説明

定電圧回路

【課題】入力電圧が低下しても従来技術に比較して安定して動作する定電圧回路を提供する
【解決手段】入出力電圧監視回路4は、昇圧型DC/DCコンバータ1の入力電圧VDDと出力電圧V2との差分値を電流に変換して過電流保護回路3に出力する。過電流保護回路3は、入出力電圧監視回路4からの電流に応答して、負荷52に出力する負荷電流Iout2の最大負荷電流値を、昇圧型DC/DCコンバータ1からの負荷電流Iout1よりも小さくなるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧を所定の第1の出力電圧に昇圧して出力するDC−DCコンバータと、第1の出力電圧を第2の出力電圧に変換して負荷に出力するレギュレータとを備えた定電圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来技術に係る定電圧回路10pを備えた電源装置の構成を示すブロック図であり、図5は、図4の昇圧型DC/DCコンバータ1から負荷51に供給される負荷電流Iout1及びコイル12のコイル電流を示すグラフである。また、図6は、図4の過電流保護回路3pの回路図であり、図7は図4のシリーズレギュレータ2pの出力電流−出力電圧特性(実線)及び従来技術に係る他の出力電流−出力電圧特性(破線)を示すグラフである。
【0003】
図4において、従来技術に係る電源装置は、IC(Integrated Circuit)チップにてなる定電圧回路10pと、直流電圧源11と、コイル12と、ダイオード13と、出力コンデンサ14及び15とを備えて構成される。さらに、定電圧回路10pは、直流電圧源11からの入力電圧VDDを出力電圧V1に昇圧して負荷51に出力するパルス幅変調方式の昇圧型DC/DCコンバータ1と、出力電圧V1を出力電圧V2に降圧して負荷52に出力する低ドロップアウトレギュレータにてなるシリーズレギュレータ(以下、LDO(Low Drop Out)という。)2pとを備えて構成される。ここで、LDO2pは過電流保護回路3pを備える。
【0004】
また、コイル12の一端は直流電圧源11の正極端子に接続され、他端は接続点Lxを介してダイオード13のアノードに接続される。さらに、出力コンデンサ14の一方の電極はダイオード13のカソード及び負荷51に接続され、他方の電極は接地される。接続点Lxは、昇圧型DC/DCコンバータ1のスイッチ素子(図示せず。)を介して接地され、当該スイッチ素子は、所定の周期Tでオンオフするように制御される。以上のように構成することにより、昇圧型DC/DCコンバータ1は、出力電圧V1及び負荷電流Iout1を負荷51に出力する。
【0005】
さらに、図6において、LDO2pの過電流保護回路3pは、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ(以下、トランジスタという。)M1,M2,M5と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ(以下、トランジスタという。)M3,M4と、所定の定電流I1を出力する定電流源31と、分圧抵抗R1,R2とを備えて構成される。また、過電流保護回路3pの入力端子Tin3には昇圧型DC/DCコンバータ1からの出力電圧V1が出力され、VSS端子Tvss3は接地され、出力端子Tout3は負荷52に接続される。出力ドライバー用のトランジスタM1及びトランジスタM2の各ゲートは互いに共通接続され、各ソースは入力端子Tin3に共通接続される。トランジスタM1のドレインは分圧抵抗R1及びR2を介してVSS端子Tvss3に接続される。トランジスタM3のドレインはトランジスタM2のドレインと接続され、ソースは接地され、ゲートはドレインと接続されている。トランジスタM4及びM3はカレントミラー回路を構成し、トランジスタM4のソースは接地され、ゲートはトランジスタM3のゲートに接続されている。さらに、トランジスタM4のドレインと入力端子Tin3との間に定電流源31が接続されており、トランジスタM4と定電流源31との間の接続点はトランジスタM5のゲートに接続されている。トランジスタM5のソースは入力端子Tin3に接続され、ドレインはトランジスタM1及びM2のゲートと接続されている。トランジスタM1と抵抗R1との間の接続点は出力コンデンサを介して接地される一方、負荷52に接続される。以上のように構成することにより、LDO2pは、所定の最大負荷電流値Imp(詳細後述する)以下の負荷電流Iout2を負荷52に出力する。また、過電流保護回路3pは、基準電圧源、誤差増幅器及び定電流回路などをさらに備えているが、図示していない。
