定着部用積層チューブの成形方法
【課題】成形時に離型性樹脂層に皺が発生することやシリコーンゴム層が破断することを防止し、製造工程を削減して低コストを実現できる定着部用積層チューブの成形方法を提供する。
【解決手段】芯材30の表面に耐熱性樹脂層24を形成し、押出手段から押し出された未加硫のシリコーンゴム36が耐熱性樹脂層24の表面に到達すると芯材30を軸方向に沿って順次移動させることにより耐熱性樹脂層24の全表面にシリコーンゴム層26を形成し、その後、加熱してシリコーンゴム36を硬化させ、押圧手段により離型性樹脂28を拡径して成形型に押し付け、芯材30を離型性樹脂28の径方向内側に挿入した後、離型性樹脂28を加熱して熱収縮させることにより離型性樹脂48とシリコーンゴム36とを一体化させ、シリコーンゴム層26の表面に離型性樹脂層28を形成する各工程を有する。
【解決手段】芯材30の表面に耐熱性樹脂層24を形成し、押出手段から押し出された未加硫のシリコーンゴム36が耐熱性樹脂層24の表面に到達すると芯材30を軸方向に沿って順次移動させることにより耐熱性樹脂層24の全表面にシリコーンゴム層26を形成し、その後、加熱してシリコーンゴム36を硬化させ、押圧手段により離型性樹脂28を拡径して成形型に押し付け、芯材30を離型性樹脂28の径方向内側に挿入した後、離型性樹脂28を加熱して熱収縮させることにより離型性樹脂48とシリコーンゴム36とを一体化させ、シリコーンゴム層26の表面に離型性樹脂層28を形成する各工程を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、ファクシミリ、プリンタ等の装置のトナー画像熱定着部に用いられる定着用又は加圧用の定着部用積層チューブの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真複写機、ファクシミリ及びプリンタ等のトナー画像を形成する印刷機器においては、印刷あるいは複写の最終段階で、記録紙上に形成されたトナー画像のトナーを加熱溶融して記録紙上に定着させる熱定着方式が一般的に使用されている。
【0003】
かかる熱定着方式においては、従来から汎用されている熱ローラ定着法に加えて近年では、フィルム状のエンドレスベルトを使用したフィルム定着方式の熱定着法が提案されている。
【0004】
このエンドレスベルトを使用した定着法では、定着部用のエンドレスベルトを複数のローラ間に掛け渡し、その外側表面の所定位置に別の定着部用ゴムローラを圧接させ、その圧接位置のエンドレスベルトの内側にベルトに接してヒータが配置される。そして、エンドレスベルトとローラを回転させつつその間をトナー粉末画像が形成された記録紙を通過させ、トナーを記録紙上に融着させる。この定着方法では、薄いフィルム状のベルトの実質的に圧接部分のみをヒータにより直接加熱するので電源投入時の待ち時間がほぼゼロになり、このことからオンデマンド方式の熱定着法と呼ばれている。
【0005】
オンデマンド方式の熱定着法には上記のような機構を使用することから、これに用いられるエンドレスベルトには十分な耐熱性、弾性、強度、ベルト内面の絶縁性、ベルト外面の離型性等が要求される。そしてこれに答えるものとして、耐熱性樹脂からなる内側層と、離型性を有する樹脂からなる外側層の2層から構成された定着部用積層チューブからなるベルトが一般に使用されている。
【0006】
ところで、このような定着部用積層チューブでは、フッ素樹脂等の離型性樹脂からなる外側層の剛性によりトナー粒子が押し潰され、画像の解像度が低下するという問題があった。
一方、耐熱性樹脂層の上に剛性の問題のない層、例えばシリコーンゴム層等を使用すると、トナーとの離型性を確保するために別の手段が必要となる。
【0007】
このため、離型性樹脂層の剛性によりトナーが潰されることのない、熱定着法による画像定着に使用される定着部用積層チューブが提案されている。
すなわち、耐熱性樹脂層上にシリコーンゴム層及び離型性樹脂層をこの順に設けてなる定着部用積層チューブであって、シリコーンゴム層の厚さ0.2〜1.5mmであり、その圧縮永久歪が、180℃、22時間の25%圧縮で、20%以下であり、離型性樹脂層がフッ素樹脂を主成分とするチューブをシリコーンゴム層上に被着することにより形成した定着部用積層チューブが知られている。
この定着部用積層チューブによれば、耐熱性樹脂層と離型性樹脂層との間にシリコーンゴム層を設けることにより、離型性樹脂層の剛性が緩和されるため、離型性樹脂層の剛性によりトナーが潰されることを防止でき、ひいては解像度の低下を防止できる。
【0008】
ここで、上記定着部用積層チューブの製造方法について説明する。
図16に示すように、成形されるフィルムの外径を有する円筒形の金型100の空洞内に、フッ素樹脂チューブ102を通し、その両端を金型100の外側に折り返し、またその中に耐熱性樹脂層104を設けた芯体106を金型100と同心状に配置し、金型蓋体108を金型100の両端にはめ込むことによりフッ素樹脂チューブ102及び耐熱性樹脂層104を設けた芯体106を固定する。このとき、金型100に孔を設け、そこから吸引することによりフッ素樹脂チューブ102を金型100に密着させる。その後、空気排出口110から内部の空気を外部に排出させると同時に、金型蓋体108の樹脂注入口112からフッ素樹脂チューブ102と耐熱性樹脂層104を設けた芯体106との間にシリコーンゴム前駆体を注入し、金型100内でフッ素樹脂チューブ102と耐熱性樹脂層104との間の空間が満たされる。そして、全体を加熱することにより、シリコーンゴム前駆体を架橋して硬化させた(一次加硫)後、一体化した芯体106、耐熱性樹脂層104、シリコーンゴム層及びフッ素樹脂102からなる離型性樹脂層を金型100から取り出し、さらに加熱して架橋させて(二次加硫)、その後、芯体106を除去することにより、定着部用積層チューブが製造される。
【特許文献1】特許第3051085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した定着部用積層チューブの製造方法では、加硫されてはいるもののそれだけでは接着性が十分ではないため、耐熱性樹脂層の表面及び離型性樹脂層の表面に接着剤を別途塗布しなければ、耐熱性樹脂層及び離型性樹脂層からシリコーンゴム層が剥離してしまうおそれがある。加えて、耐熱性樹脂層の表面及び離型性樹脂層の表面に接着剤を塗布した場合、接着剤の塗布量にバラツキが生じれば、それにより接着強度にもバラツキが生じてしまい、定着部用積層チューブの品質が低下するおそれがある。また、接着剤の塗布工程を別途設けることにより、定着部用積層チューブの製造方法が複雑化し、コスト高の原因となる問題がある。
【0010】
さらに、シリコーンゴム前駆体を注入する際に、シリコーンゴム前駆体によりフッ素樹脂からなる離型性樹脂層が押圧されて離型性樹脂層に皺が発生する問題がある。離型性樹脂層に皺が発生すると、定着部用積層チューブを金型から取り出す際に、シリコーンゴム層と離型性樹脂層との間で剥離が生じ、シリコーンゴム層で破断が生じるおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、定着部用積層チューブの成形時に離型性樹脂層に皺が発生することやシリコーンゴム層が破断することを防止し、製造工程を削減して低コストを実現できる定着部用積層チューブの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、芯材の表面に耐熱性樹脂からなる耐熱性樹脂層を形成する第1工程と、押出手段から押し出された未加硫のシリコーンゴムが前記耐熱性樹脂層の表面に到達すると前記芯材を軸方向に沿って順次移動させることにより前記耐熱性樹脂層の全表面にシリコーンゴム層を形成し、その後、加熱して前記シリコーンゴムを硬化させる第2工程と、押圧手段により離型性樹脂を拡径して成形型に押し付け、前記第2工程を経た前記芯材を前記離型性樹脂の径方向内側に挿入した後、前記離型性樹脂を加熱して熱収縮させることにより前記離型性樹脂と前記シリコーンゴムとを一体化させ、前記シリコーンゴム層の表面に離型性樹脂層を形成する第3工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記シリコーンゴムには、前記耐熱性樹脂層又は/及び前記離型性樹脂層との接着力を向上させる接着剤が含まれていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記耐熱性樹脂層の表面には、前記シリコーンゴム層との接着力を向上させる接着剤が塗布されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記第2工程では、前記芯材がガイド手段にガイドされて移動し、前記芯材の移動と共に前記シリコーンゴムの厚みが厚み調整手段により調整されることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記押圧手段は、内部に空気を供給することにより膨張するように構成され、前記離型性樹脂は、膨張した前記押圧手段により前記成形型に押し付けられることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブにおいて、前記離型性樹脂は、空気吸引手段による空気吸引力により前記成形型に固定されていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記離型性樹脂は、複数の孔が形成された弾性部材を介して前記成形型に押し付けられることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記芯材は、熱伝導率の高い部材で構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記芯材は、アルミニウムで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、第1工程において、芯材の表面に耐熱性樹脂が接着されて耐熱性樹脂層が形成される。第2工程において、押出手段から押し出された未加硫のシリコーンゴムが耐熱性樹脂層の表面に到達すると芯材を軸方向に沿って順次移動させることにより耐熱性樹脂層の全表面にシリコーンゴム層が形成され、その後、加熱されてシリコーンゴムが硬化させられる。次に、第3工程において、押圧手段により離型性樹脂が拡径されて成形型に押し付けられ、第2工程を経た芯材が離型性樹脂の径方向内側に挿入された後、離型性樹脂が加熱されて熱収縮させられることにより離型性樹脂とシリコーンゴムとが一体化させられる。これにより、シリコーンゴム層の表面に離型性樹脂層が形成される。
