説明

害虫防除方法

【課題】通常は加熱条件下で薬剤の有効成分を揮散、拡散させて害虫防除に使用してきた薬剤を用いながら、非加熱条件下でそれら薬剤を空間にリリースさせ、害虫を防除する。
【解決手段】薬剤の害虫防除成分が、常温で難揮散性の化合物であり、該成分から選ばれた1種以上を含む薬剤を担体に保持し、該薬剤を担体に保持した薬剤保持材を設置して送風手段により気体の流れに接触させることにより、非加熱下で該保持材から前記成分を気体中にリリースさせて害虫を防除することを特徴とする害虫防除方法。そのための害虫防除用装置、害虫防除剤、及び薬剤保持体を構成する担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除方法に関するもので、さらに詳しくは常温で難揮散性の害虫防除成分を含む薬剤を担体に保持してなる薬剤保持材を非加熱条件下、送風手段による気体の流れを利用して薬剤保持材から害虫防除成分をリリースさせることにより、特に飛翔性の害虫を防除する方法、そのための装置および薬剤保持材を構成する担体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在までに数多くの害虫防除薬剤が知られているが、実際の使用に際してはそれらの中から防除対象となる害虫にあった薬剤が選択されている。蚊など飛翔性の害虫には特に揮散性の害虫防除成分を含む薬剤が使用されている。すなわち常温での蒸気圧が高い薬剤が使用されるが、このような薬剤を使用する場合には、貯蔵中など使用しない間に薬剤が揮散して効果が消失しやすいので、問題がある。そこで、貯蔵中に薬剤が揮散して消失せず、また使用時に薬剤を必要量揮散させるために、従来、加熱条件下で薬剤を蒸散して害虫を防除する方法が多く使用されている。このような加熱条件下で使用される薬剤は、通常その中に含まれる害虫防除成分の30℃における蒸気圧は1×10-3mmHg以下のものが多い。
【0003】
そして、加熱条件下で薬剤を蒸散して害虫を防除する方法としては、例えば蚊取線香の場合、徐燃性の基材と薬剤を練合して線香に成型し、成型した線香に着火し、その燃焼により加熱して薬剤を蒸散する。これに用いる害虫防除成分の例としてはピレトリン、アレスリン、エンペントリンなどが挙げられる。また、マット式や液体式電気蚊取りの場合は、害虫防除成分を含む薬剤を適当な基材に含浸または浸透させ、薬剤を含んだ基材の一部をヒーターなどで加熱して薬剤を蒸散する。これに用いる害虫防除成分の例としてはアレスリン、フラメトリン、プラレトリンなどが挙げられる。またこれらの他、くん煙剤や加熱蒸散剤のように、燃焼や化学反応熱のような熱源により短時間に薬剤を加熱して蒸散する方法で用いられている害虫防除成分としてはメトキサジアゾン、ペルメトリン、ジクロクボスなどが知られている(日本殺虫剤工業会:家庭用殺虫剤概論(1991))。
【0004】
一方、従来より強制的に薬剤を揮散させる手段として、送風により薬剤を揮散させる方法が知られている。その例として、装置内にナフタリンなどの昇華性防虫剤を収納し、装置の吸入孔から外気を吸入し、装置内で防虫剤の揮発成分を揮散させ、防虫剤の揮発成分を含んだ空気を排気孔から排出する防虫装置(実開昭55−954号)などが知られている。また、常温揮散性薬剤を保持した拡散用材を例えばファンの形として駆動手段により駆動させ、該揮散性薬剤を拡散させて殺虫する方法が知られている。この方法は送風下、かつ非加熱条件下で薬剤を揮散させる方法の一つである。しかし、この方法で揮散させる場合でも、適用する薬剤は、比較的揮散性の高いものについて有効であるとされていた。
前記送風により薬剤を揮散させる方法で用いられている例の中においても、30℃における蒸気圧が1×10-3mmHgから1×10-6mmHgである害虫防除薬剤を使用する場合には送風する気体は熱風を使用する事が記載されている。
【0005】
従来、30℃における蒸気圧が1×10-3mmHgから1×10-6mmHgである害虫防除成分を非加熱下で空間に拡散させ害虫を防除する方法としては、エアゾールによる噴射などの方法しか知られていない。
また、従来では飛翔性の害虫を駆除する方法は、簡便であり周囲の温度の上昇や火傷などの危険がないので、DDVPのように蒸気圧が非常に高く(1×10-2mmHg at30℃)殺虫活性が高い殺虫薬剤を用いて、樹脂蒸散剤として実用化されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、DDVPは有機りん系の殺虫薬剤であることから安全性に難点があり、他の薬剤による蒸散製剤が模索されている。これ以外の殺虫薬剤、例えばエンペントリンで蒸散製剤を作った場合は、狭い閉鎖系においてのみ有効で、実際の使用においては浄化槽など人の出入りがないところや、タンス、引出しなどの、長い間閉鎖されているような場所でしか用いられていない。
上記のごとく、害虫、特に飛翔性の害虫に対して使用される殺虫薬剤の多くは、通常は加熱条件下でその有効成分を揮散、拡散するものである。この際に多くのエネルギーを必要とする他、器具やその周囲の温度の上昇や火傷などの危険を含んでいる。
【0007】
一方、加熱手段を用いないで常温で揮散させる場合は、充分な量の有効成分をその空間内に供給するためには、殺虫薬剤中の有効成分として常温で蒸気圧の高いものを用いる必要がある。しかし、常温で蒸気圧の高いDDVPなどは安全性に問題がある。そこで、安全であって常温ではあまり揮散せず、つまり使用しない条件下で消失せず、それでいて使用時に非加熱条件下で充分な量の薬剤をその空間内に供給できる有効な手段はなかった。
そこで、これらの問題点を解消した非加熱条件下で安全性の高い有効成分を揮散、拡散させることにより害虫を防除する手段の開発が強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来技術の欠点を解消し、通常は加熱条件下で薬剤の有効成分を揮散、拡散させて害虫防除に使用してきた薬剤を用いながら、非加熱条件下でそれら薬剤を空間にリリースさせ、害虫を防除する事について鋭意検討した結果、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、次のことからなる。
(1)薬剤の害虫防除成分が、常温で難揮散性の化合物であり、該成分から選ばれた1種以上を含む薬剤を担体に保持し、該薬剤を担体に保持した薬剤保持材を設置して送風手段により気体の流れに接触させることにより、非加熱下で該保持材から前記成分を気体中にリリースさせて害虫を防除することを特徴とする害虫防除方法。
(2)常温で難揮散性の化合物である1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル d1−シス/トランス−3−(2,2−ジメチルビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート、d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート、(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート、d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート、5−プロパギル−2−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート、(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペルニル)−2−シクロペンテニル (+)−シス/トランス−クリサンテマート、d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d1−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート及び/又はこれらの異性体及び/又は類縁体から選ばれた1種以上の害虫防除成分を含む薬剤を担体に保持し、該薬剤を担体に保持した薬剤保持材を設置して送風手段により気体の流れに接触させることにより、非加熱下で該保持材から前記害虫防除成分を気体中にリリースさせて害虫を防除することを特徴とする害虫防除方法。