【0006】
図4において、例えば、出力電圧V1を4.0Vに設定し、出力電圧V2を3.5Vに設定したとき、入力電圧VDDが出力電圧V1に比較して十分に大きく、5.0Vである場合には昇圧型DC/DCコンバータ1は昇圧動作を行わない。この結果、電圧VDDをダイオード13の順方向電圧降下Vf分だけ降下した電圧がLDO2pの入力端子に印加され、LDO2pは5.0Vの入力電圧VDDよりも降圧された3.5Vの出力電圧V2を負荷52に出力する。また、入力電圧VDDが2.0Vまで低下した場合には、昇圧型DC/DCコンバータ1は昇圧動作を行い、4.0Vの出力電圧V1を出力する。この結果、4.0Vの電圧がLDO2pの入力端子に印加され、LDO2pは2.0Vの入力電圧VDDより昇圧された3.5Vの出力電圧V2を負荷52に出力する。
【0007】
次に、図5を参照して、負荷51に流れる負荷電流Iout1とコイル12に流れるコイル電流との関係を説明する。図5において、コイル12は、昇圧型DC/DCコンバータ1のスイッチ素子がオンされている期間Tonにエネルギーを蓄積する一方、スイッチ素子がオフされている期間Toffには蓄積されたエネルギーをダイオード13を介して放出する。ここで、負荷電流Iout1は、昇圧型DC/DCコンバータ1のスイッチ素子がオフされている期間Toff全体のコイル電流を、オンオフ周期T(Toff+Tonである。)全体で平均した電流である。従って、図5に示すように、負荷電流Iout1はコイル12のピーク電流ILmaxとは大きく異なり、負荷電流Iout1及びピーク電流ILmaxは昇圧型DC/DCコンバータ1の昇圧比にも依存する。
【0008】
ここで、過負荷又は短絡などによって負荷電流Iout1が異常に増加して負荷51及び直流電圧源11が破損することを防止するための過電流保護回路が昇圧型DC/DCコンバータ1に搭載されている場合、当該過電流保護回路は、ピーク電流ILmaxを検出して、検出されたピーク電流ILmaxが所定の電流値ILlimより小さくなるように制御する。このため、負荷電流Iout1と同様に、負荷51に流れる最大負荷電流も昇圧型DC/DCコンバータ1の昇圧比に依存して大きく変化する。例えば、電流値ILlimが1Aに設定され、出力電圧V1が4.0Vに設定され、入力電圧VDDが2.0Vであるときには、昇圧比は2であり、最大負荷電流は約0.5Aになる。しかしながら、同一の設定条件で入力電圧VDDが1.0Vであるときには、昇圧比は4であり、最大負荷電流は約0.25Aになる。また、昇圧型DC/DCコンバータ1にこのような過電流保護回路が搭載されていない場合は、最大負荷電流は上述した電流値ILlimに制限されることはない。しかしながら、昇圧動作のために昇圧型DC/DCコンバータ1のスイッチ素子をオフする期間Toffを設ける必要があるため、所定の電流値以上の負荷電流を安定して出力することができない。そして、その所定の電流値は上述した電流値ILlimと同様に昇圧比によって変化することが知られている。
【0009】
次に、図6及び図7を参照して、過電流保護回路3pの動作を説明する。図6において、トランジスタM1に流れる電流は負荷電流Iout2pと実質的に等しくなるように設定されている。負荷電流Iout2pがトランジスタM1に流れると、トランジスタM1及びM2のサイズ比に比例した電流がトランジスタM2に流れる。さらに、トランジスタM3に流れる電流はトランジスタM2に流れる電流に等しいので、トランジスタM3とともにカレントミラー回路を構成しているトランジスタM4に流れる電流は、トランジスタM3とトランジスタM4のサイズ比が1対1であれば、トランジスタM2に流れる電流と等しくなる。
【0010】
例えば、トランジスタM1及びM2のサイズ比を50000:1に設定し、トランジスタM3及びM4のサイズ比を1:1に設定し、定電流源31からの電流I1の電流値を10μAに設定したとき、過電流保護回路3pは以下のように動作する。負荷電流Iout2pが50mAの場合、トランジスタM4に流れる電流は1μAになり、電流I1よりも小さい。このため、トランジスタM5のゲート電圧は実質的に昇圧型DC/DCコンバータ1からの入力電圧VDDに等しくなり、トランジスタM5はオフされるので、トランジスタM1及びM2のゲートに影響を与えない。次に、負荷電流Iout2pが600mAの場合、トランジスタM4に流れる電流は12μAになり、電流I1よりも大きくなる。このため、トランジスタM5のゲート電圧は低下してトランジスタM5はオンされる。これに応答して、トランジスタM1及びM2のゲート電圧は上昇するので、トランジスタM1の電流、すなわち、負荷電流Iout2pが制限される。この結果、最大負荷電流Impは、トランジスタM4に流れる電流と電流I1が釣り合う500mA(=10μA×50000)になる。従って、LDO2pの出力電流−出力電圧特性は、図7に示すように垂下型になり、負荷52に流れる最大負荷電流値は出力電圧によらずに一定の電流値Impとなる。
