説明

実装処理作業装置及び実装処理作業方法

【課題】基板上へのTABやICの加熱圧着処理における保護シートの無駄を無くして低コストで部品実装可能な実装処理作業装置と方法を提供する。
【解決手段】縁部に複数のTAB2をACFにより仮圧着した基板1を、下架台に設置された下刃ブロック上に搭載し、その裏面から複数の上刃380を押圧すると共に加熱する加熱圧着(本圧着)によって、当該複数のTAB2を実装する実装処理作業装置と方法において、加熱した上刃380の当該TAB2の裏面への加熱圧着による損傷を避けるための保護シートを、幅の狭いリボン状の保護シート4とし、その送り方向を下刃ブロックと対向した配置された複数の上刃の配列方向にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶やプラズマなどのFPD(Flat Panel Display)の表示基板の周辺に、駆動ICの搭載や、COF(Chip on Film)又はFPC(Flexible Printed Circuit)等、所謂、TAB(Tape Automated Bonding)の接続、更には、周辺基板(PCB:Printed Circuit Board)の実装を行う実装処理作業装置とその方法に関し、特に、表示基板モジュール組立ラインにおいて、例えば、TABやICを搭載する処理作業に好適な実装処理作業装置及び実装処理作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示基板モジュール組立ラインは、液晶やプラズマ等、所謂、FPDの表示基板(以下、基本的には単に「基板」と略記し、その他の基板、例えばPCBの場合は、「PCB基板」と明記する)に、複数の処理作業工程を、順次、実行することで、当該基板の周辺に、駆動IC、又は、TAB及びPCB基板など(以下、これらを総称して「加熱圧着部品」と言う)を、実装する装置である。
【0003】
例えば、かかる処理工程の一例としては、(1)基板端部のTAB貼付け部を清掃する端子クリーニング工程、(2)清掃後の基板端部に異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を貼付けるACF工程、(3)基板上のACFを貼付けた位置に、TABやICを位置決めして搭載する搭載工程、(4)搭載したTABやICを加熱圧着することで、当該TABやICをACFにより基板に固定する圧着(又は、本圧着)工程、(5)固定したTABの基板側と反対側の面に、予めACFを貼り付けたPCB基板を貼付けて搭載するPCB工程(複数の工程を含む)などから成る。なお、ACFは、接合する部材のいずれか一方に予め貼り付けられていれば良く、上述した処理工程の他の例としては、例えば、ACFをTABやICの側に予め貼付けおくことも可能である。更には、処理する基板の辺の数や処理するTABやICの数などに応じて、各処理装置の数が決定され、又は、基板を回転する処理装置などが必要となる。
【0004】
上述した一連の工程を経ることにより、特に、基板上の電極とTABやIC等に設けた電極との間を熱圧着することによって、ACF内部の導電性粒子を介して、電気的な接続がなされる。なお、このとき、同時に、ACF基材樹脂の硬化により、基板と、TABやIC等の加熱圧着部品との間が、機械的にも接着・固定される。
【0005】
一般的に、搭載するTABやIC等の加熱圧着部品の個数が増大すると、ACFの貼り付け数も増大する。従来、ACFを長大な単一のシートのまま貼り付ける方法も存在するが、しかしながら、TABやICを搭載しない部分に貼り付けたACFは、上述したTABやICの接着・固定には利用されず、無駄になることから好ましくない。また、一般に、TABやICを順次搭載する場合においても、ACFの硬化を行う本圧着工程では、一列に並んだTABやICを一括して加熱圧着する方法がとられる。
【0006】
ところで、従来、この様な本圧着工程では、高温で硬質の圧着刃が直接TABやICに当接することで、TABやICに傷が付くこと、微小な圧着距離の誤差でACFの接続が不十分になることを避けるため、例えば、以下の特許文献1にも開示されるように、高温で硬質の圧着刃をTABやICに当接する際、軟質の保護シートを用いることが行われている。また、同様な保護シートの送り機構は、以下の特許文献2にも開示されており、当該機構は、圧着刃が複数並んだ場合にも、同様に、実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3267071号公報
