説明

害虫捕獲器

【課題】害虫を捕獲する必要のある農場、特に、気流によって土埃、砂埃、ゴミ等の舞い上がる圃場において用いた場合、長期に渡って粘着シートによる害虫の捕獲性能を維持することが可能で、使い勝手に優れる害虫捕獲器を提供する。
【解決手段】設置場所に固定される棒状の支柱部1と、柱状の本体21と、本体の中心線に沿って下端から所定の中間位置まで貫通して形成された中間穴22とを有し、中間穴22に挿入された支柱部1の先端によって、中間穴22の天井壁22aにおいて回転及び着脱可能に支持される保持部2と、基材31と、基材31上に形成された粘着剤層32とを有し、誘引した害虫を粘の剤層で捕獲する粘着シート部3と、保持部2の本体21の中心線方向に沿って、粘着シート部3を保持部2に取付ける取付部4と、を備え、粘着シート部3が支柱部1を中心として回転し、気流の方向に平行な方向にその設置位置を変えることが可能な構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫(有害な昆虫)捕獲器に関する。さらに詳しくは、害虫(例えば、ピーマン、茶、ネギ、キュウリ等に被害を与えるヒラズハナアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ネギアザミウマ等)を捕獲する必要のある農場、特に、風等の気流によって土埃、砂埃、ゴミ等の舞い上がる圃場(田畑、具体的には茶畑等の畑)において用いた場合、長期に渡って粘着シートによる害虫の捕獲性能を維持することが可能で、使い勝手に優れる害虫捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着シートを用いた圃場(田畑)用の害虫捕獲器としては、例えば、支柱としての割り箸や竹に切れ目を入れて隙間を形成し、粘着層を有する粘着板を、この隙間に挟み込み、割り箸や竹の部分を畑等に突き刺して設置して用いるもの、表面に粘着フイルムを貼付したペットボトルの空き瓶を支柱に挿し込み、この支柱部分を畑等に突き刺して設置して用いるもの、また、土埃、砂埃、ゴミ等を防ぐため、四方に窓を開けた箱に粘着シートを収納したもの、さらに、側面に害虫が進入自在の複数の開口を有する外筒体を組立自在に構成したもの(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−83553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の簡易な構成で支柱を突き刺すタイプの場合、風等の気流によって土埃、砂埃、ゴミ等が舞い上がって粘着層の粘着面に付着し、害虫の捕獲前にその粘着性(捕獲性能)が失われてしまうことになるという問題があった。また、四方に窓を開けた箱に粘着シートを収納したタイプのもの、及び特許文献1に記載された複数の開口を有する外筒体を組立自在に構成したものの場合、窓や開口が狭いので害虫の侵入が制御されてしまい、捕虫効果が減少してしまうことになるという問題があった。このため、風等の気流の発生の少ない温室ハウスの場合には、粘着シートを用いた害虫捕獲器を使用することが多いが、風等の気流の発生に無防備の、開放された圃場の場合は、本格的には使用されていないのが現状である。
【0005】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、害虫を捕獲する必要のある農場、特に、風等の気流によって土埃、砂埃、ゴミ等の舞い上がる圃場(田畑、具体的には、ピーマン畑、茶畑等の畑)において用いた場合、長期に渡って粘着シートによる害虫の捕獲性能を維持することが可能で、使い勝手に優れる害虫捕獲器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明者等は、風等の気流の方向と、粘着シートの設置方向との関係を研究し、粘着シートを、気流の方向に平行な方向にその設置位置を変えることができるようにすることによって、長期に渡って粘着シートによる害虫の捕獲性能を維持することができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明によって以下の害虫捕獲器が提供される。
