説明

実験室自動化システムにおけるサンプルの評価分析の実行の順序を決定するための方法

複数の臨床分析装置、通常、自動臨床分析装置を用いるシステムにおける実行の順序で評価分析を構成するための方法。この方法は、(a)サンプルコンテナ内の所与のサンプルに関する評価分析のセットにおいて、いくつかの個々の評価分析の実行の順序を優先度設定するステップであって、所与のサンプルに関する評価分析のセットにおける個々の評価分析の優先度が、個々の評価分析の感度によって特定されており、少なくとも1つのその他のサンプルからの少なくとも1つのサンプル間キャリーオーバ寄与が存在し、その少なくとも1つのその他のサンプルの評価分析が、所与のサンプルの個々の評価分析に先立ち、優先度設定するステップと、(b)所与のサンプルの個々の評価分析に先立つ、少なくとも1つのその他のサンプルの少なくとも1つの評価分析のために、少なくとも1つのその他のサンプルからの(1つまたは複数の)サンプル間キャリーオーバ寄与の総和を、所与のサンプルの個々の評価分析の感度しきい値と比較するステップと、(c)所与のサンプルの個々の評価分析を含む、所与のサンプルに関する評価分析の実行の順序を確立するか、または評価分析を実行するために、所与のサンプルの少なくとも一部を、少なくとも1つの追加のコンテナ内に分与するかを決定するために、この比較を使用するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動臨床分析装置におけるサンプル間キャリーオーバ(sample−to−sample carryover)に関し、より詳細には、評価分析のセットにおける評価分析の実行の順序を改善することによって、自動臨床分析装置におけるサンプル間キャリーオーバの問題に対処することに関する。
【背景技術】
【0002】
実験室自動化システムは、少なくとも1つの臨床分析装置と当該システムのその他の構成要素の間のサンプルの送達を自動化する目的で、少なくとも1つの臨床分析装置を当該システムのそれらのその他の構成要素と一体化する。この少なくとも1つの臨床分析装置は、通常、自動臨床分析装置である。実験室自動化システムは、複数の自動臨床分析装置を備えることが可能であり、かつ複数の自動臨床分析装置を備えることが好ましい。
【0003】
自動臨床分析装置のサンプルプローブが、サンプルコンテナから所与のサンプルまたはその一部を吸引する(aspirate)ときはいつでも、当該サンプルプローブは、当該サンプルをこれまで吸引されてきた異なるサンプルのほんの一部で汚染する可能性を有することが知られている。この汚染モードは、通常、キャリーオーバ、より詳細には、サンプル間キャリーオーバと呼ばれる。自動臨床分析装置は、サンプルプローブを洗浄するための積極的な技法と、サンプルプローブを洗浄するための特別な洗浄液と、このタイプのキャリーオーバを最小限に抑えるために大量のプローブ洗浄液とを用いる。例えば、両方とも参照により本明細書に組み込まれている、US2003/0223472A1およびUS2005/0279387A1を参照されたい。しかし、多くの場合、サンプルプローブは、完全に、すなわち、サンプル間キャリーオーバが完全に除去されるレベルまで洗浄されることは決してあり得ないため、サンプルプローブを洗浄するための技法は、キャリーオーバを、自動臨床分析装置のオペレータによって決定された許容レベル、または評価分析の感度に基づいて決定された許容レベルまで削減するに過ぎない。所与の評価分析は、感度しきい値を有することも知られている。感度しきい値は、検出され得る、もしくは測定され得る、またそれらの両方が可能な、サンプル中のアナライトの最少濃度を指す。特定の評価分析の感度しきい値に応じて、このサンプル間キャリーオーバは、結果に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
現在、実験室自動化システムにおける自動臨床分析装置のサンプルプローブによるサンプル間キャリーオーバによるサンプルの汚染の影響を回避するために、サンプルの一部は、元のサンプルコンテナから吸引されて、追加のサンプルコンテナ内に分与され(dispensed)、当該サンプルを追加のサンプルコンテナから吸引するのに先立って、使い捨てチップがサンプルプローブに適用される。追加のサンプルコンテナおよび、例えば、バーコードなど、追加のサンプルコンテナを識別する印が要求されるため、このサンプル移送ステップはコストを増大させる。より重要なことには、この移送ステップは、結果の報告を遅らせ、これは、患者の看護に悪影響を及ぼす可能性がある。加えて、使い捨てチップは、サンプル間キャリーオーバを完全に除去するが、使い捨てチップの使用は、分与ステップ間で再使用可能なサンプルプローブを単に洗浄するよりもより費用がかかる。
【0005】
サンプルがSTATサンプル(すなわち、短いターンアラウンドタイム(Short Turn Around Time)サンプル)であり、2つ以上の臨床分析装置からの結果が迅速に要求される場合、元のサンプルコンテナからサンプルの少なくとも一部を吸引して、その少なくとも一部を、少なくとも1つの追加のサンプルコンテナに分与することが好都合な場合があり、それぞれの追加のサンプルコンテナは、評価分析の実行のための順序においてその独自の位置を有する。しかし、追加のサンプルコンテナ、追加のサンプルコンテナ用の追加のラベルなど、追加のコストが発生することになる。
【0006】
US4,971,913は、複数の試験項目において、対応する試験片を測定する目的で、自動化学分析装置内で複数の異なる試薬を、サンプルを含有している連続反応槽内に引き渡すために、試薬送達システムを制御する方法を開示する。この方法は:
その数が、異なる種類の試薬の数より少ない、少なくとも1つの試薬送達デバイスを準備するステップと、
メモリ手段内に、測定時の試薬同士の間の汚染の影響に関して、試験項目同士の間の所定の関係を表す情報を格納するステップと、
測定が試薬同士の間の汚染による影響を受けないような形で、当該メモリ手段内に格納された所定の関係に従って、試薬送達デバイスの動作を制御するステップとを備える。
本願は、試薬による汚染だけに対処する。
【0007】
WO98/45679は、試薬の相互汚染問題を低減するように、自動化されたランダムアクセス器具上の一連の評価分析を最適化するための方法および装置を開示する。試薬の相互汚染に関する一般的な媒体は、様々な試験のために試薬を移送する試薬プローブ表面である。複数の評価分析が単一のサンプルに関して実行される場合、初期の最善の経路(評価分析の順序)が識別され、その後、より良好な代替案を探す反復プロセスが始まる。このプロセスは、状態空間を探索するために、ランダムアクセス相互汚染に関連する関係に関する知識ベースの適用を必要とする。この文献も、試薬による汚染に対処する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0223472A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0279387A1号明細書
【特許文献3】米国特許第4,971,913号明細書
【特許文献4】国際公開第98/45679号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5,795,784号明細書
【特許文献6】米国特許第5,856,194号明細書
【特許文献7】米国特許第6,413,780号明細書
【特許文献8】米国特許第6,562,298号明細書
【特許文献9】米国特許第4,647,362号明細書
【特許文献10】米国特許第4,678,755号明細書
【特許文献11】米国特許第4,533,457号明細書
【特許文献12】米国特許第4,619,739号明細書
【特許文献13】米国特許第4,797,192号明細書
