説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】画像形成装置10の落下や、輸送時の振動によって分離部材50や定着部材44が撓んだとき、分離部材50と定着部材44との干渉により定着部材44が傷つき、印刷画像が劣化する。
【解決手段】定着装置40は、印刷媒体100上の現像剤を加熱する定着部材44と、定着部材44を加圧して接触領域を形成する加圧部材46と、接触領域から排紙された印刷媒体100を、定着部材44から分離する分離部材50を有する。分離部材50は、定着部材44に近接して設置する支持部と、平板状の平面部Qと、先端に向かうにつれて平面部Qの厚み方向に傾斜した傾斜面部Sと、先端部Pと、定着部材44に最も近接する最近接部とを有する。分離部材50が撓んだ際には、尖った先端部Pではなく、傾斜面部Sまたは鈍角の傾斜面部Sと平面部Qとの境界が干渉するので、定着部材44は傷つけられることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び定着装置を使用する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置及び定着装置を使用する画像形成装置は、分離部材両端に設けられたスペーサを定着部材に接触させて、分離部材の中央部と定着部材とのギャップを調整し、安定した媒体の分離を行う技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、熱膨張によりローラの径が変化しても分離部材とローラとの間のギャップを一定に保つ技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−37567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の定着装置及び定着装置を使用する画像形成装置では、画像形成装置の落下時、又は、搬送時の振動により分離部材や定着部材が撓み、分離部材の先端部と定着部材との干渉により定着部材が傷つくことで、印刷画像が劣化する課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の定着装置は、印刷媒体上の現像剤を加熱する定着部材と、前記定着部材を加圧して接触領域を形成する加圧部材と、前記接触領域から排紙された前記印刷媒体を前記定着部材から分離する第1の分離部材とを有する定着装置において、前記第1の分離部材は、前記第1の分離部材を前記定着部材に近接して設置する支持部と、前記支持部によって保持された平板状の平面部と、前記第1の分離部材の先端に向かうにつれ、前記平面部の厚み方向に傾斜した傾斜面部と、前記平面部と前記傾斜面部の境界である境界部と、前記第1の分離部材の先端である先端部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の画像形成装置は、前記定着装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の定着装置及び画像形成装置によれば、次の(A)のような効果がある。
(A) セパレータの媒体分離領域に曲げ形状を付与したことで、画像形成装置又は定着装置が衝撃を受けた際にも定着部材を傷つける事無く、良好な定着が可能である
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施例1の定着装置を示す概略の構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1の定着装置を搭載した画像形成装置を示す概略の構成図である。
【図3】図3は、図1の分離部材の外観を示す図である。
【図4】図4は、図3の分離部材の分解図である。
【図5】図5は、図4のセパレータのA−A線の断面図である。
【図6】図6は、図3のセパレータの先端とローラ中心部との角度を示す図である。
【図7】図7は、図1の定着装置の動作を示す図である。
【図8】図8は、図1の定着装置の−Y方向の排紙状態の概略を示す図である。
【図9】図9は、図1の定着装置の+Y方向排紙の巻き付き状態の概略を示す図である。
【図10】図10は、Δα=0.2[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【図11】図11は、Δα=0.3[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【図12】図12は、Δα=0.4[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【図13】図13は、Δα=0.6[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【図14】図14は、Δα=1.0[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【図15】図15は、Δα=1.5[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【図16】図16は、Δα=2.0[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【図17】図17は、落下・分離試験の総合判定を示す図である。
【図18】図18は、先端部間隔と曲げ量の組み合わせと総合判定を示す図である。
【図19】図19は、角度ηと曲げ量の組み合わせと総合判定を示す図である。
【図20】図20は、本発明の実施例2の定着装置を搭載した画像形成装置を示す概略の構成図である。
【図21】図21は、本発明の実施例2の定着装置を示す概略の構成図である。
【図22】図22は、図21のセパレータの断面図である。
【図23】図23は、図21のセパレータの先端の拡大図である。
【図24】図24は、本発明の実施例3の定着装置を示す概略の構成図である。
【図25】図25は、図24のセパレータの断面図である。
【図26】図26は、本発明の実施例4の定着装置を示す概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0011】
(実施例1の構成)
図2は、本発明の実施例1の定着装置を搭載した画像形成装置を示す概略の構成図である。
【0012】
