説明

実体顕微鏡

【課題】試料を傾けることなく観察方向を様々な方向に変更して立体的な観察を行う。
【解決手段】対物レンズ14を介して、それぞれ異なる方向から標本12を観察する一対の観察光学系13−1および13−2と、観察光学系13−1および13−2の光軸L1およびL2上にそれぞれ配置され、光軸L1およびL2を直交方向に移動させる円筒プリズム15−1および15−2と、円筒プリズム15−1および15−2による光軸L1およびL2の移動方向が同一の方向となるように、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度を変更する傾斜機構とを備える。本発明は、例えば、実体顕微鏡に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実体顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、対物レンズを介して、被検物をそのままの状態で観察する実体顕微鏡が知られている。実体顕微鏡は、比較的に低倍率での観察に用いられ、左右一対の光学系を介して被検物を異なる角度から観察し、それぞれの光学系の像を左右の眼で観察することにより、被検物を立体的に観察することができる。
【0003】
このように被検物を立体視することができるという特徴から、実体顕微鏡は、例えば、プリント基板などの高さがあるサンプルの観察に適している。特に、プリント基板の中でもハンダの剥れや量などの状態の観察に実体顕微鏡が用いられ、検鏡者は、試料を手で持って傾けながら様々な角度から観察することを行っている。また、実体顕微鏡では、水平面に対して左右どちら側にも20度程度の傾斜をすることができるティルティングステージと呼ばれるステージが利用され、小さなサンプルなどはティルティングステージに載置されて観察が行われる。
【0004】
このように、実体顕微鏡では試料を傾斜させて観察が行われるが、例えば、ティルティングステージに載置できないような大きな基板などを観察するときには、検鏡者が手に持って観察することが行われるが、そのような観察は困難であった。そこで、試料を傾けることなく様々な方向から試料を観察する方法が求められている。
【0005】
例えば、いわゆるロータリーヘッドを備えて構成される顕微鏡では、対物レンズの先端に設けられたプリズムを回転させることにより観察方向を回転させることができる。しかしながら、このような構成の顕微鏡では、試料を立体視するための複数の光学系に対応することができず、実体顕微鏡に適用させることは困難であった。
【0006】
また、例えば、特許文献1に開示されているように、観察方向を調整することができる実体顕微鏡が提案されている。しかしながら、特許文献1に開示されている実体顕微鏡では、観察する方向を変更した場合には立体視することができず、また、観察視点が移動するため、高倍率観察において観察視点を見失い易くなるということがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−181087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来の実体顕微鏡では観察方向を変更した場合には立体視することができず、試料を傾けることなく観察方向を様々な方向に変更して立体的な観察を行うことができる実体顕微鏡が求められている。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、試料を傾けることなく観察方向を様々な方向に変更して立体的な観察を行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実体顕微鏡は、それぞれ異なる方向から標本を観察する一対の観察光学系と、前記一対の観察光学系の光軸上に配置され、それぞれの前記光軸を偏心させる光学部材と、前記光学部材によるそれぞれの前記光軸偏心の移動方向が同一の方向となるように、前記光軸の移動量を変更する変更手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の実体顕微鏡においては、それぞれ異なる方向から標本を観察する一対の観察光学系の光軸上に、それぞれの光軸を偏心させる光学部材が配置され、その光学部材によるそれぞれの光軸偏心の移動方向が同一の方向となるように、光軸の移動量が変更される。なお、ここで、偏心とは、光軸の角度は変えずに、観察者に向かって左右方向に光軸をシフトさせることを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実体顕微鏡によれば、試料を傾けることなく観察方向を様々な方向に変更して立体的な観察を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した実体顕微鏡の一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】観察方向を傾斜させた状態の実体顕微鏡を示す図である。
