説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】定着装置8からの超微粒子粉塵の発生をできるだけ抑制して、定着装置8ひいては画像形成装置10全体からの超微粒子粉塵の発生量を少なくする。
【解決手段】本願発明の定着装置8は、ヒートランプHにて加熱される加熱ローラ81と、加熱ローラ81に対して圧接配置された加圧ローラ82とを備える。加熱ローラ81と加圧ローラ82との間に形成された定着ニップ部83に、トナー像が転写された記録材Sを通過させることによって、トナー像Tを記録材Sに定着させる。加圧ローラ82の長手方向の両端部82a,82bは、加熱ローラ81に非接触の形状に形成する。更に、加圧ローラ82の両端部82a,82bを冷却する冷却ファン101a,101bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、加熱ローラと加圧ローラとの間に形成された定着ニップ部に、トナー像が転写された記録材を通過させることによって、前記トナー像を前記記録材に定着させる定着装置と、これを備えた画像形成装置とに関するものである。画像形成装置には、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれらの機能を複合的に備えた複合機といった各種のものが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式を採用した画像形成装置では、熱源によって加熱される加熱ローラとこれに当接する加圧ローラとの間の定着ニップ部に、未定着トナー像が転写された記録材を搬送し加熱及び加圧することにより、未定着トナー像を記録材に定着させることが広く行われている(いわゆる熱ローラ方式の定着装置を備えている)。
【0003】
さて、近年、定着処理のために加熱ローラを熱源にて加熱すると、加圧ローラ側で超微粒子粉塵(粒子径100nm未満、いわゆるナノオーダー)を生ずることが確認されていて、超微粒子粉塵に起因した不快臭やオフィス環境の汚染が問題視されている。この点、特許文献1には、定着装置周辺の空気を吸引ファンにて排気ダクト内に吸引し、吸引された空気中の超微粒子粉塵を放電にて帯電させてから、集塵電極にて捕集することが開示されている。かかる構成を採用すると、定着装置から生ずる超微粒子粉塵を効率よく捕集して、画像形成装置外への超微粒子粉塵の排出を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−2803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された構成では、吸引ファン、放電装置及び捕集装置等を備える必要があるため、画像形成装置全体の構造が大掛かりになるし、部品点数も嵩んでコスト高になると考えられる。また、状態によっては超微粒子粉塵が大量発生することも十分あり得るから、このような場合には、捕集し切れなかった超微粒子粉塵を、そのまま画像形成装置外に放出する可能性を否定できないのであった。
【0006】
ところで、加圧ローラの芯金(軸本体)は金属製であるが、その表面(円筒面)は、スポンジやシリコーンゴム等の素材からなる弾性層を介して、フッ素樹脂等の離型層にて被覆(チュービング又はコーティング)されている。弾性層たるスポンジやシリコーンゴム等は、加熱ローラを加熱した際に超微粒子粉塵を生じさせる加圧ローラ側での発生源の一つとみなされている。また、超微粒子粉塵の発生量には温度依存性があり、加圧ローラの温度が130℃を超えたあたりから、超微粒子粉塵の発生量が急激に増加することが知られている。
【0007】
一般に、加圧ローラの表面(円筒面)は、離型層たるフッ素樹脂等にてチュービング又はコーティングされているため、加圧ローラの温度が130℃を超える高温になっても、表面側からの超微粒子粉塵の発生はさほど多くない。しかし、加圧ローラの長手方向の両端面は、弾性層たるスポンジやシリコーンゴム等が剥き出しになっているため、加圧ローラの温度が130℃を超える高温になると、これら両端面から超微粒子粉塵が最も多く発生するのである。
【0008】