画像形成装置10は、例えばカラー画像用印刷装置であり、印刷媒体100が格納された給紙カセット11と、印刷媒体100を作像のタイミングにあわせて供給するレジストローラ12と、供給された印刷媒体100に対し各色の画像を形成する作像装置30BK,30Y,30M,30Cと、これらに対向して配置されたベルト式の転写装置20と、印刷媒体100に形成された現像剤像を定着させる定着装置40と、現像剤像が定着した印刷媒体100を搬送するローラ90,91と、搬送された印刷媒体100を排出する排出部92と、この印刷媒体100を積載する印刷媒体積載部93とを有している。
【0013】
印刷媒体100は、現像剤像が形成される媒体であり、給紙カセット11により保持されている。レジストローラ12は、給紙カセット11に保持されている印刷媒体100を1枚ずつ作像装置30BK,30Y,30M,30Cに送る。
【0014】
作像装置30BK,30Y,30M,30Cは、印刷媒体100の搬送経路に沿って順次並ぶように配設され、印刷媒体100上に、それぞれブラック(BK)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の4色のトナー像を形成する。作像装置30BK,30Y,30M,30Cの構成は同様であるため、これらの代表として作像装置30BKの構成を説明する。
【0015】
作像装置30BKは、各々、表面にブラックのトナー像を担持する静電潜像担持体としての感光体ドラム31BKと、この感光体ドラム31BKの回転方向aにおいて順に配置されている帯電装置32BKと、露光装置33BKと、現像剤供給装置34BKと、クリーニング装置35BKとを有している。作像装置30BKは、帯電装置32BKと現像剤供給装置34BKの間で露光装置33BKの露光光を受ける構成になっている。なお、図2に示す感光体ドラム31BKはドラム状であるが、ベルト状としてもよい。
【0016】
転写装置20は、エンドレス転写媒体21を張架したローラ22とローラ23により駆動方向bに駆動されて、転写装置20上の媒体搬送路に印刷媒体100を送り込む。
【0017】
転写装置20上の媒体搬送路の下流側には、印刷媒体100上の未定着トナー像を定着させる定着装置40が設置されている。この定着装置40から排出された印刷媒体100は、ローラ90によって搬送された後、ローラ91によって排出部92へ搬送され、印刷媒体積載部93に排出される。印刷媒体積載部93は、印刷された印刷媒体100を積載する領域である。
【0018】
図1(a),(b)は、本発明の実施例1における図2の定着装置を示す構成図であり、図1(a)は定着装置40の全体を示し、図1(b)は分離部材50のセパレータ51における媒体分離領域αを拡大したものを示している。
【0019】
定着装置40は、印刷媒体100を加熱する定着部材44と、印刷媒体100を加圧する加圧部材46と、印刷媒体100と定着部材44とを分離する分離部材50とを有している。
【0020】
定着部材44は、金属ローラとしての中空円筒の芯金部44−Pが、シリコンゴム等からなる耐熱弾性層としての弾性層44−Rによって包まれている。芯金部44−Pの中空円筒の内部には、加熱部材であるハロゲンランプ45が図示されない支持体によって両端部を支持されて配設されている。芯金部44−Pの両端部は、図示されない回転可能な支持部材により支持されている。
【0021】
加圧部材46は、金属ローラとしての中実シャフトである芯金部46−Pと、この芯金部46−Pの外周面に形成されたシリコンゴム等から成る耐熱弾性層としての弾性層46−Rとを有している。加圧部材46の芯金部46−Pの両端部は、定着部材44と同様に、図示されない回転可能な支持部材により支持されていると共に、スプリング等から成る図示されない付勢部材により定着部材44を押圧するように付勢されている。ここで、図示されない回転可能な支持部材は、Y方向のみに変位可能に支持されている。
【0022】
未定着トナー像を印刷媒体100に定着させるためのニップ領域47は、加圧部材46の弾性層46−Rが図示されない付勢部材により定着部材44の弾性層44−Rへ付勢され、接触することで形成されている。
【0023】
分離部材50は、平板状のセパレータ51を有し、このセパレータ51先端の媒体分離領域αが定着部材44に近接するよう設置されている。
【0024】
図1(b)に示すセパレータ51は、平板状の平面部Qを有している。セパレータ51の媒体分離領域αは、曲げ加工によって平面部Qの厚み方向に距離ΔΒだけ傾斜するよう曲げられている。傾斜面部Sと平面部Qとの境界部Fにおける曲げられた角度はγで、境界部Fから先端部Pまでの傾斜面部Sの幅はΔμである。更に先端部Pの曲げ加工が施された面の裏面は、斜めに削り取られている。
【0025】
境界部Fから先端部Pまでの傾斜面部Sの幅Δμは、好ましくは0.5[mm]〜2.0[mm]であり、より好ましくは0.8[mm]〜1.2[mm]である。
【0026】
角度γは鈍角であればよく、好ましくは120度〜178度である。120度よりも角度γが小さい場合、境界部Fが定着部材44表面を傷つけてしまい、画像品質が低下する。一方、178度よりも大きい場合、先端部Pが定着部材44に接触して表面を傷つけてしまい、画像品質が低下する。
【0027】
角度γとして、より好ましくは150度〜177度であり、150度よりも角度γが小さい場合、画像品質は低下しないものの、境界部Fが定着部材44表面を傷つけてしまう。一方、177度よりも大きい場合、画像品質は低下しないものの、先端部Pが定着部材44に接触するため、定着部材44表面を傷つけてしまう。
【0028】
セパレータ51は、定着部材44の弾性層44−Rに離間距離Δαとなるよう近接して設置されている。図1(b)では、境界部Fにおいて定着部材44と最も近接するように設置されており、その離間距離はΔαである。好ましくは、離間距離Δαは0.3[mm]〜1.0[mm]であり、より好ましくは離間距離Δαは0.4[mm]〜0.6[mm]である。
【0029】
角度ζは、セパレータ51の平面部Qと、定着部材44の面の垂直方向との角度であり、角度ηは、セパレータ51の傾斜面部Sと、定着部材44の面の垂直方向との角度である。好ましくは、角度ζは90度以上かつ角度ηは88.2度〜107.2度である。
【0030】
図3は、図1の分離部材の外観を示す図である。
分離部材50は、長方形の平板状のセパレータ51と、セパレータ51の1つの長辺の端部に設けられたシャフト52と、セパレータ51の2つの短辺の端部に設けられたガイド部材53−1,53−2とを有している。
【0031】