【特許文献2】特開2005−359772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術では、それらのいずれの場合も、幅広の保護シートが必要となる。しかしながら、保護シートは、その材料費が高く、製品コストの上昇を招き、しかも重量物となることから、製造ラインにおける工程、特に、保護シートの交換に必要な工程における工数の増加の負担も大きかった。
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された方法では、TABやIC等の部品と部品との間の隙間部分では、実際には部品が搭載されていない場所でも、保護シートは圧着刃に接触するため、熱的なダメージを受ける。即ち、圧着刃の全長と同じ幅の保護シートがダメージを受け、かつ、使用しない部分の保護シートが無駄になる。
【0010】
一方、上述した特許文献2では、TABやICの部品の位置に対応して複数の圧着刃を用いる場合は、部品と部品との間の隙間部分には圧着刃が無いため、当該隙間の部分では、保護シートが熱的なダメージを受けることが無い。しかしながら、保護シートにおけるダメージ部分は、所謂、縞模様状となり、保護シートの送り方向が圧着刃群と直行する方向となっていることから、ダメージを受けなかった保護シートの残りの部分を有効に活用することは難しかった。また、保護シートは、重量物であることから、当該保護シートの送り機構も規模が大きく高価なものとなり、製造コストの上昇を招くこととなる。
【0011】
そこで、本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、その目的は、上述した保護シートの無駄を低減し、もって、FPD製造におけるコストを低減することが可能な実装処理作業装置、及び、その方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明によれば、まず、下架台と、当該下架台上に設置された下刃ブロックと、当該下架台上に設置された上架台と、当該上架台上に設置され、かつ、前記下刃ブロックに対向して延長し、かつ、前記下刃ブロックに対して移動可能な上刃と、前記下刃ブロックと前記上刃の少なくとも一方を所定の温度に加熱するためのヒートと、前記下刃ブロックと前記上刃の少なくとも一方を駆動し、前記下刃ブロック上に載置された基板の表面の一部に接着された加熱圧着部品の一部に前記上刃を押圧するための駆動手段と、そして、前記上刃が押圧される前記加熱圧着部品の一部を覆う保護シートを供給するための手段とを備えた実装処理作業装置であって、前記保護シート供給手段は、少なくとも前記上刃の幅よりも大きな幅を有するリボン状の保護シートを、前記上刃の延長方向に沿って平行に、当該リボン状の保護シートを送るための送り機構を備え、前記基板の表面の一部に接着された加熱圧着部品は、当該基板の縁部において、複数が間欠的に配置されており、かつ、前記上刃は、その延長方向に沿って、当該複数の加熱圧着部品の配置に対応して間欠的に配置された刃群から構成されている実装処理作業装置が提供される。
【0013】
また、本発明では、前記に記載した実装処理作業装置において、前記基板は、FPD(Flat Panel Display)の表示基板であることが好ましく、又は、前記リボン状の保護シートを送るための送り機構は、少なくとも2種類の送りピッチで当該保護シートを送る機能を備えていることが好ましい。
【0014】
更に、本発明によれば、やはり上記の目的を達成するため、表面の一部に複数の加熱圧着部品を一列に接着した基板を下刃ブロック上に載置し、当該下刃ブロックに沿って対向して配列された複数の上刃を、当該基板上に接着された複数の加熱圧着部品の各々の一部に押圧すると共に加熱して加熱圧着し、もって、複数の加熱圧着部品を前記基板表面の一部に実装する実装処理作業方法であって、前記加熱圧着部品の裏面と前記上刃との間に、当該上刃の幅よりも大きな幅を有するリボン状の保護シートを差し渡し、前記複数の上刃を、当該保護シートを間に介して、前記加熱圧着部品の裏面に押圧・加熱し、その後、前記リボン状の保護シートを、前記複数の上刃の配列方向に沿って送る実装処理作業方法が提供される。
【0015】