【0007】
[1]設置場所に固定される棒状の支柱部と、柱状の本体と、前記本体の中心線に沿って下端から所定の中間位置まで貫通して形成された中間穴とを有し、前記中間穴に挿入された前記支柱部の先端によって、前記中間穴の天井壁において回転及び着脱可能に支持される保持部と、基材と、前記基材の少なくとも片面上に形成された粘着剤層とを有し、誘引した害虫を前記粘着剤層で捕獲する粘着シート部と、前記保持部の本体の中心線方向に沿って、その周面に形成された、前記粘着シート部の一端を把持することによって前記粘着シート部を前記保持部に取付ける取付部と、を備え、周囲の気流の方向に応じて、前記粘着シート部が、前記取付部及び前記保持部を介して、前記支柱部を中心として回転し、前記気流の方向に平行な方向にその設置位置を変えることが可能な害虫捕獲器。
【0008】
[2]圃場用に用いられる前記[1]に記載の害虫捕獲器。
【0009】
[3]前記粘着シート部は、前記取付部に把持される一端とは異なる側の少なくとも一端に、前記気流の方向を捕らえ易くして前記気流の方向に平行な方向にその設置位置を変え易くするため、前記気流に抵抗するフラップを有する、前記[1]又は[2]に記載の害虫捕獲器。
【0010】
[4]前記粘着シート部の前記基材は、前記害虫に固有の誘引色によって着色されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載の害虫捕獲器。
【0011】
[5]前記保持部の前記中間穴は、前記支柱部の先端の径が異なる場合に対応して前記天井壁で支持されることが可能なように、前記天井壁側になるほど小径となるように、異なる径の多段形状に形成されている前記[1]〜[4]のいずれかに記載の害虫捕獲器。
【0012】
[6]前記取付部は、2枚の開閉可能な板状部材から構成された前記[1]〜[5]のいずれかに記載の害虫捕獲器。
【0013】
[7]前記保持部の本体の周面に、複数個の前記取付部が形成されるとともに、複数個の前記取付部のそれぞれに、複数枚の前記粘着シート部のそれぞれの一端が把持された前記[1]〜[6]のいずれかに記載の害虫捕獲器。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、害虫を捕獲する必要のある農場、特に、風等の気流によって土埃、砂埃、ゴミ等の舞い上がる圃場(田畑、具体的にはピーマン畑、茶畑等の畑)において用いた場合、長期に渡って粘着シートによる害虫の捕獲性能を維持することが可能で、使い勝手に優れる害虫捕獲器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の害虫捕獲器の一の実施の形態を模式的に示す斜視図であり、粘着シートを横長に設置した場合を示す。
【図2】本発明の害虫捕獲器の他の実施の形態を模式的に示す斜視図であり、粘着シートを縦長に設置した場合を示す。
【図3】本発明の害虫捕獲器の一の実施の形態に用いられる取付部を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の害虫捕獲器の一の実施の形態に用いられる保持部の中間穴を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態の害虫捕獲器10は、設置場所に固定される棒状の支柱部1と、柱状の本体21と、本体21の中心線(図示せず)に沿って下端から所定の中間位置まで貫通して形成された中間穴22とを有し、中間穴22に挿入された支柱部1の先端によって、中間穴22の天井壁22aにおいて回転及び着脱可能に支持される保持部2と、基材31と、基材31の少なくとも片面上に形成された粘着剤層32とを有し、誘引した害虫を粘着剤層32で捕獲する粘着シート部3と、保持部2の本体21の中心線方向に沿って、その周面に形成された、粘着シート部3の短手方向の一端を把持することによって粘着シート部3を保持部2に取付ける取付部4と、を備え、周囲の気流の方向に応じて、粘着シート部3が、取付部4及び保持部2を介して、支柱部1を中心として回転し、気流の方向に平行な方向にその設置位置を変えることが可能な構成を備えている。
