説明

家禽用飼料及び家禽の飼育方法

【課題】家禽の筋胃が良好に発達すると共に敷料改善効果も得られる、コーンコブミール配合家禽用飼料等を提供する。
【解決手段】コーンコブミールが、該コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して、0.5〜10重量部配合されている。コーンコブミールは、発酵等の処理をせず、かつ栄養素添加物を付着させずに、粉砕したそのままの状態で配合される。特に、コーンコブミールの配合量は、コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して0.5〜7重量部とすることが好ましい。コーンコブミールの粒径は1〜6mmが好ましい。コーンコブ配合飼料は、クランブル状又はペレット状とすることが好ましい。また、7日齢以降の家禽に給与し、加齢と共にコーンコブミールの配合量を増量することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーンコブミールを有効利用した家禽用飼料及び家禽の飼育方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
コーンは穂軸(コーンコブ)とその外周の子実とからなる。コーンコブはコーン子実1トン当り約180kg得られ、資源としては膨大な量になる。しかし、子実は良好な栄養価を有しており主として食用に供されるが、コーンコブには殆ど栄養価が無い。そのため、コーンコブはトウモロコシ子実を収穫する際に畑に残され、コンバインで押しつぶされて廃棄されることが多い。種子用雌穂を種子工場で脱粒した際やスイートコーン製造工場等で発生した残渣であるコーンコブも、一般的には産業廃棄物として廃棄されているのが現状であり、廃棄コストが嵩むという問題がある。一部では、フルフラールとキシロースの原料とされたり、粗く粉砕したコーンコブミールを、養牛用の寝わら、作物栽培時のマルチング、土壌改良剤、きのこ栽培の培地として利用されることもある。また、コーンコブは吸水性や吸油性を有することから、微粉砕したコーンコブミールを水面上に浮遊する油の回収などにも利用したり、その他接着剤、コーキング剤、各種プラスチックの増量剤として利用されることもある。しかし、これらの利用は多量に発生するコーンコブのごく一部であって、さらなる有効利用が求められている。例えば家禽の飼育において給餌される家禽用飼料に配合すれば、コーンコブミールの有効利用に大きく貢献できるであろう。
【0003】
ところが、家禽の飼育においても、コーンの子実は家禽用飼料として多用されるが、コーンコブは上述のように栄養価が殆ど無いことから、基本的には栄養源となる餌として飼料へ配合されることは無い。したがって、家禽用飼料に配合されるとしても、栄養源以外の目的で配合される。例えば、コリン供給源としての塩化コリンや、有機ミネラルなどの栄養素を飼料添加物として家禽に供与するために、当該栄養素添加物を付着させる(担持させる)基材として飼料に配合されるのが一般的である。例えば塩化コリンを家禽に供与する場合、飼料添加物として添加する必要のあるコリンは最大でも400mg/kg程度であることから、コーンコブミールの配合量は多くてもせいぜい0.1重量%程度である。なお、コリン(Choline)は、循環器系と脳の機能、及び細胞膜の構成と補修に不可欠な栄養素である。
【0004】
一方、特許文献1では、家畜用飼料添加物における抗生物質の希釈剤となる賦形剤としてコーンコブミールを使用できることが開示されており、当該家畜用飼料添加物を、鶏を含む家畜用飼料へ添加している。家畜用飼料添加物における抗生物質と賦形剤との混合比率は、賦形剤100重量部に対して抗生物質5〜100重量部であり、当該家畜用飼料添加物は、飼料100重量部に対して0.0001〜0.03重量部添加される。特許文献2や特許文献3には、コーンコブミールを家禽用飼料に配合することができると記載されているが、具体的配合量の記載は無く、上記理由から実際には従来と同様に栄養素添加物の基材として使用できる程度と考えられる。
【0005】
また、きのこ栽培の培地としてコーンコブミールを使用した廃培地を、乳酸菌等によって発酵処理して飼料化し、菌体利用飼料として鶏に給与する試みとして非特許文献1がある。非特許文献1では、菌体利用飼料は嗜好性が劣り、かつ栄養価が低いことから産卵率も低下する結果となっている。また、コーンコブミールを牛の反芻胃液で発酵させたうえで産卵鶏に給与する試みとして、非特許文献2もある。非特許文献2では、発酵コーンコブミールを飼料中へ20%以下の割合で配合しているが、当該発酵コーンコブミール配合飼料では、卵黄色は好転したが、一日当たりの産卵数が減少する結果となっている。
【0006】
ところで、鶏の筋胃(砂嚢とも呼ばれる)は、砂肝として食される商材である。したがって、1羽あたりの筋胃を大きくできれば、それだけ砂肝の生産性も向上することになる。鶏は歯を持っていないので、クチバシから摂取した食物(飼料)を筋胃の収縮運動によって磨砕し、消化する。そのため、筋胃はよく使用されればされるほど発達することになるが、これには筋胃中で効率良く飼料を磨粉するためのグリット(磨砕材)の影響も大きい。グリットは、家禽が地上より自由に摂取した砂礫であり、例えばボールミル中に被磨砕物と共に投入される小球と同じ機能を果たす。自由に放し飼いしている家禽が、飼料とは別に小石や砂などの比較的硬い物を摂取するのは、筋胃中で効率良く飼料を磨砕するためである。
【0007】
鶏を代表とする家禽は、ケージで飼育する方法(以下、ケージ飼いと称す)と、コンクリート等の床に直接放し飼いにする方法(以下、平飼いと称す)とに大別される。平飼いでは、家禽舎内の床面上におがくず等の敷料を敷き詰め、この敷料の上において一定羽数が、雛から成長して出荷されるまでの一定期間を過ごす。ケージ飼いでは、敷料のようなものが使用されることはない。したがって、平飼いの家禽は飼料とは別に敷料であるおがくず等をグリットとして摂取することができるが、ケージ飼いではグリットを摂取することはできない。したがって、ケージ飼いにおいては平飼いと比べると筋胃が発達し難い環境にある。
【0008】
一方、ケージ飼いでは、ケージ下に堆積した糞尿を家禽舎外へ搬出するため、家禽舎内は比較的良好な空気(環境)を保つことが可能である。これに対し平飼いの敷料は、家禽の糞尿がコンクリート床にこびりつかないようにする、床面を砂状にして自然界で生活する環境に近づける、床や家禽舎内の保温、などを目的として使用されるが、家禽を雛の状態で導入してから出荷するまでの一連の飼育期間内に交換されることは殆ど無く、同じ敷料を敷設したままであることが一般的である。したがって、家禽は糞尿を敷料の上に直接排泄し、家禽は自らが排泄した糞尿の上で一生を過ごすこととなる。家禽の糞尿が排泄された直後は水分が高いため敷料が湿りやすいが、家禽がその上に座って暖め、歩行や運動等による攪拌、家禽舎の換気、及び鶏糞自体の発酵等によって水分を失い、次第に乾燥していく。充分に乾燥されれば、良質な砂状の敷料が形成される。
【0009】
しかし、実際には乾燥が追いつかず、湿った糞尿が次々と堆積して水分が高いベトベトした板状ないしブロック状の敷料になってしまうことが多い。このような状態を床湿りという。一旦このような板状ないしブロック状の敷料が形成されてしまうと、密度が高く空隙率が低いためなかなか乾燥しない。床湿りは、冬季などに家禽舎内が低温になること、湿った部分を避けるように家禽が寄り集まって床面全体が家禽によって充分に暖められないこと、空調が不適切(換気が不十分)であること、などによって起こりやすい。床湿りは、堆積する家禽の糞尿の質によっても影響を受ける。下痢便や水様便、下痢ではないが水分を多く含む糞、比重が重く嵩の少ない糞などが堆積し続けた場合は、床湿りの状態になりやすくなる。その他、家禽舎の断熱・気密性の不足、雨漏りや結露、飲料用給水設備からの水漏れやこれらの調整不良なども床湿りの発生要因となる。
【0010】
さらに近年では、家禽の飼育(特にブロイラー養鶏)において、生産性を高めるため飼育密度が高い環境で家禽を急速に発育させている。急速に発育するため短期間に大量の飼料及び水を摂取することで多量の糞尿を排泄すると共に、飼育密度が高いことから全体的な糞尿の排泄量も多量になる。そのため、従来と比して一定期間中に単位面積あたりに排泄される家禽の糞尿量、すなわち単位面積あたりに散布される水分が多いので、家禽の体温、家禽による撹拌、家禽舎の空調、糞尿の発酵等による乾燥が追いつかず、深刻な床湿り状態を呈する。また、家禽の急速な発育を達成して高収益を上げるために、生産者は家禽へ高密度飼料を給餌している。高密度飼料とは、エネルギー価やタンパク質含有量が高い飼料であり、必然的に繊維質の含有量が低い。このような高密度飼料は飼料要求率を高める効果があるが、水分が多く密度の高い糞を作り、敷料が乾き難くなる。
【0011】