セパレータ51の長辺の1つは、折り曲げられることによって長辺方向の撓みに対する剛性を持たせている。セパレータ51の2つの短辺は、折り曲げられていると共に、それぞれ孔を有している。セパレータ51は、これら2つの短辺の折れ曲がり部の孔を貫通するシャフト52を有し、このシャフト52を支点とした回転運動が可能な状態で支持されている。ガイド部材53−1,53−2は、セパレータ51の短辺の端部に、それぞれ図示されない固定用ネジ54−1,54−2によって固定され、ガイド部材53−1,53−2の接触面53−1S,53−2Sがそれぞれ定着部材44の表面と接触することで、セパレータ51の先端にある媒体分離領域αと定着部材44との離間距離Δαを一定に保つ働きをする。
【0032】
ガイド部材53−1,53−2は、それぞれ図示されない付勢部材によって定着部材44に接触するように付勢されている。セパレータ51は、ガイド部材53−1,53−2によって、定着部材44に対して所定の間隔(=離間距離Δα)で離間するよう配置されている。
【0033】
図4は、図3の分離部材の分解図である。
ガイド部材53−1,53−2は、それぞれ固定用ネジ54−1,54−2によってセパレータ51の裏面に固定されている。
【0034】
図5は、図4のセパレータのA−A線の断面図である。
セパレータ51は、シャフト52が取り付けられている反対側の長辺の先端に媒体分離領域αを有している。媒体分離領域αは、鋭角のくさびの形状をしており、表面は曲げ加工によって平面部Qの厚み方向に距離ΔΒだけ傾斜するよう曲げられている。更に裏面は、先端部Pに向かって細くなるよう斜めに切り取られている。
【0035】
図6は、図3のセパレータの先端とローラ中心部との角度を示す図である。
セパレータ51は、定着部材44及び弾性層44−Rに近接して設置されている。角度ζは、セパレータ51の平面部Qと定着部材44の中心方向との角度であり、同時にセパレータ51の平面部Qと定着部材44表面の垂直方向との角度である。角度ηは、セパレータ51の傾斜面部Sと定着部材44の中心方向との角度であり、同時にセパレータ51の傾斜面部Sと定着部材44表面の垂直方向との角度である。
【0036】
(実施例1の動作)
図1及び図2において、本実施例1の定着装置40は、画像形成装置10の電源が投入されると、良好な定着を行うことができる状態となって立ち上がりが完了し、定着装置40による定着及び画像形成装置10による画像形成が可能な状態となる。
【0037】
画像形成装置10が印刷指示を受けると、印刷媒体100は、レジストローラ12により転写装置20へ搬送される。この時、作像装置30BKの感光体ドラム31BKは、その回転にともなって帯電装置32BKにより帯電され、露光装置33BKからの露光光により画像情報に応じた静電潜像が形成される。この静電潜像が現像剤供給装置34BKにより現像される。
【0038】
印刷媒体100は、転写装置20上に搬送され、感光体ドラム31BKに形成された現像剤像が転写される。感光体ドラム31BKは、転写後に残留していた現像剤がクリーニング装置35BKによって掻き取られてクリーニングされた後、次の帯電に供される。ブラックの現像剤が転写された印刷媒体100は、転写装置20により搬送され、作像装置30BKにおける前述の作像工程と同様の工程を行う作像装置30Y、作像装置30M、作像装置30Cにより、それぞれイエロー、マゼンタ、及びシアンの現像剤を適宜転写される。印刷媒体100は、画像形成に必要な全ての現像剤を転写された後、転写装置20から定着装置40へと搬送される。
【0039】
図7は、図1の定着装置の動作を示す図である。
定着装置40は、印刷媒体100に形成された現像剤像を熱圧着するために、ハロゲンランプ45を点灯して定着部材44の加熱を開始する。
【0040】
定着部材44は、図示されない駆動系から回転運動が付与され、印刷媒体100を定着部材44と加圧部材46により形成されたニップ領域47に搬送して熱圧着すると、前記現像剤像は印刷媒体100上に定着される。
【0041】
画像形成装置10、又は定着装置40が外部から何らかの衝撃を受け、平面板状のセパレータ51、又は定着部材44に撓みが生じて変形・変位することで、セパレータ51のガイド部材53−1,53−2近傍以外の媒体分離領域αが定着部材44の弾性層44−Rと接触するおそれがあった。
【0042】
図1(b)に示す定着装置40におけるセパレータ51は、媒体分離領域αの先端部Pは、セパレータ51の厚み方向に曲げ形状が付与され、媒体分離領域αの傾斜面部Sは、定着部材44から離間する方向に設置されている。先端部Pから弾性層44−Rに対する距離は、境界部F又は傾斜面部Sから弾性層44−Rに対する距離以上であり、先端部Pのみが境界部F又は傾斜面部Sよりも弾性層44−Rに対して近接することが無いため、定着部材44の弾性層44−Rは、尖った先端部Pではなく境界部Fや傾斜面部Sと強く干渉するので、衝撃を受けた後も傷つけられること無く、良好な定着が可能となる。
【0043】
図8は、図1の定着装置の−Y方向の排紙状態の概略を示す図である。
定着部材44の弾性層44−Rの硬度よりも、加圧部材46の弾性層46−Rの硬度が高いと、接触形状は+Y方向に凸形となる。
【0044】
印刷媒体100は、ニップ領域47で熱圧着されるとともに、圧着にともなって+Y方向に凸形の接触形状も付与され、印刷媒体100の先端が−Y方向にカールした状態で排出される。
【0045】
図9は、図1の定着装置の+Y方向排紙の巻き付き状態の概略を示す図である。
加圧部材46の弾性層46−Rの硬度よりも、定着部材44の弾性層44−Rの硬度が高いと、接触形状は−Y方向に凸形となる。印刷媒体100は、ニップ領域47で熱圧着されるとともに、圧着にともなって−Y方向に凸形の接触形状も付与され、印刷媒体100の先端が+Y方向にカールした状態で排出される。このとき、定着部材44とセパレータ51との離間距離Δαが広いと、印刷媒体100は、セパレータ51によって定着部材44から分離されず、定着部材44に巻きついた形状のまま搬送され、用紙詰まりを起こしてしまう。
【0046】
(実施例1の試験結果)
図10〜図16は、落下・分離試験の結果を示す図である。
【0047】
これらの落下・分離試験において、定着部材44の硬度は90度で、加圧部材46の硬度は70度(硬度はアスカC硬度であり、芯金部44−P,46−Pに弾性層44−R,46−Rそれぞれを設け、ローラ形状にした後にアスカC硬度計にて測定した。)で、角度ζは94.8度であり、境界部Fから先端部Pまでの傾斜面部Sの幅Δμは1.0[mm]である。
