説明

定着装置と画像形成装置とプログラム

【課題】 ヒータへの給電のオフ時の急激な電圧変動を抑えられるようにする。
【解決手段】 記録紙に転写されたトナー像をヒータによる加熱によって記録紙上に定着させる定着装置において、制御部20は、電源21からヒータ41への給電をオンからオフにするとき、電源21からの電力を蓄電装置24への充電に切り換え、その充電電流を徐々に減らしながら所定期間の充電を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トナー像を記録紙に定着する定着装置とその定着装置を備えたファクシミリ装置,プリンタ,複写機,複合機を含む画像形成装置とプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、印刷用紙上のトナーを定着させるために印刷用紙に加熱するための定着装置を備えており、その定着装置の加熱用のヒータ(例えば、抵抗ヒータ,ハロゲンヒータ)をいきなりフル点灯すると、ヒータに大きな突入電流が流れて電源コード端で電圧変動が発生し、その電圧変動が原因で、画像形成装置を設置した室内の照明にちらつき(これを「フリッカ」と呼ぶ)を発生させ、室内の作業者に不快感を与える場合があった。
そのため、例えば、欧州では、画像形成装置における電圧変動を一定以下に抑えるように規制を設けている。
そこで、上記のようなフリッカの原因となる電圧変動を回避するため、定着装置のヒータをいきなりフル点灯するのではなく、位相制御によってヒータへ少しずつ給電して点灯する制御方法(このような制御方法を「ソフトスタート」と呼んでいる)を適用した画像形成装置が提供されている。
【0003】
しかし、上述のようなソフトスタートは、位相制御によって電源電流に高調波成分を発生させてしまうので、その高調波成分を含んだ電流が原因で電力会社の電力用コンデンサを過熱させたり、ブレーカを誤動作させてしまう恐れがあった。
そのため、日本や欧州では、画像形成装置を含む装置における高調波成分を含んだ電流をある一定値以下に抑えるようにも規制されている。
一方では、近年の画像形成装置の動作の高速化、また立上げ時間の短縮要求により、定着装置のヒータの電力量はますます大電力化する必要があり、ヒータが大電力化した場合、電圧変動が大きくなって照明のちらつきが悪化する。
【0004】
そこで、ヒータを大電力化する場合、フリッカの症状を抑えるために位相制御の時間を長くすると共に、その位相制御の時間を長くすることによる高調波の悪化を抑えるためにソフトスタートのパラメータを最適化する制御方法が取られていたが、ヒータの大電力化とヒータの本数の増加傾向が続き、上記のような位相制御のパラメータを調整するという対策方法では、上記規制のクリアがますます困難になっているという問題があった。
従来、突入電流を抑えて電圧変動とフリッカを抑制する目的で、定着装置のヒータへの給電開始(給電オン)時にキャパシタからの給電によってヒータを加熱した後に、引き続きAC電源からの給電でヒータを加熱するようにした定着装置(例えば、特許文献1参照)があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、ヒータへの給電オン時にキャパシタから給電してヒータを温めることによりAC電源からヒータへの突入電流を抑えるようにしたものであり、ヒータへの給電オフ時の急激な電圧変動を抑えることができないという問題があった。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ヒータへの給電のオフ時の急激な電圧変動を抑えられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記の目的を達成するため、記録紙に転写されたトナー像をヒータによる加熱によって記録紙上に定着させる定着装置において、上記ヒータに電力を供給する電源及び蓄電装置を有し、上記電源から上記ヒータへの給電をオンからオフにするとき、上記電源からの電力を上記蓄電装置への充電に切り換え、その充電電流を徐々に減らしながら所定期間の充電を行わせる手段を設けた定着装置を提供する。
また、上記電源から上記ヒータへの給電をオンにするとき、上記電源からの電力を上記蓄電装置に充電電流を徐々に増やしながら所定期間充電した後に、上記電源からの電力を上記ヒータへの給電に切り替える手段を設けるとよい。
さらに、上記電源から上記ヒータへの給電をオンからオフにするとき、上記ヒータへの給電を所定の位相角まで位相制御して停止させた後に上記所定期間の充電を行わせる手段を設けるとよい。
【0007】
また、上記電源から上記ヒータへの給電をオンにするとき、上記電源からの電力を上記ヒータへの給電に切り替える際、所定の位相角から位相制御で給電を開始させる手段を設けるとよい。
さらに、上記位相角を90°未満にするとよい。
また、上記ヒータへの給電をオンにするとき、上記蓄電装置の充電量を検知し、上記蓄電装置の充電量が所定電力以下のときには上記蓄電装置に所定期間の充電を行った後に上記ヒータへ放電させ、所定期間以上の放電を行わせた後に上記電源から上記ヒータへ給電させる手段を設けるとよい。
さらに、上記電源から上記蓄電装置へ充電する所定期間を変更する手段を設けるとよい。
また、上述のような定着装置を備えた画像形成装置と、コンピュータに、ヒータに電力を供給する電源からの給電をオンからオフにするとき、上記電源からの電力を上記ヒータへ給電する蓄電装置への充電に切り換え、その充電電流を徐々に減らしながら所定期間の充電を行わせる手順を実行させるためのプログラムも提供する。
【発明の効果】
【0008】
この発明による定着装置と画像形成装置は、ヒータへの給電のオフ時の急激な電圧変動を抑えることができる。
また、この発明によるプログラムは、コンピュータに、ヒータへの給電のオフ時の急激な電圧変動を抑えることができるようにするための機能を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図2に示す画像形成装置の実施例1の定着装置の内部構成と定着装置への給電制御に係る各部との構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施例1〜5に共通する画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す定着ヒータをオンするときの制御処理を示すフローチャート図である。