【特許文献14】米国特許第5,025,389号明細書
【特許文献15】米国特許第5,413,770号明細書
【特許文献16】米国特許第5,468,646号明細書
【特許文献17】米国特許第5,536,049号明細書
【特許文献18】米国特許第5,543,524号明細書
【特許文献19】米国特許第5,545,739号明細書
【特許文献20】米国特許第5,565,570号明細書
【特許文献21】米国特許第5,669,819号明細書
【特許文献22】米国特許第5,682,662号明細書
【特許文献23】米国特許第5,723,795号明細書
【特許文献24】米国特許第5,783,699号明細書
【特許文献25】米国特許第5,859,429号明細書
【特許文献26】米国特許第5,915,282号明細書
【特許文献27】米国特許第5,915,583号明細書
【特許文献28】米国特許第5,938,120号明細書
【特許文献29】米国特許第5,965,828号明細書
【特許文献30】米国特許第6,022,746号明細書
【特許文献31】米国特許第6,063,634号明細書
【特許文献32】米国特許第6,150,113号明細書
【特許文献33】米国特許第6,153,377号明細書
【特許文献34】米国特許第6,162,645号明細書
【特許文献35】米国特許第6,588,625号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】池田ら、「Total Clinical Laboratory Testing System for Laboratory Automation」、日立 Review、Vol.41(1992)No.4、167−172頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
評価分析の実行の順序が実験室のワークフローと一体化されて、追加のサンプルコンテナの使用から生じる追加のコストが最小限に抑えられ、STATサンプルに関する許容応答時間が依然として維持される方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、この発明は、少なくとも1つの臨床分析装置、通常、自動臨床分析装置を用いるシステムにおける実行のための順序で評価分析を構成するための方法を提供する。この方法は:
(a)元のサンプルコンテナ内の所与のサンプルに関する評価分析のセットにおいて、いくつかの個々の評価分析の実行の順序を優先度設定するステップであって、所与のサンプルに関する評価分析のセットにおける個々の評価分析の優先度が、個々の評価分析の感度によって特定されており、少なくとも1つのその他のサンプルからの少なくとも1つのサンプル間キャリーオーバ寄与が存在し、その少なくとも1つのその他のサンプルの評価分析が、所与のサンプルの個々の評価分析に先立つ、優先度設定するステップと、
(b)所与のサンプルの個々の評価分析に先立つ、少なくとも1つのその他のサンプルの少なくとも1つの評価分析のために、少なくとも1つのその他のサンプルから(1つまたは複数の)サンプル間キャリーオーバ寄与の総和を計算するステップと、
(c)ステップ(b)において計算された総和を、所与のサンプルの個々の評価分析の感度しきい値と比較するステップと、
(d)ステップ(b)において計算された総和が、所与のサンプルの個々の評価分析の感度しきい値未満である場合、その所与のサンプルの個々の評価分析を含む、所与のサンプルに関する評価分析の実行のための順序を確立するが、ステップ(b)において計算された総和が、所与のサンプルの個々の評価分析の感度しきい値を超える場合、元のサンプルコンテナから所与のサンプルの少なくとも一部を吸引して、その少なくとも一部を、少なくとも1つの追加のサンプルコンテナに分与するステップとを備え、少なくとも1つの追加のサンプルコンテナ内に分与された所与のサンプルの少なくとも一部は、所与のサンプルの個々の評価分析を実行するために使用されることになる。
元のサンプルコンテナ内の所与のサンプルに関する評価分析が、感度の降順で実行されるように順序付けることによって、所与のサンプルに関する評価分析のセットを実行するために要求されるサンプルコンテナの数量を最小限に抑えることが可能である。
【0012】
本発明のもう1つの態様では、所与のサンプルに関する評価分析の実行のための順序が確立された後で、この方法は、個々の評価分析の初期の結果に応じて、個々の評価分析を再実行するための感度しきい値を決定するステップ、または個々の評価分析の反射試験(reflex test)を実行するステップをさらに含む。感度しきい値を決定するこのステップが完了した後で、この方法は、待機期間が好ましいかどうかを決定するステップを含む。高度の感度を有する評価分析が初めに実行された後で、当該評価分析が再実行されるべきである場合、待機期間は有益であり得る。サンプル間キャリーオーバを回避することが望まれることから、待機期間の使用は、サンプル間キャリーオーバの悪影響をかなり低減し得る。待機期間が要求されない場合、評価分析の実行のための順序が確立されて、評価分析のセットが実行されることが可能である。待機期間が要求される場合、この方法は、STATサンプルが分析されるべきであるかどうかを決定するステップを含む。STATサンプルが分析されるべきである場合、当該サンプルの少なくとも一部が、元のサンプルコンテナから吸引されて、その少なくとも一部は、少なくとも1つの追加のサンプルコンテナ内に分与され、その少なくとも1つの追加のサンプルコンテナ内に分与された、サンプルのその一部は、STATサンプルの評価分析を実行するために使用されている。STATサンプルの評価分析が実行されるべきでない場合、評価分析の再実行または反射試験を実行することが要求されずに、有効な結果を待つための待機期間が確立され得る。
【0013】
実験室自動化システムにおいて、評価分析の実行の順序を構成するためのこの方法、またはアルゴリズムは、元のサンプルコンテナから(1つまたは複数の)追加のサンプルコンテナへのサンプルの(1つまたは複数の)部分を移送させる必要性を最小限に抑えることになる。結果として、通常、サンプルプローブ上で使い捨てチップを用いて行われる動作の数は大きく削減されることになり、それにより、使い捨て品目のコストを削減し、追加のサンプルコンテナ(例えば、サンプルチューブ)およびコンテナを識別する印(例えばバーコード)の必要性も削除されることになり、それにより、使い捨て品目のコストをさらに削減する。これらの節約の結果は、実験室向けの評価分析または試験当たりのコストを低減し、医者および患者に対して結果を報告するための時間を削減する。実験室自動化システムにおける評価分析の実行の順序を構成するためのこの方法、またはアルゴリズムは、サンプル間キャリーオーバによって、所与のサンプル内に引き起こされる干渉の可能性を削減し、それにより、結果として、所与のサンプルの完全性ならびに所与のサンプルの試験結果の正確さおよび精度を維持することになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実験室自動化システムの概略図である。
