説明

害虫防除具及びそれを用いた害虫防除材並びに害虫防除方法

【課題】殺虫性薬剤を土中に埋設することなく地上に置いて敷設できるため施工性に優れるとともに、殺虫性薬剤の使用量を削減することができ、さらに、シロアリ,ゴキブリ,ムカデ,ヤスデ等の徘徊性の不快害虫が好んで潜むことのできる狭い通路を形成させることができ、不快害虫を積極的に通路内に誘導し、不快害虫と殺虫性薬剤との接触機会を意図的に増大させることができ、防除効果に優れる害虫防除具を提供する。
【解決手段】害虫防除具1は、複数の底部2と、底部2に立設された壁部3と、隣り合う壁部3,3の上側同士を接続し隣り合う壁部3,3の下側を離間させる接続部4と、底部2と壁部3とで形成された窪み部5に収容された殺虫性薬剤6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徘徊性の不快害虫、主にシロアリが家屋に侵入するのを防除する害虫防除具及びそれを用いた害虫防除材並びに害虫防除方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、非忌避作用を有する殺虫性薬剤を用いたシロアリ防除技術が知られている。例えば、(特許文献1)には、「非忌避作用を有する殺虫性薬剤を餌基材に含浸させ、その餌基材をシロアリが容易に食害できる容器に収容し、これを土中に埋設させるようにした防蟻方法」が記載されている。(特許文献1)に開示された技術は、シロアリが容器を食い破って餌基材を食し、殺虫性薬剤に接触することにより防除することができるものである。
しかしながら、シロアリは、その習性から移動経路を特定することができないため、このような容器を用いた従来方法では局部的にしか効果がなく、このため多数の容器を土中に埋設させる必要があり、埋設する薬剤の量が多くなるため薬剤の拡散による環境汚染に繋がり、さらにその施工に手間と時間がかかるという問題があった。
【0003】
そこで、殺虫性薬剤を土中に埋設させるのではなく、地上に置いて敷設できるものとして、(特許文献2)に開示された害虫防除材料が開発された。(特許文献2)には、「シロアリが食害できるセルロース系材料で形成された袋部等の薬剤含有領域が帯状に連なった長尺部材と、前記薬剤含有領域に収容された又は含浸された非忌避作用を有する殺虫性薬剤と、を備えた害虫防除材料」が記載されている。この害虫防除材料を、家屋の基礎立ち上がり部分や束石周りなど、地上面(コンクリート面や地面)に敷設することにより、近寄ってきたシロアリが殺虫性薬剤に触れたり食したりすることで、シロアリの家屋への侵入を防除できるものである。
この技術によれば、殺虫性薬剤を土中に埋設することなく地上に置いて敷設できるため施工性に優れ、さらに殺虫性薬剤の使用量を削減することができるという作用・効果が得られる。
【特許文献1】特開2004−137150号公報
【特許文献2】特開2007−319071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、(特許文献2)に開示された技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献2)の害虫防除材料は、シロアリが薬剤含有領域を食い破ったり薬剤含有領域に接触したりすることにより、初めて防除効果が得られるものである。従って、薬剤含有領域にシロアリが出会わないことには防除効果は期待できない。本発明者らが検証したところ、地上面(コンクリート面や地面)には凹凸があり、また作業者の敷設作業にもばらつきがあるため、地上面に敷設した害虫防除材料の薬剤含有領域と地上面との間に、大きな不規則な隙間が生じてしまうことがあり、シロアリが薬剤含有領域に出会うことなく、この隙間を通って害虫防除材料を通過してしまう可能性があることがわかった。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、シロアリ,ゴキブリ,ムカデ,ヤスデ等の徘徊性の不快害虫が好んで潜むことのできる狭い通路を形成させることができ、不快害虫を積極的に通路内に誘導することができるため、不快害虫と殺虫性薬剤との接触機会を意図的に増大させることができ、防除効果に優れる害虫防除具を提供することを目的とする。
また、本発明は、家屋の基礎立ち上がり部分や束石周り等のコンクリート面や地面に簡単な作業で施工することができ、また撤去する場合の回収も容易に行うことができ施工性に優れ、さらに地上面との間に大きな隙間が生じるのを防止して、殺虫性薬剤に不快害虫が接触することなく通過してしまうのを防止し、防除効果に優れる害虫防除材を提供することを目的とする。
また、本発明は、シロアリ等の不快害虫の害虫防除具内に滞在する時間を長くして、殺虫性薬剤に接触する機会を増やし、防除効果に優れる害虫防除材を提供することを目的とする。
また、本発明は、徘徊性の不快害虫の習性を利用して、不快害虫を害虫防除具や害虫防除材に誘導し、不快害虫と殺虫性薬剤との接触機会を意図的に増大させ防除効果に優れる害虫防除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために本発明の害虫防除具及びそれを用いた害虫防除材並びに害虫防除方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の害虫防除具は、複数の底部と、前記底部に立設された壁部と、隣り合う前記壁部の上側同士を接続し隣り合う前記壁部の下側を離間させる接続部と、前記底部と前記壁部とで形成された窪み部に収容された殺虫性薬剤と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)隣り合う壁部の上側同士を接続し壁部の下側を離間させる接続部を備えているので、壁部と壁部の間に、シロアリ等の徘徊性の不快害虫が好んで潜むことのできる狭い通路を形成させることができる。これにより、不快害虫を積極的に通路内に誘導することができ、不快害虫と殺虫性薬剤との接触機会を増大させ、防除効果を高めることができる。
