説明

定着装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】固定式の加圧部材の経時変化とこれに伴う定着不良や記録材の搬送不良の発生を防ぐことができる定着装置を提供すること。
【解決手段】円筒状の定着ローラー21を回転可能に配置し、該定着ローラー21に圧接されて定着ローラー21との間にニップを形成する加圧部材22を固定配置し、トナー像が転写された記録材を前記定着ローラー21と加圧部材22との間に形成された前記ニップを通過させることによってトナー像を記録材上に定着させる定着装置18において、前記加圧部材22を、前記定着ローラー21と接触する表層部材24と、該表層部材24を前記定着ローラー21に押圧する押圧部材25及び該押圧部材25を支持する支持部材26で構成し、前記定着ローラー21の回転時に前記押圧部材25に発生する定着ローラー回転方向下流側への変形を復元させる復元力を前記押圧部材25に付与するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する定着ローラーとこれに圧接される固定式の加圧部材を備える定着装置とこれを備えた複写機やプリンター等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式によって用紙等の記録材に画像を形成する複写機やプリンター等の画像形成装置においては、感光ドラム等の像担持体上に形成された静電潜像を現像装置によって現像してトナー像として顕像化し、このトナー像を記録材上に転写することが行われる。そして、トナー像が転写された記録材は、定着装置へと搬送され、該定着装置によって加熱及び加圧されてトナー像の定着を受け後に機外に排出され、これによって一連の画像形成動作が完了する。
【0003】
ところで、斯かる画像形成装置における定着装置には、従来、図10に示す加熱ローラー方式を採用するものが専ら使用されていた。
【0004】
即ち、図10は加熱ローラー方式を採用する従来の定着装置の断面図であり、図示の定着装置118は、互いに当接して図示矢視方向に回転する定着ローラー121と加圧ローラー122を備えており、円筒状の定着ローラー121の内部には定着ヒーター123が配置されている。ここで、加圧ローラー122は、例えば外径φ12mmの芯金122aの外表面に、外径がφ25mmとなるようにシリコンゴム層122bを形成し、その外表面に離型層として厚み50μmのFPAチューブ122cを被覆し、全体の硬度が42°(Asker−C、1kgf)となるよう構成されている。そして、この加圧ローラー122を荷重7kgfで定着ローラー121に押圧配置した場合、定着ローラー121と加圧ローラー122間に形成されるニップの幅は5mm程度と比較的狭い。
【0005】
斯かる加熱ローラー方式を採用する定着装置118においては、加圧ローラー122の熱容量が大きいためにウォームアップタイム(定着可能な温度に達するまでに要する時間)が長く、部品コストが高いという問題がある。
【0006】
そこで、図11(a)の断面図に示すような定着装置218が提案されている。図示の定着装置218は、従来の加圧ローラー122(図10参照)に代えて固定式の加圧部材222を使用するものであって、加圧部材222は、定着ローラー221と接触する表層部材224と、該表層部材224を定着ローラー221に押圧する押圧部材225及び該押圧部材225と前記表層部材224を支持する支持部材226で構成されている。
【0007】
斯かる定着装置218においては、定着ローラー221と加圧部材222との間に形成されるニップに記録材を通過させることによって、該記録材上に転写されたトナー像を加熱及び加圧して定着させることができる。このような定着方式によれば、所要のニップ幅を確保した上で、加圧部材222の熱容量を小さく抑えてウォームアップタイムを短縮することができるとともに、定着装置218のコストダウンと小型化を図ることができる。
【0008】
図10に示す加熱ローラー方式を採用する定着装置118では、加圧ローラー122は定着ローラー121と共に回転するため、該加圧ローラー122の定着ローラー121との圧接位置が常に変動し、これによって記録材を搬送することができるが、図11(a)に示す固定式の加圧部材222を用いる定着装置218においては、加圧部材222には定着ローラー221の回転方向下流側に引っ張られる力が加わる。このことを図11(a)〜(d)に基づいて以下に説明する。
【0009】
