説明

定量振出キャップと該キャップを備えた定量振出容器

【課題】計量筒からテーパ状筒内への粉体の戻り量を極力少なくすることが可能な定量振出キャップと定量振出容器を提供する。
【解決手段】下方大径のテーパ状筒(2)下端から垂下筒(3)を垂下して、該垂下筒下端から外向きフランジ(7)を介して起立筒(5)を起立させたキャップ本体(1)と、該キャップ本体を閉蓋する蓋(10)とを備え、該蓋(10)は蓋本体(11)と、該蓋本体の上面を開閉自在な蓋板(20)とを備え、前記蓋本体(11)は前記起立筒(5)上部へ嵌合させた嵌合筒(12)の天板(13)から計量筒(14)を垂下すると共に、該計量筒(14)と前記嵌合筒(12)との間の天板(13)部分に振出孔(15)を備え、前記蓋板(20)は栓筒(22)を垂下して前記振出孔(15)へ嵌合させた定量振出キャップにおいて、前記テーパ状筒(2)の上部を前記計量筒(14)内へ偏心させて遊挿させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器体の粉体を定量振出し可能な定量振出キャップと該キャップを備えた定量振出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体を一定量振出可能な容器として、容器体の口頸部を閉蓋する蓋から計量筒を垂下すると共に、口頸部内へ嵌合させた嵌着筒の底壁中央部から起立するテーパ筒上端部を計量筒中央部内へ遊挿させ、容器体倒立でテーパ筒を介して容器体内の粉体が計量筒内に一定量流入可能に設けておき、容器体正立で計量筒内の粉体の一部は容器体内へ戻るが、残部はテーパ筒を囲む嵌着筒内に一定量落下可能に設け、再度の容器体倒立で一定量の粉体が蓋に設けた計量振出孔から振出可能に設けた定量振出し容器が従来技術として知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−110063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来技術では、上下に対向する計量筒とテーパ筒との軸線がほぼ一致しているため、容器体の倒立後、正立させた場合に、計量筒からテーパ筒を介して容器体内へ戻る粉体の量が多くならざるを得ず、このため所望の振出し量が得られないという課題があった。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、計量筒からテーパ状筒内への粉体の戻り量を極力少なくすることが可能な定量振出キャップと該キャップを備えた定量振出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、下方大径のテーパ状筒2下端から垂下筒3を垂下して、該垂下筒下端から外向きフランジ7を介して起立筒5を起立させたキャップ本体1と、該キャップ本体を閉蓋する蓋10とを備え、
該蓋10は蓋本体11と、該蓋本体の上面を開閉自在な蓋板20とを備え、
前記蓋本体11は前記起立筒5上部へ、上面が天板13で閉塞された嵌合筒12を嵌合させて、前記天板13から計量筒14を垂下すると共に、該計量筒14と前記嵌合筒12との間の天板13部分に振出孔15を備え、
前記蓋板20は栓筒22を垂下して前記振出孔15へ嵌合させた定量振出キャップにおいて、
前記テーパ状筒2の上部を前記計量筒14内へ偏心させて遊挿させたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記嵌合筒12を凹凸の係合手段を介して前記起立筒5の上部内面へ嵌合させると共に、該嵌合筒12の上面開口を閉塞する前記天板13の周縁部を前記起立筒5上端面へ載置させたことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記キャップ本体1の垂下筒3を容器本体の口頸部31外面へ嵌合させると共に、前記テーパ状筒2の下端部内面に環状突条4を設けて、該環状突条を前記容器本体の口頸部31上端面へ載置させたことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記キャップ本体1の起立筒5下部外面を容器本体の口頸部31内面へ嵌合させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、テーパ状筒の上部を計量筒内へ偏心させて遊挿させたので、倒立により計量筒内へ粉体を定量堆積させた後、正立させる場合の計量筒からテーパ状筒内への粉体の戻り量を極力少なくすることができ、計量し易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る定量振出容器の断面図である。
【図2】作用説明図である。
【図3】(a) 計量時の倒立状態を示す作用説明図である。 (b) 正立状態を示す作用説明図である。 (c) 振出し時の倒立状態を示す作用説明図である。
【図4】他の実施形態を示す図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る定量振出キャップはキャップ本体1と、該キャップ本体を閉蓋する蓋10とから構成される。
【0014】
図1に示すように、キャップ本体1は、下方大径のテーパ状筒2下端から環状突条4を介して垂下筒3を垂下すると共に、垂下筒3の下端から、下方へ傾斜する外向きフランジ7を介して起立筒5をテーパ状筒2より高く起立させ、起立筒5の上端部を拡径して大内径部6に形成する。
【0015】
キャップ本体1を閉蓋する蓋10は蓋本体11と、蓋本体11の上面(天板13)を開閉自在な蓋板20とから構成される。
【0016】
蓋本体11は起立筒5の大内径部6内へ、上面が天板13で閉塞された嵌合筒12をアンダーカットを介して嵌合させ、天板13の中央部から計量筒14を垂下して、テーパ状筒2の少なくとも上端部が計量筒14内へ偏心状態で遊挿されるようにすると共に、計量筒14と嵌合筒12との間の天板13部分に振出孔15を形成し、さらに、天板13の周縁部を起立筒5上端面へ載置させると共に、振出孔15に近接する天板13部分の周縁部に段部16を形成している。ここで遊挿とはテーパ状筒2の外周面と計量筒14の内周面との間に間隙が形成されるようにテーパ状筒2を計量筒14内へ挿入することをいう。
