説明

定着装置及びそれを用いた画像形成装置

【課題】回転駆動する定着ロールの外周面に押し当てて連れ回る定着ベルトの回転速度についての制御を過不足なく行って、不測のトラブル(定着不能など)が発生することを未然に防ぐことができる定着装置等を提供する。
【解決手段】定着装置は、回転駆動する定着ロールと、定着ロールの外周面に押し付けられて連れ回る定着ベルトと、定着ロールに回転動力を伝達して当該定着ロールを回転させる駆動装置と、定着ベルトの回転速度を計測する計測手段と、計測手段で計測される定着ベルトの回転速度が予め設定される目標速度を中心にした許容範囲内に維持されるよう駆動装置における回転動力の速度を補正する補正手段と、計測手段で計測される定着ベルトの回転速度と目標速度との差が閾値以内であるときには補正手段による回転動力の速度の補正に移行し、その差が閾値を超えたときには未定着の像を被記録材に定着させる動作を禁止する制御手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着装置及びそれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現像剤で構成される画像を形成するプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置においては、現像剤で現像された未定着像である現像剤像を記録紙等の被記録材に対し、熱と圧力の作用で溶融して定着させる定着装置を備えている。
【0003】
このような定着装置としては、回転駆動する定着ロール(例えば加圧ロール)と、この定着ロールの外周面に押し付けられて連れ回る定着ベルト(例えば加熱ベルト)とを備え、その定着ロールと定着ベルトとの間の定着処理部に未定着の像が形成された被記録材を導入して通過させることにより、その未定着の像を被記録材に定着させる形式のものがある。また、この形式の定着装置としては、その定着ベルトの従動するときの回転速度を安定化させるため、例えば、以下の構成を採用するものが知られている。
【0004】
回転駆動する加圧部材(ロール)と、加圧部材に接触して連れ回る定着部材(ベルト)と、加圧部材を回転駆動させる駆動手段と、定着部材の回転速度を検知する検知手段と、被定着媒体の2枚目以降の定着時には、前記検知手段で検知される定着部材の回転速度に基づいて、前記加圧部材の回転速度を制御する制御手段を備えた定着装置と、それを用いた画像形成装置がある(特許文献1)。また、特許文献1には、この定着装置によれば、被定着媒体を定着部材と加圧部材の間に連続通過させた場合でも、定着部材の周速度を一定にできることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−298877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、回転駆動する定着ロールの外周面に押し当てて連れ回る定着ベルトの回転速度について目標速度を中心にした許容範囲内に維持させる制御を過不足なく行って、不測のトラブル(定着不能や画像形成不能など)が発生することを未然に防ぐことができる定着装置及びそれを用いた画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の定着装置(A1)は、
回転駆動する定着ロールと、
前記定着ロールの外周面に押し付けられて連れ回る定着ベルトと、
前記定着ロールに回転動力を伝達して当該定着ロールを回転させる駆動装置と、
前記定着ベルトの回転速度を計測する計測手段と、
前記計測手段で計測される定着ベルトの回転速度が予め設定される目標速度を中心にした許容範囲内に維持されるよう前記駆動装置における回転動力の速度を補正する補正手段と、
前記計測手段で計測される定着ベルトの回転速度と前記目標速度との差が閾値以内であるときには前記補正手段による回転動力の速度の補正に移行し、前記差が閾値を超えたときには未定着の像を被記録材に定着させる動作を禁止する制御手段と
を備えるものである。
【0008】
この発明の定着装置(A2)は、上記発明A1の定着装置において、前記定着ロールが前記定着ベルトに加圧された状態で接触する加圧ロールであり、前記定着ベルトが加熱された状態になるベルトであり、
前記定着ロールと前記定着ベルトの間の定着処理部に、未定着の像が形成された被記録材を当該未定着の像が前記定着ベルトに接触する状態で導入して通過させるものである。
【0009】
