説明

安定化アジスロマイシン組成物

アジスロマイシン一水和物と水とを混合して、組成物の全重量基準で約5から約15重量パーセントの水含有量を有する安定化アジスロマイシン組成物を形成することを含む安定化アジスロマイシン組成物の製造方法であって、20から99%相対湿度の湿度範囲内で実施する方法。本発明者らは、アジスロマイシン一水和物を含む薬物組成物を安定化させるために、一定量の水が必要であることを予想外に特定した。更に、この安定化アジスロマイシン一水和物組成物は、酸化防止剤を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アジスロマイシン一水和物と水とを混合して、組成物の全重量基準で約5から約15重量パーセントの水含有量を有する安定化アジスロマイシン組成物を形成することを含む安定化アジスロマイシン組成物の製造方法であって、該方法を20から99%相対湿度の湿度範囲内で実施する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
アジスロマイシン一水和物、[2R−(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)]−13−[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボ−ヘキソピラノシル)オキシ]−2−エチル−3,4,10−トリヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−11−[[3,4,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−β−D−キシロ−ヘキソピラノシル]オキシ]−1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−15−オン一水和物は、エリスロマイシンAから誘導される広範囲抗菌性化合物である。アジスロマイシンは、Kobrehel及びDjokic、米国特許第4,517,359号明細書及びBright、米国特許第4,474,768号明細書によって独立して発見された。これらの特許には、アジスロマイシン及びこのある種の誘導体が、抗菌特性を有しており、従って抗生物質として有用であることが開示されている。
【0003】
アジスロマイシン一水和物は、非常に吸湿性であり、不安定である。特に、アジスロマイシン一水和物のアミン基は、特に、製造工程の間に、約25℃を超える温度及び/又は空気に暴露されたとき、酸化を受けやすい。更に、アジスロマイシン一水和物を含有する薬物組成物は、通常の貯蔵条件下で分解する傾向を有する。アジスロマイシン一水和物の酸化及び/又は分解は、純度に有害な影響を与え、不正確な投薬量に至る。
【0004】
米国特許第6,365,574号明細書には、結晶形成に影響を与えるための最小量の水を添加することにより、エタノールからアジスロマイシンを徐々に結晶化させることによって製造されるアジスロマイシンの非吸湿性形が記載されている。このアジスロマイシンエタノラートは、約1.5から3%のエタノール含有量及び約2から4%の水含有量を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アジスロマイシンの酸化及び/又は分解についての傾向が減少し、一層安定化されたアジスロマイシン組成物になる、改良されたアジスロマイシン組成物及びこのような組成物の製造方法についての要求が、存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アジスロマイシン一水和物と水とを混合して、組成物の全重量基準で約5から約15重量パーセントの水含有量を有する安定化アジスロマイシン組成物を形成することを含む安定化アジスロマイシン組成物の製造方法であって、該方法を20から99%相対湿度の湿度範囲内で実施する方法を提供する。この安定化アジスロマイシン組成物は、好ましくは、錠剤の形である。
【0007】
他の側面に従って、本発明は、アジスロマイシン一水和物と水を含む少なくとも1種の賦形剤とを混合して、組成物の全重量基準で約5から約15重量パーセントの水含有量を有する安定化アジスロマイシン組成物を形成することを含む安定化アジスロマイシン組成物の製造方法であって、該方法を20から99%相対湿度の湿度範囲内で実施する方法を提供する。
【0008】
本発明者らは、アジスロマイシン一水和物を含む薬物組成物を安定化させるために、一定量の水が必要であることを予想外に特定した。更に、この安定化アジスロマイシン一水和物組成物は、酸化防止剤を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書で使用されるとき、「乾燥時損失」(LOD)は、米国薬局方第921章に記載の方法を使用して測定したときの、サンプルの水含有量を指す。
【0010】
