感受性活性成分を伴う農業用濃縮物はさらに、水に暴露された時に、酸化、脱ハロゲン化、結合開裂、ベックマン転位およびその他の形態の分解を受ける。
【0004】
一部の例では、それぞれ個別の農薬および場合により最適な生物学的性能を提供するアジュバントまたはアジュバントの組み合わせの加成性を利用して、異なる農薬を合して単一の製剤を提供することが望ましいかも知れない。例えば、活性農薬(群)の濃度が実現可能な限り高い、そして任意の所望アジュバントが個別にタンク混合されるのではなく当該製剤に「ビルトイン」されている製剤を使用することによって、輸送および保存コストを最小化することができる。しかしながら、活性農薬(群)の濃度が高いほど、その製剤の安定性が攪乱され、または1もしくはそれ以上の成分が相分離する可能性が高くなる。
【0005】
もう一つの課題は、液体農薬濃縮物製剤の使用者がその製剤を(例えば噴霧タンク内で)水で希釈して希釈水性噴霧組成物を作製する場合に生ずる。このような農薬噴霧組成物は広く使用されているが、それらの性能は、或る種の農薬は水に暴露された時に噴霧タンク内で分解する傾向があるため、限定され得る。例えば、農薬の分解は、アルカリ性および水温の上昇と共に、そしてその噴霧組成物がタンク内に放置される時間の長さと共に増大し得る。
【0006】
さらに、農薬が製剤から適用部位へと放出される速度を制御することによってその農薬の有効性を改善することが望ましいかも知れない。水にかなりの程度で溶解する農薬にとって、製剤中に水が存在する場合、その農薬が熱力学的平衡に到達し製剤内部で部分的に溶解する傾向の故に、これは特別な課題である。農薬が溶解する範囲内において、これは製剤の物理的安定性を低下させ、制御放出性があればそれを無効にする。
【0007】
さらに、噴霧タンクミックスは、そこに含まれている1またはそれ以上の農薬の有効性と相互作用しそれを変化させ得る多様な化学物質およびアジュバントを含有し得る。不適合性、劣悪な水の品質および不充分なタンクの振盪は、噴霧剤の有効性低下、植物毒性をもたらすかも知れず、また、器具の性能に影響を及ぼすかも知れない。
【0008】
農薬液体濃縮物製剤が全世界で保存され、輸送され、そして使用される様々な条件および特別な状況を考慮して、それらの条件および状況のうち少なくとも幾つかの下で安定性の効用を提供する、水感受性農薬を包含する農薬の濃縮物製剤に対する必要性が依然として存在する。幅広い圃場条件下で、水希釈した時に安定な高負荷を持つ製剤に対するさらなる必要性がある。
【発明の概要】
【0009】
連続的な、実質的に水混和性の液相、分散された水非混和性液相、およびコロイド固体を含む、流動性非水性分散濃縮物を含んで成る、安定化された液体農薬組成物が提供される。或る態様では、分散相は少なくとも1つの水感受性農薬活性成分を含み、コロイド固体は、分散相および連続相の界面に配置されている。別の態様では、水感受性農薬活性成分は、固体であるが分散相に存在する油性液体に溶解しているか、または、固体であって分散相の内部に分散しているか、または、農薬と分子複合体化剤(molecular complexing agent)の固体複合体であって分散相の内部に分散している。本発明の組成物は、有害生物に対抗するためにまたは植物成長調整剤として、直接または希釈して使用できる。
【0010】
本発明によれば、分散相をピカリングエマルジョンとして安定化するためにコロイド固体を利用することにより、第二の非水性の実質的に水混和性の液体中の、第一の非水性水非混和性液体の分散性濃縮物を製造することができるということが見出された。水感受性農薬活性成分は分散相内部に捕捉され、懸濁しまたは溶解し、そして他の活性成分は場合により連続相内部に溶解または懸濁し得る。コロイド粒子によって安定化された本発明に係る新規なピカリングエマルジョンは、比較的大きな液滴を伴って安定化し、保存、輸送および使用の点で実用性を持つ水感受性農薬の有益的な長期保護を与え、さらには製剤から標的部位への農薬の放出速度を制御する能力を与える。
【0011】
水非混和性液体は、水性噴霧溶液を製造するために濃縮物を水で希釈する時、水非混和性液体(油)の液滴がその水感受性農薬活性成分を、一定期間(主として乳化された液(油)滴の大きさに依存する)水への暴露から保護するよう、充分疎水性であるように選択できる。或る態様では、したがってエマルジョン液滴の大きさは、農薬活性成分の性質に依存し、当業者は、本発明の範囲内にある最適な大きさを容易に決定できるであろう。
【0012】
本発明はさらに、土壌または葉のような場所における有害生物に対抗もしくはそれを制御するための、または植物の成長を調整するための方法をも包含し、その方法は、本発明に係る分散濃縮物で前記の場所を処置し、または、本発明に係る濃縮物を水に分散し、得られた希釈水性製剤で前記の場所を処置することを含んで成る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
したがって或る態様では、本発明に係る非水性液体分散濃縮物組成物は、
a)場合により少なくとも1つの農薬活性成分を含んでいてもよい、連続的な、実質的に水混和性の非水性液相;
b)少なくとも1つの実質的に水感受性の農薬活性成分[これは、固体であるが分散相に存在する油性液体に溶解しているか、固体であって分散相の内部に分散しているか、または、農薬と分子複合体化剤の固体複合体であって分散相の内部に分散している]を含む、分散された水非混和性非水性液相;および、
c)分散相および連続相の界面に配置された少なくとも1つのコロイド固体、
を含んで成る。
【0014】
「実質的に水混和性」という語は、水中に少なくとも50wt%までの濃度で存在する時に単一の相を形成する非水性液体を意味する。
【0015】
連続相a)における使用に好適な非水性液体は、実質的に水混和性である液体である。それらには例えば、JEFFSOL(登録商標)AG-1555(Huntsman)のような炭酸プロピレン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールおよび約800までの分子量を持つポリエチレングリコール類、から選ばれる水混和性グリコール;ジ(プロピレングリコール)メチルエーテルアセタートまたはプロピレングリコールジアセタートのようなアセチル化グリコール;リン酸トリエチル;乳酸エチル;γ−ブチロラクトン;プロパノールまたはテトラヒドロフルフリルアルコールのような水混和性アルコール;N−メチルピロリドン;ジメチルラクタミド;ならびにこれらの混合物がある。或る態様では、連続相a)で使用される非水性の実質的に水混和性の液体は、少なくとも1つの農薬活性成分のための溶媒である。別の態様では、連続相a)で使用される非水性の実質的に水混和性の液体は、全ての比率で水と完全に混和可能である。
【0016】
或る態様では、分散された水非混和性液体(油)相b)で使用される非水性液体は、実質的に水と非混和性でなければならず、そして、分散相に溶解または懸濁した水感受性農薬活性成分に対するその液体の親和性は、実質的に全ての水感受性農薬活性成分が分散相に分配され、連続相には実質的に全く分配されないようでなければならない。当業者は、連続相および非連続(分散)液相の間の或る化合物(この場合、油溶性、油混和性または油分散性水感受性農薬活性成分)の分配係数を決定するための任意の標準的試験手順に従って、特定の水非混和性液体が、問題の水感受性農薬活性成分を対象とするこの第二の基準に合致するかどうかを、容易に決定することができるであろう。したがって或る態様では、分散された水非混和性非水性液相b)は、連続相a)と非混和性である。
【0017】
別の態様では、他の方法では分散液相に実質的に分配されない、そして/または適当な分配係数を持たないであろう或る種の親水性水感受性農薬活性成分の固体粒子に疎水性を付与するために、水不溶性ポリマーを利用することができる。この目的のために有用な適当な水不溶性ポリマーの例には、α−オレフィンおよびN−ビニルピロリドンのコポリマー、例えばAgrimer(例えば、1−エテニルヘキサデシル−2−ピロリドンに基づくAgrimer(登録商標)AL-22)(International Specialty Products (ISP) Corporation)のようなアルキル化ビニルピロリドンコポリマー、または、α−オレフィンおよびエチレングリコールのコポリマー、例えばCroda Corp. のAtlox 4914が包含される。例えば、このようなポリマーを利用して、シクロプロピレン分子カプセル化剤複合体のような農薬活性成分に疎水性を付与することができる。
