説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】定着ベルトを破損させること無く、長期間に亘って安定した給電を行うことができる抵抗発熱体方式の定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】抵抗発熱体層を有する定着ベルト200の外周面に、加圧部材210を圧接させて形成される定着ニップに記録シートを通紙してトナー像を定着する定着装置に、定着ベルト200に外囲され、加圧部材210に対向して固定配置された押圧部材220を設け、定着ベルト200の内周面に当接する給電部材204を定着ベルト200の端部近傍に配設する。押圧部材220は、定着ベルト200の回転軸方向における給電部材204よりも中央側で、給電部材204の近傍まで定着ベルト200に当接しており、加圧部材210は、定着ベルト200の回転軸方向において、押圧部材220の両端よりも中央側において定着ベルト200に圧接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関し、特に、抵抗発熱体方式の定着装置において定着ベルトの破損を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、簡素な装置構成で省エネルギー化を図ることができる定着装置として、抵抗発熱体方式の定着装置が注目されている。
抵抗発熱体方式の定着装置においては、例えば、図6に示されるように、抵抗発熱体層を有する定着ベルトに加圧ローラーを押し当てることによって形成される定着ニップに記録シートを通紙することによって、トナー像が記録シートに熱定着される。この場合において、定着ベルトの内部には加圧ローラーと対向して押圧パッドが配設される。また、定着ベルトの軸方向における両端に設けられた電極部には、給電部材が当接することによって、抵抗発熱体層に電流が流される(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような構成によれば、定着ベルトの熱容量を小さくすることができるので、ウォームアップ時間を短縮することができる。また、定着ベルトから押圧パッドへの伝導による熱損失も小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−279547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、定着ベルトの熱容量を小さくするためには、定着ベルトを薄くせざるを得ない一方で、上述のように、加圧ローラーや押圧パッド、給電部材といった部材が各所で定着ベルトに当接して、大きな圧力を加える。このため、例えば、給電部材と押圧パッドの継ぎ目部分における段差や隙間で、定着ベルトが変形したり座屈したりしてしまう。
また、上記の従来技術においては、給電部材が固定配置されている。このため、長期間に亘って使用し続けると、給電部材が磨耗して、押圧パッドとの間の段差が大きくなるので、定着ベルトが変形したり座屈したりした結果、破損してしまうおそれもある。
【0006】
本発明は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、定着ベルトを破損させること無く、長期間に亘って安定した給電を行うことができる抵抗発熱体方式の定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る定着装置は、通電によって発熱する抵抗発熱体層を有する無端状の定着ベルトの外周面に対して、加圧部材を圧接させて形成される定着ニップに記録シートを通紙することによってトナー像を定着する定着装置であって、前記定着ベルトに外囲され、前記加圧部材に対向して固定配置された押圧部材と、前記定着ベルトの、回転軸方向における両端近傍にそれぞれ配設され、前記定着ベルトの内周面に当接して、前記抵抗発熱体層に給電する一対の給電部材と、を備え、前記押圧部材は、前記回転軸方向における前記一対の給電部材の内側であって、一方の給電部材の近傍から他方の給電部材の近傍までに亘って定着ベルトに当接しており、前記加圧部材は、前記回転軸方向において、前記押圧部材の両端よりも内側において定着ベルトに圧接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このようにすれば、加圧部材の圧接力がすべて押圧部材によって受け止められるので、加圧部材の圧接力によって定着ベルトが挫屈したり破損したりするのを防止することができる。したがって、定着ベルトの耐久性を高めることができるので、長期間に亘って安定した給電を行うことができる。
この場合において、前記定着ベルトの両端部に環状部材が嵌設すれば、更に、定着ベルトの両端部における歪みを是正することができる。したがって、定着ベルトの座屈や破損を防止して、耐久性を高めることができる。
【0009】