(2)コロニーと呼ばれる巣から家屋内に侵入するシロアリの徘徊行動は不規則で予測できないが、土壌やコンクリート面の間隙から家屋の床下に侵入したシロアリは、地表面では蟻道と呼ばれるトンネルを作ってその中を移動する。蟻道はシロアリの排泄物と周辺の土壌(砂)や食害片を用いて形成される。害虫防除具を、家屋の基礎立ち上がり部分や束石周りなどの地上面(コンクリート面や地面)に設置し、シロアリが害虫防除具の壁部と壁部の隙間に到達すると、蟻道を作らずに(ときには壁部を蟻道の一部として利用して)壁部に沿って移動する。シロアリは壁部を通過した後、家屋の基礎の壁面や束石を上る蟻道を作ろうとする。ところが、壁面や束石の表面には蟻道を形成する材料(土壌等)がないため、シロアリは、壁面や束石の表面から最も近いところにある害虫防除具の食害片やその周辺の土壌を蟻道の材料とする。そのため、害虫防除具の壁部の食害が進み、殺虫性薬剤に接触する確率が高くなり、シロアリの防除効果を高めることができる。
【0007】
ここで、底部,壁部,接続部の材料としては、濾紙,植物性雑繊維,段ボール紙や白板紙等の板紙,再生紙,綿繊維等のセルロース系材料;木材,木質材,木材チップ集成材;生分解性樹脂やポリスチレン発泡体等のシロアリが食害可能な合成樹脂等を用いることができる。紙器や木製容器等を作るように素材を切り貼りして製造することができる。また、型曲げ加工等により素材を成形して製造することもできる。また、新聞古紙や段ボール古紙等の古紙,パルプ等の原料を溶解処理後、成形型を用いてすき上げてつくる立体成形品であるパルプモールドを用いることもできる。また、セルロース系の繊維や合成樹脂等を用い射出成形等によって成形することもできる。なかでも、パルプモールドにより一体成形したものが好適に用いられる。リサイクル性に優れており、さらに適度な硬さを有し腐朽木材のような粗面を形成できるため、シロアリの食い付きが良く、ゴキブリ等も好んで潜り込むからである。
【0008】
底部としては、平面状,曲面状,錘状に形成されたもの等を用いることができる。底部の形状や大きさとしては、防除対象とする不快害虫の種類や収容する殺虫性薬剤の量に応じて適宜決定することができる。
また、底部は複数個列設されたものが用いられる。隣り合う底部に立設された壁部の間に、不快害虫が入り込む通路を形成するためである。底部は間隔をあけて一方向に沿って列設されたものだけでなく、縦横の2次元に広がりをもって間隔をあけて列設されたものも用いることができる。格子状や千鳥状に整列して形成されたものだけでなく、不規則に列設させたものも用いることができる。
害虫防除具は、コンクリート面や地面等の地上面、家屋の床面、食器棚等の裏側の壁面等に底部を接して用いられるものなので、複数の底部は同一面上に形成されたものが用いられる。
【0009】
壁部としては、底部から垂直に立設されたもの、底部から斜め上方に立設されたものを用いることができる。
壁部の高さは、防除対象とする不快害虫の種類によって適宜決定することができる。接続部によって壁部の上側同士を接続することにより、例えば、ゴキブリであれば、害虫防除具を設置した設置面から接続部までの高さを5〜10mmにするのが好適である。設置面と接続部との間に、ゴキブリが好む背と腹が同時に接触するような狭い隙間を形成できるからである。
【0010】
接続部としては、壁部の上側同士を接続し壁部の下側を所定の幅だけ離間させたものが用いられる。接続部は、壁部の上側の全長に亘って隙間無く接続したものが好ましい。壁部の間に、太陽光等の光線を遮った薄暗い通路を形成できるからである。但し、不快害虫の種類によっては、壁部の上側の一部を接続して、光線が差し込むようにしたものでも良い。
壁部と接続部の形状としては、断面が、矩形状、台形状、アーチ状、山型等に形成されたものを用いることができる。この形状も、防除対象とする不快害虫の種類に応じて、適宜決定することができる。
接続部によって離間された壁部の下側の間隔は、防除対象とする不快害虫の種類に応じて、適宜決定することができる。例えば、シロアリであれば4〜7mmが好適である。シロアリが2匹すれ違うことができる蟻道の幅に模すためである。また、ヤスデやムカデ,ゴキブリ等の不快害虫の場合も、それぞれの体長や体高に応じて、不快害虫が潜むのに好適な寸法に作られる。
【0011】
底部と壁部とで形成された窪み部に収容される殺虫性薬剤は、非忌避作用を有するものが好適である。さらに遅効性であるものが好ましい。シロアリであれば、体内に取り込んだ殺虫性薬剤を蟻道に繋がったコロニーに持ち帰り、他のシロアリに供与するので、やがてコロニー全体に毒物が広がってシロアリを駆除できるからである。
シロアリを対象とする殺虫性薬剤としては、イミダクロプリド,アセタミプリド,ニテンピラム,クロチアニジン等のネオニコチノイド系、インドキサカルブ等のオキサダイアジン系、クロロフェナピル、フィプロニル等のフェニルピラゾール系、フェニルピロール系等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
殺虫性薬剤は、粒状体、粉状体、錠剤、液状体、ゲル状体、クリーム状体等を使用することができる。また、液状の殺虫性薬剤を高分子吸収体に吸収させて使用することもできる。なかでも、殺虫性薬剤は、砂状の粒状体に薬剤を含浸乃至は担持させたものが好適に用いられる。壁部を食害したシロアリが、殺虫性薬剤の付いた粒状体を蟻道の材料として用いるため、その蟻道を通過したシロアリが殺虫性薬剤に接触することになり、殺虫性薬剤への接触確率が飛躍的に増大し、防除効果が飛躍的に増大するからである。
なお、薬剤を含浸乃至は担持させる粒状体としては、ゼオライト,シラス等の多孔質体等を用いることができる。これらの多孔質体は、薬剤が含浸し易く薬剤の担持性に優れるとともに、比重が小さくシロアリが窪み部から運び出し易いため好適である。
【0012】
