説明

定量ピペット用照準器及び照準器付き定量ピペット

【課題】定量ピペット用照準器及び照準器付き定量ピペットを提供する。
【解決手段】本発明の定量ピペット用照準器10は、定量ピペット20に装着するための接続部11と、定量ピペット20の先端から滴下される液体の滴下方向を視認可能である開口部15とを備え、定量ピペット20の長軸方向が鉛直から所定角度だけ傾いて液体を滴下する際に、当該所定角度だけ鉛直から傾いた先端チップ28から滴下される液体の滴下方向を視認可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量ピペット用照準器及び照準器付き定量ピペットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、研究所、病院等において、試薬や培養液等を採取し実験、検査等を行うために、ピストンのストロークにより所定分量の液体試料を吸引し排出する定量ピペットが用いられている(例えば、特許文献1)。このような定量ピペットは、サンプリング時の検体の汚染や夾雑を防ぐために、着脱可能な先端チップを先端部に装着することができる。検査ごとに新しいチップを使用することにより、良好な検査結果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−210188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遺伝子含有溶液等の生体試料の取扱においては、排出した液体試料中に関心対象を均一に分散させるため、顕微鏡観察用スライドグラス等に向かって数十cm程度の滴下距離から液体試料を滴下する場合がある。このような使用状況では、実験者等は、ピペットを胸付近に保持して下方のスライドグラスへの滴下を試みることになる。従来の定量ピペットは、先端チップをバイアル等に差し込んで接触した溶液を分取及び排出することには好都合であるが、ピペットを対象から離間すると、実際の滴下場所を知ることが困難であった。このため、特に手操作での滴下に習熟を要し、所定位置への滴下に失敗すると貴重な検体を無駄に消費する可能性があった。
【0005】
本発明は、滴下目標から離間した状態で正確に所定場所へのピペット滴下操作を行うことのできる定量ピペット用照準器及びこのような照準器を備える定量ピペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(4)の本発明により達成される。
【0007】
(1)ピペットに装着するための接続部と、ピペットの先端から滴下される液体の滴下方向のねらいを定める照準部と、を備えることを特徴とするピペット用照準器。
【0008】
(2)ピペットは定量ピペットであり、ピペットの先端は定量ピペットに取り付けられた先端チップの開口端部であることを特徴とする、(1)に記載のピペット用照準器。
【0009】
(3)ピペットは長軸方向が鉛直から所定角度だけ傾いて液体を滴下し、ピペット用照準器は、所定角度だけ鉛直から傾いた先端チップから滴下される液体の滴下方向を視認可能であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のピペット用照準器。
【0010】
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載のピペット用照準器を備えることを特徴とする定量ピペット。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、滴下目標から離間した状態で正確に所定場所へのピペット滴下操作を行うことのできる定量ピペット用照準器及びこのような照準器を備える定量ピペットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る定量ピペット用照準器を装着した定量ピペットを表す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る定量ピペット用照準器の上面図及び側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る定量ピペット用照準器の上面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る定量ピペット用照準器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の定量ピペット用照準器及び照準器付き定量ピペットを実施するための形態(以下、「実施形態」という。)に基づいて図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための物や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成材料の種類、構成条件等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る定量ピペット用照準器10を装着した定量ピペット20を表す図である。図1に示す目視方向は、定量ピペット20の先端から鉛直下方に向かう方向と一致している。定量ピペット20は、液体を排出する状況にあり、排出された液滴をスムーズに滴下するために、長軸方向が鉛直から所定角度だけ傾いている。
【0015】
定量ピペット用照準器10は、定量ピペット20に装着され、操作者の目視方向(図1)に定量ピペット20の先端チップ28の先端を一致させる。ここで、先端チップ28の先端は、液体試料の吸引及び排出が行われる開口端部である。
【0016】
定量ピペット20は、把持部21、操作部22、プッシュボタン23、筒体24、肩部25、芯部26及び取付部27を備える。取付部27には、先端チップ28が着脱可能に装着される。プッシュボタン23への押圧により、操作部22の内蔵機構を介してポンプ動作が行われ、先端チップ28への所定分量の液体試料の吸引及び排出が行われる。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の定量ピペット用照準器10は、操作者の目視方向を、定量ピペット20の先端チップ28の先端から鉛直下方への方向と一致させることが可能である。したがって、本実施形態の定量ピペット用照準器10を用いることにより、操作者は、定量ピペット20をスライドグラス等から離間した状態で、正確に所定位置へのピペット滴下操作を行うことが可能である。
【0018】
本実施形態の定量ピペット用照準器10を装着した定量ピペット20の使用は、例えば、次のいずれかのように行うことができる。
(A)操作者は、定量ピペット20を胸付近に保持し、定量ピペット用照準器10を介した目視方向を滴下位置として、この滴下位置にスライドガラスを移動させる。
(B)操作者は、定量ピペット20を胸付近に保持し、定量ピペット用照準器10を介した目視方向を、滴下の目標であるスライドガラス上に移動させる。
【0019】
図1には、ピペット用照準器10を取付部27に装着した例を示しているが、本発明はこれに限定されない。ピペット用照準器10は、把持部21、筒体24、芯部26、あるいは定量ピペット20の操作に問題のない任意の箇所に装着されてもよい。
【0020】
次に、本発明に係る定量ピペット用照準器10の実施例について、図2乃至図4を参照して説明する。以下の説明において、定量ピペット用照準器10は、略円筒状の取付部27に装着されるものとする。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