【0048】
落下試験の結果は、本構成の定着部材44を高さ1.0[m]から自然落下させ、定着部材44の表面に傷が発生しない場合を「○」、定着部材44の表面に傷が発生するものの、画像品質を低下させない場合(軽微な傷の場合)を「△」、定着部材44表面に傷が発生して画像品質を低下させる場合を「×」とした。
【0049】
分離試験において、P紙(薄紙)の印刷媒体100をA4縦送りの36[ppm]の搬送速度で搬送した。更に、温度30℃・湿度80%・定着温度170℃の環境において、印刷媒体100の現像剤像が100%の場合と270%の場合との2種類に分けて試験を行った。現像剤像が100%の場合は、単色の現像剤を隙間無く印刷媒体100に形成した場合である。現像剤像が270%の場合は、CMY(シアン・マゼンタ・イエロー)の三色を90%ずつ印刷媒体100に形成した場合である。
【0050】
分離試験の結果は、定着後に定着部材44から用紙が剥離可能な場合を「○」用紙が剥離不可な場合を「×」とした。
【0051】
総合評価の結果は、落下試験と、現像剤像100%の場合の分離試験と現像剤像270%の場合の分離試験が「○」であり最も好ましい場合は、総合評価結果を「◎」とした。落下試験と現像剤像100%の場合の分離試験が「○」か、又は、落下試験が「△」で、少なくとも現像剤像100%の場合の分離試験が「○」であり実使用上問題が無い場合は、総合評価結果を「○」とした。落下試験と現像剤像100%の場合の分離試験とがともに「×」であり好ましくない場合は、総合評価結果を「×」とした。
【0052】
図10は、Δα=0.2[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【0053】
曲げ量ΔΒを0[mm]〜0.4[mm]で変化させた場合(=角度ηを85.2度〜107.2度で変化させた場合)、総合評価は全て好ましくない「×」である。このとき、落下試験の結果は全て「×」であり、現像剤像100%の場合の分離試験の結果と現像剤像270%の場合の分離試験の結果は、全て「○」である。
【0054】
図11は、Δα=0.3[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【0055】
曲げ量ΔΒを0[mm]〜0.4[mm]で変化させた場合、総合評価は、0[mm]の場合に好ましくない「×」だが、0.05[mm]以上の場合は実使用上問題がない「○」である。落下試験の結果は0[mm]の場合に「×」だが、0.05[mm]以上の場合は「△」である。現像剤像100%の場合の分離試験の結果と現像剤像270%の場合の分離試験の結果は、全て「○」である。
【0056】
このとき、角度ηを85.2度〜107.2度で変化させた場合と考えると、総合評価は85.2度の場合に好ましくない「×」だが、88.2度〜107.2度の場合は実使用上問題がない「○」である。
【0057】
図12は、Δα=0.4[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【0058】
曲げ量ΔΒを0mm〜0.4mmで変化させた結果、総合評価は、0[mm]の場合に好ましくない「×」だが、0.05[mm]以上の場合は最も好ましい「◎」である。落下試験の結果は0[mm]の場合に「×」だが、0.05[mm]以上の場合は「○」である。現像剤像100%の場合の分離試験の結果と現像剤像270%の場合の分離試験の結果は、全て「○」である。
【0059】
このとき、角度ηを85.2度〜107.2度で変化させた場合と考えると、総合評価は85.2度の場合に好ましくない「×」だが、88.2度〜107.2度の場合は最も好ましい「◎」である。
【0060】
図13は、Δα=0.6[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【0061】
曲げ量ΔΒを0[mm]〜0.4[mm]で変化させた場合、総合評価は、0[mm]の場合に好ましくない「×」だが、0.05[mm]〜0.2[mm]の場合は最も好ましい「◎」で、0.3[mm]〜0.4[mm]の場合は実使用上問題がない「○」である。落下試験の結果は0[mm]の場合に「×」だが、0.05[mm]以上の場合は「○」である。現像剤像100%の場合の分離試験の結果は、全て「○」である。現像剤像270%の場合の分離試験の結果は、0.0[mm]〜0.2[mm]の場合は「○」だが、0.3[mm]〜0.4[mm]の場合は「×」である。
【0062】
このとき、角度ηを85.2度〜107.2度で変化させた場合と考えると、総合評価は85.2度の場合に好ましくない「×」だが、88.2度〜96.2度の場合は最も好ましい「◎」で、102.2度〜107.2度の場合は実使用上問題がない「○」である。
【0063】
図14は、Δα=1.0[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【0064】
曲げ量ΔΒを0[mm]〜0.4[mm]で変化させた場合、総合評価は、0[mm]の場合と0.3[mm]〜0.4[mm]の場合に好ましくない「×」だが、0.05[mm]〜0.2[mm]の場合は実使用上問題がない「○」である。落下試験の結果は0[mm]の場合に「×」だが、0.05[mm]以上の場合は「○」である。現像剤像100%の場合の分離試験の結果は、0.0[mm]〜0.2[mm]の場合は「○」だが0.3[mm]〜0.4[mm]の場合は「×」である。現像剤像270%の場合の分離試験の結果は、全て「×」である。
【0065】
このとき、角度ηを85.2度〜107.2度で変化させた場合と考えると、総合評価は85.2度の場合と、102.2度〜107.2度の場合とは好ましくない「×」だが、88.2度〜96.2度の場合は実使用上問題がない「○」である。
【0066】
図15は、Δα=1.5[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【0067】
曲げ量ΔΒを0[mm]〜0.4[mm]で変化させた場合(=角度ηを85.2度〜107.2度で変化させた場合)、総合評価は全て好ましくない「×」である。落下試験の結果は0[mm]の場合に「×」だが、0.05[mm]以上の場合は「○」である。現像剤像100%の場合の分離試験の結果と現像剤像270%の場合の分離試験の結果は、全て「×」である。
【0068】
図16は、Δα=2.0[mm]とした際の落下・分離試験の結果を示す図である。