本願発明は、前述した従来技術の問題点に鑑みて、定着装置からの超微粒子粉塵の発生をできるだけ抑制して、定着装置ひいては画像形成装置全体からの超微粒子粉塵の発生量を少なくすることを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、熱源にて加熱される加熱ローラと、前記加熱ローラに対して圧接配置された加圧ローラとを備えており、前記加熱ローラと前記加圧ローラとの間に形成された定着ニップ部に、トナー像が転写された記録材を通過させることによって、前記トナー像を前記記録材に定着させる定着装置であって、前記加圧ローラの長手方向の両端部は、前記加熱ローラに非接触の形状に形成されており、更に、前記加圧ローラの前記両端部を冷却する冷却手段を有しているというものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載した定着装置において、前記冷却手段は、前記加圧ローラにおける前記各端部の端面に対峙するようにそれぞれ配置されているというものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した定着装置において、前記加圧ローラの長手方向の長さを前記加熱ローラの長手方向の長さより長くしているというものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載した定着装置において、前記加圧ローラの前記各端部のローラ径が端面に近付くに連れて小さくなるように、前記加圧ローラの前記各端部がテーパ状に形成されているというものである。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちいずれかに記載した定着装置において、前記加圧ローラにおける前記各端部の熱伝導率を、前記加圧ローラにおける中央部付近の熱伝導率よりも低くしているというものである。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜5のうちいずれかに記載した定着装置において、前記加圧ローラにおける少なくとも一方の前記端部の温度を検出する温度検出手段を有しており、前記冷却手段は前記温度検出手段の検出結果が設定上限温度以上になると作動するというものである。
【0015】
請求項7の発明は、請求項6に記載した定着装置において、前記冷却手段は前記温度検出手段の検出結果が設定下限温度以下になるとその作動を停止するというものである。
【0016】
請求項8の発明は、画像形成装置に係るものであり、請求項1〜7のうちいずれかに記載した定着装置を備えているというものである。
【発明の効果】
【0017】
本願の請求項に記載された発明によると、加圧ローラの長手方向の両端部が加熱ローラに非接触の形状に形成されているから、前記加圧ローラの前記両端部に、熱源によって加熱される前記加熱ローラから熱が直接伝わることはなく、前記加圧ローラの前記両端部が加熱され難い。つまり、前記加熱ローラから、前記加圧ローラの前記両端部に伝わる熱量を低減できる。その上、前記加圧ローラの前記両端部を冷却する冷却手段を有しているので、前記冷却手段からの冷却風によって、前記加圧ローラの前記両端部を積極的に冷却できる。従って、前記加圧ローラの前記両端部からの超微粒子粉塵の発生量を低減して、画像形成装置全体からの超微粒子粉塵の発生量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プリンタの概略説明図である。
【図2】第1実施形態の定着装置の概略側面図である。
【図3】定着装置の概略平面図である。
【図4】加熱ローラと冷却ファンとの配置関係を示す斜視説明図である。
【図5】コントローラの機能ブロック図である。
【図6】冷却ファン制御のフローチャートである。
【図7】加圧ローラの各端面の表面温度が超微粒子粉塵の発生量に与える影響を示すグラフである。
【図8】第2実施形態の定着装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本願発明を画像形成装置の一例である4サイクル型のカラーデジタルプリンタ(以下、プリンタと称する)に適用した実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0020】
(1).プリンタの概要
まず、図1を参照しながら、プリンタ10の概要について説明する。プリンタ10はドラム型の感光体1を備えている。感光体1の周囲には、図1の時計方向順に、帯電器2、現像装置4、中間転写ベルト6及び感光体クリーナ5が配置されている。中間転写ベルト6の下方側には、帯電器2と現像装置4の間から感光体1へ画像露光を行う画像露光装置3が設けられている。画像露光装置3の下方側には記録材供給部9が設けられている。感光体1は感光体駆動モータ(図示省略)によって図1の時計方向に回転駆動される。帯電器2には出力可変の帯電用電源(図示省略)から所定のタイミングで感光体帯電電圧が印加される。
【0021】