【図3】観察方向の傾斜角度について説明する図である。
【図4】傾斜機構の構成例を示す図である。
【図5】本発明を適用した顕微鏡システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用した実体顕微鏡の一実施の形態の構成例を示す図である。
【0016】
実体顕微鏡11は、標本12を異なる角度から観察するための一対の観察光学系13−1および13−2を有している。実体顕微鏡11では、観察光学系13−1および13−2で共通の対物レンズ14が使用され、観察光学系13−1の光軸L1と観察光学系13−2の光軸L2とが、対物レンズ14よりも上側において平行に構成されている。
【0017】
対物レンズ14は、実体顕微鏡11に対して着脱可能とされており、検鏡者は、観察の対象となる標本12に応じた倍率の対物レンズ14を選択して装着することができる。
【0018】
観察光学系13−1および13−2の光軸L1およびL2上には、対物レンズ14側から順に、円筒プリズム15−1および15−2、アフォーカルズーム系16−1および16−2、結像レンズ17−1および17−2、並びに、接眼レンズ18−1および18−2がそれぞれ配置されている。
【0019】
円筒プリズム15−1および15−2は、その上面および下面が平行な平面で形成された円筒形状の透明な光学部材である。円筒プリズム15−1および15−2は、ユニット22により保持されており、対物レンズ14とアフォーカルズーム系16−1および16−2との間に、ユニット22ごと挿脱自在となるように構成されている。
【0020】
アフォーカルズーム系16−1は、アフォーカル光学系を構成するレンズ19−1および20−1と、レンズ19−1および20−1の間に配置される開口絞り21−1とを有して構成される。アフォーカルズーム系16−1は、結像面での結像倍率のみを変化させ、結像位置を変化させないような光学系であり、その上側および下側で観察光学系13−1および13−2が平行系となっている。また、アフォーカルズーム系16−2は、アフォーカルズーム系16−1と同様に、レンズ19−2および20−2と開口絞り21−2とを有して構成される。
【0021】
アフォーカルズーム系16−1および16−2では、レンズ19−1と20−1およびレンズ19−2と20−2の間隔を調整することで、実体顕微鏡11による観察倍率が連続的に変更され、開口絞り21−1および21−2の開口径を調整することで、標本12を観察する際の光量が調整される。
【0022】
結像レンズ17−1および17−2は、標本12からの観察光を集光して像を形成し、接眼レンズ18−1および18−2は、その像を拡大して、実体顕微鏡11を覗き込む検鏡者の両目による観察を行わせる。
【0023】
このように実体顕微鏡11は構成されており、検鏡者は、観察光学系13−1および13−2それぞれから接眼レンズ18−1および18−2を介して左右の眼で、それぞれの角度から標本12を見込み、標本12を立体視することができる。
【0024】
ここで、図1に示すように、光軸L1およびL2の間隔である光軸間距離をDとし、対物レンズ14の焦点距離をf0とし、観察光学系13−1および13−2を介して標本12を見込む角度を2αとすると、光軸間距離D、焦点距離f0、および角度αの関係は次の式(1)で表される。
【0025】
【数1】

・・・(1)
【0026】
この式(1)より、角度αは、次の式(2)で求めることができる。
【0027】
【数2】

・・・(2)
【0028】
例えば、光軸間距離Dを22mmとし、焦点距離f0を100mmとすると、標本12を見込む角度2αは、次の式(3)で表される。
【0029】
【数3】

・・・(3)
【0030】
このような角度2αの視差により、実体顕微鏡11では標本12を立体視することができる。ここで、以下、適宜、対物レンズ14から標本12に向かう観察光学系13−1および13−2の成す角度を2等分する軸を仮想光軸と称し、この仮想光軸に沿って標本12に向かう方向(図1に示されている矢印の方向)を、観察方向と称する。
【0031】
実体顕微鏡11では、対物レンズ14より上側の光軸L1およびL2が、標本12に対して(標本12が載置されるステージに対して)垂直となるように構成されており、図1に示すように、円筒プリズム15−1および15−2の上面および下面が、光軸L1およびL2に対してそれぞれ垂直である場合、仮想光軸は標本12に対して垂直となる。即ち、この場合の観察方向を垂直方向とする。そして、実体顕微鏡11では、円筒プリズム15−1および15−2を傾斜させることにより、垂直方向に対して傾斜した方向から標本12を観察することができる。
【0032】
図2を参照して、観察方向の傾斜について説明する。図2Aには、垂直方向に対して左側に観察方向を傾斜させた状態の実体顕微鏡11が示されており、図2Bには、垂直方向に対して右側に観察方向を傾斜させた状態の実体顕微鏡11が示されている。
【0033】