そして、本発明では、前記に記載した実装処理作業方法において、前記基板はFPD(Flat Panel Display)の表示基板で、かつ、前記加熱圧着部品はTABであり、そして、前記リボン状の保護シートは、同一部分を複数回の加熱圧着に用いた後に、前記複数の上刃の配列方向に沿って送られることが、そして、更には、前記TABは、複数が、前記複数の上刃の配列方向に沿って、当該TABの幅の2倍よりも大きなピッチで、前記基板上に接着されており、前記リボン状の保護シートは、前記TABの幅だけ送られ、その後、当該リボン状の保護シートが連続的に加熱圧着に用いた後に、当該連続して加熱圧着に用いられた部分の長さだけ送られることが好ましい。
【0016】
又は、本発明では、前記に記載した実装処理作業方法において、前記基板はFPD(Flat Panel Display)の表示基板で、かつ、前記加熱圧着部品はCOG(Chip On Glass)部品であり、そして、前記リボン状の保護シートは、1回の加熱圧着に用いた後に、前記複数の上刃の配列方向に沿って送られることが好ましく、そして、更には、前記COG部品は、複数が、前記複数の上刃の配列方向に沿って、当該COG部品の幅の2倍よりも大きなピッチで、前記基板上に接着されており、前記リボン状の保護シートは、前記COG部品の幅だけ送られ、その後、当該リボン状の保護シートが連続的に加熱圧着に用いた後に、当該連続して加熱圧着に用いられた部分の長さだけ送られることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
即ち、上述した本発明によれば、幅の狭いリボン状の保護シートを用いることから、軽量であり、当該シートの送りや交換のための機構も小規模で済むと同時に、そのコストも低減でき、しかも、TABやIC部品の隙間の部分をも有効に用いることが出来る、保護シートの無駄を省き、もって、FPD製造におけるコストを低減することが可能な実装処理作業装置、及び、その方法を提供することが可能となるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態になる表示基板モジュール本圧着装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】上記表示基板モジュール本圧着装置の加圧ヘッドの詳細を示すための一部拡大斜視図である。
【図3】上記表示基板モジュール本圧着装置の、上記図1に示したとは異なる(後の)時刻における状態を示す斜視図である。
【図4】上記表示基板モジュール本圧着装置において、本発明の実施例1になる、リボン状保護シートの送り動作を説明する模式図である。
【図5】上記表示基板モジュール本圧着装置において、本発明の実施例2になる、リボン状保護シートの送り動作を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、添付の図1〜図5を用いながら詳細に説明する。
【0020】
まず、図1の斜視図は、本発明の一実施の形態になる実装処理作業装置を示しており、より具体的には、基板に仮圧着した加熱圧着部品を本圧着する、所謂、表示基板モジュール本圧着装置を示している。
【0021】
なお、この図1は、上記表示基板モジュール本圧着装置が、図示しない基板保持手段により基板(即ち、FPDの表示基板)1をその下刃ブロック401上に載置し、ACFの硬化を行う工程である本圧着を実施すべく準備している状態を示している。この表示基板モジュール本圧着装置の概略構成は、以下の通りである。
【0022】
まず、下架台100上には、下刃台402が設置されており、更に、その上面には、下刃ブロック401が設置されている。そして、下刃ブロック401は、その内部に配置された図示しないヒータユニットを含んでおり、当該ヒータユニットによって、下刃ブロック401の下刃先端部分は、略60°C乃至100°Cに、加熱・保温されている。なお、この温度は、後にも述べるが、使用する加熱圧着部材であるACFの特性などに応じて、適宜、設定可能となっている。
【0023】
更に、下架台100上には、上記下刃ブロック401を跨ぐように、上架台101が設置されており、そして、この上架台101の背面には、所謂、バックプレート102が設置されている。このバックプレート102には、図示しないガイド機構により保持された上下プレート201が、上下方向に移動可能に、取り付けられている。この上下プレート201は、上記バックプレート102に固定された軸受台105と、上記上架台101に取り付けられたモータ103により保持されたボールねじ104と、そして、当該ボールねじ104と嵌合したボールナット202とによって、上下方向に駆動されて移動する。
