説明

室圧制御システム及び方法

【課題】扉の開閉に伴う対象室の圧力変動を極力抑制することのできる室圧制御システム及び方法を提供する。
【解決手段】室圧制御システム10は、扉30W〜30Zを有する対象室12A〜12Cと、その給気風量を調整するダンパ18A〜18Cと、対象室12A〜12Cの圧力値を測定する差圧センサ22A〜22Cと、差圧センサ22A〜22Cに基づいてダンパ18A〜18Cを制御し、且つ、扉30W〜30Zの開閉を制御する制御装置36と、を備え、制御装置36は、差圧センサ22A〜22Cで測定した圧力変動が所定範囲内に収まるまで、扉30W〜30Zを閉状態に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室圧制御システム及び方法に係り、特にクリーンルーム、環境試験室、バイオハザード施設、ケミカルハザード施設、原子力施設などで用いる室圧制御システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームやバイオハザード施設などには、圧力管理が必要な部屋(以下、対象室という)が多数設けられており、各対象室では、給気風量を調節することによって所定の圧力値に制御されている。
【0003】
このような室圧制御システムでは、扉の開閉によって対象室の圧力が大きく変動するという問題がある。そこで、圧力変動を抑制するために様々な室圧制御システムが提案されている。たとえば、特許文献1には、対象室への給気風量の調整を行うダンパの開度可能調整範囲を、対象室の扉の開閉に応じて調整することによって、対象室の室圧変動を抑制する室圧制御システムが記載されている。また、特許文献2には、扉を介して連通する二つの対象室の目標室圧を扉の開閉に応じて変更することによって、対象室の室圧変動を抑制する室圧制御システムが記載されている。
【0004】
しかし、これら従来の室圧制御システムだけでは、扉を開閉した際の対象室の圧力変動を十分に抑制することができないという問題があり、特に対象室への入退室を短時間で行った場合には、対象室の圧力変動が大きくなるという問題があった。
【0005】
また、通常の室圧制御システムは、対象室の入口用扉と出口用扉が同時に開閉しないようになっている。すなわち、入口用扉が開いた際には出口用扉にインターロックがかかり、逆に出口用扉が開いた際には入口用扉にインターロックがかかることによって、両方の扉が同時に開かないようになっている。これによって、対象室の圧力が大きく変動することを防止している。
【特許文献1】特開2006−78086号公報
【特許文献2】特開平10−83221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような室圧制御システムにおいても、短時間で入退室を行った場合には、対象室の圧力変動が大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、扉の開閉に伴う対象室の圧力変動を極力抑制することのできる室圧制御システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、扉を有する対象室の圧力を、該対象室への給気風量または前記対象室からの排気風量を調整することによって制御する室圧制御方法において、前記対象室の圧力変動が所定範囲内に収まるまで、前記扉を閉じた状態に維持することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は請求項1の発明において、前記対象室の圧力変動が所定範囲内に収まるまで、前記扉の閉状態を示す表示が前記扉に成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は請求項2の発明において、前記圧力変動が前記所定範囲に収まる直前に、その旨が前記扉に表示されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は前記目的を達成するために、扉を有する対象室と、前記対象室への給気風量または前記対象室からの排気風量を調整することによって前記対象室の圧力を調整する圧力調整手段と、前記対象室の圧力を測定するセンサと、前記センサの測定値に基づいて前記圧力調整手段を制御するとともに、前記扉の開閉を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