【0017】
蓋板20は薄肉ヒンジ21を介して天板13に回動自在に連結されていて、薄肉ヒンジ21と対向する蓋板20部分から栓筒22を垂下して、この栓筒を振出孔15へ嵌合させ、さらに、栓筒22に近接する蓋板20の周縁部下面から摘み片23を外方へ突設して、該摘み片を天板13の段部16へ嵌合させている。
【0018】
上記構成に係る定量振出キャップは、同図に示す容器本体30の口頸部31へ装着させて使用される。同図に示す例では、キャップ本体1の垂下筒3内面に設けた雌ねじを口頸部31外面の雄ねじへ螺合させることで、垂下筒3外面と起立筒5内面との間の環状の計量室Mを容器本体の口頸部31の外側に位置させている。
【0019】
このように計量室Mを口頸部31の外部に位置させる場合には、環状突条4下面を口頸部31上端へ圧接させることで粉体の漏出を防止する。
【0020】
図1では、垂下筒3を口頸部31外面へ螺合させているが、これに限らず、図4に示すように起立筒5外面に設けた雄ねじを口頸部31内面の雌ねじへ螺合させることもできる。この場合には起立筒5外面に設けた鍔部35を口頸部31上端へ圧接させることで粉体の漏出を防止する。
【0021】
図1および図4に示すように、テーパ状筒2の軸線Xは計量筒14の軸線Oに対し振出孔15の軸線Yから離れる方向へ偏心しており、したがって、振出孔15に近い側のテーパ状筒2の母線2aの勾配は振出孔15から遠い側の母線2bの勾配より小さくなっている。言い換えれば、テーパ状筒2の上面を下面に対して振出孔15から離れる方向へ平行移動させることで同図に示す偏心状態が形成される。このようにテーパ状筒2を計量筒14に対し偏心させる理由は、倒立させた後、正立させる際の計量筒14からテーパ状筒2内への粉体の戻り量を少なくさせるためである。
【0022】
すなわち、図2に示すように、容器本体の倒立後、蓋板20の薄肉ヒンジ21側が振出孔15より上方になるように容器本体を正立方向(図2において時計方向)へ回動させると、計量筒14内の粉体はテーパ状筒2の傾斜が緩やかな面(母線2aを含む面)に沿って流出し易く、このため計量筒14からの粉体の戻り量を少なくすることができる。したがって、テーパ状筒2は計量筒14と干渉しない範囲で振出孔15からできるだけ離れていれば粉体の戻り量を減少させる効果が大である。なお、図1においてテーパ状筒2の高さは、倒立時における計量筒14内への粉体の堆積量をできるだけ多くする観点からテーパ状筒2の上面は計量筒14の下面より僅かに高い程度にする。
【0023】
次に作用について説明する。
容器本体内の粉体を振出す場合には、図3(a)に示すように、開蓋状態で容器本体を倒立させればよく、すると粉体がテーパ状筒2を介して計量筒14内へ流入し、計量筒14内の粉体の堆積量がテーパ状筒2の開口面とほぼ同一高さになったところで計量筒14内への粉体の流入は停止する。
【0024】
次いで、図3(b)に示すように、容器本体を正立させると、計量筒14内の粉体は計量室M内へ落下して堆積するが、一部はテーパ状筒2を介して容器本体内へ戻る。テーパ状筒2は計量筒14に対して偏心していることからこの粉体の戻り量が抑制されることは上述の通りである。
【0025】
粉体を振出すには、図3(c)に示すように、容器本体を再度倒立させればよく、すると計量室M内に堆積した粉体は振出孔15から振出される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は容器体の粉体を定量振出し可能な容器の分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 キャップ本体
2 テーパ状筒
3 垂下筒
5 起立筒
7 外向きフランジ
10 蓋
11 蓋本体
12 嵌合筒
13 天板
14 計量筒
15 振出孔
20 蓋板
22 栓筒
30 容器本体
31 口頸部
M 計量室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方大径のテーパ状筒(2)下端から垂下筒(3)を垂下して、該垂下筒下端から外向きフランジ(7)を介して起立筒(5)を起立させたキャップ本体(1)と、該キャップ本体を閉蓋する蓋(10)とを備え、
該蓋(10)は蓋本体(11)と、該蓋本体の上面を開閉自在な蓋板(20)とを備え、
前記蓋本体(11)は前記起立筒(5)上部へ、上面が天板(13)で閉塞された嵌合筒(12)を嵌合させて、前記天板(13)から計量筒14を垂下すると共に、該計量筒(14)と前記嵌合筒(12)との間の天板(13)部分に振出孔(15)を備え、
前記蓋板(20)は栓筒(22)を垂下して前記振出孔(15)へ嵌合させた定量振出キャップにおいて、
前記テーパ状筒(2)の上部を前記計量筒(14)内へ偏心させて遊挿させたことを特徴とする定量振出キャップ。
【請求項2】
前記嵌合筒(12)を凹凸の係合手段を介して前記起立筒(5)の上部内面へ嵌合させると共に、該嵌合筒(12)の上面開口を閉塞する前記天板(13)の周縁部を前記起立筒(5)上端面へ載置させたことを特徴とする請求項1記載の定量振出キャップ。
【請求項3】
前記キャップ本体(1)の垂下筒(3)を容器本体の口頸部(31)外面へ嵌合させると共に、前記テーパ状筒(2)の下端部内面に環状突条(4)を設けて、該環状突条を前記容器本体の口頸部(31)上端面へ載置させたことを特徴とする請求項1又は2記載の定量振出キャップを備えた定量振出容器。
【請求項4】
前記キャップ本体(1)の起立筒(5)下部外面を容器本体の口頸部(31)内面へ嵌合させたことを特徴とする請求項1又は2記載の定量振出キャップを備えた定量振出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−10556(P2013−10556A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145852(P2011−145852)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】