【0018】
本発明の或る態様では、分散された水非混和性液相b)は、充分な疎水性を有する非水性液体を含み、その結果、該濃縮物が水で希釈されて乳化する時、そのような水非混和性液体の液滴は、水感受性農薬を、希釈された水性噴霧製剤中の水への暴露から、農業用噴霧適用に使用されることになっているこのような希釈液にとって充分許容できる範囲内で、一定期間保護し続ける。例えば或る態様では、大量の水感受性農薬が、撹拌噴霧タンク内で約1時間以上水への暴露から保護され得る。
【0019】
或る態様では、濃縮物が水で希釈される時、幾らかの水感受性農薬が水非混和性液体の液滴から徐々に拡散する。噴霧タンクにおける乳化液滴からの農薬の放出速度は、濃縮物中の分散された液体エマルジョンの液滴の大きさ、拡散相中の活性成分の濃度、噴霧タンク分散液のpH、ならびにエマルジョン液滴の安定化に使用されるコロイド固体の量および性質を変化させることによって調節できる。
【0020】
或る態様では、水非混和性液体の液滴は、回折光散乱により測定する時、約200ミクロンまたはそれ以下、より好適には約20〜約150ミクロンの体積加重直径中央値を有する。
【0021】
分散された水非混和性液相b)における使用に好適な水非混和性非水性液体の例には、石油蒸留物、植物油、シリコーン油、メチル化植物油、精製パラフィン、イソパラフィン系炭化水素(例えばISOPAR V)、鉱油、アルキルアミド類、アルキルアセタート類、または3もしくはそれ以上のlog Pを有するその他の液体および溶媒、ならびにこれらの混合物がある。或る態様では、分散相b)に使用される水非混和性非水性液体は約4またはそれ以上のlog Pを有する。
【0022】
シリカおよび粘土のような固体は、連続相全体にネットワークまたはゲルを形成し、それによって低剪断粘度を高め、小粒子、界面活性剤ミセルまたはエマルジョン液滴の運動を緩徐化することにより、重力による沈殿またはクリーム分離を阻害する、農薬製剤における粘度改変剤としての使用が文献に教示されている。そうではなく本発明に係るコロイド固体は、液−液界面に吸着することによって分散液相の液滴を安定化し、それにより液滴の周囲に障壁を形成し、エマルジョン液滴が沈殿またはクリーム層中に集まっているいないに拘わらず、接触しているまたは近傍の液滴が融合できないようにする。下記のような機能試験によって2つの異なる機能 − レオロジー改質またはエマルジョン安定化 − を識別することが可能である。エマルジョンの安定化におけるコロイド固体の有効性は、粒子径、粒子の形状、粒子濃度、粒子の湿潤性および粒子間相互作用に依存する。コロイド固体は分散液体の液滴表面を被覆できるに充分なほど小さくなければならず、その液体の液滴は、使用のために希釈される時、沈殿化せずに良好な分散安定性が得られるよう充分小さくなければならず、そして標的部位において均等な生成物の分布を提供するに充分なほど小さくなければならない。コロイド固体はさらに、分散相および連続相を形成する両液体に対して充分な親和性を持たねばならず、その結果それらは液−液界面に吸着され、それによってエマルジョンを安定化させることができる。この湿潤性、粒子形状およびピカリングエマルジョン安定化に対する適合性は、2つの非混和性液相およびコロイド固体を合し、充分な機械的撹拌を与えてエマルジョンを形成させることにより、殆どの液体生成物において有用である充分低粘度(約2000センチポアズを下回る)の製剤において容易に評価できる。得られたエマルジョンが、それ以前に分散相に存在していた液体のみを含む液相の外観によって確定されるように、2時間またはそれ以上の時間にわたり実質的な液滴融合を示さないならば、そのコロイド固体は、本発明に係るピカリングエマルジョンを融合に対して安定化する、液−液界面への充分な親和性を有する。
【0023】
或る態様では、コロイド固体はさらに、分散相から連続相への水感受性農薬の移行の防止を支援する。
【0024】
一部の例では、1またはそれ以上の乳化剤を分散濃縮物の連続的水混和性非水性溶媒相に添加することによって、水希釈時の凝集に対する分散相エマルジョンの安定性を改善できる。このような役割を果たす好適な乳化剤の例には、エトキシ化トリスチリルフェノールのリン酸エステル(例えばRhodia社のSoprophor 3D33)、Rhodia社のRhodasurf BC-610のようなポリアルコキシ化アルコール、またはポリアルコキシ化(4モルEO)ソルビタンモノオレアート(Croda社のTween 21)がある。
【0025】
別の態様では、ポリビニルピロリドン(ISP社のAgrimer 90)、1−エテニル−2−ピロリドンを伴う酢酸エテニルエステルポリマー(ISP社のAgrimer VA 51)、および非イオン性界面活性剤といったような1もしくはそれ以上の界面活性剤または分散剤を連続的水混和性非水性溶媒相に添加することによって、分散濃縮物の物理的安定性、流動性および取り扱い特性を改善できる。好ましい非イオン性界面活性剤は、約12を上回るHLBを持つ親水性を有するもの、例えばCroda社のAtplus MBA 13/30、アミン型ブロックコポリマー、例えばBASF社のTertronic 1107、またはポリアルコキシ化ブタノール(Stepan社のToximul 8320)である。
【0026】
或る態様では、コロイド固体は、走査電子顕微鏡で測定する時、0.01〜2.0ミクロン、特に0.5ミクロンまたはそれ以下、より特別には0.1ミクロンまたはそれ以下の数加重粒子径中央値を有する。
【0027】
カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、ポリマー、シリカおよび粘土を包含する多岐にわたる固体物質を本発明に係る分散のためのコロイド安定化剤として使用できる。好適なコロイド安定化剤は、その濃縮物製剤中に存在するいかなる液相にも不溶であり、また、標的部位への適用前にそのような製剤を希釈するのに用いるいかなる液体にも実質的に不溶である。農薬活性成分が、当該組成物の希釈に用いられる任意の液体において適度に低い溶解度を有し、そして連続相および分散液相の両者において室温で約100ppm未満であり、そして適切な粒径で製造でき、そして前記のような液−液界面に対する適切な湿潤性を有するならば、この活性成分はコロイド安定化剤として働くということも可能である。粒子状無機物質の例は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムおよび珪素のうち少なくとも1つのオキシ化合物(またはそのような物質の誘導体)、例えばシリカ、珪酸塩、大理石、粘土およびタルクである。粒子状無機物質は、天然に存在するものであっても反応機内で合成されたものであってもよい。粒子状無機物質は、カオリン、ベントナイト、アルミナ、石灰石、ボーキサイト、石膏、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム(粉砕または沈殿物)、パーライト、ドロマイト、珪藻土、ハンタイト、マグネサイト、ベーマイト、セピオライト、パリゴルスカイト、雲母、バーミキュライト、イライト、ハイドロタルサイト、ヘクトライト、ハロイサイトおよびギブサイトから選ばれる鉱物であってよいが、これらに限定される訳ではない。さらなる好適な粘土(例えばアルミノ珪酸塩)には、粘土鉱物のカオリナイト、モンモリロナイトまたはイライト群を含むものが包含される。その他の具体例はアタパルジャイト、ラポナイトおよびセピオライトである。
【0028】
本発明の或る局面では、粒子状無機物質はカオリン粘土である。カオリン粘土は陶土または含水カオリンとも呼ばれ、主として鉱物カオリナイト(Al2Si25(OH)4)、含水珪酸アルミニウム(またはアルミノ珪酸塩)を含有する。
【0029】