殺虫性薬剤の粒状体の粒子径としては、0.2〜0.8mm好ましくは0.3〜0.6mmが好適である。壁部を食い破ったシロアリが、窪み部から運び出して蟻道の材料とする確率が増大することが、実験により確認されたからである。
【0013】
壁部の一部に小さな貫通孔を形成して、殺虫性薬剤を貫通孔から露出させることもできる。これにより、ゴキブリ,ムカデ,ヤスデ等の不快害虫が殺虫性薬剤に接触する機会を増やし、防除効果を高めることができる。
ゴキブリ,ムカデ,ヤスデ等の不快害虫を対象とする殺虫性薬剤としては、昆虫成長調整剤、ピリプロキシフェン,フェノキシカルブ,ヒドラメチルノン,ジフルベンズノン,クロルフルアズロン,ヘキサフルムロン,トリフルムロン,スルフルラミド等の食毒剤、ホウ素系化合物等を、単独又は2種以上を組み合わせたものを用いることができる。また、イミダクロプリド,アセタミプリド,ニテンピラム,クロチアニジン等のネオニコチノイド系、インドキサカルブ等のオキサダイアジン系、クロロフェナピル、フィプロニル等のフェニルピラゾール系、フェニルピロール系等の殺虫性薬剤と混合して使用することもできる。
【0014】
窪み部に殺虫性薬剤を収容した後、窪み部は被覆材を用いて被覆し、殺虫性薬剤が窪み部からこぼれるのを防ぐのが好ましい。
被覆材としては、紙製,合成樹脂製のフィルムやシート、薄板材等が用いられる。被覆材は、壁部の上端縁や接続部と接着又は溶着させることにより、窪み部を被覆し窪み部の開口を閉じて蓋をすることができる。特に、熱溶着して被覆するものが好適である。接着剤を用いた場合のように溶剤等が周囲環境に拡散するおそれがないため、乳幼児等の生理的弱者のいる家屋にも安心して設置させることができ、さらに溶剤等に敏感な不快害虫に忌避されることもないからである。
【0015】
本発明の請求項2に記載の害虫防除具は、複数の底部と、前記底部に立設された壁部と、隣り合う前記壁部の上側同士を接続し隣り合う前記壁部の下側を離間させる接続部と、前記壁部に含浸又は塗布された殺虫性薬剤と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)ゴキブリは腹と背が同時に接触するような狭い隙間を好み、ムカデやヤスデ等も狭い隙間に侵入する。また、シロアリにとっても、壁部と壁部との間に形成される通路は蟻道を作るための好適な環境である。このため、シロアリ等の不快害虫を害虫防除具に積極的に誘導できる。壁部には殺虫性薬剤が含浸又は塗布されているので、不快害虫が壁部を食したり壁部に接触した触覚を舐めたりすることによって、殺虫性薬剤が不快害虫に取り込まれるため、不快害虫を高い確率で防除できる。
【0016】
ここで、底部,壁部,接続部としては、請求項1で説明したものと同様なので、説明は省略する。殺虫性薬剤を含浸させた害虫防除具を製造する場合、パルプモールド、濾紙,植物性雑繊維,段ボール紙,再生紙,綿繊維等のセルロース系材料、木材,木質材,木材チップ集成材等は、吸液性を有しているので好適に用いられる。殺虫性薬剤を塗布した害虫防除具を製造する場合、必ずしも吸液性は必要なく、広く生分解性樹脂等も用いることができる。
殺虫性薬剤も請求項1で説明したものと同様であるが、液状の殺虫性薬剤を壁部に含浸させたり、壁部や接続部に殺虫性薬剤を塗布したりすることにより、害虫防除具を製造することができる。また、粉状や粒状等の殺虫性薬剤を底部や壁部にふりかけた後、その上から水等の溶媒をかけることにより、殺虫性薬剤を染み出させて製造することもできる。
【0017】
本発明の請求項3に記載の害虫防除具は、複数の突状部と、隣り合う前記突状部の上側同士を接続し隣り合う前記突状部の下側を離間させる接続部と、前記突状部に含浸又は塗布された殺虫性薬剤と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用と同様の作用が得られる。
【0018】
ここで、突状部としては、円柱状や角柱状等の柱状、直線状や曲線状,点在状に形成された突条等が用いられる。
接続部としては、突状部の上側同士を接続し突状部の下側を所定の幅だけ離間させたものが用いられる。接続部は、突状部の上側の全長に亘って隙間無く接続したものが好ましい。突状部の間に、太陽光等の光線を遮った薄暗い通路を形成できるからである。但し、不快害虫の種類によっては、突状部の上側の一部を接続して、光線が差し込むようにしたものでも良い。
接続部によって離間された突状部の下側の間隔は、請求項1において説明したのと同様に、防除対象とする不快害虫の種類に応じて、適宜決定することができる。
突状部,接続部の材料としては、請求項1において説明したのと同様に、濾紙,植物性雑繊維,段ボール紙や白板紙等の板紙,再生紙,綿繊維等のセルロース系材料;木材,木質材,木材チップ集成材;生分解性樹脂やポリスチレン発泡体等のシロアリが食害可能な合成樹脂等を用いることができる。
【0019】
殺虫性薬剤を含浸させた害虫防除具を製造する場合、パルプモールド、濾紙,植物性雑繊維,段ボール紙,再生紙,綿繊維等のセルロース系材料、木材,木質材,木材チップ集成材等は、吸液性を有しているので好適に用いられる。殺虫性薬剤を塗布した害虫防除具を製造する場合、必ずしも吸液性は必要なく、広く生分解性樹脂等も用いることができる。
殺虫性薬剤も請求項1で説明したものと同様であるが、液状の殺虫性薬剤を突状部に含浸させたり、突状部や接続部に殺虫性薬剤を塗布したりすることにより、害虫防除具を製造することができる。
【0020】
本発明の請求項4に記載の害虫防除材は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の害虫防除具と、隣り合う前記害虫防除具同士を屈曲可能に連結した連結部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)害虫防除具同士を屈曲可能に連結した連結部を備えているので、害虫防除具を帯状に連ねて長尺化させることができる。このため、家屋の基礎立ち上がり部分や束石周り等のコンクリート面や地面に簡単な作業で施工することができ施工性に優れ、さらに撤去する場合の回収も容易に行うことができる。