即ち、図11(a)〜(d)は加圧部材222の変形の様子を示す断面図であり、定着ローラー221が回転していない図11(a)に示す状態から図11(b)に示すように定着ローラー221が図示矢印方向に回転すると、加圧部材222の表層部材224と押圧部材225は、定着ローラー221との間に発生する摩擦力によって定着ローラー221の回転方向下流側に引っ張られて図示のように支持部材226への接着面を基点として変形し、押圧部材225には逆方向の復元力(剪断力)が作用する。この場合、加圧部材222が定着ローラー221の回転方向下流側に引っ張られる程、ニップ入口が初期の位置から下流方向にズレるため、記録材の搬送性に悪影響が現れる。又、加圧部材222のニップ入口側が定着ローラー221から離間する方向に変形するため、ニップ入口での定着ローラー221と記録材の接触が不十分となり、定着性の低下を招いてしまう。このため、加圧部材222の押圧部材225は初期の位置に戻り易いように摩擦の小さな表面を有することが望ましく、又、この押圧部材225の変形を防ぐ手段を設ける必要がある。
【0010】
そして、図11(c)に示すように定着ローラー221の回転が停止しても、定着ローラー221と加圧部材222には圧力が加えられた状態が維持されるため、加圧部材222の表層部材224と押圧部材225が定着ローラー221の回転方向下流側に変形した状態が維持される。このように表層部材224と押圧部材225が定着ローラー221の回転方向下流側に変形した状態で放置され続けると、弾性部材で構成された押圧部材225が塑性変形し、図11(d)に示すように押圧部材225に圧抜け部225aが生じ、ニップ入口側において押圧部材225が定着ローラー221から離間する。この結果、ニップ幅が減少し、定着不良等を招くという問題が発生する。
【0011】
ところで、特許文献1には、固定式の加圧部材の弾性体に、そのシート材移動方向下流側への変形を防ぐための機構を設けた定着装置が提案されている。
【0012】
特許文献2には、固定式の加圧部材を支持体と弾性体及びこれらを被覆するチューブで構成し、用紙が通過する際に加圧部材に負荷が生じても最表面のチューブが支持体や弾性体から剥離しないよう構成した定着装置が提案されている。
【0013】
特許文献3には、定着ローラーと加圧部材との間に、ガラス繊維を基材とする耐熱性シートを互いを接着させることなく配置することによって、加圧部材が耐熱シートによって拘束されることなく加圧部材の変形を抑制することができる定着装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−072718号公報
【特許文献2】特開2002−123120号公報
【特許文献3】特開平8−241000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1において提案された定着装置によれば、弾性体の全体的な変形とニップ出口の位置変動は抑えられるが、ニップ入口の位置変動や弾性体の変形自体を抑えることができない。このため、弾性体のニップ入口側が変形した場合には、ニップ幅が縮小して定着性が悪化するという問題が発生する。又、弾性体のニップ入口側の変形部分を初期の状態に戻す機構が設けられていないため、耐久が進むに連れて定着性は悪化の一途を辿ることになる。
【0016】
特許文献2において提案された定着装置では、加圧部材はチューブによって支持体と弾性体を覆う構成を採用しているため、通紙による負荷を受けても弾性体とチューブが分離することはないが、弾性体の変形自体を防ぐことができないという問題がある。
【0017】
特許文献3において提案された定着装置によれば、加圧部材が耐熱シートによって拘束されないために耐熱シートの変形分の影響は抑えられるが、加圧によって最も変形するのは耐熱シートではなく加圧部材であり、耐熱シートによる拘束がなくなっても加圧部材と耐熱シート間に滑りが生じない限り、加圧部材は変形した状態で保持されることになり、加圧部材の変形による定着性の悪化を防ぐことができないという問題がある。
【0018】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、固定式の加圧部材の経時変化とこれに伴う定着不良や記録材の搬送不良の発生を防ぐことができる定着装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、円筒状の定着ローラーを回転可能に配置し、該定着ローラーに圧接されて定着ローラーとの間にニップを形成する加圧部材を固定配置し、トナー像が転写された記録材を前記定着ローラーと加圧部材との間に形成された前記ニップを通過させることによってトナー像を記録材上に定着させる定着装置において、前記加圧部材を、前記定着ローラーと接触する表層部材と、該表層部材を前記定着ローラーに押圧する押圧部材及び該押圧部材を支持する支持部材で構成し、前記定着ローラーの回転時に前記押圧部材に発生する定着ローラー回転方向下流側への変形を復元させる復元力を前記押圧部材に付与するよう構成したことを特徴とする。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記押圧部材をその長手方向中央部が定着ローラー回転方向上流側に向かって凸となる円弧状に湾曲させたことを特徴とする。
