説明

定着装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】記録部材上のトナー表面を改質して、非接触定着手段により加熱溶融されたトナーの記録部材に対する親和性を増して良好な定着画像を得る定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録紙Pは、未定着のトナー画像が形成され、定着装置40に搬送される。定着装置40の表面改質装置108は、記録紙Pのトナー表面を、例えばプラズマ照射等により表面改質することで、トナー表面に親水性の極性基を生成させる。次に、記録紙Pは記録紙搬送装置100によりレーザ照射手段41に搬送され、レーザを照射されトナーTが溶融して記録紙に定着される。記録紙PのトナーTは、表面改質処理がされていて、記録紙Pとの親和性(接着力)が向上し、加圧することなしに良好な定着性が確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に用いる定着装置に係り、より詳細には、記録部材上に形成された未定着画像を、レーザ光照射手段などの非接触手段により定着する定着装置、及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(例えば複写機やプリンタ、ファクシミリ等)には、記録部材(記録紙等)上に形成されたトナー像を熱溶融することによって記録部材上に定着させる定着装置が備えられている。この定着装置の一例として、特許文献1に示されるように、定着ローラと加圧ローラとから構成されるローラ対方式の定着装置が知られている。
【0003】
定着ローラは、アルミなどの金属製中空芯金の表面に弾性層が形成されたローラ部材であり、この芯金の内部に熱源としてハロゲンランプが配置された構成である。そして、温度制御装置が、定着ローラ表面に設けられた温度センサから出力される信号に基づいてハロゲンランプをオン/オフ制御することによって、定着ローラ表面の温度を制御する。
【0004】
加圧ローラは、芯金上に被覆層としてシリコンゴムなどの耐熱性弾性層を設けたローラ部材である。この加圧ローラは、定着ローラ周面に対して圧接され、加圧ローラの上記弾性層の弾性変形によって、定着ローラと加圧ローラとの間にニップ領域が形成される。
【0005】
上記の構成において、定着装置では、未定着のトナー像が形成された記録紙を定着ローラと加圧ローラとの間のニップ領域に挟み込み、これら両ローラを回転させることによって上記記録紙を搬送するとともに、定着ローラ周面の熱により記録紙上のトナー像を溶融させて記録紙に定着させる。
【0006】
しかし、従来のローラ対方式にあっては、装置の電源OFF状態の時間が長い場合に、電源投入直後の定着ローラ及び加圧ローラが室温状態にあるため、所定温度にまで上昇させる必要があり、ウォームアップ時間を要する。また、印刷動作(画像形成動作)が行われていない待機状態では、ローラ表面を所定温度に保持する必要があるため、印刷動作が行われていない時も常に加熱していなければならない。従って、印刷動作以外に、無駄なエネルギーを消費する。
【0007】
そこで、無駄なエネルギーを消費せず効率よくトナーのみを定着させる方法として、特許文献2にあるようなレーザパワーを利用してトナーを定着させる定着装置が提案されている。
【0008】
特許文献2によれば、複数のレーザを用いて直接トナーを加熱する。こうして、一つの弱いレーザだけでは不十分な定着性を複数個のレーザを用いることで定着性を向上させている。これにより、定着ローラ表面を所定温度に保持する必要がないので、無駄なエネルギーを消費しない。また低出力で安価なレーザを使うことが可能なため、装置全体も簡単なものにできると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−38802号公報
【特許文献2】特開平7−191560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のように、幅広く使用されているローラ定着やベルト定着等のトナーを加熱、加圧して定着させる接触定着方式の場合、トナーと記録紙の間の接着は、加熱により溶融したトナーをローラニップ部(上ローラとしたローラの接触部)でトナーへ圧力を付与することで紙への浸透(接着力)を促進し、固着することで良好な定着性を得られる。
【0011】
しかし、特許文献2のようなレーザ定着装置の場合、加圧手段が無いため、記録紙への浸透力を付与することができない。トナーの記録紙への浸透(接着力)は、トナーが溶融した時の粘度や、記録紙への濡れ性等の要因に支配される。したがって、たとえトナーが溶融して粘度が下がったとしても、記録紙への親和性が悪ければトナーは紙へ浸透(接着)しないこともある。