例えば、円筒プリズム15−1を、図2Aに示すように時計方向に傾斜させると、円筒プリズム15−1の上面および下面でそれぞれ光線が屈折するため、円筒プリズム15−1の下側の光軸L1は、その上側の光軸L1に対して水平方向(光軸に対して直交する方向)の左側にシフトする。同様に、円筒プリズム15−2を時計回りに傾斜させると、円筒プリズム15−2の下側の光軸L2は上側の光軸L2に対して水平方向の左側にシフトする。このとき、円筒プリズム15−1の傾斜角度および傾斜方向と、円筒プリズム15−2の傾斜角度および傾斜方向とが同一である場合、光軸L1およびL2の間隔が維持されたまま、同一のシフト量で光軸L1およびL2がシフトする。
【0034】
このように、光軸L1およびL2が左側にシフトした場合には、観察光学系13−1および13−2を2等分する仮想光軸は垂直方向に対して左側に傾斜するため、図2Aに示されていように、矢印Aの観察方向から標本12が観察される。
【0035】
一方、例えば、円筒プリズム15−1および15−2を、図2Bに示すように反時計方向に、同一の傾斜角度および傾斜方向で傾斜させると、円筒プリズム15−1および15−2の下側の光軸L1およびL2が水平方向の右側にシフトする。これにより、観察光学系13−1および13−2を2等分する仮想光軸は垂直方向に対して右側に傾斜するため、図2Bに示されていように、矢印Bの観察方向から標本12が観察される。
【0036】
このように、実体顕微鏡11は、円筒プリズム15−1および15−2を傾斜させることで観察方向を傾斜させることができ、標本12を固定した状態で、様々な角度から標本12を観察することができる。
【0037】
図3を参照して、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度と、仮想光軸の傾斜角度との関係について説明する。
【0038】
図3に示すように、円筒プリズム15−1および15−2の厚みをtとし、光軸L1およびL2それぞれに対する円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度をθとし、円筒プリズム15−1および15−2の屈折率をnとする。このとき、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜に従って光軸L1およびL2がシフトする距離を示す光軸シフト量dは、次の式(4)により求めることができる。
【0039】
【数4】

・・・(4)
【0040】
また、この光軸シフト量dと、対物レンズ14の焦点距離f0とに基づいて、垂直方向に対する仮想光軸の傾斜角度δは、次の式(5)で表される。
【0041】
【数5】

・・・(5)
【0042】
従って、例えば、屈折率nを1.5168とし、厚みtが20mmである円筒プリズム15−1および15−2を使用し、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度θの範囲を±30度とすると、式(4)より、傾斜角度θが−30度のとき光軸シフト量dは-3.95mmとなり、傾斜角度θが30度のとき光軸シフト量dは3.95mmとなる。また、このとき、焦点距離f0を100mmとすると、式(5)より、仮想光軸の傾斜角度δの範囲は2.2度(0.0395rad)となる。
【0043】
また、上述したように、実体顕微鏡11では、対物レンズ14を交換して倍率を変更することができ、例えば、焦点距離f0が50mmである対物レンズ14を使用する場合、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度θの範囲が±30度であれば、仮想光軸の傾斜角度δの範囲は4.5度となる。また、この場合、観察光学系13−1および13−2を介して標本12を見込む角度2αは6.3度となる。
【0044】
このように、実体顕微鏡11では、円筒プリズム15−1および15−2を利用して、円筒プリズム15−1および15−2を回転させるだけで観察方向を簡単に変更することができる。また、上述したように、円筒プリズム15−1および15−2は、ユニット22ごと挿脱自在となるように構成されているので、ユニット22を着脱するだけで、任意の観察方向と、垂直方向の観察方向を容易に切り替えることができる。
【0045】
また、実体顕微鏡11では、円筒プリズム15−1および15−2を同一の傾斜角度および傾斜方向で傾斜させることで、即ち、光軸L1およびL2の光軸シフト量dが同一方向に同一量となるようにすることで、一定の視差を維持したまま観察方向だけを変更することができる。
【0046】
なお、本実施の形態においては、観察光学系13−1および13−2に対して、円筒プリズム15−1および15−2は同角度で傾斜するとしたが、例えば、観察光学系13−1に対する円筒プリズム15−1の傾斜角度と、観察光学系13−2に対する円筒プリズム15−2の傾斜角度とが異なる角度であってもよい。このように傾斜角度が異なる場合には、標本12を立体視する視差量が変化し、観察光学系13−1に対する円筒プリズム15−1の傾斜角度と、観察光学系13−2に対する円筒プリズム15−2の傾斜角度とが異なるように制御することで、標本12の観察方向を変更するとともに、視差量(即ち、立体感)を変更することができる。