【0011】
また、一般に、LDO2pに代えて、発熱量を抑えるために出力電圧V2の低下と共に最大負荷電流値が低下する出力電流−出力電圧特性(図7において破線で示す。)も用いられる。この場合でも、LDO2pの通常動作時の最大負荷電流値は電流値Impである。
【0012】
特許文献1には、出力電流値が所定の一定値を越えているときに出力電圧を発生する出力回路の動作を停止させる過電流保護回路を備えた安定化電源回路が記載されている。また、特許文献2には、図7の破線で示される出力電流−出力電圧特性と同様の特性を有する定電圧電源回路が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、図4の定電圧回路10pでは、前段の昇圧型DC/DCコンバータ1の最大負荷電流値は昇圧比に大きく依存する一方、後段のLDO2pの最大負荷電流値は通常動作時は一定の電流値Impである。従って、昇圧型DC/DCコンバータ1の最大負荷電流値がLDO2pの最大負荷電流値Impよりも大きいときは定電圧回路10pは正常に動作するが、昇圧型DC/DCコンバータ1の最大負荷電流値がLDO2pの最大負荷電流値Impよりも小さいときは、昇圧型DC/DCコンバータ1はその電流値Impの電流を流す能力を有していないので、出力電圧V1が低下してしまう。さらに、LDO2pは昇圧型DC/DCコンバータ1からの出力電圧V1を入力電圧として動作しているので、昇圧型DC/DCコンバータ1の出力電圧V1が低下すると、十分な入力電圧を得ることができず異常動作してしまう。そして、最悪の場合には、LDO2pの過電流保護回路3pが正常動作せずに定電圧回路10pのICが発熱し破壊に至る。
【0014】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、入力電圧が低下しても従来技術に比較して安定して動作する定電圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る定電圧回路は、入力電圧を所定の第1の出力電圧に昇圧して出力するとともに、上記入力電圧及び上記出力電圧に基づいて決定される第1の出力電流を出力するDC−DCコンバータと、
所定の最大負荷電流値以下の第2の出力電流を負荷に出力する過電流保護回路を備え、上記第1の出力電圧を所定の第2の出力電圧に変換して上記負荷に出力するレギュレータとを備えた定電圧回路において、
上記入力電圧と上記第1の出力電圧とを検出して当該検出結果を示す検出信号を上記過電流保護回路に出力する入出力電圧監視回路を備え、
上記過電流保護回路は、上記検出信号に基づいて、上記最大負荷電流値を上記第1の出力電流よりも小さくなるように制御することを特徴とする。
【0016】
上記定電圧回路において、上記入出力電圧監視回路は、上記入力電圧と上記第1の出力電圧との間の差分値を検出し、当該検出された差分値を示す検出信号を出力することを特徴とする。
【0017】
また、上記定電圧回路において、上記入出力電圧監視回路は、上記差分値を電流に変換して上記検出信号として出力することを特徴とする請求項2記載の定電圧回路。
【0018】
さらに、上記定電圧回路において、上記過電流保護回路は、上記最大負荷電流値を連続的に変化させることを特徴とする。
【0019】
またさらに、上記定電圧回路において、複数の上記レギュレータを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る定電圧回路によれば、昇圧型DC/DCコンバータの入力電圧と出力電圧とを検出して当該検出結果を示す検出信号を昇圧型DC/DCコンバータの後段のレギュレータに設けられた過電流保護回路に出力する入出力電圧監視回路を備え、過電流保護回路は上記検出信号に基づいてレギュレータから負荷に出力する最大負荷電流値を昇圧型DC/DCコンバータの出力電流よりも小さくなるように制御する。従って、過電流保護回路は昇圧型DC/DCコンバータの電流供給能力以下の電流を負荷に出力するので、入力電圧が低下しても従来技術に比較して安定して動作する定電圧回路を提供できるという特有の作用効果を奏する。また、上記入出力電圧監視回路を、昇圧型DC/DCコンバータの入力電圧と出力電圧との間の差分値を検出し、当該検出された差分値を示す検出信号を出力するように構成することにより、比較的に簡単な構成で上記定電圧回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る定電圧回路10を備えた電源装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の入出力電圧監視回路4及び過電流保護回路3の回路図である。