【0012】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、記録紙上のトナー表面を改質して、非接触定着手段により加熱溶融されたトナーの記録紙に対する親和性を増して良好な定着画像を得る定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、未定着のトナー画像を形成された記録部材を搬送しながら、非接触で前記トナー画像を定着する定着装置において、前記記録部材上のトナー表面を、加熱溶融時に記録部材への親和性を増すように改質する表面改質手段と、表面を改質されたトナーに対し非接触で加熱溶融する非接触定着手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、前記記録部材は、紙であり、前記表面改質手段は、トナー表面に親水性の極性基を生成させて記録部材への親和性を増すことを特徴とする。
【0015】
また、前記非接触定着手段は、光を照射してトナー画像を定着させることを特徴とし、好ましくはレーザ光を用いることを特徴とする。さらに、前記非接触定着手段は、半導体レーザを用いるのが望ましい。なお、この場合、複数の半導体レーザ素子を記録部材の搬送方向と直交する方向にアレイ状に並べたレーザアレイからなることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記定着装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、記録部材に形成されたトナー表面を、例えばプラズマ照射等により表面改質することで、記録部材との親和性を向上させて、トナーを加熱溶融させたときに記録部材と接着性を高め、良好な定着性が確保できる。特に、記録部材が記録紙の場合は、トナー表面に親水性の極性基を生成させることにより、記録部材との親和性を向上さ競ることができる。
【0018】
また、非接触定着方式として、光照射による加熱を行うことで、加熱手段のウォームアップが不要となり、定着したい時のみ瞬時に加熱溶融し、効率的に定着を行うことができる。
【0019】
また、光照射手段として、レーザは、光の拡散が少ないためレーザと集光レンズの併用により、光をもっとも集光でき、光強度(単位面積当たりの光出力:W/mm2)をもっとも大きくすることができるので、効率よく光を照射できる。さらに、レーザ照射の場合、トナーの存在する場所のみを選択加熱することも可能であり、トナーを更に効率的に加熱できる。さらにレーザの中でも半導体レーザを用いることで、CO2レーザやYAGレーザを用いるより、素子のコストが安いため低コスト化できる。
【0020】
また、半導体レーザ素子を紙搬送方向と垂直方向にライン上に、並べることで、紙搬送方向と垂直方向にレーザをスキャンさせる必要がないため、必要最低限の構成で使用することができ、更に、高速で、定着させることが可能である。
【0021】
また、このような定着装置を用いることで、画像形成装置のウォームアップ時間が短縮でき、待機時の消費電力も必要がない為、低消費電力の画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るカラー画像形成装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】画像形成装置に用いる定着装置を示す概略図である。
【図3】定着装置に用いる表面改質装置を示す概略図である
【図4】定着装置に用いるレーザ照射手段を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
本発明の一実施形態について図1に基づいて説明すると以下の通りである。
【0025】
図1は、乾式電子写真方式のカラー画像形成装置の内部構造を示している。画像形成装置は、例えばネットワーク上の各端末装置から送信される画像データ等に基づいて、所定の記録部材に対して多色又は単色の画像を形成する。ここで、画像形成を行う記録部材は紙とする。
【0026】
上記画像形成装置は、可視像形成ユニット50(50Y・50M・50C・50B)、記録紙搬送手段30、定着装置40、供給トレイ20を備えている。
【0027】
上記画像形成装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色に対応して、4つの可視像形成ユニット50Y・50M・50C・50Bが並設されている。つまり、可視像形成ユニット50Yは、イエロー(Y)のトナーを用いて画像形成を行い、可視像形成ユニット50Mは、マゼンタ(M)のトナーを用いて画像形成を行い、可視像形成ユニット50Cは、シアン(C)のトナーを用いて画像形成を行い、可視像形成ユニット50Bは、ブラック(B)のトナーを用いて画像形成を行う。具体的な配置としては、記録紙Pの供給トレイ20と定着装置40とを繋ぐ記録紙の搬送路に沿って4組の可視像形成ユニット50を配設した、所謂タンデム式である。
【0028】