【図4】図1に示す定着ヒータのオン時の各部の出力波形を示す図である。
【図5】図4のヒータトリガ信号をオフからオンに切り換えるときとその前後のタイミングにおける各波形部分を拡大して示す図である。
【0010】
【図6】図1に示す定着ヒータをオフするときの制御処理を示すフローチャート図である。
【図7】図1に示す定着ヒータのオフ時の各部の出力波形を示す図である。
【図8】図7のヒータトリガ信号をオンからオフに切り換えるときとその前後のタイミングにおける各波形部分を拡大して示す図である。
【図9】図2に示す画像形成装置の実施例2の定着装置の内部構成と定着装置への給電制御に係る各部との構成を示すブロック図である。
【図10】図2に示す画像形成装置の実施例3の定着装置の内部構成と定着装置への給電制御に係る各部との構成を示すブロック図である。
【0011】
【図11】図2に示す画像形成装置の実施例3における定着ヒータをオンするときの制御処理を示すフローチャート図である。
【図12】蓄電装置の充電制御時の各部の出力波形を示す図である。
【図13】図12の蓄電装置の充電開始前後のタイミングにおける各波形部分を拡大して示す図である。
【図14】図2に示す画像形成装置の実施例4における定着ヒータをオンするときの制御処理を示すフローチャート図である。
【0012】
【図15】充電後にヒータを位相制御する時の各部の出力波形を示す図である。
【図16】図2に示す画像形成装置の実施例4における定着ヒータをオフするときの制御処理を示すフローチャート図である。
【図17】ヒータを位相制御してオフに切り換える時の各部の出力波形を示す図である。
【図18】図2に示す画像形成装置の実施例5における蓄電装置への充放電制御処理を示すフローチャート図である。
【図19】図2に示す画像形成装置の実施例5における蓄電装置への他の充放電制御処理例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図2は、この発明の実施例1〜5に共通する画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
なお、この図では、後述する電源,蓄電装置を含む各機能の図示を省略している。
この画像形成装置1は、例えば、ファクシミリ機能,スキャナ機能,コピー機能,プリント機能を備えた複合機であり、像担持体である感光体2と、その感光体2上を画像信号に応じて光学的に走査する光走査装置3と、帯電チャージャ4,現像装置5,転写チャージャ6,クリーニング装置7を含む作像プロセス(画像形成プロセス)と転写プロセスを行うプロセスユニットを備えている。
【0014】
さらに、用紙を供給する上給紙カセット8aと下給紙カセット8bと、現像装置5で現像されて用紙上に転写されたトナー画像を熱定着する定着装置10と、定着装置10で定着処理されて排紙路Pを介して排紙される用紙を受ける上排紙トレイ9aと下排紙トレイ9bとオプションとして備えられた大量給紙装置11とを備えている。
そして、上給紙カセット8a,下給紙カセット8b,および大量給紙装置11には、それぞれ用紙を順次送出するための上給紙コロ12,下給紙コロ13,および大量給紙コロ14を設け、またプロセスユニット内の感光体2の手前には、用紙と感光体2上のトナー画像との用紙送り方向の位置合わせ(縦レジスト調整)を行うためのレジストローラ対15を設けている。
【0015】
この画像形成装置1は、CPU,ROM及びRAMから構成されるマイクロコンピュータの制御部20の制御によって画像の読み取り、画像の印刷、定着装置の制御を含む各種の制御処理を実行する。上記ROMには、プログラムが格納されており、上記CPUが上記RAMを作業領域として上記プログラムの各手順を実行することにより、この画像形成装置1の各種の機能を実現する。
この制御部20の制御により、パーソナルコンピュータを含むホストコンピュータから送られてくる文字コード等のデータを、図示を省略した内部のコントローラによってページ単位の画像データ(画像情報)に変換して、1ライン毎に画像信号としてエンジンドライバ内の制御部20へ出力することにより、用紙上に画像を印刷するものである。
【0016】
つまり、プロセスユニット内の感光体2を図示を省略したメインモータによって所定の方向に回転させ、まず帯電チャージャ4からの放電によってその表面を一様に帯電した後、光走査装置3によって書き込み用の画像信号に応じて変調したレーザ光を照射して、書き込み画像に応じた静電潜像(静電画像)を形成し、現像装置5によってその静電潜像にトナーを付着してトナー画像を形成させる作像処理を行う。
【0017】
一方、選択された用紙に対応する上給紙カセット8a,下給紙カセット8b,および大量給紙装置11の給紙コロ12〜14のうちのいずれかを駆動して用紙を給送し、この用紙の先端をレジストセンサ16で検知すると、この検知結果に基づいて用紙の先端をレジストローラ対15に押し当てて用紙のスキューを矯正し、駆動している給紙コロ12,13又は14を一時停止して用紙を待機させる。
そして、所定のタイミングで再度一時停止している給紙コロ12,13,又は14を駆動すると共にレジストローラ対15を駆動して、用紙をプロセスユニットの転写部に送り込み、この用紙を転写位置で感光体2に接触させてトナー画像に重ね合わせ、所定のタイミングで転写チャージャ6に所定の電圧を印加してトナーを用紙側に引き付け、感光体2上のトナー画像を用紙上に転写する。
搬送路センサ17は、用紙をプロセスユニットの転写部に送り込む搬送路で用紙の有無を検知するセンサである。
【0018】
感光体2から分離した用紙は、プロセスユニットから定着装置10に送り込まれ、その定着装置10が用紙およびトナー画像を加熱しながら加圧してトナー画像を用紙上に溶融定着する処理を施し、この定着処理した用紙は排紙路Pを介して上排紙トレイ9a又は下排紙トレイ9bに排紙される。