【0018】
なお、図1においては、粘着シート3を横長に設置した場合を示すが、図2に示すように、縦長に設置してもよい。
【0019】
本実施の形態の害虫捕獲器10は、上述の構成を備えているため、圃場用に好適に用いられる。
【0020】
以下、各構成要素について具体的に説明する。
【0021】
(支柱部1)
本実施の形態に用いられる支柱部1は、設置場所に固定される棒状の部材である。支柱部1としては、例えば、害虫捕獲器10の設置場所に確実に差し込むことが可能で、かつ後述する保持部2及び取付部4を介して粘着シート3を確実に固定することが可能であれば、特に制限はないが、廃棄物の負荷の面からは竹や樹木等の自然物が好ましい。また、プラスチック等からなるものであってもよい。
【0022】
(保持部2)
本実施の形態に用いられる保持部2は、柱状の本体21と、中間穴22とを有し、中間穴22に挿入された支柱部1の先端によって、中間穴22の天井壁22aにおいて回転及び着脱可能に支持される部材である。保持部2としては、例えば、軽量でかつ加工が容易で、支柱部1の先端で長期間回転及び着脱可能に支持されることが可能なものであることが好ましい。軽量であることによって長期間の回転に耐えることが可能であり、また着脱可能に支持されることによって、メンテナンスや交換作業を容易にし、使い勝手に優れたものとすることができる。
【0023】
具体的には、本体21は、形状として、円柱、角柱等の柱状のものが好ましく、材質として、発泡スチロール、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、スチロール樹脂等からなるものを挙げることができる。
【0024】
また、中間穴22は、支柱部1の先端の形状及び太さに対応して、支柱部1の先端が挿入可能なように、例えばドリルを用いることによって形成することができる。中間穴22の天井壁22aは、支柱部1の先端で支持されるため、相応の強度を有するものであることが好ましい。また、図4に示すように、中間穴22は、支柱部1の先端の径が異なる場合に対応して天井壁22aで支持されることが可能なように、天井壁22a側になるほど小径となるように、異なる径の多段形状に形成されることが好ましい。例えば、中間穴22の下部開口端から全体の3/4の深さの部分は、支柱部1が太い場合に対応した径のドリルで開口し、残りの1/4の深さの部分は、支柱部1が細い場合に対応した径のドリルで開口し、2段形状にして形成することができる。また、このように構成することによって、支柱部1が細い場合に、振動ブレを解消することができる。図4では、天井壁22a側から、小径D1及び大径D2の2段形状に形成した場合を示す。
【0025】
(粘着シート3)
本実施の形態に用いられる粘着シート3は、基材31と、基材31上に形成された粘着剤層32とを有し、誘引した害虫を粘着剤層32で捕獲するために用いられる部材である。その大きさとしては、例えば、短辺が5〜10cmで、長辺が15〜25cmの長方形とすることを挙げることができる。面積が同様であれば、例えば、多角形、円形、楕円形等であってもよい。
【0026】
粘着シート3を構成する基材31としては、例えば、ポリエステル、ポエチレン、ポリスチロ−ル及びポリウレタンからなる群から選ばれる少なくとも一種の合成樹脂、合成紙、紙、金属箔、又は不織布から構成されてなるものを好適例として挙げることができる。また、基材31は、害虫に固有の誘引色によって着色されていることが、害虫の誘引性を高め、粘着シート3の捕獲性能を高める点から好ましい。この場合、基材31の表裏面(片面だけであってもよい)には、害虫に固有のそれぞれ異なる誘引色によって着色してもよい。このように構成することによって、害虫の誘引性を高め、粘着シート3の捕獲性能を高めることができる。例えば、後述する黄色と青色とで裏表を塗り分けたり、一面を異なる複数色からなるパターン(例えば、花柄等)で構成してもよい。
【0027】