【0021】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記加圧部材を、その中心の加圧方向が前記定着ローラーの回転軸に対して定着ローラー回転方向上流側となるよう配置したことを特徴とする。
【0022】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記押圧部材の定着ローラー回転方向上流部の発泡率を下流部の発泡率よりも低く設定したことを特徴とする。
【0023】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記押圧部材の定着ローラー回転方向上流部と下流部の硬度を中間部の硬度よりも高く設定したことを特徴とする。
【0024】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、前記押圧部材と支持部材とを定着ローラー回転方向上流部において凹凸嵌合させたことを特徴とする。
【0025】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れかに記載の発明において、前記押圧部材の定着ローラー回転方向上流部の接触面に凸部を突設したことを特徴とする。
【0026】
請求項8記載の画像形成装置は、請求項1〜7の何れかに記載の定着装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、定着ローラーが回転することによって押圧部材に定着ローラー回転方向下流側への変形が発生しても、該押圧部材にはその変形を復元させる復元力が付与されているため、定着ローラーの回転が停止すると押圧部材は初期の状態に戻ることができる。このため、耐久による押圧部材の塑性変形やこれに伴うニップ部入口の圧抜けとニップ幅減少による定着不良や記録材搬送力付与のタイミング変化による記録材の斜行やシワの発生を防ぐことができる。
【0028】
請求項2記載の発明によれば、押圧部材をその長手方向中央部が定着ローラー回転方向上流側に向かって凸となる円弧状に湾曲させることによって、該押圧部材に定着ローラー回転方向下流側への変形を復元させる復元力を付与したため、定着ローラーの回転が停止すると押圧部材を初期の状態に戻すことができ、定着不良や記録材の搬送不良の発生を防ぐことができる。
【0029】
請求項3記載の発明によれば、加圧部材を、その中心の加圧方向が定着ローラーの回転軸に対して定着ローラー回転方向上流側となるよう配置したため、加圧部材を定着ローラーに対して垂直に接触させた場合よりも押圧部材が接触方向に変形する力が大きくなり、該押圧部材を職の形状に戻す復元力が高められ、定着不良や記録材の搬送不良の発生が効果的に防がれる。
【0030】
請求項4記載の発明によれば、押圧部材の定着ローラー回転方向上流部の発泡率を下流部の発泡率よりも低く設定することによって、該押圧部材の定着ローラー回転方向上流部の硬度が下流部の硬度よりも高くなって該上流部の復元力が強まるとともに、硬度の低い下流部において定着ローラーとの間に十分なニップ幅を確保することができるため、定着不良や記録材の搬送不良の発生が効果的に防がれる。
【0031】
請求項5記載の発明によれば、押圧部材の定着ローラー回転方向上流部と下流部の硬度を中間部の硬度よりも高く設定したため、該押圧部材の硬度の高い上流部の復元力が強まるとともに、低硬度の中間部は高硬度の下流部によって支えられて変形が抑制されるために定着ローラーとの間に十分なニップ幅を確保することができ、定着不良や記録材の搬送不良の発生が効果的に防がれる。
【0032】
請求項6記載の発明によれば、押圧部材の定着ローラー回転方向上流部が支持部材によって支えられるため、該押圧部材の定着ローラー回転方向上流側に向かって変形しようとする力(復元力)が強まり、定着不良や記録材の搬送不良の発生が効果的に防がれる。
【0033】
請求項7記載の発明によれば、押圧部材の定着ローラー回転方向上流部の接触面に突設された凸部が定着ローラーに押圧されることによって該押圧部材の上流部の下流方向への変形が抑制されるため、押圧部材の復元力が高められて定着不良や記録材の搬送不良の発生が効果的に防がれる。