なお、一般的に家禽の生産は、上述の如く多数を群単位で飼育するため、各種の細菌、ウイルス、各種の寄生虫の感染から守るために、法で定められた安全な方法により、抗生物質や抗菌製剤を飼料添加物や動物用医薬として投与して飼育している。しかし、消費市場の一部では安心・安全・健康志向から、抗生物質や抗菌製剤を投与しないで飼育する試みが行われている。現在、日本食鳥協会の制定した「鶏肉表示のガイドライン」により、全飼育期間にわたり抗生物質や抗菌製剤を投与しないで飼育したものは「特別飼育鶏」と定義される。特別飼育鶏は抗生物質・抗菌製剤を投与しないため、腸管内の細菌やコクシジウムが多くなり一般的に生産性が悪い。更に、後述するが、コクシジウムは湿った敷料中で感染力を獲得すること、ウェルシュ菌も湿った敷料中に存在しやすいなどの理由から、特別飼育鶏の生産性は一般的な抗生物質・抗菌製剤を使用した飼育と比較して、より一層敷料の質による影響を受けやすい。
【0012】
床湿り状態では、次のような種々の問題が生じる。第1に、家禽の生産性低下及び疾病罹患の問題がある。具体的には、家禽は湿った場所を避けるように集まる傾向があるため、家禽の実質的な生活スペースが制限されてしまい、飼料摂取や飲水といった発育のために必要な行動が阻害される。また、湿った敷料によって家禽の身体が冷され、下痢を起こし易くなる。固く湿った敷料の上を歩き回ることで、敷料と接触している趾部裏および飛節後部の皮膚が接触性皮膚炎を起こす。通常これを趾部裏の皮膚炎(Foot pad dermatitis,FPD)と呼ぶ。皮膚の角化亢進及び壊死が起こり、重症例では、皮下織の炎症を伴う潰瘍が起こる。また、飛節の皮膚が暗褐色に変色するHockburns(HB)と呼ばれる症状も敷料中の水分が関連し、重症例ではかさぶたが見られる。FPDやHBなどの趾瘤症は、重症例では家禽に痛みを与え、歩行の異常をもたらすもので、家禽の福祉を判断する上で重要な要素となる。趾部は食用やスープ用等に利用され、中国や香港を中心にアジア諸国へも輸出・販売される重要な商材であり、趾部裏の病変は趾部の格付けを低下させたり廃棄の原因ともなったりする。また、家禽の歩行能力が低下し、健全な発育にも悪影響を及ぼす。更に、FPDはオス種鶏の場合交尾行動を妨げるため、受精率、孵化率の低下につながる。種鶏及び平飼いの採卵鶏は巣箱ではなく直接床に産卵する事もあり、巣外卵として衛生的に問題とされているが、床が湿っている場合は巣外卵が重度に汚染されてしまうので特に問題である。家禽は胸骨に体重を乗せて休息するが、床湿りにより固くなった敷料の上で休息し続けた場合は、後胸骨部の腹方に胸骨滑液包(Sternal bursa)が形成される。胸骨滑液包が液性成分を貯留して嚢胞状に拡張した場合は、「胸部水疱」あるいは「胸骨滑液包炎(Keel bursitis、通称胸ダコ)」と呼ばれ、胸肉の商品化率を著しく低下させる。床湿り状態が長期間続けば、家禽の皮膚は毛胞炎(毛穴の炎症)を引き起こしやすくなる。これは壊疽性皮膚炎を誘発し、食鳥処理場での廃棄や消費者からの忌避の要因となる。湿った糞尿は家禽の羽毛にこびりつく。羽毛にこびりついた糞尿は、そのまま固まって剥がれ難くなり、食鳥処理場での脱羽工程で脱羽がされにくくなると共に、脱羽工程を家禽の糞尿で著しく汚染する。当然、そのような工程で処理された食肉は細菌数が多くなり衛生的とは言い難い。湿った敷料の中では、アイメリア(Eimeria)属原虫のオーシストが成熟して感染力を持つ。コクシジウム症は、アイメリア属原虫オーシストの経口的摂取によって感染し、家禽の疾病の中で最も被害が大きいものの一つであり、下痢、食欲不振、体重減少等の種々の症状が発症し、死亡も認められる。オーシストの成熟には敷料に25%以上の水分含有率が必要と言われ、湿った敷料ではコクシジウム症の大発生が確認される。また、湿った敷料中は細菌の増殖に好適な環境となり、高レベルのClostridium perfringens(ウェルシュ菌)が感染力を持ち、家禽が経口的に摂取することで小腸内で増殖し、頻繁に壊死性腸炎を引き起こす。壊死性腸炎を発症すると家禽は食欲が減退し、元気消失して死亡することもある。また、湿った敷料は有毒なカビの増殖をも助長する。敷料にカビが異常に発生し、家禽がその胞子を吸入して真菌症に感染する。真菌症に感染すると、家禽は元気消沈、呼吸症状、起立不能などを示し、最終的に集団的な急死に至ることもある。さらに、湿った敷料は内部で嫌気性発酵が行われるため、アンモニア等の強い臭気を発生して家禽舎内の空気の質を悪化させる。アンモニアは家禽にとって有害であり、肺に障害を与え、呼吸器病に対する感受性が増加する。50ppmを越えるアンモニアは、家禽の角膜炎や呼吸のストレスを起こす。
【0013】
第2に、環境問題がある。湿った敷料から生じる臭気は人間にとっても大きな苦痛であるため、管理者(生産者)は家禽舎内の空気を無理に入れ替えることを試み、結果的に家禽を寒がらせ、家禽の発育や健康を損なうという悪循環に陥る。雛が小さいうちや冬季は家禽舎内を暖房していることが多いが、暖房しながら無理に換気を行えば燃料の無駄になる。また、臭いの強い排気は近隣住民からの悪臭の苦情等、公害問題に発展する。
【0014】
第3に、敷料処理の問題がある。糞尿を含む敷料は、家禽の出荷後に次の飼育のため家禽舎内から排除される。その後、家禽舎には、水洗消毒後、新しい敷料が再度敷き詰められる。使用済みの敷料は、ショベルローダーなどで集めてダンプカー等に積載し、堆肥化施設や焼却場等へ運ばれる。この際、湿った敷料は重量が重くて扱いにくいと共に、臭気が強いため搬出、運送の際にも公害問題になる。また、これらの施設へ運ばれた敷料は発酵処理や焼却処理などが行われるが、いずれも水分含有率が多く空隙率が低い場合は発酵又は焼却され難い。すなわち、敷料を焼却する場合は、燃料費がかかると共に煙や臭いの問題も発生する。発酵させて堆肥化するには、堆肥化に長時間を要すると共に、悪臭の問題が長期間続く。敷料を焼却してその熱を利用し、ボイラーで水を温め、家禽舎の床暖房に温水を使用する事例もあるが、湿った敷料はなかなか燃えずに温度が上がらず、飼育中の家禽を充分暖められず、更に湿った敷料が形成されるという悪循環に陥る。湿った敷料は燃焼時に白煙が大量に発生するため、公害問題にも発展する。
【0015】
このように、床湿りは家禽の平飼いにとって忌々しき問題であり、飼育者はこれを避けるため、水分調製の目的で副資材の追加や攪拌の作業に日夜追われているのが現状である。副資材とは、吸水性・保水性に富み、家畜糞と混合した場合にその通気性が高められるものであり、例えば稲わら、麦稈、おがくず、バークなどの有機質資材や、パーライト、ゼオライトなどの無機質資材が使用される。しかし、一旦床湿りを起こした家禽舎へ新たな副資材を持ち込んで攪拌しても、多大な労力を要する割に完全な乾燥化は不可能なので、むしろ敷料の総量を増やすばかりで効果的な方法とはいえない。このような理由から、床湿りは家禽の生産性、ひいては収益性を左右する大問題に発展しているといえる。高い飼育密度や急速な発育、特別飼育鶏の普及など、家禽産業における床湿りへの圧力は高まる一方で、飼料の面からの配慮は残念ながらほとんどなされておらず、むしろそれを助長するような飼料が選択されているのが現状である。家禽飼育現場では、新たな副資材を追加混合するなどの労力を要せず、生産性も損なわずに敷料の質を改善できる方法が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平5−260905号公報
【特許文献2】特開2008−237192号公報
【特許文献3】特開2005−185262号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】「産卵鶏に対する菌体利用飼料、腐植およびヒドロキシル・イオン水給与の影響」 山上義久ら 埼玉県養鶏試験場研究報告 No.25 36〜45頁 1991年10月
【非特許文献2】‘Replacement of maize by rumen filtrate fermented corncob in layerdiets’ ADEYEMI O Aら Bioresour Technol vol90 No.2 P221-224 2003.11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献1から特許文献3には、家禽用飼料にコーンコブミールを配合してもよいことが開示されてはいるが、具体的配合条件等は記載されていない。上述のように、コーンコブミールには殆ど栄養価が無く飼料全体の栄養価が希釈されることを鑑みれば、実際の配合量は極僅かと考えられる。また、コーンコブミール自体が特別な作用機能を奏する訳ではないので、有効に利用されているとは言い難い。一方、非特許文献1や非特許文献2では、コーンコブミール自体に着目したものではあるが、発酵処理工程が煩雑であると共に、発酵処理コストも必要となる。また、発酵処理したコーンコブミールは、グリットとして機能し得ない。一方で、上述のように鶏の筋胃増大すなわち砂肝の生産性向上、及び平飼いにおける敷料の改善は従来からの課題である。