記センサで測定した圧力変動が所定範囲内に収まるまで、前記扉を閉状態に維持することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は請求項4の発明において、前記扉又は前記扉の近傍に表示画面が設けられ、該表示画面には、前記対象室の圧力変動が所定範囲内に収まるまで、前記扉の閉状態を示す表示が成されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は請求項5の発明において、前記表示画面には、前記圧力変動が前記所定範囲内に収まる直前に、その旨が表示されることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、対象室の圧力変動が所定範囲内に収まるまで、扉を閉じた状態に維持するので、対象室の圧力が安定した状態で扉を開くことができる。したがって、対象室の圧力変動が所定範囲内に収まる前に扉を開いた場合のように、扉の開閉によって対象室の圧力がさらに大きく変動することを防止することができる。
【0015】
なお、本発明において、「扉を閉じた状態に維持する」方法(手段)としては、扉の開閉信号を受けた際に所定の時間だけ遅らせて扉を開閉する方法や、扉を機械的又は電気的にロックする方法が考えられる。
【0016】
また、本発明において、「圧力変動が所定範囲内に収まる直前」を検知する方法としては、圧力変動の動きに基づいて予測する方法や、所定範囲よりも若干大きい範囲内に圧力変動が収まったことを検知する方法が考えられる。
【0017】
請求項7に記載の発明は前記目的を達成するために、扉を有する対象室の圧力を、該対象室への給気風量または前記対象室からの排気風量を調整することによって制御する室圧制御方法において、前記扉を開く前に、前記扉に形成した開閉自在な窓を開くとともに前記給気風量または前記排気風量の調整速度を低下させ、前記扉を閉じた後に前記窓を閉じるとともに前記調整速度を元に戻すことを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の発明は前記目的を達成するために、扉を有する対象室と、前記対象室の圧力を測定するセンサと、前記対象室への給気風量または前記対象室からの排気風量を調整することによって前記対象室の圧力を調整する圧力調整手段と、前記センサの測定値に基づいて前記圧力調整手段を制御するとともに、前記扉の開閉を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記扉を開く前に、前記窓を開くとともに前記給気風量または前記排気風量の調整速度を低下させるように制御し、前記扉を閉じた後に、前記窓を閉じるとともに前記調整速度を元に戻すように制御することを特徴とする。
【0019】
請求項7、8に記載の発明によれば、扉よりも開口面積の小さい窓を開き、且つ、給気風量の調整速度を低下させた後、扉を開くようにしたので、扉を開いた際に対象室の圧力が急激に変化することを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、対象室の圧力変動が所定範囲内に収まるまで扉を閉じた状態に維持したり、扉を開く前に窓を開いて給気風量または排気風量の調整速度を低下させたりしたので、扉の開閉に伴う対象室の圧力変動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下添付図面に従って本発明に係る室圧制御システム及び方法の実施の形態について説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態の一例として給気風量を調整することによって室圧を制御する室圧制御システムの構成を模式的に示す側面図であり、図2はその平面図である。これらの図に示す室圧制御システム10は、連続する三つの対象室12A、12B、12Cをそれぞれ所定の圧力範囲に制御するシステムである。なお、対象室12A〜12Cの数は三つに限定するものではなく、2つ以下又は4つ以上であってもよい。
【0023】
各対象室12A〜12Cの天井面には、給気ダクト14が分岐されて接続されている。この給気ダクト14は合流して給気ファン16に接続されており、さらに不図示の空調機に接続されている。これにより、空調機で温湿度が調節された空調エアは、給気ファン16を駆動することによって各対象室12A〜12Cに給気される。