【0034】
請求項8記載の発明によれば、定着装置での定着不良や記録材の搬送不良が防がれる結果、高質画像を安定的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る画像形成装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る定着装置の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る定着装置の加圧部材の斜視図である。
【図4】(a)〜(d)は本発明の実施の形態1に係る定着装置の押圧部材の変形の様子を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る定着装置の断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る定着装置の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る定着装置の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態5に係る定着装置の断面図である。
【図9】本発明の実施の形態6に係る定着装置の断面図である。
【図10】加熱ローラー方式を採用する従来の定着装置の断面図である。
【図11】(a)〜(d)は固定式の加圧部材を有する従来の定着装置の加圧部材の変形の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0037】
[画像形成装置]
図1は本発明に係る画像形成装置の断面図であり、図示の画像形成装置1はレーザープリンターであって、装置本体1Aの内部上方には、画像形成部2が配され、装置本体1A内の下半部には用紙収納部3が配されている。
【0038】
上記画像形成部2は、電子写真方式によって画像を形成するものであって、回転可能に配された像担持体としての感光ドラム4と、その周囲に配された帯電器5、現像装置6、転写ローラー7及びクリーニング装置8の他、現像装置6に現像剤であるトナーを補給するためのトナーホッパー9を備えている。そして、画像形成部2の横には、光走査装置であるレーザースキャナーユニット(LSU)10が配置されている。
【0039】
前記用紙収納部3は、記録材である複数枚の用紙が積層収容された着脱可能な上下2段の給紙カセット11,12を備えており、各給紙カセット11,12の近傍には、各給紙カセット11,12内の用紙を上位のものから順次取り出すピックローラー13と、取り出された用紙を1枚ずつ分離して送り出すフィードローラー14とリタードローラー15がそれぞれ配設されている
又、装置本体1A内には、用紙収納部3から画像形成部2に至る第1搬送路S1と、画像形成部2から排紙トレイ16に至る第2搬送路S2が配置されており、第1搬送路S1にはレジストローラー対17と前記転写ローラー7が設けられ、第2搬送路S2には本発明に係る定着装置18と搬送ローラー対9及び排紙ローラー対20が設けられている。尚、定着装置18の構成の詳細は後述する。
【0040】
次に、以上のように構成された画像形成装置1の画像形成動作について説明する。
【0041】
画像形成動作が開始されると、画像形成部2においては感光ドラム4が不図示の駆動手段によって図1の矢印方向(時計方向)に回転駆動され、その表面が帯電器5によって所定の電位に一様に帯電される。そして、パソコン等から送信される電気信号に基づくレーザービームがレーザースキャナーユニット10から出力されて感光ドラム4の表面が露光走査されると、該感光ドラム4上に画像情報に応じた静電潜像が形成される。そして、この感光ドラム4上に形成された静電潜像は、現像装置6によって現像剤であるトナーを用いて現像されてトナー像として可視像化される。
【0042】
ところで、カセット給紙を行う場合、用紙収納部3の例えば上段の給紙カセット11内に収容されている用紙は、ピックローラー13によって最上位のものからピックアップされ、フィードローラー14とリタードローラー15によって1枚ずつ分離されて第1搬送経路S1をレジストローラー対17へと搬送される。そして、レジストローラー対17においては、用紙は、一時待機状態とされた後、感光ドラム4上のトナー像に同期する所定のタイミングで画像形成部2へと供給される。
【0043】