【図3】図1のシリーズレギュレータ2の出力電流−出力電圧特性を示すグラフである。
【図4】従来技術に係る定電圧回路10pを備えた電源装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図4の昇圧型DC/DCコンバータ1から負荷51に供給される負荷電流Iout1及びコイル12のコイル電流を示すグラフである。
【図6】図4の過電流保護回路3pの回路図である。
【図7】図4のシリーズレギュレータ2pの出力電流−出力電圧特性(実線)及び従来技術に係る他の出力電流−出力電圧特性(破線)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る定電圧回路10を備えた電源装置の構成を示すブロック図である。また、図2は図1の入出力電圧監視回路4及び過電流保護回路3の回路図であり、図3は図1のシリーズレギュレータ2の出力電流−出力電圧特性を示すグラフである。詳細後述するように、本実施形態に係る定電圧回路10は、従来技術に係る定電圧回路10pに比較して、昇圧型DC/DCコンバータ1の入力電圧VDDと出力電圧V1とを検出して当該検出結果を示す検出信号を過電流保護回路3に出力する入出力電圧監視回路4をさらに備え、過電流保護回路4は、上記検出信号に基づいて、負荷52に出力される負荷電流Iout2の最大負荷電流値を昇圧型DC/DCコンバータ1から負荷51に出力される負荷電流Iout1の最大負荷電流値よりも小さくなるように制御すること特徴としている。
【0024】
図1の電源回路は、ICチップにてなる定電圧回路10と、直流電圧源11と、コイル12と、ダイオード13と、出力コンデンサ14及び15とを備えて構成される。さらに、定電圧回路10は、直流電圧源11からの入力電圧VDDを出力電圧V1に昇圧して負荷51に出力するパルス幅変調方式の昇圧型DC/DCコンバータ1と、出力電圧V1を出力電圧V2に降圧して負荷52に出力する低ドロップアウトレギュレータにてなるシリーズレギュレータ(以下、LDO(Low Drop Out)という。)2と、入出力電圧監視回路4とを備えて構成される。ここで、LDO2は過電流保護回路3を備える。図1において、昇圧型DC/DCコンバータ1は図4の昇圧型DC/DCコンバータ1と同様に構成され、出力電圧V1及び負荷電流Iout1を負荷51に出力する。
【0025】
図2において、入出力電圧監視回路4の入力端子Tin1には昇圧型DC/DCコンバータ1からの出力電圧V1が出力され、入力端子Tin2には直流電圧源11からの電圧VDDが出力され、VSS端子Tvss4は接地される。入出力電圧監視回路4は、誤差増幅回路41と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタにてなる出力トランジスタM6と、電圧電流変換用抵抗R3と、カレントミラー回路を構成するNチャネル型MOS電界効果トランジスタ(以下、トランジスタという。)M7及びM8とを備えて構成される。誤差増幅回路41の非反転入力端子は入力端子Tin2に接続される一方、反転入力端子は接続点C1を介して電圧電流変換用抵抗R3の一端及び出力トランジスタM6のソースに接続されている。電圧電流変換用抵抗R3の他端は接続点C2を介して入力端子Tin1に接続されている。また、トランジスタM7及びM8の各ソースはVSS端子Tvss4を介して接地され、トランジスタM7及びM8の各ゲートはトランジスタM6及びM7の各ドレインに接続されている。さらに、トランジスタM8のドレインはLDO2の過電流保護回路3内のトランジスタM4のドレインに接続されている。また、図2において、過電流保護回路3は図6の過電流保護回路3pと同様に構成される。
【0026】
次に、図2を参照して、入出力電圧監視回路4の動作を説明する。図2において、誤差増幅回路41は、直流電圧源11からの電圧VDDと接続点C1の電圧との間の電圧差を増幅してトランジスタM6のゲートに出力することにより、トランジスタM6のソース電位を電圧VDDと等しくなるように制御する。その結果、電圧電流変換用抵抗R3の両端には昇圧型DC/DCコンバータ1からの出力電圧V1と直流電圧源11からの電圧VDDがそれぞれ印可され、トランジスタM6及びM7には電流値(V1−VDD)/r3を有する電流Ir3が流れる(ただし、r3は抵抗R3の抵抗値である。)。さらに、トランジスタM7及びM8はカレントミラー回路を構成するので、電流Ir3に比例した電流Ir8がトランジスタM8に流れる。このように、入出力電圧監視回路4は、昇圧型DC/DCコンバータ1の入力電圧VDDと出力電圧V1の差分値に比例した電流Ir8である検出信号を、過電流保護回路3のトランジスタM4に出力する。
