説明

家具用開き扉

【課題】 多種多様な家具本体に応じて様々な材料で扉本体を構成しても共通したヒンジ構造を適用でき、しかも、ヒンジ構造と取っ手を一体構造にすることにより、製造手間を省いて扉を低コストで製造することができ、また家具本体への装着も簡単に行うことができる、改良された家具用開き扉を提供すること。
【解決手段】 家具本体10に開閉可能に取り付ける開き扉20の本体をなすカバー部材31を備え、該カバー部材31に取り付けられるヒンジ軸22と取っ手25を、ロッド状部材を曲げて横倒した略門型をなす部材であって、末端部位にヒンジ軸22を形成すると共に該ヒンジ軸22に担持部23を介して一体をなす取っ手25を略中央部に形成したヒンジ部材21により形成し、このヒンジ部材21を前記カバー部材31に装着して前記ヒンジ軸22を家具本体10上の軸受け13に回転可能に保持させることにより、取っ手25を有するカバー部材31を家具本体に装着するようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉操作用の取っ手とヒンジ機構に工夫を施した家具用開き扉に関する。
【背景技術】
【0002】
家具は多種多様な意匠をもつため、使用される扉も家具本体に応じて多種多様な意匠を与えられている。公知の片開き扉の中で、扉本体部材の一側縁の上下にピンや軸による二本のヒンジ軸を有すると共に、他側端の近傍の表側に開閉操作用の取っ手を備えたものがある。この扉の家具本体への装着は、扉本体部材の上下側縁に設けたヒンジ軸となるピンを家具本体側の開口部に設けられた軸受けにはめ込むことによって行っている。
【0003】
扉本体は、ヒンジ軸および取っ手をしっかり設け、開閉動作時に生じる荷重に耐え、造作に都合よい材料でなければならないため、木材合板製のものが多い。また、扉本体は個々の家具本体側の意匠に合わせてつくられるので、種類が多い上に、取っ手は扉本体の意匠に応じた形態でなければならないため、ヒンジ軸とそれを受ける軸受け、取っ手などの部品管理が煩雑になり、多くの手間を要している。一方、組み立てにおいては、取っ手を扉本体に取り付け、二本のヒンジ軸を扉本体に植えなければならないこと、並びにこれらの作業は扉本体を傷つけずに行わなければならないため、組み立てにもかなりの手間を要している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような家具用開き扉における取っ手やヒンジの現状に鑑み、多種多様な家具本体に応じて様々な材料で扉本体を構成しても共通したヒンジ構造を適用でき、しかも、ヒンジ構造と取っ手を一体構造にすることにより、製造手間を省いて扉を低コストで製造することができ、また家具本体への装着も簡単に行うことができる、改良された家具用開き扉を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決することを目的としてなされた本発明の家具用開き扉の構成は、家具本体に開閉可能に取り付ける開き扉の本体をなすカバー部材を備え、該カバー部材に取り付けられるヒンジ軸と取っ手を、ロッド状部材を曲げて横倒した略門型をなす部材であって、末端部位にヒンジ軸を形成すると共に該ヒンジ軸に担持部を介して一体をなす取っ手を略中央部に形成したヒンジ部材により形成し、このヒンジ部材を前記カバー部材に装着して前記ヒンジ軸を家具本体上の軸受けに回転可能に保持させることにより、取っ手を有するカバー部材を家具本体に装着するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の家具用開き扉は、家具本体に開閉可能に取り付ける開き扉の本体をなすカバー部材を備え、該カバー部材に取り付けられるヒンジ軸と取っ手を、ロッド状部材を曲げて横倒した略門型をなす部材であって、末端部位にヒンジ軸を形成すると共に該ヒンジ軸に担持部を介して一体をなす取っ手を略中央部に形成したヒンジ部材により形成し、このヒンジ部材を前記カバー部材に装着して前記ヒンジ軸を家具本体上の軸受けに回転可能に保持させることにより、取っ手を有するカバー部材を家具本体に装着するようにしたため、多種多様な家具本体に応じて様々な材料で扉本体となるカバー部材を形成することができ、しかも、ヒンジ部材が取っ手を一体的に備えているので、部品点数が少なくなり、開き扉自体の製造、及び、家具本体への装着も簡単に行うことができる。
