説明

定電圧素子を有する2次電池

【課題】過充電から電池を保護するための定電圧素子を有する2次電池を提供すること。
【解決手段】定電圧素子は、ブレークダウン電圧が電池の爆発・発火電圧よりも低いため、2次電池の電圧が過充電電圧以上に上がっても電池が爆発あるいは発火する前に放電が起こり、その結果、電池を爆発・発火から保護することができる。また、電池の満充電電圧における漏れ電流の量が電池容量値の0.05%未満であるか、あるいは、前記定電圧素子のブレークダウン電圧が2次電池の満充電電圧よりも高いため、充電時に電池が満充電電圧に達しても、定電圧素子において漏れ電流がほとんど生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定電圧素子を有する2次電池に係り、詳しくは、たとえ電池が過充電状態になっても電池の爆発または発火だけは防ぐことのできる、定電圧素子を有する2次電池に関する。さらに、本発明は、過充電により2次電池が爆発または発火することを防ぐ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2次電池は充放電可能な電池であって、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などをはじめとして、最近のリチウムイオン電池をも含む意味として使われる。この種の2次電池として、近年に至り、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などに比べてエネルギー密度がはるかに高いリチウムイオン電池が広範に用いられている。このリチウムイオン電池は小型軽量化できることから、携帯電話、カメラ付きビデオ、ノート型パソコンをはじめとする移動機器の電源として有効であるだけではなく、電気自動車の電源としてまでその使用範囲が拡張されるなど、次世代のエネルギー貯蔵媒体として注目を浴びている。
【0003】
しかしながら、2次電池、特にリチウムイオン電池は、過充電に弱いという欠点がある。このような過充電による2次電池の爆発または発火は人命事故または財産上の損失につながる危険性が極めて高いため、過充電の防止や抑制または過充電が原因となる不具合の解決は、2次電池にあって極めて重要な課題となる。
【0004】
例えば、リチウムイオン電池の過充電時における電池の各構成物質間の反応を調べてみる。過充電状態になると、リチウムイオン電池の正極活物質と電解液との間の副反応が激しくなる。このような副反応は、正極活物質の構造崩壊と電解液の酸化反応などの原因となる。一方、黒鉛などよりなる負極活物質からリチウムが析出される場合もある。さらには、電池が過充電の状態になっているにも拘わらず電圧が上がり続けると、電池が爆発または発火する事故につながる。
【0005】
特に、2次電池に使われている電源の規格が高電圧である場合には、問題が一層深刻になる。例えば、リチウムイオン2次電池が自動車用電源からシガージャックを介して充電されるとすれば、乗用車の場合には12Vの電圧が印加され、一部の貨物車の場合には2つの12V電源のシリアル接続により24Vの電圧が印加されることがある。このような2次電池の場合、2次電池の規格で定める電圧以上の過電圧が瞬時に印加されれば、大型事故につながる恐れがある。この理由から、電圧から2次電池を効率よく保護することのできる安全装置が必ず望まれる。
【0006】
一方、最近、一層簡単でかつ安価な安全装置への要求が高まりつつある。すなわち、従来より安全装置として用いられているPTC回路付き保護回路よりも構造が簡単で且つ値段も安い安全装置への要求が高い。
【0007】
特に、最近には、電池を形成する電解質と隔離膜または電極構造の特性が改善されて電解質と電極組立て体そのものに過充電を防ぐための所定の手段が設けられていることから、製造コストの側面で保護回路無しに裸セルだけで2次電池を構成しようとする試みが増える一方である。とはいっても、過充電の防止、あるいは、前記過充電が原因とよる事故の防止のためには、少なくとも安全装置だけは必要となると言われている。
【0008】
2次電池の安全装置として、ツェナーダイオードと温度ヒューズを用いるものが提案されている(例えば、下記の特許文献1ないし3参照)。これらの文献には、2つのシリアル接続された温度ヒューズとツェナーダイオードを組み付けている構造が開示されている。
