説明

家畜の排泄物の肥料化装置及び方法

【課題】鶏糞、牛糞、豚糞等の家畜排泄物を肥料化する従来方法の工程において発生する以下の諸問題点を解決する方法と、それを実用化する装置を提供する。1)堆肥化する時間を短縮する。2)堆肥化中の過程において発生する悪臭を極端に減少させる。3)堆肥化した肥料の養分元素のバランスを理想に近いものにさせる。4)堆肥化した肥料の中に住み着いている枯草菌が土壌中においても活動出来るようにする。
【解決手段】所望する回転数にて回動する回転羽根4を有する回転軸3を配設した醗酵槽で、家畜の糞尿と多孔質焼結セラミックに枯草菌を含浸させた醗酵促進物と籾ガラを混合し、該枯草菌がより活動を活発に行い醗酵を促進せしめるため、1〜30ミクロンの成育波長を有する遠赤外線を照射する堆肥化の方法とその装置。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は鶏糞、牛糞、豚糞等の家畜排泄物の有効利用として従来より執り行われてきた堆肥化の方法に関するものであり、特に鶏糞の養分元素のバランスの良い肥料の生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来家畜の排泄物の堆肥化は微生物による有機物の分解によって腐熱が進み肥料となる。しかし従来の方法では醗酵温度が急激に上昇する第一次醗酵期間には高濃度のアンモニアを主成分とした悪臭が発生し、自然生態系へ多大な悪影響を与え、また人畜に対してもその健康状態に悪影響を及ぼしていた。
【0003】
又この悪臭の処理についてはその脱臭設備に多大な費用がかかりかつそのランニング費用も高いものとなっていた。かつこの第一次醗酵期間は10日〜2週間程度かかり費用もかさんだ。またこの間のアンモニアの大気への放出によって窒素分が減少した養分元素のバランスの悪い肥料となっていた。
【0004】
一方微生物の醗酵促進過程においてその微生物による醗酵熱があまりに上昇しすぎて微生物が死滅し腐敗したり、冬場の寒冷時期は醗酵活動が休止したりして十分腐熱現象が進行していない堆肥が製造された場合、即ち未熟な昜分解性有機物がまだ多量に含まれた肥料が生産され、これを施用すると土壌中で急激に分解することになり作物の生育を阻害することになる。
【0005】
又無機化合物(例えば生石灰)を添加して元素や悪臭の基になる物質を化学的に調整する方法や、一部乾燥中の排気の中に含まれる有機性成分(通称B,O,Dと称している)を高温熱風乾燥処理中に燃焼させる方法等が取られていた。
しかしこれらも多大な設備費用とランニングコストが掛かりかつ堆肥化して商品としての肥料にする場合多くの日数を要していた。
【0006】
又第一次醗酵期間が終わり第二次養生冷却期間においてもその温度管理や酸素即ち空気の供給における細かな制御が必要となっていた。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術、方法においては家畜の排泄物の堆肥化を実施するには簡易装置においては約1〜3か月、通常の醗酵装置において優れている装置でも約10日〜2週間程度かかっていた。又多くの悪臭も発生しその処理においては色々の方法や処理装置が考案され実用化されていたが、多大な設備費とランニングコストが掛かっていた。
【0008】
一方大きな問題として堆肥化工程における期間中に、アンモニアを多量に含む蒸発水によってアンモニアを構成する窒素元素の養分の散出が起こり、窒素、リン酸、カリウムの肥料の3元素の元素バランスの悪い肥料が生産されることであった。しかして特に鶏糞の肥料はその養分バランスの悪さ故価値の低い肥料として扱われ、低価格の取引に甘んじていた。そのため養鶏農家は鶏糞の処理において経済的に苦労し、養鶏業においてトータル的に見た生産性に苦心してきた。
【0009】
一方十分に醗酵の過程が完了せず、多くの有機物を含んでいるまま肥料として土壌中に施肥した場合は、多くの成育阻害を起こす要因となっていた。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、短期間のうちに、本発明の実施例においては約1日で堆肥化工程を完了させるものである。それによって設備費及びランニング費用の削減と、アンモニアとして失われる窒素分の減少を食い止めることのよって、肥料の養分元素バランスの不均衡化の防止を実用化ならしめ、かつ品質を均一に、又生産を定量的且つ安定的に執り行え、不要なる有機成分が、生産された肥料中に残留することのないようにならしめる方法を提供するとともに、その実施例を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