(2)地上面(コンクリート面や地面)に凹凸があっても、害虫防除具が連結部で屈曲するため、各々の害虫防除具の底部を地上面に接地させることができ、地上面と害虫防除具との間に大きな隙間が生じ難いため、害虫防除具の殺虫性薬剤に不快害虫が接触することなく通過してしまうのを防止し、防除効果を高めることができる。
【0021】
ここで、連結部としては、紙製や合成樹脂製のシート等により、隣り合う害虫防除具を連ね結ぶものが用いられる。請求項1で説明した被覆材を、連結部を構成する部材として用いることもできる。この場合は、長尺の被覆材を用意し、複数の害虫防除具を1枚の被覆材で被覆することにより、窪み部の被覆と害虫防除具間の連結とを同時に行うことができる。
【0022】
本発明の請求項5に記載の害虫防除材は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の害虫防除具と、前記害虫防除具の上縁部より外側に張り出すように前記害虫防除具の上面に固設された張出部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)害虫防除具の上縁部より外側に張り出すように固設された張出部を備えているので、害虫防除材を施工する際に、張出部を家屋の基礎立ち上がり部分の基礎壁に密着させて設置することにより、シロアリ等の不快害虫が基礎壁をよじ登るために害虫防除具を通過しようとしても、張出部に遮られるため、基礎壁を登って土台や柱に達し難くなる。このため、不快害虫が害虫防除具内に滞在する時間が長くなり、殺虫性薬剤に接触する機会が増え、防除効果をさらに高めることができる。
【0023】
ここで、張出部としては、シロアリ等の食害を受け難いポリエチレン,ポリプロピレン,等のポリオレフィン系等の合成樹脂製フィルムで形成され、害虫防除具の上面に溶着,接着等により固設されたものが好適に用いられる。ポリオレフィン系等の合成樹脂製フィルムは、可撓性があり基礎壁に密接させ易いからである。
窪み部を覆う被覆材の周囲を延設させて張出部とすることができる。また、被覆材とは別に、合成樹脂製フィルム等を害虫防除具の上面に固設して害虫防除具の上縁部の側方に張り出すように設け張出部とすることもできる。
張出部の張り出し長さとしては、5〜15mmが好適である。5mmより短くなると施工の際に基礎壁に密着させ難くなり、また15mmより長くなると張出部の先端が垂れ下がり易くなり、やはり施工の際に基礎壁に密着させ難くなるからである、
【0024】
本発明の請求項6に記載の害虫防除方法は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の害虫防除具、又は、請求項4若しくは5に記載の害虫防除材の底部若しくは突状部を設置面に接触させた状態で静置する構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)害虫防除具や害虫防除材を設置面に静置することにより、シロアリ等の徘徊性の不快害虫が好んで潜むことのできる狭い通路を形成させることができ、不快害虫の習性を利用して通路内に誘導することができるため、不快害虫と殺虫性薬剤との接触機会を増大させ、優れた防除効果が得られる。
【0025】
ここで、設置面としては、家屋の床下の地面やコンクリート面等の地上面、家屋や収納庫等の床面、棚板、家具や電化製品等の背面、配置された家具や電化製品等の裏側の壁面等が用いられる。
シロアリを防除する目的で家屋の床下の地上面に設置する場合には、家屋の基礎立ち上がり部分や束石周りなどの基礎壁に沿わせて設置するのが好ましい。シロアリは害虫防除具等を通過した後、家屋の基礎の壁面や束石の壁面等の基礎壁を上る蟻道を作ろうとするが、基礎壁の表面には蟻道を形成する材料(土壌等)がないため、シロアリは基礎壁から最も近いところにある害虫防除具等の食害片やその周辺の土壌を蟻道の材料とする。そのため、害虫防除具等の壁部や突状部の食害が進み、殺虫性薬剤に接触する確率が高くなり防除効果を高めることができるからである。
また、張出部を備えた害虫防除材を用いる場合は、基礎壁に張出部を接触させながら害虫防除材を基礎壁に沿わせて設置する。これにより、害虫防除材を通過したシロアリが基礎壁に上るのを阻止することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の害虫防除具及びそれを用いた害虫防除材並びに害虫防除方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)隣り合う壁部の上側同士を接続し壁部の下側を離間させる接続部を備えているので、壁部と壁部の間に、シロアリ等の徘徊性の不快害虫が好んで潜むことのできる狭い通路を形成させることができ、不快害虫を積極的に通路内に誘導することができるため、不快害虫と殺虫性薬剤との接触機会を意図的に増大させることができ、防除効果に優れた害虫防除具を提供できる。
(2)害虫防除具を、家屋の基礎立ち上がり部分や束石周りなどの地上面(コンクリート面や地面)に設置し、シロアリが害虫防除具の壁部と壁部の隙間に到達すると、蟻道を作らずに(ときには壁部を蟻道の一部として利用して)壁部に沿って移動し、壁部を通過した後、家屋の基礎の壁面や束石を上る蟻道を作ろうとするが、壁面や束石の表面には蟻道を形成する材料(土壌等)がないため、シロアリは、壁面や束石の表面から最も近いところにある害虫防除具の食害片やその周辺の土壌を蟻道の材料とする。そのため、害虫防除具の壁部の食害が進み、殺虫性薬剤に接触する確率が高くなり、シロアリの防除効果に優れた害虫防除具を提供できる。
【0027】