(3)装置本体に通気口につながる通気手段を有し、通気手段内の少なくとも1箇所以上に薬剤を担体に保持した薬剤保持材を設置し、該保持材に保持された薬剤は、常温で難揮散性の化合物である化合物から選ばれた1種以上の害虫防除成分を含み、前記通気手段に設置した保持材を前記通気口で生起させた気体の流れに非加熱下で接触させることを特徴とする害虫防除用装置。
(4)装置本体に通気口につながる通気手段を有し、該通気手段内の少なくとも1箇所以上に薬剤を保持した薬剤保持材を設置し、該保持材に保持された薬剤は、常温で難揮散性の化合物である1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル d1−シス/トランス−3−(2,2−ジメチルビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート、d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート、(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート、d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル−d−トランス−クリサンテマート、5−プロパギル−2−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート、(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペルニル)−2−シクロペンテニル (+)−シス/トランス−クリサンテマート、d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d1−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート及び/又はこれらの異性体及び/又は類7体から選ばれた1種以上の害虫防除成分を含み、前記通気手段内の前記保持材を前記通気口で生起させた気体の流れに非加熱下で接触させることを特徴とする害虫防除用装置。
(5)前記常温で難揮散性の化合物である1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル d1−シス/トランス−3−(2,2−ジメチルビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート、d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート、(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート、d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル−d−トランス−クリサンテマート、5−プロパギル−2−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート、(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペルニル)−2−シクロペンテニル (+)−シス/トランス−クリサンテマート、d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d1−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート及び/又はこれらの異性体及び/又は類縁体から選ばれた1種以上の害虫防除成分を含む前記(1)〜(2)の害虫防除方法又は前記(3)〜(4)の害虫防除用装置に用いる害虫防除剤。
(6)常温で難揮散性である化合物、及び/又はこれらの異性体及び/又は類縁体から選ばれた1種以上の害虫防除成分を含む薬剤を担体に保持してなる薬剤保持材を前記(3)に記載の害虫防除用装置の前記通気手段内に設置した時、該保持材が前記通気手段内の気体の流れを遮断することがないことを特徴とする薬剤保持材を構成する担体。
(7)常温で難揮散性の化合物である1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル d1−シス/トランス−3−(2,2−ジメチルビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート、d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート、(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート、d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート、5−プロパギル−2−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート、(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペルニル)−2−シクロペンテニル (+)−シス/トランス−クリサンテマート、d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d1−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート及び/又はこれらの異性体及び/又は類縁体から選ばれた害虫防除成分の1種以上を含む薬剤を担体に保持してなる薬剤保持材を前記(3)に記載の害虫防除用装置の前記通気口付近に設置した時、該保持材が前記通気口に達する気体の流れを遮断することがないことを特徴とする薬剤保持材を構成する担体。
【0010】
前記した通り、従来より送風により薬剤からそれに含まれている害虫防除成分を揮散させて飛翔性の昆虫を駆除する方法は知られていたが、この方法を使用できるのはDDVPのように蒸気圧が非常に高いもの、もしくは狭い閉鎖空間内での使用に限られていた。常温で難揮散性である害虫防除成分の蒸気圧が30℃において1×10-3mmHg以下である薬剤では、非加熱状態で送風のみによって薬剤からその害虫防除成分を害虫駆除に十分な濃度でリリースさせることは不可能であると信じられてきた。このため、常温で難揮散性である害虫防除成分を含む薬剤を用いて居室などの広い空間で殺虫効果が得られることなどはとても考えが及ばなかった。
その理由の一つは、多数の害虫防除成分について、各温度における蒸気圧の正しい値はもとより、それらの相互の比較が正確に評価されているとはいえなかったためであると思われる。
【0011】
本発明者らは、以下に詳述するcox線図を用い、多数の害虫防除成分となる化合物について30℃における蒸気圧を評価し、これら蒸気圧を尺度とし、かつこれら害虫防除成分を含む薬剤を適当な担体に保持せしめて薬剤保持材を作成し、該保持材を設置した状態において、送風により薬剤から害虫防除成分をリリースさせて害虫を防除することについて鋭意研究した結果、常温で難揮散性の害虫防除成分について、該成分を適当な担体に保持せしめて薬剤保持材とし、該保持材を設置した状態において非加熱状態で気体を保持材に当てることにより、意外にも担体から難揮散性の害虫防除成分がリリースし、リリースした該害虫防除成分により飛翔性の昆虫等を駆除することができるという本発明の方法を見いだした。
【0012】
ここで、害虫防除成分(刺す虫に対し刺咬行動を抑制する成分なども含む)を含む薬剤を担体に保持する仕方としては、後に詳細に記載するように紙類、多孔性樹脂類、セラミック等の担体に保持して、該保持体をケースに納めて設置した状態において気体に当てる場合のみならず、前記薬剤を液状としてボトル内に入れ、前記紙類や多孔性樹脂類のような担体(例えばシート)をボトルの開口部から外部に引き出して、薬液を吸上げさせてボトル外の担体部分を非加熱状態で気体に当てる場合をも含むものである。
【0013】