基材31における誘引色による着色としては、例えば、黄色、青色又は桃色に着色されてなるものを好適例として挙げることができる。黄色、青色又は桃色の誘引色は、マンセル表色値を用いた反射色で、黄色は、色相:4Y、明度:7、彩度:14、また、青色は、色相:3.0PB、明度:5.4、彩度:10.6、また、桃色は、色相:5R、明度:6.5、彩度:8の範囲のものであることが特に好ましい。この場合、誘引色は、基材31に黄色、青色又は桃色の顔料を印刷方式で塗膜層を形成してもよく、黄色、青色又は桃色の顔料を基材31に練り込んで形成してもよい。
【0028】
粘着シート3を構成する粘着剤層32は、基材31の少なくとも片面、好ましくは両面上に形成される。本実施の形態に用いられる粘着剤層32としては、基材31の誘引色による誘引性を保持するため透明粘着剤層であることが好ましい。透明粘着剤層としては、特に制限はないが、アクリル系、ゴム系及びシリコン系からなる群から選ばれる少なくとも一種の粘着剤を含有してなるものを好適例として挙げることができる。なお、粘着剤層32は、基材31の表面の全体を被覆したものであってもよく、少なくとも一部を被覆するものであってもよい(図1及び図2は、粘着剤層32が基材31の中央主要部に形成され、周縁部には形成されない場合を示す)。また、粘着剤層32の配設方法としては、特に制限はないが、例えば、印刷方式、塗装方式、貼付け方式等から任意の方法を用いることができる。粘着剤層32の厚さは、例えば、10〜100μmが好ましく、25〜70μmがさらに好ましい。
【0029】
粘着シート部3は、さらにフラップ33を有することが好ましい。このフラップ33は、粘着シート部3の、取付部4に把持される一端とは異なる側の一端に、気流の方向を捕らえ易くして気流の方向に平行な方向にその設置位置を変え易くするため、気流に抵抗する部材であり、所謂「風受け」である。このフラップ33は、例えば、図1に示すように、粘着シート部3の、取付部4に把持される一端とは反対側の一端に、例えば、1〜3個の切込みを形成し(図1では1個の場合を示す)、それぞれ反対方向に若干折り曲げた構成とすることが好ましい。なお、図2においては、取付部4に把持される一端と隣接する側の両端に、1個のフラップ33を形成した場合を示している。なお、フラップ33には、粘着シート部3を、例えば、手作業によって折り曲げて形成する時の便宜性の観点から、粘着剤層32を形成しないことが好ましい。また、粘着シート部3は、例えば、図3に示すように、フラップ33の形成箇所とは反対側に、貫通孔34を有することが好ましい。この貫通孔34は、粘着シート部3の吊り下げ用として用いることもできるし、後述する粘着シート部3を取付部4によって取り付ける時の粘着シート部3の固定用に用いることもできる。
【0030】
(取付部4)
本実施の形態に用いられる取付部4は、粘着シート部3の一端を把持、固定することによって粘着シート部3を保持部2に取付けるために用いられる部材である。例えば、図3に示すように、取付部4は、2枚の開閉可能な板状部材4a、4bから構成することができる。そのうちの1枚である板状部材4aが保持部2の本体21に接合し、他の1枚である板状部材4bが、本体21に接合した板状部材4aに蝶番バネ41、42を介して固定され、両者は自由に開閉ができるようになっている。この板状部材4a、4bには、粘着シート3を収納するためのシート収納凹部45,46がそれぞれ形成されている。また、板状部材4aの中央部分に、収納された粘着シート3をその貫通孔34を介して固定するための突起部43が設けられている。また、板状部材4bには、粘着シート3の貫通孔34を貫通する板状部材4aの突起部43を収納する突起部収納穴44が形成されている。
【0031】
このように構成することによって、板状部材4aの突起部43が粘着シート3の貫通孔34を貫通した状態で、粘着シート3を、シート収納凹部45に収納し、次いで蝶番バネ41、42を解除することによって、突起部43が突起部収納穴44に収納された状態で板状部材4bを板状部材4aに重ね合わせるようにして両者を閉じ合わせ、両者の間に粘着シート3を把持、固定して、取り付けることができる。
【0032】