【0069】
曲げ量ΔΒを0[mm]〜0.4[mm]で変化させた場合(=角度ηを85.2度〜107.2度で変化させた場合)、総合評価は全て好ましくない「×」である。落下試験の結果は全て「○」である。現像剤像100%の場合の分離試験の結果と現像剤像270%の場合の分離試験の結果は、全て「×」である。
【0070】
図17は、落下・分離試験の総合判定を示す図である。
落下・分離試験の総合判定から、好ましい範囲はΔα=0.3[mm]〜1.0[mm]かつ、Δεが0.30[mm]〜1.15[mm]であると言える。更に好ましい範囲は、Δα=0.4[mm]〜0.6[mm]かつ、Δεが0.4[mm]〜0.75[mm]であると言える。最も好ましい範囲は、Δα=0.4[mm]〜0.6[mm]かつ、Δεが0.60[mm]〜0.75[mm]であると言える。
【0071】
図18は、先端部間隔と曲げ量の組み合わせと総合判定を示す図である。
図18の縦軸は先端部間隔Δε[mm]で、横軸は曲げ量Δα[mm]である。図18において総合判定が最も好ましい場合を「●」で、実使用上問題がない場合を「○」で、好ましくない場合を「×」で示す。
【0072】
好ましい値の範囲はΔα=0.3[mm]〜1.0[mm]かつ、Δεが0.30[mm]〜1.15[mm]である。更に好ましい値の範囲は、Δα=0.4[mm]〜0.6[mm]かつ、Δεが0.40[mm]〜0.75[mm]である。最も好ましい値の範囲は、Δα=0.4[mm]〜0.6[mm]かつ、Δεが0.60[mm]〜0.75[mm]である。
【0073】
図19は、角度ηと曲げ量の組み合わせと総合判定を示す図である。
図19の縦軸は角度η[deg(degree=角度)]で、横軸は曲げ量Δα[mm]である。図19において総合判定が最も好ましい場合を「●」で、実使用上問題がない場合を「○」で、好ましくない場合を「×」で示す。
【0074】
好ましい値の範囲は、η=88.2度〜107.2度、かつΔα=0.3[mm]〜1.0[mm]である。更に好ましい値の範囲は、η=88.2度〜107.2度、かつΔα=0.4[mm]〜0.6[mm]である。最も好ましい値の範囲は、η=88.2度〜96.2度、かつΔα=0.4[mm]〜0.6[mm]である。
【0075】
(実施例1の効果)
本実施例1の定着装置40及び画像形成装置10によれば、次の(A)〜(D)のような効果がある。
【0076】
(A) セパレータ51の媒体分離領域αに曲げ形状を付与したことで、画像形成装置10又は定着装置40が衝撃を受けた際にも定着部材44を傷つける事無く、良好な定着が可能である
【0077】
(B) セパレータ51は、平面板状に曲げ形状を付与した簡単な構成であるため、廉価に製造可能である。
【0078】
(C) 画像形成装置10の起動時に、セパレータ51の加熱や位置調整(キャリブレーション)が不要であり、画像形成装置10の素早い立ち上がりに寄与する。
【0079】
(D) セパレータ51を定着部材44に近接するよう配設したことで、印刷媒体100の定着部材44への巻き付きが抑止できる。
【実施例2】
【0080】
(実施例2の構成)
図20は、本発明の実施例2の定着装置を搭載した画像形成装置を示す概略の構成図であり、実施例1を示す図2中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0081】
本実施例2の画像形成装置10Aは、実施例1とは異なる定着装置60を有する他は、実施例1を示す図2における画像形成装置10の構成と同様である。
【0082】
図21は、本発明の実施例2の定着装置を示す概略の構成図である。
本実施例2の定着装置60は、金属ローラとしての中空円筒の加熱ローラ63と、加熱ローラ63の中空円筒の内部に配設されたハロゲンランプ65と、定着ローラ64と、加熱ローラ63と定着ローラ64との間に張架されている定着ベルト62と、定着ローラ64を加圧する加圧ローラ66と、定着ベルト62と印刷媒体100とを分離する図示されない分離部材と、この分離部材のセパレータ71とを有している。
【0083】
定着ベルト62は、定着ローラ64と、ハロゲンランプ65を内部に有する加熱ローラ63により張架されている。加熱ローラ63と、定着ローラ64と、加圧ローラ66とは、それぞれ両端部を図示されない回転可能な軸受けにて保持されている。この加圧ローラ66は、図示されない付勢部材によって+Y方向に付勢され、定着ローラ64を加圧している。
【0084】
未定着トナー像を印刷媒体100に定着させるためのニップ領域67は、実施例1のニップ領域47と同様に、加圧ローラ66が図示されない付勢部材により定着ローラ64へ付勢され、接触することによって形成されている。
【0085】
図示されない分離部材は、平板状のセパレータ71を有し、セパレータ71の先端はニップ領域67に離間距離Δα2で近接するように設置されている。セパレータ71は、定着ベルト62との近接部に面取り形状部C1,C2を備え、表面に現像剤が付着しないようPTFE(Polytetrafluoroethylene)コーティングが施されている。
【0086】
図22は、図21のセパレータの断面図である。
セパレータ71は、左側が折り曲げられた平面状の平面部Q2を有し、平面部Q2の右側に媒体分離領域α2を有している。媒体分離領域α2は、面取り形状部C1,C2と、先端部P2とを有している。面取り形状部C1は、平面部Q2の厚み方向に距離ΔC1だけ傾斜する面取り形状を有している。この面取り形状部C1の裏面に配置されている面取り形状部C2は、同様に平面部Q2の厚み方向に距離ΔC2だけ傾斜する面取り形状を有している。面取り形状部C1とC2とによって、先端部P2が形成されている。
【0087】
図23は、図21のセパレータの先端の拡大図である。
セパレータ71は、平板状の平面部Q2を有している。セパレータ71は、平面部Q2の媒体分離領域α2の近傍に、厚み方向に距離ΔC1だけ傾斜する面取り形状部C1と、この面取り形状部C1の裏面に厚み方向に距離ΔC2だけ傾斜する面取り形状部C2とを有している。面取り形状部C1,C2は、面取り加工によって形成されている。
【0088】
面取り形状部C1と平面部Q2との境界部F2における角度はγ2で、境界部F2から先端部P2までの面取り形状部C1の幅はΔμ2である。
【0089】
境界部F2から先端部P2までの面取り形状部C1の幅Δμ2は、実施例1の幅Δμと同様に好ましくは0.5[mm]〜2.0[mm]であり、より好ましくは0.8[mm]〜1.2[mm]である。