常温揮散性の害虫防除成分を非加熱で揮散させ、揮散した害虫防除成分を排気孔から排出させる方法では揮散薬剤の濃度調整が難いという欠点があり、また、揮散性薬剤を保持したファン形状の拡散用材を駆動手段により駆動させ、該揮散性薬剤を拡散させて殺虫する方法では駆動手段に負担がかかり損傷する等の欠点がある。また、この揮散性薬剤を保持した拡散用材を駆動手段により駆動させる方法は常温揮散性のもの、もしくは温風送風条件下での使用に有効であるとされている技術である。
【0014】
本発明の常温で難揮散性である害虫防除成分を含む薬剤を担体に保持し、該薬剤を担体に保持した保持材を固定状態において送風手段により気体の流れに接触させ、害虫防除成分をリリースし、リリースした該薬剤により飛翔性の昆虫を駆除する方法は、揮散薬剤の濃度調整が容易で、非加熱であり危険性がなく、装置としても簡単であるという特徴があり、優れた害虫防除成分のリリース手段である。
ここで、害虫防除成分を含む薬剤を担体に保持した薬剤保持材に気体を送風する手段としては、電池で駆動させることができる簡単なファンのようなものでも良いが、送風を開始した直後から、30日後といった長期間にわたり、安定して一定濃度の薬剤をリリースさせるに適する送風方法などを挙げることができる。
送風方法については後に詳しく述べる。
【0015】
本発明において、害虫防除とは、害虫駆除、害虫忌避、吸血害虫における吸血阻害、刺咬行動抑制等を総称するものである。ここで強試すべきは、本発明において使用する害虫防除成分は、(1)それらの温度−蒸気圧関係をcox線図を用いて整理すると、各化合物の温度−蒸気圧関係は互いに平行な直線で表されることが判明したことであり、(2)この研究成果に基づいて従来20℃から50℃の間で1点のみしか蒸気圧が知られていない害虫防除成分をも含めて、「非加熱状態で送風のみにより害虫防除成分をリリースさせる方法」による害虫防除成分の害虫駆除効果を「同じ30℃という温度に換算した蒸気圧」を尺度として評価することが可能となった結果、新しい知見が得られ、その知見に基づいて新しい技術が得られたことである。
【0016】
本研究により得られた各種害虫防除剤のcox線図の1例を図11に示した。
図11において、a:DDVP、b:ニトラピリン、c:エンペントリン、d:デメトン−D、e:テラレスリン(M108)、f:フラメトリン、g:アルドリン、h:プラレトリン、i:アレスリン、j:フォスファミドン、k:メトプレン、1:フルクロラリン、m:レスメトリン、n:テトラメスリン、o:フェノスリン、p:シフェノトリン、q:ペルメトリン、r:エスフェンバレレート、s:フタルスリン、t:フルシスリネートである。
図12に示す蒸気圧測定装置(蒸気圧測定装置は化学工業実験法第4版〔昭61年 培風館〕に記載されている。測定装置説明の詳細は省略する。)を用いて得られた、ピレスロイド化合物の20℃から40℃の5℃おきの蒸気圧の値を、第1表に示す。ここで、下線(点線)のあるデータは文献値である。
【0017】
【表1】

【0018】
ここで、蒸気圧の文献値は下記参考文献より得た。
(i) 農薬の製剤技術と基礎(日本植物防疫協会)昭和63年発行
(ii) 農薬データブック(ソフトサイエンス社)1989年版
(iii) 安全データ(テラレスリン)
(iv) 製品データ(フラメトリン、テトラメスリン、レスメトリン)
【0019】
本発明において用いることができる害虫防除成分は、常温で難揮散性の化合物であればよく、好ましくは30℃における蒸気圧が1×10-7mmHgより高く、沸点が低くとも120℃/1mmHgであるものである。しかし、ここでいう蒸気圧範囲は下記cox線図で表される温度−蒸気圧線図上の30℃における蒸気圧範囲である。
従来、害虫防除成分の蒸気圧の測定は任意の温度範囲でばらばらに行われており条件が定まっていない。通常は10℃から50℃の温度範囲で測定されてきた。従って、複数の害虫防除剤の蒸気圧を相互に比較することは困難であった。
しかし本発明者らの研究の結果、最低1つの実測値があれば、cox線図を用いることで目的とする温度での蒸気圧を推測もしくは知ることができ、前記の課題は解決できる。
【0020】
以下にcox線図について詳述する。
多数の化学物質について温度tとその温度における蒸気圧Pを測定して、それらの値を用いてlogPとt/(t+C)を求め、logPを縦軸にt/(t+C)を横軸にとりグラフにプロットすると高い精度の直線性を示すことが工学的に知られている。ここでPは蒸気圧(mmHg)、tは温度(℃)、Cは定数(通常は230)である。
すなわち、多数の化学物質について温度tとその温度における蒸気圧Pとの間には次の一般式、
一般式 logP=D+Et/(t+C)
で示される関係があり、従ってlogPを縦軸にt/(t+C)を横軸にとりグラフにプロットすると直線を与える。
縦軸logP、横軸t/(t+C)のグラフにプロットして得られた直線ないし直線群がcox線図である。
【0021】
従来20℃から40℃の間で蒸気圧の測定がなされている害虫防除成分から、前記cox線図を用いて、30℃における蒸気圧が1×10-7mmHgより高く、常温で難揮散性で、沸点が低くとも120℃/1mmHgのもので、かつ安全性の観点からピレスロイド系の化合物を用いることがより好ましく、代表的なものを例示すると以下の通りである。
・d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d1−シス/トランス−クリサンテマート(一般名アレスリン:商品名ピナミン:住友化学工業株式会社製)
・d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−シス/トランス−クリサンテマート(商品名ピナミンフォルテ:住友化学工業株式会社製、以下「ピナミンフォルテ」という)
・d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート(商品名バイオアレスリン:ユクラフ社製)
・d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート(商品名エキスリン:住友化学工業株式会社製、商品名エスバイオール:ユクラフ社製、以下「エスバイオール」という)
・(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名レスメトリン、商品名クリスロンフォルテ:住友化学工業株式会社製、以下「レスメトリン」という)
【0022】
・5−プロパギル−2−フリルメチル− d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フラメトリン、商品名ピナミンDフォルテ:住友化学工業株式会社製、以下「フラメトリン」という)
・(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)−2−シクロペンテニル(+)−シス/トランス−クリサンテマート(一般名プラレトリン、商品名エトック:住友化学工業株式会社製、以下「プラレトリン」という)
・d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル−d1−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボシキラート(一般名テラレスリン:住友化学工業株式会社製、以下「テラレスリン」という)
・(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2−イソインドリル)メチル−d1−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フタルスリン、商品名ネオピナミン:住友化学工業株式会社製)
・(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2−イソインドリル)メチル−d−シス/トランス−クリサンテマート(商品名ネオピナミンフォルテ:住友化学工業株式会社製)
【0023】
・3−フェノキシベンジル−d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フェノトリン、商品名スミスリン:住友化学工業株式会社製)