【0019】
そこで、本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意検討の結果、コーンコブミールを有効利用して家禽に給与することで、成育面において大きな問題なく家禽の筋胃が良好に発達し、かつ高い敷料改善効果も得られることを知見し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は上記課題を解決するものであって、成育面において大きな問題なく家禽の筋胃が良好に発達すると共に敷料改善効果も得られるコーンコブミールの配合された家禽用飼料、及びこれを用いた家禽の飼育方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を達成するために、次のような手段が提案される。
(1)コーンコブミールが、発酵等の処理をせず、かつ栄養素添加物を付着させずに、粉砕したそのままの状態で、コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して、0.5〜10重量部配合されている、家禽用飼料。
(2)前記コーンコブミールの粒径が1〜6mmである、(1)に記載の家禽用飼料。
(3)クランブル状又はペレット状である、(1)または(2)に記載の家禽用飼料。
(4)平飼い家禽舎で飼育される家禽に給与される、(1)ないし(3)のいずれかに記載の家禽用飼料。
(5)(1)ないし(4)のいずれかに記載の家禽用飼料を家禽に給与する、家禽の飼育方法。
(6)7日齢以降の家禽に給与する、(5)に記載の家禽の飼育方法。
(7)加齢と共にコーンコブミールの配合量を増量する、(5)または(6)に記載の家禽の飼育方法。
(8)(1)ないし(4)のいずれかに記載の家禽用飼料を、平飼い家禽舎において家禽に給与する、敷料の質の改善方法。
(9)前記コーンコブミールの配合量を、コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して8〜10重量部とする、(8)に記載の敷料の質の改善方法。
(10)前記コーンコブミールの配合量を、コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して0.5〜7重量部とする、(8)に記載の敷料の質の改善方法。
(11)(1)ないし(4)のいずれかに記載の家禽用飼料を家禽に給与する、砂肝の生産方法。
(12)前記コーンコブミールの配合量を、コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して0.5〜7重量部とする、(11)に記載の砂肝の生産方法。
(13)前記家禽は、ケージ飼いにて飼育されている、(11)または(12)に記載の砂肝の生産方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の家禽用飼料によれば、コーンコブミールが配合されていることで、当該コーンコブミールがグリットの役割を果たし、飼料の消化効率が向上する。したがって、当該コーンコブミール配合家禽用飼料を家禽に給与する家禽の飼育方法によれば、家禽の筋胃が良好に発達するので、砂肝の生産性が向上する。また、成育面に大きな悪影響を及ぼすこともない。同時に、鶏糞の水分量が低減することから、平飼い家禽舎において家禽に給与すれば、敷料の質も改善できる。敷料の質が改善されれば、趾部の罹患率も低減するので、結果として商材となる趾部の歩留まりも向上する。
【0022】
ここで、敷料の「質」とは、その湿度・形状・固さ・比重・におい等を指し、「質が良い」とは乾燥して砂状にサラサラしている、軟らかく空隙率が高い、比重が軽くにおいも少ない状態である。逆に、「質が悪い」とは湿ってベタベタとしており、板状ないしブロック状に固まって比重が重く、においの強い状態である。
【0023】
また、コーンコブミールがグリットとして機能することから、平飼い家禽舎において飼育される家禽は、自身の糞尿などによって汚染され細菌やバクテリアが増殖したおがくず等の敷料を摂取することが少なくなるので、疾病罹患も減少し、家禽の生産性や鶏卵の生産性も向上する。一方、従来はグリットを摂取することができなかったケージ飼いにおいても、グリットとして機能するコーンコブミールを摂取できることで、砂肝の生産性が向上するメリットは平飼いよりも大きい。
【0024】
このように、本発明によれば、従来は殆どが廃棄されていたコーンコブを、栄養価添加物含浸用の基材としてではなく、直接有効利用できる。このとき、コーンコブを発酵等させる必要もないので、余分な手間やコストが掛かる心配も無い。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、コーンから子実を取り除いた残渣であるコーンコブをコーンコブミールとした状態で家禽用飼料に配合して家禽に給与する。なお、本発明では、コーンコブミールは発酵等の処理をせず、かつ栄養素添加物も含浸させずに、粉砕したそのままの状態で飼料へ配合する。又は、コーンコブミールを飼料とは別に単独で給与することもできる。コーンとしては、代表的にはスイートコーン(甘味種)が挙げられるが、他にもポップコーン(爆裂種)、デントコーン(馬歯種)、フリントコーン(硬粒種)、ワキシーコーン(もち種)、ソフトコーン(軟粒種)、ポッドコーン、ジャイアントコーン、サニーショコラ、白モチトウモロコシ、黄モチトウモロコシ、紫モチトウモロコシ、黒モチトウモロコシなどを挙げられる。これらのコーンは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合使用してもよい。
【0026】
家禽用飼料は、その形状からマッシュ飼料、ペレット飼料、クランブル飼料の3種に大別される。マッシュ飼料とは、現在最も普及している配合飼料の形態であり、穀類を粗く粉砕したものと粉状の原料を混ぜ合わせたものである。ペレット飼料とは、微粉状の飼料に水蒸気等により水分を加えて加熱調湿後、成型機で円柱状に加圧成型した固形飼料である。クランブル飼料とは、ペレットに成型した飼料を食べ易いようにクランブラーで粗砕きした、粒度の揃った飼料である。また、クランブル飼料とマッシュ飼料とを混ぜ合わせたものもある。クランブル飼料やペレット飼料に使用する成型機としては、ペレットミル、エキスパンダー等を使用できる。
【0027】
家禽としては、代表的には鶏が挙げられるが、敷料を敷き詰めた状態で平飼いされるか、又はケージ内で飼育される家禽であれば、ウズラ、七面鳥、アヒル、ガチョウも含まれる。鶏とはニワトリ全般を指し、肉用鶏(ブロイラー)、採卵鶏(レイヤー)、肉用種鶏、卵用種鶏などがある。
【0028】
コーンコブミールは、コーンの穂軸であるコーンコブを粉砕したものである。本発明における「配合」とは、成型後の飼料にコーンコブミールを単に追加しただけで飼料とコーンコブミールとを簡単に区別できる場合と、粉状の飼料にコーンコブミールが添加されて良好に混合され、飼料とコーンコブミールとを簡単には区別し難い場合とを含む。コーンコブミールは、粉砕していないコーンコブの状態と比べて表面積が大きくなり、吸湿性が高まるため敷料改善効果も向上する。
【0029】
コーンコブミールの粒径は、家禽が摂取可能な大きさであればよい。目安としては、3.5メッシュ(目開き約6mm)パス程度とする。粒径がこの程度の大きさであれば、若日齢の家禽でも良好にコーンコブミールを摂取できる。一方、あまり細かく粉砕すると敷料改善効果や筋胃増大効果が低下するので、家禽が摂取可能な大きさの範囲内で、できる限り粗粉砕に留めておくほうが好ましい。具体的な粒径としては、1〜6mmの範囲が好ましい。コーンコブミールの粒径がこの範囲であれば、発育成績を悪化させずに、効果的に敷料改善及び筋胃増大を図れる。また、若日齢であればある程度細かくし、日齢を重ねるに応じて粒径を大きくしてもよい。粗粉砕であれば、比重が小さいまま給与できると共に敷料の空隙も大きくなって敷料改善効果も高くなる。さらに、家禽の筋胃が活発化されて発達するので、砂肝の歩留りが高くなる点でも好ましい。
【0030】