【0090】
角度γ2は、実施例1の角度γと同様に鈍角であればよく、好ましくは120度〜178度である。120度よりも角度γ2が小さい場合、境界部F2が定着ベルト62表面を傷つけてしまい、画像品質が低下する。一方、178度よりも大きい場合、先端部P2が定着ベルト62に接触して表面を傷つけてしまい、画像品質が低下する。
【0091】
角度γ2として、実施例1の角度γと同様に、より好ましくは150度〜177度であり、150度よりも角度γ2が小さい場合、画像品質は低下しないものの、境界部F2が定着ベルト62表面を傷つけてしまう。一方、177度よりも大きい場合、画像品質は低下しないものの、先端部P2が定着ベルト62に接触するため、定着ベルト62表面を傷つけてしまう。
【0092】
角度ζ2は、セパレータ71の平面部Q2と、定着ベルト62の面の垂直方向との角度であり、角度η2は、セパレータ71の面取り形状部C1と、定着ベルト62の面の垂直方向との角度である。実施例1の角度ζと同様に好ましくは、角度ζ2は90度以上かつ角度η2は88.2度〜107.2度である。
【0093】
セパレータ71は、定着ベルト62に近接して設置されており、図23では平面部Q2と面取り形状部C1との境界部F2において最も近接するように設置されている。セパレータ71は、定着ベルト62から離間距離Δα2で離間している。
【0094】
(実施例2の動作)
図20及び図21において、本実施例2の定着装置60は、実施例1の定着装置40と同様に画像形成装置10Aの電源が投入されると、良好な定着を行うことができる状態となって立ち上がりが完了し、定着装置60による定着及び画像形成装置10Aによる画像形成が可能な状態となる。
【0095】
本実施例2の画像形成装置10Aは、印刷媒体100を定着装置60に搬送するまで実施例1の動作と同様である。
【0096】
印刷媒体100は、定着にあたりニップ領域67へ搬送される。定着ローラ64は加圧ローラ66より高い硬度を有し、ニップ領域67は−Y方向に凸形である。印刷媒体100は、+Y方向の定着ベルト62の進行方向に向って排出される。
【0097】
印刷媒体100は、図23で示されているように、セパレータ71の境界部F2と、定着ベルト62と離間距離Δα2で近接しているため、セパレータ71によって定着ベルト62から分離され、面取り形状部C2に沿って定着装置60から排紙される。
【0098】
画像形成装置10A、及び定着装置60が、外部から何らかの衝撃を受けた場合を考える。セパレータ71、又は定着ベルト62が変形・変位することでセパレータ71が定着ベルト62と接触した際は、セパレータ71上に形成された境界部F2又は面取り形状部C1と干渉する。よって、定着ベルト62は傷つけられること無く、衝撃を受けた後も良好な定着が可能となる。
【0099】
本実施例2のΔC1は実施例1で示したΔΒと等価である。本実施例2の離間距離Δα2は実施例1で示した離間距離Δαと等価である。本実施例2の角度γ2,角度ζ2,角度η2は、それぞれ実施例1で示した角度γ,角度ζ,角度ηと等価である。
【0100】
(実施例2の効果)
本実施例2の定着装置60及び画像形成装置10Aによれば、次の(A)〜(D)のような効果がある。
【0101】
(A) セパレータ71の媒体分離領域α2に2箇所の面取り形状を付与したことで、画像形成装置10A又は定着装置60が衝撃を受けた際にも定着ローラ64を傷つける事無く、良好な定着が可能である
【0102】
(B) セパレータ71は、2箇所の面取り形状を付与した簡単な構成であるため、実施例1のセパレータ51よりも更に廉価に製造可能である。
【0103】
(C) 画像形成装置10Aの起動時には、実施例1と同様にセパレータ71の加熱や位置調整(キャリブレーション)が不要であり、画像形成装置10Aの素早い立ち上がりに寄与する。
【0104】
(D) セパレータ71を定着ベルト62に近接するよう配設したことで、印刷媒体100の定着ベルト62への巻き付きが抑止できる。
【実施例3】
【0105】
(実施例3の構成)
図24は、本発明の実施例3の定着装置を示す概略の構成図であり、実施例2を示す図21中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0106】
本実施例3の定着装置60Aは、実施例2と同様な画像形成装置10Bに配設され、実施例2と同様に定着ローラ64Aを加圧する加圧ローラ66を有し、実施例2とは異なる中空円筒の定着ローラ64Aと、この定着ローラ64Aと印刷媒体100とを分離する分離部材のセパレータ71とを有している。
【0107】
定着ローラ64Aの内部には、加熱部材であるハロゲンランプ65が、図示されない支持体によって両端部を支持されて配設されている。定着ローラ64Aと加圧ローラ66とは、それぞれ両端部を図示されない回転可能な軸受けにて保持されている。
【0108】
未定着トナー像を印刷媒体100に定着させるためのニップ領域67Bは、加圧ローラ66が図示されない付勢部材により定着ローラ64へ付勢され、接触することで形成されている。
【0109】
図示されない分離部材は、平板状のセパレータ81を有し、図示されないシャフトやガイド部材によってセパレータ81の先端がニップ領域67Bに近接するよう設置されている。
【0110】
図25は、図24のセパレータの断面図である。
セパレータ81は、左側が折り曲げられた平面状の平面部Q3を有し、平面部Q3の右側に媒体分離領域α3を有している。媒体分離領域α3は、面取り形状部C3,C4と、先端部P3とを有している。面取り形状部C3は、平面部Q3の厚み方向に距離ΔC3だけ傾斜する面取り形状を有している。この面取り形状部C3の裏面に配置されている面取り形状部C4は、同様に距離ΔC4だけ傾斜する面取り形状を有している。面取り形状部C3とC4とによって、先端部P3が形成されている。
【0111】
セパレータ81は、表面に現像剤が付着しないようPTFE(Polytetrafluoroethylene)コーティングが施されている。セパレータ81は、面取り形状部C3、又は平面部Q3と面取り形状部C3との境界部F3において、加圧ローラ66と離間距離Δα3で近接するよう設置されている。
【0112】
(実施例3の動作)
本実施例3の定着装置60Aは、実施例1又は2と同様に画像形成装置10Bの電源が投入されると良好な定着を行うことができる状態となって立ち上がりが完了し、定着装置60Aによる定着及び画像形成装置10Bによる画像形成が可能な状態となる。