また、転写工程を終了した感光体2は、クリーニング装置7によって残留トナーが除去され、図示を省略した除電ランプの照射によって残留電荷が消去されて次の作像プロセスに備える。
【0019】
〔実施例1〕
図1は、図2に示す画像形成装置の実施例1の定着装置の内部構成と定着装置への給電制御に係る各部との構成を示すブロック図である。
この定着装置10は、電源21から電力を供給されており、その電源21は、例えば、商用電源である家庭用の100V/50Hz,100V/60Hzや業務用の200V/50Hz,200V/60Hzの交流電源である。
また、例えば、北米地域の120V/60Hz、あるいは208V/60Hz、240V/60Hzの交流電源も利用できる。
リレースイッチ(SW)22は、後段の定着ヒータ40に対する過昇温度保護素子としての目的と、蓄電装置24,ゼロクロス検出回路34,後段の定着ヒータ40に対して電気系統を完全に遮断して省エネルギー効果を向上させるために挿入している。
【0020】
図1には、リレーSW22の後段に、メイントライアック31,フォトトライアック32,トランジスタ33,ゼロクロス検出回路34を含む定着ヒータ制御回路30と蓄電装置24とを並列に接続した構成例を示しているが、必ずしもこの構成でなくても良い。
例えば、蓄電装置24の給電遮断専用のリレーSWを上記リレーSW22とは別途設けても良いし、リレーSW22を介さずに直接電源21と蓄電装置24を接続した構成にしてもよい。
制御部20は、上述したように、CPU,ROM及びRAMからなるマイクロコンピュータであり、ユーザによって画像形成装置1の図示を省略した主電源が投入されると立ち上がり、定着装置10の給電制御について、リレートリガ信号のオン・オフによってリレーSW22のオン・オフの切り換えを制御する。また、充電開始信号と充電量指示信号と放電開始信号と放電量指示信号によって蓄電装置24の充放電を制御する。さらに、ゼロクロス検出信号に基づいて定着ヒータ制御回路30の定着ヒータ40への給電の開始と停止を制御する。
【0021】
制御部20は、定着系の各部に異常情報が残っていないことを確認後、リレーSW22へのリレートリガ信号をオンにし、リレーSW22は、トランジスタ23を介して入力されるリレートリガ信号がオンになるとスイッチを閉結し、電源21の電力を定着装置10及び蓄電装置24へ給電する。また、制御部20は、過昇温度を検知した時や省エネルギーモード移行時などにリレーSW22へのリレートリガ信号をオフにし、リレーSW22は、トランジスタ23を介して入力されるリレートリガ信号がオフになるとスイッチを開放し、定着装置10及び蓄電装置24への給電を停止する。
【0022】
蓄電装置24は、図示を省略しているが、内部に充電制御部,蓄電部,放電制御部が内蔵されている。その充電制御部には力率を改善する力率改善回路を含んでいても良い。
制御部20は、蓄電装置24の充電を開始するとき充電開始信号をオンにし、蓄電装置24は、制御部20からの充電開始信号がオンになった場合はリレーSW22を介して給電される電源21からの電力を蓄電部に充電する。また、制御部20は、蓄電装置24の放電を開始するとき放電開始信号をオンにし、蓄電装置24は、制御部20からの放電開始信号がオンになった場合は蓄電部に充電された電力を定着ヒータ40へ放電する。そして、制御部20は、蓄電装置24への充電量を指示する充電量指示信号と放電量を指示する放電量指示信号を、別途、RS232Cを含む各種の通信方法、あるいは、アナログ値で直接に出力する。
上述の説明では、蓄電装置24の内部に充電部を内蔵した場合を示したが、充電部は内蔵タイプではなく、蓄電装置24の外部に設けたものにしても良い。
すなわち、画像形成装置1のDC電源の出力から蓄電装置の充電部に電力を充電する構成にしてもよい。
【0023】
定着ヒータ40は、記録紙に転写されたトナー像を定着させるために加熱するヒータであり、この定着ヒータ40の内部には、定着ヒータ制御回路30のメイントライアック31経由の電力で発熱するヒータ41と、蓄電装置24からの供給電力で発熱するヒータ42とが極近傍に設置されている。ヒータ41,42は、例えば、ハロゲンヒータ,抵抗ヒータを含むヒータであり、ハロゲンヒータの場合、200Wから1000Wの比較的大容量のタイプのヒータである。
【0024】
定着ヒータ制御回路30は、ヒータ41への給電を司るメイントライアック31と、メイントライアック31の給電の開始と停止のトリガ素子として機能するフォトトライアック32と、リレーSW22を介して給電される電源21の電力の交流入力を全波整流もしくは半波整流し、電源電圧の絶対値がゼロクロスポイントを含む所定の閾値電圧以下になったことを検知すると、制御部20にゼロクロス検出信号を送出するゼロクロス検出回路34を有する。
通常、定着ヒータ40の位相制御を行うとき、制御部20はこのゼロクロス検出信号に基づいてヒータトリガ信号をオン又はオフにする。
フォトトライアック32は、トランジスタ33を介して入力されるヒータトリガ信号がオンになるとオンに切り換わり、メイントライアック31のゲート端子に規定以上の電圧が印加されたとき、メイントライアック31がオンして、電源21の電力が定着ヒータ制御回路30を介して定着ヒータ40に供給される。
一方、トランジスタ33を介して入力されるヒータトリガ信号がオフになるとフォトトライアック32はオフに切り換わり、メイントライアック31のゲート端子が規定電圧以下になったとき、定着ヒータ40への電力供給が遮断される。
【0025】
この特性により、メイントライアック31がオフにされるタイミングは、電源21の電圧の絶対値のゼロクロスポイント前後となる。フォトトライアック32にはゼロクロスでオンするタイプと、ゼロクロス以外でもオンするタイプの2種類があるが、どちらのタイプのフォトトライアックを使用しても支障はない。
また、制御部20は、定着ヒータ40によって温められる温度を検出し(その検出部の図示は省略する)、その検出温度が所定温度範囲になるように、ヒータトリガ信号の送出を制御する。
【0026】
次に、定着ヒータのオン時の動作を説明する。
図3は、定着ヒータをオンするときの制御処理を示すフローチャート図である。