請求項2及び3に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)ゴキブリは腹と背が同時に接触するような狭い隙間を好み、ムカデやヤスデ等も狭い隙間に侵入し、シロアリにとっても、壁部と壁部との間に形成される通路は蟻道を作るための好適な環境であるため、シロアリ等の不快害虫を害虫防除具に積極的に誘導でき、不快害虫が壁部を食したり壁部に接触した触覚を舐めたりすることによって、殺虫性薬剤が不快害虫に取り込まれるため、不快害虫を高い確率で防除できる害虫防除具を提供できる。
【0028】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1の効果に加え、
(1)害虫防除具同士を屈曲可能に連結した連結部を備えているので、害虫防除具を帯状に連ねて長尺化させることができ、家屋の基礎立ち上がり部分や束石周り等のコンクリート面や地上面に簡単な作業で施工することができ、さらに撤去する場合の回収も容易に行うことができる施工性に優れた害虫防除材を提供できる。
(2)地上面(コンクリート面や地面)に凹凸があっても、害虫防除具が連結部で屈曲するため、各々の害虫防除具の底部を地上面に接地させることができ、地上面と害虫防除具との間に大きな隙間が生じ難いため、害虫防除具の殺虫性薬剤に不快害虫が接触することなく通過してしまうのを防止し、防除効果に優れた害虫防除材を提供できる。
【0029】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1の効果に加え、
(1)張出部を家屋の基礎立ち上がり部分の基礎壁に密着させて設置することにより、シロアリ等の不快害虫が基礎壁をよじ登るために害虫防除具を通過しようとしても、張出部に遮られるため、基礎壁を登って土台や柱に達し難くなり、不快害虫を害虫防除具内に長時間滞在させることができ、不快害虫が殺虫性薬剤に接触する機会が増えるため、防除効果に優れた害虫防除材を提供できる。
【0030】
請求項6に記載の発明によれば、
(1)シロアリ等の徘徊性の不快害虫が好んで潜むことのできる狭い通路を形成させることができ、不快害虫の習性を利用して通路内に誘導することができるため、不快害虫と殺虫性薬剤との接触機会を増大させ、防除効果に優れた害虫防除方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における害虫防除具の一部破断斜視図であり、図2は図1のA−A線における要部断面図である。
図中、1は本発明の実施の形態1における害虫防除具、2は平面視した形状が矩形状等に形成され同一面上の縦横の2次元方向に広がりをもって所定の間隔をあけて複数列設された底部、3は底部2の四辺に立設された壁部、4は隣り合う壁部3の上側同士を壁部3の上縁の全長に亘って接続し隣り合う壁部3の下側を蟻道等の幅になるように離間させる接続部、5は底部2と壁部3で囲まれて形成された窪み部、6は窪み部5に収容されたネオニコチノイド系,オキサダイアジン系,フェニルピラゾール系,フェニルピロール系等の非忌避作用を有し遅効性の粉状や粒状等の殺虫性薬剤、7は合成樹脂製シート等で形成され接続部4の上面に熱溶着され窪み部5を被覆した被覆材、Gはコンクリート面,地面等の地上面や床面,家屋の壁面等の害虫防除具1の設置面、8は設置面Gと壁部3,3、接続部4との間に形成された不快害虫が潜むことのできる通路である。
【0032】
ここで、本実施の形態においては、害虫防除具1の底部2,壁部3,接続部4は、新聞古紙や段ボール古紙等の古紙,パルプ等の原料を溶解処理後、成形型を用いて一体的にすき上げて立体成形したパルプモールドで形成されている。
また、底部2の一辺の長さは約10mm、接続部4で離間された下側の壁部3,3間の間隔は4〜7mm、設置面Gから接続部4の下面までの高さは5〜10mmに形成されている。
実施の形態1における害虫防除具1は、コンクリート面や地面等の設置面Gに、底部3が接するように設置して用いることができる。
【0033】
以上のように、本発明の実施の形態1における害虫防除具1は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)隣り合う壁部3の上側同士を接続し壁部3の下側を蟻道等の幅になるように離間させる接続部4を備えているので、隣り合う壁部3,3間に、シロアリ等の徘徊性の不快害虫が好んで潜むことのできる狭い通路8を形成させることができ、不快害虫を積極的に通路8内に誘導することができ、不快害虫と殺虫性薬剤6との接触機会を増大させ、防除効果を高めることができる。
(2)害虫防除具1を、家屋の基礎立ち上がり部分や束石周りなどの地上面(コンクリート面や地面)に設置し、シロアリが害虫防除具1の壁部3と壁部3の通路8に到達すると、蟻道を作らずに(ときには壁部3を蟻道の一部として利用して)壁部3に沿って移動する。シロアリは壁部3を通過した後、家屋の基礎の壁面や束石を上る蟻道を作ろうとする。ところが、壁面や束石の表面には蟻道を形成する材料(土壌等)がないため、シロアリは、壁面や束石の表面から最も近いところにある害虫防除具1の食害片やその周辺の土壌を蟻道の材料とする。そのため、害虫防除具1の壁部3の食害が進み、殺虫性薬剤6に接触する確率が高くなり、シロアリの防除効果を高めることができる。
(3)底部2,壁部3,接続部4がパルプモールドで一体成形されているので、生産性に優れるとともにリサイクル性に優れる。また、シロアリによる食害が起こり易いため、シロアリと殺虫性薬剤6との接触機会が増える。
(4)窪み部5が被覆材7で被覆されているので、窪み部5に収容された殺虫性薬剤6がこぼれたり飛散したりするのを防止することができる。
(5)接続部4で離間された下側の壁部3,3間の間隔が4〜7mm、設置面Gから接続部4の下面までの高さは5〜10mmに形成されているので、シロアリの蟻道の大きさに模すことができ、シロアリを積極的に通路8内に誘引することができる。
(6)非忌避作用を有し遅効性の殺虫性薬剤6を用いているので、シロアリが体内に取り込んだ殺虫性薬剤6を蟻道に繋がったコロニーに持ち帰り、他のシロアリに供与するので、やがてコロニー全体に毒物が広がってシロアリを駆除することができる。
