説明

定着装置および画像形成装置

【課題】クリーニングウェブへのオフセットトナーの入力量が増加した場合でもクリーニング性能を維持するとともに、クリーニングウェブの無駄な消費を抑制する。
【解決手段】クリーニング手段10の押圧ローラ14は、加圧ローラ4への押圧を解除できるように設けられる。クリーニングウェブ11への入力トナー(オフセットトナー)が多い条件である両面印刷時の定着動作終了時に、拡大図に点線で示すように、加圧ローラ4からクリーニングウェブ11(押圧ローラ14)を離間させ、所定時間連続してクリーニングウェブ11の巻き取り動作を行なう。これにより、クリーニングウェブ11と加圧ローラ4との当接ニップ部に存在するトナー等の異物の吐き出しを防ぎ、それによる画質不良の発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未定着画像を記録媒体に定着させる定着装置、ならびにその定着装置を備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、カラー化、高速化、及び高画質化が進み、オフセット印刷レベルの高精細な画像形成も可能になった。電子写真方式を利用した画像形成装置では、トナー画像を用紙等の記録媒体に定着するための定着手段に用いる技術として、ハロゲンランプ等の熱源により加熱される定着ローラ又は定着ベルト等の定着部材と、この定着部材と圧接しながら回転する加圧ローラとが形成するニップに、トナー画像を担持した記録媒体を通過させてトナー画像を記録媒体に定着する、いわゆる熱圧着方式が広く採用されている。
【0003】
高速処理がなされるカラー画像形成装置に用いられる定着装置は、加熱定着部材からの分離性に優れ、定着ニップ部が広い(ニップ時間が長い)ことが要求され、この要求を満たすためにはベルト定着方式の定着装置が好適である。すなわち、高速化によっても加熱ローラによって低熱容量の定着ベルトを十分に加熱する事ができ、定着ローラと加圧ローラの大径化によるニップ幅の拡大や定着ローラの硬度や厚さによる曲率分離によって分離性の向上などで対応できるためである。
【0004】
この方式の定着においては、トナー画像は、加圧ローラによってトナー画像を担持した記録媒体が定着ベルトに所定の圧力で押圧されることにより、定着ベルトからの加熱を受け溶融状態となる。溶融したトナーは、その全てが記録媒体に定着されることが望ましいが、実際には、トナーと定着ベルトとの付着力により、そのごく一部が定着ベルトに付着する。一般にこの現象はオフセット現象と呼ばれている。
【0005】
オフセット現象の種類としては、低温オフセットと高温オフセットとがある。低温オフセットとは、トナーに対する加熱が不十分で、トナー画像を形成しているトナー層の内部まで充分に熱が伝達されないことからトナーの溶融が不完全となり、記録媒体への融着がなされなかったトナー層の一部が破砕して定着ベルトなどの定着部材に付着するものである。この場合、記録媒体へのトナー画像の融着も不十分となることから、出力されたコピーからトナー画像を容易にこすり取ることができる、いわゆる定着不良が発生する。高温オフセットとは、必要以上の高温でトナーが加熱された場合、トナーの粘弾性が変化し、トナーと定着部材の付着力がトナー粒子の凝集力よりも高くなりトナーが定着ベルトなどの定着部材に付着するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、電子写真方式の画像形成装置により出力されるコピー画像に対しては、ますます高画質化への要求が高くなっている。オフセット画像同等の印刷品質を確保するため、トナーを小径化、あるいは重合トナーのように球形化する方向がトレンドである。このようなトナーは従来のトナーと比較し、トナーに対して熱が伝わりにくく溶解しにくいため、低温オフセットがおき易いという問題がある。特に、非コート紙のような紙表面に凹凸のある用紙の場合に、低温オフセットは発生しやすくなる。
【0007】
低温オフセットへの対策(低温オフセットによる付着物の除去対策)としては、定着部材に不織布等のクリーニングウェブを押し当て、定着部材の表面を拭うようにしたクリーニング手段を設けることが一般的に行われている(例えば、特開2002−258657号公報:特許文献1)。
【0008】
ところが、球形で小径のトナーは、クリーニングウェブと定着部材の間に生ずるわずかな間隙を通り抜けやすく、これを防ぐためには、トナーが付着していないクリーニングウェブの新しい部分を常に定着部材あるいは加圧ローラに押圧することによって、できるかぎり間隙が生じないようにする必要がある。しかし、プリント物を出力する毎に常に充分な面積のクリーニングウェブを供給することは、画像形成装置におけるメンテナンス頻度の増加、あるいは環境面からみた廃棄物の増加という点では望ましいことではない。
【0009】
このため、特開2005−24619号公報(特許文献2)では、画像データに基づいてクリーニングウェブの供給量を制御することで、無駄なウェブの供給を防止できるようにしたクリーニング手段を提案している。しかし、特許文献2では、ウェブの送り量を画像データ(=トナー画像面積/画像面積)が多いほど送り量を増加させているが、画像データ量とオフセット量は必ずしも比例関係ではないため、特許文献2の制御方法では、最適な送り量での制御が実現できていない。
【0010】
図8に、孤立画素の黒化率と(=孤立画素面積/用紙面積)とクリーニングウェブ(ウェブ紙)へのオフセット量(ウェブ紙の画像濃度)の関係をグラフにて示す。グラフの縦軸はクリーニングウェブの画像濃度であり、数値が大きいほどクリーニングウェブに付着したトナー(クリーニングウェブで拭き取られたトナー)が多い、すなわち、加圧ローラ又は定着ローラにオフセットしたトナーが多いことになる。グラフの横軸は、用紙面積に占める孤立画素面積の割合である孤立画素の黒化率(=孤立画素面積/用紙面積)であり、数値が大きいほど画像面積率(=トナー画像面積/画像面積)が高いことになる。
【0011】
このグラフに示すように、画像データ量とウェブ紙へのオフセット量は比例関係では無い。画像面積率が低いところ(孤立画素の黒化率が低いところ)では、入力トナーが少ないため、オフセットトナー量は少ない。また画像面積率が高い領域(孤立画素の黒化率が高い領域)でも、オフセットトナー量が少なくなる。これは、画像面積率が高いと紙とトナーの付着力に加え、トナー同士の溶解による付着力が加わることで、結果的にオフセットトナー量が少なくなることによる。このため、孤立画素がある程度存在する40%付近の画素領域が最もオフセット量が多くなってしまう。また、図9に、コート紙と非コート紙を用いた場合の画像面積率とトナーオフセット量の関係を示す。このグラフに示すように、紙種によってもウェブ紙へのオフセット量は変化してしまう。
【0012】
