説明

家屋付設式津波避難用シェルター

【課題】津波発生時においては、極めて短時間で内部に避難することができ、逃げ遅れて津波にまきこまれる危険性を解消することが可能であり、通常時には家屋の一部として利用することができ、簡易な設備構成で有用性が高い家屋付設式津波避難用シェルターを提供すること。
【解決手段】家屋に対して一体に付設されて該家屋内からの出入りが可能とされてなるシェルターであって、津波来襲時において、家屋からシェルターを分離させるための分離手段と、家屋から分離されたシェルターを密閉する密閉手段とを具備し、家屋から分離された状態において水に浮くことを特徴とする家屋付設式津波避難用シェルターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は津波避難用シェルターに関し、より詳しくは、通常時は家屋と一体になって家屋の一部として利用することができ、津波来襲時には家屋から分離して避難シェルターとして利用することができる家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国は世界でも有数の地震国であり、毎年のように地震によって尊い生命を失う被害者が発生しているのが現実である。
地震による被害者の中には、建物の倒壊など地震そのものに起因して生命をおとす被害者も多いが、北海道の奥尻島沖地震の例に見られるように、地震により発生した津波にのまれて生命を失う被害者も数多い。
【0003】
現在、津波が発生したときには、自治体が予め指定した高台にある学校や公民館等の避難施設へと避難するのが一般的である。
しかしながら、津波の進行速度は非常に早いため、避難施設が海岸から離れている場合、海岸近くの住民の避難が間に合わず、津波にのまれてしまうおそれがあった。ところが、それにも拘らず、我が国においては、海岸近くに津波専用の避難所は殆ど存在していないのが実情である。
【0004】
このような実情に鑑みて、海岸近くに設置される津波避難のための設備が、下記特許文献1において提案されている。
この特許文献1の開示技術は、金属製の柱材を地中に打ち込んで橋脚状に構成された土台部分と、橋脚状の土台部分の上に金属パネルにより構成された高床の屋内部分を具備する高床式金属建造物であり、津波発生時において海岸近くの住民の迅速な避難を可能とする点では確かに優れている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された避難施設は、避難施設周辺の多数の住民を避難させる目的で設けられているものではあるが、全ての住民の家屋から近い場所に設置するということは物理的に不可能である。
そのため、家屋から避難施設が遠くなって、短時間で避難施設に到達できない住民が発生することは避けられない。特に、少ない住民が比較的広い範囲に点在している過疎地においては、短時間で避難施設に到達できない住民が多く発生し、住民が避難中に津波にのまれる危険性が高くなってしまう。
【0006】
更に、特許文献1に開示された避難施設は、多人数が避難する避難所であるために大掛かりな設備となって設置コストが嵩む上に、津波が発生しない通常時においては使用されないため、必要ではあるものの無駄が多い施設であることは否めない。
【0007】
【特許文献1】特開平9−184323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、津波発生時においては、極めて短時間で内部に避難することができ、逃げ遅れて津波にまきこまれる危険性を解消することが可能であり、通常時には家屋の一部として利用することができ、簡易な設備構成で有用性が高い家屋付設式津波避難用シェルターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、家屋に対して一体に付設されて該家屋内からの出入りが可能とされてなるシェルターであって、津波来襲時において、家屋からシェルターを分離させるための分離手段と、家屋から分離されたシェルターを密閉する密閉手段とを具備し、家屋から分離された状態において水に浮くことを特徴とする家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
請求項2に係る発明は、前記家屋の内部とシェルターの内部とは段差無く連結されていることを特徴とする請求項1記載の家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記分離手段が、前記家屋とシェルターとの間に介装された圧縮ばねと、通常時においては圧縮ばねとシェルターとの間に介装されて圧縮ばねの付勢力がシェルターに伝達されるのを防ぎ、津波来襲時においては圧縮ばねとシェルターとの間から外されて圧縮ばねの付勢力がシェルターに伝達されるようにするストッパーとから構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
請求項4に係る発明は、前記分離手段として、地面とシェルターとの間に介装された圧縮ばねと、通常時においては圧縮ばねとシェルターとの間に介装されて圧縮ばねの付勢力がシェルターに伝達されるのを防ぎ、津波来襲時においては圧縮ばねとシェルターとの間から外されて圧縮ばねの付勢力がシェルターに伝達されるようにするストッパーとから構成されている第二の分離手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