更に、定着ベルトを回転駆動する駆動源を備え、前記環状部材が、前記駆動源の回転駆動力を前記定着ベルトに伝達するギアを兼ねれば、定着ベルトが加圧部材に従動回転する際に、定着ベルトと加圧部材との滑りに起因する定着ベルトの回転不良が発生した際に、当該ギアを経由して前記駆動源の回転駆動力を定着ベルトに伝達することによって、定着ベルトの回転不良を解消することができる。
【0010】
また、前記押圧部材の前記定着ベルトに当接する面が、前記定着ベルトの回転軸方向において、前記加圧部材に対向する位置では陥凹し、両端部においては突出する滑らかな曲面形状を有していれば、定着ベルトの変形量を連続的かつ滑らかに変化させることができるので、定着ニップの境界部分で定着ベルトが挫屈するのを防止することができる。
また、前記定着ベルトが、内周側に露出しており、前記抵抗発熱体層に電気的に接続された電極部を有しており、前記抵抗発熱体層が、前記電極部を介して、前記給電部材から給電を受ければ、給電部材が抵抗発熱体層に直接当接しないので、抵抗発熱体層を保護することができる。
【0011】
また、前記給電部材を前記定着ベルトに向かって付勢する付勢部材を備えれば、給電部材の接触状態を安定化させることができるので、給電部材による給電を更に安定化させることができる。
また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る定着装置を備えることを特徴とする。このため、本発明に係る定着装置の上述のような効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る画像形成装置主要な構成を示す図である。
【図2】定着装置100の主要な構成を示す断面斜視図であって、(a)は定着ベルトの回転軸を含む断面を示し、(b)は定着ベルトの回転軸に垂直な断面を示す。
【図3】定着ベルト200の層構成を示す断面図である。
【図4】押圧パッド220の断面形状を示す図である。
【図5】定着装置の構成とベルト歪量との関係を示す図であって、(a)は従来技術に係る定着装置の構成を示す断面図、(b)はベルト駆動ギア201が無い構成を示す断面図、(c)はベルト駆動ギア201を有する構成を示す断面図、(d)は各構成における定着ベルトの回転軸方向ごとのベルト歪量δを示すグラフである。
【図6】従来技術に係る抵抗発熱体方式の定着装置の主要な構成を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る定着装置及び画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1] 画像形成装置の構成
まず、本発明に係る画像形成装置の構成について説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置主要な構成を示す図である。画像形成装置1は、いわゆる中間転写方式のカラー画像形成装置であって、図1に示されるように、作像ユニット101Y〜101Kを備えている。作像ユニット101Y〜101Kは何れも同様の構成を備えており、円筒形状の感光体ドラム102の外周面を帯電装置103にて一様に帯電させて所定の電位とした後、その帯電領域に露光装置104によって原稿画像に応じた画像露光が施され、静電潜像が形成される。
【0014】
現像装置105は、トナーカートリッジ108Y〜108Kから供給されたYMCK各色のトナーを、現像バイアスを印加された現像ローラー105aによって感光体ドラム102の外周面上に供給して静電潜像を現像し、可視トナー像とする。1次転写ローラー106には1次転写電圧が印加されており、トナーを静電吸着することによって、感光体ドラム102の外周面上から中間転写ベルト110へ可視トナー像を1次転写する。中間転写ベルト110へ可視トナー像を1次転写した後に、感光体ドラム102の外周面に残留するトナーは清掃装置107によって除去される。
【0015】
中間転写ベルト110は、2次転写対向ローラー111と従動ローラー112とに張架されており、2次転写対向ローラー111に回転駆動されることによって矢印A方向に回転走行しながら、YMCK各色のトナー像を1次転写される。従動ローラー112は、回転走行する中間転写ベルト110との間の摩擦力によって従動回転する。
上と並行して、記録シートSを収容した給紙カセット120においては、給紙ローラー121によって記録シートSが1枚ずつ送り出され、2次転写対向ローラー111と2次転写ローラー113とが形成する2次転写ニップへと搬送される。2次転写ローラー113には2次転写バイアスが印加されており、2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト110が担持するトナー像が記録シートに静電転写される。
【0016】
トナー像を担持する記録シートは、抵抗発熱体方式の定着装置100へ搬送され、トナー像を熱定着される。その後、記録シートは排紙ローラー130によって排紙トレイ131上に排出される。一方、2次転写後に中間転写ベルト110上に残留するトナーは矢印A方向に搬送された後、清掃装置109によって除去される。