この発明の画像形成装置(B1)は、被記録材に未定着の像を形成する作像装置と、
前記作像装置で形成された未定着の像を被記録材に定着させる上記発明A1又はA2の定着装置と、
前記定着装置における制御手段が定着動作を禁止する制御を行う場合、画像を形成する動作を禁止する第2の制御手段と
を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
上記発明A1の定着装置によれば、回転駆動する定着ロールの外周面に押し当てて連れ回る定着ベルトの回転速度について目標速度を中心にした許容範囲内に維持させる制御を過不足なく行って、不測のトラブル(定着不能、定着不良など)が発生することを未然に防ぐことができる。
【0011】
上記発明A2の定着装置では、上記発明A1による効果に加えて、より安定した定着を行うことができる。
【0012】
上記発明B1の画像形成装置によれば、定着装置における定着ベルトの回転速度について目標速度を中心にした許容範囲内に維持させる制御を過不足なく行って、不測のトラブル(被記録媒体の搬送速度の不一致による画像形成不能や画質不良など)が発生することを未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図2】図1の画像形成装置に適用される定着装置を示す概略断面図である。
【図3】図1の画像形成装置における特徴的な制御システムの構成部分を示す説明図である。
【図4】図3に示す制御システムによる制御動作の流れ(シーケンス)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について図面を参照しながら説明する。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る画像形成装置1を示すものである。この画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものであり、所要の外観形状を有する筐体10の内部空間に、画像情報に基づく画像を被記録材の一例としての記録用紙9に形成する画像形成部2や、画像形成装置1に入力される画像情報について所要の処理を施して画像信号を生成する画像処理部3や、画像形成部2、画像処理部3等の構成部品の各動作について総合的に制御する総合制御部4等が配置されている。
【0016】
画像形成部2は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー(現像剤)で現像される未定着のトナー像をそれぞれ形成する4つの作像ユニット20と、各作像ユニット20で形成された各トナー像を中継ぎした後に記録用紙9に転写する中間転写ユニット30と、中間転写ユニット30の転写部に供給すべき所要の記録用紙9を収容して送出する給紙装置40と、未定着のトナー像が転写された記録用紙9を通過させてトナー像の定着を行う定着装置50等で構成されている。図中の矢付き一点鎖線は、筐体10内において記録用紙9が主に搬送される搬送経路を示す。
【0017】
作像ユニット20(Y,M,C,K)は、所要の間隔をあけて直列的に配置されており、そのいずれも回転する感光ドラム21を備えており、この感光ドラム21の周囲に次の各装置が主に配置されている。
【0018】
主な装置とは、感光ドラム21の像形成が可能な像保持面(外周面)を所要の電位に帯電させる帯電装置22と、感光ドラム21の帯電された外周面に画像の情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する露光装置23と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)の現像剤のトナーで現像することにより可視像であるトナー像とする現像装置24(Y,M,C,K)と、そのトナー像を中間転写ユニット30に転写した後の感光ドラム21の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃するドラム清掃装置26等である。
【0019】
露光装置23は、画像形成装置1に入力される画像の情報に応じて構成される光を、帯電後の感光ドラム21の像保持面に対して照射して静電潜像を形成するものである。露光装置23としては、発光ダイオードと光学部品等を用いて構成される非走査型の露光装置を使用しているが、その他にも、例えば、半導体レーザとポリゴンミラー等の光学部品を用いて構成される走査型のものを使用してもよい。