本発明は、アジスロマイシン一水和物及び組成物の全重量基準で約5重量%から約15重量%の水を含有する安定化アジスロマイシン組成物を提供する。本明細書で使用されるとき、「安定化」は、不純物の生成が減少又は排除されることを意味する。好ましくは、水は、組成物の全重量基準で、約5.5重量%から約12.4重量%、更に好ましくは約6重量%から約8重量%の量で存在する。最も好ましくは、水は、約6重量%から約7重量%の量で存在する。
【0011】
アジスロマイシン一水和物は、好ましくは、安定化アジスロマイシン組成物中に、組成物の全重量基準で、約0.1重量%から約95重量%の量で存在する。更に好ましくは、アジスロマイシン一水和物は、組成物の全重量基準で、約30重量%から約85重量%、最も好ましくは約50重量%から約75重量%の量で存在する。
【0012】
酸化防止剤を「本質的に含有しない」安定化アジスロマイシン組成物を製造することは、本発明の範囲内である。本明細書で使用されるとき、「本質的に含有しない」は、この組成物が、組成物の全重量基準で5重量%未満の酸化防止剤を含有することを意味する。好ましくは、この組成物は、3重量%未満、更に好ましくは1重量%未満の酸化防止剤を含有する。
【0013】
場合により、本発明の安定化アジスロマイシン組成物には、酸化防止剤が含有されていてよい。本明細書で使用されるとき、「酸化防止剤」は、酸化を抑制することが知られている物質を指す。酸化防止剤の例には、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビンパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、エリトルビン酸(erythorbic acid)、グアヤクゴム、没食子酸プロピル、チオジプロピオン酸、チオジプロピオン酸ジラウリル、tert−ブチルヒドロキノン及びトコフェロール、例えばビタミンEなど並びにこれらの化合物の医薬的に許容される塩及びエステルが含まれる。存在する場合に、酸化防止剤は、一般的に、アジスロマイシン一水和物の重量基準で、約0.01重量%から約10重量%の量で使用される。
【0014】
1種又は2種以上の医薬的に許容される賦形剤を含有することは、安定化アジスロマイシン組成物について本発明の範囲内である。このような賦形剤の例は、結合剤、希釈剤、ケーキング防止剤、アミノ酸、充填剤、可溶化剤、崩壊剤、滑剤、乳化剤、矯味・矯臭剤、溶剤、安定剤、酸化防止剤、接着防止剤、保存剤、電解質及びグリダント(glidant)である。賦形剤の組み合わせを使用することもできる。このような賦形剤は当業者に公知であり、従って、限定された数のみが特に参照されるであろう。
【0015】
結合剤の例には、セルロース誘導体(例えば、微結晶性セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース)、ポリビドン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、天然ゴム(例えば、アラビアゴム、トラガカント、グアーガム及びペクチン)、デンプンペースト、α化デンプン、スクロース、コーンシロップ、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウムアンモニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0016】
充填剤又は希釈剤の例には、噴霧乾燥した又は無水のラクトース、スクロース、デキストロース、デンプン、α化デンプン、ポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトール及びキシリトール)、セルロース(例えば、微結晶性セルロース)及び無機塩(例えば、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム及び硫酸カルシウム)が含まれる。好ましくは、充填剤は、α化デンプンと微結晶性セルロースとの組み合わせである。
【0017】
崩壊剤の例には、デンプン及び架橋したデンプンのカルボキシメチルエーテルのナトリウム塩(例えば、ナトリウムデンプングリコラート)を含むデンプン誘導体、α化デンプン(例えば、スターチ1500)、ナトリウムデンプングリコラート、架橋したナトリウムカルボキシメチルセルロース(例えば、クロスカルメロス・ナトリウム(Croscarmellose Sodium))、架橋ポリビニルピロリドン(例えば、クロスポビドン(Crospovidone))並びに微結晶性セルロースが含まれる。好ましい崩壊剤はナトリウムデンプングリコラートである。
【0018】