[2] 定着装置100の構成
次に、定着装置100の構成について説明する。
【0017】
図2は、定着装置100の主要な構成を示す断面斜視図であって、(a)は定着ベルトの回転軸を含む断面を示し、(b)は定着ベルトの回転軸に垂直な断面を示す。図1に示されるように、定着装置100は抵抗発熱体層を有する無端状の定着ベルト200、定着ベルト200に圧接して定着ニップを形成する加圧ローラー210、定着ベルト200を介して加圧ローラー210に対向する押圧パッド220、及び、これらの部材を収容するハウジング230を備えている。
【0018】
図3は、定着ベルト200の層構成を示す断面図である。図3に示されるように、定着ベルト200は、内周側から抵抗発熱体層300、補強層301、弾性層302及び離型層303を順次積層した構成を備えている。抵抗発熱体層300は、樹脂に導電フィラーを分散させることにより所定の電気抵抗率に調整されている。樹脂材料としてはポリイミド(PI: Polyimide)、ポリフェニレンサルファイド(PPS: Poly Phenylene Sulfide)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK: Polyether Ether Ketone)等を用いれば良く、中でも最も高い耐熱性を有するポリイミドを用いるのが望ましい。
【0019】
導電フィラーとしては、銀(Ag)や銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等の金属の粉末や、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素化合物の粉末、及びヨウ化銀(AgI)、ヨウ化銅(CuI)等の無機化合物の高イオン導電体粉末を用いるのが望ましく、それぞれ2種類以上を混合させて分散させても良い。
【0020】
導電フィラーの形状は、少ない含有量でフィラー同士の接触確率を高くして、パーコレーションし易くするために、繊維状が望ましい。炭素化合物や高イオン導電体は温度が高くなると体積抵抗率が低下する負の抵抗変化率(NTC: Negative Temperature Coefficient)を有しており、抵抗発熱体層300にNTC特性を付与するために用いる。特に、高イオン導電体は抵抗発熱体層300の機械的強度を低下させることがないことからも有用である。
【0021】
しかしながら、炭素化合物や高イオン導電体のみでは、抵抗発熱体層300の電気抵抗率を調整して、定着装置の消費電力を商用電源で500[W]から1500[W]まで程度の範囲内にすることは困難であるため、金属微粒子を併用して電気抵抗率を調整するのが望ましい。金属微粒子は、針形状やフレーク形状の銀やニッケルを用いるのが好ましく、粒径は0.01[μm]から10[μm]までの範囲内が良い。このようにすれば、炭素化合物や高イオン導電体と線状に絡み合うことによって均一な体積抵抗率を有する抵抗発熱体層300を得ることができる。
【0022】
耐熱樹脂中に分散させる導電フィラーは、耐熱樹脂重量に対して、金属微粒子が50[重量%]から300[重量%]までの範囲内であるのが良く、炭素化合物及び高イオン導電体は[5重量%]から100[重量%]までの範囲内であるのが好ましい。導電フィラーが多過ぎると電気抵抗率が下がり過ぎて使用し辛く、少な過ぎると電気抵抗率が大きくなり過ぎて使用し辛い。
【0023】
抵抗発熱体層300の厚みは任意であるが、5[μm]〜100[μm]の範囲内が望ましい。抵抗発熱体層300の電気抵抗率は印加電圧や消費電力、抵抗発熱体層300の厚さ、定着ベルト200の外径、軸方向の長さ等に応じて設定すべきであるが、概ね1.0×10-6[Ω・m]から1.0×10-2[Ω・m]までの範囲内とするのが良く、更に望ましくは1.0×10-5[Ω・m]から5.0×10-3[Ω・m]とするのが好適である。
【0024】
なお、抵抗発熱体層300の電気抵抗率を調整するために、金属合金や金属間化合物などの導電性粒子を適宜、分散させても良い。また、抵抗発熱体層300の機械的強度を向上させるために、ガラスファイバー、ウィスカー(単結晶繊維)、酸化チタン(TiO2)繊維、チタン酸カリウム(K2O・nTiO2)繊維などを分散させても良い。更に、抵抗発熱体層300の熱伝導率を向上させるために、窒化アルミニウム(AlN)や酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)等を分散させても良い。
【0025】
抵抗発熱体層300の製造安定性を考慮すれば、イミド化剤やカップリング剤、界面活性剤、消泡剤を用いても良い。抵抗発熱体層300は、芳香族テトラカルボン酸二無水物(aromatic tetracarboxylic dianhydride)と芳香族ジアミン(aromatic diamine)とを有機溶媒中で重合させて得られるポリイミドワニス(ployimide vanish)に、上述のような導電性フィラーを均一に分散させてから金型に塗布し、イミド転化させることによって製造される。