しかして本発明において用いられる装置の特徴は、内部に回転羽根を有する匡体と、その匡体の外面より匡体を抱え込むようにして、通電することにより遠赤を発生させるシートを接合し、内部に発生する気体を外部に放出するための気体流出管の管路中にオゾン、あるいは活性炭、または光触媒等の手段によって気体中に含まれる悪臭を脱臭するための装置を設ける。
【0012】
また匡体の内部に必要に応じて遠赤等の熱エネルギーを発生させる遠赤発生手段を設ける。また必要量の空気を内部に送り込む空気供給装置を設ける。
【0013】
また匡体内部に内部温度を測定するための温度計を設ける。
【0014】
さらに本発明の特徴としてそれ自体から遠赤外線を発生することのできるケイ素を主成分とする果粒状の多孔質焼結セラミックに、単位体積当たり醗酵菌数の特に多い枯草菌を含浸させて構成される醗酵促進物を本装置稼働時匡体内部に添加することである。又鶏糞の水分調整剤として乾燥有機植物本発明においては籾ガラを共に投入し水分率を60〜70%の醗酵しやすい水分率に調整する。
【実施例】
【0015】
本発明に用いられる装置の一実施例を図面と共に説明する。
【0016】
図面1に基ずいて説明する。匡体1の外壁面に遠赤発生シート2を接合し、且つ外部駆動源5によって任意の回転数で回動させることが出来る軸3に撹拌のための羽根4を設けた撹拌装置を設ける。
【0017】
匡体1の内部には遠赤発生ヒーター6及び内部温度計測用温度計本発明の場合非接触温度計10及び空気供給装置11を設ける。
【0018】
又匡体1の上部には本装置を稼働させた時、匡体内部において醗酵工程が進捗するにつれて発生する醗酵ガスの外部への排出のための排出導管9を設ける。
また排出導管9の途中に醗酵ガスの臭気を除去するための脱臭装置7を設ける。
脱集装置7はオゾンにより臭気を分解させる方式の物や、活性炭等の物質に吸着させる方式の物、または光触媒によって分解させる方式の物や、水洗式の物等装置の規模またはその他の条件等によって決定する。
【0019】
一方装置の稼働中に匡体1の内部の温度が醗酵熱その他の影響によって設定温度以上に上昇した場合に、内部の温度を下げるための冷却ファン8を匡体1の上部に設け内部の温度を必要により下げる。又空気供給装置11は醗酵菌が好気性菌であるため必要量の空気を供給できるように設ける。
【0020】
本発明の装置の構成は以上のごとくにより構成される。
【本装置による堆肥の製造方法の実施例】
【0021】
而して本発明の装置において堆肥を製造する場合、以下の方法によって執り行う。例えば鶏糞を堆肥化する場合、匡体1の内部に投入する鶏糞の水分率が60〜70%の範囲内における醗酵が最も進む水分率に調整するために、籾ガラと鶏糞を投入し、撹拌しつつ枯草菌を含浸させた醗酵促進物を投入し撹拌する。
【0022】
鶏糞、籾ガラ、枯草菌を含浸させた多孔質の焼結セラミックを共に混ぜながら撹拌しつつ、遠赤発生シートに電流を流し、シートを加熱していく。
シートが熱されて匡体1の中の鶏糞、籾ガラ、醗酵促進物の混合物の温度が上昇してくると、醗酵を掌る枯草菌が活発に活動し始め鶏糞の醗酵分解が促進され此の時鶏糞が堆肥化してゆく。醗酵が促進され枯草菌によって鶏糞の中の有機物が分解されると残渣として鶏糞の堆肥が残る。
【0023】
この鶏糞の醗酵による堆肥化工程において匡体1の外面の遠赤発生シート2より発生し、匡体1の内部に向けて照射される遠赤外線の中の特に1〜30ミクロンの波長の中に含まれる成育波長の遠赤外線によって、枯草菌が特に活発に活動し短時間のうちに醗酵分解工程を完了しうることが出来ることが判明した。
またこの枯草菌は多孔質の焼結セラミックの微小抗の中に棲みついている故常に焼結セラミックより放射される遠赤外線のエネルギーによって活性化されていることにより常に活動力、即ち有機物を醗酵により分解する能力が優れている物である。
【0024】
これによって最新技術によっても鶏糞の醗酵分解による堆肥化は10〜2週間程度日数がかかっていたが、本発明によれば飛躍的な醗酵分解能力を有する枯草菌と、なお且つその枯草菌の活動能力を飛躍的に向上させることが出来るための成育波長を含む遠赤外線エネルギーを、枯草菌に与えることによって成し得ることが出来た。
【0025】