【0024】
給気ダクト14の各分岐部分にはそれぞれ、室圧調整用ダンパ(以下、単にダンパという)18A〜18Cが設けられている。このダンパ18A〜18Cの開度を調整することによって各対象室12A〜12Cへの給気風量が調節され、各対象室12A〜12Cの圧力が調整される。
【0025】
各ダンパ18A〜18Cには、指示調節計20A〜20Cが接続されており、この指示調節計20A〜20Cによって、ダンパ18A〜18Cの開度が調節される。
【0026】
各指示調節計20A〜20Cには差圧計22A〜22Cに接続されている。各差圧計22A〜22Cは、各対象室12A〜12Cの内外の差圧を測定するセンサであり、この差圧計22A〜22Cの測定値に応じて、指示調節計20A〜20Cがダンパ18A〜18Cの開度を調節するようになっている。これにより、各対象室12A〜12Cの差圧に応じて給気風量が調整されるので、各対象室12A〜12Cを所定の圧力(差圧)に制御することができる。
【0027】
各対象室12A〜12Cの天井面には、排気ダクト24の分岐部分が接続されている。この排気ダクト24は合流され、排気ファン26を介して外部に連通されている。したがって、排気ファン26を駆動することによって対象室12A〜12C内のエアが排気ダクト24を介して外部に排出される。
【0028】
排気ダクト24の各分岐部分には、ダンパ28A〜28Cが設けられており、このダンパ28A〜28Cの開度を調節することによっても、各対象室12A〜12Cの圧力を調節することができる。なお、本実施の形態では、給気側のダンパ18A〜18Cの開度を調整することによって対象室12A〜12Cの圧力を調整する例で説明するが、ダンパ18A〜18Cの代わりにダンパ28A〜28Cの開度を調整してもよく、また、両方のダンパ18A〜18C、28A〜28Cの開度を調整してもよい。
【0029】
各対象室12A〜12C同士の間には、入退室用の扉30X、30Yが設けられている。すなわち、扉30Xは、対象室12Aと対象室12Bとの仕切り壁32Xに設けられ、この扉30Xを開くことによって対象室12Aと対象室12Bとが連通される。扉30Yは、対象室12Bと対象室12Cとの仕切り壁32Yに設けられ、この扉30Yを開くことによって対象室12Bと対象室12Cとが連通される。
【0030】
また、対象室12A、12Cにはそれぞれ、扉30W、30Zが設けられており、この扉30W、30Zを開くことによって対象室12A、12Cが室外空間(たとえば廊下など)に連通される。なお、対象室12Bの側面に不図示の扉を設け、この扉を介して室外空間に連通させるようにしてもよい。
【0031】
各扉30W〜30Zには、不図示の自動開閉装置が設けられており、この自動開閉装置によって扉30W〜30Zの開閉操作が自動で行われる。
【0032】
各扉30W〜30Zの近傍にはそれぞれ、スイッチ34W〜34Zが設けられる。このスイッチ34W〜34Zを操作することによって、スイッチ34W〜34Zに対応する扉30W〜30Zが自動で開閉される。
【0033】
各扉30W〜30Zの自動開閉装置と各スイッチ34W〜34Zは、制御装置36に接続されている。制御装置36は、各スイッチ34W〜34Zから扉30W〜30Zの開閉信号が送信された際に、その信号に基づいて扉30W〜30Zの開閉操作を行うように自動開閉装置に指示信号を送信する。これにより、スイッチ34W〜34Zの操作によって扉30W〜30Zが自動的に開閉操作される。
【0034】
制御装置36は、前述した指示調節計20A〜20C、差圧計22A〜22Cにも接続されており、差圧計22A〜22Cの測定値に応じて、指示調節計20A〜20Cを制御するように構成される。具体的には、制御装置36には、所定の設定値が入力されており、差圧計22A〜22Cの測定値がこの設定値になるように指示調節計20A〜20Cを制御する。これにより、ダンパ18A〜18Cの開度が調節され、各対象室12A〜12Cの圧力が変動して所定値に制御される。
【0035】
また、制御装置36は、スイッチ34W〜34Zが操作された際に、差圧計22A〜22Cの測定値に応じて、扉30W〜30Zを開閉するタイミングを制御するように構成される。たとえば、スイッチ34Wが操作された際、差圧計22Aの測定値の変動の振幅(すなわち圧力変動)が、予め設定された範囲内の場合はすぐに扉30Wを開閉操作し、設定範囲外の場合は設定範囲内に収まるまで扉30Wを閉じた状態に維持して設定範囲内に収まった後に扉30Wを開くように制御する。同様に、スイッチ34Zが操作された際、差圧計22Aの測定値の変動の振幅が設定範囲内の場合は扉30Zをすぐに開閉操作し、設定範囲外の場合は設定範囲内に収まるまで扉30Zを閉じた状態に維持して設定範囲内に収まった後に扉30Zを開くように制御する。