【0113】
本実施例3の画像形成装置10Bは、印刷媒体100を定着装置60Aに搬送するまでは実施例1又は2の動作と同様である。
【0114】
印刷媒体100は、定着にあたりニップ領域67Bへ搬送される。ニップ領域67Bで熱圧着された印刷媒体100は、セパレータ81と、加圧ローラ66との離間距離Δα3が近接しているため、セパレータ81によって加圧ローラ66から分離され、面取り形状部C4に沿って定着装置60Aから排紙される。
【0115】
画像形成装置10B、及び定着装置60Aが、外部から何らかの衝撃を受けた場合を考える。セパレータ81、又は加圧ローラ66が変形・変位することでセパレータ81が加圧ローラ66と接触した際は、セパレータ81上に形成された境界部F3又は面取り形状部C3と干渉する。よって、加圧ローラ66は傷つけられること無く、衝撃を受けた後も良好な定着が可能となる。
【0116】
本実施例3のΔC3は実施例1で示したΔΒと等価であり、本実施例3の離間距離Δα3は実施例1で示した離間距離Δαと等価である。
【0117】
(実施例3の効果)
本実施例3の定着装置60A及び画像形成装置10Bによれば、次の(A)〜(D)のような効果がある。
【0118】
(A) セパレータ81の媒体分離領域α2に2ヶ所の面取り形状を付与したことで、実施例2のセパレータ71と同様に画像形成装置10B又は定着装置60Aが衝撃を受けた際にも定着ローラ64Aを傷つける事無く、良好な定着が可能である
【0119】
(B) セパレータ81は、2ヶ所の面取り形状を付与した簡単な構成であるため、実施例2のセパレータ71と同様に廉価に製造可能である。
【0120】
(C) 画像形成装置10Bの起動時には、実施例1又は2の画像形成装置10,10Aと同様にセパレータ81の加熱や位置調整(キャリブレーション)が不要であり、画像形成装置10Bの素早い立ち上がりに寄与する。
【0121】
(D) セパレータ81を加圧ローラ66に近接するよう配設したことで、印刷媒体100の加圧ローラ66への巻き付きが抑止できる。
【実施例4】
【0122】
(実施例4の構成)
図26は、本発明の実施例4の定着装置を示す概略の構成図であり、実施例3を示す図24中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0123】
本実施例4の定着装置60Bは、実施例3と同様な画像形成装置10Cに配設され、実施例3と同様に定着ローラ64Aを加圧する加圧ローラ66と、中空円筒の定着ローラ64Aと、加圧ローラ66と印刷媒体100とを分離する図示されない分離部材のセパレータ81とを有している。更に、定着ローラ64Aと印刷媒体100とを分離する、実施例2と同様な図示されない分離部材のセパレータ71を有している。
【0124】
この定着ローラ64Aの内部には、実施例3と同様に加熱部材であるハロゲンランプ65Aが、図示されない支持体によって両端部を支持されて配設されている。定着ローラ64Aと加圧ローラ66とは、それぞれ両端部を図示されない回転可能な軸受けにて保持されている。
【0125】
未定着トナー像を印刷媒体100に定着させるためのニップ領域67Bは、実施例3と同様に加圧ローラ66が図示されない付勢部材により定着ローラ64へ付勢され、接触することで形成されている。
【0126】
平板状のセパレータ71は、その先端が定着ローラ64Aに離間距離Δα2で近接するように設置され、平板状のセパレータ81は、実施例3と同様にその先端が加圧ローラ66に離間距離Δα3で近接するように設置されている。
【0127】
(実施例4の動作)
本実施例4の定着装置60Bは、実施例1〜3と同様に画像形成装置10Cの電源が投入されると、良好な定着を行うことができる状態となって立ち上がりが完了し、定着装置60Bによる定着及び画像形成装置10Cによる画像形成が可能な状態となる。
【0128】
本実施例4の画像形成装置10Cは、印刷媒体100を定着装置60Bに搬送するまでは実施例1〜3の動作と同様である。
【0129】
印刷媒体100は、定着にあたりニップ領域67Bへ搬送される。ニップ領域67Bで熱圧着された印刷媒体100は、セパレータ71によって定着ローラ64Aから分離されるか、又はセパレータ81によって加圧ローラ66から分離され、定着装置60Bから排紙される。
【0130】
画像形成装置10C、及び定着装置60Bが、外部から何らかの衝撃を受けた場合を考える。セパレータ71又は定着ローラ64Aが変形・変位することでセパレータ71が定着ローラ64Aと接触した際は、セパレータ71の境界部F2又は面取り形状部C1と干渉し、セパレータ81又は加圧ローラ66が変形・変位することでセパレータ81が加圧ローラ66と接触した際は、セパレータ81の境界部F3又は面取り形状部C3と干渉する。よって、定着ローラ64Aと加圧ローラ66とは傷つけられること無く、衝撃を受けた後も良好な定着が可能となる。
【0131】
(実施例4の効果)
本実施例4の定着装置60B及び画像形成装置10Cによれば、実施例3の効果に加え、次の(E)のような効果がある。
【0132】
(E) セパレータ71を定着ローラ64Aに近接するよう配設し、セパレータ81を加圧ローラ66に近接するよう配設したことで、印刷媒体100が定着ローラ64A及び加圧ローラ66へ巻き付くことを抑止できる。
【0133】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(e)のようなものがある。
【0134】
(a) 実施例1〜4の画像形成装置10,10A,10B,10Cは、複写機・プリンタ・複合機・ファクシミリ装置等でもよい。
【0135】
(b) 実施例1〜4の画像形成装置10,10A,10B,10Cは、カラー画像を形成するものであるが、単色の画像を形成するものであってもよい。
【0136】
(c) 実施例1〜4の定着装置40,60,60A,60Bは、セパレータ51,71,81に板金を使用しているが、成型品、セラミック、又は耐熱プラスティックを使用してもよい。
【0137】
(d) 実施例1〜4の定着装置40,60,60A,60Bは、セパレータ51,71,81に現像剤付着防止のためにコーティングを行っているが、離型性の高いテープを貼り付けてもよい。
【0138】
(e) 実施例2〜4の定着装置60,60A,60Bは、セパレータ71,81の先端に面取り形状を用いているが、面つぶし形状、絞り形状、又は曲面形状を用いてもよい。