【0020】
この露光装置23には、画像形成装置1に入力されるプリント対象となる画像情報について画像処理部3で必要な画像処理が施され、その処理後に得られる各色成分の画像信号が送信されるようになっている。画像形成装置1には、原稿読取装置や、パーソナルコンピュータ等の情報端末や、記憶媒体の読み書き装置等の図示しない画像情報機器が接続通信部を介して接続可能となっており、その画像情報機器から任意の画像の情報が入力される。
【0021】
中間転写ユニット30は、図1に示すように、各作像ユニット20(Y,M,C,K)の上方の位置に存在するように配置されている。
【0022】
この中間転写ユニット30は、感光ドラム21の転写部となる一次転写位置を通過しながら矢印で示す方向に回転する中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31をその内面から所望の状態に保持して回転自在に支持する複数の支持ロール32a〜32fと、各作像ユニット20(Y,M,C,K)の感光ドラム21上のトナー像を中間転写ベルト31に一次転写させる一次転写装置33と、支持ロール32eに支持されている中間転写ベルト31の外周面(像保持面)に所定の圧力で接触して回転する二次転写装置35と、二次転写装置35を通過した後に中間転写ベルト31の外周面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルト清掃装置36とで主に構成されている。支持ロール32aは、駆動ロールとして構成されている。一次転写装置33及び二次転写装置35としては、例えば、各転写電圧が供給される接触部材としてロールを使用する接触式の転写装置が適用されている。
【0023】
給紙装置40は、作像ユニット20の下方側の位置に存在するように配置されている。給紙装置40は、筐体10の正面(操作者が使用時に向き合う側面)側に引き出すことができるように取り付けられ、所望のサイズ、種類等の記録用紙9を積載した状態で収容する単数(又は複数)の用紙収容体41と、用紙収容体41から記録用紙9を1枚ずつ送り出す送出装置42とで主に構成されている。給紙装置40から送りされる記録用紙9は、複数の用紙搬送ロール対43a,43b,…や搬送ガイド材で構成される搬送路を経由して中間転写ユニット30の二次転写位置(中間転写ベルト31と二次転写装置35との間)に搬送される。
【0024】
定着装置50は、中間転写ユニット30の二次転写位置の上方側の位置に存在するように配置されている。
【0025】
この定着装置50は、図2に示すように、記録用紙9の導入及び排出を行うための開口51a,51bが形成された筐体51を備えており、その筐体51の内部に、電磁誘導加熱される定着ベルト52と、定着ベルト52を電磁誘導加熱する交流磁界を発生する加熱ユニット53と、定着ベルト52と対向する状態で配置される加圧ロール54と、定着ベルト52を介して加圧ロール54から押し付けられる押付けパッド55と、押付けパッド55を支持する支持体56と、加熱ユニット53で生成される交流磁界を誘導して磁路を形成する感温磁性部材57と、感温磁性部材57を通過した磁力線を誘導する誘導部材58と、定着ベルト52の裏面の温度を計測する温度センサ61、定着ベルト52の回転速度を計測する速度センサ62等が配置されている。
【0026】
定着ベルト52は、画像形成装置1で使用する記録用紙9の搬送時の幅寸法よりも少し長い幅寸法からなる円筒形状の無端状ベルトである。また、定着ベルト52としては、例えば、基材上に、電磁誘導加熱される導電発熱層、定着性を向上させる弾性層、表面離型層をこの順に積層形成した多層構造のベルトが適用される。温度センサ61としては、定着ベルト52の裏面から与えられる熱量に応じて電気抵抗値が変化することで定着ベルト52の表面の温度を計測するものが使用される。温度センサ61の定着ベルト52の裏面に接触する位置は、例えば、定着ベルト52の幅方向のほぼ中央部に設定されている。
【0027】
加熱ユニット53は、定着ベルト52の幅方向に長い形状の非磁性部材からなる支持板(ボビン)531と、支持板531の長手方向に沿って複数回に閉ループ状に巻き回れた状態で配置されて交流磁界を発生させる励磁コイル532と、励磁コイル532で生成された交流磁界の磁路を形成する磁心533と、交流磁界を支持板531の長手方向に均すための調整用磁心534と、磁心533を上から覆うように保持する加圧部材535と、磁界の外部への漏洩を抑制するシールド部材536と、励磁コイル532に高周波の交流電流を供給する励磁回路537とで主に構成されている。励磁回路537は、外部電源(商用電源)から入手する商用交流電圧から高周波(例えば、20kHz〜100kHz)の交流電流を発生させるとともに励磁コイル532に供給する高周波発生回路部を備えている。