滑剤の例には、植物油(例えば、トウモロコシ油)、鉱油、ポリエチレングリコール(例えば、PEG−4000及びPEG−6000)、ステアリン酸の塩(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリルフマル酸ナトリウム)、鉱物塩(例えば、タルク)、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、有機塩(安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及びオレイン酸ナトリウム)、ポリビニルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸マグネシウムが含まれる。好ましい滑剤は、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物である。
【0019】
本発明の安定化アジスロマイシン組成物は、好ましくは、経口剤形、例えば、これらに限定されないが、錠剤、顆粒剤、糖衣錠、硬質又は軟質カプセル剤、散剤及び多粒子剤(multiparticles)にある。好ましくは、この剤形は錠剤である。用語「錠剤」には、圧縮錠剤、被覆錠剤、マトリックス錠剤、浸透錠剤及び当該技術分野で公知である他の剤形が含まれる。
【0020】
この安定化アジスロマイシン組成物は、嚥下の容易性及び上品な外観を与えるために被覆することができる。ポリマーフィルム被覆材料の例には、下記のものが含まれる。ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、非架橋ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートスクシナート、セルロースアセトナートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートトリメリタート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、デンプンアセタートフタラート、ポリビニルアセタートフタラート、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースフタラート、メチルセルローススクシナート、メチルセルロースフタラートスクシナート、メチルセルロースフタル酸半エステル、エチルセルローススクシナート、カルボキシメチルアミド、メタクリル酸カリウムジビニルベンゼンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、ガラクトマンノン、カルボキシポリメチレン、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、下記のもの、即ちメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸メチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル又はアクリル酸オクタデシルから選択されたモノマーとのコポリマー、例えば、ローム社(Rohm)から入手可能なオイドラギット(EUDRAGIT)(登録商標)−L及び−Sシリーズ、例えばL100−55、L30D55、L100、S100、L12,5及びS12,5、ポリ酢酸ビニル、脂肪、油、ワックス、脂肪アルコール、シェラック、グルテン、アクリル酸エチル−マレイン酸無水物コポリマー、マレイン酸無水物−ビニルメチルエーテルコポリマー、スチロール−マレイン酸コポリマー、2−エチル−ヘキシル−アクリラートマレイン酸無水物、クロトン酸−酢酸ビニルコポリマー、グルタミン酸/グルタミン酸エステルコポリマー、カルボキシメチルエチルセルロースグリセロールモノオクタノアート、ポリアルギニン、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(塩化ビニル)並びにポリウレタン。被覆材料の組み合わせを使用することもできる。好ましい被覆材料は、カラーコン社(Colorcon Corp.)から入手可能なオパドライ(Opadry)(登録商標)である。
【0021】
例えば、成分の所望のブレンド又は混合物からの錠剤を、一般的な錠剤プレスを使用して適切な形状に成形することによる、一般的な錠剤化プロセス又は方法が使用される。錠剤配合及び一般的な処理技術は、広く記載されている。
【0022】
安定化アジスロマイシン組成物の製造の間に、本発明者らは、湿度が組成物の水含有量に悪影響を与え得ることを特定した。例えば、本発明者らは、アジスロマイシン一水和物顆粒中に6%と7%との間の水含有量又はLODを維持するために、40%相対湿度(RH)と70%RHとの間の湿度範囲を、製造運転の間に維持しなくてはならないことを特定した。組成物が環境湿度に曝露され得る製造運転には、これらに限定されないが、流動床乾燥機からドラムへの乾燥した顆粒の移動、乾燥した顆粒の粉砕、ナトリウムデンプングリコラート及びステアリン酸マグネシウムとの最終混合、オーブンドラムの中へのブレンダーの排出、錠剤化運転の間の暴露並びに開放環境中のアジスロマイシン組成物の平衡化が含まれる。