上述したように、定着部用積層チューブの成形方法によれば、第2工程において、押出手段により押し出されたシリコーンゴムの先端部が芯材に形成された耐熱性樹脂層の表面に到達すると、シリコーンゴムが芯材の移動により耐熱性樹脂層の全表面を被覆するため、従来技術の定着部用積層チューブの製造方法と異なり、シリコーンゴム自体を耐熱性樹脂層の全表面に亘って移動(流動)させる必要がない。これにより、シリコーンゴムを耐熱性樹脂層の全表面に亘って略均一に被覆させることができ、シリコーンゴム層の厚みのバラツキを抑制することができる。
また、従来技術の定着部用積層チューブの製造方法のように耐熱性樹脂層と離型性樹脂層との間のクリアランスにシリコーンゴムを注入する技術と異なり、シリコーンゴム層を形成するときに、シリコーンゴムが離型性樹脂に接触することがないため、離型性樹脂がシリコーンゴムに押圧されて、離型性樹脂に皺が発生することがない。これにより、離型性樹脂層とシリコーンゴム層との間に剥離が生じてシリコーンゴム層が破断することを防止でき、定着部用積層チューブの品質の低下を防止することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、シリコーンゴムには接着剤が含まれているため、耐熱性樹脂層又は/及び離型性樹脂層との接着力を向上させることができる。これにより、別途、耐熱性樹脂層や離型性樹脂層に接着剤を塗布する塗布工程が不要となる。接着剤の塗布工程が不要となるため、定着部用積層チューブの成形方法の工程数を削減でき、成形コストを低減することができる。
また、シリコーンゴムには接着剤が含まれているため、従来技術のように接着剤の塗布量にバラツキが生じるおそれがなく、接着強度にもバラツキが生じるおそれもない。このため、定着部用積層チューブの品質が低下することを防止できる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、耐熱性樹脂層の表面には接着剤が塗布されているため、シリコーンゴム層との接着力を格段に向上させることができる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、第2工程では、芯材がガイド手段にガイドされて移動するため、芯材の移動と直交する方向に芯材が位置ズレすることがない。このため、定着部用積層チューブの成形方法で定着部用積層チューブを量産する場合、各定着部用積層チューブ間において、耐熱性樹脂層の全表面に形成されるシリコーンゴム層を略均一にすることができる。この結果、定着部用積層チューブの成形方法で量産される定着部用積層チューブの品質を略一定に保つことができる。
また、芯材の移動と共にシリコーンゴムの厚みが厚み調整手段により調整されるため、シリコーンゴム層の厚みを一定にすることができる。これにより、シリコーンゴム層の厚みにバラツキが生じることを防止でき、バラツキによる各層間での剥離を防止できるため、定着部用積層チューブの品質が低下することがない。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、内部に空気を供給することにより押圧手段が膨張し、この膨張した押圧手段により離型性樹脂が成形型に押し付けられるため、押圧手段を簡易な構成にすることができ、容易に離型性樹脂を成形型に押し付けることができる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、空気吸引手段による空気吸引力により離型性樹脂が成形型に固定されているため、離型性樹脂を確実に位置決めすることができる。これにより、離型性樹脂とシリコーンゴムとの接着時に離型性樹脂が成形型に対して位置ズレすることを防止でき、離型性樹脂とシリコーンゴムとの接着精度が低下することを防止できる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、離型性樹脂は複数の孔が形成された弾性部材を介して成形型に押し付けられるため、押圧手段からの押圧力の大きさに多少の差が生じても、弾性部材が離型性樹脂に作用する押圧力により弾性変形するため、押圧力の差を吸収することができる。これにより、離型性樹脂に生じる押圧力を実質的に略均等にすることができ、離型性樹脂の一部に皺が生じることを防止でき、定着部用積層チューブの品質が低下してしまうことを防止できる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、芯材が熱伝導率の高い部材で構成されているため、耐熱性樹脂とシリコーンゴムとを熱硬化させるときに、芯材の全表面に亘って熱が迅速に伝導し、耐熱性樹脂とシリコーンゴムを斑なく加熱させることができる。これにより、熱硬化時に、耐熱性樹脂やシリコーンゴムに部分的な温度変化が生じてしまうことを防止でき、定着部用積層チューブの品質の低下を防止できる。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、芯材がアルミニウムで構成されているため、芯材の熱伝導率を高くすることができると共に、芯材を軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の第1実施形態に係る定着部用積層チューブの成形方法について、図面を参照して説明する。
【0031】
先ず、定着部用積層チューブの成形に用いられる定着部用積層チューブ成形治具について説明する。
図1及び図2に示すように、定着部用積層チューブ成形治具(以下、適宜「成形治具」と称する。)10は、円柱状の成形治具本体12を備えている。この成形治具本体12の内部には、空気を流動させるための空気路14が形成されている。また、成形治具本体12の外周面には、空気路14と連通し空気が流動する空気流動溝16が複数形成されている。この空気流動溝16は、成形治具本体12の外周面に亘って形成されているが、これに限られることはなく、外周面の一部に形成されていてもよい。また、空気流動溝16は複数形成されている構成に限られることはなく、外周面に少なくとも1つ形成されていればよい。
また、成形治具本体12の外周面には、ゴムで構成された膨張部材(ゴム部材)18が取り付けられている。この膨張部材18は、チューブ状(円柱状)に形成されており、成形治具本体12の外周面に巻き付けられるようにして設けられている。また、成形治具本体12の外周面に巻き付けられた膨張部材18の上下両端部には、留め部材20が取り付けられており、膨張部材18が成形治具本体12に対して強固に固定されている。この留め部材20により膨張部材18が固定されているため、膨張部材18が膨張する際に、膨張部材18が成形治具本体12に対して位置ズレすることがなく、また、留め部材20により膨張部材18の上下両端部と成形治具本体12とに隙間が生じることがないため、空気が外部に漏れてしまうことを防止できる。
なお、成形治具本体12には、空気路14及び空気流動溝16に空気を供給するための空気供給手段(図示省略)が接続されており、また、空気路14及び空気流動溝16から空気を外部に排出するための空気吸引手段(図示省略)が接続されている。
以上のように、空気供給手段により成形治具本体12の空気路14に空気が供給されると、空気が空気路14を通って空気流動溝16に流入し、やがて成形治具本体12の外周面と膨張部材18との間に到達する。さらに、空気供給手段により空気を供給し続けると、空気圧により膨張部材18が径方向外側に膨張する。
一方、空気吸引手段により成形治具本体12の内部の空気が外部に排出されると、膨張部材18が空気圧で内側から押圧されないため、その弾性力により元の状態に戻る。
【0032】
次に、本発明の定着部用積層チューブの成形方法により成形される定着部用積層チューブについて説明する。
図3に示すように、定着部用積層チューブ22は、最下層として耐熱性樹脂で構成された耐熱性樹脂層24を備えている。この耐熱性樹脂層24を構成する耐熱性樹脂として、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド等の熱硬化性のものが用いられる。
さらに、これらの樹脂単体では熱伝導率が低いので、絶縁性で熱伝導性の無機粒子を含有させることが好ましい。このような熱伝導性無機粒子として、例えば、窒化ホウ素、アルミナ、炭化ケイ素、チタン酸カリウム、窒化アルミ、マイカ、シリカ、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム等がある。これらの物質は2種以上の混合物としても使用することができる。
また、耐熱性樹脂層24の厚みは、15μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0033】
また、定着部用積層チューブ22は、中間層としてシリコーンゴムで構成されたシリコーンゴム層26を備えている。このシリコーンゴム層26は、後述するように、耐熱性樹脂層24に接着されて耐熱性樹脂層24に積層されるように形成されている。
シリコーンゴム層26を構成するシリコーンゴムとして、ジフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等のジオルガノポリシロキサンを前駆体として形成された通常のシリコーンゴムを用いることができ、特に、液状の付加反応型シリコーンゴムを前駆体として形成されたものが好ましい。
上記のような付加型シリコーンゴムは、メチル基及びフェニル基の他に付加型反応基、例えば、ビニル基を有するシロキサン化合物から得られたポリシロキサンであり、付加型反応性基とシラン架橋剤との付加開裂反応により架橋されるものである。
また、シリコーンゴムの硬化後の硬度は40度以下であることが好ましい。