コーンコブミールは、コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して0.5〜10重量部配合することが好ましい。より好ましくは1〜7重量部であり、さらに好ましくは2〜6重量部である。コーンコブミールの配合量が0.5重量部より少ないと、敷料の質の改善(以下、単に敷料の改善ということがある)効果や筋胃の増大効果が得られ難い。一方、コーンコブミールの配合量が10重量部を超えて配合されると、飼料の嵩が増大して飼料の運送効率が低下するので、実用面で問題がある。コーンコブミールの配合量が多いほど、これに伴い敷料の質の改善効果や筋胃の増大効果は高くなる。反面、コーンコブミールを配合することで、飼料の栄養成分が希釈されてしまう。飼料の栄養成分が希釈されると、飼料要求率が悪化すると共に、家禽が充分な栄養を摂取できずに発育成績すなわち生産性を損なう。しかし、コーンコブミールの配合量が7重量部以下であれば、このような問題を回避できる。これは、筋胃内でコーンコブミールがグリットの役割を果たし、飼料を効率よく磨砕することで、未消化のまま排泄される事になる飼料が減少するからと考えられる。つまり、コーンコブミールによって飼料の消化率が向上することにより飼料が希釈される点が補われる。したがって、発育成績をある程度犠牲にしてでも「大きな砂肝が欲しい」「乾いた敷料が欲しい」という要望が強い場合は、コーンコブミールの配合量をコーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して8〜10重量部とし、発育成績を下げることなく砂肝増大と敷料改善とを図る場合は、コーンコブミールの配合量を6重量部以下とし、その中間がコーンコブミールの配合量6〜8重量部(好ましくは7重量部程度)である。なお、発育成績に加えて輸送効率も犠牲にするか、又は輸送の必要が無ければ、10重量部を超えて配合してもよい。
【0031】
また、筋胃内に貯留されるコーンコブミールは、筋胃から十二指腸への消化物の流入を調整する能力を発達させ、筋胃と十二指腸の間で行われる逆蠕動を効率的に行い、完全に磨砕された飼料から徐々に腸管へ移行する事により、消化吸収が効率よく行われる点も影響していると考えられる。このように、コーンコブミールを摂取させることにより、飼料の消化吸収が促進され、更に飼料の未消化部分が減少することで消化管下部での微生物による異常発酵が抑えられるため、健全な腸内環境が得られる。このことは、特別飼育を実施するうえでのメリットが非常に高い。
【0032】
コーンコブミールの配合量は、雛の状態から出荷まで一貫して同じ配合量としても良いが、家禽の成長段階に応じて、コーンコブミールの配合量を順次段階的に増量させながら給与しても良い。筋胃の発達していない雛の状態では、コーンコブミールの粉砕機能も未成熟であり、飼料を選り食いしてコーンコブミールが給餌器に多く残存してしまう傾向が有るからである。一般的には、日齢が進むにつれて飼料摂取量も多くなるので、これに伴いコーンコブミールの摂取量も多くなる。コーンコブミールの配合量を段階的に増量させる目安としては、コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して、例えば7日齢までは0.5〜1重量部程度、7〜14日齢までは1〜2重量部程度、14〜21日齢では2〜4重量部程度、21〜28日齢では3〜5重量部程度、28日齢以降は5重量部以上とすればよい。これはほんの一例であって、コーンコブミールの配合量を順次段階的に増量していれば、具体的条件は特に限定されない。なお、コーンコブミールは全てが均一な粒径ではなく粒径にバラツキがあり、雛は自分の口に合ったサイズから優先的に摂取するので、クチバシの小さな7日齢以前の家禽に給与しても構わない。なお、食用として屠殺する場合、屠殺の数時間〜数日前(例えば12時間〜2日前程度)までにコーンコブミールの給与を中止することが好ましい。屠殺する直前まで給与しても構わないが、砂肝内に残存するコーンコブミールによって、食鳥処理行程において砂肝を切開するカッターの歯が摩耗しやすくなる可能性があるからである。
【0033】
また、季節や気候に応じてコーンコブミールの配合量を変更することも好ましい。例えば、夏と比べて家禽舎内の換気があまりなされず、床が湿りやすい冬季や、湿度の高い梅雨の季節には、飼料に対するコーンコブミールの配合量を比較的多くする。逆に、気温が高く家禽舎内の換気が充分取れていることから床湿りが少ない夏季、若しくは空気が乾燥し始める秋季には、飼料に対するコーンコブミールの配合量を比較的少なくすればよい。この場合、雛の状態から出荷まで一貫して同じ配合量でもよいが、家禽の成長段階に応じて段階的に増量させることとの組み合わせがより好ましい。
【0034】
さらに、床湿りの度合いに応じて適宜配合量を増減させることもできる。例えば、基本的には雛の状態から出荷まで一貫して同じ配合量としながらも、床湿りの程度が軽いか殆ど生じていないような場合は配合量を適宜少なく(例えばコーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して0.5〜1重量部程度)し、逆に床湿りが激しい場合は配合量を適宜多く(例えばコーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して3〜7重量部程度)することもできる。または、敷料が湿りだす飼育前半(全飼育日数の前1/2程度)のみ、若しくは飼育終期まで(全飼育日数の前2/3ないし前3/4程度)のみコーンコブミールを給与し、これにより良好に敷料が乾燥してくる飼育後半(全飼育日数の後1/2程度)若しくは飼育終期以降(全飼育日数の後1/3ないし後1/4程度)はコーンコブミールの給与を停止してもよい。
【0035】
コーンコブミールを配合する飼料自体は、従来から家禽用として使用されている公知の飼料を使用できる。本発明においては、コーンコブミールを各種栄養素を補うことを主目的として配合するものではないので、家禽に必要な各種栄養素(栄養バランス)は、コーンコブミール配合前の飼料自体によって調整しておく。飼料の形態は、マッシュ飼料、クランブル飼料、ペレット飼料、及びこれらの混合飼料、いずれの形状でも構わない。いずれの形状においても、敷料の質が改善すると共に、大きな筋胃が得られる。中でも、クランブル飼料およびペレット飼料が好ましい。マッシュ飼料に比べて、クランブル飼料は雛の餌付け時や幼雛用として、ペレット飼料はある程度大きくなった家禽にとって最適であり、家禽の発育を促し飼料要求率が優れる。これは、クランブル飼料やペレット飼料が家禽にとって丁度食べやすい大きさに加工されているため、家禽は容易に飼料を摂取して短時間に必要量を充足できるからと考えられている。家禽はクチバシで飼料を摂取するため、マッシュ飼料に大量に含まれる粉は食べにくい。クランブル飼料やペレット飼料はその形状を安定化するために、飼料を一旦細かく粉砕したうえで成型される。また、ペレットミルで成型する際にも、ペレットミルのせん断力によって飼料が粉砕される。そのため、粉砕された飼料はそ嚢内で水と混和されて膨軟するだけで微粒子に戻るため、家禽は筋胃で特に飼料を磨砕することなく栄養として利用できる。これは、筋胃が未発達の初生雛にとっては非常に有益であり、マッシュ飼料より格段に餌付きが良く、消化吸収が早い。結果的に初期増体が大きくなり家禽体重の揃いも良くなる。また、クランブル飼料で餌付けすることにより、雛に選り食いさせることなくビタミン、ミネラル、添加アミノ酸、その他飼料添加物等の微量成分を均一に摂取させることが可能となり、結果的に家禽の摂取栄養素に偏りが無くなり発育のバラツキも少なくなる。
【0036】
しかし、家禽にクランブル飼料やペレット飼料を給餌し続けると、筋胃の発育が悪くなるという問題がある。クランブル飼料やペレット飼料を長期間給餌し続けると、飼料要求率は改善されるが、消化管の形態を変え、筋胃の運動が必要無くなり、その結果筋胃の発達が遅れ、食用として屠殺時点では明らかに筋胃が小さくなってしまう。筋胃は砂肝として販売される重要な商材であり、年間を通じて高値で取引されるため、小さくなってしまうのは問題である。また、クランブル飼料やペレット飼料を家禽に給与すると、マッシュ飼料と比して明らかに床が湿りやすくなる。上述の如くクランブル飼料及びペレット飼料はマッシュ飼料を粉砕して成型し、さらにペレットミルのせん断力によっても粉砕されるため、クランブル飼料及びペレット飼料を構成する飼料の粒子が細かくなる。結果的に、ペレット飼料は大変比重が高くなり、これを摂取した家禽が排泄する糞も微粒子で構成されるため、密度が高く板状に固まった乾きにくい敷料となるためである。そのため、ペレット飼料やクランブル飼料は摂取量を増加させて家禽の増体を改善すると共に、飼料要求率を改善する効果が高く飼料としての価値が高いのにも拘らず、あまり普及していないのが現状である。
【0037】
しかし、本発明ではコーンコブミールを飼料に配合することで、飼料の形態を問わず敷料の質を改善できる。すなわち、マッシュ飼料と比べてより床湿りの問題が大きいクランブル飼料やペレット飼料であっても、敷料改善効果が得られる。また、上述のようにクランブル飼料やペレット飼料を給餌して長期間飼育された家禽の筋胃は小さくなるが、コーンコブミールが配合されていることでこれを大幅に改善することができる。このように、従来問題であった床湿りと筋胃の問題を解決しつつ、優れた飼料要求率も得ることができる点で、コーンコブミールの配合対象をクランブル飼料やペレット飼料とすることが好ましい。