【0023】
好ましくは、安定化アジスロマイシン組成物は、20から99%RH、例えば25から90%RHの湿度範囲内で製造される。更に好ましくは、安定化アジスロマイシン組成物は、30から80%RH、最も好ましくは45から70%RHの湿度範囲内で製造される。
【0024】
本発明の一つの実施態様に於いて、安定化アジスロマイシン組成物は、アジスロマイシン一水和物と水とを混合して、組成物の全重量基準で約5から約15重量パーセントの水含有量を有する安定化アジスロマイシン組成物を形成する工程を含む方法によって製造される。
【0025】
本発明の他の実施態様に於いて、安定化アジスロマイシン組成物は、アジスロマイシン一水和物と水を含む少なくとも1種の賦形剤とを混合して、組成物の全重量基準で約5から約15重量パーセントの水含有量を有する安定化アジスロマイシン組成物を形成する工程を含む方法によって製造される。水を含有してよい賦形剤の例には、これらに限定されないが、デンプン及び微結晶性セルロースが含まれる。
【0026】
本発明の他の実施態様に於いて、安定化アジスロマイシン組成物は、
(a)アジスロマイシン一水和物と場合により1種又は2種以上の賦形剤とを混合して、プレミックスを形成する工程、
(b)工程(a)で形成されたプレミックスに、水と場合により1種又は2種以上の賦形剤とを添加して、混合物を形成する工程、
(c)工程(b)で形成された混合物を乾燥し、場合によりこの混合物を粉砕し、篩い分けする工程並びに
(d)工程(c)で形成された混合物に水を添加して、組成物の全重量基準で約5から約15重量パーセントの水含有量を有する安定化アジスロマイシン組成物を形成する工程
を含む方法によって製造される。
【0027】
乾燥技術には、噴霧乾燥、流動床乾燥、フラッシュ乾燥、リング乾燥、ミクロン乾燥、トレー乾燥、真空乾燥、高周波乾燥及びマイクロ波乾燥が含まれる。好ましい乾燥技術は流動床である。
【0028】
本発明に於いて使用することができるミルの種類には、これらに限定されないが、流動エネルギーミル、ボールミル又はロッドミル、ハンマーミル、カッティングミル及びオシレーティンググラニュレーターが含まれる。更に特に、適切なミルには、クアドロ(Quadro)、フリマ(Fryma)、グラット・クイック・シーブ(Glatt Quick Sieve)、フルイダイア(Fluidaire)、フィッツパトリック(Fitzpatrick)(フィッツミル(Fitz mill))、BTSミル及びトルナド(Tornado)が含まれる。好ましいミルはフィッツミルである。
【0029】
別の側面に於いて、本発明は、微生物感染の治療方法であって、人患者を含むこのような治療が必要な哺乳動物に、治療的に有効量の安定化アジスロマイシン組成物を、即時放出、延長放出又は制御放出経口剤形で投薬することを含む方法を提供する。
【0030】
下記の限定されない実施例は、本発明の更なる側面を示す。
(実施例)
【実施例1】
【0031】
安定化アジスロマイシン組成物の製造
【0032】
【表1】

【0033】
ラウリル硫酸ナトリウムは、コグニス社(Cognis)(ヘンケル(Henkel))から入手可能である。コロイド状二酸化ケイ素は、アストロ・ケミカルス社(Astro Chemicals Inc.)から入手可能なキャブ−オー−シル(Cab−O−Sil)(登録商標)又はデグッサ社(Degussa)から入手可能なエーロジル(Aerosil)200(登録商標)である。α化デンプンは、カラーコン社から入手可能なスターチ1500(登録商標)である。ナトリウムデンプングリコラートは、ペンウエスト・ファーマシューティカルス社(Penwest Pharmaceuticals)から入手可能なエクスプロタブ(Explotab)(登録商標)である。
【0034】
アジスロマイシン一水和物、α化デンプン、微結晶性セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム及びコロイド状二酸化ケイ素を、PMA高剪断ミキサー内で約5分間混合して、プレミックスを形成した。このプレミックスに水を添加し、PMA高剪断ミキサー内で約10分間混合した。湿潤顆粒を排出し、トレーの上に置き、これを55℃で約12時間オーブン内に置いた。
【実施例2】
【0035】
安定化アジスロマイシン一水和物錠剤の製造
実施例1に於いて製造した顆粒を、篩#75を取り付けたクアドロ社ミルを使用して粉砕した。ナトリウムデンプングリコラートを、この顆粒と、タンブルブレンダーを使用して混合した。ステアリン酸マグネシウムを、この顆粒と、タンブルブレンダーを使用して混合した。この顆粒を、ロータリー高速度錠剤プレスを使用して圧縮して、錠剤を形成し、この錠剤をオパドライAMBで被覆した。
【実施例3】
【0036】
アジスロマイシン一水和物顆粒の不純物分析