また、シリコーンゴム層26の厚みは、30μm以上600μm以下であることが好ましい。
【0034】
さらに、定着部用積層チューブ22は、最上層として離型性樹脂で構成された離型性樹脂層28を備えている。この離型性樹脂層28は、後述するように、シリコーンゴム層26に接着されてシリコーンゴム層26に積層されるように形成されている。この離型性樹脂層28を構成する離型性樹脂として、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)等が挙げられる。
また、離型性樹脂層28の厚みは、5μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0035】
次に、本発明の定着部用積層チューブの成形方法について説明する。
【0036】
図4に示すように、円筒状の金属製(例えばアルミニウム)の芯材30に、ポリイミドチューブ(以下、適宜「PIチューブ」と称する)32が装着される。このPIチューブ32は、耐熱性樹脂(例えばポリイミド等)を含んだワニスを円筒形の金属芯体(図示省略)に塗布し、ダイスを金属芯体にはめて自然落下させて塗布膜を形成し、これにより得られた塗布膜を加熱して(300℃、30分間)、冷却後、金属芯体を引き抜くことにより、生成される。
なお、芯材30をアルミニウムで構成することにより、後述するように、耐熱性樹脂24(PIチューブ32)とシリコーンゴム36(図6参照)とを熱硬化させるときに、芯材30の全表面に亘って熱が迅速に伝導し、耐熱性樹脂24(PIチューブ32)とシリコーンゴム36を斑なく加熱させることができる。これにより、熱硬化時に、耐熱性樹脂24(PIチューブ32)やシリコーンゴム36に部分的な温度変化が生じてしまうことを防止でき、定着部用積層チューブ22の品質の低下を防止できる。また、芯材30をアルミニウムで構成することにより、芯材30を軽量にすることができる。
【0037】
次に、図5に示すように、芯材30に装着されたPIチューブ32の表面に接着剤34が塗布される。
ここで、PIチューブ32への接着剤34の塗布は、後述のようにシリコーンゴム36に接着剤が含有されているため、必ずしも必要ではないが、PIチューブ32に接着剤34を塗布した場合には、シリコーンゴム36とPIチューブ32との接着力を大幅に向上させることができる。
また、シリコーンゴム36に接着剤が含有されているため、PIチューブ32に接着剤34を塗布しない場合でも、シリコーンゴム36とPIチューブ32との接着力に何ら問題はないばかりか、PIチューブ32への接着力の塗布工程を省略することができ、定着部用積層チューブ22の成形に要する時間を短縮することができ、さらには定着部用積層チューブ22の成形に要するコストを低減することができる。
また、シリコーンゴム36に接着剤が含有されている場合、十分な接着力が得られるため、耐熱性樹脂層24や離型性樹脂層28に接着剤34を塗布する必要が無い。これにより、接着剤34の塗布量にバラツキが生じることがなく、定着部用積層チューブ22の品質が低下することを防止できる。
【0038】
次に、図6に示すように、芯材30に装着したPIチューブ32の表面にシリコーンゴム36が被覆され、シリコーンゴム層26が形成される。
ここで、PIチューブ32の表面にシリコーンゴム36が被覆される際には、所定の押出成形装置38が用いられる。すなわち、図6に示すように、押出成形装置38は、円筒状に形成され芯材30の軸方向の移動をガイドするガイド部材(ガイド手段)40と、ガイド部材40との間に未加硫のシリコーンゴム36が流動する空間部Mを形成しPIチューブ32の表面に被覆されたシリコーンゴム36の厚みを調整する口金部材(厚み調整手段)42と、前記空間部Mに未加硫のシリコーンゴム36を押し出す押出機(押出手段)44と、芯材30を押圧してその軸方向に移動させる芯材駆動手段(図示省略)と、で構成されている。なお、押出機44により押し出されるシリコーンゴム36には接着剤が含まれている。このシリコーンゴム36として、信越化学社製のX−30−3771−U等がある。
上記押出成形装置38によれば、ガイド部材40の内部(内側)にPIチューブ32が装着された芯材30が挿入される。このとき、芯材30の一方の端部が口金部材42の端部近傍に位置するように設定される。押出機44により未加硫のシリコーンゴム36が押し出されると、このシリコーンゴム36が空間部Mを流動していき、やがてPIチューブ32の表面に到達する。シリコーンゴム36の先端部がPIチューブ32の表面に到達すると、シリコーンゴム36に接着剤が含まれており、またPIチューブ32の表面に接着剤34が塗布されているため、PIチューブ32の先端部とシリコーンゴム36とが強固に接着する。PIチューブ32の先端部とシリコーンゴム36とが強固に接着した状態で、芯材駆動手段により芯材30が矢印X方向に押圧される。芯材駆動手段により芯材30が押圧されると、芯材30が口金部材42から押し出されるように軸方向に順次移動していく。このように、芯材30の他方の端部が口金部材42の端部近傍に位置するまで芯材30が移動すると、PIチューブ32の全表面にシリコーンゴム36が接着しシリコーンゴム層26が形成される。
ここで、芯材30はガイド部材40によりガイドされながら軸方向(図6中矢印X方向及びその反対方向)に移動するため、芯材30が軸方向に対して直交する方向(図6中矢印Y方向)に位置ズレすることがない。このため、定着部用積層チューブ22の成形方法で定着部用積層チューブ22を量産する場合、量産される各定着部用積層チューブ22間において、耐熱性樹脂層24の全表面に形成されるシリコーンゴム層26を略均一にすることができる。この結果、定着部用積層チューブ22の成形方法で量産される定着部用積層チューブ22の品質を略一定に保つことができる。
また、芯材30の移動と共にシリコーンゴム36の厚みが口金部材42により調整されるため、シリコーンゴム層26の厚みを一定にすることができる。これにより、シリコーンゴム層26の厚みにバラツキが生じることを防止でき、このバラツキによる各層24、26、28間での剥離を防止できるため、定着部用積層チューブ22の品質が低下することがない。
【0039】
次に、図7に示すように、PIチューブ32の表面にシリコーンゴム層26が形成されると、PIチューブ32とシリコーンゴム層26を備えた芯材30が電気炉46に入れられ、加熱される(140℃、30分間)。これにより、シリコーンゴム36が加硫・硬化して、シリコーンゴム36とPIチューブ32との接着がより強固になる。この結果、後述のように、離型性樹脂層28(PFA48)を形成する際に、耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)とシリコーンゴム層26との間で剥離や位置ズレが生じることを防止できる。
【0040】
一方、図8に示すように、離型性樹脂層28を構成する離型性樹脂(例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン重合体(PFA48))が成形型50の内側にセッティングされる。このPFA48として、厚木ヒューテック社製の7BG1391等が挙げられる。
ここで、図8に示すように、成形型50は、円筒状に形成されており、その内周面には複数の孔が形成された微細孔素材(例えば、セラミック、硬度スポンジなど)52が取り付けられている。また、成形型50には空気吸引ポンプ54が接続されており、成形型50の内側の空気を微細孔素材52の孔を通して吸引することができるように構成されている。また、成形型50は、固定治具51(図1参照)により固定されている。
なお、微細孔素材52は、ゴムなどの弾性部材で構成されていてもよい。微細孔素材52をゴムなどの弾性部材で構成することにより、膨張部材18からの押圧力の大きさに多少の差が生じても、微細孔素材52がPFA48に作用する押圧力により弾性変形するため、押圧力の差を吸収することができる。これにより、PFA48に生じる押圧力を実質的に略均等にすることができ、PFA48の一部に皺が生じることを防止でき、定着部用積層チューブ22の品質が低下してしまうことを防止できる。
【0041】
次に、図9に示すように、PFA48の径方向内側に上述した成形治具10が挿入される。このとき、膨張部材18がPFA48に対向するように成形治具10が配置される。なお、成形治具10は、固定治具51(図1参照)で固定される。
【0042】
次に、図1及び図10に示すように、空気供給手段により成形治具本体12の空気路14に空気が供給される。空気路14に空気が供給されると、空気が空気流動溝16を流動し成形治具本体12の外周面と膨張部材18との間に流入する。さらに、空気供給手段により空気を供給し続けると、膨張部材18が空気圧により径方向外側に押圧されて膨張する。この膨張した膨張部材18によりPFA48が拡径させられ微細孔素材52に押し付けられる。このとき、空気が成形治具本体12の外周面に略均等に流入しているため、膨張部材18のほとんどあらゆる部分で膨張率も略同一となり、PFA48の全押圧面での膨張部材18からの押圧力が略均等(略一定)になる。これにより、PFA48は均等に拡径させられ、その少なくとも一部に皺が生じることがない。この結果、離型性樹脂28(PFA48)に皺がない状態でシリコーンゴム36と接着させることができ、離型性樹脂層28とシリコーンゴム層26との間で剥離が生じることを防止できる。
特に、膨張部材18の押圧力が離型性樹脂28(PFA48)の全押圧面に亘って一定であるため、離型性樹脂28(PFA48)への押圧力の差により離型性樹脂28(PFA48)の一部に皺が生じることを効果的に防止できる。
また、膨張部材18を空気圧により膨張させるという簡易な構成で、PFA48を微細孔素材52に容易に押し付けることができる。
一方、PFA48が微細孔素材52に押し付けられる際に、空気吸引ポンプ54により空気が吸引される。空気吸引ポンプ54により空気が吸引されると、成形型50の内側の空気が微細孔素材52の孔を通って成形型の外側に流入するため、PFA48が微細孔素材52(成形型50)に強固に固定される。これにより、PFA48が微細孔素材52(成形型50)に位置決めされる。この結果、PFA48とシリコーンゴム36との接着精度が低下することを防止できる。