(7)被覆材7が熱溶着されているので、接着剤を用いた場合のように溶剤等が周囲環境に拡散するおそれがなく、乳幼児等の生理的弱者のいる家屋にも安心して設置させることができ、さらに溶剤等に敏感な不快害虫に忌避されることもなく防除効果を高めることができる。
【0034】
また、本発明の実施の形態1における害虫防除具1を用いた害虫防除方法によれば、以下のような作用が得られる。
(1)害虫防除具1を設置面Gに静置することにより、シロアリ等の徘徊性の不快害虫が好んで潜むことのできる狭い通路8を形成させることができ、不快害虫の習性を利用して通路内に誘導することができるため、不快害虫と殺虫性薬剤6との接触機会を増大させ、優れた防除効果が得られる。
【0035】
ここで、本実施の形態においては、害虫防除具1の全体は平面視して略矩形状に形成されているが、これに限定するものではなく、円形状、三角形状等の種々の形状に形成する場合もある。
また、底部2が、平面視した形状が矩形状等に形成され2次元方向に広がりをもって所定の間隔をあけて整列され、通路8が格子状に形成される場合について説明したが、これに限定するものではなく、同一面上に底部2を不規則に分散させて列設させたものを用いる場合もある。また、底部2の平面視した形状は、矩形状に限定するものではなく、円形状、三角形状、長円状等の種々の形状に形成したものを用いる場合もある。
【0036】
(実施の形態2)
図3(a)は本発明の実施の形態2における害虫防除材の平面図であり、図3(b)は害虫防除材の正面図である。なお、実施の形態1で説明したものと同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、11は実施の形態2における長尺の帯状に形成された害虫防除材、12は僅かな隙間をあけて並べた複数の害虫防除具1の接続部4に熱溶着され上面を被覆した長尺状の合成樹脂製シート等の被覆材、13は被覆材12の一部で形成され害虫防除具1,1を屈曲可能に連結した連結部、14は連結部13が設けられた害虫防除具1の上縁部、15は上縁部14に隣接した害虫防除具1の上縁部、16は被覆材12の長手方向の対向する両縁部を延設させて形成され害虫防除具1の上縁部15より外側に5〜15mm程度張り出すように固設された張出部である。
なお、本実施の形態においては、長尺の被覆材12の長手方向と平行方向の害虫防除具1の長さは80〜150mm、被覆材12の短手方向と平行方向の害虫防除具1の幅は160〜300mmに形成されている。また、害虫防除材11は全長が800〜1500mm程度になるように形成されている。
【0037】
以上のように構成された実施の形態2における害虫防除材を用いた害虫防除方法について、図面を参照しながら説明する。
図4は実施の形態2における害虫防除材11を基礎立ち上がり部分に設置した状態を示す一部断面側面図である。
図中、17は地面、18は地面17に下部が埋設され図示しない土台や柱を支える布基礎,ベタ基礎等の基礎、19は基礎18の立ち上がり部分の基礎壁、Gは床下の捨てコンクリート等の設置面である。
図4に示すように、害虫防除材11は、基礎壁19に沿って設置面G(床下の地上面)に敷設する。敷設する際には、張出部16が全長に亘って基礎壁19に接触するようにし、張出部16が上向きに撓曲するように基礎壁19に密着させる。
【0038】
以上のように、本発明の実施の形態2における害虫防除材11は構成されているので、実施の形態1に記載した作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)害虫防除具1,1を屈曲可能に連結した連結部13を備えているので、害虫防除具1を帯状に連ねて長尺化させることができ、家屋の基礎立ち上がり部分や束石周り等のコンクリート面や地面に簡単な作業で施工することができ施工性に優れ、さらに撤去する場合の回収も容易に行うことができる。
(2)長さが80〜150mmの害虫防除具1が連結部13を介して連なっているため、設置面Gに凹凸があっても害虫防除材11が連結部13で屈曲し、各々の害虫防除具1の底部2を設置面Gに接地させることができる。これにより、設置面Gと害虫防除具1との間に大きな隙間が生じ難いため、害虫防除具1の殺虫性薬剤6に不快害虫が接触することなく通過してしまうのを防止し、防除効果を高めることができる。
(3)張出部16を備えているので、害虫防除材11を施工する際に、張出部16を基礎壁19に密着させて設置することにより、シロアリ等の不快害虫が土台や柱の木造部分に辿り着くために害虫防除具1を通過しようとしても、張出部16に遮られるため、基礎壁19を登って土台や柱の木造部分に達し難くなる。このため、不快害虫が害虫防除具1内に滞在する時間が長くなり、殺虫性薬剤に接触する機会が増え、防除効果をさらに高めることができる。
(4)害虫防除具1の幅より広い長尺の被覆材12で複数の害虫防除具1を連続的に被覆しているので、害虫防除具1の窪み部5の被覆と、害虫防除具1,1間の連結と、張出部16の形成と、を同時に行うことができ、生産性に優れる。
【0039】
ここで、本実施の形態においては、長尺状の被覆材12を用い、窪み部5の被覆と害虫防除具1,1の連結を同時に行った場合について説明したが、これに限定するものではなく、実施の形態1で説明した窪み部5を被覆材7で被覆した害虫防除具1を、合成樹脂製等のシート,紐状体等を用いて連結部13を形成し、連ねる場合もある。この場合も、同様の作用が得られる。
また、被覆材12の一部を使って張出部16を形成した場合について説明したが、これに限定するものではなく、張出部を形成するために別の合成樹脂製フィルム等を用意し、害虫防除具1の上面に固設して、張出部を形成する場合もある。この場合も同様の作用が得られる。