【0024】
次に、添付の図2は、上記表示基板モジュール本圧着装置における本圧着刃の駆動機構を部分的に拡大した斜視図であり、図にも示すように、上記バックプレート102の下部には、複数の(本例では4本)の左右レール111、112、113、114が取り付けられており、これらのレールには、複数のヘッド300(図には、3個のヘッドだけを示す)が左右の方向に移動可能に取り付けられている。なお、これらヘッド300の詳細構造は、この図2からも明らかなように、以下にも述べる複数の部材により構成されている。
【0025】
これら複数のヘッド300は、相互に近接して配置される必要があることから、奇数番目に配置されたヘッド300と、偶数番目に配置されたヘッド300’とが存在する。また、各ヘッド300又は300’は、上記図2に示す構造を備えている。
【0026】
即ち、まず、奇数番目に配置されたヘッド300は、それぞれ、左右レール111と左右レール113に取り付けられた一対の直動ブロック311及び312と、これら一対の直動ブロックにより支持された縦長の板状部材であるプレート301とを備えており、そして、各種の部品が当該プレート301に取り付けられている。
【0027】
そして、プレート301の前面側には、上下レール321が取り付けられ、このレール321には、直動ブロック331を介して、上フレーム330が取り付けている。一方、この上フレーム330は、直動ブロック341を介して、押下げレール212に結合されており、この押下げレール212は、上記の上下プレート201の下部に固定されている。よって、上下プレート201が上下に移動すると、上フレーム340がこれに連動して上下に移動する。なお、この上フレーム330には、エアシリンダ340が固定されている。
【0028】
一方、下フレーム350も、同様に、直動ブロック332、333を介して、上下レール321に対して上下方向に移動可能に取り付けられている。この下フレーム350下部には、ヒンジ353を介して、煽りプレート351が取り付けられており、そして、当該煽りプレート351の前端部は、タイロッド352により、上記下フレーム350の前端部に結合されている。このため、タイロッド352の調整を行うことで、煽りプレート351の傾斜の調整が可能となっている。
【0029】
更に、この煽りプレート351には、断熱性に優れ、かつ、強度も強いセラミックであるジルコニア製の断熱ブロック361を介して、ヒータブロック370が固定されている。このヒータブロックには、図示しないヒータや熱電対が取り付けられており、そして、外部の温度コントローラにより、例えば、200°C〜数百°Cの範囲において、一定の温度に保たれている。なお、この温度は、使用するACFと接合する部材の条件により、適宜、定められるものとである。そして、このヒータブロック370の下面には、上刃(ツール)380が固定されている。
【0030】
なお、下フレーム350に取り付けられたこれらの部品は、一体として、前記シリンダ340のロッド部分に、放熱フィン360を介して結合されている。装置の稼動時において、稼動する上刃380に接合したシリンダ340には、下向きの力を発生する空気圧が供給されており、これにより、上刃380は常に下方に押し下げられている。他方、停止時においては、シリンダ340には上向きの空気圧が供給され、もって、上刃380は上方に引き上げられている。
【0031】
なお、上記の図1では、合計12基のヘッド300が取り付けられた例を示すが、当該装置では、その左右両端のヘッド300は上方に引き上げられており、即ち、これら両端のヘッド300は、上下プレート201を下げても、加圧を行わない位置にある。
【0032】
一方、偶数番目のヘッド300’の構造は、そのための押し下げレールが211、左右レールが112、114となる以外は、上記と同様である。なお、これにより、直動ブロック341、311、312の幅がプレート301より突出しているが、しかし、これらのヘッドは、互いに千鳥状に配置されており、狭いピッチで配置することが出来る。
【0033】
このように、複数の加熱された上刃が一列に並んだ状態において、これらの下部には、図に符号4で示すように、幅の狭いリボン状の保護シート4が、一対の上下リール504、504により、基板1の全幅に亘って張り渡されてある。なお、このリボン状の保護シート4の幅は、少なくとも、上記上刃380の先端(保護シートに接着する面)の幅よりも大きく設定されている。