現像装置4は、現像器ラック40にブラック現像器4K、シアン現像器4C、マゼンタ現像器4M及びイエロー現像器4Yを搭載したものである。現像器ラック40は、ステッピングモータを含むラック駆動部(図示省略)によって図1の反時計方向に回転駆動するように構成されている。現像器ラック40には、90度の等中心角度間隔で図1の反時計方向順に、ブラック現像器4K、シアン現像器4C、マゼンタ現像器4M、イエロー現像器4Yが搭載されている。
【0022】
各現像器4K,4C,4M,4Yには、それぞれの色に対応したトナーカートリッジKC,CC,MC,YCが交換可能に装着されている。すなわち、ブラック現像器4KにはブラックトナーカートリッジKCが、シアン現像器4CにはシアントナーカートリッジCCが、マゼンタ現像器4MにはマゼンタトナーカートリッジMCが、イエロー現像器4YにはイエロートナーカートリッジYCが装着されている。各現像器4K,4C,4M,4Yには、感光体1上の静電潜像を現像するための現像ローラ41が設けられている。また、各現像器4K,4C,4M,4Yは、現像ローラ41以外に、これにトナーを供給するトナー供給ローラや、現像ローラ41上でのトナーの層厚を規制するトナー規制ブレード等も有している。
【0023】
各現像器4K,4C,4M,4Yは、負帯電性トナーを用いて感光体1上の静電潜像を反転現像させる。この場合、現像器ラック40を回転させることによって、感光体1上の静電潜像を反転現像する現像位置に各現像器4K,4C,4M,4Yを移動させる。感光体1表面に臨ませた(現像位置にある)現像ローラ41に、出力可変の現像バイアス電源(図示省略)から現像バイアスが印加される。現像位置にある現像ローラ41は、現像ローラ駆動モータ(図示省略)によって図1の反時計方向に回転駆動可能になる。この状態では、電源(図示省略)から、トナー供給ローラにトナー供給バイアスを印加可能になり、トナー規制ブレードに規制バイアスを印加可能になる。
【0024】
中間転写ベルト6は、駆動ローラ61、駆動ローラ61に対向する従動対向ローラ62、感光体1に対向配置された一次転写ローラ63、及び、一次転写ローラ63と協働してベルト6を感光体1に当接させる補助ローラ64からなるローラ群に巻き掛けられている。一次転写ローラ63には、一次転写電源(図示省略)から一次転写電圧が印加される。駆動ローラ61を転写ベルト駆動モータ(図示省略)にて図1の反時計方向に回転駆動させることによって、中間転写ベルト6は図1の反時計方向に回転駆動する。
【0025】
中間転写ベルト6のうち駆動ローラ61に巻き掛けられた部分の外側に二次転写ローラ7が配置されている。二次転写ローラ7は所定のタイミングで中間転写ベルト6に接離するように構成されている。二次転写ローラ7には、二次転写電源(図示省略)から二次転写電圧が印加される。中間転写ベルト6の従動対向ローラ62に巻き掛けられた部分の外側には、二次転写残トナー等を除去清掃するベルトクリーナ65が配置されている。
【0026】
二次転写ローラ7の上方側(搬送下流側)には、記録材S上の未定着トナー像を定着させるための定着装置8が設けられている。定着装置8よりも搬送下流側には、記録材排出ローラ対R3及び記録材排出トレイTが設けられている。二次転写ローラ7の下方側(搬送上流側)には、中間転写ベルト6と二次転写ローラ7との間の二次転写ニップ部に所定のタイミングにて記録材Sを搬送するタイミングローラ対R2と、記録材収容部9からの記録材Sをタイミングローラ対R2へ案内する案内ローラ対R1とが設けられている。
【0027】
以上説明したプリンタ10によると、内部に配置された制御部(図示省略)の指令に基づいて、四つの現像器4K,4C,4M,4Yのうち少なくとも1つを用いて記録材S上にトナー像を形成する。四つの現像器4K,4C,4M,4Yを用いてフルカラー画像を形成する例を以下に説明する。
【0028】
まず、ラック駆動部によって現像器ラック40を回転させ、イエロー現像器4Yをその現像ローラ41が感光体1に当接する現像位置に移動させる。これに併せて、感光体1を図1の時計方向に回転させ、中間転写ベルト6も回転させる。この段階では二次転写ローラ7をベルト6から離しておく。
【0029】
次いで、帯電用電源から感光体帯電電圧が印加された帯電器2によって、回転する感光体1の表面を一様に所定電位に帯電させる。感光体1の帯電域には、画像露光装置3から折り返し反射ミラー31,32を介してイエロー画像用の画像露光を施し、イエロー静電潜像を形成する。それから、イエロー現像器4Yによってイエロー静電潜像を現像し、イエロートナー像を形成し、一次転写電圧が印加された一次転写ローラ63によって、イエロートナー像を中間転写ベルト6上に一次転写する。
【0030】