また、基礎18としてベタ基礎,布基礎等の場合について説明したが、束石等の場合も同様である。この場合も、束石の側面(基礎壁)に張出部16を密着させることにより、シロアリ等の不快害虫が基礎壁側に上るのを阻止することができる。なお、連結部13で連結していない害虫防除具1に、張出部16を設ける場合もある。束石の周りに設置する等、基礎壁が短い場合に用いることができる。
また、害虫防除材11を、張出部16が上向きに撓曲するように基礎壁19に密着させて敷設した場合について説明したが、これに限定するものではない。なお、張出部16の先端が上を向くように撓曲させた状態で害虫防除材11を敷設することで、上からコンクリート屑等が降ってきても、コンクリート屑等が基礎壁19と張出部16との間に侵入し難いため、基礎壁19と張出部16との間に隙間が生じ難く、シロアリ等の不快害虫がこの隙間から基礎壁19を上ってしまうことを防止できるため好ましい。
【0040】
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3における害虫防除具の要部断面図である。
図中、21は実施の形態3における害虫防除具、22は平面視して略円形状等の曲面状に形成され同一面上の縦横方向に所定の間隔をあけて複数列設された底部、23は底部22の外周に立設された壁部、24は隣り合う壁部23,23の上側同士を接続し壁部23,23の下側を離間させる接続部である。なお、壁部23はピリプロキシフェン,フェノキシカルブ,ヒドラメチルノン,ジフルベンズノン,クロルフルアズロン,ヘキサフルムロン,トリフルムロン,スルフルラミド等の液状の殺虫性薬剤を含浸しており、壁部23の外面に染み出している。
ここで、本実施の形態においては、害虫防除具21の底部22,壁部23,接続部24は、新聞古紙や段ボール古紙等の古紙,パルプ等の原料を溶解処理後、成形型を用いて一体的にすき上げて立体成形したパルプモールドで形成されている。また、接続部24の高さは3〜10mmに形成されている。また、壁部23と接続部24の形状が、正面視して、アーチ状に形成されている。
【0041】
以上のように、本発明の実施の形態3における害虫防除具21は構成されているので、実施の形態1に記載した作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)隣り合う壁部23の上側同士を接続し壁部23の下側を離間させる接続部24と、殺虫性薬剤を含浸した壁部23と、を備えているので、壁部23と壁部23の間に、シロアリ等の徘徊性の不快害虫が好んで潜むことのできる狭い通路を形成させることができる。これにより、不快害虫を積極的に通路内に誘導することができ、不快害虫と殺虫性薬剤との接触機会を増大させ、防除効果を高めることができる。例えば、ゴキブリは腹と背が同時に接触するような狭い隙間を好み、ムカデやヤスデ等も狭い隙間に侵入する。また、シロアリにとっても、壁部23と壁部23との間に形成される通路は蟻道を作るための好適な環境である。このため、シロアリ等の不快害虫を害虫防除具21に積極的に誘導できる。壁部23には殺虫性薬剤が含浸されているので、不快害虫が壁部23を食したり壁部23に接触した触覚を舐めたりすることによって、殺虫性薬剤が不快害虫に取り込まれるため、不快害虫を高い確率で防除できる。
【0042】
ここで、本実施の形態においては、壁部23に殺虫性薬剤が含浸された場合について説明したが、液状の殺虫性薬剤が壁部23の外面に塗布される場合もある。この場合も、同様の作用が得られる。
また、害虫防除具21の上面に合成樹脂フィルム等を固設して、張出部を設ける場合もある。また、害虫防除具21を合成樹脂製等のシートや紐状体等を用いて連結する連結部を形成し、複数の害虫防除具21を繋げる場合もある。これらの場合も同様の作用が得られる。
また、壁部23と接続部24の形状が、正面視して、アーチ状に形成された場合について説明したが、この形状に限定するものではなく、矩形状、台形状等に形成される場合もある。この場合も同様の作用が得られる。
【0043】
(実施の形態4)
図6は本発明の実施の形態4における害虫防除具の要部断面図である。
図中、31は実施の形態4における害虫防除具、32は上部から下部に向かって先窄み状の柱状や突条等に形成され所定の間隔をあけて複数列設された、或いは点在状に形成された突状部、33は突状部32,32の上側同士を接続し突状部32,32の下側をシロアリの蟻道の幅等の間隔に離間させる接続部、34は設置面Gと突状部32,32との間に形成された不快害虫が潜むことのできる通路である。なお、突状部32はピリプロキシフェン,フェノキシカルブ,ヒドラメチルノン,ジフルベンズノン,クロルフルアズロン,ヘキサフルムロン,トリフルムロン,スルフルラミド等の液状の殺虫性薬剤を含浸しており、突状部32の外面に染み出している。
ここで、本実施の形態においては、害虫防除具31の突状部32及び接続部33は、木質の集成材等で一体的に形成されている。
【0044】
以上のように、本発明の実施の形態4における害虫防除具31は構成されているので、実施の形態1に記載した作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)隣り合う突状部32の上側同士を接続し突状部32の下側を離間させる接続部33と、殺虫性薬剤を含浸した突状部32と、を備えているので、突状部32と突状部32の間に、シロアリ等の徘徊性の不快害虫が好んで潜むことのできる狭い通路34を形成させることができる。これにより、不快害虫を積極的に通路34内に誘導することができ、不快害虫と殺虫性薬剤との接触機会を増大させ、防除効果を高めることができる。例えば、ゴキブリは腹と背が同時に接触するような狭い隙間を好み、ムカデやヤスデ等も狭い隙間に侵入する。また、シロアリにとっても、突状部32と突状部32との間に形成される通路34は蟻道を作るための好適な環境である。このため、シロアリ等の不快害虫を害虫防除具31に積極的に誘導できる。突状部32には殺虫性薬剤が含浸されているので、不快害虫が突状部32を食したり突状部32に接触した触覚を舐めたりすることによって、殺虫性薬剤が不快害虫に取り込まれるため、不快害虫を高い確率で防除できる。