画像形成部2においては、感光ドラム4と転写ローラー7との間のニップへと供給された用紙は、転写ローラー7によって感光ドラム4に押し付けられながら搬送されることによって、その表面に感光ドラム4上のトナー像が転写される。そして、トナー像が転写された用紙は、定着装置18へと搬送され、この定着装置18のニップを通過する過程で加熱及び加圧されてトナー像の定着を受ける。尚、用紙へのトナー像の転写後に感光ドラム4の表面に残留するトナー(転写残トナー)はクリーニング装置8によって除去され、表面が清掃された感光ドラム4は次の画像形成動作に備えられる。
【0044】
而して、定着装置18にて表面にトナー像が定着された用紙は、第2搬送路S2を搬送ローラー対19によって排紙ローラー対20に向かって搬送され、排紙ローラー対20によって排紙トレイ16へと排出され、これによって一連の画像形成動作が終了する。
【0045】
[定着装置]
次に、本発明に係る前記定着装置18の実施の形態について説明する。
【0046】
<実施の形態1>
図2は本発明の実施の形態1に係る定着装置の断面図、図3は同定着装置の加圧部材の斜視図、図4(a)〜(d)は同定着装置の押圧部材の変形の様子を示す断面図である。
【0047】
本発明に係る定着装置18は、円筒状の定着ローラー21を回転可能に配置し、該定着ローラー21に下方から圧接されて定着ローラー21との間にニップを形成する加圧部材22を固定配置して構成されており、定着ローラー21内の中心には定着ヒーター23が配置されている。
【0048】
本実施の形態では、上記定着ローラー21は、外径φ23mm、肉厚0.65mmのアルミニウム製の芯金の外表面に、導電材や耐摩耗材が充填されたPFAやPTFE等のフッ素樹脂を、プライマー層を含めて25μmの厚みでコーティングすることによって構成されている。又、この定着ローラー21の内部に配置された前記定着ヒーター23は、電圧100V、出力800Wのハロゲンランプで構成されており、この定着ヒーター23によって定着ローラー21が所定の定着温度に加熱される。尚、定着ローラー21の表面温度は不図示の温度センサーによって常時検出され、その検出信号が不図示のコントローラーにフィードバックされることによって定着ローラー21の表面温度が所定の定着温度に制御される。
【0049】
前記加圧部材22は、定着ローラー21と接触する表層部材24と、該表層部材24を定着ローラー21に押圧する押圧部材25及びこれらの表層部材24と押圧部材25を支持する支持部材26によって構成されている。尚、本実施の形態では、支持部材26は、幅15mm、厚み6mmの金属部材によって構成されており、押圧部材25は、幅10mm、厚み6mm、硬度10°〜45°(Asker−C、1kgf)のシリコンゴム、シリコンスポンジ、フッ素ゴム、フッ素スポンジ等の耐熱性弾性部材によって構成されて支持部材26の上面に接着されている。又、表層部材24は、厚み10μm〜300μmのPFA、PTFE、PI、カプトン等のシート又は無端状フィルムによって構成されている。
【0050】
而して、本発明に係る定着装置18においては、加圧部材22の押圧部材25は、図3に示すように、その長手方向中央部が定着ローラー21の回転方向上流側に向かって凸となる円弧状に湾曲している。
【0051】
以上のように構成された定着装置18において、加圧部材22が図2に示すように定着ローラー21に下方から所定の力で押圧されると、該加圧部材22の表層部材24と押圧部材25が定着ローラー21の外周面に沿って凹状に変形し、定着ローラー21と加圧部材22との間に幅8mmのニップが形成される。
【0052】
ここで、本発明に係る定着装置18における押圧部材25の変形の様子を図4(a)〜(d)に基づいて以下に説明する。
【0053】
即ち、図4(a)〜(d)は押圧部材25の変形の様子を示す断面図であり、定着ローラー21が回転していない図4(a)に示す状態から図4(b)に示すように定着ローラー21が図示矢印a方向(時計方向)に回転すると、加圧部材22の表層部材24と押圧部材25は、定着ローラー21との間に発生する摩擦力によって定着ローラー21の回転方向下流側に引っ張られて図示のように支持部材26への接着面を基点として変形し、押圧部材25には逆方向(矢印b方向)の復元力(剪断力)が作用する。
【0054】
上述のように定着ローラー21が図4(b)の矢印a方向(時計方向)に所定の速度で回転駆動されると、前述のようにトナー像が転写された用紙がニップ部を通過する過程で加熱及び加圧され、トナー像が用紙上に定着される。尚、このとき、加圧部材22の表層部材24は、用紙との間に発生する摩擦力を低減するとともに、押圧部材25への汚れの付着を防ぐ機能を果たす。
【0055】