【0028】
加圧ロール54は、心金541に弾性体層542と離型層543をこの順に積層させた状態で形成したものである。加圧ロール54は、心金541の両端部を軸受けする軸受材に対して加圧ばねにより所要の荷重が付与され、これにより定着ベルト52(の押付けパッド55)を加圧する状態に支持されている。また、加圧ロール54は、その心金541の一端部に取り付けられる図示しないギヤに対して電動モータ、回転伝達機構等で構成される回転駆動装置63(図3)から回転動力が伝達され、これにより矢印Aで示す方向に所要の回転速度で回転駆動する。
【0029】
定着ベルト52は、押付けパッド55により加圧ロール54の外周面に押し付けられた状態に保持され、その加圧ロール54から回転動力を受けて矢印Bで示す方向に連れ回る(従動回転する)ように支持されている。また、定着ベルト52が押付けパッド55により加圧ロール54の外周面に押し付けられた部位(圧接部)が、定着処理がなされる定着処理部Nとなる。
【0030】
また、この定着装置50は、図3に示すように、加熱ユニット53(実際には励磁回路537)や回転駆動装置63の動作について制御する制御装置65を備えている。制御装置65は、画像形成装置1の総合制御部4と接続されており、これにより必要な制御情報のやり取りがなされるように構成されている。制御装置65及び総合制御部4は、例えば中央演算処理装置、記憶装置、制御回路、入出力装置等で構成されている。また、制御装置65には、加熱ユニット53(励磁回路567)、温度センサ61、速度センサ62、回転駆動装置63等が接続されている。
【0031】
制御装置65による加熱ユニット53の駆動制御は、温度センサ61からの検出情報等に基づいて行われる。
【0032】
例えば、プリント動作(定着動作を含む)を行うときには、最初に、定着ベルト52の温度が予め設定する通紙中の目標温度(定着設定温度)に達するまで加熱ユニット53(実際には高周波発生回路部573b)を駆動して励磁コイル532を作動させることで定着ベルト52を電磁誘導加熱し始める。続いて、その加熱したときの定着ベルト52の温度が目標温度に達した時点で、加熱ユニット53(実際には高周波発生回路部573b)の駆動を停止させることで定着ベルト52の電磁誘電加熱を停止させ、その後、定着ベルト52の温度が目標温度を基準にした許容下限温度に達した時点で加熱ユニット53を再び駆動して励磁コイル532を作動させることで定着ベルト52を目標温度に達するまで電磁誘導加熱する。このような駆動制御が、要求されたプリント動作が終了するまで繰り返される。
【0033】
制御装置65による回転駆動装置63の駆動制御は、速度センサ62からの検出情報等に基づいて行われる。これは、定着性能に対する影響力の強い定着ベルト52の回転速度が安定することが重要であるのに対し、その定着ベルト52が加圧ロール54に対して従動回転する構成を採用しているため、定着ベルト52の回転状態の検出結果に基づいて加圧ロール54の回転条件を間接的に調整する形式になっている。
【0034】
この駆動制御については、具体的には、速度センサ62から得られる定着ベルト52の回転速度Vbが予め設定される目標速度Vxを雄心した許容範囲(Vx±α)内に維持されるよう回転駆動装置63で発生させる回転動力の速度Vsを増減して補正するようにしている。例えば、定着ベルト52の回転速度Vbが目標速度の許容範囲の上限値(Vx+α)を超えた場合は、回転駆動装置63の回転動力の速度Vsを減少させた値(Vs−β)に変更する。反対に、定着ベルト52の回転速度Vbが目標速度の許容範囲の下限値(Vx−α)を下回った場合は、回転駆動装置63の回転動力の速度Vsを増加させた値(Vs+δ)に変更する。このような回転駆動装置63の駆動制御(回転動力の速度の補正)は、制御装置65の一部の処理機能(補正手段66:図3)として構成される。また、回転駆動装置63の駆動制御は、例えば、電動モータの駆動信号を基準の周波数を分周して生成する場合、その分周比を調整することで行うことができる。
【0035】