【0034】
更に詳細には、上記図1の状態では、保護シート4は基板1の上方略10mmの位置にあり、基板1及び上刃380のいずれにも接触していない。また、この保護シート4を張り渡している上下リール504、504は、シート上下機構503の働きによりその高さを自在に移動させることができ、かつ、保護シート4は、シート送り機構502により、必要な長さだけ送り出される。なお、保護シート4は、一方のリール5aから送り出されるが、当該リールが空になると、シート交換機構501により、予備のリール5bにつなぎ換えられる。また、このシート送り機構502は、以下の説明からも明らかなように、リボン状の保護シート4を複数の異なる長さ(又は、ピッチ)で送り出す機能を備えている。
【0035】
次に、上記にその詳細な構造を説明した本圧着装置の動作について、添付の図3を用いて説明する。なお、この図3は、上記図1に示した状態の後の時刻における装置の状態を示した図である。
【0036】
即ち、本圧着の準備が整うと、保護シート4は上下リール504、504により押し下げられ、基板1の表面に接触する。この直後、上下プレート201に押し下げられた上刃380が保護シート4の背面(上面)に接触し、更に、上下プレート201の押し下げ量の増加に従って下方に押し込まれる。このとき、上刃380の押し下げ力はシリンダ340の空気バネ力により規定されているため、一定の荷重以上での押し下げは起こらず、即ち、使用する上刃380は、一定の力(荷重)で、基板1上の部品を当該基板1の表面に押し付けることになる。なお、上下プレート201の押し込み量は、設計上、適宜、設定することが出来るが、一般に、上刃380の接触の直前から押し下げの完了までの動作は、部品などへの衝撃を避けるため、ゆっくりと行う必要があることから、例えば、1mm程度の値に設定することが好ましい。
【0037】
このとき、図3に示した本圧着装置では、その両端のヘッド300は、シリンダ340が縮んだ状態であるため、上下プレート201が下端にあるときにも、上刃380は浮いた状態であり、即ち、保護シート4に接触していないことがわかる。
【実施例1】
【0038】
更に、このときの保護シート4の状態を図4(a)〜(d)に示す。なお、これらの図4(a)〜(d)は、上述した表示基板モジュール本圧着装置における保護シートの送り動作を説明するための模式図であり、当該装置における基板1(パネル)と保護シート4を上方から見た図である。
【0039】
まず、図4(a)は、基板1の縁部である長辺には、複数(本例では、10個)の加熱圧着部品の一つであるTAB2を仮圧着により搭載した状態のパネルを示している。そして、この上に、図4(b)に示すように、幅の狭いリボン状の保護シート4が、基板1の全幅に亘ってTAB2をその間に挟むように、差し渡される。なお、これらの図では、説明の都合上、保護シート4は実際の縮尺より幅広に描画しており、かつ、その左右両端の余分な部分も、その長さも延長して描画している。
【0040】
なお、上記基板1とTAB2との接着面の少なくとも一方の面には、上述した異方性導電フィルム(ACF)が、その接着性を利用して予め貼り付けおくことにより仮圧着されている。また、この異方性導電フィルム(ACF)は、以下に詳述する本圧着装置により実行される加熱圧着(即ち、本圧着)によって、ACF基材樹脂の硬化による機械的な接続と共に、その内部の導電性粒子の電気的接続によって、基板上の電極とTABに設けた電極との間の電気的接続を図り、もって、加熱圧着部品の実装が完了することとなる。
【0041】
上述した本圧着が行われると、上記の図4(b)において斜線部で示された保護シート4の部分が、加熱圧着に用いられる。即ち、複数の上刃(ツール)380により、基板1上のTAB2に押し付けられる。このように、基板1の一辺に複数(10個)のTAB2を加熱圧着する本圧着では、用いられる耐熱シリコンゴムの保護シート4は、上刃380の圧着によっても、熱ダメージや加圧ダメージを受け難く、そのため、通常、複数回(例えば、3〜5回程度)の加圧に用いることが可能である。即ち、保護シート4の同じ場所(部分)を、複数回に亘って、加熱圧着に用いることができる。
【0042】