可視像形成ユニット50は、それぞれ実質的に同一の構成を有し、すなわち、それぞれに、感光体ドラム51、帯電器52、レーザ光照射手段53(ここでは、感光体ドラムへ潜像を書き込むためのレーザ光照射手段のこと)、現像器54、転写ローラ55、クリーナユニット56、が設けられており、搬送される記録紙Pに各色トナーを多重転写する。
【0029】
ここで、上記感光体ドラム51は、形成される画像を担持するものである。上記帯電器52は、感光体ドラム51表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。レーザ光照射手段53は、画像形成装置に入力された画像データに応じて、帯電器52によって帯電した感光体ドラム51表面を露光して、該感光体ドラム51表面に静電潜像を形成する。上記現像器54は、感光体ドラム51表面に形成された静電潜像を、各色のトナーによって顕像化する。転写ローラ55は、トナーとは逆極性のバイアスが印加されており、後述する記録紙搬送手段30により搬送された記録紙Pに、形成されたトナー像を転写させている。ドラムクリーナユニット56は、現像器54での現像処理、及び、感光体ドラム51に形成された画像の転写後に、感光体ドラム51表面に残留したトナーを、除去・回収する。以上のような、記録紙Pに対するトナー像の転写は、4色について4回繰り返される。
【0030】
上記記録紙搬送手段30は、駆動ローラ31、アイドリングローラ32、搬送ベルト33からなり、記録紙Pに可視像形成ユニット50にてトナー像が形成されるように、記録紙Pを搬送するものである。駆動ローラ31およびアイドリングローラ32は、無端状の搬送ベルト33を架張するものであり、駆動ローラ31が所定の周速度に制御されて回転することで、無端状の搬送ベルト33を回転させている。搬送ベルト33は、外側表面に静電気を発生させており、記録紙Pを静電吸着させながら、上記記録紙Pを搬送している。
【0031】
上記記録紙Pは、このようにして、搬送ベルト33に搬送されながらトナー像を転写されたあと、駆動ローラ31の曲率により搬送ベルト33から剥離され、定着装置40に搬送される。
定着装置40は、記録紙に適度な熱を与えて、トナーを溶解して記録紙に固定することで、堅牢な画像を形成する。
【0032】
上記定着装置40について、図2を用いて詳細に説明する。図2は、レーザ定着装置の紙搬送方向を横から見たときの図である。
定着装置40は、レーザ照射手段(非接触定着手段)41及び記録紙Pを搬送する記録紙搬送装置100及び表面改質装置108で構成されている。
【0033】
記録紙搬送装置100は、2本のテンションローラ101、及び102と、耐熱性の無端の記録紙搬送ベルト103から構成されており、記録紙Pは、ベルト103上を搬送する。2本のテンションローラ101、及び102は、図示しない軸芯が図示しないベアリングと接続されており、テンションローラ101は、図示しないギアを介して図示しない駆動部と接続されている。
【0034】
記録紙搬送ベルト103は、ポリカーボネート、フッ化ビニリデン、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂にカーボンなどの導電性部材を分散させた素材から構成されており、記録紙搬送ベルト103の内面に接続された図示しないバイアス印加手段によって電圧を印加することで、記録紙搬送ベルト103の表面(外周面)は、記録紙Pを静電吸着させる構成となっている。記録紙Pを記録紙搬送ベルト103に静電吸着させることによって、記録紙搬送ベルト103と記録紙Pが密着し、記録紙Pの浮きを極力防ぐことができる。記録紙搬送ベルト103の表面は、図2に示すように、光軸110と垂直な面で交わっている。
【0035】
表面改質装置108は、レーザ光源を有するレーザ照射手段41に対して紙搬送方向上流側に設置し、未定着画像を載せた紙のトナーTの表面を改質する。表面改質処理として、大気圧プラズマ処理、減圧プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線処理などトナー表面を改質できる処理であれば良い。例えば、そのような表面改質装置として大気圧プラズマ処理装置がある。大気圧プラズマ処理装置は、大気圧中でグロー放電を発生させて表面改質を行うため、真空プラズマ処理と比較して装置を簡素化でき、図2のように、大気圧中で紙等の連続して搬送されるものに対して、連続して照射が可能である。従って、ここでは表面改質装置108としてプラズマ照射装置を用いるものとする。
【0036】
プラズマ照射装置(表面改質装置)108の具体的な構成を図3に示す。図3(a)は装置の紙搬送方向に直行方向から見た断面図である。(b)はプラズマ照射ノズル153の詳細図である。プラズマ照射による表面改質は、2つの電極間151、152に高圧(例えば2−10kV)を印加し、電極間(距離として1cm〜20cm)を、10μA〜50mAの範囲で印加し、電極間に空気を流すことで空気中の酸素などがラジカルを生成し、ラジカル化した酸素がトナー(例えば、トナーの主成分はポリエステルや、スチレンアクリル等の樹脂)表面を攻撃(樹脂中のC−H結合している部分と反応)して、トナーTの表面にOH基やカルボニル基等の親水基を生成する。一方、記録紙Pの表面は、OH基(紙の主成分であるセルロースがもつOH基)が多く存在するので、記録紙Pとの接着性が向上できる。表面処理装置はファン154により外の空気を装置内に取り入れてプラズマをトナー表面に送っている。