図4は、定着ヒータのオン時の各部の出力波形を示す図である。
図5は、図4のヒータトリガ信号をオフからオンに切り換えるときとその前後のタイミングにおける各波形部分を拡大して示す図である。
定着ヒータ40の制御には、主に2つの制御方法があり、どちらの制御方法でもよい。
1つ目の制御方法は、温度検知による単純なオン・オフ制御であり、規定温度に達するまで定着ヒータ40をオンし続け、規定温度を越えたら定着ヒータ40をオフする制御である。
【0027】
もう1つの制御方法は、一定の制御周期を有して、その制御周期内で一定割合で定着ヒータ40をオンする制御である。
例えば、制御周期は1秒として、1秒のうち0.5秒だけ定着ヒータ40を点灯させるなどの制御を行う。1秒のうち0.5秒を点灯させる場合の定着ヒータ40を点灯させる時間割合ON_Dutyは50%となる。
上記時間割合ON_Dutyは、制御時の検知温度と予め記憶している規定温度との差分によって決める方法や、PIあるいはPIDによる演算で決める方法がある。
【0028】
図3に示すように、制御部20は、ステップ(図中「S」で示す)1で、定着ヒータがオフの状態から定着ヒータをオンすべきタイミングに達したと検知すると、いきなりヒータトリガ信号をオンにしないで、まず蓄電装置への放電開始信号をオンにし、放電量指示信号によって放電量を指示し、蓄電装置から定着ヒータへの放電を開始させる。
ステップ2で、放電開始から所定期間経過したか否かを判断し、所定期間経過したら、ステップ3で電源からの供給電力の電圧値のゼロクロス検出信号の割り込みが有ったか否かを判断し、ゼロクロス検出信号の割り込みが有ったと判断したら、ステップ4で蓄電装置の放電開始信号をオフにして蓄電装置の放電を停止させ、ステップ5で、ヒータトリガ信号をオンにし、この処理を終了する。
【0029】
図4に示すように、制御部20は、Tのタイミングで蓄電装置24への放電開始信号をオンにし、図4の(d)に示すように、放電量指示信号(この場合は、アナログ値で示している)を、所定期間100msだけ出力し、蓄電装置24からの放電を所定期間100ms行う(なお、所定期間100ms以上行うようにしてもよい)。
上記所定期間は、メイントライアック31で発熱するヒータ41が温まり、大きな突入電流が流れない時間を予め測定して設定しておく。
具体的には、電源21の周波数を50Hzとすると、その周波数の1サイクルは20msなので、電源21の周波数のサイクルを5回繰り返すまで放電を継続し、5回経過した後の、図4の(b),図5の(b)に示すゼロクロス検出信号の立ち上がり(図中100msのポイント)を検出すると、蓄電装置24の放電を停止させると同時に、図4の(a),図5の(a)に示すように、ヒータトリガ信号をオンにする。
【0030】
ヒータトリガ信号がオンになると、トランジスタ33がオンになり、フォトトライアック32が導通する。フォトトライアック32が導通すると、メイントライアック31のゲート端子にリレーSW22を介して電源21からの電力の電圧が印加されるようになる。そして、メイントライアック31のゲート端子の電圧が規定電圧以上になるとメイントライアック31がオンして、図4の(e),図5の(e)に示すように、定着ヒータ40のヒータ41にヒータ通電電流値Aが流れて(図中の波形部分を黒く塗り潰して示す)、ヒータ41が発熱する。
【0031】
このようにして、電源21から直接給電される電力による定着ヒータ40の加熱前に、蓄電装置24による放電によって事前にヒータ42による加熱によって定着ヒータ40をある程度温めておくので、その後、メイントライアック31からの給電で発熱するヒータ41をオンにしても、電源21からヒータ41に流れる突入電流を抑えることができる。
よって、定着ヒータ40のオン時の毎回の突入電流を抑えることができ、急激な電圧変動の抑制にもつながる。
また、上述の説明では、所定期間放電を行った後、ゼロクロス検出信号の立ち上がりのときに放電を停止する場合を示したが、所定期間放電を行った後、ゼロクロス検出信号の立ち上がりでメイントライアック31をオンさせた後も蓄電装置24の放電を継続するようにすれば、定着ヒータ40の昇温を早くすることができ、定着に必要な温度への到達時間を短縮することができる。
【0032】
次に、定着ヒータのオフ時の動作を説明する。
図6は、定着ヒータをオフするときの制御処理を示すフローチャート図である。
図7は、定着ヒータのオフ時の各部の出力波形を示す図である。
図8は、図7のヒータトリガ信号をオンからオフに切り換えるときとその前後のタイミングにおける各波形部分を拡大して示す図である。
この定着ヒータ40をオフするときの制御処理では、定着ヒータ40へ給電する電力は600W/100Vを使用している。
また、説明の簡易化のため、定着ヒータ制御方法は、単純なオン・オフ制御方法を用いた場合で説明する。
【0033】
図6に示すように、制御部20は、定着ヒータ40の現在温度を一定間隔で検出し、ヒータ41をオフする温度に達したと判断したとき、ステップ(図中「S」で示す)11で、ヒータトリガ信号をオフにする。
ステップ12で、ゼロクロス検出信号の割り込みがあったか否かを判断し、ゼロクロス検出信号の割り込みが有ったと判断したら、ステップ13で、蓄電装置に充電を行わせる。ステップ14で蓄電装置への充電量指示信号が所定値以下か否かを判断し、所定値以下でなければ、ステップ13へ戻り、所定値以下と判断するまで充電処理を継続する。このようにして、蓄電装置に所定期間充電を行わせる。
そして、ステップ14で蓄電装置への充電量指示信号が所定値以下と判断したら、蓄電装置への充電を終了させて、この処理を終了する。
【0034】
制御部20は、定着ヒータ40の現在温度を一定間隔で検出し、ヒータ41をオフする温度に達したと判断したとき、図7の(a),図8の(a)に示すT1のタイミングでヒータトリガ信号をオフにする。
すると、ヒータ41へのヒータ通電電流値Aは、図7の(e),図8の(e)に示すように、トライアックの特性によりメイントライアック31のゲート端子の電圧が規定電圧以下になるゼロクロス付近で遮断される。