・3−フェノキシベンジル−d1−シス/トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボオキシラート(一般名ペルメトリン、商品名エクスミン:住友化学工業株式会社製)
・(±)α−シアノ−3−フェノキシベンジル(+)−シス/トランス−クリサンテマート(一般名シフェノトリン、商品名ゴキラート:住友化学工業株式会社製)
・1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル d1−シス/トランス−3−(2,2−ジメチルビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート(一般名エンペントリン、商品名ベーパースリン:住友化学工業株式会社製、以下「エンペントリン」という)
・d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート(一般名ベンフルトリン)
【0024】
また、前記の害虫防除成分としては、上記したものの類縁体として上記した化合物に構造上似ている化合物を用いることができ、例えばエンペントリンの場合3位の2個の置換基はメチル基であるが、その置換基として他のアルキル基、不飽和アルキル基又はハロゲン原子である化合物を用いることもできる。
本発明においては、これらから選ばれた1種以上の害虫防除成分を担体に保持して薬剤保持材として用いることができる。
これらのうち、エンペントリン、プラメトリン、レスメトリン、エスバイオール、フラメトリンおよびテラレスリンが特に好ましい。さらに、前記条件の有機リン系、カーバメイト系、昆虫成長抑制剤(IGR,JHなと)害虫防除成分を単独又は組み合わせて用いることに何ら制限はされない。また、これらの類縁体も用いられる。
【0025】
本発明の薬剤保持材を構成する担体としては、送風手段による気体の流れを遮断、外方に拡散することがないように通気性が良いものが望ましい。そして薬剤(害虫防除成分など)を十分に保持することができるものが望ましい。通気性が良く薬剤を十分に保持することができるものであれば特に限定されない。
担体は、簡単な構造で通気性が大きいという点で、ハニカム状、すのこ状、格子状、網状等の構造のものが好ましい。
この担体は、その通気性が、通気量で通常0.1リットル/sec以上のものであればよく、好ましくは0.1リットル/sec以上のものである。
【0026】
材質としては無機質および有機質の成型材料が挙げられ、それらから成型されたものとしては、例えば紙類(濾紙、パルプ、厚紙など)、樹脂類(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、高吸油性ポリマーなど)、セラミック、ガラス繊維、炭素繊維、化学繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリエチレン製、ポリプロピレン製など)、天然繊維(木綿、絹、羊毛、麻など)、ガラス繊維、炭素繊維、化学繊維、天然繊維などからの不織布、多孔性ガラス材料、金網などが挙げられる。
【0027】
これら担体に本発明の害虫防除成分を含む薬剤を保持し、これらの一種又は二種以上を組み合わせて任意の形状にして使用できる。
さらに吸着用担体(薬剤を担体に保持させるための補助材)を使用する場合、吸着用担体としては、ゲル化物質(寒天、カラギーナン、澱粉、ゼラチン、アルギン酸など)や可塑化高分子物質などが挙げられる。高分子物質を可塑化する場合には、例えばジオクチルフタレートなどが使用される。
【0028】
なお、蒸散促進用助剤としてアダマンタン、シクロドデカン、シクロデカン、ノルボルナン、トリメチルノルボンナン、ナフタリン、樟脳などの昇華性物質を添加することにより、さらに蒸散効果を高めることもできる。 また、α−〔2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ〕−4,5メチレンジオキシ−2−プロピルトルエン(ピペロニルブトキシド)、N−(2−エチルヘキシル)ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(MGK−264)、オクタクロロジイソプロピルエーテル(S−421)、サイネピリン500などその他のピレスロイド系化合物に対して有効成分の既知の共力剤と混合して使用することができる。
【0029】
なお、光、熱、酸化などに対する安定性を高めるために酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加して使用することにより、効力を安定させることができる。酸化防止剤としては、例えば2’−メチレンビス(6−tert-ブチル−4−エチルフェノール) 2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2,6−ジ−tert-ブチルフェノール 2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、ジブチルヒドロキシノン(DBH)が挙げられ、紫外線吸収剤としては、例えばBHTのようなフェノール誘導体、ビスフェノール誘導体またはフェニル−α−ナフチルアミン、フェネチジンとアセトンとの縮合物などのアリールアミン類、ベンゾフェノン系化合物が挙げられる。
【0030】
薬剤を前記保持材に吸収・保持させ、空気等の気体を送って揮散させる場合には、薬剤保持材に残存する薬剤を知るためインジケーターを直接若しくは間接的に用いることができる。インジケーター機能を持たせるため、例えば、担体の色を変化させるにはアリルアミノアントラキノン、1,4−ジイソプロピルアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、1,4−ジブチルアミノアントラキノン、1−アミノ−4−アニリノアントラキノンなどの色素を使用することができる。また、薬剤の残量をインジケートする機能を持たせるため、ラクトン環を有する電子供与性呈色性有機化合物やフェノール系の水酸基を有する顕色剤および必要なら減感剤を用い薬剤の揮散(それと共に揮散する減感剤)に伴う担体の色を変化により薬剤の残量を示す組成物を使用することができる。またさらに蒸散組成物用の香料などを添加したり混合してもよい。
【0031】
また、前記したように薬剤を液体として液体用ボトルに収納し、保持材に吸収させつつボトル外に供給し、ボトル外の保持材部分に送気して揮散させるような態様の場合には、ボトル内の液量の変化が確認できるようにすればよく、インジケーターを使用する必要はない。
担体に本発明の薬剤(害虫防除成分など)を保持させる方法としては、該担体に薬剤を滴下塗布、含浸塗布、スプレー塗布などの液状塗布方法、液状印刷、はけ塗り等の方法、あるいは担体へ貼り付けする方法等の方法が利用でき、さらに使用する組成物が液状のものでない場合、あるいは溶剤を使用しない場合などでは、混練込み、塗布、印刷などにより適用することができる。また、薬剤を担体に上記のように適用する場合、担体の全面に適用する場合の他、点状、片面あるいは模様状等部分的に適用することができる。
また、薬剤を液体用ボトルに収納し、多孔性の薬剤保持材を経て揮散部に供給するような態様の場合もある。
【0032】
担体に本発明の薬剤を適用する際に、担体に薬剤の含浸を容易にするためなどの理由で液状薬剤を低粘度化する添加剤として、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシルなどの脂肪酸エステルやイソプロピルアルコール、ポリエチレングリコール、脱臭ケロシンなどの有機溶剤を必要により使用することができる。
担体に上記の害虫防除成分及び/又は各種薬剤を保持させる量は特に制限を受けないが、例えば前記薬剤(害虫防除成分など)を吸油性材料(例えば紙)に含有させる場合には吸油性材料中に薬剤を50mg/gから1000mg/gの範囲、好ましくは100mg/gから700mg/gの範囲である。この量は、少なくとも0.1mg/hrの揮散量となるのを目安に飽和含浸量まで保持させることができる。
【0033】