【0036】
また、スイッチ34Xが操作された際は、差圧計22A及び22Bの測定値の変動の振幅(すなわち圧力変動)が設定範囲内の場合は扉30Xをすぐに開閉操作し、設定範囲外の場合は設定範囲内に収まるまで扉30Xを閉じた状態に維持して設定範囲内に収まった後に扉30Xを開くように制御する。同様に、スイッチ34Yが操作された際は、差圧計22B及び22Cの測定値の変動の振幅が設定範囲内の場合は扉30Yをすぐに開閉操作し、設定範囲外の場合は設定範囲内に収まるまで扉30Yを閉じた状態に維持して設定範囲内に収まった後に扉30Yを開くように制御する。
【0037】
各扉30W〜30Zには不図示の表示画面が設けられ、この表示画面は制御装置36に接続されている。表示画面には、扉30W〜30Zを閉じた状態に維持している間、その旨を伝える内容(たとえば「室圧安定運転中。しばらくお待ちください。」などのメッセージ」)が表示される。さらに、表示画面には、上述した圧力変動が設定範囲に近づいた際に、その旨を伝える内容(たとえば「間もなく入れます。少々お待ち下さい。」などのメッセージ)が表示される。なお、圧力変動が設定範囲に近づいたか否かの判断は、たとえば差圧計22A〜22Cの測定値からその動きを予測したり、設定範囲よりも若干大きい範囲を別に設定し、その範囲内に圧力変動が収まったか否かを判別したりするとよい。
【0038】
また、表示画面の位置は、扉30W〜30Zに限定するものではなく、扉30W〜30Zを開閉する際に見える位置であればよい。また、表示画面の代わりに音声でメッセージを伝えるようにしてもよい。
【0039】
次に上記の如く構成された室圧制御システム10の作用について各扉30W〜30Zを開く例で説明する。
【0040】
扉30Wを開いて対象室12Aに入室又は対象室12Aから退室する場合、作業者は、スイッチ34Wを押下操作する。これにより、スイッチ34Wから制御装置36に指示信号が出力される。制御装置36は、指示信号を受信すると、差圧計22Aの測定値の変動の振幅が設定範囲内に収まっているかどうかを判断する。そして、設定範囲内であると判断した場合はすぐに、扉30Wの自動開閉装置に操作信号を出力する。これにより、スイッチ34Wを押下操作したと同時に扉30Wが開くように操作される。
【0041】
また、差圧計22Aの測定値が設定範囲外であると判断した場合、制御装置36は、表示画面(不図示)に信号を出力して表示画面にその旨を表示させ、その状態で待機する。そして、差圧計22Aの測定値をモニタリングし、設定範囲内に収まる直前に、その旨を表示画面に表示し、設定範囲内に収まったと判断した後で、扉30Wの自動開閉装置に操作信号を出力する。これにより、対象室12Aの差圧が設定範囲内に収まり、安定した状態で、扉30Wが開かれる。したがって、外乱による対象室12Aの圧力変動を抑制することができる。
【0042】
同様に、扉30Zを開いて対象室12Cに入室又は対象室12Cから退室する場合、作業者は、スイッチ34Zを押下操作する。これにより、スイッチ34Zから制御装置36に指示信号が出力される。制御装置36は、指示信号を受信すると、差圧計22Cの測定値の変動の振幅が設定範囲内に収まっているかどうかを判断する。そして、設定範囲内であると判断した場合はすぐに、扉30Zの自動開閉装置に操作信号を出力する。これにより、スイッチ34Zを押下操作したと同時に扉30Zが開くように操作される。
【0043】
また、差圧計22Cの測定値が設定範囲外であると判断した場合、制御装置36は、表示画面(不図示)に信号を出力して表示画面にその旨を表示させ、その状態で待機する。そして、差圧計22Cの測定値をモニタリングし、設定範囲内に収まる直前に、その旨を表示画面に表示し、設定範囲内に収まったと判断した後で、扉30Zの自動開閉装置に操作信号を出力する。これにより、対象室12Cの差圧が設定範囲内に収まり、安定した状態で、扉30Zが開かれる。したがって、外乱による対象室12Cの圧力変動を抑制することができる。
【0044】