【0011】
請求項5に係る発明は、シェルターの下方の地面にコンクリート基礎が設けられ、該コンクリート基礎とシェルターの間にはコンクリート基礎に係止されるアンカー部を有するベースが設けられ、該ベース内に前記圧縮ばねが収容されていることを特徴とする請求項4記載の家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
請求項6に係る発明は、外部の空気を取り入れるためのパイプを上方に向けて出没可能に備えていることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
【0012】
請求項7に係る発明は、水に浮いた状態で推進するための推進力を付与する推進機構を有することを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
請求項8に係る発明は、一端部がシェルターの底部に固定され、他端部が前記ベースに固定されたスイベル付チェーンを備えていることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
【0013】
請求項9に係る発明は、水を貯留するための水槽を底部に備えていることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
請求項10に係る発明は、シェルターの外面に対して散水可能な散水用シャワーを備えていることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
【0014】
請求項11に係る発明は、食料、医薬品、毛布、エアボンベ、電池の少なくとも1種類以上の避難用品を格納した避難用品格納庫を備えていることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
請求項12に係る発明は、貴重品を格納する貴重品格納庫を備えていることを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルターに関する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、家屋に対して一体に付設されて該家屋内からの出入りが可能とされているため、津波発生時において、極めて短時間でシェルター内部に避難することができ、しかもシェルターは家屋から分離して密閉状態で水面に浮上することができるため、逃げ遅れて津波にまきこまれる危険性がない。また、通常時には家屋の一部として利用することができるため有用性が高く、しかも従来のような大掛かりな設備ではないため設置コストが低くてすむ。
請求項2に係る発明によれば、家屋の内部とシェルターの内部とが段差無く連結されているため、家屋からシェルターへの出入りが容易であり、高齢者や幼児であっても迅速な避難が可能となる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、ストッパーを解除することにより、圧縮ばねの作用でシェルターを家屋から分離させることが可能であるため、津波来襲時において迅速且つ容易にシェルターを家屋から分離させることができる。
請求項4に係る発明によれば、ストッパーを解除することにより、圧縮ばねの作用でシェルターを地面から離脱させることが可能であるため、津波来襲時において迅速且つ容易にシェルターを水面に浮上させることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、圧縮ばねをベースに収容することができるとともに、ベースを地面に対してしっかりと固定することができる。
請求項6に係る発明によれば、外部の空気を取り入れるためのパイプを上方に向けて出没可能に備えているため、水に浮かんだ状態においてもシェルター内部に新鮮な空気を取り入れることができる。
【0018】
請求項7に係る発明によれば、水に浮いた状態で推進するための推進力を付与する推進機構を有するため、水面上を自由に移動して安全な場所へと避難することができる。
請求項8に係る発明によれば、スイベル付チェーンによりシェルターがベースに固定されるため、シェルターが遠方まで流されないように地面に係留することができ、しかもチェーンが捩れることが防がれる。
【0019】
請求項9に係る発明によれば、水を貯留するための水槽を底部に備えているため、浮遊中のシェルターの姿勢を安定させることができるとともに、水槽内の水を生活水(飲料水、手洗い水等)や、シェルター外部が火事のときのシェルターの冷却水として利用することができる。
請求項10に係る発明によれば、シェルターの外面に対して散水可能な散水用シャワーを備えているため、シェルター外部が火事のときにシェルターへの延焼を防ぐことができる。
【0020】
請求項11に係る発明によれば、食料、医薬品、毛布、エアボンベ、電池の少なくとも1種類以上の避難用品を格納した避難用品格納庫を備えているため、シェルター内の住民が快適な避難生活を送ることができる。
請求項12に係る発明によれば、貴重品を格納する貴重品格納庫を備えているため、津波によって、現金や貯金通帳が失われてしまうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る家屋付設式津波避難用シェルター(以下、単にシェルターと称す)の好適な実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係るシェルターの一例を示す正面断面図、図2はその側面断面図である。