次いで、イエロートナー像の形成と同様にして、現像位置に移動させたマゼンタ現像器4Mによって感光体1上に形成されたマゼンタトナー像を中間転写ベルト6上に転写する。また、現像位置に移動させたシアン現像器4Cによって感光体1上に形成されたシアントナー像を中間転写ベルト6上に転写し、現像位置に移動させたブラック現像器4Yによって感光体1上に形成されたブラックトナー像を中間転写ベルト6上に転写する。各色トナー像の感光体1への形成及び中間転写ベルト6への一次転写は、これらトナー像を重ねて中間転写ベルト6上に転写するタイミングで実行される。
【0031】
一方、記録材供給部9から供給ローラ91によって記録材Sを繰り出し、タイミングローラ対R2に向けて搬送する。記録材S先端がタイミングローラ対R2の出口側にあるタイミングセンサ(図示省略)に検出されると、タイミングローラ対R2を停止させ、記録材Sをそこで待機させておく。また、中間転写ベルト6の回転によって中間転写ベルト6上の多重トナー像が二次転写ローラ7へ到達するに先立ち、二次転写ローラ7を中間転写ベルト6に接触させておく。多重トナー像が二次転写ニップ部に到達するタイミングで、タイミングローラ対R2によって記録材Sを二次転写ニップ部に送り込み、記録材Sに多重トナー像を二次転写する。
【0032】
多重トナー像が転写された記録材Sは、定着装置8によって多重トナー像を定着され、記録材排出ローラ対R3によって記録材排出トレイTに排出される。その結果、フルカラー画像を形成した記録材Sが得られる。感光体1上の一次転写残トナー等は感光体クリーナ5によって除去清掃され、中間転写ベルト6上の二次転写残トナー等はベルトクリーナ65によって除去清掃される。
【0033】
(2).定着装置の第1実施形態
次に、図1〜図5を参照して、定着装置8の第1実施形態を説明する。図1〜図3に示すように、二次転写ローラ7の上方側(搬送下流側)に設けられた定着装置8は、記録材Pの搬送方向Fに直交する通紙幅方向に長い加熱ローラ81と、加熱ローラ81に平行状に延びて対峙する加圧ローラ82を備えている。図1及び図2では左側に加熱ローラ81が、右側に加圧ローラ82が位置している。加圧ローラ82は加熱ローラ81に当接していて、両ローラ81,82の当接部分が定着領域である定着ニップ部83になっている。
【0034】
加熱ローラ81の芯金84(軸本体)は円筒形の金属製である。芯金84の表面は、シリコーンゴムや発泡シリコーンゴム等の素材からなる弾性層85を介して、フッ素樹脂等の離型層86にて被覆(コーティング又はチュービング)されている。離型層86の存在によって、記録材Sは加熱ローラ81から円滑に分離される。加熱ローラ81の内部には、熱源としてのヒータランプH(ここではハロゲンヒータ)が通紙幅方向に延びるように配置されている。加熱ローラ81の長手方向両端側は、プリンタ10内部のローラ支持フレーム70に回転可能に軸支されている。すなわち、加熱ローラ81は、プリンタ10内部に、回転可能だが位置ずれ不能な状態で配置されている。
【0035】
詳細は図示していないが、加熱ローラ81には、駆動源である定着駆動モータが動力伝達可能に連結されていて、加熱ローラ81は定着駆動モータによって図1及び図2の反時計方向に回転駆動される。なお、加熱ローラ81を加熱する熱源はハロゲンヒータに限らず、IHヒータや抵抗発熱体等も採用できる。また、超音波を利用した熱源を採用してもよい。
【0036】
一方、加圧ローラ82の芯金87も円筒形の金属製である。芯金87の表面は、シリコーンゴムや発泡シリコーンゴム等の素材からなる弾性層88を介して、フッ素樹脂等の離型層89にて被覆(コーティング又はチュービング)されている。加圧ローラ82全体の外径は加熱ローラ81と同程度になっている。加圧ローラ82の長手方向両端側は、通紙幅方向に離間させて設けられた一対の支持プレート板73a,73bに回転可能に軸支されている。
【0037】
加圧ローラ82は、加熱ローラ81に対して、記録材Sの厚み方向に接離動可能に構成されている。すなわち、加圧ローラ82は、挟持搬送される記録材Sの厚みに応じて加熱ローラ81に近付いたり遠ざかったりできる。両支持プレート板73a,73bには付勢バネ74a,74bが設けられている。付勢バネ74a,74bの弾性付勢力によって、加圧ローラ82は加熱ローラ81に近接又は当接する方向に常時付勢されている。付勢バネ74a,74bにて加圧ローラ82が加熱ローラ81側に押し付けられることにより、加圧ローラ82は加熱ローラ81に従動して回転し、加熱ローラ81との間に定着領域である定着ニップ部83が形成される。
【0038】
付勢バネ74a,74bによる加圧ローラ82の圧接によって、定着ニップ部83に到達した記録材Sに対して、加熱ローラ81の摩擦搬送力及びトナー像定着力が確保される。加熱ローラ81の摩擦搬送力を利用して、記録材Sは記録材排出ローラ対R3に向けて搬送されることになる。