一方、扉30Xを開いて対象室12A又は12Bに入室する場合、作業者は、スイッチ34Xを押下操作する。これにより、スイッチ34Xから制御装置36に指示信号が出力される。制御装置36は、指示信号を受信すると、差圧計22A及び22Bの測定値が設定範囲内に収まっているかどうかを判別する。そして、両方が設定範囲内であると判断した場合はすぐに、扉30Xの自動開閉装置に操作信号を出力する。これにより、スイッチ34Xを押下操作したと同時に扉30Xが開くように操作される。
【0045】
また、差圧計22A又は22Bの測定値が設定範囲外であると判断した場合、制御装置36は、表示画面(不図示)に信号を出力して表示画面にその旨を表示させ、その状態で待機する。そして、両方の測定値をモニタリングし、設定範囲内に収まる直前にその旨を表示画面に表示し、設定範囲内に収まったと判断した後で、扉30Xの自動開閉装置に操作信号を出力する。これにより、対象室12A及び12Bの差圧が設定範囲内に収まり、安定した状態で扉30Xが開かれる。したがって、外乱による対象室12A、12Bの圧力変動を抑制することができる。
【0046】
同様に、扉30Yを開いて対象室12A又は12Bに入室する場合、作業者は、スイッチ34Yを押下操作する。これにより、スイッチ34Yから制御装置36に指示信号が出力される。制御装置36は、指示信号を受信すると、差圧計22B及び22Cの測定値が設定範囲内に収まっているかどうかを判別する。そして、両方が設定範囲内であると判断した場合はすぐに、扉30Yの自動開閉装置に操作信号を出力する。これにより、スイッチ34Yを押下操作したと同時に扉30Yが開くように操作される。
【0047】
また、差圧計22B又は22Cの測定値が設定範囲外であると判断した場合、制御装置36は、表示画面(不図示)に信号を出力して表示画面にその旨を表示させ、その状態で待機する。そして、両方の測定値をモニタリングし、設定範囲内に収まる直前にその旨を表示画面に表示し、設定範囲内に収まったと判断した後で、扉30Yの自動開閉装置に操作信号を出力する。これにより、対象室12B及び12Cの差圧が設定範囲内に収まり、安定した状態で扉30Yが開かれる。したがって、外乱による対象室12B、12Cの圧力変動を抑制することができる。
【0048】
このように本実施の形態によれば、入室及び退室する対象室12A〜12Cの圧力変動が設定範囲外である場合は強制的に扉30W〜30Zを閉めた状態で維持し、設定範囲内に収まってから扉30W〜30Zを開けるようにしたので、圧力が常に安定した状態の対象室12A〜12Cに入室、退室が行われることになり、対象室12A〜12Cの圧力変動を極力抑制することができる。
【0049】
なお、上述した第1の実施形態では、スイッチ34W〜34Zが押されてから扉30W〜30Zが開くまでのタイミングを制御することによって、扉30W〜30Zが閉じた状態を維持するようにしたが、圧力変動が設定範囲内に収まるまで扉30W〜30Zを機械的又は電気的にロックするようにしてもよい。すなわち、上述した第1の実施形態において、スイッチ34W〜34Zの代わりに、扉30W〜30Zの開閉を検知するセンサ(不図示)と、扉30W〜30Zを個別にロックするロック手段(不図示)を設け、このセンサによって扉30W〜30Zが閉じたことを検知した際に、対象室12A〜12Cの圧力変動が設定範囲内に収まるまでロック手段で扉30W〜30Zをロックし、設定範囲内に収まった後にそのロックを解除するようにしてもよい。このように構成した場合にも、対象室12A〜12Cの圧力値が設定範囲内に収まるまで扉30W〜30Zを閉じた状態に維持することができ、対象室12A〜12Cの圧力変動を抑制することができる。
【0050】
次に第2の実施形態の室圧制御システムについて説明する。図3は、第2の実施形態の室圧制御システムを模式的に示す側面図である。
【0051】
同図に示す第2の実施形態は、各扉30W〜30Zに、窓となる開口部40W〜40Zが形成されている。この開口部40W〜40Zは、扉30W〜30Zよりも十分に小さい面積で形成されている。また、各開口部40W〜40Zには閉止板42W〜42Zが移動自在に設けられており、閉止板42W〜42Zを移動させることによって開口部40W〜40Zが開閉される。閉止板42W〜42Zの移動装置(不図示)は、制御装置36に接続されており、制御装置36によって閉止板42W〜42Zの移動すなわち開口部40W〜40Zの開閉が行われる。
【0052】