【0009】
この種の電池の場合、過充電時に電流を電池側ではないツェナーダイオード側に流して、前記ツェナーダイオード側に流れる過電流による発熱によりツェナーダイオードに対する温度ヒューズの接続を切断することにより、電池への印加電流を遮断するようになっている。例えば、下記の特許文献1及び2には、前記電池の充電電圧の最高値よりも高いか、あるいは、その電圧値に近いブレークダウン電圧(ツェナー電圧)を有するツェナーダイオードを用いることが好適であると記載されており、例えば、下記の特許文献3には、電池の充電電圧の最高値よりも低いブレークダウン電圧を有するツェナーダイオードを用いることが好適であると記載されている。
【0010】
しかしながら、ツェナーダイオードのブレークダウン電圧が電池の充電電圧よりも低い場合及び前記電池の充電電圧以上である場合には、電池の過充電の防止効果は得られるとはいえ、ツェナーダイオードの漏れ電流を防ぐことはできない。すなわち、上記した技術においては、ツェナーダイオードの漏れ電流による電池の自家放電に対しては全く対策が立てられていない。
【0011】
ツェナーダイオードは、通常、ブレークダウン電圧よりも少なくとも1V分低い電圧からは実質的にある程度の漏れ電流が生じると言われている。このため、前記電池の場合、ツェナーダイオードが使用電圧(4.2V以下)領域において漏れ電流を有することは余儀なくされている。このように、電池の正極と負極に接続されている素子によって漏れ電流が生じると、電池は自家放電を引き起こし、これは、充電後の電池の使用時間短縮及び電池寿命の短縮につながる。このため、前記従来の技術による場合、常に電流の減少が起こる。
【0012】
すなわち、電池の正極と負極との間に接続されている素子において漏れ電流が生じると、電池は自家放電を引き起こし、結果として、電池の寿命が短縮される。このため、前記従来の技術でのように、正極と負極の端子にツェナーダイオードを取り付けて用いる場合、常に電流の減少が起こる。例えば、電池の充電電圧において漏れ電流を生じないツェナーダイオードを用いる場合、過充電時に十分な電流を放電することができず、印加電流が大き過ぎる場合にはダイオードの崩壊により本来の役割を果たすことができず、電圧が上がっても抵抗が大き過ぎるために、電流を流すことができない。一方、前記従来の技術においては、温度ヒューズを用いることにより、ツェナーダイオードの発熱時における印加電流の流入を遮断している。しかし、この場合には、温度ヒューズは電池の正常作動温度である60℃以上で動作することと、例えば、現在使用中の2次電池の通常の充電電流である50〜200mAの電流を流せるツェナーダイオードが60℃に達するためには、少なくとも0.5V以上の電圧差があることが求められる。この理由から、電池の充電電圧(4.2V−4.5V)における漏れ電流を防ぐことは困難である。特に、従来の技術に言及されている、50mA−200mAの電流を電池の過充電無しに流すために4.2V〜4.5Vにおいて漏れ電流が生じないツェナーダイオードを用いることはできない。すなわち、上記の従来の技術には充放電サイクルについての開示はあるものの、漏れ電流による自家放電については全く開示されていない。
【特許文献1】特開平5−325943号公報
【特許文献2】特開2003−284237号公報
【特許文献3】アメリカ特許第6,331,763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここに、本発明者らは、過充電が原因となる事故などから2次電池を保護することができ、しかも過充電により電池が爆発または発火することが防げるほか、電池の使用電圧範囲内では漏れ電流が極力抑えられる、安全素子を有する2次電池について鋭意研究を行った。
【0014】