特に、空気吸引ポンプ54の空気吸引力がPFA48の全押圧面に亘って一定とすることにより、PFA48の微細孔素材52(成形型50)に対して強固に固定することができ、PFA48の位置決め精度を大幅に高めることができる。
なお、PFA48が微細孔素材52に位置決めされると、空気吸引手段により成形治具本体12の内部に流入した空気が外部に吸引される。これにより、膨張部材18がその弾性力により元の状態に戻り、成形治具10が収縮する。成形治具10が収縮すると、成形型50の内部から成形治具10が取り出される。
【0043】
次に、図11に示すように、微細孔素材52に位置決めされたPFA48の内側表面(接着面)には、潤滑性と接着性を備えた潤滑剤56が塗布される。このときも、空気吸引ポンプ54が作動しており、PFA48が微細孔素材48(成形型50)に位置決めされている。
また、シリコーンゴム層26の表面(接着面)にも、同様に、潤滑性と接着性を備えた潤滑剤56が塗布される。この潤滑剤56として、例えば、東レ・ダウコーニング社製SE9187L、SE9186、SE9140、SE1714等がある。
【0044】
次に、図12に示すように、微細孔素材52に固定されたPFA48の内側に、PIチューブ32とシリコーンゴム層26を備えた芯材30が挿入される。このとき、シリコーンゴム層26とPFA48とのクリアランスは通常約1mmしかないため、PFA48の内側表面とシリコーンゴム層26の表面に塗布された潤滑剤56により、PFA48と取りコーンゴム層26との間の挿入抵抗を大幅に低減でき、極めて円滑に芯材30を挿入することができる。また、接着性を備えた潤滑剤56によりシリコーンゴム36とPFA48を強固に接着させることができる。
なお、このときも、空気吸引ポンプ54が作動しており、PFA48が微細孔素材52(成形型50)に位置決めされている。
【0045】
次に、図12に示すように、微細孔素材52に固定されたPFA48の内側に、耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)とシリコーンゴム層26が形成された芯材30が挿入された後、空気吸引ポンプ54の作動が停止される。これによりPFA48が微細孔素材52から容易に取り外すことが可能となる。
このように、微細孔素材52から取り外したPFA48がシリコーンゴム層26の表面を被覆することにより、離型性樹脂層28が形成される。
【0046】
次に、図13に示すように、耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)とシリコーンゴム層26(シリコーンゴム36)と離型性樹脂層28(PFA48)がそれぞれ形成された芯材30が、電気炉46に入れられ、加熱される(150℃〜200℃、30分間)。この加熱により、PFA48が熱収縮し、PFA48とシリコーンゴム層26とが強固に接着し、一体化する。
ここで、離型性樹脂28(PFA48)の接着面は、シリコーンゴム36との接着性を向上させるために、エッチングしておくことが好ましい。エッチングは、従来から知られている方法で行うことができ、例えばナトリウム・ナフタレン法、液体アンモニウム法等の化学的方法、エキシマーレーザーエッチング法、低温プラズマ法等の物理的方法により行うことができる。
特に、離型性樹脂28(PFA48)の厚みが薄い場合には、物理的方法によるエッチングが適している。
【0047】
次に、図14及び図15に示すように、PFA48が熱収縮した後、芯材30だけが引き抜かれ、定着部用積層チューブ22が成形される。
【0048】
以上の定着部用積層チューブ22の成形方法により、耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)と、シリコーンゴム層26(シリコーンゴム36)と、離型性樹脂層28(PFA48)と、からなる定着部用積層チューブ22が成形される。
特に、本発明の定着部用積層チューブ22の成形方法によれば、シリコーンゴム36が芯材30の移動により耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)の全表面に被覆するため、従来技術の定着部用積層チューブの製造方法と異なり、シリコーンゴム自体を耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)の全表面に亘って移動(流動)させる必要がない。これにより、シリコーンゴム36を耐熱性樹脂層24の全表面に亘って略均一に被覆させることができ、シリコーンゴム層26の厚みのバラツキを抑制することができる。
また、従来技術の定着部用積層チューブの製造方法のように耐熱性樹脂層と離型性樹脂層との間のクリアランスにシリコーンゴムを注入する技術と異なり、本発明の定着部用積層チューブ22の成形方法によりシリコーンゴム層26を形成するときに、硬化前のシリコーンゴム36がPFA48に接触することがないため、PFA48がシリコーンゴム36に押圧されて、PFA48に皺が発生することがない。これにより、離型性樹脂層28とシリコーンゴム層26との間に剥離が生じてシリコーンゴム層26が破断することを防止でき、定着部用積層チューブ22の品質の低下を防止することができる。
【0049】
また、本発明の定着部用積層チューブ成形治具10によれば、耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)の表面にシリコーンゴム層26が形成された後、膨張部材18の内部に空気が供給されて膨張部材18が膨張し、この膨張した膨張部材18によりPFA48が成形型50に押し付けられる。これにより、PFA48に皺が生じることを防止できる。また、皺がないPFA48にシリコーンゴム36を接着させることにより、離型性樹脂層28とシリコーンゴム層26との間で剥離が生じることを防止でき、定着部用積層チューブ22の品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係る定着部用積層チューブ成形治具の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る定着部用積層チューブ成形治具の部分的な拡大図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る定着部用積層チューブの成形方法により成形される定着部用積層チューブの部分的な断面図である。
【図4】芯体に耐熱性樹脂層が形成される工程図である。
【図5】耐熱性樹脂層に接着剤が塗布される工程図である。
【図6】耐熱性樹脂層にシリコーンゴム層が形成される工程図である。
【図7】耐熱性樹脂層とシリコーンゴム層を備えた芯体が電気炉で加熱される工程図である。
【図8】成形型の内側に離型性樹脂をセッティングした工程図である。
【図9】離型性樹脂の内側に定着部用積層チューブ成形治具を挿入した工程図である。
【図10】定着部用積層チューブ成形治具により離型性樹脂を押圧した工程図である。
【図11】離型性樹脂が成形型に位置決めされた工程図である。
【図12】成形型に位置決めされた離型性樹脂の内側に耐熱性樹脂層とシリコーンゴム層を備えた芯体が挿入される工程図である。
【図13】耐熱性樹脂層とシリコーンゴム層と離型性樹脂層を備えた芯体が電気炉で加熱される工程図である。
【図14】芯体が引き抜かれる工程図である。
【図15】芯体が引き抜かれて定着部用積層チューブが成形された工程図である。
【図16】従来の定着部用積層チューブを成形する工程図である。
【符号の説明】
【0051】
10 定着部用積層チューブ成形治具(押圧手段)
18 膨張部材(ゴム部材)
22 定着部用積層チューブ
24 耐熱性樹脂層
26 シリコーンゴム層
28 離型性樹脂層
30 芯材
32 PIチューブ(耐熱性樹脂)
36 シリコーンゴム
40 ガイド部材(ガイド手段)
44 押出機(押出手段)
50 成形型
48 PFA(離型性樹脂)
52 微細孔素材(弾性部材)
54 空気吸引ポンプ(空気吸引手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、ファクシミリ、プリンタ等の装置のトナー画像熱定着部に用いられる定着用又は加圧用の定着部用積層チューブの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真複写機、ファクシミリ及びプリンタ等のトナー画像を形成する印刷機器においては、印刷あるいは複写の最終段階で、記録紙上に形成されたトナー画像のトナーを加熱溶融して記録紙上に定着させる熱定着方式が一般的に使用されている。
【0003】
かかる熱定着方式においては、従来から汎用されている熱ローラ定着法に加えて近年では、フィルム状のエンドレスベルトを使用したフィルム定着方式の熱定着法が提案されている。
【0004】
このエンドレスベルトを使用した定着法では、定着部用のエンドレスベルトを複数のローラ間に掛け渡し、その外側表面の所定位置に別の定着部用ゴムローラを圧接させ、その圧接位置のエンドレスベルトの内側にベルトに接してヒータが配置される。そして、エンドレスベルトとローラを回転させつつその間をトナー粉末画像が形成された記録紙を通過させ、トナーを記録紙上に融着させる。この定着方法では、薄いフィルム状のベルトの実質的に圧接部分のみをヒータにより直接加熱するので電源投入時の待ち時間がほぼゼロになり、このことからオンデマンド方式の熱定着法と呼ばれている。
【0005】
オンデマンド方式の熱定着法には上記のような機構を使用することから、これに用いられるエンドレスベルトには十分な耐熱性、弾性、強度、ベルト内面の絶縁性、ベルト外面の離型性等が要求される。そしてこれに答えるものとして、耐熱性樹脂からなる内側層と、離型性を有する樹脂からなる外側層の2層から構成された定着部用積層チューブからなるベルトが一般に使用されている。
【0006】
ところで、このような定着部用積層チューブでは、フッ素樹脂等の離型性樹脂からなる外側層の剛性によりトナー粒子が押し潰され、画像の解像度が低下するという問題があった。
一方、耐熱性樹脂層の上に剛性の問題のない層、例えばシリコーンゴム層等を使用すると、トナーとの離型性を確保するために別の手段が必要となる。