そのため、最悪条件となった場合、例えば孤立画素の黒化率が40%で非コート紙に両面印刷をした場合、クリーニングウェブには相当量のオフセットトナーが常に介在しており、オフセットトナーがクリーニングウェブ上で固まりとなり、クリーニングウェブを粒状の固まりがすり抜けて定着部材(あるいは、加圧部材側にクリーニング手段を設けた場合は加圧部材)へ吐き出されてしまい、更には用紙へ着くことでトナー汚れによる画質不良を起こすことになる。必ずしもクリーニングウェブの保持能力を超えた分のオフセットトナーが全部クリーニングウェブをすり抜けるわけではないが、ジョブの最初、すなわち定着部材および加圧部材の温度が上昇した際、ウェブ上に保持されていたトナーが溶け出しやすくなるため、上記のようなクリーニング不良が発生しやすくなる。
【0013】
また近年は、省エネルギー化の要求も高まっており、画像形成装置内で最もエネルギーを必要とする定着装置の定着エネルギーを低減させる検討がなされている。その方策の一つとして、低軟化点のトナーを用い、定着下限温度を低下させることが挙げられる。定着下限温度を低下させた場合、トナーは温度上昇の影響を受けやすいために、その温度上昇部(例えば定着部材など)に当接するクリーニングウェブに吸着したトナーが溶け出し、定着ニップを通過する記録媒体に再転写し、異常画像を発生させることがある。このような現象は、オフセットトナーが多量にクリーニングウェブに入ってくる場合に発生しやすい。
【0014】
特開平11−24484号公報(特許文献3)に記載のものでは、一連の定着ジョブを終了するごとに、クリーニングウェブの新たな部分を定着部材の周面に送り出してクリーニングを行うウェブの巻取り動作を実行するように構成して、クリーニング性の維持・向上を図っているが、必要のない条件においてもクリーニング手段を動作させることはクリーニングウェブの寿命に大きくかかわり、効率的ではない。
【0015】
本発明は、従来の定着装置における上述の問題を解決し、クリーニングウェブへのオフセットトナーの入力量が増加した場合でもクリーニング性能を維持することができ画質不良を防止できるとともに、クリーニングウェブの無駄な消費を抑制することのできる定着装置および画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題は、本発明により、加熱手段によって加熱される定着部材と、該定着部材に圧接される加圧部材とを有し、前記定着部材と前記加圧部材間に形成される定着ニップに未定着画像を担持した記録媒体を通過させて画像の定着を行なう定着装置において、前記加圧部材の表面をクリーニングウェブを送って清掃するクリーニング手段を備え、前記加圧部材と前記クリーニングウェブとを接離可能に設け、前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に、前記加圧部材と前記クリーニングウェブとを離間させた状態で、所定時間連続して前記クリーニングウェブの巻き取り動作を行なうことにより解決される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の定着装置及び画像形成装置によれば、クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に加圧部材とクリーニングウェブとを離間させた状態で、所定時間連続してクリーニングウェブの巻き取り動作を行なうので、動作再開時(次ジョブ開始時)に、加圧部材とクリーニングウェブとの当接ニップ部にトナーや紙粉等の汚れが存在しない状態とすることができ、それら異物の吐き出しによるトナー汚れなどの画質不良の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】定着装置の第1実施形態における要部構成を示す断面図である。
【図2】クリーニング手段の駆動系の構成を示す模式図である。
【図3】定着装置の第2実施形態における要部構成を示す断面図である。
【図4】連続印刷時の加圧ローラ温度推移とブリスタランクを表したものである。
【図5】定着装置の第3実施形態における要部構成を示す断面図である。
【図6】第3実施形態におけるクリーニング手段の駆動系の構成を示す模式図である。
【図7】本発明に係る定着装置を備える画像形成装置の一例を示す外観斜視図である。
【図8】画像面積率とトナーのオフセット量の関係を表すグラフである。
【図9】コート紙と非コート紙を用いた場合の画像面積率とトナーオフセット量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る定着装置の第1実施形態における要部構成を示す断面図である。この図に示す本例の定着装置はベルト定着方式であり、加熱ローラ1、定着ベルト2、定着ローラ3、加圧ローラ4、テンションローラ5、分離板8、搬送ローラ対9、クリーニング手段10等を備えており、これらが図示しない定着装置筐体内に配置されている。
【0020】
加熱ローラ1及び加圧ローラ4の内部には、定着装置の熱源として、ハロゲンランプ等の定着ヒータ6,7が配設されている。なお、熱源としてはハロゲンヒータに限らず、IH方式の加熱手段や抵抗発熱体、カーボンヒータ等を採用可能である。
【0021】
加熱ローラ1、定着ローラ3及び加圧ローラ4は、定着装置筐体の長手方向に延設され、筐体に対して回転可能に軸支されている。加圧ローラ4は図示しない加圧機構により定着ベルト2を挟んで定着ローラ3に圧接されるが、ジャム処理時等には定着ベルト2への圧接を解除する(脱圧する)ことができるようになっている。
【0022】
定着ベルト2は、厚さ90μmのPI(ポリイミド)層で形成される無端ベルトであって、外周表面にPFA膜等のオフセット防止剤がコーティングされたものである。定着ベルト2は加熱ローラ1と定着ローラ3に掛け回され、図示しない定着駆動手段によって加圧ローラ4を介して回転駆動され、加熱ローラ1によって定着ベルト2が加熱される。
【0023】
定着ローラ3及び加圧ローラ4は対向して配置されるゴムローラであり、加圧ローラ4が定着ベルト2を挟んで定着ローラ3の中心方向に加圧されることにより、加圧ローラ4と定着ベルト2との間でニップ部(定着ニップ)が形成される。定着ニップの用紙搬送方向の上流側には定着前ガイド15が配置される。テンションローラ5は、定着ベルト2にテンションを与えるものであり、本例では円筒形をしたアルミ管で形成される。
【0024】
定着駆動手段はモータと減速ギア列を有しており、加圧ローラ4にギア接続され、該加圧ローラ4を図1において反時計回り方向に回転駆動する。加圧ローラ4の回転により、加圧ローラ4に圧接する定着ベルト2(および定着ローラ3)が、同速で従動回転される。加熱ローラ1も定着ベルト2の回動により同方向に回転する。加熱ローラ1、定着ベルト2及び定着ローラ3は図1において時計回り方向に回転される。なお、定着駆動手段およびヒータランプ6,7は、定着装置の筐体に固定保持されている。