【0027】
次に、図2及び図3を参照して、出力電圧V1を4.0Vに設定し、出力電圧V2を3.5Vに設定し、抵抗R3の抵抗値r3を500kΩに設定し、トランジスタM7とM8のサイズ比を1:1に設定し、トランジスタM1及びM2のサイズ比を50000:1に設定し、トランジスタM3及びM4のサイズ比を1:1に設定し、定電流源31からの電流値I1を10μAに設定したときの入出力電圧監視回路4及び過電流保護回路3の動作を具体的に説明する。
【0028】
昇圧型DC/DCコンバータ1への入力電圧VDDが出力電圧V1に比較して十分に大きく、5.0Vである場合には、昇圧型DC/DCコンバータ1は昇圧動作を行わない。この結果、電圧VDDをダイオード13の順方向電圧降下Vf分だけ降下した電圧がLDO2の入力端子に印加され、LDO2は3.5Vの出力電圧V2を負荷52に出力する。このとき、入出力電圧監視回路4のトランジスタM6はオフにされるので、トランジスタM7及びM8に電流は流れない。従って、入出力電圧監視回路4から過電流保護回路3に出力される電流Ir8の電流値は0Aであり、トランジスタM4には定電流源からの電流I1と等しい電流値(10μA)を有する電流が流れる。このため、従来技術に係る図6の過電流保護回路3pと同様に、過電流保護回路3から負荷52に出力される最大負荷電流値は出力電圧V2によらずに500mAになる(図3参照。)。
【0029】
次に、昇圧型DC/DCコンバータ1への入力電圧VDDが2.0Vまで低下した場合、昇圧型DC/DCコンバータ1は昇圧動作を行い、4.0Vの出力電圧V1をLDO2に出力する。さらに、LDO2は3.5Vの出力電圧V2を出力する。このとき、入出力電圧監視回路4のトランジスタM6はオンにされるので、トランジスタM7及びM8には4μA(=(4.0V−2.0V)/500kΩ)の電流が流れる。その結果、トランジスタM4には6μA(=10μA−4μA)の電流が流れ、トランジスタM1に流れる電流の電流値は300mA(=6μA×50000)に制限され、負荷52に出力される最大負荷電流値は300mAになる。
【0030】
さらに、昇圧型DC/DCコンバータ1への入力電圧VDDが1.0Vまで低下した場合、昇圧型DC/DCコンバータ1は昇圧動作を行い、4.0Vの出力電圧V1をLDO2に出力する。さらに、LDO2は3.5Vの出力電圧V2を出力する。このとき、入出力電圧監視回路4のトランジスタM6はオンにされるので、トランジスタM7及びM8には6μA(=(4.0V−1.0V)/500kΩ)の電流が流れる。その結果、トランジスタM4には4μA(=10μA−6μA)の電流が流れ、トランジスタM1に流れる電流の電流値は200mA(=4μA×50000)に制限され、負荷52に出力される最大負荷電流値は200mAになる。
【0031】
なお、ここでは昇圧型DC/DCコンバータ1への入力電圧VDDが5.0V、2.0V及び1.0Vのときに負荷52に出力される最大負荷電流値を示したが、当該最大負荷電流値は、電圧VDDの変化に応答して連続的に(継ぎ目無く、シームレスに)変化する。また、入出力電圧監視回路4及び過電流保護回路3内の各素子の素子値は、負荷52に出力される負荷電流Iout2の最大負荷電流値が昇圧型DC/DCコンバータ1からの負荷電流Iout1の最大負荷電流値よりも小さくなるように設定されている。
【0032】
従って、本実施形態によれば、昇圧型DC/DCコンバータ1の入力電圧VDDと出力電圧V1とを検出して当該検出結果を示す検出信号を過電流保護回路3に出力する入出力電圧監視回路4をさらに備え、過電流保護回路4は、上記検出信号に基づいて、負荷52に出力される負荷電流Iout2の最大負荷電流値を昇圧型DC/DCコンバータ1から負荷51に出力される負荷電流Iout1の最大負荷電流値よりも小さくなるように制御するので、入力電圧VDDが低下しても従来技術に比較して安定して動作する定電圧回路10を提供できるという特有の作用効果を奏する。
【0033】
