説明

定量払い出し容器

【課題】従来の容器では、粉末体を払い出す際に蓋部を開けると、蓋部は次に積極的に手で押されて閉められるまでは開いたままの状態であるが、蓋部を積極的に保持する機構が設けられていないので、蓋部の開度は不安定である。そのため、粉末体を払い出すために容器を傾けると、蓋部は自重で揺動し、粉末体の払い出しを邪魔するおそれが生じる。
【解決手段】蓋部を開いて計量部を払い出し可能な状態にした際に、蓋部を所定の開度で保持する保持部として、蓋部を開く際に蓋部と接触するが弾性変形して蓋部が乗り越え得る小突起41と、更にその状態から開くと蓋部に当接してそれ以上開くことを困難にする大突起42とを設けた。、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に粉末体を貯留し上部に計量部を備え、倒立状態にして元の姿勢に戻すことにより内部の粉末体から計量部に定量の粉末体を分け、更に姿勢を傾けることにより計量部の定量の粉末体を外部へ払い出す定量払い出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の容器としては、例えば、粉末体を収納する容器の上部に揺動することにより開閉自在な蓋部が容器本体に一体に形成され、蓋部を開けた状態で容器を倒立させ、その後に元の状態に戻すとほぼ一定量の粉末体が出口に移動するように構成されている。そして、その後に容器を傾けると、ほぼ一定量の粉末体が容器から払い出されるように構成されている。
【特許文献1】実開平7-35381号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の容器は樹脂の射出成形により形成されており、蓋部は容器本体に一定に形成されている。そして、蓋部を開けると本体との連結部分を中心に蓋部が揺動する。蓋部は次に積極的に手で押されて閉められるまでは開いたままの状態であるが、蓋部を積極的に保持する機構が設けられていないので、蓋部の開度は不安定である。そのため、粉末体を払い出すために容器を傾けると、蓋部は自重で揺動し、粉末体の払い出しを邪魔するおそれが生じる。
【0004】
また、粉末体を払い出す際に容器を傾けすぎたり、傾け方向を誤ると、容器内に貯留されている粉末体が払い出されてしまい、結果的に計量部で計量された分量以上の粉末体が払い出されてしまうおそれが生じる。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、粉末体を払い出す際に蓋部が邪魔をせず、傾けすぎても定量性が確保できる定量払い出し容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明による定量払い出し容器は、内部に粉末体を貯留し上部に計量部を備え、倒立状態にして元の姿勢に戻すことにより内部の粉末体から計量部に定量の粉末体を分け、更に姿勢を傾けることにより計量部の定量の粉末体を外部へ払い出す定量払い出し容器において、計量部の近傍に計量部を覆う揺動自在の蓋部を容器本体に対して一体に設けると共に、この蓋部を開いて計量部を払い出し可能な状態にした際に、蓋部を所定の開度で保持する保持部を設けたことを特徴とする。
【0007】
上述の保持部によって蓋部を所定の開度で保持するので、粉末体を払い出すために容器を傾けても蓋部の開度は所定の角度に保持されたままになる。
【0008】
なお、上記保持部は、蓋部を開く際に蓋部と接触するが弾性変形して蓋部が乗り越え得る小突起と、更にその状態から開くと蓋部に当接してそれ以上開くことを困難にする大突起とから構成することができる。
【0009】
また、上記課題を解決するために本発明による他の定量払い出し容器は、内部に粉末体を貯留し上部に計量部を備え、倒立状態にして元の姿勢に戻すことにより内部の粉末体から計量部に定量の粉末体を分け、更に姿勢を傾けることにより計量部の定量の粉末体を外部へ払い出す定量払い出し容器において、粉末体を貯留する部分の上部に、底部との間に粉末体の移動を許容する隙間を形成するように仕切り板を垂設し、この仕切り板によって仕切られる空間の一方に計量部を連設することにより、容器を倒立させて計量部に粉末体を分ける際の回転方向と、計量部から粉末体を払い出す際の揺動方向とを互いに逆方向になるように設定したことを特徴とする。
【0010】
倒立状態にして計量部に粉末体を分ける際の回転方向と計量部から粉末体を払い出す際の傾斜方向とを逆方向に設定する場合、上記保持部は、計量部に対してこの回転方向側に蓋部を保持すれば、粉末体を払い出す際に誤って逆方向に容器を傾けることが防止される。
【0011】
また、上記粉末体を払い出す際の傾斜方向に対して計量部を両側から挟む傾斜方向指示部を設ければ、粉末体を払い出す際に本体の傾け方向に対して90°方向へ誤って傾けることを防止できる。
【0012】
上記従来の容器では、1回で払い出す粉末体の量を正確に計量できないが、上記計量部は環状の溝であり、この環状の溝から溢れた粉末体は中央の穴部から容器内に落下するように構成すれば、溝の体積によって粉末体を計量することになり、計量の精度を上げることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明は、粉末体を払い出す際に蓋部が所定の開度で保持されるので、容器の傾きによって蓋部が揺動せず、蓋部が粉末体の払い出しを邪魔することが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1および図2を参照して、1は本発明による定量払い出し容器(以下、容器という)である。この容器1は粉末体を貯留するタンク部2と、このタンク部2に着脱自在に嵌着される上部21とから構成されている。この上部21にはタンク部2内に差し入れられる仕切り板23が一体に形成されている。この仕切り板23によってタンク部2の内部空間は2つの空間2A,2Bに仕切られる。ただし、両空間2A,2Bは下部で相互に連通している。そして、上部21には一方の空間2B側に変位した位置に筒部22が設けられている。