【0007】
すなわち、ヒンジ軸と取っ手を一体形成したヒンジ部材によって開閉作用による荷重を受ける部材に構成し、この部材に家具の開口を覆う扉本体となるカバー部材を支持させている、つまり、ヒンジ軸と取っ手を一体に形成した横倒略門型をなすヒンジ部材が、カバー部材と吊り元から取っ手までを一体にして開閉時の回転を行い、かつ荷重を支持しているため、金属、木材、紙などの材料をカバー部材に採用することができるのみならず、溶接ができない素材や、従来扉材として不適であった素材でも採用することができて、家具の外観意匠に応じた開き扉を得ることができ、ユーザが好みに応じた様々な素材の扉を容易に形成することができる。
【0008】
さらに、本発明開き扉は、取っ手を一体に備えたヒンジ部材とカバー部材とのみからなり、部品点数が少ないばかりか、取っ手と一体のヒンジ部材は、ロッド状部材を曲げて横倒した略門型に形成し、その末端部のヒンジ軸と略中央部の取っ手が担持部を介して一体に形成されている、つまり、扉のヒンジ軸と取っ手とが一つの部材によって形成されてあるため、部品点数が少なく、扉の組立て手間も省くことができるので、低コストで家具用開き扉を製造することができる。
【0009】
また、ヒンジ軸を家具本体上の軸受けに回転可能に保持させることにより、開き扉を家具本体に装着することができるため、家具本体に対する組み付けも従来の方法を変更せずに行うことができ、製造工場のみならず、ユーザによる組み付けも容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、添付図を参照しつつ、本発明の家具用開き扉の一実施例を説明する。添付図において、図1は本発明の家具用片開き扉の一実施例を示す家具本体に装着した状態の平面図、図2は図1の正面図、図3は図1の右側面図、図4は図1の4−4線に沿う家具用片開き扉の裏面側拡大図、図5は図4の5−5線に沿う断面図、図6は図4の左側面図、図7は本発明の家具用片開き扉の他の実施例を示す家具本体に装着した状態の正面図である。
【0011】
本発明家具用開き扉は、図1〜図3に例示するように、公知の扉と同様に、前面が開放された中空箱形の家具本体10の開口面に装着される。即ち、本発明の開き扉20は、家具本体10の開口面に開閉自在に配置され、家具本体10を閉塞する。
【0012】
上記の開き扉20は、後述する取っ手とヒンジ軸を一体の部材上に備えたヒンジ部材21と、このヒンジ部材21に支持される扉本体をなすカバー部材31からなっている。
【0013】
ヒンジ部材21は、図4〜図6に示すように、この開き扉20を開閉可能に家具本体10に装着させる開閉支点となるヒンジ軸のみならず、カバー部材31を支持する構成と取っ手を有している。すなわち、このヒンジ部材21は、垂直方向に延びる上、下のヒンジ軸22と、上、下のヒンジ軸22の下端と上端からそれぞれに水平方向に延びる上、下の略平行な担持部23と、両担持部23の水平部の端末部位から垂直に延びる取っ手部24に形成された略半月状の取っ手25とを有するもので、金属ロッドを曲げることによって形成されている。このヒンジ部材21の構成を換言すると、ロッド状部材を横倒した略門型に曲げ、2本の水平部分の外端末部位に垂直向きのヒンジ軸22を形成する一方、垂直部分の略中央部に弧状に湾曲した取っ手25を備えた取っ手部24が形成されたものである。上記のヒンジ部材21は、上、下の担持部23を略平行としたものであるが、本発明では、2本の担持部23が取っ手部24に対しテーパを有する形態のものを用いることができる。
【0014】
カバー部材31は、背面を開放された浅い箱形の形態をなす合成樹脂製などの面状部材で、正面壁35に多数の小孔35Aが形成されている。カバー部材31の外周は、一方の側壁36のみが正面壁35から直角に曲がるフラットな壁からなっているが、残余の側壁37〜39は一例としてL字状をなす断面に形成されている。正面壁35における側壁37の中央付近には、その側壁37を含んで開いた開口34が形成されている。