その後、上述したようにリボン状の保護シート4の同一部分を用いて本圧着を複数回実施した(繰り返した)後、当該保護シート4は、次に、図4(c)に示す如く、TAB間のピッチの半分の長さ(即ち、TAB2の幅)だけ送り出される。即ち、上述したと同様に、複数回の加熱圧着において使用され、そして、TAB2の幅だけ送り出される。
【0043】
そして、上述した動作を繰り返した結果、図の斜線部からも明らかなように、(TABピッチ)×(TAB個数/2+1)又は(TAB幅)×(TAB個数+1)分の長さの保護シート4が、連続的に熱的ダメージを受けた状態となるので、保護シート4が当該長さ分だけ送られ、それに伴い、当該長さ分の新たな保護シート4が、基板1の全幅に亘ってTAB2をその間に挟むように差し渡される。これにより、次に処理される基板1から、この新しい保護シート4を使用して、上述したと同様に、本圧着作業を実行することが可能となる。
【0044】
このように、本発明による実装処理作業装置によれば、保護シート4を無駄なく使うことが出来る。即ち、保護シートの無駄を低減し、もって、FPD製造におけるコストを低減することを可能とする。また、従来のように、重量物である保護シートに代えて、リボン状の保護シートを使用することから、上述したように、その送り機構や交換部材などを含め、規模の小さいものでも済み、製造コストの上昇にはつながらない。
【0045】
なお、上述した実施例では、少なくとも、TAB間のピッチはTAB2の幅よりも大きく、特に、TAB間のピッチの半分がTAB2の幅に等しいものとして説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されることなく、それ以外の場合においても適用することが出来る。即ち、一般に、TAB部品の幅は、TAB間の隙間(即ち、TAB間のピッチの半分(1/2))よりも短いことが多く、そのため、上述した保護シート4の送り制御を採用するが可能である。しかしながら、TAB部品の幅がTAB間のピッチの半分(1/2)よりも長い場合には、上述したリボン状の保護シート4をTAB間のピッチの半分(即ち、TAB2の幅)の長さだけ送り出ことに代えて、(TABピッチ)×(TAB個数/2+1)の長さの送り出しを行えばよい。
【実施例2】
【0046】
なお、同様の設計思想は、上述したTAB2の本圧着に限らず、その他、例えばCOG(Chip On Glass)の搭載に用いる場合において、より顕著である。添付の図5(a)〜(c)は、上述したTABの本圧着を完了した後、同基板1の短辺に2個のICを搭載する場合の、基板1とリボン状の保護シート4の挙動を示している。
【0047】
即ち、まず、図5(a)に示すように、基板1の一辺に複数(本例では、その短辺に2個)のIC3を仮圧着により搭載した状態の基板1の上に、図5(b)に示すように、幅の狭いリボン状の保護シート4を、基板1の全幅に亘ってIC3をその間に挟むように、差し渡す。次に、本圧着が行われると、保護シート4の一部(上記図5(a)の2個のIC3に対応する部分)が加圧に用いられる。その後、当該保護シート4は、図5(c)に示す如く、2個のIC3(図に斜線部で示す。即ち、IC3の幅)だけ保護シート4が送られ、その結果、当該新たな保護シート4が、2個のIC3をその間に挟むように差し渡される。なお、この図5(c)は、2枚目の基板1に2個のIC3を圧着した後の保護シート4を示したものである。そして、これを所定の回数だけ繰り返すことにより、2個のIC3の間のピッチの2倍の長さに亘る保護シート4が、ほぼ連続して加圧に用いられ、その結果、当該長さの保護シート4が熱的なダメージを受けた状態となる。そこで、保護シート4を、当該長さ(2個のIC間のピッチ分)だけ送り出し、再び、上記の工程を繰り返す。
【0048】
なお、一般に、COGにより搭載される液晶ドライバICは、搭載される基板1となる大型表示パネルに比し、非常に小さいが、しかしながら、ここでは、その図示のため、実際の寸法に比較して、大きく描画している。そして、かかる大型液晶パネルなどでは、搭載するドライバICの数は、上述したTABの数に比較して少数であり、かつ、その幅も狭いことから、実際には、基板1上に搭載されるICの間の隙間は極めて大きなおのとなる。そのため、保護シートの無駄の低減の効果は著しく、もって、コストを大幅に低減することが可能となる。
【0049】