なお、本実施形態において昇圧型DC/DCコンバータ1の後段にLDO2を設けたが、本発明はこれに限られず、スイッチングレギュレータ、リニアレギュレータなどのレギュレータであってもよい。また、過電流保護回路3は図2のように構成されたが、本発明はこれに限られず、入出力電圧監視回路4からの出力電流Ir8の電流値が大きいほど負荷52への最大負荷電流を減少させることができる他の回路構成であってもよい。さらに、入出力電圧監視回路4は昇圧型DC/DCコンバータ1の入力電圧VDDと出力電圧V1の差分値に比例する電流値を有する電流Ir8を過電流保護回路3に出力したが、本発明はこれに限られず、昇圧型DC/DCコンバータ1の入力電圧VDDと出力電圧V1の比(昇圧比である)に比例する電流値を有する電流Ir8を過電流保護回路3に出力してもよい。また、図1の電源回路は1つのLDO2を備えたが、昇圧型DC/DCコンバータ1からの出力電圧V1を互いに異なる複数の出力電圧に変換してそれぞれ出力する複数のLDO2を備えてもよい。さらに、入出力電圧監視回路4及び過電流保護回路3内の各素子の素子値を、負荷52に出力される負荷電流Iout2の最大負荷電流値が昇圧型DC/DCコンバータ1からの負荷電流Iout1の電流値よりも小さくなるように設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上詳述したように、本発明に係る定電圧回路によれば、昇圧型DC/DCコンバータの入力電圧と出力電圧とを検出して当該検出結果を示す検出信号を昇圧型DC/DCコンバータの後段のレギュレータに設けられた過電流保護回路に出力する入出力電圧監視回路を備え、過電流保護回路は上記検出信号に基づいてレギュレータから負荷に出力する最大負荷電流値を昇圧型DC/DCコンバータの出力電流よりも小さくなるように制御する。従って、過電流保護回路は昇圧型DC/DCコンバータの電流供給能力以下の電流を負荷に出力するので、入力電圧が低下しても従来技術に比較して安定して動作する定電圧回路を提供できるという特有の作用効果を奏する。また、上記入出力電圧監視回路を、昇圧型DC/DCコンバータの入力電圧と出力電圧との間の差分値を検出し、当該検出された差分値を示す検出信号を出力するように構成することにより、比較的に簡単な構成で上記定電圧回路を提供できる。
【符号の説明】
【0035】
1…昇圧型DC/DCコンバータ、
2…シリーズレギュレータ、
3…過電流保護回路、
4…入出力電圧監視回路、
10…定電圧回路、
11…直流電圧源、
12…コイル、
13…ダイオード、
14,15…出力コンデンサ、
51,52…負荷。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開平8−263152号公報。
【特許文献2】特開2006−301869号公報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を所定の第1の出力電圧に昇圧して出力するとともに、上記入力電圧及び上記出力電圧に基づいて決定される第1の出力電流を出力するDC−DCコンバータと、
所定の最大負荷電流値以下の第2の出力電流を負荷に出力する過電流保護回路を備え、上記第1の出力電圧を所定の第2の出力電圧に変換して上記負荷に出力するレギュレータとを備えた定電圧回路において、
上記入力電圧と上記第1の出力電圧とを検出して当該検出結果を示す検出信号を上記過電流保護回路に出力する入出力電圧監視回路を備え、
上記過電流保護回路は、上記検出信号に基づいて、上記最大負荷電流値を上記第1の出力電流よりも小さくなるように制御することを特徴とする定電圧回路。
【請求項2】
上記入出力電圧監視回路は、上記入力電圧と上記第1の出力電圧との間の差分値を検出し、当該検出された差分値を示す検出信号を出力することを特徴とする請求項1記載の定電圧回路。
【請求項3】
上記入出力電圧監視回路は、上記差分値を電流に変換して上記検出信号として出力することを特徴とする請求項2記載の定電圧回路。
【請求項4】
上記過電流保護回路は、上記最大負荷電流値を連続的に変化させることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の定電圧回路。
【請求項5】
複数の上記レギュレータを備えたことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか1つに記載の定電圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−103743(P2011−103743A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258225(P2009−258225)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】