【0025】
上記のように構成された定着装置において、加熱ローラ1の内部に配設された定着ヒータ6からの熱が、加熱ローラ1を介して定着ベルト2に伝わり、定着ベルト2が加熱される。加圧ローラ4と定着ベルト2の互いの逆回転により、トナー像Tを担持する用紙Pをニップ部で加熱及び加圧し、トナーを溶融させながら搬送する。本実施形態の定着装置においては、トナー像を担持する用紙Pは、図1に示す矢印方向に搬送され、用紙上のトナー像がニップ部で加熱溶融されることによって、トナー像が定着される。その後、用紙Pは、ニップ出口後の分離板8により定着ベルトから用紙が剥離され、用紙搬送方向下流側に配された搬送ローラ9により、定着装置外に排出される。
【0026】
クリーニング手段10は、芳香族ポリアミド系不織布に離型剤であるシリコンオイルを含浸させたクリーニングウェブ11と、新品ウェブが巻かれている供給ローラ12、使用済みウェブを回収する巻き取りローラ13、発泡シリコン樹脂の押圧ローラ14等から構成される。
【0027】
本実施形態の定着装置は、高生産・高画質化に好適なベルト定着方式および低融点トナーを使用するため、加圧側にクリーニング手段10を設けている。すなわち、本実施例では、供給ローラ12と巻き取りローラ13間に配設されるクリーニングウェブ11を押圧ローラ14で加圧ローラ4に当接させている。
【0028】
低融点トナーを使用する場合、定着部材(定着ベルト2)にクリーニングウェブを当接させる構成とすると、ヒータにより加熱される定着部材の温度によってクリーニングウェブからトナーが(クリーニングしたトナーが)溶け出したり、ウェブ当接による定着部材の摺擦傷などが懸念されるが、本実施形態では加圧側にクリーニング手段10を設けた構成により、上記のウェブからのオフセットトナー溶け出しや定着部材の摺擦傷などの点で有利である。
【0029】
巻き軸(巻き取りローラ13)に巻かれたクリーニングウェブ11は、ステップモータ17(図2)により所定の量が送られ、一定のトルクにて巻き取り動作が行われる。前記押圧ローラ14は、支持部材(図略)と押圧バネ(図略)とによりクリーニングウェブ11を加圧ローラ4に押圧するが、本実施形態では、図1に部分拡大図で示すように、加圧ローラ4に対して接離可能に構成されている。押圧ローラ14を(クリーニングウェブ11を挟んで)加圧ローラ4に押圧させた場合、クリーニングウェブ11と加圧ローラ4との間に3〜6mmのニップが形成され、オフセットにより加圧ローラの表面に付着したトナーHTは、加圧ローラ4が矢印の方向に回転することによって前記ニップにてクリーニングウェブ11により拭われる。
【0030】
図2は、定着クリーニング手段10の駆動系の構成を示す模式図である。
この図に示すように、ステップモータ17の回転軸には減速ギア16が固定され、この減速ギア16が、巻き取りローラ13の軸に固定されたギア19に噛み合わされている。符号18はモータ制御部である。ステップモータ17の回転がギア16,19を介して巻き取りローラ13に伝達され、クリーニングウェブ11が巻き取りローラ13に巻き取られる。
【0031】
このような構成において、クリーニングウェブ11は、巻き取りローラ13の回転量により送り量が決定される。本実施形態においては、ステップモータ17の1ステップ回転によりクリーニングウェブ11が0.82mm送られるように、ギアの減速比が設定されている。またステップモータ17はモータ制御部18で、ある所定の通紙枚数に一度、所定時間モータが動作する間欠制御により、新しいウェブが送り出されるようになっている。あるいは、ジョブ毎に所定時間モータが動作する間欠制御でも良い。1ジョブの通紙枚数が多い場合は、ジョブ中の所定の通紙枚数ごとに所定時間モータが動作する間欠制御でもよい。本実施形態では、巻き取りローラの駆動モータを動作する時間を変えることで、クリーニングウェブの送り量を制御している(変化させている)。
【0032】
通常の使用であれば、上記のような間欠制御で充分にクリーニング性能が維持できるように上記所定の通紙枚数及びウェブ送り量を設定してある。しかし、形成する画像の面積率及び用紙種類が上記したような最悪条件の場合には、クリーニングウェブ11へ多量のオフセットトナーが入力する恐れがある。そうすると、オフセットトナーがクリーニングウェブ11上で固まりとなり、クリーニングウェブから粒状のトナーの固まりがすり抜けて加圧ローラ3や定着ベルト2へ吐き出されてしまい、さらには用紙へ着くことでトナー汚れによる画質不良を起こす可能性がある。必ずしもクリーニングウェブの保持能力を超えた分のオフセットトナーが全部クリーニングウェブをすり抜けるわけではないが、次ジョブの最初の加圧ローラ3の温度が高い状態では、ウェブ上に保持されていたトナーが溶け出しやすくなるため、上記のようなクリーニング不良による画像不良が発生しやすくなる。
【0033】
そこで、本実施形態では、クリーニングウェブ11への入力トナーが多い印刷条件(定着条件)のときの印刷(定着)動作終了時(最終紙が定着ニップを通過した後)に、加圧ローラ3に対する押圧ローラ14の押圧を解除し(図1の拡大図に点線で示すように押圧ローラ14を離間させ)、加圧ローラ4からクリーニングウェブ11を離間させ、制御部18がステップモータ17を所定時間連続動作させてウェブの巻き取り動作を行わせるようにしている。巻き取り終了後は押圧ローラ14を図1に実線で示す位置に戻し、クリーニングウェブ11を加圧ローラ3に当接させる。これにより、(クリーニングウェブへの入力トナーが多い印刷条件での印刷ジョブが終了した後の)動作再開時に、加圧ローラ3とクリーニングウェブ11とのニップ部にトナーや紙粉等の汚れが存在しない状態とすることができる。以下の説明では、加圧ローラ3からクリーニングウェブ11を離間させて行うクリーニングウェブ11の連続巻き取り動作を「連続巻き取り動作」と記す。
【0034】
なお、加圧ローラにクリーニングウェブを当接させたまま(加圧ローラからクリーニングウェブを離間させずに)巻き取り動作を行っても、ウェブと加圧ローラとの間のオフセットトナーを引き伸ばすだけで、完全にフレッシュなウェブの面を出すにはある程度の量を巻かなくてはならない(巻き取り量が多くなる)ため、クリーニングウェブを無駄に使用するばかりでなく、フレッシュな面が出ないうちに次ジョブが開始されてしまう可能性もあるため、非効率である。
【0035】
また、上記連続巻き取り動作における巻き取り量(巻き取り時間)は、効率面を考慮して、加圧ローラとクリーニングウェブのニップ幅分(本例では3〜6mm)だけ送ることが好ましい。ニップ幅以下の巻き取り量ではフレッシュな面が出ず、ニップ幅以上を巻き取ると不必要にウェブを消費するためである。本実施形態では、上記のように効率的にクリーニングウェブ11の新たな部分を加圧ローラ3の周面に送り出してクリーニングを行うように構成したので、次ジョブの初期における異物吐き出しによるトナー汚れ(クリーニングウェブと加圧ローラ周面との間に挟持されたトナー等の異物が次ジョブの開始時に吐き出されて加圧ローラや定着ベルトに付着し、更には用紙へ付着すること)による画質不良の発生を防止することができる。