その結果、2次電池の使用電圧と関連し、特定値以上のブレークダウン電圧を有する定電圧素子を安全素子として用いる場合、上記の如き不具合が解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、過充電が原因となる事故などから電池を保護することのできる安全素子としての定電圧素子を有する2次電池であって、電池の使用電圧範囲内では漏れ電流を極力抑えることができ、しかも電池が過充電状態になることを防ぐことにより、電池の爆発や発火を予防できる2次電池を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、過充電による2次電池の爆発や発火を防ぐことのできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、定電圧素子を有する2次電池に係り、前記定電圧素子は前記2次電池の正極端子と負極端子との間にパラレル接続されており、前記定電圧素子は、ブレークダウン電圧が前記2次電池の爆発・発火電圧よりも低く、前記2次電池の満充電電圧における漏れ電流値が“電流×時間”単位で表される2次電池の容量値の0.05%未満であることを特徴とする2次電池を提供する。このように電池の満充電電圧において電池容量値の0.05%未満に見合う分だけの漏れ電流が流れる場合、電池の使用電圧範囲内における漏れ電流は無視することができる。
【0018】
本発明の他の一例によれば、前記定電圧素子のブレークダウン電圧は、前記2次電池の満充電電圧よりも15%以上高くて前記2次電池の爆発・発火電圧よりは低いことを特徴とする2次電池を提供する。
【0019】
本発明に係る定電圧素子は、ブレークダウン電圧が電池の爆発・発火電圧よりも低いため、2次電池の電圧が過充電電圧以上に上がるとしても、電池の爆発または発火が起きる前に放電が起こる。これにより、電池を爆発・発火から保護することができる。また、電池の満充電電圧における漏れ電流量が電池容量値の0.05%未満であるか、あるいは、前記定電圧素子のブレークダウン電圧が2次電池の満充電電圧よりも高いため、充電時に電池が満充電電圧に達するとしても、定電圧素子においては漏れ電流がほとんど生じない。
【0020】
さらに、本発明は、2次電池の正極端子と負極端子との間に、前記2次電池の満充電電圧よりも15%以上高くて前記2次電池の爆発・発火電圧よりも低いブレークダウン電圧を有する定電圧素子をパラレル接続することにより、過充電による2次電池の爆発・発火を防ぐ方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、定電圧素子により過充電による電池の爆発または発火を防ぐことにより、電池を安全に保護することができる。また、電池の満充電電圧における漏れ電流値が電池容量値の0.05%未満となるため、電池の使用電圧範囲内では、漏れ電流を無視することができる。さらに、定電圧素子のブレークダウン電圧が電池の満充電電圧よりも高く設定されるため、電池が満充電状態になっても定電圧素子における漏れ電流が無視でき、電池の自家放電が防がれる。さらに、本発明によれば、定電圧素子のブレークダウン電圧の最大値が電池の爆発・発火の恐れがない電圧値に設定されるため、満充電後に電圧が印加され続けても爆発・発火の危険性がない。
【0022】
したがって、本発明に係る2次電池は、各種の分野において安全に適用することができる。
【発明を実施するための最良の態様】
【0023】
以下、本発明を詳述する。
【0024】
本発明においては、2次電池の正極と負極との間に、所定値以上の電圧が加えられるときに電流を急流させる定電圧素子を設ける。この定電圧素子により2次電池の過度な電圧上昇を防ぐことができると共に、過充電による前記2次電池の爆発や発火を防ぐことができる。
【0025】
本発明において、定電圧素子とは、両端子の間に特定の電圧(ブレークダウン電圧)以上の電圧が加えられるとき、電流を急流させるような素子を言う。すなわち、本発明に係る定電圧素子は、特定の電圧値以上では電流がバイパス可能な素子である。例えば、図1に示す電圧−電流グラフから明らかなように、特定の電圧よりも低電圧では電流の流れを遮断する一方、前記特定の電圧よりも高電圧では電流を急流させる。この種の定電圧素子は、本発明に係る2次電池に適用されて過充電時に電流を放電させて過充電から2次電池を保護することにより、電池の安全性をアップすることができる。
【0026】
この種の定電圧素子としては、ツェナーダイオード及びバリスタが挙げられる。
【0027】
ツェナーダイオードは、ツェナー効果を用いた素子である。ツェナー効果とは、半導体などに高電圧をかけたとき、価電子帯の上端のエネルギーが最寄の伝導帯の下端のそれと同値になり、トンネル効果により価電子帯から伝導帯へと電子が遷移する確率が高くなって電流が流れる現象を言う。すなわち、半導体内におけるある強い電界に影響されて価電子がトンネル効果により伝導帯に遷移する確率が上がり、その結果として得られる電流の増大現象である。