そして、制御部20は、ゼロクロス検出信号を監視しており(ゼロクロス検出信号は、電源電圧が絶対値で、規定値以下の電圧値になると、ゼロクロス検出回路34から送出される。)、図中に破線で示すゼロクロス信号が立ち上がったタイミング(図中T2の前の破線で示すタイミング)を検出すると、図7の(d),図8の(d)に示すように、充電量指示信号(ここではアナログ値で示している)によって充電量を指示する。その後、図中に破線で示すゼロクロス点を通り越して、ゼロクロス信号が立ち下がったタイミングT2を検出すると、蓄電装置24への充電開始信号(図7には図示省略)をオンにする。そして、制御部は、オン開始時からゼロクロス検出信号が立ち上がったタイミングを検出する毎に、充電量指示信号の表す充電量を段階的に徐々に少なくしていく。
【0035】
こうして、蓄電装置24は、充電開始信号に基づいて蓄電部への充電を開始し、充電量指示信号に基づいて充電量を時間の経過と共に段階的に徐々に少なくしていく。
まず、充電開始時の最初の充電量は大きく、その量を段階的に徐々に小さくして、電源周波数が半サイクルを10回繰り返すと電流が0になるように指示する。
すなわち、図7の(f)に示すように、電源周波数の半サイクル分の最初の充電電流は、ヒータ通電電流と同等の大きさの6Aであり、ゼロクロス検出信号が立ち上がるたびに、6A、5.4A、4.8Aと0.6Aずつ小さくする。
そして、充電量指示値が所定値以下、ここでは0.5A以下の電流指示値に到達した時点、図中T3の前の破線で示すタイミング時に充電量指示信号を0Aに指示し、ゼロクロス信号が立ち上がったタイミングT3を検出すると、充電開始信号をオフにする。
ここでは10サイクルの充電で電流が0になるように制御したが、この回数は急激な電流の変化を抑制可能な回数を予め設定しておくとよい。
また、最初の充電指示量は、ヒータ通電電流と同等にするとよい。さらに、ヒータ通電電流よりも若干低い値にしても良い。
【0036】
なお、上述の説明では、ゼロクロスを通り越して、ゼロクロス検出信号が変化した時点を検出し、その時点で充電を開始するようにしたが、ゼロクロス点を通り越す前にゼロクロス信号の立ち上がり時に充電を開始するようにしても支障はない。
しかし、ゼロクロス点を通り越してから充電を開始する方が、わずかな差だが細切れな高周波成分は発生しないので、ヒータ充電電流による高調波の発生要因をより抑えることができる。
また、上述の説明では、ゼロクロス点を通り越す前に、ゼロクロス検出信号が変化した時点を検出し、その時点で充電指示信号の値を変更するようにしたが、ゼロクロス点を通り越してゼロクロス信号の立ち下がり時に変更するようにしても支障はない。
しかし、ゼロクロス点を通り越してから変更を行うと、充電開始信号がオフになる直前のゼロクロス点からゼロクロス信号の立ち下がりまでの間に、微弱だが電流が流れてしまい高調波電流の発生要因となる。このため、ゼロクロス点を通り越す前に変更する方が、わずかな差だがヒータ充電電流による高調波の発生要因をより抑えることができる。
以上のような処理で、定着ヒータ40のオフ時における画像形成装置1の通電電流の変化がなだらかになる。
よって、急激な電圧変動を抑えられ、フリッカ抑制につながる。
【0037】
また、従来は急激な電流の変化を抑制するために、定着ヒータのオフ時にソフトストップさせるというヒータの位相制御を行う場合もあったが、この場合は電源の周波数を小刻みにオン・オフするため、電源の周波数よりも高次の周波数成分を生み出してしまい、電源高調波が悪化する要因となってしまう。
しかし、この実施例の制御では、位相制御は行わないため、電源高調波が悪化することなく、急激な電圧変動の抑制が可能である。
また、毎回の定着ヒータ40のオフ時に蓄電装置24へ充電が行えるため、定着ヒータ40のオン時の放電用の電力を、定着ヒータ40のオフ時に蓄えておくことができる。
また、蓄電装置24への充電を、画像形成装置の非画像形成時や省エネルギーモード時のみならず、画像形成動作時でも行える。
【0038】
〔実施例2〕
図9は、図2に示す画像形成装置の実施例2の定着装置の内部構成と定着装置への給電制御に係る各部との構成を示すブロック図であり、図1と共通する部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施例2の定着装置10′は、定着ヒータ40′のヒータ43をメイントライアック31から供給する電力と、蓄電装置24が放電する電力によって発熱させることと、その定着ヒータ40′と定着ヒータ制御回路30との間に、ダイオードブリッジ50が挿入されていることが、実施例1の定着装置10と異なっている。
この実施例2における制御部20の給電制御は、実施例1の場合と同様なので、その説明を省略する。
【0039】
このように、定着装置10′内にダイオードブリッジ50を挿入することにより、定着ヒータ40′のヒータ43に印加される電圧はメイントライアック31からも、蓄電装置24からも直流(DC)電圧になるので、定着ヒータ40′内のヒータ本数が1本で済み、実施例1の定着装置10よりも製造コストを低減することができる。
また、ヒータ数が1本少なくなるので、ヒータを挿入するローラ径などを小さくでき、定着装置の小型化も容易になる。
さらに、メイントライアック31が駆動するヒータ43に、蓄電装置24へも電力を供給して直接温めることができるので、ヒータ43のオン時に蓄電装置24は直接、メイントライアック31が駆動するヒータ43に放電することにより、実施例1の定着装置10よりもヒータを短時間で温めることができるという効果が得られる。
【0040】
〔実施例3〕
実施例1,2に示した構成では、制御部20の制御により、蓄電装置24からヒータ(実施例1の場合はヒータ42、実施例2の場合はヒータ43)に対して放電を行い、ヒータをある程度温めてからヒータトリガ信号をオンにしてヒータ(実施例1の場合はヒータ41、実施例2の場合は同じヒータ43)にメイントライアック31から給電していた。
これにより、定着ヒータ40,40′への突入電流を抑制し、フリッカの改善を図ることができる。
実施例3では、ヒータトリガ信号をオンにした時の急激な電流の変化を抑制し、フリッカの改善を図る別の実施例を説明する。