【0047】
次に、図4を参照して、円筒プリズム15−1および15−2を傾斜させる傾斜機構について説明する。図4Aには、歯車を利用した傾斜機構の構成例が示されており、図4Bには、リンク機構を利用した傾斜機構の構成例が示されている。
【0048】
歯車を利用した傾斜機構では、円筒プリズム15−1および15−2は、プリズムホルダ31−1および31−2にそれぞれ固定されており、プリズムホルダ31−1および31−2は、ユニット22に対してそれぞれ回転可能に装着されている。また、図4Aの右側には、右側面から見たプリズムホルダ31−1および円筒プリズム15−1の側面図が示されている。
【0049】
プリズムホルダ31−1および31−2は、回転軸を中心とした略円盤形状の円弧部を有しており、その円弧部の外周面の一部に、歯車が形成されている。そして、プリズムホルダ31−1および31−2の間には、それぞれの歯車に噛み合うように、駆動用歯車32が装着されている。
【0050】
例えば、駆動用歯車32には、図示しないハンドルが接続されており、そのハンドルを検鏡者が操作することができる。例えば、検鏡者が、ハンドルを反時計方向に回転させると、ハンドルに連動して駆動用歯車32が反時計方向に回転し、歯車を介して回転が伝達されて、プリズムホルダ31−1および31−2が時計方向に回転する。これにより、図4Aで矢印Aに示すように、垂直方向に対して左側に傾斜した観察方向から標本12を観察することができる。
【0051】
また、リンク機構を利用した傾斜機構では、円筒プリズム15−1および15−2は、プリズムホルダ41−1および41−2にそれぞれ固定されており、プリズムホルダ41−1および41−2の上端は、ユニット22に対してそれぞれ回転可能に装着されている。プリズムホルダ41−1および41−2は、下方に延びるような回転軸を有しており、その回転軸の先端が、操作棒42に回転可能に連結されている。即ち、ユニット22、プリズムホルダ41−1および41−2、並びに、操作棒42により、いわゆる平行クランク機構が構成されている。
【0052】
例えば、操作棒42の一端はユニット22の外部に突出しており、検鏡者が、その操作棒42の一端を水平方向に操作(押し引き)することにより、円筒プリズム15−1および15−2が同一の傾斜角度および傾斜方向に傾斜される。例えば、操作棒42が右方向に押されると、図4Bで矢印Bに示すように、垂直線に対して右側に傾斜した観察方向から標本12を観察することができる。
【0053】
なお、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜機構としては、上述のような構成の機構に限られるものではなく、円筒プリズム15−1および15−2を同一の傾斜角度および傾斜方向で傾斜させることができるように構成されていれば、どのような傾斜機構でもよい。
【0054】
また、本発明は、接眼レンズ18−1および18−2を介して検鏡者が直接的に観察するような実体顕微鏡11の他、例えば、接眼レンズを使用せずに、三次元表示の可能なディルプレイ装置を利用した顕微鏡システムに適用することができる。なお、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0055】
次に、図5は、本発明を適用した顕微鏡システムの構成例を示す図である。
【0056】
図5において、顕微鏡システム51を構成する実体顕微鏡11’は、図1の実体顕微鏡11と同様に構成されており、接眼レンズ18−1および18−2に替えて、撮像素子52−1および52−2を有するとともに、円筒プリズム15−1および15−2に替えて、平行平板53を有している。
【0057】
撮像素子52−1および52−2は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの撮像素子であり、観察光学系13−1および13−2それぞれの像面位置に配置され、それぞれ視差の異なる画像を撮像する。
【0058】
平行平板53は、円筒プリズム15−1および15−2と同一の厚みで、その上面および下面が平行な平面で形成された板状の透明な光学部材であり、観察光学系13−1および13−2の両方に掛かるようにに配置される。光軸L1およびL2を同一の光軸シフト量でシフトさせるには、円筒プリズム15−1および15−2を同一の傾斜角度および傾斜方向で傾斜させる必要があるため、上述したような歯車やリンク機構を利用した傾斜機構が必要となる。これに対し、実体顕微鏡11’では、1枚の平行平板53を採用することで、複雑な傾斜機構を必要とすることなく光軸L1およびL2を同一の光軸シフト量でシフトさせることができ、観察方向を傾斜させることができる。
【0059】