加えて、上述したCOG搭載に用いる保護シートとしては、一般的に、要求されるICチップの搭載精度が厳しいことから、滑りの良好なフッソ樹脂を保護シートとしてチップに接する面に用いる。このフッソ樹脂はシリコンゴムに比して高温耐久性に劣るため、保護シートにICチップの圧痕が付き易く、上述したような保護シートの複数回の使用は、事実上、不可能である。そのため、従来の方式では、極めて大量のフッソ樹脂シートが必要となり、かつ、その多くの部分が無駄に用いられることとなる。
【0050】
これに対し、上述した本発明による実装処理作業装置やその方法によれば、高価なフッソ樹脂シートを保護シートとしても、無駄なく有効に用いることが出来るため、その効果も一層大きなものとなる。
【0051】
即ち、上述したように、COGの搭載に用いる場合には、ICチップが小さいため、毎回(1回の圧着毎に)使用した1チップの幅分だけ保護シート4を送っても、当該保護シート4上において圧痕が付いた部分(即ち、上記図5(b)の斜線部)が連続するまでには、複数回は使うことが出来、シートを基板サイズ分(より厳密には、2個のIC間のピッチ分)だけ送り出す頻度を低減することが可能となる。即ち、これによれば、保護シートの無駄を著しく低減し、コストの大幅な低減に寄与すると共に、そのための送り機構も小規模な比較的安価な機構により実現することが出来ることから、製造コストの上昇を招くことはない。
【0052】
なお、以上に述べた実施例では、基板上に搭載するTAB又はICチップの幅は、上刃380の長さと等しいものとして説明した。しかしながら、特に、複数の品種の部品に対して同じ上刃を兼用する場合には、上刃380が当該部品の長さより長くなる場合がある。かかる場合、TABは比較的その厚さが薄いことから、部品が無い部分でも、上刃380が存在すれば熱的なダメージを受け易く、そのため、幅の狭いリボン状の保護シート4の送り量の基準を、TAB部品の幅に等しく設定するよりも、むしろ、上刃380の長さと等しくするほうが好適な場合がある。なお、かかる選択は、用いる保護シート4の材質や厚さ、更には、加圧力によっても、保護シート4が受ける熱的なダメージの広がり程度は変わることから、適宜、切り替えが可能であることが好ましい。
【0053】
また、上記の説明では、保護シート4の送り量の設定は、基板の設計仕様(特に、各部の寸法)から、送りの必要な長さを手作業により計算し、もって、実装装置に指示することもできるが、しかしながら、自動化のためには、CADデータから簡単に算出出来ることから、自動計算により行うことが好ましい。特に、幅が異なる複数種のTAB部品が混在する場合や、TABピッチが不均等な基板の場合には、手作業による勘違いによる間違いの発生を防ぐためにも、自動計算によって実装装置の送り量を決定することが好ましい。なお、この自動計算は、生産品種管理を行う上位コンピュータから、プロセスパラメータのダウンロードを行う際に、一括して設定されるようにすれば、設定漏れ等のミスを防止できることは言うまでも無い。
【0054】
加えて、以上に述べた本発明の実施例の説明では、本圧着を行うための熱を発生するヒータは、下刃ブロック内及び上刃の一部に設けられたものとして説明したが、しかしながら、本発明では、これに限定されることなく、例えば、下刃ブロック、又は、上刃の一部だけにヒータを設ける構成とすることも可能である。また、上述した駆動機構は、上刃を押し下げて下刃ブロックに当接するものとしたが、これらは互い近接するようにその位置を移動すればよく、上記に代え、例えば、下刃ブロックを上刃に向かって押し上げる構造としても同様である。
【0055】
更に、以上に述べた本発明の実施例は、特に、液晶やプラズマなどのFPDの表示基板にTAB又はICチップなどの加熱圧着部品を、異方性導電フィルム(ACF)を介して、搭載するための実装処理作業装置及びその方法について述べたが、しかしながら、本発明は、その精神を逸脱しない範囲において、その他の実装装置や方法においても同様に利用することが出来ることは、当業者であれば明らかであろう。
【符号の説明】
【0056】
1…基板、2…TAB、3…ドライバIC、4…リボン状の保護シート、100…下架台、101…上架台、300…ヘッド、380…上刃、401…下刃ブロック、502…保護シート送り機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下架台と、
当該下架台上に設置された下刃ブロックと、
当該下架台上に設置された上架台と、