実施例1に記載した手順に従って製造した湿潤顆粒を、トレーの上に置き、これを55℃でオーブン内に置いた。6個のサンプルを異なった時間で採り、水分含有量をオハウス(OHAUS)天秤を使用して決定した。それぞれのサンプルの水/水分含有量は、顆粒の全重量基準で3.3から12.5重量%で変化した。このサンプルをガラス瓶内に貯蔵し、密封し、50℃でオーブン内に置いた。8日後に、サンプルをオーブンから取り出し、不純物の量及び種類を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定した。
【0037】
サンプル溶液を、アジスロマイシン一水和物から新しく製造し、カラムの中に注入した。不純物のパーセンテージを、積分器出力から計算した。HPLCシステムの性能を、アジスロマイシン一水和物の標準化溶液を使用して試験した。
【0038】
3種の不純物が同定され、それぞれのサンプル中で全アジスロマイシン一水和物のパーセンテージとして測定された。不純物Iは0.47の相対保持時間を有し、不純物IIは0.55の相対保持時間を有していた(−N−デメチル−N−オキシド)。不純物IIIは0.86の保持時間を有していた(N−デメチル)。結果を表1に要約する。
【0039】
【表2】

【0040】
表1中の結果は、アジスロマイシン一水和物が、水含有量が5.5から12.4重量%の範囲内に維持されているという条件で、良好な化学安定性を有することを示している。
【実施例4】
【0041】
アジスロマイシン一水和物顆粒の製造
【0042】
【表3】

【0043】
アジスロマイシン一水和物、α化デンプン、微結晶性セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム及びコロイド状二酸化ケイ素を、PMA高剪断ミキサー内で約5分間混合して、プレミックスを形成した。このプレミックスに水を添加し、PMA高剪断ミキサー内で約10分間混合した。湿潤顆粒を排出し、トレーの上に置き、これを55℃で約12時間オーブン内に置いて、6から7%のLOD又は水含有量を達成した。
【0044】
この顆粒を、篩#75を取り付けたクアドロ社ミルを使用して粉砕した。ナトリウムデンプングリコラートを、この顆粒と、タンブルブレンダーを使用して混合した。ステアリン酸マグネシウムを、この顆粒と、タンブルブレンダーを使用して混合した。
【実施例5】
【0045】
アジスロマイシン一水和物顆粒(600mg)が6から7%の平衡水分含有量に達する、相対湿度の決定
6から7%の水含有量を有する、実施例4で製造した顆粒を、サーフェース・メジャーメント・システムズ社(Surface Measurement Systems)(英国ロンドン)によって供給される、自動水分天秤、DVS−1000内に置いた。この実験を通して、25℃のインキュベーター温度を維持した。丸底石英パンの中に秤量した約50mgの顆粒を使用して、水分収着−脱着等温線を生じさせた。湿度プログラムは、10%RH段階で増加して、0%RHで出発して、90%RHで終わり、0%RHに戻った。5分間間隔当たり0.001重量%の平衡規準(equilibrium criteria)を使用した。
【0046】
図面を参照して、図1は、アジスロマイシン一水和物顆粒の水分収着−脱着等温線を示すグラフである。図1は、この顆粒が、顕著なヒステリシス無しに、水を取得し、失うことを示している。更に、顆粒が6から7%水分の間で平衡になる相対湿度は、約60%RHである。
【実施例6】
【0047】
アジスロマイシン一水和物顆粒(600mg)への湿度の影響の評価
実施例4に於いて製造したアジスロマイシン一水和物顆粒の約50mgを、60%RHで平衡化し、平衡の際、湿度を10%まで低下させた。顆粒は、0.001%の平衡規準が適合するまで、この湿度で保持された。次いで、サンプル湿度を60%RHまで上昇させた。このスケジュールを、5%RH増分で、30%RHから70%RHまで繰り返した。それぞれの相対湿度の間で、サンプルを、乾燥時の目標損失又は約6.3%の水含有量に戻すために、60%RH平衡段階を挿入した。
【0048】
図面を参照して、図2は、本実施例に於けるスケジュール設定形に従った、アジスロマイシン一水和物顆粒についてのLODパーセント対時間を示すグラフである。図2は、顆粒が、約30分間以内に、これらの所望の平衡水分含有量に平衡化されたこと及び湿度が低いほど、顆粒が、この湿度にまで平衡化するために必要とした時間が長くなることを示している。この顆粒の平衡水分含有量を表2に要約する。
【0049】
【表4】

【0050】
水分損失の劇的影響を更に示すために、水分損失データの最初の10分間を、時間に対してプロットした。それぞれの直線の勾配は、水分損失(又は吸収)の速度を決定するための回帰分析(Rは、0.987から0.961の範囲である)を使用して計算した。この速度を表3に要約する。表3は、この顆粒が10%RHで急速に水を損失することを示している。この速度は、0.127%/分であると決定された。
【0051】
【表5】

【0052】