【図2】サンプル間キャリーオーバの影響を低減するのに適した評価分析の実行の順序を構成するための方法、またはアルゴリズムを例示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される場合、「実験室自動化システム」という表現は、サンプルを分析するのに先立って、その間に、かつその後に、サンプルの処理を自動化するように設計されたシステムを意味する。この処理は、サンプルを処理することと、サンプルを臨床分析装置からシステムのその他の構成要素に移送させることと、当該サンプルを格納することとを含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、アナライトを含むことが疑われる材料を意味する。このサンプルは、評価分析内のソースから取得されると直ちに使用されることが可能であり、または評価分析を行う前に、当該サンプルの性質を修正するための前処理に続いて使用されることも可能である。このサンプルは、例えば、血液、唾液、接眼レンズ流体、脳脊髄液、汗、尿、乳液、腹水、粘液、滑液、腹水、羊水などを含むが、これらに限定されない、生理流体など、任意の生物学的源泉から派生し得る。このサンプルは、例えば、血液から血漿を作成すること、粘性流体を希薄化することなど、使用に先立って事前処理されることが可能である。処理の方法は、濾過、蒸留、濃縮、干渉成分の不活性化、および試薬の追加を必要とし得る。生理流体に加えて、例えば、水、食品など、その他の液体サンプルが使用され得る。加えて、アナライトを含むことが疑われる固体物がサンプルとして使用され得る。本明細書で使用される場合、「アナライト」という用語は、検出されることになる、もしくは測定されることになる化合物または合成物を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「サンプル間キャリーオーバ」という表現は、第1のコンテナ内の第1のサンプルに対するサンプルプローブの接触から、第2のコンテナ内の第2のサンプルに対するサンプルプローブの接触まで、サンプルプローブの表面上で運ばれるサンプルの残留物を意味する。サンプル間キャリーオーバに伴う主な問題は、非常に高い感度の評価分析という状況において、第2のサンプルの評価分析が、偽陽性結果をもたらす第2のサンプルの評価分析を導く可能性が非常に高いという結果を伴って、所与のサンプル内のアナライトが第2のサンプルに及ぶことになる点である。所与のサンプルが、その他のサンプルが吸引されてきた異なる臨床分析装置において吸引された場合、または同じ臨床分析装置において、所与のサンプルの連続的な吸引同士の間で別のサンプルが吸引された場合、サンプル間キャリーオーバは累積する。例えば、所与のサンプル、例えば、サンプルAが、4つの異なる評価分析に関して、1つの臨床分析装置によって4回吸引された場合、その臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与は、一度だけカウントされる。しかし、所与のサンプル、例えば、サンプルAが、4つの異なる臨床分析装置によって一度吸引された場合、4つの臨床分析装置のそれぞれからのサンプル間キャリーオーバ寄与は、サンプルA内に累積される。所与のサンプル、例えば、サンプルAの再実行評価分析の状況において、サンプルAが維持されていると同時に、その他のサンプル、例えば、サンプルB、サンプルC、およびサンプルDが、サンプルAの初期の吸引と、再実行評価分析のためのサンプルAの吸引の間に同じ臨床分析装置において吸引された場合、当該臨床分析装置からのサンプルB、C、およびDからのサンプル間キャリーオーバ寄与は、サンプルA内でカウントされることになる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「感度」という用語は、サンプル内で検出され得るアナライトの最低濃度を意味する。本明細書で使用される場合、「感度しきい値」という表現は、それ未満では、サンプル内でアナライトの最低濃度が検出され得ない濃度を意味する。相対的な点で、サンプル内のアナライトの濃度が低い場合、当該評価分析は、アナライトを検出するために高い感度を有さなければならず、サンプル内のアナライトの濃度が高い場合、当該評価分析は、アナライトを検出するために低い感度を有し得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「個々の評価分析」という表現は、それに関して、アナライトの存在もしくは濃度またはアナライトの存在および濃度の両方が決定される、評価分析のセットまたは複数の評価分析の特定の評価分析を意味する。本明細書で使用される場合、「評価分析のセット」および「複数の評価分析」という表現は、個々の評価分析が、サンプルに関して実行されるべきメンバーである評価分析のグループを意味する。本明細書で使用される場合、「再実行評価分析」という用語は、少なくとも2度目に所与のサンプルからの個々の評価分析を実行することを指し、この個々の評価分析は、所与のサンプルに関して一度実行されている。再実行評価分析を実行するオプションは、例えば、システムが分析装置上に故障を検出した場合に自動的であり得、あるいは、技術者が、ある結果の正確さについて自信がない場合かつ/またはある結果が確認されることを望む場合、再実行評価分析は手動で開始されることが可能である。本明細書で使用される場合、「反射試験」という用語は、先行する評価分析の結果が取得された後で要求される、後続の評価分析を実行することを指す。例えば、個々の評価分析が、TSH(甲状腺刺激ホルモン)の濃度が高いことを示した場合、FT4(遊離サイロキシン)に対する反射評価分析が要求され得る。オペレータによって選択された評価分析は、初めに選択された評価分析とは異なる評価分析を自動的に実行するためにオペレータによって画定された範囲の使用を特定することが可能である。
【0020】
本明細書で使用される場合、「待機期間」という表現は、進行中の当該評価分析からの結果が報告されるまで、そこからの追加の吸引を回避するためにサンプルコンテナが維持される時間の範囲を意味する。当該結果が有効であるとみなされる場合、サンプルコンテナは、その他の臨床分析装置が存在する場合、かかるその他の臨床分析装置に解放されることが可能である。当該結果が、評価分析が再実行されるべきであること、または反射試験が実行されるべきであることを示す場合、当該サンプルコンテナは、まず、当該評価分析が当初実行された臨床分析装置に戻され、次いで、その他の臨床分析装置が存在する場合、その後、かかるその他の臨床分析装置に解放される。
【0021】
本明細書で使用される場合、「元のサンプルコンテナ」という表現は、そこからサンプルが個々の評価分析に関して吸引されたサンプルコンテナ、またはそこから個々の評価分析に関して、当該サンプルが吸引され得る別のサンプルコンテナへの移動のために吸引されたサンプルコンテナを意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「および/または」という表現は、語、成句、または節を接続するために、「および」もしくは「または」が使用され得ることを示すために使用される。語に続く、記号「s」の使用は、文脈に応じて、1つまたは複数を意味する。
【0023】
実験室自動化システムは、少なくとも1つのタイプの臨床分析装置を備える。実験室自動化システムは、2つ以上の異なるタイプの臨床分析装置を備え得る。さらに、少なくとも1つのタイプの臨床分析装置は、通常、自動臨床分析装置である。1つのタイプの自動臨床分析装置は、免疫測定を実行するために使用され得る。この発明における使用に適した自動免疫測定の分析装置の代表的な例は、それらのすべてが、参照により本明細書に組み込まれている、US5,795,784、US5,856,194、US6,413,780、US6,562,298において記載されるものを含むが、これらに限定されない。別のタイプの自動臨床分析装置は、臨床化学評価分析を実行するために使用され得る。本発明における使用に適した自動臨床化学分析装置の代表的な例は、それら両方が、参照により本明細書に組み込まれている、US4,647,362、US4,678,755において記載されるものを含むがこれらに限定されない。一部の自動臨床分析装置は、免疫測定および臨床化学評価分析の両方を実行するために使用され得る。
【0024】