図10は、図2に示す画像形成装置の実施例3の定着装置の内部構成と定着装置への給電制御に係る各部との構成を示すブロック図であり、図1,図9と共通する部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施例3の定着装置10′は、蓄電装置24の放電先をヒータにせず、新たな放電先として負荷部25を設けていることが、実施例2の場合と異なる。
【0041】
次に、定着ヒータのオン時の動作を説明する。
図11は、実施例3における定着ヒータをオンするときの制御処理を示すフローチャート図である。
制御部20は、ステップ(図中「S」で示す)21で、電源からの供給電力の電圧値のゼロクロス検出信号の割り込みが有ったか否かを判断し、ゼロクロス検出信号の割り込みが有ったと判断したら、ステップ22で、蓄電装置への充電開始信号をオンにし、充電量指示信号によって充電量を指示し、蓄電装置への充電を開始させる。
ステップ23で、充電開始から所定期間経過したか否かを判断し、所定期間経過したら、ステップ24で電源からの供給電力の電圧値のゼロクロス検出信号の割り込みが有ったか否かを判断し、ゼロクロス検出信号の割り込みが有ったと判断したら、ステップ25で蓄電装置の充電開始信号をオフにして蓄電装置の充電を停止させ、ステップ26で、ヒータトリガ信号をオンにし、この処理を終了する。
【0042】
次に、蓄電装置の充電制御の動作を説明する。
図12は、蓄電装置の充電制御時の各部の出力波形を示す図である。
図13は、図12の蓄電装置の充電開始前後のタイミングにおける各波形部分を拡大して示す図である。
制御部20は、定着ヒータ40′のヒータ43をオンにすべきタイミングに達したことを検知時、いきなりヒータトリガ信号をオンにするのではなく、まずゼロクロス検出信号が送出されるのを待ち、図12中に矢示のゼロクロス点を通り越した立下り時のゼロクロス検出信号を受信したタイミングで、蓄電装置24への充電開始信号をオンにし、図12の(d),図13の(d)に示すように、充電量指示信号(ここではアナログ値で示している)によって充電量を指示する。この充電量指示信号は、オン開始時からゼロクロス検出信号の入力毎に段階的に充電量を徐々に多くしている。
ゼロクロス検出信号の検知を起点に充電を開始する理由は、ゼロクロス点付近で充電電流を流し始めなければ、位相制御時と同様に高調波の原因となってしまうためである。
【0043】
例えば、ゼロクロス検出信号を用いずにいきなり充電を開始した電源電圧の位相角のポイントが、90°の場合、高次の高調波成分を発生させてしまう。
ただし、充電電流が充分に小さい場合、特に75W以下(100Vの場合、0.75A以下の充電電流)の場合は、電流が充分に小さいので、ゼロクロス点を起点に充電を始めなくても、電源高調波への影響は軽微であるので、ゼロクロス検出信号にこだわる必要はない場合がある。
蓄電装置24への充電は、最初は小さな充電量から始め、最終的にヒータ43へのヒータ通電電流値Aと同等になるまで増やしていく。
【0044】
図12の(f)に示すように、例えば、最初は0.6Aから始め、次は1.2A、その次は1.8Aの電流を流すというように、0.6Aずつ増やしていく。
このように、蓄電装置24への充電電流を少しずつ増やすことにより、ヒータ43へのヒータ通電電流値Aの変化がなだらかになり、急激な電圧変動を抑制することができる。
そして、制御部20は、所定期間の充電電流を流した後、再びゼロクロス検出信号を待って、そのゼロクロス検出信号の立ち上がり時(図12中のT4)に充電を停止させる。
そして、そのゼロクロス検出信号の立ち下り時(図12中のT5)にヒータトリガ信号をオンにし、メイントライアック31をオンにして、ヒータ43に電源21の電力の供給を開始する。
【0045】
上述の制御処理は、少しずつ充電電流を増やし、最後にヒータの通電電流につなげているので、電流の変化がなだらかになり、その結果、急激な電圧変動の抑制につながり、フリッカの抑制を図ることができる。
次に、蓄電装置24に充電した電力は、ヒータ43以外の2次側負荷である負荷部25に使用する。
負荷部25は、例えば、スキャナ,オプション機器,大容量給紙ユニット,後処理周辺機が一例として挙げられる。
また、ヒータトリガ信号をオンした後に、上述したような負荷部25を駆動するための電力を蓄電装置24から供給する構成にしても良い。
なお、ヒータ43のオフ時の処理は、図6で示した処理と同じなので、その説明を省略する。
【0046】
〔実施例4〕
上述の説明では、ヒータをオンする時、あるいはヒータをオフする時において、蓄電装置24への充電電流は最大6A流す場合を説明したが、その6Aとは、商用電源の電圧が100Vの場合は600Wの電力に換算できる。
したがって、上述の実施例の場合、600Wの電力を処理できる充電部を蓄電装置の中に内蔵、あるいは、600Wの電力を処理できる蓄電装置外のDC電源が必要となる。
しかし、600Wの電力を処理できる充電部を設けたり、一般的には大電力なPSUであるDC電源が必要になるのでは、コスト高の一因になる。
そこで、実施例4では、蓄電装置の充電部、あるいは外部のDC電源のコスト高の要因を抑える場合の例について説明する。
【0047】
図14は、実施例4における定着ヒータをオンするときの制御処理を示すフローチャート図である。
制御部20は、ステップ(図中「S」で示す)31で、電源からの供給電力の電圧値のゼロクロス検出信号の割り込みが有ったか否かを判断し、ゼロクロス検出信号の割り込みが有ったと判断したら、ステップ32で、蓄電装置への充電開始信号をオンにし、充電量指示信号によって充電量を指示し、蓄電装置への充電を開始させる。
ステップ33で、充電開始から所定期間経過したか否かを判断し、所定期間経過したら、ステップ34で電源からの供給電力の電圧値のゼロクロス検出信号の割り込みが有ったか否かを判断し、ゼロクロス検出信号の割り込みが有ったと判断したら、ステップ35で蓄電装置の充電開始信号をオフにして蓄電装置の充電を停止させ、ステップ36で、ヒータトリガ信号の位相制御を開始し、この処理を終了する。
すなわち、充電停止後にヒータの位相制御を行う。
【0048】
図15は、充電後にヒータを位相制御する時の各部の出力波形を示す図である。