【0028】
このような特性を用いるツェナーダイオードは、半導体p-n接合体により製造可能であるが、逆方向の高目の電圧を加えたとき、ある電圧において電流が急流し始めてその電圧が一定に保たれるという特性を有する素子である(図1参照)。このようなp-n接合ダイオードに逆方向の高い電圧を加えると、ある値においていきなり大量の電流が流れ始めて電圧が一定に保たれるが、このような現象をブレークダウンと言い、そのときの電圧をブレークダウン電圧と言う。
【0029】
ツェナー電圧は、ツェナーダイオードにおいて逆方向に電流が流れ始める電圧であり、ツェナーダイオードが動作し始める電圧である。通常、ブレークダウン電圧はツェナー電圧よりも高い。
【0030】
前記ツェナーダイオードは2次電池に対して逆方向にパラレル接続される。すなわち、前記ツェナーダイオードのp型側端子は2次電池の負極側に接続され、n型側端子は2次電池の正極側に接続される(図5参照)。
【0031】
バリスタは、バリスタの両端に加えられる電圧に応じて抵抗値が変わる非線形の半導体抵抗素子であって、“可変抵抗”の略称である。バリスタには、印加電圧の極性を問わずに電圧の大きさだけによって抵抗が決定される対称型バリスタと、印加電圧の極性に応じて抵抗が異なる非対称型バリスタと、がある。好ましくは、本発明においては、対称型バリスタを用いることができる。
【0032】
前記定電圧素子としては、市販のものを用いることができる。ブレークダウン電圧を有する各種の定電圧素子が市販されているため、当業者であれば、必要に応じて適宜な定電圧素子を購入して用いることができる。
【0033】
本発明に採用可能な定電圧素子は、少なくとも2つの要件を充足する必要がある。すなわち、2次電池の満充電電圧以下の電圧において漏れ電流を生じなかったり、定電圧素子の本来の漏れ電流以外の漏れ電流を生じないことと、過充電の状態で電圧が印加され続けても、爆発や発火を引き起こすほどに電池の電圧が上がるのを抑えることである。
【0034】
このために、本発明に係る前記定電圧素子は、ブレークダウン電圧が電池の爆発・発火電圧よりも低く、且つ、電池の満充電電圧における漏れ電流値は“電流×時間”で表される2次電池の容量数値の0.05%未満である。例えば、2次電池の容量が500mAhであれば、2次電池の満充電電圧またはそれ以下の電圧における前記定電圧素子による漏れ電流は0.25mA以下に保持可能である。この漏れ電流は、漏れ電流が2,000時間流れてはじめて電池の放電が起こる値であり、2次電池の使用に当たり無視することができる。
【0035】
本発明の他の一例によれば、本発明に係る前記定電圧素子のブレークダウン電圧は、好ましくは、前記2次電池の満充電電圧よりは15%以上高くて前記2次電池の爆発・発火電圧よりは低い。一層好ましくは、前記定電圧素子のブレークダウン電圧は、前記2次電池の満充電電圧よりは20%以上高い。
【0036】
前記ブレークダウン電圧の値は、必要に応じて当業者が適切に細かく調整することができる。本発明において、必要以上に高いブレークダウン電圧を有する定電圧素子を用いる必要はない。すなわち、電池の使用電圧範囲である満充電電圧以下において漏れ電流が抑えられるなら、あえて必要以上に高いブレークダウン電圧を有する定電圧素子を用いなくても構わない。前記ブレークダウン電圧の最大値は、2次電池の種類による。
【0037】
前記定電圧素子のブレークダウン電圧が2次電池の満充電電圧よりも15%以上高い場合、電池の使用電圧範囲内において漏れ電流がほとんどない。この場合、下記の実施例及び試験例から明らかなように、前記定電圧素子により生じる漏れ電流値は、“電流×時間”で表される2次電池の容量数値の0.05%未満に保たれる。
【0038】
前記2次電池の満充電電圧及び爆発・発火電圧は、当該2次電池を製造する当業者によって決定できる。すなわち、前記満充電電圧は、電池製造元で表示する電池の使用電圧範囲のうち最大値(最大の使用電圧)であると言える。また、爆発・発火電圧も、電池製造元で安全性を確保するために定める最大の許容可能な電圧として定めることができる。
【0039】