図2は、本発明の第1実施形態に係る定量ピペット用照準器10の上面図及び側面図である。
【0022】
図2(a)は、定量ピペット用照準器10の上面図である。定量ピペット用照準器10は、接続部11、胴部13及び照準枠14からなる。接続部11は、円筒側面の形状を有し、一部にギャップ12が設けられている。照準枠14は、開口部(照準部)15が設けられる。この開口部15がピペットの先端から滴下される液体の滴下方向の照準を定めるものである。
【0023】
定量ピペット用照準器10の材質としては、射出成形可能な耐薬品性プラスチック等の可撓材料を用いることができるが、限定されない。
【0024】
接続部11は、取付部27の外径と略等しいかわずかに小さな内径を有する。接続部11は、ギャップ12により寸法誤差を吸収して、あるいはギャップ12の開閉を伴う弾性変形によって、定量ピペット用照準器10を定量ピペット20の取付部27にしっかりと装着することを可能にしている。
【0025】
胴部13は、接続部11及び照準枠14を支持する機能を有する。
【0026】
照準枠14は、操作者の目視方向に沿った視野を画定するための開口部15を有する。図2(b)を示して後述するように、照準枠14は、目視方向に沿って上方及び下方の2箇所に配置される。
【0027】
開口部15は、一般的な照準器における環孔照門に相当する。操作者等は、この開口部15を介して、定量ピペット20の滴下方向を視認することができる。
【0028】
図1には、円形の開口部15を示しているが、本発明の定量ピペット用照準器10の照準枠14は、これに限定されず、任意の形態の照準枠とすることができる。また、開口部15は、操作者の目視方向の視野を確保できればよく、透明材料が配置されてもよい。例えば、十字線又は同様の目盛り等を印刷、刻印、あるいは成形した透明樹脂等を開口部15に配置してもよい。
【0029】
図2(b)は、定量ピペット用照準器10の側面図である。照準枠14は、上方の照準枠14a及び下方の照準枠14bから構成される。これらの上方の照準枠14a及び下方の照準枠14bには、それぞれ開口部15を設けることができる。照準枠14a、14bに設ける開口部15は、略同一の大きさでもよく、下方の照準枠14bに設ける開口部15をより小さくすることによって、操作者が視認する滴下の目標の範囲を狭めることも可能である。また、それぞれの開口部15の相互の相対位置は、操作者の目視方向を画定することができれば何でもよい。
【0030】
定量ピペット用照準器10の全体の大きさ、接続部11と照準枠14との間隔を画定する胴部13の大きさ等は、定量ピペット20の寸法及び滴下操作時に定量ピペット20を傾ける角度等に基づいて、適切に設計することができる。
【0031】
(実施例2)
図3は、本発明の第2実施形態に係る定量ピペット用照準器10の上面図である。本実施形態の定量ピペット用照準器10は、接続部11を固定するための係止部16又は固定部17を備えている。
【0032】
図3(a)は、係止部16を備える定量ピペット用照準器10の上面図である。係止部16は、例えば、ラッチ構造、面ファスナー等により構成することができる。係止部16は、図2(a)に示したギャップ12の開閉を固定又は半固定することができる。これにより、定量ピペット用照準器10を定量ピペット20の取付部27にしっかりと装着することを可能にしている。
【0033】
図3(b)は、固定部17を備える定量ピペット用照準器10の上面図である。固定部17は、接続部11の一部に嵌合する構造、あるいは接続部11の一部をネジ止めする構造等により構成することができる。固定部17は、図2(a)に示したギャップ12の開閉を固定することができる。これにより、定量ピペット用照準器10を定量ピペット20の取付部27にしっかりと装着することを可能にしている。
【0034】
(実施例3)
図4は、本発明の第3実施形態に係る定量ピペット用照準器10の側面図である。
【0035】
図4に示す上方の照準枠14a及び下方の照準枠14bは、それぞれヒンジ18a、18bを介して胴部13に取り付けられている。このようにすることにより、本実施例の定量ピペット用照準器10は、使用時以外には上方の照準枠14a及び下方の照準枠14bを折りたたむことができ、コンパクトに保管することが可能である。
【0036】
このようにすることにより、本発明の実施形態に係る定量ピペット用照準器10は、照準枠14に設けた開口部15によって、操作者の目視方向を定量ピペット20の先端チップ28の先端に一致させることができる。したがって、本発明の実施形態に係る定量ピペット用照準器10を装着した定量ピペット20は、滴下目標から離間した状態で正確に所定場所へのピペット滴下操作を可能にしている。
【0037】
以上、本発明の定量ピペット用照準器及び照準器付き定量ピペットを実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の定量ピペット用照準器及び照準器付き定量ピペットを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0038】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る定量ピペット用照準器及び照準器付き定量ピペットを用いると、滴下距離を介して液体試料の分取を行う場合に、正確に所定位置に試料を滴下できるので、単純なピペット操作により速やかに検査や実験準備を行うことができ、現場での利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0040】
10 ピペット照準器
11 接続部
12 ギャップ
13 胴部
14 照準枠
15 開口部(照準部)
16 係止部
17 固定部
18 ヒンジ
20 定量ピペット
21 把持部
22 操作部
23 押ボタン
24 筒体
25 肩部
26 芯棒
27 取付部
28 先端チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットに装着するための接続部と、
前記ピペットの先端から滴下される液体の滴下方向の照準を定める照準部と、を備えることを特徴とするピペット用照準器。
【請求項2】
前記ピペットは定量ピペットであり、前記ピペットの先端は前記定量ピペットに取り付けられた先端チップの開口端部であることを特徴とする、請求項1に記載のピペット用照準器。
【請求項3】
前記ピペットは長軸方向が鉛直から所定角度だけ傾いて前記液体を滴下し、
前記ピペット用照準器は、前記所定角度だけ鉛直から傾いた前記先端チップから滴下される前記液体の滴下方向を視認可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のピペット用照準器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のピペット用照準器を備えることを特徴とする定量ピペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−213727(P2012−213727A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81198(P2011−81198)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】