本発明の装置は、図2に符号13で示す通気路及び通気口(図2では符号12で示す吸気口及び符号14で示す排気口である。)を有している。装置の通気路13に本発明の薬剤保持材を設置する場合、その通気路の少なくとも1ヶ所以上に固定される(図1では符号5で、図2では符号30で示す。)。該通気路13に薬剤保持材(5や30)を固定する方法は特に限定されないが、例えば保持材固定用の溝、ガイド、安定具もしくは保持部を通気路内に設ければよい。
ここで通気手段、具体的には通気路とは、通気口にて発生する気体の流れが移動する通路、空間域である。しかし、あえて設ける必要はない。また、通気口とは、装置内に外部より気体を取り入れる吸気口と装置内に吸引された気体を装置外部に排出する排気口とからなる。
【0034】
ここでの気体の流れを図1及び図2で説明すると、例えば、装置内にモーターやぜんまい等の駆動手段とプロペラ(図1の6、図2の20で示される。)などの一般にファンとして認識されている形状、形態及び機能を有する通常送風器具と称されるものを設置し、該ファンを該駆動手段によって駆動させることで装置内に外部より吸気口を通じて気体を吸引する。そして吸引された気体はさらに通気路を経て排気口へと移動する。この時に、ファンが回転すると、回転に伴う渦流が発生する。これによって、吸気口から吸入される空気の流速はファンの中心部付近ほど遅く、外縁部に近づくに従って速くなるという特性がある。したがって、担体(薬剤の保持材)に当たる空気量は、担体の中心部付近では少なく、外縁部に近づくに従って多くなるため、揮散性薬剤の拡散量は、担体の各部において不均一となるという問題がある。このような問題に対し空気流路に整流板(例えば図4に符号40で示したようなもの)を設けることが望ましい。整流板は薬剤保持剤に流れる空気が均一に当たるために設けられるが、ファンの回転のための動力が最小ですむように、圧損がなるべく少ないような形状のものを選択して使用される。
【0035】
薬剤保持材に当たった気体は外部へと排出されるが、薬剤保持材に気体が当たることによって通気路に設置された薬剤を保持した薬剤保持材から薬剤の有効成分が気体の流れの中に入り、排気口より装置外部へと拡散、放出される。
【0036】
実際の使用についてみてみると、通常の家屋の居室程度の空間に対しては小型の送風機を使用すれば十分に足りるものである。具体的には、ファンの回転数としては500から10000rpm程度であればよく、モーターやぜんまい等の駆動手段を用いることができる。モーター、ぜんまいによらないピエゾファンを用いて送風するようにしてもよい。上記の居室程度の空間に対しては、太陽電池、二次電池、乾電池などで動く小型のモーターにより駆動する程度のファンを使用しても効果は十分に奏するものである。また、長時間にわたり使用するには乾電池では難しい場合などは、充電式としたり、電源プラグを設けたコードにより継続的に電源より駆動エネルギーを得ることもできる。
【0037】
ファンは遠心式ファンが一般的であるが、そのファンの形状だけによって決まるものでなく、ファンの後面に設ける中仕切板の形状によっても変る。
ファンの形状としては、スクリュー状、あるいはプロペラ状に限らず、水車型、ロータリーファン型などがある。大きな送風作用を行なわせる場合にはスクリュー状あるいはプロペラ状などが良く、送風により揮散量を大きくできる利点がある。また、ファンに接触する空気量を増大させるために、ファンを形成する各ブレードに開口部を設けることができる。例えば、ブレードに多数の開口部を設けることにより薬剤を効率的に蒸散することができる。その開口部の形状としては、網目状の外に、格子状、ハニカム状等、種々の形を取ることができ、その開口部はなるべく均一に設けることが好ましい。ファンを構成するブレードの形状は、前記したファンの形状によって決まるが、単なる板状でなく、中空状のものでもよい。
【0038】
各種形態のファンの中で、図5に示したシロッコファン42と呼ばれるものを使用することが好ましい。該ファン42は電池からアダプターまで様々の電源により、種々の電圧により送風が調節できる。該ファンにおいて電池からアダプターまで様々な電源、電圧により送風が調節できる。また、該ファンの形状を換えることで、例えば直径を大きくしたり、厚みを増やすことで風量を増やすことができ、反対に直径を小さくしたり、薄くすることで風量を減らすこともできる。
本発明の装置においては、吸気口の位置はなるべく羽根車の前面に近いところがよいが、薬剤を担体に保持した薬剤保持体を設置する場所との関係により少しずれていてもよい。
【0039】
また、排気口は前記ファンの周囲方向に設けることが効率的に薬剤を外部に揮散させるには適している。その位置については少なくとも1方向以上の排気口があればよく、より十分な揮散を必要とする時には、2から4方向を設けることができる。これにより室内等にすみやかに拡散させることができる。排気口の近くに揮散性薬剤を保持させた担体を置く従来の型式では、装置の全周に排気口を設けるようにする場合には、前記の担体を装置の全周に設ける必要があるが、この発明ではそのようにしなくても装置の全周への揮散を行うことができる。また、必要により、装置内で全周に薬剤揮散成分が回らないように、例えば一方向にだけ排出されるようにガイドを設けコントロールすることもできる。
【0040】
シロッコファンのようなファンを使用した場合は、図1及び図2に示した場合と異なり薬剤を担体に保持した薬剤保持体は、前記ファンの前面に設けられることから、吸引された空気が該薬剤保持体によりその流れを遮断され、あるいは阻害され、外方に分散拡散されないように通気性を有するものがよい。
前記薬剤保持体の設置位置はファンの吸気側でも、また排気側のいずれでも違いがないように考えられるが、ファンの吸気側に設置するときには、薬剤保持体にかかる空気流れの速度がその箇所によらず比較的均一であるのに対し、排気側ではファンの形状により薬剤保持体の各箇所における空気の流れの速度に大きな差異があるため、前記したように空気流路に整流板を設ける等して空気の流れを均一にすることが望ましい。
【0041】
通常は、薬剤保持体の箇所により薬剤の揮散に大きな差が出るため、吸気側とすることが好ましい。ただし薬剤保持体の設置はファンのすぐ前面でなくて少しずれていてもよいが、吸気口よりファンへ吸引される空気流の中に薬剤保持体があるような位置とする。
さらに詳しくいえば、送風手段であるファンと薬剤保持体である担体との間隔はあまり近接していないほうが良く、約5mm程度以上の間隔を設けることが好ましい。両者の間隔が近接していると担体の全面に均一に風を当てることが難しく、中央部に比べ外方部での揮散が不十分となり、揮散むらが起こる原因となる。例えば、紙製のハニカム状の担体(70×70×15mm)をシロッコファン(直径5cm、厚さ2cm)を用いて送風した場合、該ファンを駆動させるための電源電圧を2.0vから4.0vまでの範囲で変化させた時は、担体とファンとの間隔は5mmから15mmが好ましい。しかし、これらの範囲は限定されるものではなく、担体ファンの形状、電源電圧、装置の形状及び大きさそしてこれらの関係や組合せ等により適宜選択することができる。
【0042】
本発明で用いるファン式害虫防除用装置による有効性を試験するために、図6にみるように、その装置を空間が36m3 の容積をもつ室内床面中央に置き、リリースを開始する。リリース開始後、25リットルの一定量を20分間ずつ空気を吸引し、シリカゲルトラップで有効成分を捕集し、定量分析を行った。
捕集位置は室内の側壁から100cmで、高さを150cmとした。1m3 当たりの有効成分気中濃度は各経過時間の有効成分の捕集量から次の計算式より算出した。
【0043】
[式1]

【0044】
R:有効成分の定量値(μg)
この試験では、有効成分としてエンペントリンを使用した。
また、このファン式害虫防除用装置を用いてエンペントリンをリリースさせた場合を液体式電気蚊とり器を用いた場合と比較した。
【0045】