この制御では、制御部20は、蓄電装置24への充電量指示信号を6段階変えた後、図15に示すタイミングT6からヒータ(41又は43)の位相制御を行う。
ヒータの位相制御は高調波電流の原因となるが、図15に示すタイミングT6の0°〜180°の位相角の90°を越えたところで位相制御のオン・オフを行うようにすれば、90°未満で行ったときよりも、電源高調波への影響は軽微であることが実験によりわかっている。
そこで、ヒータの点灯の位相角を90°越えてオンして良いところ(図15に示すタイミングT6)まで、蓄電装置24の充電電流を流す制御を行う。
このように制御することにより、充電電流は最大3.6A流れて、商用電源の電圧が100Vの場合360Wの電力に換算でき、蓄電装置24の蓄電部の電力容量は360Wで済み、600Wの場合と比べて、コストダウンが可能となるメリットがある。
【0049】
次に、ヒータをオフする時の制御について説明する。
図16は、実施例4における定着ヒータをオフするときの制御処理を示すフローチャート図である。
制御部20は、ステップ(図中「S」で示す)41で、ヒータトリガ信号の位相制御処理中、ステップ42で位相制御期間が終了したか否かを判断し、終了しなければステップ41のヒータトリガ信号の位相制御処理を継続し、終了したら、ステップ43で、電源からの供給電力の電圧値のゼロクロス検出信号の割り込みが有ったか否かを判断し、ゼロクロス検出信号の割り込みが有ったと判断したら、ステップ44で、蓄電装置への充電開始信号をオンにし、充電量指示信号によって充電量を指示し、蓄電装置への充電を開始させ、ステップ45で、充電量指示信号が所定値以下になったか否かを判断し、ならなければステップ44の充電を継続し、なったら、充電処理を停止して、この処理を終了する。
【0050】
図17はヒータを位相制御してオフに切り換える時の各部の出力波形を示す図である。
この制御では、制御部20は、ヒータ(41又は43)のオフのタイミングを検知時、位相制御で徐々にヒータの点灯間隔を短くしていき、図中のゼロクロス検出信号のゼロクロス点T7でヒータをオフにし、そのゼロクロス検出信号の立ち上がりポイントT8から蓄電装置24への充電を開始させ、図17の(d)に示すように、ゼロクロス検出信号の立ち上がりポイント(図中T7の前に破線で示すタイミング)から充電量の指示を開始し、その充電量をゼロクロス検出信号の立ち上がりポイントを検出する度に段階的に少なく指示していく。
したがって、図17の(f)に示すように、例えば、最初は3.6Aから始め、次は3.0A、その次は2.4Aの充電電流を流すというように、0.6Aずつ減らしていく。
このようにして、蓄電装置24の充電電流は最大3.6Aに済むので、第1〜第3の実施例の場合と比較し、蓄電装置24の蓄電部の電力容量は360Wで済み、コストダウンが可能となるメリットがある。
【0051】
〔実施例5〕
次に、蓄電装置24の充電量に応じて、ヒータをオンする時に蓄電装置24へ充電するか、あるいは負荷へ放電するかを選択する制御を行う実施例について説明する。
この実施例5の場合、上述した構成例において、蓄電装置24の放電先はヒータとしたことと、そのヒータにより、メイントライアック系のヒータを温めることと、蓄電装置24から制御部20に対して現在の充電量をフィードバックする充電量通知信号を出力する信号線を有することが上述の実施例とは異なる。
図18は、実施例5における蓄電装置への充放電制御処理を示すフローチャート図である。
【0052】
制御部20は、ヒータがオンのとき、ステップ51で、蓄電装置からの充電量通知信号に基づいて、蓄電装置は所定の充電量(第一の充電量)を有するか否かを判断し、なければ、ステップ58で蓄電装置に充電し、ステップ52へ進む。
このように、蓄電装置24が、仮に所定以上の電力を有していない場合、例えば、土日の休み明けや長期休暇明けなどに画像形成装置1の主電源を投入した場合、蓄電装置24の充電量が空っぽに近い場合がある。その場合は、蓄電装置24に対して、所定の充電処理を行わせることができる。
【0053】
ステップ51で蓄電装置は所定の充電量を有すると判断したら、ステップ52で、蓄電装置から放電を開始し、ステップ53で、所定期間経過したか否かを判断し、経過したら、ステップ54で、電源からの供給電力の電圧値のゼロクロス検出信号の割り込みが有ったか否かを判断し、有ったら、ステップ55で、蓄電装置からの充電量通知信号に基づいて、蓄電装置は所定の充電量(第二の充電量)以下か否かを判断し、所定の充電量以下なら、ステップ56で、蓄電装置の放電を停止し、ステップ57でヒータトリガ信号の制御を開始し、この処理を終了する。
なお、充電時間は電源周波数で言えば、5サイクル(=100ms…100V/50Hzの場合)くらいで充分である。
【0054】
次に、所定期間の放電を行った後、ヒータトリガ信号をオンするとともに、所定の充電量以下になるまで放電を継続する制御処理、すなわち、ヒータトリガ信号のオンと、放電を同時に行うようにしてもよい。
図19は、実施例5における蓄電装置への他の充放電制御処理例を示すフローチャート図である。
制御部20は、ヒータがオンのとき、ステップ61で、蓄電装置からの充電量通知信号に基づいて、蓄電装置は所定の充電量(第一の充電量)を有するか否かを判断し、なければ、ステップ68で蓄電装置に充電し、ステップ62へ進む。
このように、蓄電装置24が、仮に所定以上の電力を有していない場合、例えば、土日の休み明けや長期休暇明けなどに画像形成装置1の主電源を投入した場合、蓄電装置24の充電量が空っぽに近い場合がある。その場合は、蓄電装置24に対して、所定の充電処理を行わせることかできる。
【0055】
ステップ61で蓄電装置は所定の充電量を有すると判断したら、ステップ62で、蓄電装置から放電を開始し、ステップ63で、所定期間経過したか否かを判断し、経過したら、ステップ64で、電源からの供給電力の電圧値のゼロクロス検出信号の割り込みが有ったか否かを判断し、有ったら、ステップ65で、蓄電装置からの充電量通知信号に基づいて、蓄電装置は所定の充電量(第二の充電量)以下か否かを判断する。