【0026】
また、上記に代えて、抵抗発熱体層300として薄膜の金属層を構成しても良い。薄膜の金属層を構成する材料は、体積抵抗率(または導電率)の温度係数が小さいものが望ましく、例えば、ステンレス(SUS: stainless use steel)やニクロム(Ni-Cr)、チタン(Ti)等を用いると良い。金属薄膜層は、樹脂材上にメッキやスパッタリング、蒸着などを施すことによって形成することができる。また、樹脂材上に金属薄膜層を形成するに先立って、予め樹脂材の表面に対し、エッチング等の酸活性処理、パラジウム等による触媒処理、ブラスト研磨処理、プラズマ処理などを施せば、樹脂材と金属薄膜層との密着強度を高めることができる。
【0027】
定着ベルト200の離型層303は、パーフルオロアルコキシ(PFA: per fluoro alkoxy)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE: poly tetra fluoro ethylene)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE: ethylene tetra fluoro ethylene)等のフッ素系チューブ及びフッ素系コーティング等の離型性を付与した構成が望ましく、導電性を有していても良い。厚さは任意であるが、5[μm]から100[μm]までの範囲内が望ましい。フッ素系チューブとしては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製のPFA350−J、451HP−J、951HP Plus等を用いることができる。離型層303と水との接触角は90度以上が良く、望ましくは110度以上である。また、離型層303の表面粗さはRa:0.01[μm]から50[μm]程度までの範囲内であるのが望ましい。
【0028】
なお、補強層301は、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂からなっており、定着ベルト200を補強し、また、電気的に絶縁する。弾性層302は、シリコーンゴムやフッ素ゴム等からなっている。定着ベルト200は、少なくとも抵抗発熱層300と離型層303とを備えていることが必要で、他の層は用途に応じて付加すれば良い。抵抗発熱体層300は離型層303よりも内周側に設ければ良く、抵抗発熱体層300と離型層303との間に他の層が介在するか否かは問わない。
【0029】
加圧ローラー210は、不図示の付勢手段によって定着ローラー200に圧接され、不図示の駆動源によって回転駆動される。加圧ローラー210は、芯金210aの外周面上に弾性層と離型層を順次積層したものである。加圧ローラー210の外径は任意であるが、20[mm]から100[mm]までの範囲内が望ましい。加圧ローラー210の離型層は、定着ベルト200の離型層303と同様に、PFA、PTFEといったフッ素系チューブ及びフッ素系コーティング等の離型性を付与した構成が望ましく、導電性を有していても良い。離型層の厚さは、例えば、5[μm]から100[μm]までの範囲内とすればよい。
【0030】
弾性層はシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性の高い材料が望ましく、厚さは1[mm]から20[mm]までの範囲内とすれば良い。芯金210aは、厚さが0.1[mm]から10[mm]までの範囲内にあるパイプ形状をとり、アルミニウムや鉄(Fe)といった材料からなっている。芯金210aは、パイプ形状の他、中実の円柱形状や断面が三ツ矢形状等であっても良い。
【0031】
定着ベルト200の内側には、定着ベルト200を挟んで加圧ローラー210に圧接することによって定着ニップを形成する押圧パッド220が固定配置されている。押圧パッド220は、剛性を有する樹脂もしくはゴムからなっている。押圧パッド220がゴムからなる場合には、定着ベルト200との間の摩擦抵抗を小さくするために、摩擦係数の低い摺動部材を定着ベルト200に接する箇所に配置するとよい。押圧パッド220はニップ圧による変形(ベンディング)を抑制するために、強度の高いシャフト221に支持されている。シャフト221は角柱部221aに円筒部221bを嵌設した構造となっており、押圧パッド220は角柱部221aに固定支持されており、シャフト221の円筒部221bはハウジング230に固定されている。
【0032】
図4は、押圧パッド220の断面形状を示す図である。図4に示されるように、定着ベルト200の回転軸方向における両端部においては、押圧パッド220は加圧ローラー210側に突出した形状を突出した断面形状220aをとり、定着ニップに近づくにつれて、突出量が小さくなって、平らな断面形状220bとなり、その後、定着ニップ部では陥凹した断面形状220cをとる。
【0033】