【0038】
なお、クランブル飼料やペレット飼料とする場合は、日齢が若い内はクランブル飼料を給餌し、ある程度成長した段階でペレット飼料を給餌する。若齢の雛は、筋胃の発達が未成熟であり、特に孵化後始めて飼料を摂取させる餌付け段階においては、なおさら配合飼料に慣れていない為、予め微粉砕したペレットを粗く砕いた、クランブル飼料を給与する。家禽雛にクランブル飼料を給与すると、雛の餌付きが大幅に改善され、摂取した飼料がスムーズに消化吸収されるため、初期増体が大きくかつ揃いの良い家禽を飼育することができる。また、飼料をより食いさせることなく微量成分(ビタミン、ミネラル、添加アミノ酸等)を均一に摂取させることが可能となり、家禽ひなの発育のバランスが良くなり、体重のバラツキも少なくなる。クランブル飼料からペレット飼料への変更時期としては、日齢14日程度を目安とすればよい。
【0039】
クランブル飼料やペレット飼料へのコーンコブミールの配合タイミングは、成型前後のいずれでも構わない。すなわち、ペレットミル等による成型前にコーンコブミールを配合して、飼料とコーンコブミールとを同時に成型しても良いし、ペレットミル等による成型後にコーンコブミールを配合しても良い。成型前にコーンコブミールを配合して同時に成型する場合は、コーンコブミールもペレットミル等によるせん断力を受けることもある。
【0040】
コーンコブミールを飼料に配合しても、家禽はコーンコブミールを選択的に摂取する。これは、コーンコブミールが家禽にとって食べやすい大きさに粉砕していることに加え、家禽は本能的にコーンコブミールのような硬質物を必要としているためと考えられる。家禽は筋胃を持ち、ここに運ばれた飼料は筋胃の強い収縮運動により砕かれると共に、腺胃から分泌された胃液による消化も行われる。筋胃は歯を持たない鳥類が飼料を砕き、消化を行う重要な器官である。野生もしくは庭先等で自由に飼育した家禽は、筋胃内に砂礫が確認される。これは、飼料の磨砕を効率よく行うため家禽が本能的に取り入れたものである。かつては、グリットと呼ばれる小石を家禽に与えることが行われていたが、給餌システムや食鳥処理の機械化により、これら小石が機械のトラブルや異物混入の原因になることから現在ではほとんど行われていない。したがって、平飼い飼育される家禽は砂礫に替わるものを求め、固くてある程度の大きさのあるものを積極的に摂取しようとする傾向にある。実際、敷料としておがくずやウッドチップ等を使用した場合は、これらをある程度摂取することが、屠殺した家禽の筋胃内にいくらかの木片が存在していることから確認される。しかし、一般的に消毒されることの無い敷料としてのおがくず等を摂取することは不衛生である。しかも、家禽の糞尿が付着した敷料を摂取することは極めて不衛生である。糞尿が付着した敷料を摂取すると、コクシジウムオーシストやウェルシュ菌を経口的に摂取して腸炎を発症するきっかけになりかねない。他に、釘やネジの類も積極的に摂取する傾向にあるため、上記同様異物混入の原因となりやすいといった問題もある。
【0041】
ここで、家禽にコーンコブミールを給与した場合、筋胃の発達と飼料の効率的な磨砕のために選択的にこれらを摂取して筋胃内に貯留する。貯留されたコーンコブミールは筋胃内で繰り返し磨砕されるが、その際に上記グリットの役割を果たし、飼料の消化を大いに促進すると考えられる。このように、家禽はコーンコブミールを積極的に摂取して筋胃内に充分貯留するため、それ以上グリットの役割を持つものの摂取は必要無くなる。コーンコブミールを家禽に給与すれば、敷料に使用したおがくずやウッドチップ等の木片、さらにはネジや釘のような異物を摂取することが無くなるので、これらによって引き起こされるリスクを回避できる。
【0042】
コーンコブミールは筋胃内で磨砕を受けるが、筋胃の磨砕力に抵抗し、かなり長期間筋胃内に滞留する。穂軸を取り巻いている薄皮部分は、磨砕を逃れて完全に原型を失うことなく排泄されるものもある。家禽の糞の中には、粉砕されたコーンコブミールの他に、薄皮部分も多量に含まれているため、嵩の大きな糞となる。嵩が大きいため押し固められてもブロック状ないし板状になり難く、良好な空隙を保ったまま堆積することで、乾燥し易く軟らかい砂状の敷料を形成する。これは、表面積の大きい副資材を家禽の糞尿に良く混合した状態に等しい。家禽は粉砕されたコーンコブミールを腸管内で良く混和した状態で排泄するので、人手を使って家禽舎内に新たな副資材を導入攪拌する必要がない。これにより、作業員の肉体労働の負荷を大幅に低減し、人件費の低減や食肉の安価流通にもつながる。
【0043】
また、敷料の質が改善されることで、次のような利点が得られる。家禽が乾いたところに集中して寄り集まることが回避され、家禽舎内スペースの有効活用率が向上する。これにより、給餌器や給水器へ家禽が集中してアクセスすることが回避され、結果的に飼料摂取量が増加して高い増体を確保できる。湿って固まり凹凸の有る床よりも、乾いた床であれば給餌器や給水器へのアクセスが容易になる。敷料が乾いていればその上に鶏が座っても身体を冷すことが無く、快適に休息することが出来るため疾病に罹患する可能性も低くなる。給餌器や給水器へのアクセスが容易になることから、鶏どうしの争いも回避され、喧騒性も低下する。互いに傷つけあうことも無くなるので、傷や皮膚炎などが減少し、屠体質の向上につながり、食鳥処理場での廃棄も減少する。趾部裏の皮膚炎(FPD)、飛節のかさぶた(HB)も減少し、趾部の格付けが向上し、廃棄も減少する。FPDやHBの発生は、ブロイラーがどれくらい快適に飼養されていたかを推し量る上で有用であり、動物福祉の指標として欧米諸国では食鳥処理場でモニタリングされている。我が国でも近い将来動物福祉に関する規制が行われた場合、乾いてやわらかい敷料というものは極めて有利と言えよう。FPDやHBが種鶏の交尾行動を妨げることも無くなり、受精率や孵化率の向上につながる。種鶏や平飼いの採卵鶏では巣外卵の汚染が減り、孵化率や商品化率の向上にもつながる。湿って固まった敷料上で鶏が継続して休息することによって発生する胸骨滑液胞およびそれが拡張した状態である胸部水疱(胸ダコ)が減少し、胸肉の商品化率は高くなる。胸部や腹部への湿った糞尿の付着量が減少する。これにより、毛胞炎を減少させ、壊疽性皮膚炎のリスクを低減すると共に、食鳥処理場での脱羽を容易にし、肉に付着する細菌数も低下するため、屠体質が向上して収益性が改善される。乾いた敷料の上では、糞中に排泄されたアイメリア属原虫オーシストが成熟しにくくなるため、コクシジウム症の被害が軽減される。ウェルシュ菌の増殖も抑えられ、壊死性腸炎のリスクが低下する。家禽舎内に増殖するカビも減少するため、真菌症の発生を軽減できる。これらは、特に特別飼育の場合に大きな利点となる。また、乾いた敷料は良好な空隙を有しているため、通気性が良く乾燥し、水分が少なく嫌気性の発酵が起こりにくいため、臭気の発生が減少する。これにより、家禽の呼吸器や角膜に与える悪影響が軽減できる。さらに、臭気の発生が減少することで、それを排出するための強制的な換気も最小限度に抑えられ、無理に家禽舎内の温度が下がることも無くなり、暖房費や電気代が節約されるだけでなく、家禽にとって適度な温度を維持することが可能となり、生産性向上につながる。家禽舎周囲の臭気も少なくなり、環境問題も起こりにくくなる。良好な空隙を保ちコーンコブミールが良く混合された乾燥状態の敷料であるため、搬出時も軽くて臭いも少なく取り扱いが容易となる。乾燥した敷料は、発酵・焼却いずれの方法でも処分が容易であり、公害問題にも発展しにくい。鶏糞ボイラーを使用している場合も温度が上がりやすく、白煙や臭気での苦情も少なくなる。
【0044】
(試験1)
コーンコブミールを配合した飼料を家禽に給与した場合の敷料改善効果について調査を行った。
【0045】
<供試動物>
チャンキー種雄ブロイラー600羽を使用して試験を行った。7日齢までは予備飼育を行い、その後、各処理区の体重が均等になるように鶏を6処理×2反復の合計12区画(各50羽)に区分けした。なお、各区画の面積は0.8坪(2.64m2)である。各試験区へは試験開始時に敷料としておがくずを5.7kg投入して約1.5cm厚に敷設した。各区画の条件を表1に示し、日齢に応じた使用飼料の別を表2に示す。表1におけるコーンコブミールの配合量は、コーンコブミール配合前の市販飼料100重量部に対する割合である。コーンコブミールは市販飼料に対して単に後追加しただけとした。ベース飼料には、マイロを主体とする市販のマッシュ飼料(中部飼料社製)を用いた。具体的には、ブロイラー肥育前期・後期用配合飼料「NS前期マッシュ」、ブロイラー肥育後期用配合飼料「さわやか後期」、ブロイラー肥育後期用配合飼料「さわやか仕上」を、それぞれ一般的な飼育方法に基づいて日齢に応じて適宜給与した。なお、0〜7日齢で使用したブロイラー肥育前記用配合飼料「さわやか前期」は、クランブル飼料である。
【0046】
【表1】