速度センサ62は、定着ベルト52の外周面の一端部に形成した1つのマーク64(図3)を定位置(定着ベルト52と所要の間隔をあけて向き合う位置)で光学的に検出して定着ベルト52の回転速度を検出するものである。この場合、定着ベルト52の回転速度Vbは、定着ベルト52の外周長をそのマーク64を検出した周期(検出した間隔の時間)で除することで周速度として得られる。また、速度センサ62については、光を出射する発光部と、発光部から出射した光がマーク64で反射した光を受光する受光部を備えたフォトセンサで構成される。一方、被検出対象であるマーク64は、速度センサ62から出射される光を反射させる特性を有するものであればよく、定着ベルト52の外周表面又はその内部に形成される。
【0036】
以下、画像形成装置1の画像形成部2による基本的な画像形成動作(プリント動作)について説明する。ここでは、前記4つの作像ユニット20(Y,M,C,K)のすべてを使用して形成する4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成する場合の動作パターン(フルカラーモード)を説明する。
【0037】
前記した画像情報機器や操作パネルなどから総合制御部4に対して画像形成動作(プリント)の開始要求の指示があると、画像形成部2の4つの作像ユニット20(Y,M,C,K)において、まず各感光ドラム21が矢印で示す方向に回転し、各帯電装置22がその各感光ドラム21の像保持面を所要の極性(本実施の形態ではマイナス極性)及び電位にそれぞれ帯電させる。続いて、露光装置23が、帯電後の感光ドラム21の像保持面に対し、画像処理部3から送信される各色成分(Y,M,C,K)に分解された画像データに基づいて発光される光を照射して露光を行い、所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
【0038】
次いで、各現像装置24(Y,M,C,K)が、感光ドラム21に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーを現像ロールから供給して静電的に付着させる。このように現像が行われることで各感光ドラム21上の各色成分の静電潜像は、その対応する色のトナーでそれぞれ現像されて4色(Y,M,C,K)のトナー像として顕像化される。
【0039】
続いて、各作像ユニット20(Y,M,C,K)の感光ドラム21上に形成された各色のトナー像が、一次転写位置において一次転写装置33の転写作用により、中間転写ユニット30の中間転写ベルト31に対して順番に重ね合わるようにして一次転写される。各作像ユニット20における一次転写後の感光ドラム21は、その外周面に残留するトナー等の付着物がドラム清掃装置26によって除去されて清掃される。
【0040】
また、中間転写ユニット30は、中間転写ベルト31に一次転写されたトナー像を保持して二次転写位置まで搬送した後、その二次転写位置において二次転写装置35の転写作用により、給紙装置40から供給される記録用紙9に一括して二次転写させる。二次転写後の中間転写ベルト31は、その外周面に残留したトナー等の付着物がベルト清掃装置36によって取り除かれ、清掃される。
【0041】
次いで、トナー像が二次転写された記録用紙9は、中間転写ベルト31から剥離された後に定着装置50まで搬送される。定着装置50では、加熱ユニット53の励磁回路537から励磁コイル532に高周波の交流電流を供給して交流磁界を生成させ、その磁力線を定着ベルト52の内部に通過させることにより、定着ベルト52がその導電発熱層で渦電流が流れて電磁誘電加熱された状態に保たれる。また、加圧ロール54が回転駆動するとともに、定着ベルト52が従動回転する。
【0042】
定着装置50に搬送された用紙9は、その電磁誘導加熱された定着ベルト52と加圧ロール54の間の定着処理部Nに導入されて熱及び圧力による定着処理を受け、これによりトナー像が溶融されて用紙9に定着される。定着が終了した後の記録用紙9は、その片面への画像の形成を行うだけの画像形成動作のときには、排出ロール44や搬送ガイド部材等で構成される排出路を通して例えば筐体10に形成される排出収容部12に排出されて収容される。
【0043】
以上の動作により、4色のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像が形成された記録用紙9が出力(形成)される。
【0044】