図1は、第1の自動免疫測定分析装置12と、第1の自動臨床化学分析装置14と、第2の自動免疫測定分析装置16と、第2の自動臨床化学分析装置18とを備える実験室自動化システム10を例示する。自動分析装置12、14、16、および18のそれぞれは、サンプルコンテナ20からサンプルを吸引することが可能な、少なくとも1つのプローブ(図示せず)を有する。図1では、合計で20個のサンプルコンテナが示される。本明細書で対処されるサンプル間キャリーオーバ問題を引き起こすのはこれらのプローブである。その上でサンプルコンテナ20が移動することが可能なトラックシステムは、メイントラック22と、スパートラック(spur tracks)24aおよび24bを備える。スパートラック24aは、サンプルコンテナが、メイントラック22から自動臨床化学分析装置14に移動することを可能し、スパートラック24bは、サンプルコンテナがメイントラック22から自動臨床化学分析装置18に移動することを可能にする。図1に示されるシステム10では、通常、実験室自動化システム内に含まれるその他の構成要素は、それに関して、評価分析のセットが実行されるサンプルを格納するためのチューブストレージ(tube storage)および取出しユニット26と、(a)サンプルコンテナ20を実験室自動化システム10に取り入れるため、および(b)サンプルコンテナ20を実験室自動化システム10から取り出すための入出力モジュール28とを含むが、これらに限定されない。やはり図1に示されるのは、血液のサンプル内の細胞から血清を分離するための第1の遠心分離システム30および第2の遠心分離システム32、サンプルコンテナ20からキャップ(通常、サンプルチューブからのキャップ)を外すためのデキャッパ(decapper)34、ならびに分析試験の完了後にサンプルコンテナを密封するための再密封装置36である。図1においてなおさらに示されるのは、サンプル部分ディスペンサ(sample portion dispenser)38である。サンプル部分ディスペンサ38の機能は、サンプルの少なくとも一部を元のコンテナから吸引して、当該サンプルのその少なくとも一部を、少なくとも1つの追加のサンプルコンテナに分与することである。この少なくとも1つの追加のサンプルコンテナは、評価分析がSTATサンプルに関して実行される場合、または累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値が、元のサンプルコンテ内のサンプルに関して実行されることが予測された評価分析の感度しきい値を超えた場合に使用され得る。本明細書で説明される実験室自動化システム10における使用に適したサンプル部分ディスペンサ38は、市販されており、当業者によく知られている。図1に示されないが、実験室自動化システムにおいて必ず存在するのは、実験室自動化システム10内の情報を処理して、当該システムの様々な構成要素を操作するために、実験室情報システム10に命令を提供するための制御ユニットである。制御ユニットは、コンピュータ、例えば、パーソナルコンピュータであってよい。単純な実験室自動化システムのさらなる議論は、参照により本明細書に組み込まれている、池田ら、「Total Clinical Laboratory Testing System for Laboratory Automation」、日立 Review、Vol.41(1992)No.4、167−172頁において見出すことが可能である。自動免疫測定分析装置、自動臨床化学分析装置、チューブストレージおよび取出しユニット、入出力モジュール、遠心分離システム、デキャッパ、ならびに再密封装置の例は、当業者によく知られており、様々な供給源から容易に商業上利用可能である。
【0025】
図2は、本明細書で説明される方法を実行する際に使用するのに適したアルゴリズム100を例示する。図2に示される流れ図のステップ110は、表1に示されるタイプのデータを提供する。表1は、5つの臨床分析装置を用いることが可能な実験室自動化システム用の仮定的なキャリーオーバパラメータを例示する。
【表1】

表1に示されるデータは、分析装置の製造会社によって提供されるオペレータマニュアルにしばしば記載される。当該データは、例えば、放射性トレーサまたは染料など、トラッキング材料を観測することによって導出され得る。流れ図のステップ110は、表2に示されるタイプのデータも利用する。表2に示されるデータは、通常、評価分析開発者によって開発され、通常、評価分析キットの添付文書に記載される。
【0026】
アルゴリズム100のステップ120において、ステップ110からのキャリーオーバデータに従って、評価分析の実行の順序が優先度設定される。一般に、所与のサンプルは、1個または2個の免疫測定に関して、かつ約8個から約10個の臨床化学評価分析に関して利用される。表2は、少数の評価分析に関する典型的な感度しきい値を例示する。
【表2】

【0027】
アルゴリズム100のステップ120は、サンプル間キャリーオーバに応じて、複数の評価分析の実行を優先度設定することを必要とする。これまでの評価分析において使用された第1の(先の)サンプルからのサンプル間キャリーオーバが、第2の(その後の)サンプルに対して、それにより、個々の評価分析において誤った結果を与える、個々の評価分析の感度しきい値を超えるアナライトの濃度値を与えることが起こり得る。したがって、実行されることになる評価分析の順序は、累積的なサンプル間キャリーオーバの値を特定レベル未満に維持するように構成され得るように、個々の評価分析が、当該サンプル内のアナライトの濃度を検出および/または測定することができるように、累積的なサンプル間キャリーオーバ、すなわち、それぞれのサンプルの吸引および分与から発生するキャリーオーバを追跡することが必要である。
【0028】
優先度の初期の決定、すなわち、再実行評価分析および反射試験を考慮しない優先度の決定は、所与のサンプルに関して実行されることになる、評価分析の特定のセットの評価分析の感度をコンピュータ、例えば、パーソナルコンピュータ内に取り入れて、当該評価分析を実行するために使用されることになる(1つまたは複数の)自動臨床分析装置に関するサンプル間キャリーオーバ値を当該コンピュータ内に取り入れることを必要とする。評価分析の実行を順序付けるためのアルゴリズムを効果的に実行するために、複数の評価分析のそれぞれの個々の評価分析の感度は、最高感度の評価分析(最高感度)から最低感度の評価分析(最低感度)の順序で列挙される。前述の評価分析のセットを実行するために使用されることになる特定の(1つまたは複数の)臨床分析装置の(1つまたは複数の)サンプルプローブによってもたらされるサンプル間キャリーオーバ寄与は、前述の感度と同じ順序で列挙される。例えば、個々の評価分析「x」が最高感度を有する場合、評価分析「x」は、初めに列挙されることになり、個々の評価分析「y」が次に最高の感度を有する場合、評価分析「y」は、次に列挙されることになる。評価分析「x」が実行されることになる臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与は、初めに列挙され、評価分析「y」が実行されることになる臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与は、次に列挙されることになる。特定の評価分析および特定の評価分析が実行されることになる(1つまたは複数の)臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与のかかる列挙は、それぞれの後続の評価分析の感度が先行する評価分析よりも低い状態で、評価分析のセットにおいて実行されることになる評価分析の総数に関して完成される。かかる列挙の例は、表3に示される。
【0029】