【0039】
図3に示すように、加圧ローラ82の長手方向の両端部82a,82bは、加熱ローラ81に非接触の形状に形成されている。ここで、加圧ローラ82の長手方向の両端部82a,82bは、一対の支持プレート板73a,73bに軸支されている部分の軸方向外側に位置している部分である。第1実施形態では、加圧ローラ82の長手方向の長さを加熱ローラ81の長手方向の長さより長くし、加圧ローラ82の両端部82a,82bを、加熱ローラ81から長手方向外向きに張り出させることによって、加熱ローラ81と非接触に形成されている。
【0040】
図3及び図4に示すように、加圧ローラ82の長手方向両外方側には、冷却手段としての一対の冷却ファン101a,101bが、加圧ローラ82における長手方向各端部82a,82bの端面82a′,82b′に対峙するように設けられている。加圧ローラ82における長手方向の各端面82a′,82b′とは、シリコーンゴムや発泡シリコーンゴム等からなる弾性層88が剥き出しになった部分であり、冷却ファン101a,101bは、弾性層88剥き出しの各端面82a′,82b′に向けて冷却風を送るものである。なお、記録材Sが通過する定着ニップ部83と各冷却ファン101a,101bとの間に、支持プレート板73a,73b及びローラ支持フレーム70を介在させることによって、各冷却ファンからの冷却風が定着ニップ部83や加熱ローラ81側に流れ込まないように構成されている。
【0041】
加圧ローラ82における長手方向の両端面82a′,82b′のうち少なくとも一方に、当該箇所の表面温度を検出する温度検出手段としての温度センサ102a,102bが配置されている。第1実施形態では、各端面82a′,82b′に対して温度センサ102a,102bをそれぞれ設けている。
【0042】
以上の構成によると、加圧ローラ82の長手方向の両端部82a,82bが加熱ローラ81に非接触の形状に形成されているから、加圧ローラ82の長手方向の両端部82a,82bに、熱源Hによって加熱される加熱ローラ81から熱が直接伝わることはなく、加圧ローラ82の長手方向の両端部82a,82bが加熱され難い。つまり、加熱ローラ81から、加圧ローラ82の長手方向の両端部82a,82bに伝わる熱量を低減できる。その上、加圧ローラ82の両端部82a,82bを冷却する冷却ファン101a,101bを有しているので、冷却ファン101a,101bからの冷却風によって、加圧ローラ82の両端部82a,82bを積極的に冷却できる。従って、加圧ローラ82の両端部82a,82bからの超微粒子粉塵の発生量を低減して、プリンタ10全体からの超微粒子粉塵の発生量を低減できる。
【0043】
特に第1実施形態では、冷却ファン101a,101bを加圧ローラ82の各端面82a′,82b′に対峙させて設けているから、超微粒子粉塵の発生源である加圧ローラ81の各端面82a′,82b′に冷却風を直接吹き付けでき、冷却風による冷却効果を向上できる。また、加圧ローラ82の長手方向の長さを加熱ローラ81の長手方向の長さより長くすることによって、加圧ローラ82の両端部82a,82bを加熱ローラ81に非接触の形状に形成しているから、構造が極めて簡単なものでありながら、加熱ローラ81から加圧ローラ82の両端部82a,82bに伝わる熱量を低減する効果を発揮できる。
【0044】
(3).冷却ファン制御の関連構造及びその制御態様
次に、図5及び図6のフローチャートを参照しながら、冷却ファン制御の関連構造及びその制御態様について説明する。図5に示すように、両冷却ファン101a,101b及び両温度センサ102a,102bはコントローラ103に電気的に接続されている。コントローラ103は、温度センサ102a,102bの検出結果に応じて冷却ファン101a,101bの作動を制御する冷却ファン制御を実行可能に構成されていて、プリンタ10内の制御部(図示省略)に内蔵されている。コントローラ103は、各種演算処理や制御を実行するCPU104のほか、外部端末との接続用の通信インターフェイス(I/F)部105、EEPROMやフラッシュメモリ等の記憶手段106、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるRAM107、記録材Sの搬送枚数等を計測するカウンタ108、時間を計測するタイマ109、及び入出力インターフェイス等を備えている。
【0045】