そして、この画像形成装置1においては、定着装置50における加圧ロール54の回転駆動装置63の駆動制御に関して以下の制御を付加して行うように構成されている。このような制御を行うための制御プログラムは、例えば制御装置65における記憶部67(図3)に記憶されている。
【0045】
すなわち、図4に示すように、まず画像形成装置1の総合制御部4において、プリント動作の開始信号を受信すると(ステップ10:ST10)、その受信確認の信号が総合制御部4から制御装置65にも送信され、制御装置65からの制御指令により定着装置50の回転駆動装置63が始動する(ST11)。
【0046】
この際、定着装置50を除く画像形成部2(作像ユニット20、中間転写ユニット30及び給紙装置40)が、プリント動作を開始できる状態になるよう起動する。また、定着装置50においては、制御装置65からの制御指令により加熱ユニット53の励磁回路537が駆動して定着ベルト52を電磁誘導加熱し始める。
【0047】
次いで、速度センサ62により定着装置50における定着ベルト52の回転速度Vbが計測され(ST12)、しかる後、そのときの定着ベルト52の回転速度Vbが目標速度Vxの許容範囲(Vx±α)内か否かが判断される(ST13)。
【0048】
ステップ13において計測された定着ベルト52の回転速度Vbが目標速度Vxの許容範囲内であると判断された場合は、制御装置65は定着動作の開始が可能であると判断し、プリント動作の許可の信号を画像形成装置1の総合制御部4に送信する(ST14)。
【0049】
この場合、画像形成装置1においては、その後、画像形成部2による前記したプリント動作が開始される。また、そのプリント動作により最初の未定着トナー像が二次転写された記録用紙9は、目標速度の許容範囲内で回転するとともに十分に加熱された状態にある定着ベルト52と加圧ロール54の間の定着処理部Nに導入されることにより、十分に加熱されて良好な定着がなされる。
【0050】
また、ステップST13において計測された定着ベルト52の回転速度Vbが目標速度Vxの許容範囲内にないと判断された場合は、制御装置65において、計測された定着ベルト52の回転速度Vbと目標速度Vxとの差分ΔV(=|Vb−Vx|)が算出され(ST15)、続いて、その算出された差分ΔVが予め設定する閾値zを超えたか否かが判断される(ST16)。ここで、閾値zは、外的要因の変動により定着ベルト52が正常に回転しているときにとり得る速度範囲とのずれ量の大小のような観点から設定される。このような閾値zは、具体的には例えば、定着装置等の周辺の温度環境で加圧ロール54が熱膨張して表面速度が変化することによる定着ベルト52の回転速度への影響などで得られる変動量などを参考にして設定される速度(値)である。
【0051】
ステップST16において差分ΔVが閾値z以内であると判断された場合は、前記した制御装置65の一部の処理機能である補正手段66により、回転駆動装置63における回転動力の速度Vsについて補正が行われる(ST17)。このとき回転動力の速度Vsは、その差分ΔVを消失させる方向に補正される。
【0052】
この場合、回転動力の速度Vsの補正がされた後は、その補正後の速度で回転駆動装置63が駆動して加圧ロール54を回転駆動させ、それ以後は前述した定着ベルト52の回転速度Vbの計測等の各制御動作(ST12〜ST13)に移行する。これにより、定着ベルト52の回転速度Vbに関する制御が過不足なく行われる。
【0053】
一方、ステップST16において差分ΔVが閾値zを超えていると判断された場合は、制御装置65は定着装置50に異常が発生しているとみなし、定着動作の開始が不能であると判断し、プリント動作(定着動作を含む)を禁止する信号を画像形成装置1の総合制御部4に送信する(ST18)。
【0054】
ここで、差分ΔVが閾値zを超えるような場合とは、例えば、速度センサ62の性能低下や破損が発生した場合、定着ベルト52が加圧ロール54に対して正常な範囲で従動回転しない状態が発生した場合、回転駆動装置63の駆動に異常が発生した場合、回転に関係する他の構成部品が破損した場合等が挙げられる。
【0055】
仮に差分ΔVが閾値Zを超えているときに回転駆動装置62の回転動力の速度Vsを補正しても、定着ベルト52の回転速度Vbが目標速度の許容範囲内に収まることはなく、最悪の場合は、回転動力の速度Vsの補正が延々と繰り返されて、回転動力の速度Vsが異常な値に補正されるおそれがある。
【0056】