表面修飾された、とは、無機粒子表面が反応基を有するように修飾されていることを意味する。粒子の表面は、一般構造X―Y―Z[式中、Xは、粒子表面に対する高い親和性を有する化学部分であり;Zは、所望の官能性を有する(反応性)化学部分であり;そしてYは、XおよびZを連結する化学部分である]を有する多様な化学物質を用いて修飾できる。
【0030】
Xは、例えばアルコキシ−シラン基、例えばトリ−エトキシシランまたはトリ−メトキシシランであってよく、これは粒子がその表面にシラノール(SiOH)基を有する場合特に有用である。Xはさらに、例えば酸基(例えばカルボン酸基またはアクリル酸基)であってもよく、これは、粒子がその表面に塩基性基を有する場合特に有用である。Xはさらに、例えば塩基性基(例えばアミン基)、エポキシ基、または不飽和基(例えばアクリル基またはビニル基)であってもよい。
【0031】
Yは、XおよびZを連結する任意の化学基、例えばポリアミド、ポリイソシアナート、ポリエステルまたはアルキレン鎖であってよく;より好適にはそれはアルキレン鎖であり;さらに好適にはそれはC2-6アルキレン鎖、例えばエチレンまたはプロピレンである。
【0032】
反応基Zは任意の基から選択でき、Yとは異なっているかも知れず、架橋剤と反応させるために利用できる。
【0033】
本発明の或る態様では、この組成物は場合によりオストワルド熟成阻害剤を含有してもよい。本発明における使用に好適なオストワルド熟成阻害剤は、分散された水非混和性油相にのみ可溶性であって連続的水混和性溶媒相には可溶性でないポリマーである。本発明の実施においてオストワルド熟成阻害剤としての使用に好適なポリマー材料は、少なくとも200の分子量、特に少なくとも400の分子量を有するポリマーまたはオリゴマーを包含する。この材料の化学組成は分散相に溶解するその能力に基づいて選択できる。好適な材料はホモポリマーまたはコポリマー、例えばJ. Brandrup およびE. H. Immergutにより編纂された ”Polymer Handbook” 第3版に記載されたものであってよい。
【0034】
好適なホモポリマーの例には、ポリオレフィン類、例えばポリアレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびポリ(置換ブタジエン)、例えばポリ(2−t−ブチル−1,3−ブタジエン)、ポリ(2−クロロブタジエン)、ポリ(2−クロロメチルブタジエン)、ポリフェニルアセチレン、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリブチレンオキシド、またはポリブチレンオキシドとプロピレンオキシドもしくはエチレンオキシドのコポリマー、ポリシクロペンチルエチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリアクリラート類(ポリアルキルアクリラートおよびポリアリールアクリラートを包含する)、ポリメタクリラート類(ポリアルキルメタクリラートおよびポリアリールメタクリラートを包含する)、ポリ二置換エステル類、例えばポリ(ジ−n−ブチルイタコナート)、およびポリ(アミルフマラート)、ポリビニルエーテル類、例えばポリ(ブトキシエチレン)およびポリ(ベンジルオキシエチレン)、ポリ(メチルイソプロペニルケトン)、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセタート、ポリビニルカルボン酸エステル、例えばポリビニルプロピオナート、ポリビニルブチラート、ポリビニルカプリラート、ポリビニルラウラート、ポリビニルステアラート、ポリビニルベンゾアート、ポリスチレン、ポリ−t−ブチルスチレン、ポリ(置換スチレン)、ポリ(ビフェニルエチレン)、ポリ(1,3−シクロヘキサジエン)、ポリシクロペンタジエン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリカルボナート類、例えばポリ(オキシカルボニルオキシヘキサメチレン)、ポリシロキサン類、特にポリジメチルシクロシロキサン類および有機可溶性置換ポリジメチルシロキサン類、例えばアルキル、アルコキシ、もしくはエステルで置換されたポリジメチルシロキサン類、液体ポリスルフィド類、天然ゴムおよび塩酸ゴム、ethvi−、ブチル−およびベンジル−セルロース、セルロースエステル、例えばセルローストリブチラート、セルローストリカプリラートおよびセルローストリステアラートならびに天然樹脂、例えばコロフォニー、コーパルおよびシェラックがある。
【0035】
好適なコポリマーの例は、スチレン、アルキルスチレン類、イソプレン、ブテン類、ブタジエン、アクリロニトリル、アルキルアクリラート、アルキルメタクリラート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、低級カルボン酸のビニルエステルならびにα,β−エチレン系不飽和カルボン酸およびそのエステル(3またはそれ以上の異なるモノマー種をそこに含むコポリマーを包含する)である。
【0036】
使用される場合、オストワルド熟成阻害剤は分散相の0.1〜20%、特に0.2〜6%(重量)の量を使用できる。ポリマーの混合物が使用されることもある。
【0037】
コロイド固体の種類および量は、当該組成物の容認可能な物理的安定性を提供するように選択する。これは、様々な量のこの成分を有する一連の組成物を常套的に評価することにより、当業者が容易に決定することができる。例えば、該組成物を安定化するコロイド固体の能力は、コロイド固体を伴う被験試料を製造することにより検証でき、エマルジョンが安定で融合を示さないことが確認できる。融合は、視認できる大きな油滴の形成によって、そして最終的にはその製剤の内部に油層が形成されることによって明らかとなる。0℃〜約50℃の温度範囲で少なくとも7〜30日間保存した後に顕著な融合が明らかにならないならば、組成物の物理的安定性は許容可能である。本発明の範囲内の安定な組成物はさらに、僅かな撹拌のみで容易に再懸濁または再分散され得る組成物を包含する。このような場合、T. F. Tadros(Surfactants in Agrochemicals, Marcel Dekker, New York(1995))により記載されるように、その製剤はクリーム化または沈殿化を示す。
【0038】
一部の例では、製剤を安定化するコロイド固体の性能は、適用前に製剤を希釈するために使用される水のpHを操作することにより増強され得る。例えば、シリカ粒子の表面はpKa約3.5のシラノール基を提示しており、その結果、水で希釈された時、そのシラノールが実質上3.5を上回るpHで実質的に脱プロトン化し、そうするとシリカ粒子はクーロン斥力を受け易くなる。pHが約3.5まで下がると、水非混和性分散相のピカリングエマルジョンの完全性は改善されるかも知れず、水感受性活性成分の保護の持続時間が長くなるかも知れない。これは、水または調合された生成物のいずれかに酸性化剤を配合することによって達成され得る。或いは、幾つかのコロイド固体はそれらの表面に塩基官能性を有し、その場合には、アルカリ成分の添加によってそれらの性能が改善され得る。したがって本発明の或る態様は、各々酸性表面または塩基性表面のコロイド固体の安定化効果を改善するための、酸性または塩基性成分の存在を包含する。好適な酸性または塩基性成分は、標的部位への適用前に濃縮物製剤を希釈するために用いる任意の水に実質的に可溶性である成分である。したがって1つの態様では、或る状況において、例えば特定の濃縮物製剤が適用前に水で希釈される予定であるかどうかに応じて、同じ成分が異なる製剤においてコロイド安定化またはpH調節機能のいずれを提供したとしても、そのような成分は上記のコロイド安定化剤とは異なる。
【0039】
「農薬活性成分」という語は、望ましくない有害生物、例えば植物、昆虫、マウス、微生物、藻類、真菌、細菌などの殺滅、防除、またはその成長の制御に有効な、化学物質および生物学的組成物、例えば本明細書に記載されるもの(例えば有害生物殺滅活性成分)を指す。この用語はさらに、植物の成長を望ましいやり方に制御する化合物(例えば、植物成長調整剤、エチレン阻害剤)、植物種に見出される天然の浸透性の活性化された抵抗性反応を模倣した化合物(例えば植物活性化剤)、または除草剤に対する植物毒性反応を低減する化合物(例えば毒性緩和剤)にも適用され得る。1以上が存在する場合、農薬活性成分は、必要ならばその組成物が適当な体積の液体担体、例えば水で希釈され、目的とされる標的、例えば植物の葉またはその生育場所に適用された場合に生物学的に有効となる量で独立して存在する。