コントローラ103は、画像形成動作時に冷却ファン101a,101bの作動を制御している。図6に示す例では、温度センサ102a,102bの検出結果Tが設定上限温度TH以上になると、冷却ファン101a,101bを作動させ、温度センサ102a,102bの検出結果Tが設定下限温度TL以下になると、冷却ファン101a,101bの作動を停止させる。なお、設定上限温度TH及び設定下限温度TLは、コントローラ103の記憶手段106等に記憶させることで予め設定されている。第1実施形態の設定上限温度THは130℃、設定下限温度TLは120℃が採用されている。以下に開示のフローチャートに示すアルゴリズムは、コントローラ103の記憶手段106にプログラムとして予め記憶されていて、RAM107に読み出されてからCPU104にて実行される。
【0046】
図6に示す例では、外部端末等からの画像形成指令を受け付けて画像形成動作を開始し(S1)、次いで、両温度センサ102a,102bにて検出された端面82a′,82b′の表面温度Tを取得する(S2)。それから、両温度センサ102a,102bの検出結果である表面温度Tが設定上限温度TH以上か否かを判別する(S3)。表面温度Tが設定上限温度TH未満であれば(S3:NO)、加圧ローラ82の各端面82a′,82b′から超微粒子粉塵が発生し易い状態に至っていないと解されるので、後述するステップS8へ移行する。表面温度Tが設定上限温度TH以上であれば(S3:YES)、加圧ローラ82の各端面82a′,82b′から超微粒子粉塵が発生し易い状態であると解されるので、冷却ファン101a,101bを作動させて加圧ローラ82の各端面82a′,82b′に冷却風を当てる(S4)。
【0047】
その後、加圧ローラの各端面82a′,82b′の表面温度Tを再度取得し(S5)、表面温度Tが設定下限温度TL以下か否かを判別する(S6)。表面温度Tが設定下限温度TLよりも高ければ(S6:NO)、ステップS4に戻ってそのまま冷却ファン101a,101bを継続作動させる。表面温度Tが設定下限温度TL以下であれば(S6:YES)、加圧ローラ82の各端面82a′,82b′から超微粒子粉塵がさほど発生しない状態に戻っていると解されるので、冷却ファン101a,101bの作動を停止する(S7)。次いで、画像形成動作が終了したか否かを監視し(S8)。画像形成動作が継続していれば(S8:NO)、ステップS2に戻る。画像形成動作が終了すれば(S8:YES)、冷却ファン制御も終了するのである。
【0048】
以上のように制御すると、加圧ローラ82における各端面82a′,82b′の表面温度Tが設定上限温度THを超えて上昇するのを阻止して、加圧ローラ82の各端面82a′,82b′から超微粒子粉塵がさほど発生しない状態に維持することが可能になる。従って、加圧ローラ82の両端部82a,82bからの超微粒子粉塵の発生量を大幅に低減でき、プリンタ10全体からの超微粒子粉塵の発生量がより一層低減される。また、表面温度Tが設定下限温度TL以下になれば、冷却ファン101a,101bの作動を停止するので、冷却ファン101a,101bを無駄に作動させることがなく、省電力化に寄与できる。また、加圧ローラ82を過剰に冷却させることもないので、定着精度も十分に維持されるのである。
【0049】
図7には、加圧ローラ82の各端面82a′,82b′の表面温度が超微粒子粉塵の発生量に与える影響について調べた実験結果を示している。図7のグラフでは、横軸に表面温度(℃)を、縦軸にプリンタ10が一時間当りに放出する超微粒子粉塵の総個数(p/hr)を採っている。この場合、加熱ローラ81中央付近の表面温度を170℃に設定して冷却ファン101a,101bを停止させた状態では、加圧ローラ82の各端面82a′,82b′の表面温度が画像形成時に160℃になった。そこで、冷却ファン101a,101bの送風量を調節することによって、加圧ローラ82の各端面82a′,82b′の表面温度を120℃〜160℃の範囲で変化させ、単位時間当りの超微粒子粉塵の総個数を測定・算出している。
【0050】
図7に示すように、加圧ローラ82の各端面82a′,82b′の表面温度が低いほど、超微粒子粉塵の発生量は低くなり、表面温度が140℃以上で超微粒子粉塵の発生量が急激に増加していることを確認できる。この点からも、加圧ローラ82における各端面82a′,82b′の表面温度Tを設定上限温度TH(第1実施形態では130℃)未満に維持することが、超微粒子粉塵の発生を大幅に抑制するのに効果的であることが見て取れる。
【0051】
(4).定着装置8の第2実施形態
次に、図8を参照しながら、定着装置8の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、加圧ローラ82の長手方向の両端部82a,82bを、加熱ローラ81に非接触の形状にするにあたり、加圧ローラ82の各端部82a,82bのローラ径が端面82a′,82b′に近付くに連れて小さくなるように、加圧ローラ82の各端部82a,82bをテーパ状に形成している。その他の構成は第1実施形態とほぼ同様である。