本発明に係るシェルター(1)は、図1に示すように、家屋(K)に対して一体に付設され、該家屋(K)内から直接シェルター内へと出入りすることが可能となっている。
そのため、通常時においては、シェルター(1)は家屋(K)の一部として、例えば談話室、勉強部屋、書斎、居間、子供部屋、納戸等として利用される。
【0022】
シェルター(1)は、津波来襲時において、家屋(K)からシェルターを分離させるための分離手段と、家屋(K)から分離されたシェルターを密閉する密閉手段とを具備している。
【0023】
分離手段は、家屋(K)とシェルター(1)との間に介装された圧縮ばね(2)と、該圧縮ばね(2)とシェルター(1)との間に介装されたストッパー(3)とを備えている。
家屋(K)とシェルター(1)とは連結空間(4)を介して連結されており、圧縮ばね(1)はこの連結空間(4)にその伸縮方向を略水平方向に向けて配置されている。
【0024】
連結空間(4)は、居住者が家屋(K)とシェルター(1)の間を行き来する際に通行するための通路となっており、家屋(K)と同様に床、壁、天井が設けられている。
シェルター(1)の床面と、連結空間(4)の床面と、家屋(K)の床面は、略面一となっており、家屋の内部とシェルターの内部は段差が無くバリアフリーで連結されている。
【0025】
ストッパー(3)は、通常時においては、図1に示すように、圧縮ばね(2)とシェルター(1)との間に介装された状態にあり、これによって圧縮ばね(2)の付勢力がシェルター(1)に伝達されるのを防いでいる。
そして、津波来襲時においては、図3に示すように、圧縮ばね(2)とシェルター(3)との間から外され(解除され)、これによって圧縮ばね(2)の付勢力がシェルター(1)に伝達されるようにする。
【0026】
ストッパー(3)の解除操作は、シェルター(1)の内部にあるスイッチを操作することにより行うことができる。
その具体的機構は特に限定されないが、一例としては、板状のストッパー(3)を油圧シリンダのロッドに連結し、スイッチのON/OFF操作により油圧シリンダへと油圧を供給するバルブの開閉を行わせるようにする構成を挙げることができる。この構成によれば、スイッチをON操作するとバルブが開放されて油圧シリンダが作動し、これによってストッパー(3)が移動して圧縮ばね(2)とシェルター(1)の間から外れる。
【0027】
ストッパー(3)の解除操作によって、圧縮ばね(2)とシェルター(1)の間からストッパー(3)が外れると、圧縮ばね(2)の付勢力がシェルター(1)の側面に伝達され、シェルター(1)が家屋(K)から分離する(図3参照)。
シェルター(1)は水に浮くことができる浮力を有するように設計されており、家屋(K)から分離したシェルター(1)は水に浮かんで移動することができる。
【0028】
シェルター(1)には、家屋(K)に付設された状態において、連結空間(4)に面する開閉扉(5)と、側方外部に面する開閉扉(6)が備えられている。
また、シェルター(1)の上部には、緊急脱出用のハッチ(22)も備えられている。
これらの開閉扉およびハッチは、閉じた状態においては、水がシェルター内部に浸入しない水密性を有しており、上述した密閉手段を構成している。
【0029】
本発明に係るシェルター(1)は、上述した分離手段に加えて、更なる分離手段(以下、第二分離手段と称す)を備えている。
第二分離手段は、地面とシェルター(1)との間に介装された圧縮ばね(2)と、該圧縮ばね(2)とシェルター(1)との間に介装されたストッパー(3)とを備えている。
【0030】
シェルター(1)の下方の地面にはコンクリート基礎(7)が設けられており、該コンクリート基礎(7)とシェルターの間にはコンクリート基礎に係止される下向き凸状のアンカー部を有するコンクリート製のベース(8)が設けられている。
【0031】
ベース(8)の上面には複数の凹部が形成されており、この凹部に第二分離手段を構成する圧縮ばね(2)がその伸縮方向を略鉛直方向に向けて配置されている。
このように、圧縮ばね(3)は、具体的にはシェルター(1)の底板(9)とベース(8)の間に介装されている。すなわち、圧縮ばね(3)は、地面とシェルター(1)との間に、コンクリート基礎(7)とベース(8)を介して介装されているものである。
【0032】
ストッパー(3)は、通常時においては、図1に示すように、圧縮ばね(2)とシェルター(1)との間に介装された状態にあり、これによって圧縮ばね(2)の付勢力がシェルター(1)に伝達されるのを防いでいる。
そして、津波来襲時においては、図4に示すように、圧縮ばね(2)とシェルター(3)との間から外され(解除され)、これによって圧縮ばね(2)の付勢力がシェルター(1)に伝達されるようにする。
【0033】
第二分離手段についても、ストッパー(3)の解除操作は、上述したような機構を用いて、シェルター(1)の内部にあるスイッチを操作することにより行うことができる。
【0034】
ストッパー(3)の解除操作によって、圧縮ばね(2)とシェルター(1)の間からストッパー(3)が外れると、圧縮ばね(2)の付勢力がシェルター(1)の底板に伝達され、シェルター(1)が地面から(正確にはベース(8)から)離脱する(図4参照)。
これにより、津波来襲時において、迅速且つ容易にシェルター(1)を水面に浮上させることができる。
【0035】