【0047】
【表2】

【0048】
<発育成績>
まず、上記飼育条件での各区画における発育成績について分析した。その結果を表3に示す。増体量は、49日齢時点での平均体重から、7日齢の試験開始時点の体重を差し引いて算出した。飼料摂取量は、7日齢から49日齢の間に1羽あたりが摂取した飼料の重量を示す。飼料要求率は、7〜49日齢の飼料摂取量を、7〜49日齢の増体量で除して算出した。
【0049】
【表3】

【0050】
表3の結果から、飼料100重量部に対してコーンコブミールを2〜10重量部配合しても、増体は殆ど変らなかった。一方、飼料要求率は2〜6重量部(試験区1〜3)では対照区より優れていた。これは、筋胃内でコーンコブミールがグリットの役割を果たし、飼料を効率よく磨砕することで、対照区では未消化のまま排泄されてしまっていた飼料が有効利用されるため、コーンコブミールを2〜6重量部配合する事による飼料栄養成分の希釈が補われ、飼料要求率が改善したと考えられる。一方、8〜10重量部(試験区4〜5)では対照区よりもやや悪化していた。これは、8重量部以上では、コーンコブミールを多く配合する事による飼料栄養成分の希釈の悪影響が勝ってしまい、結果的に対照区に比較して飼料要求率が悪化したと考えられる。これにより、発育成績が良好なコーンコブミールの適正な配合割合は2重量部以上、8重量部未満ということが分かる。
【0051】
<敷料の性状>
次に、各試験区における敷料の質に関し、その比重及び水分含有率を測定した。その結果を表4に示す。
【0052】
敷料の性状については、49日齢に鶏を搬出し、敷料全量を回収して攪拌機(養魚用練機20K、大塚鉄工所製)で5分間良く攪拌して均一化した後、所定量を採取して比重を測定し、更に乾燥機にて恒量に達するまで乾燥して、水分含有率を測定した。比重の測定は、木製升(No.14、1007ml)を用い、均一化した敷料をすりきり一杯分取し、重量を測定して次式によって求めた。
敷料比重(g/cm3)=敷料重量(g)/敷料容積(1,007ml=cm3
水分含有率は、攪拌機にて均一化した敷料1kgをアルミバットに載せ、循環式熱風乾燥機(TYPE102-DL-3、根来製作所製、60℃に設定)で恒量に達するまで約72時間乾燥し、その乾燥重量を求めて次式より敷料の水分含有率を算出した。
敷料の水分含有率(%)=((乾燥前重量−乾燥後重量)/乾燥前重量)×100
【0053】
【表4】

【0054】
表4の結果から、コーンコブミールを配合すればするほど、敷料の比重及び敷料の水分含有率が減少することがわかる。また、敷料の性状を目視にて観察したところ、対照区においては半分以上(体積基準)が板状ないしブロック状に固まっていたが、試験区1では板状ないしブロック状に固まった敷料は対照区と比べてかなり減少していた。さらに、試験区2,3では板状ないしブロック状に固まった敷料は殆どなく、試験区4,5にいたっては全く確認されなかった。これにより、コーンコブミールを配合すればするほど、敷料改善効果が高くなることがわかった。
【0055】
<筋胃(砂肝)の大きさ>
次に、コーンコブミールが筋胃へ及ぼす影響について分析した。具体的には、各試験区から全体の平均体重がほぼ等しくなるように鶏を8羽ずつ選抜し、51日齢時に12時間の絶食後屠殺し、筋胃を摘出し、切開して内容物を取り除いてからその重量及び体重に対する比率(歩留り)を測定した。その結果を表5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
表5の結果から、コーンコブミールを配合すればするほど、筋胃の重量および歩留りが有意に増加することが分かる。これにより、コーンコブミールのグリット効果によって筋胃が良く活動し、飼料を良く消化することが確認された。但し、コーンコブミールの配合量が7重量部程度までは、コーンコブミールを配合すればするほど筋胃の重量および歩留りが大きく増加する傾向が確認されるが、コーンコブミールの配合量が8重量部以上では、コーンコブミールの配合量の増加に対して筋胃の重量および歩留りの増加量は小さくなっている。
【0058】
<筋胃内未消化物>
更に、筋胃内に残存している未消化物に関して観察した。各区画8羽の鶏から摘出した筋胃より筋胃内容物を集め、1リットルの水中に懸濁し、沈殿物を回収して筋胃内未消化物とした。こうして得られる筋胃内未消化物は、飼料の中で絶食12時間後も筋胃内に保持されているものであり、消化されにくい部分である。この筋胃内未消化物を風乾し、JIS標準ふるい2種(JIS Z 8801-1、ふるいの目開き2.00mm、1.40mm)を用いてふるい分けを行い、粒度別の比率を算出した。比率は、2.0mmオン、1.4〜2.0mm、1.4mmパスそれぞれの重量を測定し、ふるい分け前の総重量で除して計算した。その結果を表6に示す。
【0059】
【表6】

【0060】
表6の結果から、対照区の筋胃内未消化物は、各粒度でほぼ等しい比率で存在しているのに対し、試験区1〜5では1.4〜2.0mm、1.4mmパスの比率が大幅に減少し、約80%を2.0mmオンの粒度が占めていた。
【0061】
これらの筋胃未詳化物を詳細に調べると、対照区の2.0mmオンではマイロの穀粒や敷料であるおがくず(小木片)が多く含まれていた。なお、試験に使用した飼料はマイロを主体としており、マイロはトウモロコシ等の他の飼料原料よりも穀粒が硬いため、筋胃内で完全に粉砕・消化され難い。したがって、未消化の飼料が残存している場合、その殆ど(ほぼ100%)はマイロである。これに対し試験区1〜5では、その殆どがコーンコブミールの粒で占められていた。そこで、2.0mmオン及び1.4〜2.0mmの粒度における、マイロ穀粒の残存率を測定した。具体的には、各粒度の筋胃内未消化物におけるマイロ穀粒を選り分け、その重量比から筋胃内におけるマイロ穀粒の残存率を算出した。その結果を表7に示す。
【0062】
【表7】

【0063】
表7の結果から、対照区の各粒度の殆どがマイロ穀粒によって構成されている。試験区1〜2では殆どがコーンコブミールである。詳しくは、1.4〜2.0mmの粒度では僅かにマイロ穀粒が確認されたが、2.0mmオンの粒度ではマイロ穀粒が確認されなかった。さらに、試験区3〜5ではマイロ穀粒が一切確認されなかった。これにより、コーンコブミールはあたかもボールミルのボールの如く硬いマイロ穀粒を粉砕していることが分かる。このことは、コーンコブミールを飼料へ6重量部配合すれば、飼料中のマイロ穀粒が完全に粉砕されてしまうことを示し、それ以上コーンコブミールを配合しても、硬いマイロ穀粒を砕いて消化するグリット効果(消化率改善効果)が期待できないことを示す。つまり、6重量部を超えた配合では、グリット効果を飼料栄養成分の希釈が上回ってしまうため、飼料要求率が悪化することがわかる。これは、飼料要求率が試験区4(8重量部)で対照区よりも悪化した事、筋胃の増大効果が試験区3(6重量部)以上で少ないという結果と整合する。
【0064】
また、表6及び表7の結果から、コーンコブミールは筋胃内で一定期間保持され、硬いマイロ穀粒をグリット効果によってあたかもボールミルの如く効率良く磨砕していることが分かる。また、コーンコブミール自身も筋胃による磨砕を受け、次第に鶏糞中へ排泄されている事も分かる。更に、飼料へコーンコブミールを2重量部以上加える事により、おがくず由来の木片が筋胃内に存在しなくなる。これは、鶏が敷料由来の木片等をグリットの代替として摂取する必要がなくなるためと考えられ、衛生的に見て非常に価値が高いと考えられる。
【0065】
以上の各結果から、コーンコブミールを飼料へ配合して家禽に給与すると、敷料の質を改善し、大きな筋胃を作ることが確認できた。特に、コーンコブミールの飼料量が7重量部程度以下であれば、家禽の発育成績が悪化することもないことが確認できた。
【0066】
(試験2)
次に、コーンコブミールの配合量を2重量部以下にした場合の敷料改善効果や筋胃の増大効果について調査を行った。なお、供与動物及び飼育環境は、試験1と同様の条件とした。
【0067】
<試験区及び供試飼料>
各処理の条件を表8に示し、日齢に応じた使用飼料の別を表9に示す。表8におけるコーンコブミールの配合量は、コーンコブミール配合前のベース飼料100重量部に対する割合である。コーンコブミールはベース飼料に対して単に後追加しただけとした。ベース飼料には、試験1とは異なる飼料を用いた。具体的には、とうもろこし、マイロ、大豆粕を主体とする市販のマッシュ飼料(中部飼料社製)である、ブロイラー肥育前期用配合飼料「ハイブロA」、ブロイラー肥育後期用配合飼料「ハイブロB」を、それぞれ一般的な飼育方法に基づいて日齢に応じて適宜給与した。なお、0〜7日齢で使用したブロイラー肥育前期用配合飼料「餌付け名人」は、クランブル飼料である。
【0068】
【表8】