【0045】
ここで、本実施の形態においては、突状部32に殺虫性薬剤が含浸された場合について説明したが、液状の殺虫性薬剤が突状部32の外面に塗布される場合もある。この場合も、同様の作用が得られる。
また、害虫防除具31の上面に合成樹脂フィルム等を固設して、張出部を設ける場合もある。また、害虫防除具31を合成樹脂製等のシートや紐状体等を用いて連結する連結部を形成し、複数の害虫防除具31を繋げる場合もある。これらの場合も同様の作用が得られる。
【0046】
(実施の形態5)
図7は本発明の実施の形態5における害虫防除具の要部断面図である。
図中、41は実施の形態5における害虫防除具、42は襞状や突条に形成され所定の間隔をあけて複数列設された、或いは点在状に形成された突状部、43は突状部42,42の上側同士を接続し突状部42,42の下側をシロアリの蟻道の幅やゴキブリの体幅等の間隔に離間させる接続部、44は設置面Gと突状部42,42との間に形成された不快害虫が潜むことのできる通路である。なお、突状部42はピリプロキシフェン,フェノキシカルブ,ヒドラメチルノン,ジフルベンズノン,クロルフルアズロン,ヘキサフルムロン,トリフルムロン,スルフルラミド等の液状の殺虫性薬剤が塗布されている。
ここで、本実施の形態においては、害虫防除具41の突状部42及び接続部43は、木質の集成材等で一体的に形成されている。
【0047】
以上のように、本発明の実施の形態5における害虫防除具41は構成されているので、実施の形態4に記載した作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)突状部42が襞状や突条に形成されているので、突状部42間の間隔や高さを自由に設計することができ、ゴキブリ等の体幅や体高に合わせた高さの低い通路44を形成することができ、自在性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、徘徊性の不快害虫、主にシロアリが家屋に侵入するのを防除する害虫防除具及びそれを用いた害虫防除材に関し、不快害虫が好んで潜むことのできる狭い通路を形成させることができ、不快害虫を積極的に通路内に誘導することができるため、不快害虫と殺虫性薬剤との接触機会を意図的に増大させることができ、防除効果に優れた害虫防除具を提供でき、また、家屋の基礎立ち上がり部分や束石周り等のコンクリート面や地面に簡単な作業で施工することができ、撤去する場合の回収も容易に行うことができ施工性に優れ、さらに地上面や基礎壁との間に大きな隙間が生じるのを防止して、殺虫性薬剤に不快害虫が接触することなく通過してしまうのを防止し、防除効果に優れた害虫防除材を提供することができ、また、不快害虫を害虫防除具や害虫防除材に積極的に誘導し、不快害虫と殺虫性薬剤との接触機会を意図的に増大させ防除効果に優れた害虫防除方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施の形態1における害虫防除具の一部破断斜視図
【図2】図1のA−A線における要部断面図
【図3】(a)実施の形態2における害虫防除材の平面図 (b)実施の形態2における害虫防除材の正面図
【図4】実施の形態2における害虫防除材を基礎立ち上がり部分に設置した状態を示す一部断面側面図
【図5】実施の形態3における害虫防除具の要部断面図
【図6】実施の形態4における害虫防除具の要部断面図
【図7】実施の形態5における害虫防除具の要部断面図
【符号の説明】
【0050】
1,21,31,41 害虫防除具
2,22 底部
3,23 壁部
4,24,33,43 接続部
5 窪み部
6 殺虫性薬剤
7 被覆材
8,34,44 通路
11 害虫防除材
12 被覆材
13 連結部
14,15 上縁部
16 張出部
17 地面
18 基礎
19 基礎壁
32,42 突状部
G 設置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の底部と、前記底部に立設された壁部と、隣り合う前記壁部の上側同士を接続し隣り合う前記壁部の下側を離間させる接続部と、前記底部と前記壁部とで形成された窪み部に収容された殺虫性薬剤と、を備えていることを特徴とする害虫防除具。
【請求項2】
複数の底部と、前記底部に立設された壁部と、隣り合う前記壁部の上側同士を接続し隣り合う前記壁部の下側を離間させる接続部と、前記壁部に含浸又は塗布された殺虫性薬剤と、を備えていることを特徴とする害虫防除具。
【請求項3】
複数の突状部と、隣り合う前記突状部の上側同士を接続し隣り合う前記突状部の下側を離間させる接続部と、前記突状部に含浸又は塗布された殺虫性薬剤と、を備えていることを特徴とする害虫防除具。
【請求項4】
請求項1乃至3の内いずれか1に記載の害虫防除具と、隣り合う前記害虫防除具同士を屈曲可能に連結した連結部と、を備えていることを特徴とする害虫防除材。
【請求項5】
請求項1乃至3の内いずれか1に記載の害虫防除具と、前記害虫防除具の上縁部より外側に張り出すように前記害虫防除具の上面に固設された張出部と、を備えていることを特徴とする害虫防除材。
【請求項6】
請求項1乃至3の内いずれか1に記載の害虫防除具、又は、請求項4若しくは5に記載の害虫防除材の底部若しくは突状部を設置面に接触させた状態で静置することを特徴とする害虫防除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−178116(P2009−178116A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21567(P2008−21567)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(501162513)株式会社サンエイム (4)
【出願人】(591089431)株式会社サニックス (29)
【Fターム(参考)】