ステップ65の判断で、所定の充電量以下なら、ステップ66で、蓄電装置の放電を停止し、ステップ67でヒータトリガ信号の制御を開始し、この処理を終了する。
一方、ステップ65の判断で、蓄電装置が所定の充電量以下でなければ、ステップ69で、ヒータトリガ信号の制御を開始し、ステップ70で、蓄電装置からの充電量通知信号に基づいて、蓄電装置は所定の充電量以下か否かを判断し、所定の充電量以下なら、ステップ71で、蓄電装置の放電を停止し、この処理を終了する。
【0056】
なお、所定以上かの判断の境目となる第一の充電量は、ヒータオン時に放電させる放電電力量を充分確保できる量に設定する。
また、所定以下となる第二の充電量は、これを設けた理由は、ヒータオフ時は一定の充電をするが、大抵の場合、ヒータオフ時の充電と、ヒータオン時の放電を比較すると、ヒータオフ時の充電電力量はマージンを見ているためである。
すなわち、ヒータオフ時は充電、ヒータオン時は放電を繰り返して、かつヒータオフ時の充電電力量が若干大きい場合、段々と蓄電装置内の充電電力量が増えていく。
よって、このままでは蓄電装置内の充電電力が過充電となる恐れがあるので、第二の充電量は、ヒータオフ時の充電量を加算すると、過充電となる手前の量に設定する。
また、過充電となりそうな場合は、ヒータオン時の放電期間を長くして、蓄電装置の電力量を一定以下に抑えるようにする。
このようにして、蓄電装置の充電量が足りない時は放電ではなくまず充電処理をし、電力を充分有している状態から放電するので、ヒータオン毎に確実に、急激な電流の変化の抑制を図ることができる。
【0057】
上述したように、この実施例の画像形成装置によれば、電源立ち上げ時や前ドアを開→閉に切り替えた場合だけでなく、コピー動作時や待機時における電圧変動とフリッカを抑制することができる。
また、従来は蓄電装置への充電は、待機やオフ/スリープモード時など、画像形成装置の非形成時に行う方式が主流であったが、この実施例の画像形成装置を用いれば、コピー動作時にも蓄電装置への充電が可能となる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明による画像形成装置と定着装置とプログラムは、ファクシミリ装置,プリンタ,複写機,複合機を含む画像処理装置において適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1:画像形成装置 2:感光体 3:光走査装置 4:帯電チャージャ 5:現像装置 6:転写チャージャ 7:クリーニング装置 8a:上給紙カセット 8b:下給紙カセット 9a:上排紙トレイ 9b:下排紙トレイ 10,10′:定着装置 11:大量給紙装置 12〜14:給紙コロ 15:レジストローラ対 16:レジストセンサ 17:搬送路センサ 20:制御部 21:電源 22:リレーSW 23,33:トランジスタ 24:蓄電装置 25:負荷部 30:定着ヒータ制御回路 31:メイントライアック 32:フォトトライアック 34:ゼロクロス検出回路 40,40′:定着ヒータ 41〜43:ヒータ 50:ダイオードブリッジ P:排紙路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開2004−240386号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙に転写されたトナー像をヒータによる加熱によって記録紙上に定着させる定着装置において、
前記ヒータに電力を供給する電源及び蓄電装置を有し、
前記電源から前記ヒータへの給電をオンからオフにするとき、前記電源からの電力を前記蓄電装置への充電に切り換え、その充電電流を徐々に減らしながら所定期間の充電を行わせる手段を設けたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記電源から前記ヒータへの給電をオンにするとき、前記電源からの電力を前記蓄電装置に充電電流を徐々に増やしながら所定期間充電した後に、前記電源からの電力を前記ヒータへの給電に切り替える手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記電源から前記ヒータへの給電をオンからオフにするとき、前記ヒータへの給電を所定の位相角まで位相制御して停止させた後に前記所定期間の充電を行わせる手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項4】
前記電源から前記ヒータへの給電をオンにするとき、前記電源からの電力を前記ヒータへの給電に切り替える際、所定の位相角から位相制御で給電を開始させる手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の定着装置。
【請求項5】
前記位相角は90°未満であることを特徴とする請求項3又は4記載の定着装置。
【請求項6】
前記ヒータへの給電をオンにするとき、前記蓄電装置の充電量を検知し、前記蓄電装置の充電量が所定電力以下のときには前記蓄電装置に所定期間の充電を行った後に前記ヒータへ放電させ、所定期間以上の放電を行わせた後に前記電源から前記ヒータへ給電させる手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の定着装置。
【請求項7】
前記電源から前記蓄電装置へ充電する所定期間を変更する手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
コンピュータに、ヒータに電力を供給する電源からの給電をオンからオフにするとき、前記電源からの電力を前記ヒータへ給電する蓄電装置への充電に切り換え、その充電電流を徐々に減らしながら所定期間の充電を行わせる手順を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−217375(P2010−217375A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62665(P2009−62665)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】