【0007】
このため、離型性樹脂層の剛性によりトナーが潰されることのない、熱定着法による画像定着に使用される定着部用積層チューブが提案されている。
すなわち、耐熱性樹脂層上にシリコーンゴム層及び離型性樹脂層をこの順に設けてなる定着部用積層チューブであって、シリコーンゴム層の厚さ0.2〜1.5mmであり、その圧縮永久歪が、180℃、22時間の25%圧縮で、20%以下であり、離型性樹脂層がフッ素樹脂を主成分とするチューブをシリコーンゴム層上に被着することにより形成した定着部用積層チューブが知られている。
この定着部用積層チューブによれば、耐熱性樹脂層と離型性樹脂層との間にシリコーンゴム層を設けることにより、離型性樹脂層の剛性が緩和されるため、離型性樹脂層の剛性によりトナーが潰されることを防止でき、ひいては解像度の低下を防止できる。
【0008】
ここで、上記定着部用積層チューブの製造方法について説明する。
図16に示すように、成形されるフィルムの外径を有する円筒形の金型100の空洞内に、フッ素樹脂チューブ102を通し、その両端を金型100の外側に折り返し、またその中に耐熱性樹脂層104を設けた芯体106を金型100と同心状に配置し、金型蓋体108を金型100の両端にはめ込むことによりフッ素樹脂チューブ102及び耐熱性樹脂層104を設けた芯体106を固定する。このとき、金型100に孔を設け、そこから吸引することによりフッ素樹脂チューブ102を金型100に密着させる。その後、空気排出口110から内部の空気を外部に排出させると同時に、金型蓋体108の樹脂注入口112からフッ素樹脂チューブ102と耐熱性樹脂層104を設けた芯体106との間にシリコーンゴム前駆体を注入し、金型100内でフッ素樹脂チューブ102と耐熱性樹脂層104との間の空間が満たされる。そして、全体を加熱することにより、シリコーンゴム前駆体を架橋して硬化させた(一次加硫)後、一体化した芯体106、耐熱性樹脂層104、シリコーンゴム層及びフッ素樹脂102からなる離型性樹脂層を金型100から取り出し、さらに加熱して架橋させて(二次加硫)、その後、芯体106を除去することにより、定着部用積層チューブが製造される。
【特許文献1】特許第3051085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した定着部用積層チューブの製造方法では、加硫されてはいるもののそれだけでは接着性が十分ではないため、耐熱性樹脂層の表面及び離型性樹脂層の表面に接着剤を別途塗布しなければ、耐熱性樹脂層及び離型性樹脂層からシリコーンゴム層が剥離してしまうおそれがある。加えて、耐熱性樹脂層の表面及び離型性樹脂層の表面に接着剤を塗布した場合、接着剤の塗布量にバラツキが生じれば、それにより接着強度にもバラツキが生じてしまい、定着部用積層チューブの品質が低下するおそれがある。また、接着剤の塗布工程を別途設けることにより、定着部用積層チューブの製造方法が複雑化し、コスト高の原因となる問題がある。
【0010】
さらに、シリコーンゴム前駆体を注入する際に、シリコーンゴム前駆体によりフッ素樹脂からなる離型性樹脂層が押圧されて離型性樹脂層に皺が発生する問題がある。離型性樹脂層に皺が発生すると、定着部用積層チューブを金型から取り出す際に、シリコーンゴム層と離型性樹脂層との間で剥離が生じ、シリコーンゴム層で破断が生じるおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、定着部用積層チューブの成形時に離型性樹脂層に皺が発生することやシリコーンゴム層が破断することを防止し、製造工程を削減して低コストを実現できる定着部用積層チューブの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、芯材の表面に耐熱性樹脂からなる耐熱性樹脂層を形成する第1工程と、押出手段から押し出された未加硫のシリコーンゴムが前記耐熱性樹脂層の表面に到達すると前記芯材を軸方向に沿って順次移動させることにより前記耐熱性樹脂層の全表面にシリコーンゴム層を形成し、その後、加熱して前記シリコーンゴムを硬化させる第2工程と、押圧手段により離型性樹脂を拡径して成形型に押し付け、前記第2工程を経た前記芯材を前記離型性樹脂の径方向内側に挿入した後、前記離型性樹脂を加熱して熱収縮させることにより前記離型性樹脂と前記シリコーンゴムとを一体化させ、前記シリコーンゴム層の表面に離型性樹脂層を形成する第3工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記シリコーンゴムには、前記耐熱性樹脂層又は/及び前記離型性樹脂層との接着力を向上させる接着剤が含まれていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記耐熱性樹脂層の表面には、前記シリコーンゴム層との接着力を向上させる接着剤が塗布されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記第2工程では、前記芯材がガイド手段にガイドされて移動し、前記芯材の移動と共に前記シリコーンゴムの厚みが厚み調整手段により調整されることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記押圧手段は、内部に空気を供給することにより膨張するように構成され、前記離型性樹脂は、膨張した前記押圧手段により前記成形型に押し付けられることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブにおいて、前記離型性樹脂は、空気吸引手段による空気吸引力により前記成形型に固定されていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記離型性樹脂は、複数の孔が形成された弾性部材を介して前記成形型に押し付けられることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記芯材は、熱伝導率の高い部材で構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の定着部用積層チューブの成形方法において、前記芯材は、アルミニウムで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、第1工程において、芯材の表面に耐熱性樹脂が接着されて耐熱性樹脂層が形成される。第2工程において、押出手段から押し出された未加硫のシリコーンゴムが耐熱性樹脂層の表面に到達すると芯材を軸方向に沿って順次移動させることにより耐熱性樹脂層の全表面にシリコーンゴム層が形成され、その後、加熱されてシリコーンゴムが硬化させられる。次に、第3工程において、押圧手段により離型性樹脂が拡径されて成形型に押し付けられ、第2工程を経た芯材が離型性樹脂の径方向内側に挿入された後、離型性樹脂が加熱されて熱収縮させられることにより離型性樹脂とシリコーンゴムとが一体化させられる。これにより、シリコーンゴム層の表面に離型性樹脂層が形成される。
上述したように、定着部用積層チューブの成形方法によれば、第2工程において、押出手段により押し出されたシリコーンゴムの先端部が芯材に形成された耐熱性樹脂層の表面に到達すると、シリコーンゴムが芯材の移動により耐熱性樹脂層の全表面を被覆するため、従来技術の定着部用積層チューブの製造方法と異なり、シリコーンゴム自体を耐熱性樹脂層の全表面に亘って移動(流動)させる必要がない。これにより、シリコーンゴムを耐熱性樹脂層の全表面に亘って略均一に被覆させることができ、シリコーンゴム層の厚みのバラツキを抑制することができる。
また、従来技術の定着部用積層チューブの製造方法のように耐熱性樹脂層と離型性樹脂層との間のクリアランスにシリコーンゴムを注入する技術と異なり、シリコーンゴム層を形成するときに、シリコーンゴムが離型性樹脂に接触することがないため、離型性樹脂がシリコーンゴムに押圧されて、離型性樹脂に皺が発生することがない。これにより、離型性樹脂層とシリコーンゴム層との間に剥離が生じてシリコーンゴム層が破断することを防止でき、定着部用積層チューブの品質の低下を防止することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、シリコーンゴムには接着剤が含まれているため、耐熱性樹脂層又は/及び離型性樹脂層との接着力を向上させることができる。これにより、別途、耐熱性樹脂層や離型性樹脂層に接着剤を塗布する塗布工程が不要となる。接着剤の塗布工程が不要となるため、定着部用積層チューブの成形方法の工程数を削減でき、成形コストを低減することができる。
また、シリコーンゴムには接着剤が含まれているため、従来技術のように接着剤の塗布量にバラツキが生じるおそれがなく、接着強度にもバラツキが生じるおそれもない。このため、定着部用積層チューブの品質が低下することを防止できる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、耐熱性樹脂層の表面には接着剤が塗布されているため、シリコーンゴム層との接着力を格段に向上させることができる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、第2工程では、芯材がガイド手段にガイドされて移動するため、芯材の移動と直交する方向に芯材が位置ズレすることがない。このため、定着部用積層チューブの成形方法で定着部用積層チューブを量産する場合、各定着部用積層チューブ間において、耐熱性樹脂層の全表面に形成されるシリコーンゴム層を略均一にすることができる。この結果、定着部用積層チューブの成形方法で量産される定着部用積層チューブの品質を略一定に保つことができる。