本発明において、分離手段及び第二分離手段の構成は、上述した構成には必ずしも限定されず、通常時において家屋と一体に付設されているシェルターを、津波来襲時において家屋から分離することができる構成であればよい。
【0036】
シェルター(1)は、上方に向けて出没可能なパイプ(10)を備えている。
このパイプ(10)は、津波来襲時に家屋から分離された状態において、上方に向けて突出させることができ、これにより外部の空気をシェルター内に取り入れることが可能となる。
パイプ(10)を出没させるための具体的機構については特に限定されず、例えば、パイプ(10)を二重筒構造とし、内筒の外面と外筒の内面をネジで噛み合わせるとともに、外筒を上下方向に動かないように固定した状態でモータ駆動により回転させることにより、内筒を螺進させる構成を挙げることができる。また、手動で持ち上げてねじ等で固定する機構であってもよい。
【0037】
本発明においては、外気取り入れ用のパイプ(10)に加えて、上方に向けて出没可能な潜望鏡を設けることもできる。
潜望鏡を設けることにより、津波来襲時に家屋から分離された状態において、潜望鏡を用いて外部の様子を把握することが可能となる。尚、シェルター(1)には窓(21)が設けられているため、窓(21)から外を見ることもできる。
【0038】
更に、シェルター(1)は、水に浮いた状態で推進するための推進力を付与する推進機構を備えている。
推進機構は、スクリュー(11)と、スクリューを回転させるための原動機(12)と、舵(13)とからなり、このような推進機構を有することによって、水面上を自由に移動して安全な場所へと避難することができる。
【0039】
シェルター(1)の底部には、水に浮いた状態での係留を可能とするスイベル付チェーン(14)が取付けられている。
スイベル付チェーン(14)は、ベース(8)に設けられた凹部に収容されており、その一端部がシェルター(1)の底板(9)に固定され、他端部がベース(8)に固定されている。
津波来襲時においては、シェルター(1)は、スイベル付チェーン(14)を介してベース(8)に係留されるため、水に浮いたシェルターが遠方まで流されるのを防ぐことができる。また、スイベル付であるため、チェーンが捩れることが防がれて、安定した係留が可能となる。
【0040】
シェルター(1)の底部には、水を貯留するための水槽(15)が備えられている。
水槽(15)は、シェルターの床板と底板(9)の間の空間に形成されており、貯留された水は、浮遊中のシェルターの姿勢を安定させるバラストの役割を果たすことができる。
また、生活水(飲料水、手洗い水等)や、シェルター外部が火事のときのシェルターの冷却水としても利用することができる。
【0041】
更にシェルター(1)の底部には、避難用品格納庫(19)と貴重品格納庫(20)が設けられている。これらの格納庫は、水槽(15)の上方に位置し、床板に設けた開閉扉を開けて物の出し入れをすることができる。
避難用品格納庫(19)には、食料、医薬品、毛布、エアボンベ、電池の少なくとも1種類以上の避難用品が格納されている。これにより、シェルター内の住民がこれら避難用品を利用して快適な避難生活を送ることができる。
貴重品格納庫(20)には、現金、貯金通帳、貴金属等の貴重品が収容されている。これにより、津波によってこれらの貴重品が失われてしまうことを防止できる。
【0042】
シェルター(1)の上部には、シェルターの外面に対して散水可能な散水用シャワー(16)が備えられている。
散水用シャワー(16)は、ポンプ(17)とホース(18)を介して水槽(15)と連結されており、ポンプ(17)を駆動することにより水槽(15)内の水を汲み上げて散水用シャワー(16)へと供給することができる。ポンプ(17)は電動式でもよいし、手回し式のものでもよい。
散水用シャワー(16)を利用して、シェルターの外面に対して散水することにより、シェルター外部が火事のときにシェルターへの延焼を防ぐことができる。
【0043】
本発明に係るシェルター(1)は、家屋(K)の一部として、例えば談話室、勉強部屋、書斎、居間、子供部屋、納戸等として利用されるため、その内部仕様は家屋の居住者が自由に設計することができるが、キャンピングカーの内部のような仕様とする構成も好ましく採用できる。また、外部形状については、水上を走行するために好適な形状とすることができる。
【0044】
図5はこれらの構成を採用した場合のシェルター(1)を示す図であり、(a)は外観正面図、(b)はシェルター(1)の内部を示す平面図である。
この例では、図5(a)に示されるように外観形状は船のような形状となっており、水上を走行するのに適した形状となっている。尚、図示を省略しているが、シェルター(1)には家屋への出入りを可能とする開閉扉が設けられ、家屋の形状はシェルターを一体に付設するのに適した形状に適宜変更される。
【0045】
図5(b)において、シェルター内部には、調理のためのガスレンジ(23)、シンク(24)、冷蔵庫(シンクの下部)が設けられており、更にテーブル(25)、ダイネットシート(26)、クローゼット(27)、ベッド(28)が設けられている。
ダイネットシート(26)はベッドにもなるため、避難時にはベッドに変形して使用することができる。
【0046】