空間容積24m3 の室内に、66×66×15mmのハニカム状の保持材にエンペントリン4.3g、イルガソックス1010を0.2g含浸させたものを取り付けたファン型害虫防除用装置を設け、3Vの定電圧運転で、1220〜1250rpm、25℃の条件で揮散を行った。捕集は、前記と同じ25l/分で20分間、シリカゲルトラップを用いて吸引捕集し、その捕集量は500lとした。有効成分の気中濃度は、床面より150cm及び75cmの位置で捕集した場合の測定値の平均値とした。なお、液体式電気蚊とり器を用いて揮散させた場合を比較対象とした。揮散開始から12時間までの揮散状況を図7のグラフに示す。図7において、グラフ中の曲線における○印は、エンペントリンの揮散量(3V定電圧運転時)を示し、●印は、プラレトリンの揮散量(液体式電気蚊とり器)を示す。
【0046】
また、同じ実験系において、ファン式害虫防除用装置を長時間運転(12時間断続運転、30日間)した場合のエンペントリンのリリースを測定した。その時の開始から360時間までの状況を図8のグラフに示した。比較データとしては、図6に示した気中濃度測定装置により、ファン式害虫防除用装置の位置に液体式電気蚊とり器を置き加熱揮散させたものの状況を示した。図8において、グラフ中の曲線における○印は、エンペントリンの揮散量(3V定電圧運転時)を示し、△印は、プラレトリンの揮散量(液体式電気蚊とり器)を示す。
両図より、害虫防除装置は液体式電気蚊とり器より多い量の薬剤有効成分をリリースしており、かつ初期30分間以内に平衡揮散濃度に達し、均一で安定したリリースを360時間まで続けることがわかる。
【0047】
また、ファン式害虫防除用装置において、気体の送風を断続することができるならば、送風制御によって薬剤のリリース量が制御でき、より均一で安定な揮散はもとより、事情によっては昼夜により揮散量の増減等の制御が可能となる。図9に示すような電源からの通電量を制御する回路を用いてファン式害虫防除用装置の送風の運転制御を行った。前記エンペントリンを試料として12時間の短期間の揮散状況について、連続送風した場合と、2時間送風10分間送風停止の制御を行った場合の比較を図10に示す。その結果より、送風期間を制御した場合でも有効成分の気中濃度を一定にできることがわかる。
【0048】
図9の制御回路について説明すると以下の通りである。すなわち、
回路は、商用電源から直流電圧に変換して所定の直流電圧を供給する直流電源部101、商用電源周波数を識別する周波数識別部103、周波数識別部103の識別結果に基づいて商用電源周波数を1/5若しくは1/6に分周して10Hzの基準パルスを得る分周部105、分周部105の出力に基づいて所定時間パルスを送出するパルス生成部107、動作状態を外部表示するための発光ダイオード(LED)109を点灯点滅させるための輝度変調部111、駆動モーター113に電力を供給するサイリスタ115、サイリスタ115をゼロ電圧制御するためのゼロクロス制御部117、外部操作に基づいて輝度変調部111に対して点滅状態若しくは点灯状態を指示するとともに、ゼロクロス制御部117に対して予め設定されたシーケンスに基づいてトライアックを点弧すべくトリガ制御するためのモードコントローラ119とを有する。
【0049】
この回路を利用して、適当な送風制御モードをモードコントローラ119にいれて、ゼロクロス制御部117を経てトライアックをトリガ制御して送風機の運転を制御することができる。
使用者は、これらのシーケンスモードを用途に応じて選択すると、選択されたシーケンスモードに基づいて送風機の運転が制御され、薬液の蒸散も制御される。
さらに、使用者が任意にシーケンスモードを設定するためのプログラム設定機能が備えられている。
【0050】
本発明において、薬剤を保持した薬剤保持材の設置位置は通風手段内であれば送風手段の吸気側でも排気側でもいずれでも良いが、送風手段の吸気側に設置すると該保持材にかかる気体の流れが担体の通風路内の設置位置によらず比較的に均一であるので好ましい。この場合、吸気口よりファンへ吸引される空気流の中に該保持材があるような位置とする。
害虫を駆除しうる場所は何ら制限を受けないが、好ましくは一定の空間として区切られた場所が好ましい。例えば、家屋、ビニルハウス、浄化槽などがあり、そこに生息する害虫が対象となる。家屋内においてはハエ、カ、ゴキブリ、屋内塵性ダニ及びその他の侵入してくる不快害虫、タンス内においてはイガ、コイガ、カツオブシムシ等の衣類害虫、ビニルハウス内においてはそこで栽培されている作物に影響を与える害虫、畜鶏舎内においてはヌカカ、ハエ、カ及びダニ類、そして浄化槽内ではチョウバエ、カ等が例示される。
【発明の効果】
【0051】
既に前記した通り、従来室温(約15から35℃)においてほとんど揮散しない害虫防除成分は、約110から170℃に加熱するという方法でしか害虫を防除することは不可能であると信じられてきた。
本発明者らは、多数の害虫防除成分についてそれらの温度−蒸気圧関係を研究し、それらの温度−蒸気圧関係をcox線図を用いて整理すると、各害虫防除成分の示す温度−蒸気圧関係は互いに平行な直線で表されることを明らかにすることができた。その研究成果に基づいてcox線図上30℃における蒸気圧が1×10-3mmHgより低く(1×10-3〜1×10-7mmHg)、常温で難揮散性で、沸点が低くとも120℃/1mmHgである害虫防除剤を適当な担体に保持せしめ、薬剤保持した保持材を固定した状態において非加熱状態で気体を保持材に当てることにより、これら害虫防除成分により飛翔性の害虫をはじめゴキブリ等もを駆除し得ることを見いだした。
【0052】
また、本発明の害虫防除用装置を用いると、加熱を必要としないので、火災の危険性がまったくなく、広い空間に害虫防除成分を有効量においてリリースすることができ、かつその効果は長時間維持させることができるので、害虫を有効に防除することができる。
以下に実施例により本発明の効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
実施例1
図1に示すアクリル樹脂製シリンダー4からなる試験装置1の防虫網2、2の間にアカイエカ成虫(メス)を20頭入れ、試験装置1の底部に送風機3を設置し、送風機3の上部(シリンダー4の下部)に薬剤を含浸させた薬剤保持材5(ハニカム)を装着し、シリンダー4の下から送風し、気体を支持材5内を通す本発明の害虫防除用の装置1を用いて薬剤から害虫防除成分をリリースさせ、殺虫効果を調べた。
調査は30秒毎の経時的にアカイエカのノックダウンを数え、10分30秒まで観察した後、ノックダウンしたアカイエカを清潔なプラスチックカップ(容量約500ml)に移し、1%砂糖水を含浸させた脱脂綿を餌として入れ、蓋をして約25℃の恒温条件下に置き、24時間後の致死効果を観察した。その結果は下記第2表に示した。
【0055】
【表2】

【0056】
ここで用いたハニカム状の薬剤保持材は次のとおりに調製した。まず、80g/m2のサラシクラフト製の片ダンボール(穴の高さ約2mm)を積層したハニカム(含浸体)70×70×15mmに薬剤を約500mgを含むアセトン溶液3mlで均一に含浸させ、アセトンが揮散した後、害虫防除用の装置に設置した。
試験に用いた害虫防除成分は、テラレスリン、エンペントリン、プラレトリン、フラメトリン、エスバイオール、レスメトリンである。
試験に用いた害虫防除成分のcox線図上30℃における蒸気圧の値を第3表に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
〔試験の結果〕
第2表から明らかなように、試験に用いた害虫防除成分の蒸気圧はいずれも30℃において1×10-3mmHgから1×10-6mmHgと小さいにもかかわらず、保持材を無加熱下に気体の流れに当てる本発明の方法により100〜80(%)の致死活性を得、きわめて優れた害虫駆除効果を示すことが判明した。
【0059】
実施例2
空間域の容積が24m3 の図6に示す気中揮散濃度測定装置を用いてアカイエカに対する殺虫効力試験を行った。
該装置の指定位置に図2に示す構成のファン式害虫防除用装置をおいた。この装置は70×70×15mmのハニカムにエンペントリン4.5gを含浸させたものである。比較として市販の液体式電気蚊取り器(プラレトリン使用)を使用した。
供試虫として、アカイエカ雌成虫を各20〜25頭をケージに入れ、室の床面より150cmおよび75cmの位置に2ケージずつ設置した。各殺虫器を2時間使用した。試験開始より10分ごとに入室し、仰転数を計数した。試験終了後、供試虫をプラスチックカップに集め、24時間後の致死数を計数した。