制御装置36は、スイッチ34W〜34Zの操作信号に基づいて開口部40W〜40Zの開閉を制御する。具体的には、扉30W〜30Zを開くための操作信号を受信した際に、閉止板42W〜42Zを移動させて開口部40W〜40Zを開き、その後に扉30W〜30Zを開くように制御する。また、扉30W〜30Zを閉じるための信号を受信した際に、扉30W〜30Zを閉じ、その後に閉止板42W〜42Zを移動させて開口部40W〜40Zを閉じるように制御する。
【0053】
さらに、制御装置36は、スイッチ34W〜34Zの操作信号を受信した際に、指示調節計22A〜22Cに制御係数を変更する操作信号を送信する。具体的には、扉30W〜30Zを開く際にダンパ18A〜18Cの調整速度を低下させるように制御し、扉30W〜30Zを閉じた際には調整速度を元に戻すように制御する。
【0054】
図4は、第2の実施形態の室圧制御システムの制御を示すフローチャートである。同図に示すように、制御装置36は通常、ダンパ18A〜18Cを所定の制御定数に基づいて制御する(ステップS1)。そして、スイッチ34W〜34Zのいずれかの「開」ボタンがON操作され、スイッチ34W〜34Zから指示信号が出力された際に(ステップS2)、それに対応する開口部40W〜40Z(窓)を開く(ステップS3)。これにより、開口部40W〜40Zを介して対象室12A〜12Cの内外が連通され、圧力の均一化が図られる。
【0055】
次いで、制御装置36は、前述した制御定数を変更し、ダンパ18A〜18Cの調整速度を低下させた後(ステップS4)、扉30W〜30Zを開くように制御する。これにより、扉30W〜30Zを開いた際に給気風量が大きく変化して室間差圧が逆転することを、防止することができる。
【0056】
また、スイッチ34W〜34Zのいずれかの「閉」ボタンがON操作された際には(ステップS6)、まず、対応する扉30W〜30Zを閉じる(ステップS7)。そして、開口部40W〜40Z(窓)を閉じた後、元の制御定数を復帰させる(ステップ8、9)。これにより、扉30W〜30Zを閉じた後に、通常の室圧制御を行うことができる。
【0057】
上記の如く構成された第2の実施形態は、扉30W〜30Zを開く際に、扉30W〜30Zよりも面積の小さい開口部40W〜40Zが先に開いて対象室12A〜12Cの内外が連通するので、扉30W〜30Zを開閉した際に対象室12A〜12Cが急激に圧力変動することを抑制することができる。
【0058】
また、扉30W〜30Zを開く際に、ダンパ18A〜18Cの調整速度を低下させるので、扉30W〜30Zの開閉時に給気流量が大きく変化することを防止できる。すなわち、扉30W〜30Zの開閉時には圧力変動に伴ってダンパ18A〜18Cの開度が急激に変化し、これに伴って給気流量が過度に変化して圧力が大きく変動するおそれがあるが、本実施の形態では、ダンパ18A〜18Cの調整速度を低下させるので、給気流量の過度な変動を抑制することができ、対象室12A〜12Cの圧力変動を抑制することができる。
【0059】
なお、第2の実施形態においても、給気側のダンパ18A〜18Cの開度を調整する代わりに、ダンパ28A〜28Cの開度を調整してもよく、また、両方のダンパ18A〜18C、28A〜28Cの開度を調整してもよい。
【0060】
また、上述した第2の実施形態は、扉30W〜30Zに開口部40W〜40Zを設けたが、扉30W〜30Zの近傍の壁に開口部を設けてもよい。また、開口部40W〜40Zを設ける代わりに、扉30W〜30Zを少しだけ開いた状態で所定時間維持させるようにしてもよい。さらには、窓の代わりに、リリーフダンパを設けるようにしてもよい。
【0061】
また、上述した第1の実施形態と第2実施形態を組み合わせるようにしてもよい。すなわち、扉30W〜30Zを開く際には、まず、入室及び退室する対象室12A〜12Cの圧力変動が設定範囲内に収まるまで扉30W〜30Zを閉じた状態に維持し、圧力値が設定範囲内に収まった後に開口部40W〜40Zを開くとともに、ダンパ18A〜18Cの調整速度を低下させ、その後に扉30W〜30Zを開く。そして、扉30W〜30Zを閉じた際に、開口部40W〜40Zを閉じて、ダンパ18A〜18Cの調整速度を元に戻す。これにより、扉30W〜30Zを開閉した際の対象室12A〜12Cの圧力変動をより効果的に抑制することができる。
【0062】