キャンピングカーは、コンパクトな空間内に生活に必要な多種の用品を機能的に配置しているため、シェルター(1)の内部をキャンピングカーの内部と同様の仕様とすることにより、狭い空間であっても便利で快適な避難生活をおくることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係るシェルターは、通常時には家屋の一部として利用することができ、津波来襲時には避難施設として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るシェルターの一例を示す正面断面図である。
【図2】本発明に係るシェルターの一例を示す側面断面図である。
【図3】分離手段の作用を示す説明図である。
【図4】第二分離手段の作用を示す説明図である。
【図5】本発明に係るシェルターの変更例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 シェルター
2 圧縮ばね
3 ストッパー
5 開閉扉(密閉手段)
6 開閉扉(密閉手段)
7 コンクリート基礎
8 ベース
10 パイプ
11 スクリュー(推進手段)
12 原動機(推進手段)
13 舵(推進手段)
14 スイベル付チェーン
15 水槽
16 散水用シャワー
19 避難用品格納庫
20 貴重品格納庫
22 ハッチ(密閉手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋に対して一体に付設されて該家屋内からの出入りが可能とされてなるシェルターであって、津波来襲時において、家屋からシェルターを分離させるための分離手段と、家屋から分離されたシェルターを密閉する密閉手段とを具備し、家屋から分離された状態において水に浮くことを特徴とする家屋付設式津波避難用シェルター。
【請求項2】
前記家屋の内部とシェルターの内部とは段差無く連結されていることを特徴とする請求項1記載の家屋付設式津波避難用シェルター。
【請求項3】
前記分離手段が、前記家屋とシェルターとの間に介装された圧縮ばねと、通常時においては圧縮ばねとシェルターとの間に介装されて圧縮ばねの付勢力がシェルターに伝達されるのを防ぎ、津波来襲時においては圧縮ばねとシェルターとの間から外されて圧縮ばねの付勢力がシェルターに伝達されるようにするストッパーとから構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の家屋付設式津波避難用シェルター。
【請求項4】
前記分離手段として、地面とシェルターとの間に介装された圧縮ばねと、通常時においては圧縮ばねとシェルターとの間に介装されて圧縮ばねの付勢力がシェルターに伝達されるのを防ぎ、津波来襲時においては圧縮ばねとシェルターとの間から外されて圧縮ばねの付勢力がシェルターに伝達されるようにするストッパーとから構成されている第二の分離手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の家屋付設式津波避難用シェルター。
【請求項5】
シェルターの下方の地面にコンクリート基礎が設けられ、該コンクリート基礎とシェルターの間にはコンクリート基礎に係止されるアンカー部を有するベースが設けられ、該ベース内に前記圧縮ばねが収容されていることを特徴とする請求項4記載の家屋付設式津波避難用シェルター。
【請求項6】
外部の空気を取り入れるためのパイプを上方に向けて出没可能に備えていることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルター。
【請求項7】
水に浮いた状態で推進するための推進力を付与する推進機構を有することを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルター。
【請求項8】
一端部がシェルターの底部に固定され、他端部が前記ベースに固定されたスイベル付チェーンを備えていることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルター。
【請求項9】
水を貯留するための水槽を底部に備えていることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルター。
【請求項10】
シェルターの外面に対して散水可能な散水用シャワーを備えていることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルター。
【請求項11】
食料、医薬品、毛布、エアボンベ、電池の少なくとも1種類以上の避難用品を格納した避難用品格納庫を備えていることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルター。
【請求項12】
貴重品を格納する貴重品格納庫を備えていることを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載の家屋付設式津波避難用シェルター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−277998(P2007−277998A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108095(P2006−108095)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(596109273)株式会社高知丸高 (17)
【出願人】(596109284)有限会社アイ工業 (1)
【出願人】(597154966)学校法人高知工科大学 (141)
【Fターム(参考)】