【0040】
水感受性農薬活性成分は、水に暴露された時に、加水分解、酸化、脱ハロゲン化、結合開裂、ベックマン転位およびその他の形態の分解といったような水仲介性分解を受ける成分である。これらの物質は、時にはそれらを水で希釈して長期安定性を示す製剤を取得することが実現不可能であるという共通の特徴を持っている。
【0041】
或る態様では、水感受性農薬活性成分は、固体であるが分散液相b)に存在する油性液体に溶解しているか、固体であって分散液相の内部に分散しているか、または、農薬と分子複合体化剤の固体複合体であって分散液相の内部に分散している。
【0042】
本明細書で使用する「分解」という語は、水と接触した結果としての活性成分、即ち水感受性農薬の喪失を意味する。分解は、単に水との接触前後に存在する活性成分の量を測定することによって決定できる。
【0043】
本発明による、分散相b)の内部に捕捉され懸濁しまたは溶解するのに好適な水感受性農薬活性成分の例には、
・オキシフェノキシ酸エステル、例えばクロジナホップ−プロパルギル;ピノキサデン、
・スルホニル尿素類、例えばアジムスルフロン、ベンスルフロン、クロリムロン、クロルスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、エタメツルフロン、エトキシスルフロン、フラザスルフロン、フルピルスルフロン、ハロスルフロン、イマゾスルフロン、ヨードスルフロン、メソスルフロン、メツルフロン、ニコスルフロン、プリミスルフロン、プロスルフロン、ピラゾスルフロン、リムスルフロン、スルホメツロン、スルホスルフロン、チフェンスルフロン、トリアスルフロン、トリベヌロン、トリフルスルフロン、トリフロキシスルフロンおよびトリトスルフロン;
・クロキントセット除草剤毒性緩和剤、例えばクロキントセットメキシル*
・農薬と分子複合体化剤の固体複合体であるPGR、例えばシクロプロペン分子カプセル化剤複合体、例えばα−シクロデキストリンおよび1−MCPの複合体。一般に1−MCPは、その分子ケージからの活性成分の急速な放出を防止するため、水から保護されなければならない。
・チアメトキサム(水相がアルカリ性であるならば)、
が包含されるが、これらに限定される訳ではない。
【0044】
例えば、1−MCPが分子カプセル化剤中に封入される、複合体を製造する1つの方法では、1−MCP気体をα−シクロデキストリン水溶液中に通気し、そこから該複合体がまず沈殿し、次いでそれを濾過により単離する。上の方法により製造した複合体を単離し、乾燥し、そして、後に本発明に係る分散濃縮物に添加するため、例えば活性成分を含有する粉末として固体形態で保存する。
【0045】
本発明による連続相a)内部での使用に好適な農薬活性成分の例には、例えばアゾキシストロビン、クロロタロニル、シプロジニル、ジフェノコナゾール、フルジオキソニル、マンジプロパミド、ピコキシストロビン、プロピコナゾール、ピラクロストロビン、テブコナゾール、チアベンダゾールおよびトリフロキシストロビン;除草剤、例えばアセトクロル、アラクロル、アメトリン、アニロホス、アトラジン、アザフェニジン、ベンフルラリン、ベンフレサート、ベンスリド、ベンズフェンジゾン、ベンゾフェナプ、ブロモブチド、ブロモフェノキシム、ブロモキシニル、ブタクロル、ブタフェナシル、ブタミホス、ブトラリン、ブチラート、カフェンストロール、カルベタミド、クロリダゾン、クロルプロファム、クロルタル−ジメチル、クロルチアミド、シニドン−エチル、シンメチリン、クロマゾン、クロメプロプ、クロランスラム−メチル、シアナジン、シクロアート、デスメジファム、デスメトリン、ジクロベニル、ジフルフェニカン、ジメピペラート、ジメタクロル、ジメタメトリン、ジメテナミド、ジメテナミド−P、ジニトラミン、ジノテルブ、ジフェナミド、ジチオピル、EPTC、エスプロカルブ、エタルフルラリン、エトフメサート、エトベンザニド、フェノキサプロプ−エチル、フェノキサプロプ−P−エチル、フェントラザミド、フラムプロプ−メチル、フラムプロプ−M−イソプロピル、フルアゾラート、フルクロラリン、フルフェナセット、フルミクロラック−ペンチル、フルミオキサジン、フルオロクロリドン、フルポキサム、フルレノール、フルリドン、フルルタモン、フルチアセット−メチル、イミダノファン、イソキサベン、イソキサフルトール、レナシル、リヌロン、メフェナセット、メソトリオン、メタミトロン、メタザクロル、メタベンズチアズロン、メチルジムロン、メトベンズロン、メトラクロル、メトスラム、メトクスロン、メトリブジン、モリナート、ナプロアニリド、ナプロパミド、ネブロン、ノルフルラゾン、オルベンカルブ、オリザリン、オキサジアルギル、オキサジアゾン、オキシフルオルフェン、ペブラート、ペンジメタリン、ペンタノクロル、ペトキサミド、ペントキサゾン、フェンメジファム、ピノキサデン、ピペロホス、プレチラクロル、プロジアミン、プロフルアゾール、プロメトン、プロメトリン、プロパクロル、プロパニル、プロパジン、プロファム、プロピソクロル、プロピザミド、プロスルホカルブ、ピラフルフェン−エチル、ピラゾギル、ピラゾリナート、ピラゾキシフェン、ピリブチカルブ、ピリダート、ピリミノバック−メチル、キンクロラック、シズロン、シマジン、シメトリン、S−メトラクロル、スルコトリオン、スルフェントラゾン、テブタム、テブチウロン、テルバシル、テルブメトン、テルブチラジン、テルブトリン、テニルクロル、チアゾピル、チジアジミン、チオベンカルブ、チオカルバジル、トリアラート、トリエタジン、トリフルラリン、およびベルノラート;除草剤毒性緩和剤、例えば、ベノキサコル、ジクロルミド、フェンクロラゾール−エチル、フェンクロリム、フルラゾール、フルキソフェニム、フリラゾール、イソキサジフェン−エチル、メフェンピル;メフェンピルのアルカリ金属、アルカリ土類金属、スルホニウムまたはアンモニウムカチオン;メフェンピル−ジエチルおよびオキサベトリニル;殺虫剤、例えば、アバメクチン、クロチアニジン、エマメクチンベンゾアート、ガンマ・シハロトリン、イミダクロプリド、ラムダ・シハロトリン、ペルメトリン、レスメトリンおよびチアメトキサムがあるがこれらに限定される訳ではない。
【0046】
本発明の或る態様は、典型的には、水感受性a.i.を適当な水非混和性液体(油/溶媒)内部に分散し、次いで水感受性a.i.を含むこのような水非混和性液体を、本発明に係る非水性分散濃縮物を形成させるため、コロイド固体を含有する適当な実質的に水非混和性の液体(溶媒)内部に機械的に乳化することにより、本明細書に記載されるような非水性分散濃縮物を製造する方法を含んで成る。
【0047】
本発明のさらなる局面は、或る量の濃厚組成物を適当な液体担体、例えば水または液肥で希釈し、そして植物、樹木、動物または所望により生育場所に適用することにより、植物種または動物への有害生物の蔓延を防止またはそれに対抗する、および植物の成長を調整する方法を包含する。本発明の製剤はさらに、希釈生成物のための貯蔵タンクが必要ないよう、連続流装置内で噴霧適用器具内の水と合することもできる。
【0048】
非水性液体分散濃厚組成物は、好都合なことに、容器に保存でき、そこから注ぎもしくはポンプで汲み出し、または適用に先立ちそこに液体担体を添加することができる。
【0049】
本発明の非水性液体分散濃厚組成物の利点には、室温における長期、例えば6箇月またはそれ以上の保存安定性;適用混合物の調製のため、希釈が水またはその他の液体担体で行われるため、使用者にとって単純な取り扱いが可能となる;低下した水感受性活性成分の分解;保存中または希釈時のエマルジョン液滴サイズの無視し得る変化;この組成物が僅かな撹拌のみで容易に再懸濁または再分散でき、そして/またはそのエマルジョンが、適用混合物を調製するために肥料溶液による希釈がなされる時、融合しにくい、ということが包含される。
【0050】