押圧パッド220の断面のうち湾曲部分の曲率半径は、断面形状220aから断面形状220bに至る間では漸増する。具体的には、断面形状220aでは定着ベルト200の内周面の曲率半径とほぼ同じになっており、断面形状220bに近づくにつれて曲率半径が大きくなる。断面形状220bは、曲率半径が無限大になる位置、すなわち、定着ベルト200に当接する辺が直線になる位置である。なお、押圧パッド220の幅Wが340[mm]から345[mm]までの範囲内であれば、断面形状220aから断面形状220bを経て断面形状220cに至る距離Dは10[mm]から50[mm]までの範囲内とするのが望ましい。
【0034】
また、断面形状220cから断面形状220bに至る間には、加圧ローラー210の曲率半径の30%以上となるように、当該曲率半径が増大する。押圧パッド220は剛性を有しており、定着ニップにおいては、押圧パッド220の湾曲形状に沿って定着ベルト220が回転走行する。また、加圧ローラー210は、その弾性層を押圧パッド220の湾曲形状に合わせて弾性変形させながら回転する。
【0035】
定着ベルト200は、加圧ローラー210との間の摩擦力によって従動回転するが、定着ベルト200の内周面と押圧パッド220との間の摩擦力が大きいと、定着ベルト200と加圧ローラー210との間でスリップが発生して、回転不良を起こすおそれがある。このような回転不良を防止するために、定着ローラー200の回転軸方向における両端にはベルト駆動ギア201が嵌設されている。定着ベルト200の回転不良が発生すると、ベルト駆動ギア201によって定着ベルト200が回転駆動され、回転不良から復帰する。
【0036】
ベルト駆動ギア201は、ベアリング202を介してシャフト221に回転可能に支持されている。シャフト221は、上述のように、角柱部221aに円筒部221bを嵌設した構造となっており、ベルト駆動ギア201は円筒部221bに支持されている。ベルト駆動ギア201はギア231に歯合しており、ギア231はシャフト232に軸支されている。シャフト232もまたベアリング233を介してハウジング230に支持されている。
【0037】
ギア231は、加圧ローラー210による定着ベルト200の回転速度よりも、ベルト駆動ギア201を介したギア231による定着ベルト200の回転速度の方が若干遅めになるように、不図示の駆動源によって回転駆動されている。また、当該駆動源からギア231に回転駆動力を伝達する経路上にはトルクリミッタが介在しており、加圧ローラー210による定着ベルト200の回転駆動に回転不良が生じていない場合には、当該トルクリミッタが空転して、回転駆動力の伝達を遮断する。回転不良が生じた場合には、ギア231に回転駆動力を伝達して、定着ベルト200を回転させる。
【0038】
定着ベルト200の回転軸方向における両端部付近の内周面には、それぞれ全周に亘って電極部203が設けられている。一端側に設けられた電極部203と他端側に設けられた電極部203との間に電流を流すことによって、定着ベルト200の抵抗発熱体層300に電流が流され、抵抗発熱体層300が発熱する。
電極部203に用いる導電体には、定着ベルト200の周方向について均一な電気的特性を有する材料を用いるのが望ましく、銅やアルミニウム、ニッケル、真鍮、リン銅等の金属を化学メッキや電気メッキによって定着ベルト200の内周面上に形成する。抵抗発熱体層300上に電極部203を直接形成する場合には、まず、化学メッキを施してから電気メッキを施すと良い。
【0039】
導電体材料としては、銅とニッケルが特に好ましく、銅をメッキした上にニッケルをメッキすると更に良い。また、メッキする以外にも、銅箔やニッケル箔を導電性接着剤で抵抗発熱体層300に接着しても良いし、導電性インクや導電性ペーストを塗布して電極部203としても良い。更に、抵抗発熱体層300を金型形成する際に、リング状の電極部203を金型に装着して一体的に形成しても良い。
【0040】
電極部203への給電は、電極部203に給電部材204を接触させることによって行われる。また、給電部材204へは、不図示の電源装置から電線207を経由して給電を受ける。電線207はシャフト221bの中空部分に通されている。給電部材204は保持板205によって、定着ベルト200の半径方向に移動可能に保持されており、付勢部材206によって電極部203側へ付勢されている。付勢部材206としては、例えば、弾性を有する部材を用いれば良く、コイルばねを用いても良い。また、給電部材204としては、例えば、カーボンブラシを用いることができる。給電部材204の形状は任意であり、定着ベルト200と摺動させても良いし、定着ベルト200の回転走行に併せて回転する回転体としても良い。
【0041】