また、芯材の移動と共にシリコーンゴムの厚みが厚み調整手段により調整されるため、シリコーンゴム層の厚みを一定にすることができる。これにより、シリコーンゴム層の厚みにバラツキが生じることを防止でき、バラツキによる各層間での剥離を防止できるため、定着部用積層チューブの品質が低下することがない。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、内部に空気を供給することにより押圧手段が膨張し、この膨張した押圧手段により離型性樹脂が成形型に押し付けられるため、押圧手段を簡易な構成にすることができ、容易に離型性樹脂を成形型に押し付けることができる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、空気吸引手段による空気吸引力により離型性樹脂が成形型に固定されているため、離型性樹脂を確実に位置決めすることができる。これにより、離型性樹脂とシリコーンゴムとの接着時に離型性樹脂が成形型に対して位置ズレすることを防止でき、離型性樹脂とシリコーンゴムとの接着精度が低下することを防止できる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、離型性樹脂は複数の孔が形成された弾性部材を介して成形型に押し付けられるため、押圧手段からの押圧力の大きさに多少の差が生じても、弾性部材が離型性樹脂に作用する押圧力により弾性変形するため、押圧力の差を吸収することができる。これにより、離型性樹脂に生じる押圧力を実質的に略均等にすることができ、離型性樹脂の一部に皺が生じることを防止でき、定着部用積層チューブの品質が低下してしまうことを防止できる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、芯材が熱伝導率の高い部材で構成されているため、耐熱性樹脂とシリコーンゴムとを熱硬化させるときに、芯材の全表面に亘って熱が迅速に伝導し、耐熱性樹脂とシリコーンゴムを斑なく加熱させることができる。これにより、熱硬化時に、耐熱性樹脂やシリコーンゴムに部分的な温度変化が生じてしまうことを防止でき、定着部用積層チューブの品質の低下を防止できる。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、芯材がアルミニウムで構成されているため、芯材の熱伝導率を高くすることができると共に、芯材を軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の第1実施形態に係る定着部用積層チューブの成形方法について、図面を参照して説明する。
【0031】
先ず、定着部用積層チューブの成形に用いられる定着部用積層チューブ成形治具について説明する。
図1及び図2に示すように、定着部用積層チューブ成形治具(以下、適宜「成形治具」と称する。)10は、円柱状の成形治具本体12を備えている。この成形治具本体12の内部には、空気を流動させるための空気路14が形成されている。また、成形治具本体12の外周面には、空気路14と連通し空気が流動する空気流動溝16が複数形成されている。この空気流動溝16は、成形治具本体12の外周面に亘って形成されているが、これに限られることはなく、外周面の一部に形成されていてもよい。また、空気流動溝16は複数形成されている構成に限られることはなく、外周面に少なくとも1つ形成されていればよい。
また、成形治具本体12の外周面には、ゴムで構成された膨張部材(ゴム部材)18が取り付けられている。この膨張部材18は、チューブ状(円柱状)に形成されており、成形治具本体12の外周面に巻き付けられるようにして設けられている。また、成形治具本体12の外周面に巻き付けられた膨張部材18の上下両端部には、留め部材20が取り付けられており、膨張部材18が成形治具本体12に対して強固に固定されている。この留め部材20により膨張部材18が固定されているため、膨張部材18が膨張する際に、膨張部材18が成形治具本体12に対して位置ズレすることがなく、また、留め部材20により膨張部材18の上下両端部と成形治具本体12とに隙間が生じることがないため、空気が外部に漏れてしまうことを防止できる。
なお、成形治具本体12には、空気路14及び空気流動溝16に空気を供給するための空気供給手段(図示省略)が接続されており、また、空気路14及び空気流動溝16から空気を外部に排出するための空気吸引手段(図示省略)が接続されている。
以上のように、空気供給手段により成形治具本体12の空気路14に空気が供給されると、空気が空気路14を通って空気流動溝16に流入し、やがて成形治具本体12の外周面と膨張部材18との間に到達する。さらに、空気供給手段により空気を供給し続けると、空気圧により膨張部材18が径方向外側に膨張する。
一方、空気吸引手段により成形治具本体12の内部の空気が外部に排出されると、膨張部材18が空気圧で内側から押圧されないため、その弾性力により元の状態に戻る。
【0032】
次に、本発明の定着部用積層チューブの成形方法により成形される定着部用積層チューブについて説明する。
図3に示すように、定着部用積層チューブ22は、最下層として耐熱性樹脂で構成された耐熱性樹脂層24を備えている。この耐熱性樹脂層24を構成する耐熱性樹脂として、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド等の熱硬化性のものが用いられる。
さらに、これらの樹脂単体では熱伝導率が低いので、絶縁性で熱伝導性の無機粒子を含有させることが好ましい。このような熱伝導性無機粒子として、例えば、窒化ホウ素、アルミナ、炭化ケイ素、チタン酸カリウム、窒化アルミ、マイカ、シリカ、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム等がある。これらの物質は2種以上の混合物としても使用することができる。
また、耐熱性樹脂層24の厚みは、15μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0033】
また、定着部用積層チューブ22は、中間層としてシリコーンゴムで構成されたシリコーンゴム層26を備えている。このシリコーンゴム層26は、後述するように、耐熱性樹脂層24に接着されて耐熱性樹脂層24に積層されるように形成されている。
シリコーンゴム層26を構成するシリコーンゴムとして、ジフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等のジオルガノポリシロキサンを前駆体として形成された通常のシリコーンゴムを用いることができ、特に、液状の付加反応型シリコーンゴムを前駆体として形成されたものが好ましい。
上記のような付加型シリコーンゴムは、メチル基及びフェニル基の他に付加型反応基、例えば、ビニル基を有するシロキサン化合物から得られたポリシロキサンであり、付加型反応性基とシラン架橋剤との付加開裂反応により架橋されるものである。
また、シリコーンゴムの硬化後の硬度は40度以下であることが好ましい。
また、シリコーンゴム層26の厚みは、30μm以上600μm以下であることが好ましい。
【0034】
さらに、定着部用積層チューブ22は、最上層として離型性樹脂で構成された離型性樹脂層28を備えている。この離型性樹脂層28は、後述するように、シリコーンゴム層26に接着されてシリコーンゴム層26に積層されるように形成されている。この離型性樹脂層28を構成する離型性樹脂として、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)等が挙げられる。
また、離型性樹脂層28の厚みは、5μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0035】
次に、本発明の定着部用積層チューブの成形方法について説明する。
【0036】
図4に示すように、円筒状の金属製(例えばアルミニウム)の芯材30に、ポリイミドチューブ(以下、適宜「PIチューブ」と称する)32が装着される。このPIチューブ32は、耐熱性樹脂(例えばポリイミド等)を含んだワニスを円筒形の金属芯体(図示省略)に塗布し、ダイスを金属芯体にはめて自然落下させて塗布膜を形成し、これにより得られた塗布膜を加熱して(300℃、30分間)、冷却後、金属芯体を引き抜くことにより、生成される。
なお、芯材30をアルミニウムで構成することにより、後述するように、耐熱性樹脂24(PIチューブ32)とシリコーンゴム36(図6参照)とを熱硬化させるときに、芯材30の全表面に亘って熱が迅速に伝導し、耐熱性樹脂24(PIチューブ32)とシリコーンゴム36を斑なく加熱させることができる。これにより、熱硬化時に、耐熱性樹脂24(PIチューブ32)やシリコーンゴム36に部分的な温度変化が生じてしまうことを防止でき、定着部用積層チューブ22の品質の低下を防止できる。また、芯材30をアルミニウムで構成することにより、芯材30を軽量にすることができる。
【0037】
次に、図5に示すように、芯材30に装着されたPIチューブ32の表面に接着剤34が塗布される。
ここで、PIチューブ32への接着剤34の塗布は、後述のようにシリコーンゴム36に接着剤が含有されているため、必ずしも必要ではないが、PIチューブ32に接着剤34を塗布した場合には、シリコーンゴム36とPIチューブ32との接着力を大幅に向上させることができる。
また、シリコーンゴム36に接着剤が含有されているため、PIチューブ32に接着剤34を塗布しない場合でも、シリコーンゴム36とPIチューブ32との接着力に何ら問題はないばかりか、PIチューブ32への接着力の塗布工程を省略することができ、定着部用積層チューブ22の成形に要する時間を短縮することができ、さらには定着部用積層チューブ22の成形に要するコストを低減することができる。
また、シリコーンゴム36に接着剤が含有されている場合、十分な接着力が得られるため、耐熱性樹脂層24や離型性樹脂層28に接着剤34を塗布する必要が無い。これにより、接着剤34の塗布量にバラツキが生じることがなく、定着部用積層チューブ22の品質が低下することを防止できる。
【0038】
次に、図6に示すように、芯材30に装着したPIチューブ32の表面にシリコーンゴム36が被覆され、シリコーンゴム層26が形成される。
ここで、PIチューブ32の表面にシリコーンゴム36が被覆される際には、所定の押出成形装置38が用いられる。すなわち、図6に示すように、押出成形装置38は、円筒状に形成され芯材30の軸方向の移動をガイドするガイド部材(ガイド手段)40と、ガイド部材40との間に未加硫のシリコーンゴム36が流動する空間部Mを形成しPIチューブ32の表面に被覆されたシリコーンゴム36の厚みを調整する口金部材(厚み調整手段)42と、前記空間部Mに未加硫のシリコーンゴム36を押し出す押出機(押出手段)44と、芯材30を押圧してその軸方向に移動させる芯材駆動手段(図示省略)と、で構成されている。なお、押出機44により押し出されるシリコーンゴム36には接着剤が含まれている。このシリコーンゴム36として、信越化学社製のX−30−3771−U等がある。