列挙された(1つまたは複数の)臨床分析装置からの累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値は、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の第1の値を取得するために、第1の臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与を、第2の臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与に加えることによって決定される。類似の方式で、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の第2の値を取得するために、第3の臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与は、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の第1の値に加えられる。それぞれの後続の臨床分析装置からの累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与は、類似の方式で計算される。
【0030】
以下の方程式は、それぞれの臨床分析装置に関する累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与に関する値の計算を要約する:
CSSC=SSC+.....+SSC
式中、CSSCは、臨床分析装置からの累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与を表し、
SCCは、臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与を表し、
nは、所与のサンプルに接触する異なる臨床分析装置の数を表す。
表3に列挙された特定の評価分析は、2つの異なる臨床分析装置(IA−2およびIA−3)だけを必要とする点に留意されたい。本明細書で説明される方法において、追加の臨床分析装置が使用され得る。先に示されたように、所与のサンプルが、その他のサンプルからのサンプル間キャリーオーバ寄与によって汚染され得る状況が存在する場合、単一の臨床分析装置は、その所与のサンプルに複数のサンプル間キャリーオーバ寄与をもたらす可能性がある。
【0031】
ステップ130、すなわち、比較ステップにおいて、表3の(左から)5つ目の列の個々のサンプル間キャリーオーバ寄与の総和は、表3の(左から)2つ目の列の評価分析の感度データと比較され、この表は、所与のサンプルに関する評価分析のセットの優先度設定と、サンプルコンテナ内のサンプルから評価分析を実行するための許容順序を決定するための、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値の計算とを例示する。評価分析A−1、A−2、A−3、A−4、およびA−5は、同じサンプルコンテナから吸引される。
【表3】

【0032】
表3に示されるように、複数の評価分析のそれぞれが、表3の(左から)1つ目の列において示された順序で実行される場合、サンプルのそれぞれの吸引に関する累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値は、個々の評価分析の感度しきい値を決して超えない。したがって、最高感度から最低感度によってこれらの評価分析の実行を構成することは、評価分析の実行を順序付けるために使用されることが可能である。この構成は、サンプルコンテナを自動的に移動させるために、実験室自動化システムによって使用されることが可能であり、または、手動操作が所望される場合、サンプルコンテナを手動で移動させるために、オペレータによって使用されることが可能である。
【0033】
再びステップ130を参照すると、個々の評価分析に関して、当該比較が、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値が、個々の評価分析に関する感度しきい値を超えることを示す場合、サンプルの少なくとも一部が、元のサンプルコンテナから吸引されて、ステップ140によれば、その少なくとも一部は、少なくとも1つの追加のサンプルコンテナ内に分与される。アルゴリズム100は、追加のサンプルコンテナの正確な数と、ステップ140を実行するために要求されるラベルとを示すためのサブルーチンを含むように設計されることも可能である。図2のプロセス流れ図で経路145によって示されるように、要求される追加のサンプルコンテナの数が入力されて、アルゴリズム100は再開される。
【0034】
再びステップ130を参照すると、個々の評価分析に関して、当該比較が、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値が個々の評価分析に関する感度しきい値未満であることを示す場合、選択された数の再実行評価分析および/または反射試験に基づいて、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値が決定される。再実行評価分析および/または反射試験の数は、評価分析開発者によって決定され得る。再実行評価分析または反射試験は、例えば、結果が、過度に高い場合、過度に低い場合、そうでない場合は、当該結果が予測されなかった場合など、結果が疑わしいと思われる場合に要求される可能性がある。再実行評価分析/反射試験の決定ステップ150は、表1および2において提供されたのと同じタイプのデータを利用する。アルゴリズム100のステップ150を効果的に実行するために、複数の評価分析のそれぞれの個々の再実行評価分析および/または反射試験の感度は、最高感度の評価分析(最高感度)から最低感度の評価分析(最低感度)の感度の順序で列挙されるが、サンプルに関して実行されることになる初期の評価分析の列挙の後に記載される。初期の評価分析の結果が、かかる再実行評価分析および/もしくは反射試験が要求されるまたは所望されるという表示、あるいはかかる再実行評価分析および/または反射試験が要求されないまたは所望されないという表示を提供するために、再実行評価分析および/または反射試験は、通常、初期の評価分析の結果を待つため、この列挙の方式は望ましい。前述の評価分析のセットを実行するために使用されることになる特定の(1つまたは複数の)臨床分析装置の(1つまたは複数の)サンプルプローブによってもたらされるサンプル間キャリーオーバ寄与は、前述の感度と同じ順序で列挙される。例えば、個々の評価分析「x」が最高感度を有する場合、評価分析「x」は初めに列挙されることになり、個々の評価分析「y」が次に最高感度を有する場合、評価分析「y」は次に列挙されることになる。評価分析「x」が実行されることになる臨床分析装置が初めに列挙され、評価分析「y」が実行されることになる臨床分析装置は、次に列挙される。特定の評価分析、および特定の評価分析が行われることになる臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与のかかる列挙は、再実行評価分析および/または反射試験を除いて、それぞれの後続の評価分析の感度が、先行する評価分析よりも低い状態で、評価分析のセットにおいて実行されることになる評価分析の総数に関して完成される。かかる列挙の例は、表4に示される。しかし、表4における列挙は、結果として、後にさらに詳細に説明されるエラーメッセージをもたらす。
【0035】
列挙された(1つまたは複数の)臨床分析装置からの累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値は、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の第1の値を取得するために、第1の臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与を、第2の臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与に加えることによって決定される。類似の方式で、累積されたサンプル間キャリーオーバ寄与の第2の値を取得するために、第3の臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与は、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の第1の値に加えられる。それぞれの後続の臨床分析装置からの累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与は、類似の方式で計算される。