なお、上述した実施形態は、扉30W〜30Zの開閉時の外乱を防止することを目的とした室圧制御システムの例で説明したが、本発明は、室内の局所排気装置、たとえばバイオセーフティキャビネットの発停による室圧変動の対策に用いることも可能である。また、上述した実施形態は、モニタリング値として圧力を取り上げたが、必要に応じて温度、湿度、清浄度などの室内環境の設定値をモニタリングして制御に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施形態の室圧制御システムの構成を模式的に示す側面図
【図2】図1の室圧制御システムの構成を模式的に示す平面図
【図3】第2の実施形態の室圧制御システムの構成を模式的に示す側面図
【図4】第2の実施形態の制御を示すフローチャート
【符号の説明】
【0064】
10…室圧制御システム、12A〜12C…対象室、14…給気ダクト、16…給気ファン、18A〜18C…ダンパ、20A〜20C…指示調整計、22A〜22C…差圧計、24…排気ダクト、26…排気ファン、28A〜28C…ダンパ、30W〜30Z…扉、32X〜32Y…仕切り壁、34W〜34Z…スイッチ、36…制御装置、40W〜40Z…開口部、42W〜42Z…閉止板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉を有する対象室の圧力を、該対象室への給気風量または前記対象室からの排気風量を調整することによって制御する室圧制御方法において、
前記対象室の圧力変動が所定範囲内に収まるまで、前記扉を閉じた状態に維持することを特徴とする室圧制御方法。
【請求項2】
前記対象室の圧力変動が所定範囲内に収まるまで、前記扉の閉状態を示す表示が前記扉に成されることを特徴とする請求項1に記載の室圧制御方法。
【請求項3】
前記圧力変動が前記所定範囲に収まる直前に、その旨が前記扉に表示されることを特徴とする請求項2に記載の室圧制御方法。
【請求項4】
扉を有する対象室と、
前記対象室への給気風量または前記対象室からの排気風量を調整することによって前記対象室の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記対象室の圧力を測定するセンサと、
前記センサの測定値に基づいて前記圧力調整手段を制御するとともに、前記扉の開閉を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記センサで測定した圧力変動が所定範囲内に収まるまで、前記扉を閉状態に維持することを特徴とする室圧制御システム。
【請求項5】
前記扉又は前記扉の近傍に表示画面が設けられ、
該表示画面には、前記対象室の圧力変動が所定範囲内に収まるまで、前記扉の閉状態を示す表示が成されることを特徴とする請求項4に記載の室圧制御システム。
【請求項6】
前記表示画面には、前記圧力変動が前記所定範囲内に収まる直前に、その旨が表示されることを特徴とする請求項5に記載の室圧制御システム。
【請求項7】
扉を有する対象室の圧力を、該対象室への給気風量または前記対象室からの排気風量を調整することによって制御する室圧制御方法において、
前記扉を開く前に、前記扉に形成した開閉自在な窓を開くとともに前記給気風量または前記排気風量の調整速度を低下させ、
前記扉を閉じた後に前記窓を閉じるとともに前記調整速度を元に戻すことを特徴とする室圧制御方法。
【請求項8】
扉を有する対象室と、
前記対象室の圧力を測定するセンサと、
前記対象室への給気風量または前記対象室からの排気風量を調整することによって前記対象室の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記センサの測定値に基づいて前記圧力調整手段を制御するとともに、前記扉の開閉を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記扉を開く前に、前記窓を開くとともに前記給気風量または前記排気風量の調整速度を低下させるように制御し、
前記扉を閉じた後に、前記窓を閉じるとともに前記調整速度を元に戻すように制御することを特徴とする室圧制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−170132(P2008−170132A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6038(P2007−6038)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】