本発明に係る組成物の適用比率は、例えば使用のために選択された活性成分、成長が阻害されるべき植物の実体、および使用のために選択された製剤ならびに当該化合物が茎葉取り込みのために適用されるのかまたは根取り込みのために適用されるのかといったような幾つかの因子に依存するであろう。しかしながら一般的指針として、1ヘクタールあたり1〜2000gの活性成分、特に1ヘクタールあたり2〜500gの活性成分という適用比率が適当である。1−MCPおよび植物成長調整剤については、使用比率は1ヘクタールあたり約0.1〜50gである。
【0051】
或る態様では、本発明組成物において使用される農薬活性成分のための適当な比率は、そのような活性成分を含有する生成物のための現行の製品ラベルに基づいて与えられる既存の比率と同程度である。例えば、Quadris(登録商標)商標のアゾキシストロビンは112g〜224g a.i./ヘクタールの比率で適用でき、Quilt(登録商標)商標のアゾキシストロビン(75g/L)/プロピコナゾール(125g/L)プレミックスは0.75〜1.5L/haの比率で適用できる。
【0052】
本発明の或る態様では、組成物は、農薬と分子複合体化剤の固体複合体の形態の水不溶性活性成分を含み、この水感受性固相が、それ自身連続的な実質的に水混和性の液相内部に分散している水非混和性液体(溶媒/油)内部に分散し、そのようにして油中固体のエマルジョン(前記の油エマルジョン自身は上記のコロイド固体により安定化されている)を形成する。
【0053】
本発明の或る態様では、使用前に組成物を希釈するために用いられる水のpHを調節するためにさらなる成分が存在し得る。特に、コロイド固体が表面に酸性基を有するならば、酸性成分が存在するかも知れず、または、コロイド固体が表面にアルカリ基を有するならば、アルカリ成分が存在するかも知れない。
【0054】
水不溶性固体農薬活性物質が存在する場合、その固体活性成分は所望の粒子サイズに粉砕され得る。この固体は、エアミルまたはその他の適当な装置を用いて乾燥状態で粉砕するか、または、必要に応じて溶媒可溶性の界面活性剤を加えた水非混和性液体(油/溶媒)中で粉砕して、所望の粒子サイズを達成できる。粒子サイズは約0.2〜約20ミクロン、好適には約0.2〜約15ミクロン、より好適には約0.2〜約10ミクロンの平均粒子サイズとすることができる。
【0055】
本明細書で使用する「農薬的有効量」という語は、標的の有害生物を不利になるよう制御もしくはそれを改変する、または植物の成長を調整する(PGR)農薬活性化合物の量を意味する。例えば除草剤の場合、「除草剤的有効量」とは、植物の成長を制御または改変するに充分な除草剤の量である。制御または改変効果には、自然な発達からの全ての逸脱、例えば殺滅、遅延、葉枯れ、白化、矮化などが包含される。植物という語は、種子、苗、若木、根、塊茎、幹、茎、葉および果実を包含する植物の全ての物理的部分を指す。殺真菌剤の場合、「殺真菌剤」という語は、真菌を殺滅し、またはその成長、増殖、分裂、複製もしくは広がりを実質的に阻害する物質を意味する。殺真菌化合物に関連して本明細書で使用する「殺真菌有効量」または「真菌を制御または減少させるのに有効な量」という語は、かなりの数の真菌を殺滅し、またはその成長、増殖、分裂、複製もしくは広がりを実質的に阻害する量を意味する。本明細書で使用する「殺虫剤」、「殺線虫剤」または「殺ダニ剤」という語は、昆虫、線虫またはコナダニを殺滅し、またはその成長、増殖、複製もしくは広がりを実質的に阻害する物質を意味する。殺虫剤、殺線虫剤または殺ダニ剤の「有効量」とは、かなりの数の昆虫、線虫またはコナダニを殺滅し、またはその成長、増殖、複製もしくは広がりを実質的に阻害する量である。
【0056】
或る局面では、本明細書で使用する「(植物の)成長を調整する」、「植物成長調整剤」、PGR、「調整する」または「調整」は、以下のような植物の反応を包含する:細胞伸張の阻害、例えば茎高および節間距離の縮小、茎壁の強化、したがって倒伏に対する抵抗性の増強;品質の向上した植物を経済的に生産するための観賞植物のコンパクトな成長;より優れた結実の促進;収穫量増大を目的とした子房数の増加;落果を可能にする組織形成の老化促進;marl-orderビジネスのための、苗木および観賞用低木および樹木の秋期落葉;寄生虫の感染経路を遮断するための樹木の落葉;収穫を1〜2個の摘果に減らすことによる収穫の調整および害虫の食物連鎖遮断を目的とする成熟促進。
【0057】
1つのよく知られたPGRおよびエチレン結合阻害剤は1−メチルシクロプロペン(MCP)である。1−MCPは、植物においてストレス反応を引き起こすエチレンからのシグナルを阻止し、エチレンに対する植物または植物部分(例えば、果実および花)の感受性を、その知覚を妨げることにより阻害する。その結果、別の局面では、「(植物の)成長を調整する」、「植物成長調整剤」、「PGR」、「調整する」または「調整」はさらに、農業植物の収量を増加させそして/またはその活力を向上させるための、本発明に従って定義された組成物の使用を包含する。本発明の或る態様によれば、本発明組成物は、真菌、細菌、ウイルスおよび/または昆虫のようなストレス因子、ならびに農業植物の熱ストレス、栄養ストレス、低温ストレス、干ばつストレス、UVストレスおよび/または塩分ストレスのようなストレス因子に対する耐性の改善のために使用される。
【0058】
本発明組成物のための、所望レベルの殺有害生物活性を提供することに関連する適用比率の選択は、当業者にとって常套的である。適用比率は、有害生物圧力のレベル、植物の状態、天候および生育条件といったような因子ならびに農薬活性成分の活性およびラベルの適用比率制限があればそれに依存するであろう。
【0059】
本発明はさらに、
a)場合により少なくとも1つの農薬活性成分を含んでいてもよい、そしてさらに、場合により少なくとも1つの酸性または塩基性成分を含んでいてもよい、連続的な、実質的に水混和性の非水性液相;
b)少なくとも1つの実質的に水感受性の農薬活性成分[これは、固体であるが分散相に存在する油性液体に溶解しているか、固体であって分散相の内部に分散しているか、または、農薬と分子複合体化剤の固体複合体であって分散相の内部に分散している]を含む、分散された水非混和性非水性液相;および、
c)分散相および連続相の界面に配置された少なくとも1つのコロイド固体、
を含んで成る液体農薬エマルジョン組成物に関するものである。
【0060】
本発明のさらなる局面は、
a)噴霧組成物において各活性成分の最終所望濃度を得るに充分な量で、適当な液体担体、例えば水または液肥を含んで成る、連続的水相;
b)少なくとも1つの水感受性農薬活性成分[これは、固体であるが分散相に存在する油性液体に溶解しているか、固体であって分散相の内部に分散しているか、または、農薬と分子複合体化剤の固体複合体であって分散相の内部に分散している]を含む、分散された水非混和性液相;、
c)分散相および水相の界面に配置された少なくとも1つのコロイド固体;および、
d)場合により、水相に分散、溶解または乳化した少なくとも1つの農薬活性成分;および、
e)場合により、それぞれpHを低下または上昇させるための、水相に溶解した少なくとも1つの酸性または塩基性成分、
を含んで成る、有害生物に対抗するためまたは生育場所において植物の成長を調整するための希釈水性噴霧組成物に関するものである。
【0061】
別の態様では、本発明は、
a)55℃を上回る引火点を有する担体溶媒を、ULV組成物中の各活性成分の最終所望濃度を得るに充分な量で含む連続相、
b)少なくとも1つの水感受性農薬活性成分[これは、固体であるが分散相に存在する油性液体に溶解しているか、固体であって分散相の内部に分散しているか、または、農薬と分子複合体化剤の固体複合体であって分散相の内部に分散している]を含む、分散された水非混和性液相;
c)分散相および連続相の界面に配置された少なくとも1つのコロイド固体、
を含んで成る、超微量(ULV)適用のための希釈殺有害生物および/またはPGR組成物に関するものである。
【0062】
本発明はさらに、有用植物の作物において有害生物に対抗またはそれを防除するための、またはそのような作物の成長を調整するための方法であって、
1)所望の領域、例えば植物、植物部分またはその生育場所を、
a)場合により少なくとも1つの農薬活性成分を含んでいてもよい、そしてさらに、場合により少なくとも1つの酸性または塩基性成分を含んでいてもよい、連続的な、実質的に水混和性の非水性液相;