【0036】
上記の連続巻き取り動作を実施するクリーニングウェブ11への入力トナーが多い印刷(定着)条件としては、両面印刷(定着)時のほか、用紙表面の凹凸が大きい用紙での片面印刷(定着)時など、適宜に設定可能である。
【0037】
また、連続巻き取り動作時以外にクリーニングウェブ11の巻取りを行う場合(上記した間欠制御での巻き取り動作時)の巻き取り量(巻き取り時間)は、画像濃度(画像面積率)によって、あるいは、片面印刷または両面印刷によって、あるいは、通紙する用紙の種類、例えばコート紙または非コート紙によって、あるいは、通紙する用紙銘柄によって、それぞれ巻き取り量を変更するように制御すると好適である。
【0038】
その巻き取り量(巻き取り時間)の制御方法としては、上記のような画像濃度、片面印刷または両面印刷、あるいは、通紙する用紙の種類、あるいは、通紙する用紙銘柄などの、各条件ごとの巻き取り量(巻き取り時間)を制御テーブルとして記憶手段(例えば画像形成装置の制御部が備えるメモリ等)に格納しておき、印刷条件に基づいて上記制御テーブルから該当する巻き取り量を読み出してステップモータ17の駆動時間を制御するように構成しても良い。
【0039】
上記した間欠制御でのウェブ巻き取り量を上記のように制御することにより、各条件ごとに最適な量だけクリーニングウェブ11を巻き取ることができるので、ウェブの無駄な消費を抑制することができ、また、ウェブの高寿命化を図ることができる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態の定着装置を図3を参照して説明する。なお、上記説明した第1実施形態と重複する説明は省略し、異なる部分を中心に説明する。
本第2実施形態の定着装置が前記第1実施形態の定着装置と異なる点は、加圧ローラ4が定着ローラ3(及び定着ベルト2)に対して接離可能に設けられていること、クリーニング手段の押圧ローラ14が固定配置されていること、および、定着駆動手段は加圧ローラ4ではなく定着ローラ3を駆動するように構成されていることである。
【0041】
本第2実施形態では、図示しない定着駆動手段が定着ローラ3を回転駆動することにより、加熱ローラ1と定着ローラ3に掛け回された定着ベルト2が図3に矢印で示すように時計回り方向に回動する。加圧ローラ4は、定着ベルト2を挟んで定着ローラ3に圧接されているときに、定着ベルト2及び定着ローラ3に従動回転する。
【0042】
クリーニング手段10Bの押圧ローラ14は固定配置であるが(前記第1実施形態のように加圧ローラ4に対して接離するように移動しないが)、加圧ローラ4が定着ローラ3に対して接離することによって、加圧ローラ4が押圧ローラ14(に掛け渡されているクリーニングウェブ11)に対して接離するように構成されている。
【0043】
すなわち、図3に実線で示すように加圧ローラ4が定着ローラ3に圧接されたときには、押圧ローラ14に掛け渡されているクリーニングウェブ11に加圧ローラ4が圧接される。そして、図3に点線で示すように加圧ローラ4が定着ローラ3から離間されたときには、押圧ローラ14に掛け渡されているクリーニングウェブ11から加圧ローラ4が離間する。クリーニングウェブ11(押圧ローラ14)を加圧ローラ4に接離させるように構成しなくともクリーニングウェブ11と加圧ローラ4が接離可能なため、クリーニング手段10の構成を簡単なものとすることができる。
【0044】
加圧ローラ4を定着ベルト2及び定着ローラ3に接離させる構成は、本例では、加圧ローラ4が取り付けられたアーム(図示せず)を揺動自在に支持するとともに、そのアームの一端部に偏心カムを当接させ、その偏心カムをモータによって所定のタイミングで所定量だけ回転させることにより、アームを揺動させる(定着ベルト2及び定着ローラ3に接近又は遠ざかるように揺動させる)ように設けている。なお、ソレノイドを用いてアームを揺動させる構成も可能である。
【0045】
クリーニング手段10Bの駆動制御は前記第1実施形態の場合と同じである。すなわち、クリーニングウェブ11への入力トナーが多い印刷条件のときの印刷動作終了時(最終紙が定着ニップを通過した後)に、定着ベルト2及び定着ローラ3に対する加圧ローラ4の押圧を解除し(図3に点線で示すように加圧ローラ4を離間させ)、クリーニングウェブ11から加圧ローラ4を離間させ、図2に示す制御部18がステップモータ17を所定時間連続動作させてウェブの巻き取り動作を行わせる。これにより、(クリーニングウェブへの入力トナーが多い印刷条件での印刷ジョブが終了した後の)動作再開時に、加圧ローラ4とクリーニングウェブ11とのニップ部にトナーや紙粉等の汚れが存在しない状態とすることができる。なお、加圧ローラ4は次ジョブの開始前に定着ベルト2(及び定着ローラ3)に圧接するように戻され、加圧ローラ4がクリーニングウェブ11(及び押圧ローラ14)に圧接される。連続巻き取り動作を実施する印刷条件や、連続巻き取り動作時の巻き取り量(巻き取り時間)などは、前記第1実施形態の場合と同じである。連続巻き取り動作時以外の間欠制御における巻き取り量なども前記第1実施形態の場合と同じである。
【0046】
本第2実施形態では、加圧ローラ4を定着ベルト2(及び定着ローラ3)に対して接離可能に設けているが、この構成はブリスタ発生の抑制に非常に有効である。ブリスタは、用紙表面の水分およびトナー層内のトナーとトナーの空隙(に含まれる水分)が定着部を通過する際に加熱膨張して水蒸気となり、この水蒸気でトナー層中に気泡を発生させるたり、あるいは紙中の水分がコート層を通過して蒸発したりする結果、トナー表面がザラザラとした画像の荒れを生じる現象のことである。
【0047】
図4は、連続印刷時の加圧ローラ温度推移とブリスタランクを表したものである。図中に2種類の点線でブリスタのランクを示してある。ランク3はブリスタの発生がほとんど無し、ランク2は一部にブリスタ発生あり、である。加圧ローラの離間なし(定着ベルト2及び定着ローラ3に対する圧接解除無し)の場合ではランク2以上、離間ありの場合ではランク3以上が達成できるため、ブリスタに対して有効な手段であることが分かる。
【0048】
したがって、加圧ローラ4を定着ベルト2(及び定着ローラ3)に対して接離可能な構成と、クリーニングウェブ11から加圧ローラ4を離間させた状態でのウェブ連続巻き取り動作を実施できる構成とを併せることによって、簡単な構成のクリーニング手段においてクリーニングウェブからの吐き出しによるトナー汚れによる画質不良の発生を防止できるとともにブリスタ発生のない、優れた定着品質を得ることができる。