【0069】
【表9】

【0070】
<発育成績>
上記飼育条件での各試験区における発育成績について、試験1と同様の手法で分析した結果を表10に示す。なお、表10の値は35日齢基準である。
【表10】

【0071】
表10の結果から、飼料100重量部に対してコーンコブミールを0.1〜2.0重量部配合しても、増体及び飼料要求率への悪影響は全くなかった。これは、コーンコブミールの配合量が少ないことから、ベース飼料の希釈の程度が小さいことにも起因する。しかし、コーンコブミールを1.0重量部以上配合した場合(試験区8〜10)は、むしろ若干改善する傾向が見られた。これは、コーンコブミールの増量に伴い、グリット機能が有効に発揮されるからと考えられる。
【0072】
<敷料の性状>
また、各試験区における敷料の質に関し、その比重及び水分含有率を試験1と同様の手法で測定した結果を表11に示す。
【表11】

【0073】
表11の結果から、ベース飼料が異なっていても、試験1と同様にコーンコブミールを配合すればするほど、敷料の比重及び敷料の水分含有率が減少することがわかる。しかし、その配合量が0.1重量部(試験区6)では敷料の水分含有率に変化は無かった。コーンコブミールの配合量が0.5重量部(試験区7)以上であれば、確実に敷料の質が改善している。また、敷料の性状を目視にて観察したところ、対照区及び試験区6においては半分以上(体積基準)が板状ないしブロック状に固まっていたが、試験区7、8では板状ないしブロック状に固まった敷料は対照区と比べて減少していた。さらに、試験区9、10では板状ないしブロック状に固まった敷料はかなり減少していた。これにより、コーンコブミールを配合すればするほど(特に0.5重量部以上)敷料改善効果が高くなるが、その配合量が0.1重量部程度では改善効果を実感することが難しいことがわかった。
【0074】
<筋胃(砂肝)の大きさ>
また、コーンコブミールの及ぼす筋胃への影響について、試験1と同様の手法で分析した結果を表12に示す。なお、本試験では38日齢で屠殺した。
【表12】

【0075】
表12の結果から、ベース飼料が異なっていても、試験1と同様にコーンコブミールを配合すればするほど、筋胃の重量及び歩留まりが増加することが分かる。しかし、その配合量が0.1重量部(試験区6)では大きな差ではなく、0.5重量部(試験区7)以上において有意な差が生じていた。これは、敷料の質の改善傾向と一致している。
【0076】
以上の各結果から、コーンコブミールを飼料100重量部に対して0.5重量部以上配合して家禽に給与すると、敷料の質が改善され、大きな筋胃を作ることが確認できた。特に、コーンコブミールの配合量が飼料100重量部に対して1.0重量部以上であれば、敷料改善効果及び筋胃増大効果が顕著となることが確認できた。また、このようなコーンコブミールを配合することに起因する効果は、ベース飼料の種類に影響を受けないことも確認できた。
【0077】
(試験3)
次に、マッシュ飼料およびペレット飼料におけるコーンコブミールの敷料改善効果について調査を行った。なお、供与動物及び飼育環境は、試験1や試験2と同様の条件とした。
【0078】
<試験区及び供試飼料>
対照区としてコーンコブミール無配合のマッシュ飼料区(マッシュ対照区)とコーンコブミール無配合のペレット飼料区(ペレット対照区)を設定し、マッシュ飼料100重量部に対してコーンコブミールを2重量部配合した区(マッシュ試験区)と、ペレット飼料又はクランブル飼料100重量部に対してコーンコブミールを2重量部配合した区(ペレット試験区)の4区画とした。コーンコブミールは、飼料に対して単に後追加しただけとした。本試験3では、ベース飼料として市販の飼料を使用せず、試験用に独自に配合したオリジナルのベース飼料を使用した。当該ベース飼料の配合割合及び成分表を表13(表13中の数値は重量%)に示す。なお、コーンコブミールはベース飼料が完成した後に配合したため、コーンコブミールを配合した飼料の最終的な栄養成分は表13の状態から変化する。
【0079】
【表13】

【0080】
ペレット飼料にはマッシュ飼料と同一の飼料を使用した。つまり、ペレット飼料とマッシュ飼料とは、その配合割合及び成分は同一である。ペレット飼料は4mm径とした。ペレット飼料区では、7日齢の試験開始から14日齢までの1週間は、鶏のクチバシの大きさを考慮してクランブル化して給与した。各試験区の内容を表14に示し、各試験区における給餌条件を表15に示す。なお、0〜7日齢で使用したブロイラー肥育前期用配合飼料「餌付け名人」は、クランブル飼料である。
【0081】
【表14】

【0082】
【表15】

【0083】
<発育成績>
まず、上記飼育条件での各試験区における発育成績について、試験1や試験2と同様の手法で分析した結果を表16に示す。なお、表16の値は35日齢基準である。
【表16】

【0084】
表16の結果から、飼料の形状をマッシュからペレットに加工することで、増体量、飼料要求率が改善されたことがわかる。これにより、ペレット飼料がマッシュ飼料よりも摂取しやすいという利点が改めて確認された。なお、飼料の形状とコーンコブミールの有無での相互作用は得られなかった。これは、ベース飼料がマッシュ飼料であろうとペレット飼料であろうとを問わず、コーンコブミールを配合していればいずれも発育成績には悪影響が無いことを示している。
【0085】
<敷料の性状>
また、各試験区における敷料の質に関し、その比重及び水分含有率を試験1や試験2と同様の手法で測定した結果を表17に示す。
【表17】

【0086】
表17の結果において、マッシュ対照区とペレット対照区とを比較すると、飼料の形状をマッシュからクランブルやペレットに加工することで、敷料の比重および敷料の水分含有率が増加した。これは、一般的にも認められるクランブル飼料やペレット飼料のデメリットである。一方、マッシュ対照区とマッシュ試験区との対比、及びペレット対照区とペレット試験区との対比から、コーンコブミールを配合することで、敷料の比重および敷料の水分含有率が減少した。特に、ペレット試験区でもマッシュ対照区における敷料の比重や水分含有率と同等であった。これにより、クランブル飼料やペレット飼料にコーンコブミールを配合していれば、クランブル飼料やペレット飼料の増体及び飼料要求率等の利点を維持しながら、従来問題となっていた床湿りを、マッシュ飼料並みに改善することができることがわかった。なお、表17の結果からも、飼料の形状とコーンコブミールの有無での相互作用は得られなかった。これは、コーンコブミールを添加する飼料の形状がマッシュであろうとペレットであろうとを問わず、コーンコブミールを添加することによる効果は均等であることを示している。
【0087】
<筋胃(砂肝)の大きさ>
また、コーンコブミールの及ぼす筋胃への影響について、試験1や試験2と同様の手法で分析した結果を表18に示す。なお、本試験では37日齢で屠殺した。
【表18】

【0088】
表18の結果から、飼料の形状をマッシュからクランブルやペレットに加工することで、筋胃の重量および歩留まりは減少することがわかる。これは、一般的にも認められるクランブル飼料やペレット飼料のデメリットである。一方、コーンコブミールを配合することで、筋胃の重量及び歩留まりが有意に増加することがわかる。特に、ペレット試験区ではマッシュ対照区における筋胃増大量と同等であり、クランブル飼料やペレット飼料における増体や飼料要求率等の利点を維持しながら、従来問題であった筋胃の減少を、マッシュ飼料並みに改善できることがわかった。なお、表18の結果からも、飼料の形状とコーンコブミールの有無での相互作用は得られなかった。
【0089】
以上の結果から、ペレット飼料であろうとマッシュ飼料であろうと、コーンコブミールを配合して家禽に給与することで、発育成績を悪化させること無く敷料の質を改善し、大きな筋胃を作ることができることが確認できた。さらに、クランブル飼料やペレット飼料へコーンコブミールを配合しても、マッシュ飼料と比較して優れた飼料要求率を確保しつつも、従来問題であった敷料の質悪化や筋胃の減少を、マッシュ飼料と同等のレベルにまで改善できることが確認できた。これにより、コーンコブミールをクランブル飼料やペレット飼料へ配合することが、より効果的であることが確認された。
【0090】
(試験4)
続いて、雛の加齢と共にコーンコブミールの配合量を変動させた場合の敷料改善効果や筋胃増大効果について調査した。本試験4でも、供与動物及び飼育環境は、試験1等と同様の条件とした。また、ベース飼料には、試験2で使用した飼料と同じ市販飼料(中部飼料社製)を使用した。日齢に応じた使用飼料の別を表19に示し、各区画の配合条件を表20に示す。
【0091】
【表19】