【0036】
以下の方程式は、それぞれの臨床分析装置からの累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与に関する値の計算を要約する:
CSSC=SSC+.....+SSC
式中、CSSCは、臨床分析装置からの累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与を表し、
SCCは、臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバ寄与を表し、
nは、所与のサンプルに接触する異なる臨床分析装置の数を表す。
表4に列挙された特定の評価分析は、2つの異なる臨床分析装置(IA−2およびIA−3)だけを必要とする点に留意されたい。本明細書で説明される方法において、追加の臨床分析装置が使用され得る。先に示されたように、所与のサンプルが得る状況が存在する場合、単一の臨床分析装置は、その所与のサンプルに複数のサンプル間キャリーオーバ寄与をもたらす可能性がある。
【0037】
ステップ160、すなわち、比較ステップにおいて、再実行評価分析または反射試験が実行され得るかどうかを決定するために、表4の(左から)5つ目の列のデータは、表4の(左から)2つ目の列のデータと比較される。表4は、所与のサンプルに関する評価分析のセットの優先度設定と、サンプルコンテナ内のサンプルから評価分析を実行するための許容順序を決定するための、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値の計算とを例示する。評価分析A−1、A−2、A−3、A−4、およびA−5は、同じサンプルコンテナから吸引される。表4において、評価分析A−5は、再実行評価分析として2度目に実行される。
【0038】
再実行評価分析および/または反射試験を含む評価分析のセットの優先度設定と、再実行評価分析および/または反射試験を要求しない評価分析のセットの優先度設定の間の差は、評価分析が再実行評価分析または反射試験を必要とする可能性が高いかどうかに依存する。しかし、所与の評価分析の感度しきい値が高い(例えば、約100ppmから約150ppm以上の)場合、サンプル間キャリーオーバの量は重大でない可能性がある。所与の再実行評価分析または反射試験に関して、複数の評価分析のそれぞれが、表4の(左から)1つ目の列に示された順序で実行されるとき、再実行評価分析または反射試験に関する累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値が、再実行評価分析または反射試験の感度しきい値を超えない場合、評価分析の実行の順序が確立されて、このアルゴリズムは完了する。したがって、最高感度から最低感度によってこれらの評価分析の実行を構成することは、評価分析の実行を順序付けるために使用され得る。この構成は、サンプルコンテナを自動的に移動させるために、実験室自動化システムによって使用されることが可能であり、または、手動操作が所望される場合、サンプルコンテナを手動で移動させるために、オペレータによって使用されることが可能である。しかし、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値は、個々の評価分析、すなわち、再実行評価分析A−5の感度しきい値を超えるため、表4は、エラーメッセージを例示する。
【表4】

表示されたエラーは、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値が、個々の評価分析の感度しきい値を超える場合、評価分析の実行の初期の順序付けの時点で発生する可能性もある。いずれの場合も、エラーメッセージが示されることになり、このエラーメッセージに対処するための少なくとも2つの技法が存在する。
【0039】
所与の再実行評価分析または反射試験に関して、当該比較が、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値が個々の評価分析に関する感度しきい値を超えることを示す場合、アルゴリズム100のステップ170に遭遇する。ステップ170において、待機期間がSTATサンプルの実行を遅らせることになるかどうかについて決定が下される。所与の再実行評価分析または反射試験に関して、待機期間の創出が、STATサンプルの実行を遅らせることになる場合、STATサンプル用の追加のサンプルコンテナがステップ140において準備され、ステップ140は、先に説明されたステップ140と同じである。所与の再実行評価分析または反射試験に関して、待機期間の創出が、STATサンプルの実行を遅らせることにならない場合、ステップ180において、少なくとも1つの待機期間が確立され得る。(1つまたは複数の)待機期間が確立された後で、アルゴリズム100は完了し、次いで、ステップ190において、評価分析の実行の順序が確立される。この時点で、このアルゴリズムは完了し(ステップ200)、所与のサンプルに関する評価分析のセットが実行され得る。
【0040】
待機期間の間、元のサンプルコンテナからそのサンプルを使用した、進行中の評価分析からの結果が報告されるまで、サンプルコンテナからの追加の吸引を回避するために、サンプルコンテナは維持される。待機期間が要求されない場合、評価分析の実行の順序がステップ190において確立される。この時点で、このアルゴリズムは完了し(ステップ200)、所与のサンプルに関する評価分析のセットが実行され得る。
【0041】
STATサンプルが要求されない場合、かつ結果が迅速に要求されない場合、評価分析の実行の順序を継続する前に、(再実行評価分析もしくは反射試験が要求されるまたは要求されないという表示を受信するために)当該サンプルに関する初期の評価分析の結果が報告されるまで、サンプルを待機期間モードに維持することは費用効果が高い可能性がある。加えて、追加のサンプルを分与するためのデバイスが占有されている場合または当該デバイスが遠隔位置に配置される場合、結果が報告されるまで待つことはより好都合であり得る。
【0042】
表5は、所与のサンプルに関する評価分析のセットの優先度設定、サンプル間キャリーオーバ計算、サンプルに関して評価分析を実行するための順序、および再実行評価分析または反射試験の実行が原因でエラーメッセージを受信することを回避する待機期間を例示する。例えば、個々の評価分析が、通常、再実行評価分析または反射試験を要求する場合、このアルゴリズムは、個々の評価分析の結果が、再実行評価分析または反射試験を通常要求する範囲内に包括される場合、再実行評価分析または反射試験を要求することが可能なサブルーチンをさらに含み得る。個々の評価分析の結果が、再実行評価分析または反射試験を通常要求する範囲から外れる場合、システム内の別の位置に対するサンプルの移動を継続するために、当該サンプルは解放される。表5は、評価分析の完了を待ち、次いで、その結果を直ちに観測するために待機期間特徴がどのように使用され得るかを例示する。この特徴は、元のサンプルコンテナからサンプルの少なくとも一部を吸引して、その少なくとも一部を、少なくとも1つの追加のサンプルコンテナ内に分与する必要なしに、再実行評価分析が実行され得るという結果を伴って、累積的なサンプル間キャリーオーバ寄与の値が、過度に増大しないことを確実にする。