【0049】
次の表1は、クリーニングウェブ11へのオフセット量Yに基づいて設定したクリーニングウェブ11の送り量(巻き取り量)を示す制御テーブルである。なお、オフセット量Yは、図8のグラフにおける縦軸に相当するもので、ウェブ紙の画像濃度(ウェブ表面に対する異物の面積率)で表している。
【0050】
【表1】

【0051】
上記した第1実施形態および第2実施形態では、オフセット量Yが0.2(20%)以下のときのウェブ送り量0.82mmを標準設定とし、以下、表1に示すとおりに設定している。この制御テーブルにしたがってクリーニングウェブ11の送り量を設定することにより、クリーニングウェブ11へのオフセット量に応じた最適なウェブ送り量とすることができる。
【0052】
クリーニングウェブへのオフセット量は、Yの値が0.35(35%)<Y≦0.45(45%)となる画像データを出力するときが最も多く(図8参照)、これより孤立画素の黒化率が増えても減っても減少する傾向にある。そのため、出力する(定着する)画像によってクリーニングウェブ11の送り量(巻き取り量)を変更することで、クリーニングウェブの長寿命化(クリーニング手段が備えているクリーニングウェブ11を使用できる期間を長くすること)が可能となる。
【0053】
上記Yの値は出力する画像データにより算出でき、例えば複写機の場合は読み取った原稿の画像面積率に基づいて、また、プリンタの場合はホストマシンから受け取った画像情報に基づいて、ファクシミリの場合は受信した画像情報に基づいて、それぞれYを算出できる。なお、表1に示すオフセット量Yに基づくクリーニングウェブ11の送り量(巻き取り量)は一例であり、定着装置及び画像形成装置の構成や使用するトナー等の条件により、適宜設定可能なものである。
【0054】
次の表2は、片面印刷時と両面印刷時におけるクリーニングウェブ11へのオフセット量Yに基づいて設定したクリーニングウェブ11の送り量(巻き取り量)を示す制御テーブルである。オフセット量Yが0.2(20%)以下のときの片面印刷時のウェブ送り量0.82mmおよび両面印刷時のウェブ送り量1.31mmを標準設定とし、以下、表2に示すとおりに設定している。なお、片面プリント時の送り量は、上記表1と対応するものである。
【0055】
【表2】

【0056】
両面印刷時のウェブ送り量は、片面印刷時よりも多くなるように設定する。これは、両面印刷の場合は、低温オフセットする条件で定着された第1面側のトナーが再度加圧ローラ側でオフセットすることにより、片面印刷時よりもクリーニングウェブへの入力トナー量が多くなるためである。上記した第1実施形態および第2実施形態では、両面印刷時のウェブ送り量が片面印刷時の1.6倍となるように設定している。これにより、片面印刷時および両面印刷時においてそれぞれに最適なウェブ送り量とすることができ、クリーニングウェブの長寿命化が可能となる。なお、表2に示すオフセット量Yに基づくクリーニングウェブ11の送り量(巻き取り量)は一例であり、定着装置及び画像形成装置の構成や使用するトナー等の条件により、適宜設定可能なものである。
【0057】
また、画像形成に用いる用紙種類によってもクリーニングウェブへの入力トナー量は異なってくる。図9のグラフで示したように、非コート紙の方がコート紙よりもオフセットトナー量が多くなっている。これは、非コート紙に比べ、コート紙は表面が平滑であることから、トナーに対して熱が伝わり易く、オフセット量が少ないためである。したがって、コート紙を用いる際に非コート紙と同程度のウェブ送り量とすると過剰な送り量となってしまう。そこで、第1実施形態および第2実施形態では、プリント時に画像形成装置の制御部から送信される紙種情報に基づき、非コート紙の場合のクリーニングウェブ11の送り量をコート紙の0.6倍に設定する。次の表3に、コート紙を用いた場合と非コート紙を用いた場合のクリーニングウェブ11の送り量を示す。なお、表3の非コート紙の送り量は、上記表1と対応するものである。
【0058】
【表3】

【0059】
また、用紙銘柄によって、それぞれ最適なウェブ送り量を予め設定しておき、制御テーブルとして記憶手段(例えば画像形成装置の制御部が備えるメモリ等)に格納しておくことで、用紙銘柄に応じて、よりきめの細かいクリーニングウェブの巻き取り制御を行なうことができる。これによって、効率的にクリーニングウェブを使用することができ、長寿命化が可能となる。
【0060】
また、ユーザが任意にクリーニングウェブの送り量を設定できる(変更できる)ように構成しても良い。例えば、画像形成装置が備える操作部(操作パネル)等からクリーニングウェブの送り量を指定(入力)できるように設けることも可能である。このように構成すれば、あらかじめウェブ送り量が把握されている用紙であっても、環境条件やトナー付着量のバラツキによってオフセット量が増えたような場合でも、ユーザが操作パネル等からクリーニングウェブの送り量を指定することによって、最適なウェブ送り量を設定することができ、オフセットトナーによる画像汚れを防止する(画像品質を維持する)とともにクリーニングウェブの無駄な消費を抑制することができる。
【0061】
次に、本発明の第3実施形態の定着装置を図5を参照して説明する。なお、上記説明した第1実施形態及び第2実施形態と重複する説明は省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0062】
本第3実施形態の定着装置は、加圧側に設けられたクリーニング手段10Cの構成が第2実施形態のクリーニング手段10Bと異なること以外は第2実施形態の定着装置と同じである。すなわち、図5の断面構成図に示すように、加圧ローラ4が定着ローラ3(及び定着ベルト2)に対して接離可能に設けられており、定着駆動手段は定着ローラ3を駆動するように構成されている。加圧ローラ4は、加圧ローラ4が定着ローラ3(及び定着ベルト2)に圧接されたときに定着ローラ3(及び定着ベルト2)に従動回転する。
【0063】
第1実施形態のクリーニング手段10及び第2実施形態のクリーニング手段10Bは、共に巻き取りローラ13を回転駆動してクリーニングウェブ11を巻き取る構成(図2参照)であるため、クリーニングウェブ11の巻き取り量(巻き取りスピード)を一定にするためには、巻き取り径の変化に対応して巻き取り量を調整する(巻き取りローラ13の速度を調整する)必要がある。一方、一定の速度で巻き取りローラ13を駆動した場合には、巻取りローラに巻き取られた使用済みのクリーニングウェブの量が増大するにつれて、巻取りローラの最外周の周速度が速くなる。つまり、巻取り量が増大して巻取りローラの外径(巻取りローラに巻き取られた使用済みクリーニングウェブの最外層と巻取りローラの軸芯との距離)が増大すると、それにつれて最外周の周速度、即ちクリーニングウェブの巻き取り速度が速くなるため、当初の巻き取り量(送り量)が適正な値となるように駆動継続時間(間欠駆動される巻取りローラの各回の駆動継続時間)を設定しておくと、巻き取られたウェブの量が増えるにしたがって巻き取り量(送り量)が増大することになる。