【0015】
このカバー部材31は正面壁35における背面の上、下近傍がヒンジ部材21の担持部23に支持されている。ヒンジ部材21の取っ手部24の略中央部に形成された取っ手25は前記開口34から外部に突出しており、取っ手部24から曲げられてヒンジ軸22に連なる部位は、側壁37の内部を経て側壁38と39に平行な水平姿勢で壁35の背面に配置されていると共に、この水平部位の端部が側壁38,39から外部に垂直向きに突出し、止め輪28,29によってカバー部材31からの抜け出しを阻止されている。
【0016】
家具本体10に対する本発明開き扉20の装着は、カバー部材31を家具本体10の開口を覆うように配置すると共に、ヒンジ軸22が、家具本体10を構成する上板11および下板12に埋め込まれた軸受け13にはめ込まれることによってなされる。
【0017】
開閉は、従来の家具の扉と同様に、取っ手25を手でつかみ、その手を前後に動かしてこの開き扉20をヒンジ軸22を中心に回転させることで行う。
【0018】
この開閉に際して、本発明開き扉では、取っ手部24を一体に備えたヒンジ部材21が開閉時の荷重を受けるため、カバー部材31に荷重がかからない。このため、カバー部材31に任意の材料、特に従来は扉に不向きとされていた和紙や不織布のような低強度の面状部材でも、また、ガラス板のように取っ手やヒンジの取り付けが困難な部材にも好適に用いることができる。図7はそのような開き扉の一例を示している。
【0019】
図7に示した本発明開き扉120において、ヒンジ部材21は、図1〜図6に示したものと同じ構成である。しかし、カバー部材131は平板状のガラス板からなっており、側縁に開口134を備えている。ヒンジ部材21に対するカバー部材131の取り付けは、取っ手部24の取っ手25を開口134から外部に突出させ、ヒンジ軸22をカバー部材131の上、下側縁から外部に突出させて、ヒンジ部材21をカバー部材131に配置すると共に、四個の装着具140によってヒンジ部材21をカバー部材131に固定することで行っている。
【0020】
上記の装着具140はナット部材141およびねじ部材142からなっている。ナット部材141は、ガラス板からなるカバー部材131の裏面に配置され、かつヒンジ部材21の担持部23に固定されている。ねじ部材142は、カバー部材131の外表面に配置され、カバー部材131を貫通してナット部材141にねじ込まれることで、カバー部材131をヒンジ部材21に固定している。
【0021】
家具本体10に対する装着は、図1〜図6に関連して説明した実施例と同様に、ヒンジ部材21を構成するヒンジ軸22を家具本体10の上、下板11,12に植えた軸受け13にはめ込むことで行っている。
【0022】
本発明による片開き扉では、上述のように、カバー部材31や131に機械的強度を要求しないので、ユーザの嗜好に応じてカバー部材31や131を交換可能に構成することもできる。カバー部材31や131として、上記例の鉄板やガラス板のほか、アルミニウム、ステンレススチールなどの金属板、木板、合成樹脂板ばかりか、ペーパーなどのような溶接ができない素材や、機械的強度がなくてカバー部材31として不適であった素材でも使用することができる。
【0023】
さらに、上記のような種々の素材からなるカバー部材31を複数種用意しておき、ユーザが好みに応じてカバー部材31を選択し、その交換ができるようにすることもできる。交換は、例えば図7に示すような装着具140を用意し、各々のカバー部材31に、ねじ部材142のねじ軸の通る貫通孔を設けておくことで行うことができる。必要に応じて、ねじ部材142の外観意匠の異なるものを用意することで、カバー部材31の意匠により調和させることもできる。
【0024】