本発明に係る前記2次電池としては、リチウムイオン電池が挙げられる。この種のリチウムイオン2次電池は、通常、満充電電圧(最大の使用電圧)が4.2Vである。このため、前記定電圧素子のブレークダウン電圧は、好ましくは、5V以上である。一方、前記リチウムイオン電池は、一般に、20V以上に電圧が上がると、発火または爆発の危険性があるため、前記定電圧素子のブレークダウン電圧は、好ましくは、20V以下であり、一層好ましくは、12V以下である。
【0040】
本発明に係る2次電池の場合、満充電電圧における漏れ電流が電池容量値の0.05%未満であるため、電池の使用電圧範囲内における漏れ電流は無視することができる。また、本発明に係る2次電池の場合、電池の満充電電圧よりも少なくとも15%以上高いブレークダウン電圧を有する定電圧素子が設けられているため、充電時に電池が満充電電圧である4.2Vに達するとしても、定電圧素子において漏れ電流がほとんど生じない。
【0041】
一方、前記定電圧素子のブレークダウン電圧は、2次電池の爆発・発火電圧よりは低いため、前記定電圧素子のブレークダウン電圧以上に電圧が上がると、定電圧素子側に電流が急流して電池の放電が起こる。これにより、電池の電圧が上がり過ぎて電池が爆発または発火することを防ぐことができる。
【0042】
本発明による場合、前記定電圧素子は、2次電池の過充電を直接的に防ぐことは困難であるが、2次電池の過充電に付随して起こる電池の爆発や発火を防ぐところに大きな意義があると言える。
【0043】
したがって、本発明においては、2次電池の正極端子と負極端子との間に前記定電圧素子をパラレル接続することにより、過充電による2次電池の爆発・発火を防ぐ方法を提供する。
【0044】
このように、本発明に係る前記定電圧素子は、構造が簡単で且つ取り付けが容易であるため、安価な安全素子として働くことができる。このため、前記定電圧素子は、裸セルのように別途の安全素子が実装されていない2次電池に適用され、安価でかつ構造は単純であるものの、少なくとも電池の爆発や発火だけは防ぐことのできる基礎的な安全装置として働くことができる。また、前記定電圧素子は別途の安全装置が実装されている2次電池にさらに適用され、電池の爆発や発火を防ぐための2次的な安全装置としても働くことができる。
【0045】
以下、図面に基づき、本発明を詳述する。
【0046】
図1は、定電圧素子の一種である1W 4.3V(ツェナー電圧)のツェナーダイオードの電圧による漏れ電流区間とブレークダウン電圧区間を示すグラフである。これを参照すれば、4.2V領域においても漏れ電流が数mAと極めて高いため、通常の電池使用区間では使用不可である。これに対し、前記電流は、充電電流をいずれもツェナーダイオード側に流すには電流が極めて低いため、電池の過充電を防ぐことはできない。通常のツェナーダイオードの場合、漏れ電流の量は容量とツェナー電圧によるが、図1に示すようなグラフ形状を有する。満充電電圧以上のツェナー電圧を有するツェナーダイオードにより過充電を防ぐ場合、ツェナーダイオードの漏れ電流を防ぐために小容量のツェナーダイオードを用いれば、4.2Vにおいて十分な電流を流し難く、電流を十分に流すために大容量のツェナーダイオードを用いれば、漏れ電流による電池容量の減少を防ぐことができない。このため、ツェナーダイオードを用いて電池の過充電自体を防ぐことはできない。
【0047】
ツェナーダイオードは、基本的に、一定の電圧以上の電圧が加えられると、漏れ電流が生じ、漏れ電流の発生時の電圧よりも高い電圧が印加され続けると、電流が急流する(ブレークダウン)。図1によれば、逆方向に約3.5V以上の電圧が加えられると、漏れ電流区間に至り、引き続き、逆方向に電圧が上がって約4.6Vに至ると、電流が急流し始めるブレークダウン区間に至る。図1のグラフによれば、漏れ電流の開始時点とブレークダウン電圧との間に約1Vほどの電圧差がある。参考までに、ツェナーダイオードの容量が増えるに伴い、漏れ電流値が上がり、漏れ電流が流れ始める電圧と電流が急流し始める電圧との間の間隔が広くなる。
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を詳述する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0049】
<実施例1>
アルミ箔に正極活物質(LiCoO):導電剤:バインダーが95:2.5:2.5の割合にて混合されている正極電極と、負極活物質(カーボン):導電剤:バインダーが94:2:4の割合にて混合されている負極電極により電池を構成し、これらの間に絶縁膜を挟み込むことにより、ポリマー電池を製造した。このとき、電解液としてEC:EMCにLiPFが1Mだけ含まれている電解液を、そして外装材としてポーチを用いた。