取付部4の形状として、上述の2枚の開閉可能な板状とすることのほかに、例えば、円柱、角柱等の柱状体又は板状体に、粘着シート3を挿入し得る切れ目(図示せず)を形成したものであってもよい。この場合、その切れ目の幅は、粘着シート部3の厚さに応じて可変であり、粘着シート部3の一端を押圧して把持し、抜けることを防止するものであることが好ましい。また、洗濯はさみのようにバネの付いた2枚の板状体に粘着シート部3の一端を挟み込むように組み立てたものであってもよい。
【0033】
取付部4の配設位置は、例えば、図3に示すように、保持部2の本体21の中心線方向に沿って、その周面に形成することができるが、保持部2と、例えば、射出成形によって一体に形成してもよい。また、保持部2に、粘着シート部3の一端を把持することが可能なように、例えば、切れ目等の把持手段を形成して、取付部4を省略してもよい。
【0034】
取付部4の材質としては、軽量であり、加工の容易さから、発泡スチロール、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、スチロール樹脂等からなるものを挙げることができる。
【0035】
なお、図3は、保持部2の本体21の周面に、1個の取付部4を形成し、この1個の取付部4に1枚の粘着シート部の一端を把持させた場合を示すが、図示はしないが、保持部2の本体21の周面に、複数個の取付部4を形成するとともに、この複数個の取付部4のそれぞれに、複数枚の粘着シート部3のそれぞれの一端を把持させた構成としてもよい。例えば、2〜10枚(好ましくは、4〜6枚)の粘着シート部3のそれぞれの一端を、同数の取付部4にそれぞれ把持させることによって、複数枚の粘着シート部3が、取付部4を介して保持部2の本体21の周面上に、好ましくは、ほぼ等間隔で固定されて、本体21の周面の法線方向に、それぞれ放射状に延伸する所謂風車のような形状に構成してもよい。このように構成することによって、粘着シート部3は、風等の気流に対して、より感度よく、その設置位置を変えることが可能となる。
【0036】
(実施例1)
図1に示すように、基材としてのミルクカ−トン紙上に、誘引色として黄色塗膜層を形成し、粘着剤層として、ポリブデン系粘着剤を厚さ70μmに塗布し、剥離紙を貼り合わせて、10cm×25cmの粘着シートを横長にし、また、保持部及び取付部として、発泡スチロール製で、一体成形によって形成したものを用い、粘着シートの一端を、取付部を介して保持部に、地面と平行になるように保持させて、保持部の中間穴(内径:1.0cm)の天井壁において、地中に突き刺した中空カラーポール(太さ:0.8cm、長さ:10,20,30cm、材質:ポリ塩化ビニル製)の支柱によって回転及び着脱可能に支持させて、実施例1の害虫捕獲器を得た。得られた害虫捕獲器を、平塚市のピーマン畑に7月上旬に設置し、捕獲性能の試験を行った。使用した粘着シートとしては、青色(色相:3.0PB、明度:5.4、彩度:10.6)の同じ大きさ、厚さのものを使用した。害虫捕獲器の設置場所は、取り付けた粘着シートの回転距離を考慮して、ピーマンから30cm離れた所に設置し、粘着シートの設置高さは地面から、10cm,20cm及び30cmの3箇所にそれぞれ設置して、経時時間(10,20,30,40及び50日間)による害虫(ヒラズハナアザミウマ及びミカンキイロアザミウマ)の捕獲数(匹)を表1に示す。
【0037】
(比較例1)
比較例1として、粘着シートとして実施例1で用いた粘着シートと同じものを用い、その粘着シートの短手方向の上と下に直径0.7cmの丸穴を開けて、その穴に実施例1で用いたのと同じ支柱を挿入した捕獲器を用い、この捕獲器を地中に突き刺したこと以外は実施例1と同様にした。害虫(ヒラズハナアザミウマ及びミカンキイロアザミウマ)の捕獲数(匹)を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1から分るように、比較例1の場合、設置の高さに関係なく、設置後20日間ぐらいから、粘着面に土埃、砂埃、ゴミ等が付着して、粘着面の2/3程覆い尽くして害虫の付着する部分が失われ捕獲性能が低下してしまった。実施例1の場合、50日間経過しても土埃、砂埃、ゴミ等による汚染は非常に少なく、粘着性は堅持し、捕獲性能を維持している。実施例1の場合、土埃、砂埃、ゴミ等による汚染は非常に少ないのは、上述の構成を有することから、粘着シートが、風の流れに逆らわず、風の流れに平行になることで、土埃、砂埃、ゴミ等が粘着面に触れることなく流れていくためであると考えられる。