また、ヒンジ部材21は、ばね鋼などからなる断面円形をなす1本のロッド状部材を曲げ加工することによってヒンジ軸22および取っ手24を備えた部材に形成できるので、加工が容易で低コストであり、また、このヒンジ部材21にカバー部材31を取り付けるだけで本発明開き扉20を得ることができるため、製造をきわめて簡単に行なうことができる。即ち、取っ手24をカバー部材31の開口34に嵌めてカバー部材31をヒンジ部材21に載せ、担持部23とカバー部材31とを結合するだけで、ヒンジ軸22と取っ手25を同時に組み付けることができるから、二本のヒンジ軸22と取っ手25を夫々にカバー部材(扉本体)に取り付けていた従来の開き扉の組み付け作業に比べて、作業工程を約1/3程度に短縮することができる。
【0025】
加えて、家具本体10に対する装着も、ヒンジ軸22を軸受け13にはめ込むだけであるから、従来の作業手順を全く変えないばかりか、ヒンジ軸22を保持する軸受け13の位置が決まっていても、家具本体10に取り付ける際に、ヒンジ部材21の担持部23が撓むため、軸受け13に対するヒンジ軸22のはめ込みを円滑かつ簡単に行うことができる。
【0026】
なお、以上説明した実施例において、本発明を逸脱しない範囲での変更、改造などを行うことができる。例えば、カバー部材31の開口34は側縁が開放されているが、開口34を設けないカバー部材31であってもよく、また、開口34もカバー材31の素材に応じ、ヒンジ部材21のロッド状部材の断面形状に見合う縦長孔を形成し、その部位の機械的強度を高めてもよい。また、ヒンジ部材21を構成するロッド状部材は断面円形をなしたものであるが、他の断面形状の部材を用いて構成してもよい。さらに、上記説明での本発明開き扉は、水平方向での開閉、つまりヒンジ軸22が垂直向きでの装着であったが、ヒンジ軸22を水平にした装着、即ち、上下方向での開き扉にも使用することができる。加えて、本発明開き扉は、他方の扉を対象形態の同一構造とすることで、両開き(観音開き)の扉に形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明家具用開き扉の一実施例を家具本体に装着した状態の平面図。
【図2】図1の正面図。
【図3】図1の右側面図。
【図4】図1の4−4線に沿う家具用開き扉の裏面側拡大図。
【図5】図4の5−5線に沿う断面図。
【図6】図4の左側面図。
【図7】本発明家具用開き扉の他の実施例を家具本体に装着した状態の正面図
【符号の説明】
【0028】
10 家具本体
11 上板
12 下板
13 軸受け
20 開き扉
21 ヒンジ部材
22 ヒンジ軸
23 担持部
24 取っ手部
25 取っ手
28,29 止め輪
31 カバー部材
34 開口
35 正面壁
36〜39 側壁
131 カバー部材
134 開口
138,139 側壁
140 装着具
141 ナット部材
142 ねじ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具本体に開閉可能に取り付ける開き扉の本体をなすカバー部材を備え、該カバー部材に取り付けられるヒンジ軸と取っ手を、ロッド状部材を曲げて横倒した略門型をなす部材であって、末端部位にヒンジ軸を形成すると共に該ヒンジ軸に担持部を介して一体をなす取っ手を略中央部に形成したヒンジ部材により形成し、このヒンジ部材を前記カバー部材に装着して前記ヒンジ軸を家具本体上の軸受けに回転可能に保持させることにより、取っ手を有するカバー部材を家具本体に装着するようにしたことを特徴とする家具用開き扉。
【請求項2】
ヒンジ軸と取っ手の間に介在する2本の担持部は、略平行な姿勢又は取っ手に向け適宜角のテーパーを付けた請求項1の家具用開き扉。
【請求項3】
開き扉は家具本体に上、下方向において開閉する開き扉として装着する請求項2の家具用開き扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−144312(P2006−144312A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333768(P2004−333768)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000149491)株式会社大東製作所 (8)
【Fターム(参考)】