【0064】
クリーニングウェブの巻き取り量(送り量)を一定にする技術としては、たとえば特開2003−5562号公報(特許文献4)に、クリーニングウェブ上に被検出物を設け、透過濃度計によって被検出物を検出し、その検知間隔に応じてクリーニングウェブの送り量を制御することが記載されている。しかし、この方法では、クリーニングウェブ上に被検出物を設けなければならず、また、その被検出物を検出する検出手段(特許文献4では透過濃度計)も備えなければならない。しかも検知間隔に応じて送り量を制御するため、不可避的に制御が複雑化することになる。
【0065】
そのような点を解決できる方策としては、クリーニングウェブを定着部材又は加圧部材に押し付ける押圧ローラを一定速度で駆動する方法がある。しかし、押圧ローラを固定配置した構成においては、印刷動作終了時に、押圧ローラと定着部材又は加圧部材とのニップ部にオフセットトナーや紙粉等の汚れが存在する状態(クリーニングウェブにより拭われたオフセットトナーや紙粉等の汚れが、押圧ローラと定着部材又は加圧部材とが当接したニップ部に位置して停止している状態)となり、次ジョブの初期における定着部材又は加圧部材の温度が高い状態でウェブ上に保持されていたトナーが溶け出しやすくなるため、クリーニングウェブから粒状のトナーの固まりがすり抜けて定着部材又は加圧部材へ吐き出されてしまい、さらには用紙へ付着することでトナー汚れによる画質不良を起こす問題がある。押圧ローラを定着部材又は加圧部材から離間可能に構成してやれば、待機後の印刷開始時に(次ジョブの開始時に)発生する上記問題は解消できるが、駆動される(駆動系を備えている)押圧ローラを移動可能に設けるとクリーニング手段の構成が複雑となってしまう。
【0066】
そこで、本第3実施形態の定着装置では、クリーニング手段の押圧ローラを一定速度で駆動する構成で固定配置とし、加圧ローラ3を上記第2実施形態と同様に加圧ローラ4を定着ローラ3(及び定着ベルト2)に対して接離可能に設け、図5に実線で示すように加圧ローラ4が定着ローラ3に圧接されたときには、押圧ローラ14に掛け渡されているクリーニングウェブ11に加圧ローラ4が圧接され、図3に点線で示すように加圧ローラ4が定着ローラ3から離間されたときには、押圧ローラ14に掛け渡されているクリーニングウェブ11から加圧ローラ4が離間するように構成した。該構成により、クリーニング手段の構成を簡単なものとして待機後の印刷開始時におけるトナーすり抜けによる画像不良を防止できる。
【0067】
このような構成において、加圧ローラ4を定着ローラ3に圧接させて押圧ローラ14がクリーニングウェブ11を加圧ローラ4に押し付けている状態では、クリーニングウェブ11を搬送する力は押圧ローラ14とクリーニングウェブ11との間の摩擦力である。ここで、この摩擦力は、押圧ローラ14とクリーニングウェブ11間の摩擦力が大きく設定されていること、および、クリーニングウェブ11の押圧ローラ14への巻き付け角度が大きいことによって、クリーニングウェブ11と加圧ローラ4との間の抵抗力よりもかなり大きくなるように構成されている。これにより、クリーニング手段10Cにおいては、支障なくクリーニングウェブ11を搬送する(ウェブを送る)ことができる。
【0068】
本第3実施形態が備えるクリーニング手段10Cでは、ステップモータ17を一定速度で駆動することにより押圧ローラ14が一定速度で回転する。押圧ローラ14の外径はウェブの巻き取り量に関わらず一定であるため、一定速度で回転する押圧ローラ14によってクリーニングウェブ11が一定速度で搬送される。すなわち、クリーニングウェブ11の定速送りが簡単な構成で実現できる。
【0069】
本第3実施形態におけるクリーニングウェブ11の巻き取り制御について以下に説明する。
押圧ローラ14により搬送されたウェブ11を巻き取る場合、巻取りローラ13によって巻き取れば良いのであるが、巻取りローラ13の回転数を一定とすると巻取り量が多くなるに従い、径が増大する為、巻取り速度が大きくなってしまい、ウェブを引っ張ってしまうことになる。そこで本実施形態では、押圧ローラ14によって搬送された量の分だけ巻取りローラ13で巻取るために、図6に示すようにクリーニング手段10Cを構成している。
【0070】
すなわち、図6において、ステップモータ17の回転軸には減速ギア16が固定され、この減速ギア16が、押圧ローラ14の軸に固定されたギア19に噛み合わされている。さらにギア19には、トルク規制手段である二段ギア21の大径側ギア21bが噛み合わされている。そして、二段ギア21の小径側ギア21aに、巻き取りローラ13の軸に固定されたギア22が噛み合わされている。二段ギア21の小径側ギア21a及び大径側ギア21bは軸20に固定されておらず、軸に対して自由回転できるように遊嵌されている。小径側ギア21aと大径側ギア21bの対向面(対向するギア端面)にはそれぞれ摩擦部材が固定されており、摩擦部材同士が所定圧で圧接されるように図示しない付勢手段(例えばバネ)により付勢されている。符号18はモータ制御部である。ステップモータ17の回転がギア16,19を介して押圧ローラ14に伝達され、さらに、二段ギア21を介してギア22に駆動力を伝えて巻き取りローラ13を回転させる。
【0071】
上記のように、二段ギア21の小径側ギア21aと大径側ギア21bは、それぞれの対向面に設けられた摩擦部材同士が所定の圧力で圧接されており、ギア19から大径側ギア21bに入力された駆動力は、摩擦部材の摩擦力によって小径側ギア21aに伝えられるため、巻き取りローラ13に所定の負荷トルク以上のトルクが負荷されている場合は、摩擦部材の間ですべりを生じる機構になっている。
【0072】
したがって、押圧ローラ14が送り出した量以上に巻き取りローラ13がクリーニングウェブ11を巻き取ろうとすると、小径側ギア21aと大径側ギア21bの間ですべりを生じ、必要以上にクリーニングウェブ11を押圧ローラ14が引っ張ってしまうことがない。
【0073】
本願発明者が行なった実験によると、小径側ギア21aと大径側ギア21bの各対向面に設けられた摩擦部材同士を圧接させる押圧力は、数百グラム程度でよく、簡単な構成でクリーニングウェブの引っ張り防止を実現できる。摩擦部材としては、フェルトや弾性体の使用が考えられる。
【0074】
なお、本例では摩擦部材を介してすべりを生じさせる(トルクを制限する)構成としたが、トルクリミッタを用いる構成や、磁力を利用して駆動力を伝達する(トルクを制限する)構成、あるいは流体の粘性を利用して回転力を伝える方法など、適宜な構成を採用可能である。
【0075】