【0040】
(実施例2)
実施例1において、粘着シートを縦長にして、その一端を保持部を介して取付部に把持させたこと以外は実施例1と同様にした。害虫(ヒラズハナアザミウマ及びミカンキイロアザミウマ)の捕獲数(匹)を表2に示す。
【0041】
(比較例2)
比較例2として、粘着シートとして実施例1で用いた粘着シートと同じものを用い、その粘着シートの長手方向の上と下に直径0.7cmの丸穴を開けて、その穴に実施例1で用いたのと同じ支柱を挿入した捕獲器を用い、この捕獲器を地中に突き刺したこと以外は実施例1と同様にした。害虫(ヒラズハナアザミウマ及びミカンキイロアザミウマ)の捕獲数(匹)を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
表2からも、表1と同様の結果を得た。表1及び表2から、実施例1,2に係る害虫捕獲器は、風等の気流によって土埃、砂埃、ゴミ等の舞い上がる圃場において用いた場合、長期に渡って粘着シートによる害虫の捕獲性能を維持することが可能で、使い勝手に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0044】
1 支柱部
2 保持部
3 粘着シート部
4 取付部
4a 板状部材
4b 板状部材
10 害虫捕獲器
21 本体
22 中間穴
22a 天井壁
31 基材
32 粘着剤層
33 フラップ
34 貫通孔
41 蝶番バネ
42 蝶番バネ
43 突起部
44 突起部収納穴
45 シート収納凹部
46 シート収納凹部
D1 小径
D2 大径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置場所に固定される棒状の支柱部と、
柱状の本体と、前記本体の中心線に沿って下端から所定の中間位置まで貫通して形成された中間穴とを有し、前記中間穴に挿入された前記支柱部の先端によって、前記中間穴の天井壁において回転及び着脱可能に支持される保持部と、
基材と、前記基材の少なくとも片面上に形成された粘着剤層とを有し、誘引した害虫を前記粘着剤層で捕獲する粘着シート部と、
前記保持部の本体の中心線方向に沿って、その周面に形成された、前記粘着シート部の一端を把持することによって前記粘着シート部を前記保持部に取付ける取付部と、を備え、
周囲の気流の方向に応じて、前記粘着シート部が、前記取付部及び前記保持部を介して、前記支柱部を中心として回転し、前記気流の方向に平行な方向にその設置位置を変えることが可能な害虫捕獲器。
【請求項2】
圃場用に用いられる請求項1に記載の害虫捕獲器。
【請求項3】
前記粘着シート部は、前記取付部に把持される一端とは異なる側の少なくとも一端に、前記気流の方向を捕らえ易くして前記気流の方向に平行な方向にその設置位置を変え易くするため、前記気流に抵抗するフラップを有する、請求項1又は2に記載の害虫捕獲器。
【請求項4】
前記粘着シート部の前記基材は、前記害虫に固有の誘引色によって着色されている請求項1〜3のいずれかに記載の害虫捕獲器。
【請求項5】
前記保持部の前記中間穴は、前記支柱部の先端の径が異なる場合に対応して前記天井壁で支持されることが可能なように、前記天井壁側になるほど小径となるように、異なる径の多段形状に形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の害虫捕獲器。
【請求項6】
前記取付部は、2枚の開閉可能な板状部材から構成された請求項1〜5のいずれかに記載の害虫捕獲器。
【請求項7】
前記保持部の本体の周面に、複数個の前記取付部が形成されるとともに、複数個の前記取付部のそれぞれに、複数枚の前記粘着シート部のそれぞれの一端が把持された請求項1〜6のいずれかに記載の害虫捕獲器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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