【0015】
この筒部22の上部には絞られて小径になった穴部24が設けられ、この穴部24を囲繞するように環状の計量部25が設けられている。また、この計量部25の近傍に蓋部3が筒部22に一体に設けられている。この蓋部3が閉まった状態では計量部25の上部空間26が蓋部3によって密閉される。
【0016】
その状態で容器1をL1方向に回転させ、容器1を倒立させると、空間2B内の粉末体は筒部22から穴部24を通って上部空間26内に移動する。上部空間26は上述のように蓋部3により密閉されているので、粉末体が外部に溢れでることはない。
【0017】
次に、容器1を元の姿勢に戻すと、上部空間26内に移動していた粉末体は穴部24を通ってタンク部2側に戻る。ただし、計量部25に入った粉末体は計量部25内に残留する。これにより計量部25に正確に一定量の粉末体が計量される。
【0018】
次に蓋部3を開けて、容器1をL2方向に傾けると計量部25内の粉末体が外部へと払い出される。このとき、容器1内の粉末体は空間2Aに貯留され得る量しか貯留されていないため、容器1を傾けすぎても穴部24から払い出されることはない。ただし、その際蓋部3が戻って粉末体の払い出しを邪魔することを防止する必要がある。
【0019】
そこで、本実施の形態では、保持部として小突起41と大突起42とを設けた。蓋部3が開けられると、蓋部3に設けた係合突起32がまず小突起41に当接する。小突起41は係合突起31との係合量が微少であるため、弾性変形により係合突起32は容易に小突起41を乗り越えて開方向に揺動する。
【0020】
係合突起32は次に大突起42に当接するが、大突起42は係合突起32との係合量が大きいので、係合突起32は大突起42を容易に乗り越えることができない。したがって、蓋部3を開けている手にストップ感が感じられて、作業者は蓋部3をそれ以上開けなくなる。その状態で蓋部3が閉鎖方向に戻ろうとしても、小突起41に係合突起32が引っ掛かって閉鎖方向に戻らない。すなわち、係合突起32が小突起41と大突起42との間に位置する開度に蓋部3の開度が保持されることになる。
【0021】
本実施の形態では、粉末体を払い出すために容器をL2方向に揺動するが、蓋部が図2に示すようにほぼ90度開いた状態で保持されると、粉末体を払い出す際に容器1を誤ってL1に傾斜させることが防止される。
【0022】
また、本実施の形態では傾斜方向指示部となる板部31を蓋部3に形成した。この板部31は蓋部3を開けた状態で、計量部25を含めた払い出し部分を両側から挟むことになる。このため、粉末体を払い出す際に、容器1を誤ってLS方向に傾けることを防止することができる。なお、この板部31を蓋部3に形成したが、筒部22側に形成してもよい。
【0023】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】断面図
【符号の説明】
【0025】
1 容器(定量払い出し容器)
3 蓋部
25 計量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に粉末体を貯留し上部に計量部を備え、倒立状態にして元の姿勢に戻すことにより内部の粉末体から計量部に定量の粉末体を分け、更に姿勢を傾けることにより計量部の定量の粉末体を外部へ払い出す定量払い出し容器において、計量部の近傍に計量部を覆う揺動自在の蓋部を容器本体に対して一体に設けると共に、この蓋部を開いて計量部を払い出し可能な状態にした際に、蓋部を所定の開度で保持する保持部を設けたことを特徴とする定量払い出し容器。
【請求項2】
上記保持部は、蓋部を開く際に蓋部と接触するが弾性変形して蓋部が乗り越え得る小突起と、更にその状態から開くと蓋部に当接してそれ以上開くことを困難にする大突起とからなることを特徴とする請求項1に記載の定量払い出し容器。
【請求項3】
内部に粉末体を貯留し上部に計量部を備え、倒立状態にして元の姿勢に戻すことにより内部の粉末体から計量部に定量の粉末体を分け、更に姿勢を傾けることにより計量部の定量の粉末体を外部へ払い出す定量払い出し容器において、粉末体を貯留する部分の上部に、底部との間に粉末体の移動を許容する隙間を形成するように仕切り板を垂設し、この仕切り板によって仕切られる空間の一方に計量部を連設することにより、容器を倒立させて計量部に粉末体を分ける際の回転方向と、計量部から粉末体を払い出す際の揺動方向とを互いに逆方向になるように設定したことを特徴とする定量払い出し容器。
【請求項4】
上記保持部は、計量部に対して上記回転方向側に蓋部を保持することを特徴とする請求項3に記載の定量払い出し容器。
【請求項5】
上記粉末体を払い出す際の傾斜方向に対して計量部を両側から挟む傾斜方向指示部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の定量払い出し容器。
【請求項6】
上記計量部は環状の溝であり、この環状の溝から溢れた粉末体は中央の穴部から容器内に落下することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の定量払い出し容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−83487(P2010−83487A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250986(P2008−250986)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】