【0052】
このように構成すると、第1実施形態の場合と同様に、加熱ローラ81から、加圧ローラ82におけるテーパ状の両端部82a,82bに伝わる熱量を低減できることに加えて、加圧ローラ82の各端面82a′,82b′の露出面積を小さくできる。このため、超微粒子粉塵の発生源が小さくなり、当該部分からの超微粒子粉塵の発生を抑制するのに効果的である。
【0053】
なお、図3及び図8に示した加圧ローラ82において、長手方向各端部82a,82bの熱伝導率を、長手方向各端部82a,82b以外の部分(例えば中央部付近)の熱伝導率よりも低くすることによって、加圧ローラ82の長手方向各端部82a,82bに伝わる熱量を低減させ、加圧ローラ82の長手方向各端部82a,82bを加熱され難くすることも可能である。例えば発泡度を変えることによって、加圧ローラ82の長手方向各端部82a,82bの密度をそれ以外の部分よりも低くすればよい。
【0054】
(5).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、画像形成装置としてプリンタを例に説明したが、これに限らず、複写機、ファクシミリ又はこれらの機能を複合的に備えた複合機等でもよい。冷却手段としては、一対の冷却ファン101a,101bに限らず、1つの冷却ファンからの冷却風を例えば二股状の導風ダクトを介して加圧ローラ82の長手方向両端部82a,82bに吹き付けるように構成してもよいし、加圧ローラ82の長手方向両端部82a,82bに接触して放熱するような構造を採用してもよい。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
8 定着装置
10 プリンタ
81 加熱ローラ
81a,81b 長手方向端部
82 加圧ローラ
82a,82b 長手方向端部
82a′,82b′ 端面
83 定着ニップ部
84,87 芯金
85,88 弾性層
86,89 離型層
101a,101b 冷却ファン
102a,102b 温度センサ
103 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源にて加熱される加熱ローラと、前記加熱ローラに対して圧接配置された加圧ローラとを備えており、前記加熱ローラと前記加圧ローラとの間に形成された定着ニップ部に、トナー像が転写された記録材を通過させることによって、前記トナー像を前記記録材に定着させる定着装置であって、
前記加圧ローラの長手方向の両端部は、前記加熱ローラに非接触の形状に形成されており、更に、前記加圧ローラの前記両端部を冷却する冷却手段を有している、
定着装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記加圧ローラにおける前記各端部の端面に対峙するようにそれぞれ配置されている、
請求項1に記載した定着装置。
【請求項3】
前記加圧ローラの長手方向の長さを前記加熱ローラの長手方向の長さより長くしている、
請求項1又は2に記載した定着装置。
【請求項4】
前記加圧ローラの前記各端部のローラ径が端面に近付くに連れて小さくなるように、前記加圧ローラの前記各端部がテーパ状に形成されている、
請求項1又は2に記載した定着装置。
【請求項5】
前記加圧ローラにおける前記各端部の熱伝導率を、前記加圧ローラにおける中央部付近の熱伝導率よりも低くしている、
請求項1〜4のうちいずれかに記載した定着装置。
【請求項6】
前記加圧ローラにおける少なくとも一方の前記端部の温度を検出する温度検出手段を有しており、前記冷却手段は前記温度検出手段の検出結果が設定上限温度以上になると作動する、
請求項1〜5のうちいずれかに記載した定着装置。
【請求項7】
前記冷却手段は前記温度検出手段の検出結果が設定下限温度以下になると作動を停止する、
請求項6に記載した定着装置。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれかに記載した定着装置を備えている、
画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−128330(P2012−128330A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281648(P2010−281648)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】