本発明において特に重要な事象は幾多の実験によって、枯草菌に決められた条件のもとで成育波長を有する遠赤外線を照射しエネルギーを与えると、その醗酵分解作用の能力が飛躍的に向上するということを見出したことである。
【0026】
この方法による手段を用いて本発明を構成し、本方法を用いて鶏糞の醗酵分解による堆肥化を執り行えば従来10日〜2週間程度掛かっていた鶏糞の堆肥化が1日(24時間)程度の短時間の中で行いうることが出来るものである。
【0027】
また匡体1内の温度が醗酵や他の条件によってある設定温度以上に上昇すると温度計10によって感知しファン8によって内部の冷却が行われる。また逆に冬場又は低温度地域においては内部の温度が上昇しにくい。その場合は遠赤発生ヒーター6によって匡体1の内部に熱エネルギーを与えて内部温度を上昇させる。
【0028】
一方匡体1の内部において醗酵分解工程が進んで行く時醗酵によるガスが発生する。それを外部に排出する時臭気が環境に悪影響を及ぼさないように、臭気排出管の管路内に脱臭装置7を設ける。該脱臭装置はオゾンを用いたものや、吸着剤を用いたもの、または光触媒等適宜選定した物を装置の中に組み込むこととする。又醗酵を掌る枯草菌は好気性菌であるため外部より適宜空気を導入して酸素を補給する。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、家畜の糞尿本発明の実施例においては鶏糞の堆肥化においてその堆肥化までに掛かる日、時間を著しく短縮し前記したもろもろの諸問題を解決することが出来るものである。即ち堆肥化の時間を著しく短縮することによって堆肥化工程においてアンモニアの気化ガスとして損なわれる窒素分を留保することが出来ることによって、鶏糞の堆肥中の窒素、リン酸、カリウムの配合比率を理想比率に近ずけることが出来る。その結果鶏糞堆肥の肥料としての価値が飛躍的に向上する。
【0030】
また極短時間において堆肥化出来るため従来の設備コストに比べて大幅に下げることが出来る。また設備面積も従来の10分の1〜20分の1になる。
【0031】
又臭いを脱臭するにおいて廉価な設備費と安価な維持費にて執り行うことが出来るため環境にとってよりよい装置となりうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の側面モデル図
【符号の説明】
1. 匡体
2. 遠赤発生シート
3. 軸
4. 羽根
5. 駆動源
6. 遠赤発生ヒーター
7. 脱臭装置
8. ファン
9. 導管
10. 温度計
11. 空気供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
匡体内に外部回転動力源により所望する回転数にて回動する回転爪を有する回転軸と、該匡体を外部より抱え込むように張り付けた1〜30ミクロンの成育波長を含有する遠赤外線を放射するシートとにより構成される醗酵槽と、該醗酵槽にケイ素を主成分とする果粒状の多孔質焼結セラミックに枯草菌を含浸させた醗酵促進物と籾ガラを添加した家畜の糞尿を混合して投入し、枯草菌の醗酵作用によって家畜の糞尿を堆肥化せしめることを特徴とする家畜の糞、尿の堆肥化装置及び方法。
【請求項2】
請求項1により構成される匡体の内部に遠赤外線を放射させる遠赤外線放射ヒーターを設けて構成される家畜の糞、尿の堆肥化装置。
【請求項3】
請求項1に記載した匡体内に温度計を設け遠赤外線の放射熱と、時間の経過とともに醗酵促進による醗酵熱によって変化する匡体内部の温度を、所望する温度に制御するための温度測定装置と、温度制御装置を有する家畜の糞、尿の堆肥化装置。
【請求項4】
請求項1に記載した匡体内に好気性菌のより活発なる醗酵促進のために、大気中に含まれる酸素を供給するための空気供給量を、任意に制御することのできる空気供給装置を設けた家畜の糞、尿の堆肥化装置。
【請求項5】
請求項1に記載した匡体内より内部の気体を排出するための管路にオゾン、または臭気吸着体の手段によって臭気を除去する臭気除去装置を設けた家畜の糞、尿の堆肥化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−43824(P2013−43824A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197636(P2011−197636)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(593017119)
【出願人】(596035293)
【Fターム(参考)】