b)少なくとも1つの水感受性農薬活性成分[これは、固体であるが分散相に存在する油性液体に溶解しているか、固体であって分散相の内部に分散しているか、または、農薬と分子複合体化剤の固体複合体であって分散相の内部に分散している]を含む、分散された水非混和性液相;および、
c)分散相および連続相の界面に配置された少なくとも1つのコロイド固体;
を含んで成る濃厚組成物で処置し、または、
2)必要ならばその濃厚組成物を、各活性成分(a.i.)の最終所望濃度を得るに充分な量の、適当な担体、例えば水、液肥または55℃を上回る引火点を有する担体溶媒で希釈し;次いで、所望の領域、例えば植物、植物部分またはその生育場所を、希釈した噴霧またはULV組成物で処置する、
ことを含んで成る方法に関するものである。
【0063】
植物という語は、種子、苗、若木、根、塊茎、幹、茎、葉および果実を包含する植物の全ての物理的部分を指す。生育場所という語は、その植物が成長しているまたは成長すると予想される場所を指す。
【0064】
本発明に係る組成物は、農業において常套的に使用される全適用方法、例えば発芽前摘用、発芽後適用および種子粉衣に好適である。本発明に係る組成物は、作付け地域への発芽前または発芽後適用に好適である。
【0065】
本発明に係る組成物は特に、有用植物の作物において有害生物に対抗するためそして/またはそれを防除するのに、または、そのような植物の成長を調整するのに好適である。好ましい有用植物の作物には、キャノーラ、穀物、例えばオオムギ、オートムギ、ライムギおよびコムギ、ワタ、トウモロコシ、ダイズ、テンサイ、果物、漿果、ナッツ、野菜、花卉、樹木、低木および芝がある。本発明組成物に使用される成分は、当業者の知悉する様々な方法で様々な濃度で適用することができる。該組成物が適用される比率は、制御されるべき有害生物の具体的種類、必要とされる制御の程度、ならびに適用のタイミングおよび方法に依存するであろう。
【0066】
作物は、常套的育種法または遺伝子工学によって除草剤または除草剤群(例えば、ALS−、GS−、EPSPS−、PPO−、ACCアーゼおよびHPPD−阻害剤)に対して耐性とされた作物をも包含すると理解せねばならない。常套的育種法によってイミダゾリノン類、例えばイマザモックスに対して耐性とされた作物の例は、Clearfield(登録商標)夏ナタネ(キャノーラ)である。遺伝子工学的方法によって除草剤耐性とされた作物の例には、商標名RoundupReady(登録商標)およびLiberty Link(登録商標)として市販されているグリホサート−およびグルホシナート−抵抗性トウモロコシ変種がある。
【0067】
作物はさらに、遺伝子工学的方法によって害虫に対して抵抗性とされたもの、例えばBtトウモロコシ(ヨーロッパアワノメイガ抵抗性)、Btワタ(メキシコワタミゾウムシ抵抗性)およびさらにはBtバレイショ(コロラドハムシ抵抗性)であると理解されねばならない。Btトウモロコシの例は、Bt176トウモロコシ交配種NK(登録商標)(Syngenta Seeds)である。Bt毒素は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)土壌細菌によって天然に形成される蛋白である。毒素、またはそのような毒素を合成できるトランスジェニック植物の例は、EP−A−451878、EP−A−374753、WO93/07278、WO95/34656、WO03/052073およびEP−A−427529に記載されている。殺虫剤抵抗性をコードし1またはそれ以上の毒素を発現する、1またはそれ以上の遺伝子を含むトランスジェニック植物の例は、KnockOut(登録商標)(トウモロコシ)、Yield Gard(登録商標)(トウモロコシ)、NuCOTIN33B(登録商標)(ワタ)、Bollgard(登録商標)(ワタ)、NewLeaf(登録商標)(バレイショ)、NatureGard(登録商標)およびProtexcta(登録商標)である。植物の作物またはその種子材料を除草剤抵抗性とし、同時に昆虫の摂食に抵抗性とすることができる(「積層された(stacked)」トランスジェニック事象)。例えば種子は、殺虫性Cry3蛋白を発現する能力を持ち、同時にグリホサート耐性とすることができる。
【0068】
作物は、常套的育種法または遺伝子工学によって得られ、いわゆる出力形質(例えば、改善された保存安定性、高い栄養価および改善された風味)を含むものを包含すると理解されねばならない。
【0069】
その他の有用な植物には、例えばゴルフコース、芝地、公園および路側の、または芝生のために商業的に育てられる芝草、ならびに花卉または低木といった観賞植物がある。
【0070】
作付け地域とは、栽培植物が既に生育している、またはそれら栽培植物の種子が撒かれている土地部分、さらにはそれら栽培植物が生育することが意図される土地部分である。
【0071】
除草剤、植物成長調整剤、殺藻剤、殺真菌剤、殺菌剤、殺ウイルス剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤または軟体動物駆除剤といったような他の活性成分を本発明に係るエマルジョン製剤中に存在させ、または該エマルジョン製剤と共にタンク混合パートナーとして添加することができる。
【0072】
本発明組成物はさらに、その他の不活性添加物を含むことができる。そのような添加物には、増粘剤、流動促進剤、湿潤剤、消泡剤、殺生物剤、潤滑剤、増量剤、ドリフト制御剤、堆積促進剤、アジュバント、蒸発遅延剤、凍結保護剤、昆虫誘引性におい物質、UV保護剤、香料などがある。増粘剤は、水溶性または水中で膨潤できる化合物であってよく、例えばキサンタン多糖類(例えば、RHODOPOL(登録商標)23のようなアニオン性ヘテロ多糖類(キサンタンガム)(Rhodia, Cranbury, NJ))、アルギン酸塩、グアまたはセルロース;合成巨大分子、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、修飾されたセルロース系ポリマー、ポリカルボキシラート、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトナイト、またはアタパルジャイトであってよい。凍結保護剤は、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、サッカロース、塩化ナトリウムのような水溶性塩、ソルビトール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、尿素、またはそれらの混合物であってよい。代表的な消泡剤はポリジアルキルシロキサン類、特にポリジメチルシロキサン、フルオロ脂肪酸エステルもしくはペルフルオロアルキルホスホン酸/ペルフルオロアルキルホスホン酸またはその塩およびそれらの混合物である。ポリジメチルシロキサン、例えばDow Corning(登録商標)Antifoam AまたはAntifoam Bが好ましい。代表的な殺生物剤には、PROXEL(登録商標)GXL(Arch Chemicals)として入手可能な1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンがある。
【0073】
本発明組成物は、肥料と混合し、それでも尚その安定性を維持することができる。例えば、本発明組成物を肥料と混合する場合、それらは約1時間後にいかなる不可逆的凝集をも示さず、且つそれらは融合傾向を示さない。この肥料は、例えば硫黄、窒素、リン、および/またはカリウムを含み得る。
【0074】
本発明組成物は常套的農業方法に使用できる。例えば、本発明組成物を水および/または肥料と混合し、任意の手段、例えば飛行機噴霧タンク、直接注入噴霧装置、ナップザック噴霧タンク、畜牛の浸漬用バット、地上噴霧に使用される農場設備(例えば、ブーム噴霧器、手動噴霧器)などによって所望の場所に発芽前および/または発芽後適用できる。所望の場所は、土壌、植物などであってよい。
【0075】
本発明の分散濃縮物は、典型的には、水感受性a.i.を適当な水非混和性液体内部に分散し、次いでこの水感受性a.i.を含む液体を適当な実質的に水混和性の液体内部に乳化して、コロイド固体を乳化剤として利用する濃縮物を形成させることによって製造する。
【0076】