さらに、押圧ローラ14と巻き取りローラ13間のクリーニングウェブ11の弛みを検出して、一定量たるみが生じたら巻き取りローラ13を駆動するような構成も可能である。
【0076】
本実施形態の構成において、加圧ローラ4が定着ローラ3に圧接され押圧ローラ14(クリーニングウェブ11)に加圧ローラ4が圧接された場合、クリーニングウェブ11と加圧ローラ4との間に3〜6mmのニップが形成され、オフセットにより加圧ローラ4の表面に付着したトナー等の異物は、加圧ローラ4が矢印の方向に回転することによって前記ニップにてクリーニングウェブ11により拭われる。
【0077】
そして、第2実施形態と同様に、定着ベルト2及び定着ローラ3に対する加圧ローラ4の押圧を解除し、クリーニングウェブ11から加圧ローラ4を離間させた状態でステップモータ17を所定時間連続動作させてクリーニングウェブの巻き取り動作を行わせる。これにより、クリーニングウェブからの吐き出しによるトナー汚れによる画質不良の発生を防止できる。
【0078】
上記したクリーニングウェブの連続巻き取り動作は、第2実施形態と同様、クリーニングウェブ11への入力トナーが多い印刷条件のときの印刷動作終了時(最終紙が定着ニップを通過した後)に行なうものとする。また、連続巻き取り動作を実施する印刷条件や、連続巻き取り動作時の巻き取り量(巻き取り時間)などは、前記第1実施形態の場合と同じである。
【0079】
連続巻き取り動作時以外の間欠制御における巻き取り量なども前記第1実施形態及び第2実施形態の場合と同じである。また、操作パネル等からの指定により、ユーザが任意にクリーニングウェブの送り量を設定できる(変更できる)ように構成しても良い。
【0080】
上述したように本発明による定着装置によれば、クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に加圧部材とクリーニングウェブとを離間させた状態で、所定時間連続してクリーニングウェブの巻き取り動作を行なうので、動作再開時(次ジョブ開始時)に、加圧部材とクリーニングウェブとの当接ニップ部にトナーや紙粉等の汚れが存在しない状態とすることができ、それら異物の吐き出しによるトナー汚れなどの画質不良の発生を防止することができる。
【0081】
また、押圧ローラ14によるクリーニングウェブの押圧を解除することにより加圧ローラ4からクリーニングウェブ11を離間させる構成とすることにより、クリーニングウェブ11を確実に離間させることができる。
【0082】
また、加圧ローラ4と定着ローラ3及び定着ベルト2との接離に伴って加圧ローラ4とクリーニングウェブ11とが接離される構成とすることにより、クリーニング手段の構成を簡単なものとすることができる。
【0083】
また、両面定着動作終了時にクリーニングウェブの連続巻き取り動作を実施することで、クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件でも異物の吐き出しによるトナー汚れなどの画質不良の発生を防止することができる。
【0084】
また、用紙表面の凹凸が大きい用紙での定着動作終了時にクリーニングウェブの連続巻き取り動作を実施することで、クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件でも異物の吐き出しによるトナー汚れなどの画質不良の発生を防止することができる。
【0085】
また、クリーニングウェブの連続巻き取り動作を実施するときに、加圧ローラ4とクリーニングウェブ11との当接ニップ幅に相当する距離だけクリーニングウェブを送ることにより、動作再開時にトナーや紙粉等がないクリーンな状態でのクリーニングが可能となる。
【0086】
また、連続巻き取り動作時以外にクリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、片面定着時と両面定着時で変更することで、それぞれに最適な量だけクリーニングウェブを送ることができ、ウェブの無駄な消費を防いで長寿命化を図ることができる。
【0087】
また、連続巻き取り動作時以外にクリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、通紙する用紙がコート紙の場合と非コート紙の場合とで変更することで、それぞれに最適な量だけクリーニングウェブを送ることができ、ウェブの無駄な消費を防いで長寿命化を図ることができる。
【0088】
また、連続巻き取り動作時以外にクリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、通紙する用紙がコート紙の場合と非コート紙の場合とで変更することで、それぞれに最適な量だけクリーニングウェブを送ることができ、ウェブの無駄な消費を防いで長寿命化を図ることができる。
【0089】
また、連続巻き取り動作時以外にクリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、通紙する用紙の銘柄に応じて変更することで、それぞれに最適な量だけクリーニングウェブを送ることができ、ウェブの無駄な消費を防いで長寿命化を図ることができる。
【0090】
また、連続巻き取り動作時以外にクリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、ユーザが変更可能なことで、必要な量だけクリーニングウェブを送ることができ、ウェブの無駄な消費を防いで長寿命化を図ることができる。
【0091】
また、連続巻き取り動作時以外にクリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、通紙する用紙に形成された画像面積率に応じて変更することで、必要なときにのみクリーニングウェブを送ることができ、ウェブの無駄な消費を防いで長寿命化を図ることができる。
【0092】
最後に、本発明に係る定着装置を備える画像形成装置の一例について簡単に説明する。
図7に示す画像形成装置は、デジタル複写機として構成されたものであり、本体部310,給紙部320、操作部330、両面装置350等から構成されている。符号360は、胴内排紙部である。複写機最上部には自動原稿送り装置(ADF)340が装着されている。
【0093】
本体部310には画像形成部が含まれる。また、本体部310の最上部には画像読取部が配置される。本例のデジタル複写機で用いられる画像読取部は、光源を原稿に照射し、その反射光をCCD等の固体撮像素子で電気信号に変換し、必要な画像処理を行う機能を持った装置である。また、画像形成部は、電気信号として送られてきた画像イメージを電子写真方式により記録媒体(転写紙等)上に形成する装置であり、図1で説明した定着装置を備えている。なお、電子写真方式による画像形成方法については周知であるため説明は省略する。
【0094】