このような事態に陥った場合は、定着ベルト52及び加圧ロール54が適正な速度で回転しないので、定着対象の記録用紙9の定着処理部Nにおける通過時間が変動して良好な定着ができない現象(定着不能や定着不良など)が発生してしまう。また、定着速度と定着工程の前後における記録用紙9の搬送速度(プロセス速度)とが大幅に一致しない状態になり、これによっても定着不能や定着不良を誘発するようになり、しかも、画像形成装置1の全体からみても画像形成不能や画質低下を誘発するおそれがある。
【0057】
この画像形成装置1では、差分ΔVが閾値zを超えた場合には、回転駆動装置63の回転動力の速度に関する補正をせず(換言すれば定着ベルト52の回転速度の制御をしない)、定着動作を含むプリント動作の開始を禁止する制御を行うため、上記した定着不能や定着不良、ひいては画像形成不能や画質不良が発生することを未然に防止することができる。また、このプリント動作の開始が禁止されたことにより、定着装置50に発生した異常を点検することができる。
【0058】
[他の実施の形態]
この発明を適用する定着装置50については、必要であれば、回転駆動する加熱ロールと、その加熱ロールの外周面に押し付けられて連れ回る加圧ベルトを備えた構成の定着装置であってもよい。また、その定着装置50については、その定着ベルト52が電磁誘導加熱以外の方式で加熱される構成の定着装置であっても構わない。
【0059】
また、定着ベルト52の回転速度を計測する手段としては、前記した速度センサ62の方式以外の方式の計測手段を適用することも可能である。さらに、回転駆動装置63の駆動制御(その回転動力の速度の補正)や、計測される定着ベルト52の回転速度と目標速度との差分の閾値との対比やその後の制御については、定着装置50の制御装置65ではなく、画像形成装置1の総合制御部4において実行するように構成しても構わない。
【0060】
この他、画像形成装置については、その画像形成部2として他の形式で未定着の画像を形成する画像形成部を採用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 …画像形成装置
2 …画像形成部(作像装置)
4 …総合制御部(第2の制御手段)
9 …記録用紙(被記録材)
20…作像ユニット(作像装置の一部)
50…定着装置
52…定着ベルト
54…加圧ロール(定着ロール)
62…速度センサ(計測手段)
65…制御装置(制御手段)
66…補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動する定着ロールと、
前記定着ロールの外周面に押し付けられて連れ回る定着ベルトと、
前記定着ロールに回転動力を伝達して当該定着ロールを回転させる駆動装置と、
前記定着ベルトの回転速度を計測する計測手段と、
前記計測手段で計測される定着ベルトの回転速度が予め設定される目標速度を中心にした許容範囲内に維持されるよう前記駆動装置における回転動力の速度を補正する補正手段と、
前記計測手段で計測される定着ベルトの回転速度と前記目標速度との差が閾値以内であるときには前記補正手段による回転動力の速度の補正に移行し、前記差が閾値を超えたときには未定着の像を被記録材に定着させる動作を禁止する制御手段と
を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着ロールが前記定着ベルトに加圧された状態で接触する加圧ロールであり、前記定着ベルトが加熱された状態になるベルトであり、
前記定着ロールと前記定着ベルトの間の定着処理部に、未定着の像が形成された被記録材を当該未定着の像が前記定着ベルトに接触する状態で導入して通過させる請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
被記録材に未定着の像を形成する作像装置と、
前記作像装置で形成された未定着の像を被記録材に定着させる請求項1又は2に記載の定着装置と、
前記定着装置における制御手段が定着動作を禁止する制御を行う場合、画像を形成する動作を禁止する第2の制御手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−54276(P2013−54276A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193786(P2011−193786)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】