【符号の説明】
【0139】
10,10A,10B,10C 画像形成装置
40 定着装置
44 定着部材
44−R 弾性層
44−P 芯金部
45 ハロゲンランプ
46 加圧部材
46−P 芯金部
46−R 弾性層
47,67,67A ニップ領域
50 分離部材
51,71,81 セパレータ
52 シャフト
53−1,53−2 ガイド部材
53−1S、53−2S 接触面
60 定着装置
62 定着ベルト
63 加熱ローラ
64,64A 定着ローラ
65,65A ハロゲンランプ
66 加圧ローラ
100 印刷媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体上の現像剤を加熱する定着部材と、
前記定着部材を加圧して接触領域を形成する加圧部材と、
前記接触領域から排紙された前記印刷媒体を前記定着部材から分離する第1の分離部材とを有する定着装置において、
前記第1の分離部材は、
前記第1の分離部材を前記定着部材に近接して設置する支持部と、
前記支持部によって保持された平板状の平面部と、
前記第1の分離部材の先端に向かうにつれ、前記平面部の厚み方向に傾斜した傾斜面部と、
前記平面部と前記傾斜面部の境界である境界部と、
前記第1の分離部材の先端である先端部と、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第1の分離部材は、板金部材、成型品、セラミックス、又は耐熱プラスティックのいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第1の分離部材は、曲げ形状、面取り形状、絞り形状、面つぶし形状、又は曲面形状のいずれか1つの形状によって前記傾斜面部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第1の分離部材は、
前記支持部から前記境界部に向かうにつれて前記定着部材に近接し、
前記境界部から前記先端部に向かうにつれて前記定着部材から離間するよう支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記第1の分離部材は、
前記先端部から前記定着部材までの距離は、
前記境界部から前記定着部材までの距離以上になるよう支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記第1の分離部材は、
前記傾斜面部の幅が0.5[mm]から2.0[mm]であることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記第1の分離部材は、
前記傾斜面部の幅が0.8[mm]から1.2[mm]であることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記第1の分離部材は、
前記境界部と前記定着部材との離間距離が0.3[mm]から1.0[mm]、
かつ、前記先端部と前記定着部材との離間距離が0.3[mm]から1.15[mm]であることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記第1の分離部材は、
前記境界部と前記定着部材との離間距離が0.4[mm]から0.6[mm]、
かつ、前記先端部と前記定着部材との離間距離が0.4[mm]から0.75[mm]であることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記第1の分離部材は、
前記境界部と前記定着部材との離間距離が0.4[mm]から0.6[mm]、
かつ、前記先端部と前記定着部材との離間距離が0.65[mm]から0.8[mm]であることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記第1の分離部材は、
前記境界部と前記定着部材との離間距離が0.3[mm]から1.0[mm]、
前記境界部から前記先端部への面と前記定着部材面の垂直との角度が88.2度〜107.2度、
かつ、前記支持部から前記境界部への面と前記定着部材面の垂直との角度が90度以上であることを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記第1の分離部材は、
前記境界部と前記定着部材との離間距離が0.4[mm]から0.6[mm]、
前記傾斜面部と前記定着部材面の垂直方向との角度が88.2度から107.2度、
かつ、前記平面部と前記定着部材面の垂直方向との角度が90度以上であることを特徴とする定着装置。
【請求項13】
印刷媒体上の現像剤を加熱する定着部材と、
前記定着部材を加圧して接触領域を形成する加圧部材と、
前記接触領域から排紙された前記印刷媒体を前記加圧部材から分離する第2の分離部材を有する定着装置において、
前記第2の分離部材は、
前記第2の分離部材を前記加圧部材に近接して設置する支持部と、
前記支持部によって保持された平板状の平面部と、
前記第2の分離部材の先端に向かうにつれ、前記平面部の厚み方向に傾斜した傾斜面部と、
前記平面部と前記傾斜面部の境界である境界部と、
前記第2の分離部材の先端である先端部と、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項14】
前記第2の分離部材は、板金部材であることを特徴とする請求項13に記載の定着装置。
【請求項15】
前記第2の分離部材は、
前記支持部から前記境界部に向かうにつれて前記加圧部材に近接し、
前記境界部から前記先端部に向かうにつれて前記加圧部材から離間するよう支持されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の定着装置。
【請求項16】
前記第1の分離部材は、前記定着部材に近接して設置され、
前記第2の分離部材は、前記加圧部材に近接して設置されたことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の定着装置を有することを特徴とした画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−154081(P2011−154081A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13991(P2010−13991)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】