そして、図4(c)に示すように定着ローラー21の回転が停止しても、該定着ローラー21と加圧部材22には圧力が加えられた状態が維持されるが、本実施の形態では、押圧部材25が図3に示すように長手方向中央部が定着ローラー21の回転方向上流側に向かって凸となるよう円弧状に湾曲しているため、該押圧部材25には定着ローラー21の回転方向下流側への変形を復元させる図示矢印b方向の復元力が付与されている。このため、定着ローラー21の回転方向下流側に変形していた表層部材24と押圧部材25は、押圧部材25に付与されている復元力(剪断力)によって図4(d)に示すように初期の形状(図4(a)に示す形状)に復帰することができる。
【0056】
従って、本実施の形態に係る定着装置18によれば、耐久による押圧部材25の塑性変形やこれに伴うニップ部入口の圧抜けとニップ部入口部の位置変形を抑えることができ、定着不良や用紙の搬送不良を防ぐことができるとともに、用紙搬送力付与のタイミングのズレに伴う用紙の斜行やシワの発生を防ぐことができる。
【0057】
そして、以上のように定着装置18での定着不良や用紙の搬送不良が防がれる結果、図1に示す画像形成装置(レーザープリンター)1において高質画像を安定的に得ることができる。
【0058】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図5に基づいて以下に説明する。
【0059】
図5は本発明の実施の形態2に係る定着装置の断面図であり、本実施の形態では、加圧部材22を、その中心の加圧方向が定着ローラー21の回転軸に対して該定着ローラー21の回転方向上流側となるよう配置したことを特徴としており、他の構成は前記実施の形態1のそれと同じである。
【0060】
而して、本実施の形態に係る定着装置18によれば、加圧部材22を、その中心の加圧方向が定着ローラー21の回転軸に対して該定着ローラー21の回転方向上流側となるよう配置したため、加圧部材22を定着ローラー21に対して垂直に接触させた前記実施の形態1よりも、押圧部材25が接触方向に変形する力が強まり、該押圧部材25を初期の形状に戻す復元力が高められ、前記実施の形態1と同様に定着不良や用紙の搬送不良の発生が効果的に防がれる。
【0061】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3を図6に基づいて以下に説明する。
【0062】
図6は本発明の実施の形態3に係る定着装置の断面図であり、本実施の形態では、押圧部材25の定着ローラー回転方向上流部25Aの発泡率を下流部25Bの発泡率よりも低く設定したことを特徴としており、他の構成は前記実施の形態1のそれと同じである。
【0063】
而して、本実施の形態に係る定着装置18によれば、押圧部材25の定着ローラー回転方向上流部25Aの発泡率を下流部25Bの発泡率よりも低く設定することによって、該押圧部材25の上流部25Aの硬度が下流部25Bの硬度よりも高くなって該上流部25Aの復元力が強まるとともに、硬度の低い下流部25Bにおいて定着ローラー21との間に十分なニップ幅を確保することができるため、定着不良や用紙の搬送不良の発生が効果的に防がれるという効果が得られる。
【0064】
<実施の形態4>
次に、本発明の実施の形態4を図7に基づいて以下に説明する。
【0065】
図7は本発明の実施の形態4に係る定着装置の断面図であり、本実施の形態では、押圧部材25の定着ローラー回転方向上流部25Aと下流部25Bの硬度を中間部25Cの硬度よりも高く設定したことを特徴としており、他の構成は前記実施の形態1のそれと同じである。
【0066】
而して、本実施の形態に係る定着装置18によれば、押圧部材25の定着ローラー回転方向上流部25Aと下流部25Bの硬度を中間部25Cの硬度よりも高く設定したため、該押圧部材25の硬度の高い上流部25Aの復元力が強まるとともに、低硬度の中間部25Cは高硬度の下流部25Bによって支えられて変形が抑制されるために定着ローラー21との間に十分なニップ幅を確保することができ、定着不良や用紙の搬送不良の発生が効果的に防がれる。
【0067】
<実施の形態5>
次に、本発明の実施の形態5を図8に基づいて以下に説明する。
【0068】
図8は本発明の実施の形態5に係る定着装置の断面図であり、本実施の形態では、押圧部材の定着ローラー回転方向上流部25Aに凹部25aを形成し、この凹部25aに支持部材26に突設された凸部26aを嵌合させたことを特徴としており、他の構成は前記実施の形態1のそれと同じである。
【0069】
而して、本実施の形態に係る定着装置18によれば、押圧部材25の上流部25Aが支持部材26の凸部26aによって支えられるため、該押圧部材25の定着ローラー回転方向上流側に向かって変形しようとする力(復元力)が強まり、定着不良や用紙の搬送不良の発生が効果的に防がれる。尚、本実施の形態では、押圧部材25に凹部25aを形成し、支持部材26に凸部26aを形成したが、これとは逆に押圧部材25に凸部、支持部材26に凹部をそれぞれ形成しても良い。