図面を参照して、図3は、異なった湿度レベルに暴露した際の、アジスロマイシン一水和物顆粒についてのLODパーセント対時間を示すグラフである。
【0053】
従って、表2及び3並びに図2及び3に於ける結果は、アジスロマイシン一水和物顆粒中の6%と7%との間の水含有量又はLODを維持するために、製造運転の間に、40%RHと70%RHとの間の湿度範囲を維持しなくてはならないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】アジスロマイシン一水和物顆粒の水分収着−脱着等温線を示すグラフ。
【図2】アジスロマイシン一水和物顆粒についての乾燥時損失(LOD)パーセント対時間を示すグラフ。
【図3】異なった湿度レベルに暴露した際の、アジスロマイシン一水和物顆粒についてのLODパーセント対時間を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジスロマイシン一水和物及び少なくとも1種の賦形剤を含有する安定化アジスロマイシン組成物の製造方法であって、この組成物を、約25℃の温度で約40%から約70%相対湿度に、組成物の全重量基準で約6から約7重量パーセントの水含有量を有する安定なアジスロマイシン一水和物組成物を形成するために十分な時間暴露することを含む、前記方法。
【請求項2】
水含有量が、組成物の全重量基準で約6.6重量パーセントである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(i)アジスロマイシン一水和物を少なくとも1種の賦形剤と、ミキサー内で混合して、プレミックスを形成する工程、
(ii)工程(i)で形成されたプレミックスに十分な水を添加し、混合して、湿潤顆粒を形成する工程、並びに
(iii)工程(ii)で形成された湿潤顆粒を、組成物の全重量基準で約6から約7重量パーセントの水含有量を有するアジスロマイシン一水和物組成物を形成するために十分な温度及び時間で乾燥する工程を含み、
工程(i)及び(ii)の間約25℃の温度で相対湿度が約40%から約70%に維持される、安定化アジスロマイシン組成物の製造方法。
【請求項4】
アジスロマイシン一水和物及び少なくとも1種の賦形剤を含有する安定化アジスロマイシン組成物であって、この組成物を、約25℃の温度で約40%から約70%相対湿度に、組成物の全重量基準で約6から約7重量パーセントの水含有量を有する安定なアジスロマイシン一水和物組成物を形成するために十分な時間暴露することを含む方法によって製造される、前記組成物。
【請求項5】
アジスロマイシン一水和物及び少なくとも1種の賦形剤を含有する安定化アジスロマイシン組成物であって、
(i)アジスロマイシン一水和物を少なくとも1種の賦形剤と、ミキサー内で混合して、プレミックスを形成する工程、
(ii)工程(i)で形成されたプレミックスに十分な水を添加し、混合して、湿潤顆粒を形成する工程、並びに
(iii)工程(ii)で形成された湿潤顆粒を、組成物の全重量基準で約6から約7重量パーセントの水含有量を有するアジスロマイシン一水和物組成物を形成するために十分な温度及び時間で乾燥する工程を含み、工程(i)及び(ii)の間約25℃の温度で相対湿度が約40%から約70%に維持される方法によって製造される、前記組成物。
【請求項6】
アジスロマイシン一水和物が、約30から約85重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
酸化防止剤を本質的に含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
アジスロマイシン組成物が、錠剤、顆粒剤、糖衣錠、硬質又は軟質カプセル剤、散剤、多粒子剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択された経口剤形の形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
経口剤形が錠剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
容器及び請求項1に記載の方法に従って製造された安定化アジスロマイシン組成物を含む、治療パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−510633(P2007−510633A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537266(P2006−537266)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012566
【国際公開番号】WO2005/044834
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(305008042)サンド・アクチエンゲゼルシヤフト (54)
【Fターム(参考)】