【表5】

【0043】
実験室自動化システムに関するアルゴリズム100は、元のサンプルコンテナからサンプルの少なくとも一部を吸引して、その少なくとも一部を、少なくとも1つの追加のサンプルコンテナ内に分与する必要性を最小限に抑えることになる。結果として、分与デバイス上で実行される操作の数は最小限に抑えられることになり、追加のサンプルコンテナおよび、例えば、バーコードなど、コンテナを識別する印も最小限に抑えられることになる。これらの節約の利点は、実験室用の試験当たりコストがより低いこと、ならびに結果が医師および/または患者に与えられる時間の低減であろう。より詳細には、分与デバイスの除去は、元の設備のコストを削減する。加えて、追加のサンプルコンテナおよび追加のサンプルコンテナ用のラベルのコストは、元のオリジナルコンテナのコストにおよそ等しい。したがって、所与のサンプル向けの第2のサンプルコンテナは、評価分析のセットの変動費を2倍にすることになる。第2の追加のサンプルコンテナおよび第3の追加のサンプルコンテナは、評価分析のセットの変動費を3倍にすることになる。1日当たりおよそ1000個のサンプルを処理する、処理量が多い実験室では、追加のサンプルコンテナのコストは、実験室の変動費に大きく加算される可能性がある。
【0044】
この方法は、実験室自動化システムおよび自動臨床分析装置との使用に関して説明されているが、この方法は、オペレータにサンプルコンテナを移動させるための手動の指示が提供される非自動実験室システムにおいて使用されることが可能である。この手動プロセスの利点は、自動実験室システムに関して先に説明されたのと同じであろう。
【0045】
アルゴリズムを利用するために、2つのクラスの情報だけを知る必要がある。すなわち、(a)サンプルを吸引する特定の分析装置に起因し得るサンプル間キャリーオーバの寄与、および(b)特定の分析装置に起因し得る感度しきい値である。異なる評価分析は、通常、異なる感度しきい値を有するため、この発明の方法を実行する目的で、それぞれの評価分析に関して、これらの感度しきい値を知る必要がある。
【0046】
感度の高い評価分析に関して、サンプル間キャリーオーバから生じる汚染の回避を容易にする目的で、評価分析の実行の順序は、最高感度から最低感度の評価分析の順序で構成されることが好ましい。次いで、このように決定された構成は、実験室システム内のそれぞれの分析装置のプローブの寄与の関数である、累積的なサンプル間キャリーオーバパラメータと適合される。好ましい実施形態では、本明細書で説明される方法、またはアルゴリズムは、実験室自動化システムにおいて使用される。
【0047】
以下の例は、商業上利用可能な評価分析および市販の分析装置を用いて、本明細書で説明される方法を例示する。
【0048】
(実施例)
この例では、考慮される評価分析は、表6に記載された評価分析を含む。
【表6】

【0049】
この例では、考慮される臨床分析装置は、表7に記載された臨床分析装置を含む。
【表7】

参照により本明細書に組み込まれている、以下の米国特許は、ARCHITECT(R)臨床化学システムまたはその構成要素に関連する:
すなわち、4,533,457、4,619,739、4,647,362、4,678,755、4,797,192、5,025,389、5,413,770である。
参照により本明細書に組み込まれている、以下の米国特許は、ARCHITECT(R)免疫測定システムまたはその構成要素に関連する:
すなわち、5,468,646、5,536,049、5,543,524、5,545,739、5,565,570、5,669,819、5,682,662、5,723,795、5,795,784、5,783,699、5,856,194、5,859,429、5,915,282、5,915,583、5,938,120、5,965,828、6,022,746、6,063,634、6,150,113、6,153,377、6,162,645、6,413,780、6,562,298、6,588,625である。
【0050】
この例では、記載された特定の臨床分析装置向けの単一の吸引に関するサンプル間キャリーオーバが表8に示される。
【表8】

【0051】
この例では、実行されることになる評価分析に関する感度しきい値が表9に記載される。
【表9】

【0052】
この例では、最高感度から最低感度の評価分析の順序、および個々の評価分析を実行することが予測される特定の臨床分析装置からのサンプル間キャリーオーバに対する寄与の両方に応じた、累積的なサンプル間キャリーオーバが表10に記載される。
【表10】

【0053】
この例では、最高感度から最低感度の評価分析の順序、および個々の評価分析を実行することが予測される特定の臨床分析装置によるサンプル間キャリーオーバに対する寄与の両方に応じた、累積的なサンプル間キャリーオーバが表11に記載される。しかし、表11は、再実行評価分析またはHbsAgに関する再試験が、サンプルに関する評価分析の実行を順序付けるためのアルゴリズムによってどのように示されることになるかを示す。
【表11】

【0054】
この例では、最高感度から最低感度の評価分析の順序、および、それぞれの分析装置からのキャリーオーバ寄与の両方に応じた、累積的なサンプル間キャリーオーバが表12に記載される。しかし、表12は、HBsAgに関する待機期間が、エラーメッセージを提示せずに、HBsAgの再試験をどのように可能にすることになるかを示す。
【表12】

【0055】
この例では、i2000sr分析装置上でHbsAG評価分析が開始された後、サンプルは維持される。2つの考えられる進路が生じ得る。
【0056】
(a)HbsAG評価分析の結果は範囲内であり、再実行評価分析は要求されない。この場合、サンプルの移動を継続するために、当該サンプルは解除される。
【0057】
(b)HBsAG評価分析の結果は範囲内ではない、またはHBsAG評価分析の結果は予想されなかったものであり、再実行評価分析が要求される。当該サンプルは、別のHBsAG試験のために、同じi2000sr分析装置に送られ、次いで、当該サンプルの移動を継続するために解放される。この例では、サンプルは、再実行評価分析からの結果を待つために2度目用に維持されない。
【0058】
実験室自動化システムのアルゴリズムは、元のサンプルコンテナから追加のサンプルコンテナにサンプルを移送する必要性を最小限に抑えることになる。結果として、通常、吸引/分与プローブ上で使い捨てチップを用いて実行される操作の数は、大きく削減されることになり、それにより、使い捨て品目のコストを削減し、追加のサンプルコンテナ(例えば、サンプルチューブ)およびコンテナを識別する印(例えば、バーコード)の必要性も除去されることになり、それにより、使い捨て品目のコストをさらに削減する。これらの節約の結果は、実験室向けの評価分析または試験当たりのコストを削減し、結果を医師および/または患者に報告する時間を削減することになる。このアルゴリズムは、サンプル間キャリーオーバによって所与のサンプル内に引き起こされる干渉の可能性を低減し、それにより、結果として、所与のサンプルの完全性、ならびに所与のサンプルに関する試験結果の正確さおよび精度を維持することになる。
【0059】
この発明の様々な修正形態および改変形態は、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに、当業者に明らかになるであろう。また、この発明は、本明細書に記載された例示的な実施形態に不当に限定されない点を理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の臨床分析装置を用いるシステムにおける実行のための順序で評価分析を構成するための方法であって、