【0070】
<実施の形態6>
次に、本発明の実施の形態6を図9に基づいて以下に説明する。
【0071】
図9は本発明の実施の形態5に係る定着装置の断面図であり、本実施の形態では、押圧部材25の定着ローラー回転方向上流部の接触面に凸部25bを一体に突設したことを特徴としており、他の構成は前記実施の形態1のそれと同じである。
【0072】
而して、本実施の形態に係る定着装置18によれば、押圧部材25の定着ローラー回転方向上流部の接触面に突設された凸部25bが定着ローラー21に押圧されることによって該押圧部材25の上流部の下流方向への変形が抑制されるため、押圧部材25の復元力が高められて定着不良や用紙の搬送不良の発生が防がれるという効果が得られる。
【0073】
尚、以上は本発明をモノクロのレーザープリンターとこれに備えられた定着装置に対して適用した形態について説明したが、本発明は、カラーレザープリンターやモノクロ・カラーを問わず、複写機や複合機等の他の任意の画像形成装置及びこれに備えられた定着装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
1 画像形成装置
1A 画像形成装置本体
2 画像形成部
3 用紙収納部
4 感光ドラム
5 帯電器
6 現像装置
7 転写ローラー
8 クリーニング装置
9 トナーホッパー
10 レーザースキャナーユニット(LSU)
11,12 給紙カセット
13 ピックローラー
14 フィードローラー
15 リタードローラー
16 排紙トレイ
17 レジストローラー対
18 定着装置
19 搬送ローラー対
20 排紙ローラー対
21 定着ローラー
22 加圧部材
23 定着ヒーター
24 表層部材
25 押圧部材
25A 押圧部材の上流部
25B 押圧部材の下流部
25C 押圧部材の中間部
25a 押圧部材の凹部
25b 押圧部材の凸部
26 支持部材
26a 支持部材の凸部
S1 第1搬送路
S2 第2搬送路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の定着ローラーを回転可能に配置し、該定着ローラーに圧接されて定着ローラーとの間にニップを形成する加圧部材を固定配置し、トナー像が転写された記録材を前記定着ローラーと加圧部材との間に形成された前記ニップを通過させることによってトナー像を記録材上に定着させる定着装置において、
前記加圧部材を、前記定着ローラーと接触する表層部材と、該表層部材を前記定着ローラーに押圧する押圧部材及び該押圧部材を支持する支持部材で構成し、前記定着ローラーの回転時に前記押圧部材に発生する定着ローラー回転方向下流側への変形を復元させる復元力を前記押圧部材に付与するよう構成したことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記押圧部材をその長手方向中央部が定着ローラー回転方向上流側に向かって凸となる円弧状に湾曲させたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記加圧部材を、その中心の加圧方向が前記定着ローラーの回転軸に対して定着ローラー回転方向上流側となるよう配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の定着装置。
【請求項4】
前記押圧部材の定着ローラー回転方向上流部の発泡率を下流部の発泡率よりも低く設定したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記押圧部材の定着ローラー回転方向上流部と下流部の硬度を中間部の硬度よりも高く設定したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記押圧部材と支持部材とを定着ローラー回転方向上流部において凹凸嵌合させたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記押圧部材の定着ローラー回転方向上流部の接触面に凸部を突設したことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−255894(P2012−255894A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128540(P2011−128540)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】