【0060】
その試験結果を第4表に示す。
平均KT50値の比較では、ノックダウン効力は、
ファン式害虫防除用装置=液体式電気蚊取り器(プラレトリン)
24時間後の致死率の比較では、致死効果は、次のようである。
ファン式害虫防除用装置>液体式電気蚊取り器(プラレトリン)
【0061】
【表4】

【0062】
実施例3
24m3 の空間域で以下の条件において試験を行い、24時間後の各ゴキブリに対する仰転率及び致死率(%)を比較した。
本発明の害虫防除用装置を上記空間域の床面中央部に設置し、さらに同床面の対角の位置に各20頭のゴキブリを入れたカップを各2個ずつ置き、第5表の害虫防除成分をリリースし24時間連続的に暴露させた。ここで、ゴキブリとしては、チャバネゴキブリ(感受性)、クロゴキブリ(感受性)の2種を用いた。
70×70×15mmの大きさのハニカム(図3)には、害虫防除成分を各1.0g含浸させ、害虫防除用装置にセットした。
測定結果を第5表に示す。
【0063】
【表5】

【0064】
実施例4
(ハニカム含浸処方)
No.1
エンペントリン 4.0g
N−ベンゾイルパリン 0.05g
エタノール 0.50g
イルガノックス 1010(チバガイギー) 0.1g
テトラキス〔メチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフエニル)
プロピオネート〕
この組成液を66×66×15mmのハニカム状担体に含浸した。
No.2
エンペントリン 1.0g
2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−
t−ブチルフェノール) 0.15g
ピペロニルブトキサイド 1.5g
この組成液を50×50×15mmのハニカム状担体に含浸した。
No.3
ベンフルスリン 0.5g
ビスフェノールA 0.02g
パルミチン酸イソステアリル 0.05g
この組成液を35×35×10mmのハニカム状担体に含浸した。
No.4
ベンフルスリン 2.0g
N−ヘキサノイル−ε−アミノカプロン酸 0.03g
ミリスチン酸イソプロピル 0.15g
この組成液を70×35×15mmのハニカム状担体に含浸した。
No.5
アレスリン 1.5g
S−421 1.5g
2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン 0.2g
この組成物を50×50×20mmのハニカム状担体に滴下した。
No.6
テトラメスリン 1.3g
4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−
t−ブチルフェノール) 0.01g
この組成物を50×50×10mmのハニカム状担体に滴下した。
No.7
プラレトリン 0.5g
2−ヒドロキシ−4−n−オクチルベンゾフェノン 0.2g この組成物を30×30×20mmのハニカム状担体に滴下した。
【0065】
実施例5
(溶液処方)
No.8
エンペントリン 5.0g
2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン 0.6g
香料 0.1g
灯油 35 ml
No.9
ベンフルスリン 0.6g
2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン 0.1g
香料 0.1g
ミリスチン酸イソプロピル 8 ml
灯油 32 ml
No.10
プラレトリン 1.3g
2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン 0.1g
香料 0.1g
灯油 40 ml
【0066】
実施例6
(水ベース処方)
No.11
ベンフルスリン 0.6g
ブチルカルビトール 25 ml
水 25 ml
ブチルヒドロキシトルエン 0.20g
No.12
エンペントリン 2.0g
ブチルカルビトール 25 ml
プロピレングリコール 17 ml
水 8 ml
ブチルヒドロキシトルエン 0.20g
【産業上の利用可能性】
【0067】
現在、有効な害虫防除剤を使用する害虫防除方法および装置は、加熱条件下で薬剤の有効成分を揮散、拡散するものである。しかしながら、加熱条件下で使用する害虫防除する方法や装置では、器具やその周囲の温度が上昇し、火傷などの危険を含んでいた。
一方、非加熱条件下で効果が発揮できるDDVPなどの薬剤を使用する害虫防除手段では、薬剤の安全性に問題があった。
【0068】
安全で、有効な害虫防除効果を有するが、非加熱状態で送風のみによっては害虫駆除に十分な濃度の害虫防除成分をリリースさせることが知られていない薬剤について、それら害虫防除成分の温度−蒸気圧関係をcox線図を用いて系統的に研究し、好ましくは30℃における蒸気圧が1×10-7mmHgより高く、常温で難揮散性の害虫防除成分、より好ましくは、30℃における蒸気圧が1×10-7mmHgより高く、常温で難揮散性で、沸点が低くとも120℃/1mmHgである害虫防除剤、すなわち安全で、有効な害虫防除効果を有する害虫防除剤を用いても、非加熱状態で送風のみによってきわめて優れた害虫駆除効果が得られることが見出された。
従って、本発明により簡単でかつ安全性の高い害虫防除方法と害虫防除装置の開発が十分可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】害虫防除効果の試験装置の1例の概要を示す説明図である。
【図2】害虫防除用薬剤のファン式害虫防除用装置の1例の概要を示す説明図である。
【図3】害虫防除用薬剤の担体の1例の外観を示す斜視図である。
【図4】薬剤のファン式害虫防除用装置揮散装置害虫防除用装置に設ける整流板の1例を示す側面図である。
【図5】シロッコファン式を備えたファン式害虫防除用装置の1例の概要を示す説明図であり、
【図6】害虫防除用薬剤の大気中に揮散した濃度を測定する装置の1例の概要を示す説明図である。
【図7】ファン式害虫防除用装置および液体式電気蚊とり器の有効成分気中濃度を示すグラフである。
【図8】ファン式害虫防除用装置および液体式電気蚊とり器の有効成分揮散動態を示すグラフである。
【図9】ファン式害虫防除用装置の送風機の運転を制御する制御回路図の1例である。
【図10】ファン式害虫防除用装置の送風機の運転を制御した時のエンペントリンの揮散状況を示すグラフである。
【図11】薬剤の温度−蒸気圧関係を示すcox線図の1例を示す図である。
【図12】蒸気圧測定の説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1 試験装置
2 防虫アミ
3 送風機
4 アクリル樹脂製シリンダー
5 薬剤保持材
6 フアン(プロペラ)
7 モータ
12 吸気口
13 通気路
14 排気口
15 電池
16 電池ボックス
17 スウィッチ
20 送気手段(プロペラ)
21 送気手段(電動モータ)
30 担体(保持材)
31 担体カバー
40 整流板
41 平板
42 シロッコファン
43 モータ
44 吹き出し口
50 試験室
51 ファン式害虫防除用装置
52 殺虫ケージ(1)
53 殺虫ケージ(2)
54 シリカゲルトラップ(1)
55 シリカゲルトラップ(2)
56 流量計(1)
57 真空ポンプ(1)
58 流量計(2)
59 真空ポンプ(2)
60 排気ダクト
81 恒温水槽
82 ヒーター
83 攪拌器
84 リード線
85 冷却器
86 圧力計
87 定圧用びん
88 水流ポンプ
101 直流電源部
103 周波数識別部
105 分周部
107 パルス生成部
109 発光ダイオード(LED)
111 輝度変調部
113 駆動モータ
115 サイリスタ
117 ゼロクロス制御部
119 モードコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の害虫防除成分が、常温で難揮散性の化合物であり、該成分から選ばれた1種以上を含む薬剤を担体に保持し、該薬剤を担体に保持した薬剤保持材を設置して送風手段により気体の流れに接触させることにより、非加熱下で該保持材から前記成分を気体中にリリースさせて害虫を防除することを特徴とする害虫防除方法。