この画像形成装置が備える定着装置として、上述した各実施形態の定着装置を備えることにより、クリーニングウェブへの入力トナーが多い印刷条件のときの印刷動作終了時に、加圧ローラ4とクリーニングウェブ11との当接を解除した状態で連続巻き取り動作を実施することで、オフセットトナーの吐き出しによる画像汚れを防止することができ、また、クリーニングウェブの無駄な消費を抑制することができる。
【0095】
本例のデジタル複写機は両面装置350を備えており、用紙両面への画像形成が可能となっている。そして、上述したように、両面プリント時のクリーニングウェブの送り量を片面プリント時に対して1.6倍に設定している。
【0096】
また、給紙部320には複数段の給紙トレイを有しており、種類の違う用紙、例えば非コート紙とコート紙をセットすることができる。各トレイにセットした用紙種類は、操作部330のタッチパネルや入力キーを用いて設定する。本例のデジタル複写機では、上述したように、紙種情報に基づき、非コート紙の場合のクリーニングウェブの送り量をコート紙の0.6倍に設定する。さらに、ユーザがウェブ送り量を変更する(指定する)場合は、操作部330から必要な指示入力を行なう。
【0097】
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、定着装置の構成は任意であり、ベルト定着装置に限らず、ヒートロール方式でも良い。また、熱源もハロゲンヒータに限らず、IH方式の加熱手段であってもよいし、また、抵抗発熱体、カーボンヒータ等であってもよい。定着クリーニング手段のクリーニングウェブの材質や厚さ、大きさ等は任意である。
【0098】
また、画像形成装置の各部の構成も任意であり、タンデム式や一つの感光体の周囲に複数の現像装置を配置したもの、あるいは、リボルバ型現像装置を用いる構成も可能である。また、3色のトナーを用いるフルカラー機や、2色のトナーによる多色機、あるいはモノクロ装置にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としては複写機に限らず、プリンタやファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
【符号の説明】
【0099】
1 加熱ローラ
2 定着ベルト(定着部材)
3 定着ローラ
4 加圧ローラ(加圧部材)
6,7 定着ヒータ
10 クリーニング手段
11 クリーニングウェブ
12 供給ローラ
13 巻き取りローラ
14 押圧ローラ
17 ステップモータ
21 二段ギア(トルク規制手段)
330 操作部
350 両面装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【特許文献1】特開2002−258657号公報
【特許文献2】特開2005−024619号公報
【特許文献3】特開平11−24484号公報
【特許文献4】特開2003−5562号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段によって加熱される定着部材と、該定着部材に圧接される加圧部材とを有し、前記定着部材と前記加圧部材間に形成される定着ニップに未定着画像を担持した記録媒体を通過させて画像の定着を行なう定着装置において、
前記加圧部材の表面をクリーニングウェブを送って清掃するクリーニング手段を備え、
前記加圧部材と前記クリーニングウェブとを接離可能に設け、
前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件における定着動作終了時に、前記加圧部材と前記クリーニングウェブとを離間させた状態で、所定時間連続して前記クリーニングウェブの巻き取り動作を行なうことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記クリーニング手段は前記クリーニングウェブを前記加圧部材に押し付ける押圧部材を有し、該押圧部材による前記クリーニングウェブの押圧を解除することにより前記加圧部材から前記クリーニングウェブを離間させることを特徴とする、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記加圧部材と前記定着部材とを接離可能に設け、前記加圧部材と前記定着部材との接離に伴って前記加圧部材と前記クリーニングウェブとが接離されることを特徴とする、請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件が、両面定着動作であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記クリーニングウェブへの入力トナーが多い条件が、用紙表面の凹凸が大きい用紙での定着動作であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記所定時間が、前記加圧部材と前記クリーニングウェブとの当接ニップ幅に相当する距離だけ前記クリーニングウェブを送る時間であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記連続巻き取り動作時以外に前記クリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、片面定着時と両面定着時で変更することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記連続巻き取り動作時以外に前記クリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、通紙する用紙がコート紙の場合と非コート紙の場合とで変更することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記連続巻き取り動作時以外に前記クリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、通紙する用紙の銘柄に応じて変更することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記連続巻き取り動作時以外に前記クリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、ユーザが変更可能に設けられていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
前記連続巻き取り動作時以外に前記クリーニングウェブを巻き取る場合のクリーニングウェブ送り量を、通紙する用紙に形成された画像面積率に応じて変更することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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