或る態様では、この分散濃縮物は、まず、水感受性農薬を、場合により分散助剤としての水不溶性ポリマーと共に水非混和性液体(油/溶媒)に加え、a.i.が完全にそこに分散/懸濁するまで撹拌することによって製造される。第二に、コロイド固体を連続的な、実質的に水混和性の液体(溶媒)に加え、得られた混合物を、コロイド固体が完全に分散/均一化するまで適当な混合機を用いて高剪断下に撹拌する。次に、水非混和性液体−a.i.混合物を、分散された油滴粒子サイズが直径約20〜約100ミクロンとなるまで、適当な混合機を用いて高剪断条件下で、実質的に水混和性の液相内部に分散する。次いで場合により少なくとも1つの乳化剤および粘度改変剤をこの濃縮物に加える。適当な粘度改変剤には、高HLB、最も特別には約12を上回るHLBを持つ非イオン性界面活性剤が包含され、これは、該濃縮物の高剪断粘度を、それが望ましい取り扱い特性を有することになるよう、実質的に低下させる。
【0077】
幾つかの態様では、該農薬を、使用前に濃縮物を希釈するのに用いる水またはその他の液体中に存在する金属イオンにより仲介される分解から保護するため、必要ならば1またはそれ以上の金属錯化剤またはキレート化剤、例えばEDTAを、分散相または連続相に存在させることができる。
【0078】
幾つかの態様では、本発明の分散濃縮物は1またはそれ以上の金属錯化剤またはキレート化剤を含まない。
【0079】
幾つかの態様では、使用前に分散濃縮物を希釈するために使用する水のpHをそれぞれ低下または上昇させるため、水溶性の酸性または塩基性成分もまた分散相または連続相に存在するかも知れない。
【0080】
以下の実施例は本発明の幾つかの局面をさらに説明するものであるが、その範囲の限定を意図するものではない。本明細書および請求項の全編にわたり、別途明記されていない場合は、パーセンテージは重量による。
【実施例】
【0081】
実施例1
分散相は以下のように製造した:Agrimer AL22(ISP)3.4gを、撹拌によってIsopar V(Exxon-Mobil)38.6gに溶解し、ここに、10ミクロン未満の粒子径中央値となるまでエアミルで粉砕したα−シクロデキストリン/MCP複合体58gを加えた。連続相は以下のように製造した:Aerosil R974(Evonik)4.8gをTurraxローター・ステーター混合機を用いて高剪断下に炭酸プロピレン136.7gに分散した。Cowlesブレードタービンで連続的な高剪断を適用しながら、分散相96gを加えて、炭酸プロピレン連続相中に分散相のコロイド安定化エマルジョンを創成した。均一性を達成するための連続的低剪断と共に、このエマルジョンにAgrimer VA51(ISP)3.4gを加えた。この分散濃縮物を、農薬結晶を可視化するための偏光フィルター下に顕微鏡で調べ、実質的に全ての農薬結晶が分散相内部に保持されたことを検証した。この分散濃縮物の貯蔵係数は、0.01%未満の歪み振幅において1Hzでの振動剪断下に80Paであると決定され、適度に粘稠な液体分散であることが示された。
【0082】
実施例2
実施例1由来の分散濃縮物76.7gに、Atlox MBA 13/30(Croda)1.6g、Tween 21(Croda)0.16gおよびSoprophor 3D33(Rhodia)0.24gを加えた。得られた濃縮物は優れた流動性を持っており、水で希釈した時に微細分散を形成した。この分散濃縮物の貯蔵係数は、0.01%未満の歪み振幅において1Hzでの振動剪断下に2.1Paであり、また100%の歪み振幅において1Hzでの振動剪断下に0.4Paであると決定され、良好な取り扱い特性を持つ液体分散に合致した。
【0083】
実施例3
Atlox MBA 13/30をTetronic 1107(BASF)1.6gに置き換える以外は実施例2と同様にして、濃縮製剤を製造した。得られた濃縮物は優れた流動性を有し、水で希釈した時に微細分散を形成した。
【0084】
実施例4
Atlox MBA 13/30をToximul 8320(Stepan)1.6gに置き換える以外は実施例2と同様にして、濃縮製剤を製造した。得られた濃縮物は優れた流動性を有し、水で希釈した時に微細分散を形成した。この分散濃縮物の貯蔵係数は、0.01%未満の歪み振幅において1Hzでの振動剪断下に6.7Paであり、また100%の歪み振幅において1Hzでの振動剪断下に1Pa未満であると決定され、良好な取り扱い特性を持つ液体分散に合致した。
【0085】
実施例5
α−シクロデキストリン/MCP複合体粉末およそ3mgを、122mLガラスバイアルに入れた0.4wt% Kinetic界面活性剤(Helena)水溶液3mLに加え、バイアルをゴム隔膜でシールした。この粉末懸濁液をマグネティックスターラーにより80rpmで撹拌しながら、ヘッドスペース気体のアリコートをガスクロマトグラフィー分析することにより、ヘッドスペースへの1−MCPの放出を監視した。10分間の撹拌後に、存在する1−MCPの91%が放出されていた。
【0086】
実施例6
分散相は以下のように製造した:Agrimer AL22(ISP)2.5gを、撹拌によってIsopar V(Exxon-Mobil)45.1gに溶解し、ここに、10ミクロン未満の粒子径中央値となるまでエアミルで粉砕したα−シクロデキストリン/MCP複合体54.9gを加えた。連続相は以下のように製造した:Aerosil R974(Evonik)3.9gをTurraxローター・ステーター混合機を用いて高剪断下に炭酸プロピレン162.4gに分散した。Cowlesブレードタービンで連続的な高剪断を適用しながら、分散相77.5gを加えて、炭酸プロピレン連続相中に分散相のコロイド安定化エマルジョンを創成した。均一性を達成するための連続的低剪断と共に、このエマルジョンにAgrimer VA51(ISP)3.75g、次いでRhodasurf BC-610 2.5g、次いでEDTA四ナトリウム塩1.0gを微粉末として加えた。得られた分散濃縮物は、水に分散された時に90ミクロンの粒子径中央値を有していた。ヘッドスペースへの1−MCPの放出を実施例5と同様に監視した。15分間の撹拌後、存在する1−MCPの52%が放出されており、この分散濃縮物が水中での激しい撹拌条件下で農薬の放出を実質的に阻害することが確認された。
【0087】
実施例7
分散相は以下のように製造した:Agrimer AL22(ISP)3.75gを、撹拌によってIsopar V(Exxon-Mobil)82.5gに溶解し、ここに、10ミクロン未満の粒子径中央値となるまでエアミルで粉砕したα−シクロデキストリン/MCP複合体82.5gを加えた。連続相は以下のように製造した:Aerosil R974(Evonik)1.4gをTurraxローター・ステーター混合機を用いて高剪断下に乳酸エチル82.5gに分散した。Cowlesブレードタービンで連続的な高剪断を適用しながら、分散相27.5gを加えて、乳酸エチル連続相中に分散相のコロイド安定化エマルジョンを創成した。均一性を達成するための連続的低剪断と共に、このエマルジョンにAgrimer VA51(ISP)1.65gおよびEDTA0.28gを微粉末として、次いでRhodasurf BC-6101.1gを加えた。得られた分散濃縮物は、水で希釈した時に28ミクロンの粒子径中央値を有する微細分散を形成した。
【0088】
実施例8
乳酸エチルをトリアセチンに置き換える以外は実施例7と同様にして、分散濃縮物を製造した。得られた分散濃縮物は、水で希釈した時に121ミクロンの粒子径中央値を有する微細分散を形成した。
【0089】
実施例9
乳酸エチルをジ(プロピレングリコール)メチルエーテルアセタートに置き換える以外は実施例7と同様にして、分散濃縮物を製造した。得られた分散濃縮物は、水で希釈した時に95ミクロンの粒子径中央値を有する微細分散を形成した。
【0090】
実施例10