【請求項2】
常温で難揮散性の化合物である1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル d1−シス/トランス−3−(2,2−ジメチルビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート、d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート、(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート、d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート、5−プロパギル−2−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート、(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペルニル)−2−シクロペンテニル (+)−シス/トランス−クリサンテマート、d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d1−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート及び/又はこれらの異性体及び/又は類縁体から選ばれた1種以上の害虫防除成分を含む薬剤を担体に保持し、該薬剤を担体に保持した薬剤保持材を設置して送風手段により気体の流れに接触させることにより、非加熱下で該保持材から前記害虫防除成分を気体中にリリースさせて害虫を防除することを特徴とする害虫防除方法。
【請求項3】
装置本体に通気口につながる通気手段を有し、該通気手段内の少なくとも1箇所以上に薬剤を担体に保持した薬剤保持材を設置し、該保持材に保持された薬剤は、常温で難揮散性の化合物である化合物から選ばれた1種以上の害虫防除成分を含み、前記通気手段内に設置した保持材を前記通気口で生起させた気体の流れに非加熱下で接触させることを特徴とする害虫防除用装置。
【請求項4】
装置本体に通気口につながる通気手段を有し、該通気手段内の少なくとも1箇所以上に薬剤を保持した薬剤保持材を設置し、該保持材に保持された薬剤は、常温で難揮散性の化合物である1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル d1−シス/トランス−3−(2,2−ジメチルビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート、d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート、(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート、d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート、5−プロパギル−2−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート、(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペルニル)−2−シクロペンテニル (+)−シス/トランス−クリサンテマート、d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d1−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート及び/又はこれらの異性体及び/又は類縁体から選ばれた1種以上の害虫防除成分を含み、前記通気手段内の前記保持材を前記通気口で生起させた気体の流れに非加熱下で接触させることを特徴とする害虫防除用装置。
【請求項5】
前記常温で難揮散性の化合物である1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル d1−シス/トランス−3−(2,2−ジメチルビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート、d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート、(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート、d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート、5−プロパギル−2−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート、(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペルニル)−2−シクロペンテニル(+)−シス/トランス−クリサンテマート、d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d1−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート及び/又はこれらの異性体及び/又は類縁体から選ばれた1種以上の害虫防除成分を含む請求項1ないし請求項2の害虫防除方法又は請求項3ないし請求項4の害虫防除用装置に用いる害虫防除剤。
【請求項6】
常温で難揮散性の化合物からなる害虫防除成分の1種以上を含む薬剤を担体に保持してなる薬剤保持材を請求の範囲第3項に記載の害虫防除用装置の前記通気路内に固定した時、該保持材が前記通気路の気体の流れを遮断することがないことを特徴とする薬剤保持材を構成する担体。
【請求項7】
常温で難揮散性の化合物である1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル d1−シス/トランス−3−(2,2−ジメチルビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート、d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシレート、(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート、d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート、5−プロパギル−2−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート、(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペルニル)−2−シクロペンテニル (+)−シス/トランス−クリサンテマート、d1−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d1−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート及び/又はこれらの異性体及び/又は類縁体から選ばれた害虫防除成分の1種以上を含む薬剤を担体に保持してなる薬剤保持材を請求項3に記載の害虫防除用装置の前記通気口付近に設置した時、該保持材が前記通気口に達する気体の流れを遮断することがないことを特徴とする薬剤保持材を構成する担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−257105(P2006−257105A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166403(P2006−166403)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【分割の表示】特願平8−507182の分割
【原出願日】平成7年8月7日(1995.8.7)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】