【0050】
このようにして製造された電池はリチウム2次電池であり、満充電電圧は4.2Vである。また、前記電池の爆発・発火電圧は12Vよりも高い。このようにして製造された電池の正極端子と負極端子との間に5〜12Vのブレークダウン電圧を有するツェナーダイオードをパラレル接続し、20V〜1Aの状態に過充電を行うことにより、すなわち、電池を1Ahの電流にて20Vまで充電することにより、電池の発熱、ツェナーダイオードの発熱、電池の電圧変化及びツェナーダイオードへの電流などを測定した。
【0051】
図5は、本発明に係る定電圧素子(ツェナーダイオード)を電池の内部及び外部にそれぞれ接続した状態を示している。前記定電圧素子は、図5の左側図に示すように、電池パックの内部の正極端子と負極端子との間にパラレル接続されても良く、右側図に示すように、電池パックの外部の正極端子と負極端子との間にパラレル接続されても良い。この実施例においては、図5の右側図のように電池を構成している。
【0052】
図2には、前記ツェナーダイオードとして5.1Vのツェナー電圧を有するツェナーダイオードを用いた場合の電池の発熱、ツェナーダイオードの発熱、電池の電圧変化及びツェナーダイオードへの電流を測定した結果が示してある。
(1)電圧を印加し続けるに伴い、電池(セル)の電圧が上がり続けた。
(2)セルの充電電圧が約4.5Vに至った時点で、電池の温度が上がり始めた。
(3)セルの充電電圧が5Vを超えて約5.1Vに至った時点でツェナーダイオードの放電が始まり、その結果、ツェナーダイオードに電流が急流すると共に、ツェナーダイオードの温度が急に上昇していた。電池電圧は7V以上には上昇しなかった。
(4)ツェナーダイオードの放電の結果、電池(セル)には電流が流れなくなり、電池の爆発・発火が見られなかった。
【0053】
<実施例2>
過充電条件を33V 1Aにした以外は、上記の実施例1の方法と同様にして実験を行い、その結果を図3に示す。上記の実施例1と同様に、電池から爆発・発火は見られなかった。
(1)電圧を印加し続けるに伴い、電池(セル)の電圧が上がり続けた。
(2)セルの充電電圧が約4.5Vに至った時点で電池の温度が上がり始めた。
(3)セルの充電電圧が約5.1Vに至った時点でツェナーダイオードの放電が始まり、その結果、ツェナーダイオードに電流が急流すると共に、ツェナーダイオードの温度が急に上昇していた。電池電圧は7V以上には上昇しなかった。
(4)ツェナーダイオードの放電の結果、電池(セル)には電流が流れなくなり、電池の爆発・発火が見られなかった。
【0054】
前記実施例1及び2による図2及び図3から明らかなように、電池の満充電電圧における漏れ電流が電池容量値の0.05%未満であるため、電池の使用電圧範囲内における漏れ電流は無視することができる。また、前記ツェナーダイオード(定電圧素子)のブレークダウン電圧は、前記2次電池の満充電電圧よりも15%以上高い5Vであり、このようなツェナーダイオードを用いる場合、漏れ電流は無視することができるということが分かる。
【0055】
一方、前記ツェナーダイオードのブレークダウン電圧が2次電池の爆発・発火電圧よりは低いため、電池が爆発または破壊する前にツェナーダイオードが導通されて電圧の上昇を防ぐ結果、電池の電圧が爆発・発火電圧までは上昇しなくなる。
【0056】
<比較例1>
実施例1の方法に従い製造されたポリマー電池にツェナーダイオードを接続しなかった以外は、実施例1の方法と同様にして過充電時の電池の反応を測定した。その結果、電池の爆発・発火が見られた。
(1)電圧を印加し続けるに伴い、電池(セル)の電圧が上がり続けた。
(2)セルの充電電圧が約4.5Vに至った時点で電池の温度が上がり始めて電圧が20Vまで上がり続け、その結果、爆発・発火が起こった。
【0057】