分散相は以下のように製造した:Agrimer AL22(ISP)2.5gを、撹拌によってIsopar V(Exxon-Mobil)69.6gに溶解し、ここに、10ミクロン未満の粒子径中央値となるまでエアミルで粉砕したプリミルスルフロン(primilsulfuron)16g、10ミクロン未満の粒子径中央値となるまでエアミルで粉砕したアトラジン16g、および10ミクロン未満の粒子径中央値となるまでエアミルで粉砕したトリフロキシスルフロン16gを加えた。連続相は以下のように製造した:Aerosil R974(Evonik)5.25gをTurraxローター・ステーター混合機を用いて高剪断下に炭酸プロピレン189.8gに分散した。分散相105gを連続相に加え、Cowlesブレードタービンで高剪断を適用し、炭酸プロピレン連続相中に分散相のコロイド安定化エマルジョンを創成した。この分散濃縮物を、農薬結晶を可視化するための偏光フィルター下に顕微鏡で調べ、実質的に全ての結晶が分散相内部に保持されたことを検証した。
【0091】
実施例11 分散相は以下のように製造した:Agrimer AL22(ISP)2.75gを、撹拌によってIsopar V(Exxon-Mobil)42.25gに溶解し、ここに、10ミクロン未満の粒子径中央値となるまでエアミルで粉砕したα−シクロデキストリン/MCP複合体55gを加えた。連続相は以下のように製造した:Aerosil R974(Evonik)2.5gをTurraxローター・ステーター混合機を用いて高剪断下に炭酸プロピレン121.5gに分散した。Cowlesブレードタービンで連続的な高剪断を適用しながら、分散相70gを加え、炭酸プロピレン連続相中に分散相のコロイド安定化エマルジョンを創成した。均一性を達成するための連続的低剪断と共に、このエマルジョンにAgrimer VA51(ISP)3g、次いでToximul 8320 2gを加えた。次にこの分散濃縮物を2つのサブサンプルに分割した。一方のサブサンプルに0.5wt%のEDTA酸を加え、他方は対照として残した。スターラー速度を160rpmに上げた以外は実施例5と同様にして、両方のサブサンプルからヘッドスペースへの1−MCPの放出を監視した。80分間撹拌した後、存在する1−MCPの85%が対照のサブサンプルから放出されていたが、一方0.5wt%のEDTA酸を加えたサブサンプルについては、存在する1−MCPの63%が放出されたに過ぎなかった。これは、EDTA酸が、水中での激しい撹拌条件下で分散濃縮物からの1−MCPの放出を阻害したことを裏付けるものである。
【0092】
本発明の例示的態様をほんの幾つか上に詳述したが、当業者は、本発明の新規な教示および利点を実質的に逸脱することなく、例示的態様において多くの改変が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、そのような改変の全ては、以下の請求項に定義される本発明の範囲内に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)連続的な、実質的に水混和性の非水性液相;
(b)分散された、水非混和性非水性液相;および、
(c)上記分散された相および上記連続的な相の界面に配置されたコロイド固体、
を含んで成る、非水性液体分散濃厚組成物。
【請求項2】
(b)が、少なくとも1つの水感受性農薬活性成分であって、固体であるが前記分散された相(b)に存在する油性液体に溶解する成分、固体であって(b)の内部に分散している成分、又は農薬と分子複合体化剤との固体複合体であって(b)の内部に分散している成分を含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水感受性農薬活性成分がアルキル−シクロプロペンおよび分子カプセル化剤の複合体を含んで成る、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
アルキル−シクロプロペンおよび分子カプセル化剤の前記複合体がα−シクロデキストリンおよび1−MCPの複合体である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記水感受性農薬活性成分が、チアメトキサム、オキシフェノキシ酸エステル、スルホニル尿素およびクロキントセット除草剤毒性緩和剤から選ばれる化合物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
(a)が少なくとも1つの農薬活性成分を含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記連続的な相に存在する農薬活性成分がストロビルリン殺真菌剤を含んで成る、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ストロビルリン殺真菌剤がアゾキシストロビンを含んで成る、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記連続的な相に存在する農薬活性成分がアゾール殺真菌剤を含んで成る、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記アゾール殺真菌剤がプロピコナゾールを含んで成る、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
(b)が3を上回るlogPを有する水非混和性液体を含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記水非混和性液体が、石油蒸留物、植物油、シリコーン油、メチル化植物油、アルキルアミド類、アルキルアセタート類、精製パラフィン、イソパラフィン系炭化水素、鉱油、およびそれらの混合物から選ばれる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
水非混和性液体が、イソパラフィン系炭化水素から選ばれる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
(a)が、水中に少なくとも50wt%までの濃度で存在する場合に単一の相を形成する実質的に水混和性の非水性液体を含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
(a)が、全ての比率で水と完全に混和可能な、実質的に水混和性の非水性液体を含んで成る、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
(a)が炭酸プロピレンを含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
分散相(b)に可溶性または混和性である少なくとも1つの水不溶性ポリマーをさらに含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、前記連続的な相(a)に少なくとも1つの乳化剤または粘度改変剤をさらに含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、前記連続的な相(a)に、約12を上回るHLBを有する非イオン性界面活性剤である少なくとも1つの粘度改変剤を含んで成る、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも1つの金属錯化剤またはキレート化剤を含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
EDTAから選ばれるキレート化剤を含んで成る、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物を水中に希釈する場合に、水のpHを少なくとも約1単位低下させるに充分な量で少なくとも1つの水溶性酸性成分を含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物を水中に希釈する場合に、水のpHを少なくとも約1単位上昇させるに充分な量で少なくとも1つの水溶性塩基性成分を含んで成る、請求項1に記載の組成物。

【公表番号】特表2012−514643(P2012−514643A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545420(P2011−545420)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/020344
【国際公開番号】WO2010/080891
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】