上のような構成をとれば、定着ベルト200の抵抗発熱体層300に流れる電流の分布を均一にして、発熱分布を均一にすることができるので、定着ムラを防止することができる。また、抵抗発熱体層300が定着ベルト200の中間層になっており、定着ベルト200の内周面側に露出していない場合であっても、電極部203が露出して配置されているので、複雑な構成を要することなく給電することができる。また、押圧パッド220の近傍に電極部203を配設しているので、定着ベルト200の回転軸方向においても、定着ベルト200に加わる圧力が安定する。また、同様の理由から、給電部材204の偏磨耗を防止することができ、給電部材204と電極部203との接触抵抗を小さく保つことができるので、定着装置100の耐久性を高めることができる。
【0042】
定着ベルト200の回転軸方向において、加圧ローラー210は押圧パッド220よりも短くなっており、かつ、加圧ローラー210は回転軸方向の全域に亘って押圧パッド220に対向している。したがって、定着ベルト200の回転軸方向における何れの端部においても、押圧パッド220は加圧ローラー210よりより端部へ延出している。このような構成をとることによって、加圧ローラー210の回転軸方向の全域に亘って、加圧ローラー210の圧接力を押圧パッド220が受け止めるので、定着ベルト200の局所的な変形をなくして、定着装置100の耐久性を高めることができる。
【0043】
[3] 定着装置の構成とベルト歪量
次に、定着装置の構成とベルト歪量との関係について説明する。
図5は、定着装置の構成とベルト歪量との関係を示す図であって、(a)は従来技術に係る定着装置の構成を示す断面図、(b)はベルト駆動ギア201が無い構成を示す断面図、(c)はベルト駆動ギア201を有する構成を示す断面図、(d)は各構成における定着ベルトの回転軸方向ごとのベルト歪量δを示すグラフである。なお、図5(a)〜(c)において、互いに対応する部材については同じ符号が付されている。
【0044】
また、図5(d)の縦軸はベルト歪量δを表し、横軸は定着ベルトの回転軸方向における位置を表しており、グラフ(a)は従来技術に係る定着ベルトの歪量δを表し、グラフ(b)はベルト駆動ギア201が無い構成における定着ベルトの歪量δを表している。更に、グラフ(c)はベルト駆動ギア201を有する構成における定着ベルトの歪量δである。ベルト歪量δは、定着ベルト200の周方向における押圧パッド220の中央部分に対向する位置における、定着ベルト200の半径方向における変位量であり、図5(d)のグラフにおいては定着ニップにおける変位量をゼロとした。
【0045】
図5(a)に示されるように、従来技術に係る定着装置は定着ベルト200の回転軸方向におけるほぼ全域に亘って、加圧ローラー210が定着ベルト200に圧接している。また、給電部材204を電極部203に向かって付勢されてはいない。このため、図5(d)のグラフ(a)に示されるように、加圧ローラー210に対向する部材ない箇所においては、定着ベルト200の歪量δがベルト歪上限を超えて大きくなり、定着ベルト200の挫屈や破損が生じる。
【0046】
次に、図5(b)においては、定着ベルト200の回転軸方向における加圧ローラー210の長さが押圧パッド220の長さよりも短くて、かつ、加圧ローラー210の全体に亘って押圧パッド220が加圧ローラー210に対向している。したがって、押圧パッド220が定着ベルト200に当接していない箇所において、加圧ローラー210が定着ベルト200に圧接しないので、押圧パッド220が当接しない箇所における定着ベルト200の歪量δを小さく抑えることができる。
【0047】
また、給電部材204は付勢部材206によって電極部203へ向かって付勢されている。これによっても、定着ベルト200が、その半径方向における内側に挫屈するのが防止される一方、定着ベルト200の端部がベルト歪下限に近づくように歪んでしまう。
次に、図5(c)においては、更に、ベルト駆動ギア201が定着ベルト200の両端部に嵌設されている。図2に示したように、ベルト駆動ギア201は、ベアリング202を介してシャフト221に支持されている。従って、定着ベルト200の端部の変位はベルト駆動ギア201によって規制されるので、定着ベルト200の端部の歪量δを小さくすることができる。
【0048】
また、定着ベルト200の端部から定着ニップに至るまでの箇所についても、定着ベルト200の端部と定着ニップとの両方で定着ベルト200の変位が規制されるので、歪量δを小さくすることができる。したがって、定着ベルト200の座屈や損傷を防止することができるので、定着ベルト200の長寿命化を図ることができる。
[4] 変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
【0049】
(1)上記実施の形態においては、不図示の駆動源に回転駆動された加圧ローラー210に定着ベルト200が従動回転する場合について説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでも無く、ベルト駆動ギア201を介して回転駆動された定着ベルト200に加圧ローラー210が従動回転しても良い。また、ベルト駆動ギア201を介して定着ベルト200が回転駆動される場合には、加圧ローラー210に代えて、回転しない固定の加圧部材を用いても良い。