(a)元のサンプルコンテナ内の所与のサンプルに関する評価分析のセットにおいて、いくつかの個々の評価分析の実行の順序を優先度設定するステップであって、所与のサンプルに関する評価分析のセットにおける個々の評価分析の優先度が、個々の評価分析の感度によって特定されており、少なくとも1つのその他のサンプルからの少なくとも1つのサンプル間キャリーオーバ寄与が存在し、その少なくとも1つのその他のサンプルからの評価分析が、所与のサンプルの個々の評価分析に先立ち、優先度設定するステップと、
(b)所与のサンプルの個々の評価分析に先立つ、少なくとも1つのその他のサンプルの少なくとも1つの評価分析のために、少なくとも1つのその他のサンプルからの(1つまたは複数の)サンプル間キャリーオーバ寄与の総和を計算するステップと、
(c)ステップ(b)において計算された総和を、所与のサンプルの個々の評価分析の感度しきい値と比較するステップと、
(d)ステップ(b)において計算された総和が、所与のサンプルの個々の評価分析の感度しきい値未満である場合、所与のサンプルの個々の評価分析を含む、所与のサンプルに関する評価分析の実行の順序を確立するが、ステップ(b)において計算された総和が、所与のサンプルの個々の評価分析の感度しきい値を超える場合、元のサンプルコンテナから所与のサンプルの少なくとも一部を吸引して、その少なくとも一部を、少なくとも1つの追加のサンプルコンテナ内に分与するステップとを備え、少なくとも1つの追加のサンプルコンテナ内に分与された所与のサンプルの少なくとも一部が、所与のサンプルの個々の評価分析を実行するために使用される、方法。
【請求項2】
評価分析の実行の順序を確立するのに先立って、追加の再実行評価分析および/または反射試験を考慮に入れることによって、サンプル間キャリーオーバ値を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
所与のサンプルの個々の評価分析を含む複数の評価分析の評価分析のそれぞれのサンプル間キャリーオーバ値の総和を計算して、追加の再実行評価分析および/または反射試験に関するサンプル間キャリーオーバ値の総和を計算するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)所与のサンプルの個々の評価分析を提供する複数の評価分析の評価分析のそれぞれのサンプル間キャリーオーバ値の総和に追加の再実行評価分析および/または反射試験に関するサンプル間キャリーオーバ値の総和を加えた総和が、所与のサンプルの個々の評価分析の感度しきい値と比較され、ステップ(a)において計算された複数の総和が、所与のサンプルの個々の評価分析の感度しきい値を超える場合、待機期間が、STATサンプルの評価分析を遅らせることになるかどうかについて決定を下すが、ステップ(a)において計算された総和が、所与のサンプルの個々の評価分析の感度しきい値未満である場合、所与のサンプルの個々の評価分析を含む評価分析、および所与のサンプルの個々の評価分析に先立つ評価分析の実行の順序を確立する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
待機期間が、STATサンプルの評価分析を遅らせる場合、サンプルの少なくとも一部を、少なくとも1つの追加のサンプルコンテナ内に分与し、その少なくとも1つの追加の部分が、所与のサンプルの個々の評価分析を実行するために使用されているが、待機期間が、STATサンプルの評価分析を遅らせることにならない場合、評価分析の結果に関する待機期間を確立する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
待機期間が確立された後で、評価分析の実行のための順序を確立するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの臨床分析装置を備えた実験室自動化システムであって、請求項1の方法に従って構成された評価分析を有する実験室自動化システム。
【請求項8】
少なくとも2つの臨床分析装置を備える、請求項7に記載の実験室自動化システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの臨床分析装置が、免疫測定分析装置、臨床化学分析装置、ならびに免疫測定分析装置および臨床化学分析装置の両方を組み込んだ分析装置から構成されるグループから選択される、請求項7に記載の実験室自動化システム。
【請求項10】
少なくとも1つの遠心分離機をさらに含む、請求項7に記載の実験室自動化システム。
【請求項11】
少なくとも入出力モジュールをさらに含む、請求項7に記載の実験室自動化システム。
【請求項12】
少なくとも1つのコンテナストレージおよび取出しユニットをさらに含む、請求項7に記載の実験室自動化システム。
【請求項13】
サンプル部分ディスペンサをさらに含む、請求項7に記載の実験室自動化システム。
【請求項14】
制御ユニットをさらに含む、請求項7に記載の実験室自動化システム。
【請求項15】
少なくとも1つの臨床分析装置を備える実験室自動化システムであって、請求項4の方法に従って構成された評価分析を有する、実験室自動化システム。
【請求項16】
少なくとも2つの臨床分析装置を備える、請求項15に記載の実験室自動化システム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの臨床分析装置が、免疫測定分析装置、臨床化学分析装置、ならびに免疫測定分析装置および臨床化学分析装置の両方を組み込んだ分析装置から構成されるグループから選択される、請求項15に記載の実験室自動化システム。
【請求項18】
少なくとも1つの遠心分離機をさらに含む、請求項15に記載の実験室自動化システム。
【請求項19】
少なくとも入出力モジュールをさらに含む、請求項15に記載の実験室自動化システム。
【請求項20】
少なくとも1つのコンテナストレージおよび取出しユニットをさらに含む、請求項15に記載の実験室自動化システム。
【請求項21】
サンプル部分ディスペンサをさらに含む、請求項15に記載の実験室自動化システム。
【請求項22】
制御ユニットをさらに含む、請求項15に記載の実験室自動化システム。
【請求項23】
少なくとも1つの臨床分析装置を備える実験室自動化システムであって、請求項5の方法に従って構成された評価分析を有する、実験室自動化システム。
【請求項24】
少なくとも2つの臨床分析装置を備える、請求項23に記載の実験室自動化システム。
【請求項25】
前記少なくとも1つの臨床分析装置が、免疫測定分析装置、臨床化学分析装置、ならびに免疫測定分析装置および臨床化学分析装置の両方を組み込んだ分析装置から構成されるグループから選択される、請求項23に記載の実験室自動化システム。
【請求項26】
少なくとも1つの遠心分離機をさらに含む、請求項23に記載の実験室自動化システム。
【請求項27】
少なくとも入出力モジュールをさらに含む、請求項23に記載の実験室自動化システム。
【請求項28】
少なくとも1つのコンテナストレージおよび取出しユニットをさらに含む、請求項23に記載の実験室自動化システム。
【請求項29】
サンプル部分ディスペンサをさらに含む、請求項23に記載の実験室自動化システム。
【請求項30】
制御ユニットをさらに含む、請求項23に記載の実験室自動化システム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−529432(P2010−529432A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510434(P2010−510434)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/064629
【国際公開番号】WO2008/150735
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】