【0037】
なお大気圧中でのプラズマ発生装置は、例えば、プラズマ照射表面改質装置PS−601SW(ウエッジ株式会社製)や、特開2009−87697号公報等の大気圧プラズマ照射装置が示されており、これらプラズマ照射装置により、トナー表面に親水基を導入できる構成であれば、どのような構成でもよい。
【0038】
例えば、PS−601SWでは、JIS K6768による試験方法(プラスチックの濡れ性試験方法)により濡れ性が改善(数値が高いほど親水性になるので濡れ性がよく、紙に浸透(接着)しやすい)することがカタログに記載されている。具体的な一例としてポリエチレン(PE)が処理前の濡れ性が31mN/mから表面処理後70mN/m、同様にアクリルが38mN/mから70mN/m等、その他多くの樹脂で濡れ性が改善しており、トナーの主成分であるポリエステル樹脂やアクリル樹脂もこれらPEやアクリルと同様に表面処理することで濡れ性が改善できる。
【0039】
図4は、レーザ照射手段41の構成を示す図である。図4(a)は断面図であり、図4(b)は正面図である。
【0040】
レーザ照射手段41は、レーザ光を出射する装置であり、本実施形態では、レーザ照射手段41は、複数の半導体レーザ素子213が、定着用の記録紙搬送ベルト103の幅方向に平行で、かつ、記録紙搬送方向と直交する方向に一列に配列された半導体レーザ素子アレイである。半導体レーザ素子213から出射されるレーザ光は、該レーザ光の進む方向である出射方向に対して垂直な断面が、略真円形状である。各半導体レーザ素子213は、それぞれの出射するレーザ光の出射方向がすべて同一方向となり、かつ、半導体レーザ素子213の配列する方向に垂直な方向となるように設けられる。
【0041】
半導体レーザ素子213としては、出射するレーザ光の波長が400nm〜1000nmのものを任意に選択することができる。各半導体レーザ素子213は、シリコンから形成される各シリコン基板212上にそれぞれ設けられる。シリコン基板212上には図示しない制御回路と受光素子214とがモノリシックに形成される。受光素子214はモニタ用のフォトダイオードである。制御回路は、受光素子214から入力される信号に基づいて、半導体レーザ素子213に印加する電圧を制御して、レーザ光の出力を変化させたり一定に保ったりする。制御回路と半導体レーザ素子213とは、図示しない電極およびボンディングワイヤーを介して電気的に接続される。
【0042】
また、シリコン基板212上には、各半導体レーザ素子213の温度を測定するために、サーミスタなどの温度センサ215が設けられる。前記制御回路は、温度センサ215によって検出された温度データに基づいて、半導体レーザ素子213に印加する電圧を制御する。
【0043】
シリコン基板212は、半導体レーザ素子213が設けられる面とは反対側の面において、セラミック基板211上に設けられる。セラミック基板211上の図示しない電極とシリコン基板212上の図示しない電極とは、ワイヤーボンディングなどによって電気的に接続される。
【0044】
また、セラミック基板211において、シリコン基板212が設けられる面とは反対側の面に、ヒートシンク218を設ける。
【0045】
半導体レーザ素子213の照射方向下流側には、レンズアレイ216が設けられる。レンズアレイ216は、半導体レーザ素子213の総数と同じ数の凸レンズ217aと、該凸レンズ217aを保持するレンズホルダ217bとを含む。レンズアレイ216は、各半導体レーザ素子213から出射されたレーザ光が、各凸レンズ217aにそれぞれ入射するように構成される。
【0046】
以上のように、本実施形態においてレーザ照射手段41は、複数の半導体レーザ素子213が、定着用搬送ベルト103の幅方向に平行で、かつ、記録紙搬送方向に垂直な方向に一列に配列された半導体レーザ素子アレイである。
【0047】
たとえば、1つのレーザ光源で、記録紙Pの全面を光照射する場合、記録紙Pの幅方向にレーザ光をスキャンさせる必要がある。そのため、定着プロセスに時間がかかるため高速で定着させるのに限界がある。また、レーザ光をスキャンさせるには、装置の複雑化、コストアップになる。
【0048】
これに対して、レーザ照射手段41を半導体レーザ素子アレイの構成とすることによって、記録紙Pの幅方向にレーザ光をスキャンさせる必要がないため、簡単な装置構成で高速定着が可能である。
また、1つのレーザ光源で高出力するよりも、複数の半導体レーザ素子213を備える構成で高出力化したほうが、レーザ照射手段41における放熱部の面積が大きくなる。放熱部であるヒートシンク218への熱移動効率を向上することができる。