【0050】
(2)上記実施の形態においては、ベルト駆動ギア201が定着ベルト200の回転駆動と座屈防止との2つの用途を兼ねる場合について説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでも無く、ベルト駆動ギア201に代えて、ギア部分を有さない環状部材(フランジ)を定着ベルト200に嵌設しても良い。このようにしても、ベルト駆動ギア201を嵌設した場合と同様に、定着ベルト200の座屈や破損を防止することができる。
【0051】
(3)上記実施の形態においては、給電部材204から電極部203を介して抵抗発熱体層300に給電する場合について説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでも無く、これに代えて、給電部材204から直接抵抗発熱体層300に給電しても良い。ただし、抵抗発熱体層300は薄く、給電部材204との摩擦によって剥離し易いので、その意味において電極部203を設けるのが望ましい。
【0052】
(4)上記実施の形態においては、中間転写方式のカラー画像形成装置を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでも無く、中間天山方式以外のカラー画像形成装置に本発明を適用しても良いし、モノクロ画像形成装置に適用しても良い。また、画像形成装置が、プリンタ装置や複写装置、ファクシミリ装置等の単機能機であるか、これらの機能のうちの複数を兼ね備えた多機能機(MFP: Multi Function Peripheral)であるかに関わらず本発明の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る定着装置及び画像形成装置は、抵抗発熱体方式の定着装置において定着ベルトの破損を防止する装置として有用である。
【符号の説明】
【0054】
1………画像形成装置
100…定着装置
200…定着ベルト
201…ベルト駆動ギア
202…ベアリング
203…電極部
204…給電部材
205…保持板
206…付勢部材
210…加圧ローラー
220…押圧パッド
221…シャフト
231…ギア
232…シャフト
233…ベアリング
300…抵抗発熱体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電によって発熱する抵抗発熱体層を有する無端状の定着ベルトの外周面に対して、加圧部材を圧接させて形成される定着ニップに記録シートを通紙することによってトナー像を定着する定着装置であって、
前記定着ベルトに外囲され、前記加圧部材に対向して固定配置された押圧部材と、
前記定着ベルトの、回転軸方向における両端近傍にそれぞれ配設され、前記定着ベルトの内周面に当接して、前記抵抗発熱体層に給電する一対の給電部材と、を備え、
前記押圧部材は、前記回転軸方向における前記一対の給電部材の内側であって、一方の給電部材の近傍から他方の給電部材の近傍までに亘って定着ベルトに当接しており、
前記加圧部材は、前記回転軸方向において、前記押圧部材の両端よりも内側において定着ベルトに圧接している
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着ベルトの両端部には、環状部材が嵌設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
定着ベルトを回転駆動する駆動源を備え、
前記環状部材は、前記駆動源の回転駆動力を前記定着ベルトに伝達するギアを兼ねている
ことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記押圧部材の前記定着ベルトに当接する面は、前記定着ベルトの回転軸方向において、前記加圧部材に対向する位置では陥凹し、両端部においては突出する滑らかな曲面形状を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記定着ベルトは、内周側に露出しており、前記抵抗発熱体層に電気的に接続された電極部を有しており、
前記抵抗発熱体層は、前記電極部を介して、前記給電部材から給電を受ける
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記給電部材を前記定着ベルトに向かって付勢する付勢部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1から7の何れかに記載の定着装置を備える
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−114128(P2013−114128A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261569(P2011−261569)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】