上記押出成形装置38によれば、ガイド部材40の内部(内側)にPIチューブ32が装着された芯材30が挿入される。このとき、芯材30の一方の端部が口金部材42の端部近傍に位置するように設定される。押出機44により未加硫のシリコーンゴム36が押し出されると、このシリコーンゴム36が空間部Mを流動していき、やがてPIチューブ32の表面に到達する。シリコーンゴム36の先端部がPIチューブ32の表面に到達すると、シリコーンゴム36に接着剤が含まれており、またPIチューブ32の表面に接着剤34が塗布されているため、PIチューブ32の先端部とシリコーンゴム36とが強固に接着する。PIチューブ32の先端部とシリコーンゴム36とが強固に接着した状態で、芯材駆動手段により芯材30が矢印X方向に押圧される。芯材駆動手段により芯材30が押圧されると、芯材30が口金部材42から押し出されるように軸方向に順次移動していく。このように、芯材30の他方の端部が口金部材42の端部近傍に位置するまで芯材30が移動すると、PIチューブ32の全表面にシリコーンゴム36が接着しシリコーンゴム層26が形成される。
ここで、芯材30はガイド部材40によりガイドされながら軸方向(図6中矢印X方向及びその反対方向)に移動するため、芯材30が軸方向に対して直交する方向(図6中矢印Y方向)に位置ズレすることがない。このため、定着部用積層チューブ22の成形方法で定着部用積層チューブ22を量産する場合、量産される各定着部用積層チューブ22間において、耐熱性樹脂層24の全表面に形成されるシリコーンゴム層26を略均一にすることができる。この結果、定着部用積層チューブ22の成形方法で量産される定着部用積層チューブ22の品質を略一定に保つことができる。
また、芯材30の移動と共にシリコーンゴム36の厚みが口金部材42により調整されるため、シリコーンゴム層26の厚みを一定にすることができる。これにより、シリコーンゴム層26の厚みにバラツキが生じることを防止でき、このバラツキによる各層24、26、28間での剥離を防止できるため、定着部用積層チューブ22の品質が低下することがない。
【0039】
次に、図7に示すように、PIチューブ32の表面にシリコーンゴム層26が形成されると、PIチューブ32とシリコーンゴム層26を備えた芯材30が電気炉46に入れられ、加熱される(140℃、30分間)。これにより、シリコーンゴム36が加硫・硬化して、シリコーンゴム36とPIチューブ32との接着がより強固になる。この結果、後述のように、離型性樹脂層28(PFA48)を形成する際に、耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)とシリコーンゴム層26との間で剥離や位置ズレが生じることを防止できる。
【0040】
一方、図8に示すように、離型性樹脂層28を構成する離型性樹脂(例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン重合体(PFA48))が成形型50の内側にセッティングされる。このPFA48として、厚木ヒューテック社製の7BG1391等が挙げられる。
ここで、図8に示すように、成形型50は、円筒状に形成されており、その内周面には複数の孔が形成された微細孔素材(例えば、セラミック、硬度スポンジなど)52が取り付けられている。また、成形型50には空気吸引ポンプ54が接続されており、成形型50の内側の空気を微細孔素材52の孔を通して吸引することができるように構成されている。また、成形型50は、固定治具51(図1参照)により固定されている。
なお、微細孔素材52は、ゴムなどの弾性部材で構成されていてもよい。微細孔素材52をゴムなどの弾性部材で構成することにより、膨張部材18からの押圧力の大きさに多少の差が生じても、微細孔素材52がPFA48に作用する押圧力により弾性変形するため、押圧力の差を吸収することができる。これにより、PFA48に生じる押圧力を実質的に略均等にすることができ、PFA48の一部に皺が生じることを防止でき、定着部用積層チューブ22の品質が低下してしまうことを防止できる。
【0041】
次に、図9に示すように、PFA48の径方向内側に上述した成形治具10が挿入される。このとき、膨張部材18がPFA48に対向するように成形治具10が配置される。なお、成形治具10は、固定治具51(図1参照)で固定される。
【0042】
次に、図1及び図10に示すように、空気供給手段により成形治具本体12の空気路14に空気が供給される。空気路14に空気が供給されると、空気が空気流動溝16を流動し成形治具本体12の外周面と膨張部材18との間に流入する。さらに、空気供給手段により空気を供給し続けると、膨張部材18が空気圧により径方向外側に押圧されて膨張する。この膨張した膨張部材18によりPFA48が拡径させられ微細孔素材52に押し付けられる。このとき、空気が成形治具本体12の外周面に略均等に流入しているため、膨張部材18のほとんどあらゆる部分で膨張率も略同一となり、PFA48の全押圧面での膨張部材18からの押圧力が略均等(略一定)になる。これにより、PFA48は均等に拡径させられ、その少なくとも一部に皺が生じることがない。この結果、離型性樹脂28(PFA48)に皺がない状態でシリコーンゴム36と接着させることができ、離型性樹脂層28とシリコーンゴム層26との間で剥離が生じることを防止できる。
特に、膨張部材18の押圧力が離型性樹脂28(PFA48)の全押圧面に亘って一定であるため、離型性樹脂28(PFA48)への押圧力の差により離型性樹脂28(PFA48)の一部に皺が生じることを効果的に防止できる。
また、膨張部材18を空気圧により膨張させるという簡易な構成で、PFA48を微細孔素材52に容易に押し付けることができる。
一方、PFA48が微細孔素材52に押し付けられる際に、空気吸引ポンプ54により空気が吸引される。空気吸引ポンプ54により空気が吸引されると、成形型50の内側の空気が微細孔素材52の孔を通って成形型の外側に流入するため、PFA48が微細孔素材52(成形型50)に強固に固定される。これにより、PFA48が微細孔素材52(成形型50)に位置決めされる。この結果、PFA48とシリコーンゴム36との接着精度が低下することを防止できる。
特に、空気吸引ポンプ54の空気吸引力がPFA48の全押圧面に亘って一定とすることにより、PFA48の微細孔素材52(成形型50)に対して強固に固定することができ、PFA48の位置決め精度を大幅に高めることができる。
なお、PFA48が微細孔素材52に位置決めされると、空気吸引手段により成形治具本体12の内部に流入した空気が外部に吸引される。これにより、膨張部材18がその弾性力により元の状態に戻り、成形治具10が収縮する。成形治具10が収縮すると、成形型50の内部から成形治具10が取り出される。
【0043】
次に、図11に示すように、微細孔素材52に位置決めされたPFA48の内側表面(接着面)には、潤滑性と接着性を備えた潤滑剤56が塗布される。このときも、空気吸引ポンプ54が作動しており、PFA48が微細孔素材48(成形型50)に位置決めされている。
また、シリコーンゴム層26の表面(接着面)にも、同様に、潤滑性と接着性を備えた潤滑剤56が塗布される。この潤滑剤56として、例えば、東レ・ダウコーニング社製SE9187L、SE9186、SE9140、SE1714等がある。
【0044】
次に、図12に示すように、微細孔素材52に固定されたPFA48の内側に、PIチューブ32とシリコーンゴム層26を備えた芯材30が挿入される。このとき、シリコーンゴム層26とPFA48とのクリアランスは通常約1mmしかないため、PFA48の内側表面とシリコーンゴム層26の表面に塗布された潤滑剤56により、PFA48と取りコーンゴム層26との間の挿入抵抗を大幅に低減でき、極めて円滑に芯材30を挿入することができる。また、接着性を備えた潤滑剤56によりシリコーンゴム36とPFA48を強固に接着させることができる。
なお、このときも、空気吸引ポンプ54が作動しており、PFA48が微細孔素材52(成形型50)に位置決めされている。
【0045】
次に、図12に示すように、微細孔素材52に固定されたPFA48の内側に、耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)とシリコーンゴム層26が形成された芯材30が挿入された後、空気吸引ポンプ54の作動が停止される。これによりPFA48が微細孔素材52から容易に取り外すことが可能となる。
このように、微細孔素材52から取り外したPFA48がシリコーンゴム層26の表面を被覆することにより、離型性樹脂層28が形成される。
【0046】
次に、図13に示すように、耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)とシリコーンゴム層26(シリコーンゴム36)と離型性樹脂層28(PFA48)がそれぞれ形成された芯材30が、電気炉46に入れられ、加熱される(150℃〜200℃、30分間)。この加熱により、PFA48が熱収縮し、PFA48とシリコーンゴム層26とが強固に接着し、一体化する。
ここで、離型性樹脂28(PFA48)の接着面は、シリコーンゴム36との接着性を向上させるために、エッチングしておくことが好ましい。エッチングは、従来から知られている方法で行うことができ、例えばナトリウム・ナフタレン法、液体アンモニウム法等の化学的方法、エキシマーレーザーエッチング法、低温プラズマ法等の物理的方法により行うことができる。
特に、離型性樹脂28(PFA48)の厚みが薄い場合には、物理的方法によるエッチングが適している。
【0047】
次に、図14及び図15に示すように、PFA48が熱収縮した後、芯材30だけが引き抜かれ、定着部用積層チューブ22が成形される。
【0048】