【0049】
記録紙Pは、可視像形成ユニット50により未定着のトナー画像が形成され、定着装置40に搬送される。定着装置40の表面改質装置108は、記録紙PのトナーTの表面を、例えばプラズマ照射等により表面改質することで、トナー表面に親水性の極性基を生成させる。次に、記録紙Pは記録紙搬送装置100によりレーザ照射手段41に搬送され、レーザを照射されトナーTが溶融して記録紙に定着される。
【0050】
記録紙PのトナーTは、表面改質処理がされているので、記録紙Pとの親和性(接着力)が向上し、加圧することなしに良好な定着性が確保できる。また、非接触定着方式として、光照射による加熱を行うことで、加熱手段のウォームアップが不要となり、定着したい時のみ瞬時に加熱溶融し、効率的に定着を行うことができる。
【0051】
なお、実施形態ではレーザによる非接触定着を行ったが、フラッシュランプやLED等の光照射やオーブン加熱等の非接触定着でもよい。
ただし、レーザは、光の拡散が少ないためレーザと集光レンズの併用により、光をもっとも集光でき、光強度(単位面積当たりの光出力:W/mm2)をもっとも大きくすることができるので、効率よく光を照射できる。さらに、レーザ照射の場合、トナーの存在する場所のみを選択加熱することも可能であり、トナーを更に効率的に加熱できる。さらにレーザの中でも半導体レーザを用いることで、CO2レーザやYAGレーザを用いるより、素子のコストが安いため低コスト化できる。
【0052】
例えば1つのレーザ光照射手段で、紙全面を光照射する場合、紙の搬送方向以外に、紙搬送方向と垂直方向にレーザをスキャンさせる必要がある。そのため、定着プロセスに時間がかかるため高速で定着させるのに限界がある。また、レーザをスキャンさせるには、装置の複雑化、コストアップになる。一方、紙搬送方向と垂直方向にライン上に、並べることで、紙搬送方向と垂直方向にレーザをスキャンさせる必要がないため、必要最低限の構成で使用することができ、更に、高速で、定着させることが可能である。
【0053】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
20 供給トレイ
30 記録紙搬送手段
31 駆動ローラ
32 アイドリングローラ
33 搬送ベルト
40 定着装置
41 レーザ照射手段(非接触定着手段)
50,50Y、50M、50C、50B 可視像形成ユニット
51 感光体ドラム
52 帯電器
53 レーザ光照射手段
54 現像器
55 転写ローラ
56 クリーナユニット
56 ドラムクリーナユニット
100 記録紙搬送装置
101,102 テンションローラ
103 記録紙搬送ベルト
103 定着用搬送ベルト
108 表面改質装置
110 光軸
151 電極間
153 プラズマ照射ノズル
154 ファン
211 セラミック基板
212 各シリコン基板
212 シリコン基板
213 半導体レーザ素子
214 受光素子
215 温度センサ
216 レンズアレイ
217a 凸レンズ
217b レンズホルダ
218 ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着のトナー画像を形成された記録部材を搬送しながら、非接触で前記トナー画像を定着する定着装置において、
前記記録部材上のトナー表面を、加熱溶融時に記録部材への親和性を増すように改質する表面改質手段と、
表面を改質されたトナーに対し非接触で加熱溶融する非接触定着手段と、
を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記記録部材は、紙であり、
前記表面改質手段は、トナー表面に親水性の極性基を生成させて記録部材への親和性を増すことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記非接触定着手段は、光を照射してトナー画像を定着させることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記非接触定着手段は、レーザ光を用いることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記非接触定着手段は、半導体レーザを用いることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記非接触定着手段は、複数の半導体レーザ素子を記録部材の搬送方向と直交する方向にアレイ状に並べたレーザアレイからなることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の定着装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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