当該上架台上に設置され、かつ、前記下刃ブロックに対向して延長し、かつ、前記下刃ブロックに対して移動可能な上刃と、
前記下刃ブロックと前記上刃の少なくとも一方を所定の温度に加熱するためのヒートと、
前記下刃ブロックと前記上刃の少なくとも一方を駆動し、前記下刃ブロック上に載置された基板の表面の一部に接着された加熱圧着部品の一部に前記上刃を押圧するための駆動手段と、そして、
前記上刃が押圧される前記加熱圧着部品の一部を覆う保護シートを供給するための手段とを備えた実装処理作業装置において、
前記保護シート供給手段は、少なくとも前記上刃の幅よりも大きな幅を有するリボン状の保護シートを、前記上刃の延長方向に沿って平行に、当該リボン状の保護シートを送るための送り機構を備えており、
前記基板の表面の一部に接着された加熱圧着部品は、当該基板の縁部において、複数が間欠的に配置されており、かつ、
前記上刃は、その延長方向に沿って、当該複数の加熱圧着部品の配置に対応して間欠的に配置された刃群から構成されていることを特徴とする実装処理作業装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載した実装処理作業装置において、前記基板は、FPD(Flat Panel Display)の表示基板であることを特徴とする実装処理作業装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載した実装処理作業装置において、前記リボン状の保護シートを送るための送り機構は、少なくとも2種類の送りピッチで当該保護シートを送る機能を備えていることを特徴とする実装処理作業装置。
【請求項4】
表面の一部に複数の加熱圧着部品を一列に接着した基板を下刃ブロック上に載置し、当該下刃ブロックに沿って対向して配列された複数の上刃を、当該基板上に接着された複数の加熱圧着部品の各々の一部に押圧すると共に加熱して加熱圧着し、もって、複数の加熱圧着部品を前記基板表面の一部に実装する実装処理作業方法であって、
前記加熱圧着部品の裏面と前記上刃との間に、当該上刃の幅よりも大きな幅を有するリボン状の保護シートを差し渡し、
前記複数の上刃を、当該保護シートを間に介して、前記加熱圧着部品の裏面に押圧・加熱し、その後、
前記リボン状の保護シートを、前記複数の上刃の配列方向に沿って送ることを特徴とする実装処理作業方法。
【請求項5】
前記請求項4に記載した実装処理作業方法において、前記基板はFPD(Flat Panel Display)の表示基板で、かつ、前記加熱圧着部品はTABであり、そして、前記リボン状の保護シートは、同一部分を複数回の加熱圧着に用いた後に、前記複数の上刃の配列方向に沿って送られることを特徴とする実装処理作業方法。
【請求項6】
前記請求項5に記載した実装処理作業方法において、前記TABは、複数が、前記複数の上刃の配列方向に沿って、当該TABの幅の2倍よりも大きなピッチで、前記基板上に接着されており、前記リボン状の保護シートは、前記TABの幅だけ送られ、その後、当該リボン状の保護シートが連続的に加熱圧着に用いた後に、当該連続して加熱圧着に用いられた部分の長さだけ送られることを特徴とする実装処理作業方法。
【請求項7】
前記請求項4に記載した実装処理作業方法において、前記基板はFPD(Flat Panel Display)の表示基板で、かつ、前記加熱圧着部品はCOG(Chip On Glass)部品であり、そして、前記リボン状の保護シートは、1回の加熱圧着に用いた後に、前記複数の上刃の配列方向に沿って送られることを特徴とする実装処理作業方法。
【請求項8】
前記請求項7に記載した実装処理作業方法において、前記COG部品は、複数が、前記複数の上刃の配列方向に沿って、当該COG部品の幅の2倍よりも大きなピッチで、前記基板上に接着されており、前記リボン状の保護シートは、前記COG部品の幅だけ送られ、その後、当該リボン状の保護シートが連続的に加熱圧着に用いた後に、当該連続して加熱圧着に用いられた部分の長さだけ送られることを特徴とする実装処理作業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−13566(P2011−13566A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159032(P2009−159032)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】