撮像素子52−1および52−2により撮像された画像は、パーソナルコンピュータなどにより構成される制御装置54において画像処理され、ディスプレイ装置55に表示される。ディスプレイ装置55は、三次元表示が可能な表示装置であり、例えば、偏光板や液晶シャッタなどを利用した眼鏡方式や、レンチキュラーやパララックスバリアなどを利用した裸眼立体視方式(眼鏡を使用しない方式)などの表示方式で、撮像素子52−1および52−2により撮像された画像を表示する。
【0060】
また、顕微鏡システム51では、マウスなどの入力装置56を操作し、検鏡者が制御装置54に対して各種の操作信号を入力することができる。例えば、観察方向を調整する操作信号が制御装置54に入力されると、制御装置54は、その操作信号に従って駆動装置57を制御し、駆動装置57が平行平板53を駆動して、観察方向が調整される。
【0061】
以上のように顕微鏡システム51は構成されており、撮像素子52−1および52−2により撮像された画像がディスプレイ装置55に三次元的に表示されるので、検鏡者は、実体顕微鏡11を覗きこむよりも大きな画面で、標本12を詳細に観察することができる。また、複数の検鏡者により標本12を同時に観察することができる。
【0062】
なお、本実施の形態において、実体顕微鏡11(図1)では、対物レンズ14とアフォーカルズーム系16−1および16−2との間に、円筒プリズム15−1および15−2が挿入されているが、円筒プリズム15−1および15−2の挿入箇所は光路が平行系であればよく、対物レンズ14とアフォーカルズーム系16−1および16−2との間に限定されるものではない。例えば、アフォーカルズーム系16−1および16−2と結像レンズ17−1および17−2との間の平行系である箇所に円筒プリズム15−1および15−2を挿入してもよい。
【0063】
また、本発明は、観察光学系13−1および13−2が平行部分を有する平行系の顕微鏡の他、一対の観察光学系が内向角をもって配置される内斜系の顕微鏡にも適用することができる。
【0064】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
11 実体顕微鏡, 12 標本, 13−1および13−2 観察光学系, 14 対物レンズ, 15−1および15−2 円筒プリズム, 16−1および16−2 アフォーカルズーム系, 17−1および17−2 結像レンズ, 18−1および18−2 接眼レンズ, 19−1および19−2 レンズ, 20−1および20−2 レンズ, 21−1および21−2 開口絞り, 22 ユニット, 31−1および31−2 プリズムホルダ, 32 駆動用歯車, 41−1および41−2 プリズムホルダ, 42 操作棒, 51 顕微鏡システム, 52−1および52−2 撮像素子, 53 平行平板, 54 制御装置, 55 ディスプレイ装置, 56 入力装置, 57 駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる方向から標本を観察する一対の観察光学系と、
前記一対の観察光学系の光軸上に配置され、それぞれの前記光軸を偏心させる光学部材と、
前記光学部材によるそれぞれの前記光軸偏心の移動方向が同一の方向となるように、前記光軸の移動量を変更する変更手段と
を備えることを特徴とする実体顕微鏡。
【請求項2】
前記光学部材は、透明な平行平面板であり、
前記変更手段は、前記光学部材の平面を前記光軸に対して傾斜させる傾斜角度を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の実体顕微鏡。
【請求項3】
前記光学部材は、前記観察光学系の光軸上に挿脱自在である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の実体顕微鏡。
【請求項4】
前記観察光学系の像面にそれぞれ配置される撮像素子と、
前記撮像素子により撮像された画像を、検鏡者により立体視可能となるように表示する表示手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の実体顕微鏡。
【請求項5】
前記光学部材は、前記一対の観察光学系における各光軸の移動量が同一となるように前記光軸を移動させる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の実体顕微鏡。
【請求項6】
結像面での結像倍率のみを変化させ、結像位置を変化させないように構成されたアフォーカルズーム光学系
をさらに備え、
前記光学部材は、前記アフォーカル光学系の上側または下側に形成される前記観察光学系の光路が平行系となる箇所に挿入される
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の実体顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−47796(P2012−47796A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187111(P2010−187111)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】