以上の定着部用積層チューブ22の成形方法により、耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)と、シリコーンゴム層26(シリコーンゴム36)と、離型性樹脂層28(PFA48)と、からなる定着部用積層チューブ22が成形される。
特に、本発明の定着部用積層チューブ22の成形方法によれば、シリコーンゴム36が芯材30の移動により耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)の全表面に被覆するため、従来技術の定着部用積層チューブの製造方法と異なり、シリコーンゴム自体を耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)の全表面に亘って移動(流動)させる必要がない。これにより、シリコーンゴム36を耐熱性樹脂層24の全表面に亘って略均一に被覆させることができ、シリコーンゴム層26の厚みのバラツキを抑制することができる。
また、従来技術の定着部用積層チューブの製造方法のように耐熱性樹脂層と離型性樹脂層との間のクリアランスにシリコーンゴムを注入する技術と異なり、本発明の定着部用積層チューブ22の成形方法によりシリコーンゴム層26を形成するときに、硬化前のシリコーンゴム36がPFA48に接触することがないため、PFA48がシリコーンゴム36に押圧されて、PFA48に皺が発生することがない。これにより、離型性樹脂層28とシリコーンゴム層26との間に剥離が生じてシリコーンゴム層26が破断することを防止でき、定着部用積層チューブ22の品質の低下を防止することができる。
【0049】
また、本発明の定着部用積層チューブ成形治具10によれば、耐熱性樹脂層24(PIチューブ32)の表面にシリコーンゴム層26が形成された後、膨張部材18の内部に空気が供給されて膨張部材18が膨張し、この膨張した膨張部材18によりPFA48が成形型50に押し付けられる。これにより、PFA48に皺が生じることを防止できる。また、皺がないPFA48にシリコーンゴム36を接着させることにより、離型性樹脂層28とシリコーンゴム層26との間で剥離が生じることを防止でき、定着部用積層チューブ22の品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係る定着部用積層チューブ成形治具の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る定着部用積層チューブ成形治具の部分的な拡大図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る定着部用積層チューブの成形方法により成形される定着部用積層チューブの部分的な断面図である。
【図4】芯体に耐熱性樹脂層が形成される工程図である。
【図5】耐熱性樹脂層に接着剤が塗布される工程図である。
【図6】耐熱性樹脂層にシリコーンゴム層が形成される工程図である。
【図7】耐熱性樹脂層とシリコーンゴム層を備えた芯体が電気炉で加熱される工程図である。
【図8】成形型の内側に離型性樹脂をセッティングした工程図である。
【図9】離型性樹脂の内側に定着部用積層チューブ成形治具を挿入した工程図である。
【図10】定着部用積層チューブ成形治具により離型性樹脂を押圧した工程図である。
【図11】離型性樹脂が成形型に位置決めされた工程図である。
【図12】成形型に位置決めされた離型性樹脂の内側に耐熱性樹脂層とシリコーンゴム層を備えた芯体が挿入される工程図である。
【図13】耐熱性樹脂層とシリコーンゴム層と離型性樹脂層を備えた芯体が電気炉で加熱される工程図である。
【図14】芯体が引き抜かれる工程図である。
【図15】芯体が引き抜かれて定着部用積層チューブが成形された工程図である。
【図16】従来の定着部用積層チューブを成形する工程図である。
【符号の説明】
【0051】
10 定着部用積層チューブ成形治具(押圧手段)
18 膨張部材(ゴム部材)
22 定着部用積層チューブ
24 耐熱性樹脂層
26 シリコーンゴム層
28 離型性樹脂層
30 芯材
32 PIチューブ(耐熱性樹脂)
36 シリコーンゴム
40 ガイド部材(ガイド手段)
44 押出機(押出手段)
50 成形型
48 PFA(離型性樹脂)
52 微細孔素材(弾性部材)
54 空気吸引ポンプ(空気吸引手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材の表面に耐熱性樹脂からなる耐熱性樹脂層を形成する第1工程と、
押出手段から押し出された未加硫のシリコーンゴムが前記耐熱性樹脂層の表面に到達すると前記芯材を軸方向に沿って順次移動させることにより前記耐熱性樹脂層の全表面にシリコーンゴム層を形成し、その後、加熱して前記シリコーンゴムを硬化させる第2工程と、
押圧手段により離型性樹脂を拡径して成形型に押し付け、前記第2工程を経た前記芯材を前記離型性樹脂の径方向内側に挿入した後、前記離型性樹脂を加熱して熱収縮させることにより前記離型性樹脂と前記シリコーンゴムとを一体化させ、前記シリコーンゴム層の表面に離型性樹脂層を形成する第3工程と、
を有することを特徴とする定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項2】
前記シリコーンゴムには、前記耐熱性樹脂層又は/及び前記離型性樹脂層との接着力を向上させる接着剤が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項3】
前記耐熱性樹脂層の表面には、前記シリコーンゴム層との接着力を向上させる接着剤が塗布されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項4】
前記第2工程では、前記芯材がガイド手段にガイドされて移動し、前記芯材の移動と共に前記シリコーンゴムの厚みが厚み調整手段により調整されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項5】
前記押圧手段は、内部に空気を供給することにより膨張するように構成され、
前記離型性樹脂は、膨張した前記押圧手段により前記成形型に押し付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項6】
前記離型性樹脂は、空気吸引手段による空気吸引力により前記成形型に固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブ。
【請求項7】
前記離型性樹脂は、複数の孔が形成された弾性部材を介して前記成形型に押し付けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項8】
前記芯材は、熱伝導率の高い部材で構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項9】
前記芯材は、アルミニウムで構成されていることを特徴とする請求項8に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項1】
芯材の表面に耐熱性樹脂からなる耐熱性樹脂層を形成する第1工程と、
押出手段から押し出された未加硫のシリコーンゴムが前記耐熱性樹脂層の表面に到達すると前記芯材を軸方向に沿って順次移動させることにより前記耐熱性樹脂層の全表面にシリコーンゴム層を形成し、その後、加熱して前記シリコーンゴムを硬化させる第2工程と、
押圧手段により離型性樹脂を拡径して成形型に押し付け、前記第2工程を経た前記芯材を前記離型性樹脂の径方向内側に挿入した後、前記離型性樹脂を加熱して熱収縮させることにより前記離型性樹脂と前記シリコーンゴムとを一体化させ、前記シリコーンゴム層の表面に離型性樹脂層を形成する第3工程と、
を有することを特徴とする定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項2】
前記シリコーンゴムには、前記耐熱性樹脂層又は/及び前記離型性樹脂層との接着力を向上させる接着剤が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項3】
前記耐熱性樹脂層の表面には、前記シリコーンゴム層との接着力を向上させる接着剤が塗布されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項4】
前記第2工程では、前記芯材がガイド手段にガイドされて移動し、前記芯材の移動と共に前記シリコーンゴムの厚みが厚み調整手段により調整されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項5】
前記押圧手段は、内部に空気を供給することにより膨張するように構成され、
前記離型性樹脂は、膨張した前記押圧手段により前記成形型に押し付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項6】
前記離型性樹脂は、空気吸引手段による空気吸引力により前記成形型に固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブ。
【請求項7】
前記離型性樹脂は、複数の孔が形成された弾性部材を介して前記成形型に押し付けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項8】
前記芯材は、熱伝導率の高い部材で構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【請求項9】
前記芯材は、アルミニウムで構成されていることを特徴とする請求項8に記載の定着部用積層チューブの成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−15645(P2006−15645A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196789(P2004−196789)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】
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