以上、本発明を好適な実施例を挙げて説明したが、この分野における当業者であれば、発明の思想及び範囲を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、本発明の好適な実施例においては、リチウムイオン電池を目安に説明を進めていたが、本発明は他の種類の2次電池にも適用することができる。また、本発明は、筒状、角形の電池にも適用可能である。そして、本発明においては、別途の保護装置無しに定電圧素子を取り付けた場合の爆発・発火実験について説明したが、別途の保護装置と併用することもできる。すなわち、本発明は特許請求の範囲内であれば、いかなる変更も可能であるため、単なる例示として挙げられている上記の実施例に何ら制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】定電圧素子の一種である1W 4.3V(ツェナー電圧)ツェナーダイオードの電圧による漏れ電流区間とブレークダウン電圧区間を示すグラフ。
【図2】本発明の実施例1に従い電池の正極端子と負極端子との間に5.1Vのツェナー電圧を有するツェナーダイオードを接続して20V−1Aに過充電した状態で、電池の発熱、ツェナーダイオードの発熱、電池の電圧変化及びツェナーダイオードへの電流を測定して示すグラフ。
【図3】本発明の実施例2に従い33V−1A状態に過充電を行った以外は、実施例1と同じ条件下で、電池の発熱、ツェナーダイオードの発熱、電池の電圧変化及びツェナーダイオードへの電流を測定して示すグラフ。
【図4】定電圧素子を有さない比較例1による電池における電池の爆発・発火を示すグラフ。
【図5】本発明に係る定電圧素子を電池の内部及び外部にそれぞれ接続した状態を示す図。
【図6】1W 5.1Vのツェナー電圧を有するツェナーダイオードの電圧による電流曲線。2.0Vから4.5Vまでの漏れ電流の量が約数10nA〜数uAと極めて低い。これに対し、前記ツェナーダイオードのブレークダウン電圧と関連し、約6Vの前後でツェナーダイオードのブレークダウンが起こる(実施例参照)。
【符号の説明】
【0059】
1:負極リード
2:正極リード
3:2次電池
4:定電圧素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電圧素子を有する2次電池であって、
前記定電圧素子が、前記2次電池の正極端子と負極端子との間にパラレル接続されてなり、
前記定電圧素子が、ブレークダウン電圧が前記2次電池の爆発・発火電圧よりも低く、前記2次電池の満充電電圧における漏れ電流値が「電流×時間」単位で表される2次電池の容量値の0.05%未満であることを特徴とする、2次電池。
【請求項2】
前記定電圧素子が、ツェナーダイオードまたはバリスタであることを特徴とする、請求項1に記載の2次電池。
【請求項3】
前記定電圧素子がツェナーダイオードであり、前記ツェナーダイオードが逆方向にパラレル接続されることを特徴とする、請求項2に記載の2次電池。
【請求項4】
前記2次電池が、リチウムイオン電池であることを特徴とする、請求項1に記載の2次電池。
【請求項5】
前記2次電池の満充電電圧が4.2V以下であり、前記定電圧素子のブレークダウン電圧が5V乃至20Vの範囲内であることを特徴とする、請求項4に記載の2次電池。
【請求項6】
2次電池の正極端子と負極端子との間に、前記2次電池の満充電電圧よりも15%以上高くて前記2次電池の爆発・発火電圧よりは低いブレークダウン電圧を有する定電圧素子をパラレル接続することにより、過充電による2次電池の爆発・発火を防止する方法。
【請求項7】
前記定電圧素子が、ツェナーダイオード又はバリスタであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
定電圧素子を有する2次電池であって、
前記定電圧素子が前記2次電池の正極端子と負極端子との間にパラレル接続されてなり、
前記定電圧素子のブレークダウン電圧が、前記2次電池の満充電電圧よりは15%以上高くて前記2次電池の爆発・発火電圧よりは低いことを特徴とする、2次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−74401(P2012−74401A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2304(P2012−2304)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【分割の表示】特願2007−519136(P2007−519136)の分割
【原出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】