【0092】
【表20】

【0093】
<発育成績>
まず、上記飼育条件での各試験区における発育成績について、試験1等と同様の手法で分析した結果を表21に示す。なお、表21の値は35日齢基準である。
【表21】

【0094】
表21の結果から、コーンコブミールは、飼育後期から配合する(試験区11)よりも、飼育前期から配合した方が(試験区12,13)、発育成績が良好であった。これは、飼育前期から配合した方が、より早い段階でコーンコブミールのグリッド効果が発揮されたことに起因すると考えられる。また、加齢と共にコーンコブミールを増量しても(試験区13)、前期・後期を通してコーンコブミールの配合量を一定とした場合(試験区12)と比べて発育成績への悪影響はなかった。これは、発育と共に筋胃も増大し、コーンコブミールの許容量が増大したことに拠ると考えられる。
【0095】
<敷料の性状>
また、各試験区における敷料の質に関し、その比重及び水分含有率を試験1等と同様の手法で測定した結果を表22に示す。
【表22】

【0096】
表22の結果から、コーンコブミールは、飼育後期(試験区11)から配合するよりも、飼育前期から配合した方が(試験区12,13)、敷料改善効が高いことも分かる。しかも、加齢と共にコーンコブミールを増量した方が(試験区13)、前期・後期を通してコーンコブミールの配合量を一定とした場合(試験区12)と比べて敷料改善効果が高かった。これにより、コーンコブミールを給与開始する時期は早いほど敷料改善効果が高く、しかも加齢と共に配合量を増加させると、その効果はより高くなることがわかった。
【0097】
<筋胃(砂肝)の大きさ>
また、コーンコブミールの及ぼす筋胃への影響について、試験1等と同様の手法で分析した結果を表23に示す。なお、本試験では37日齢で屠殺した。
【表23】

【0098】
表23の結果から、コーンコブミールは、飼育後期(試験区11)から配合するよりも、飼育前期から配合した方が(試験区12,13)、筋胃増大効果が高いことも分かる。しかも、加齢と共にコーンコブミールを増量した方が(試験区13)、前期・後期を通してコーンコブミールの配合量を一定とした場合(試験区12)と比べて筋胃増大効果が高かった。これにより、コーンコブミールを給与開始する時期は早いほど筋胃増大効果が高く、しかも加齢と共に配合量を増加させると、その効果はより高くなることがわかった。
【0099】
以上の各結果から、コーンコブミールを飼育の早い段階で配合飼料し、且つ加齢と共に配合量を増大させることで、発育成績を悪化させること無く、敷料の質改善及び筋胃増大効果をより高めることができることが確認できた。
【0100】
(試験5)
次に、コーンコブミールの粒径が、敷料改善効果や筋胃増大効果に及ぼす影響について調査を行った。本試験5でも、供与動物及び飼育環境は、試験1等と同様の条件とした。また、ベース飼料には、試験2で使用した飼料と同じ市販飼料(中部飼料社製)を使用した。コーンコブミールは、16メッシュ(目開き1.0mm)の篩と3.5メッシュ(目開き5.6mm)の篩で篩い、凡そ1mm以下の粒径、1mm以上6mm以下の粒径、6mm以上の粒径の3種類に分け、それぞれの大きさの粒径のコーンコブミールをベース飼料100重量部に対して2重量部配合した。日齢に応じた使用飼料の別を表24に示し、各区画の配合条件を表25に示す。
【0101】
【表24】

【0102】
【表25】

【0103】
<発育成績>
まず、上記飼育条件での各試験区における発育成績について、試験1等と同様の手法で分析した結果を表26に示す。なお、表26の値は35日齢基準である。
【表26】

【0104】
表26の結果から、増体及び飼料要求率が最も優れたのは、コーンコブミールの粒径を1〜6mm程度とした試験区15であった。粒径1mm以下の試験区14では、筋胃内でコーンコブミールがグリットの役割を果たせず、飼料を効率よく磨砕する効果が低いためであると考えられる。一方、粒径6mm以上の試験区16では、給与開始直後の8日齢では嘴が小さいため、コーンコブミールをくわえても摂取できず床に落とされるものが観察されたが、19日齢以降ではそのような様子は観察されなくなった。したがって、試験区16において飼料要求率が悪化したのは、給与開始直後にコーンコブミールを摂取できなかったことや、これに伴い筋胃の大きさが、コーンコブミールがグリットとしての効果を十分に発揮できるような大きさとなるまでに時間がかかったことが原因と考えられる。
【0105】
<敷料の性状>
また、各試験区における敷料の質に関し、その比重及び水分含有率を試験1と同様の手法で測定した結果を表27に示す。
【表27】

【0106】
表27の結果から、コーンコブミールの粒径が大きくなるほど、敷料の比重が低下していた。これは、コーンコブミールの粒径が大きければ大きいほど、敷料中の空隙が多くなるため考えられる。一方、敷料の水分含水率は、試験区16よりも試験区15の方が低かった。これは、コーンコブミールの粒径が6mm以上では大きすぎてコーンコブミールの摂取が遅くなった結果、敷料改善効果を発揮する期間が短くなったためと考えられる。これにより、効率良く敷料の質を改善するには、コーンコブミールの粒径を1〜6mm程度とすることが好ましいことがわかった。
【0107】
<筋胃(砂肝)の大きさ>
また、コーンコブミールの粒径が筋胃へ及ぼす影響について、試験1等と同様の手法で分析した結果を表28に示す。なお、本試験では37日齢で屠殺した。
【表28】

【0108】
表28の結果から、コーンコブミールの粒径が大きければ大きいほど、筋胃の重量及び歩留まりが増加することが分かる。これは、コーンコブミールの粒径が大きいほど、筋胃が良く活動するためであると考えられる。
【0109】
以上の各結果から、コーンコブミールの粒径は大きければ大きいほど、敷料の質を改善し、大きな筋胃を作ることが確認できた。ただし、コーンコブミールの粒径が6mm以上の場合は、雛がある程度成長するまではコーンコブミールの摂取が難しいため飼料要求率が悪化したり、敷料の水分含水率は逆に増加する傾向にあることが確認された。したがって、発育成績を悪化させることなく効果的に敷料改善と筋胃増大を図るには、飼料に配合するコーンコブミールの粒径は1〜6mmが好ましいことがわかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンコブミールが、発酵等の処理をせず、かつ栄養素添加物を付着させずに、粉砕したそのままの状態で、コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して、0.5〜10重量部配合されている、家禽用飼料。
【請求項2】
前記コーンコブミールの粒径が1〜6mmである、請求項1に記載の家禽用飼料。
【請求項3】
クランブル状又はペレット状である、請求項1または請求項2に記載の家禽用飼料。
【請求項4】
平飼い家禽舎で飼育される家禽に給与される、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の家禽用飼料。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の家禽用飼料を家禽に給与する、家禽の飼育方法。
【請求項6】
7日齢以降の家禽に給与する、請求項5に記載の家禽の飼育方法。
【請求項7】
加齢と共にコーンコブミールの配合量を増量する、請求項5または請求項6に記載の家禽の飼育方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の家禽用飼料を、平飼い家禽舎において家禽に給与する、敷料の質の改善方法。
【請求項9】
前記コーンコブミールの配合量を、コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して8〜10重量部とする、請求項8に記載の敷料の質の改善方法。
【請求項10】
前記コーンコブミールの配合量を、コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して0.5〜7重量部とする、請求項8に記載の敷料の質の改善方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の家禽用飼料を家禽に給与する、砂肝の生産方法。
【請求項12】
前記コーンコブミールの配合量を、コーンコブミール配合前の飼料100重量部に対して0.5〜7重量部とする、請求項11に記載の砂肝の生産方法。
【請求項13】
前記家禽は、ケージ飼いにて飼育されている、請求項11または請求項12に記載の砂肝の生産方法。



【公開番号】特開2010−148500(P2010−148500A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266380(P2009−266380)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(391012095)中部飼料株式会社 (11)
【Fターム(参考)】