説明

容器およびその密封方法

【課題】 密封状態における凍結を前提として内容物の密封性を確実に維持し、しかも、蓋材を容器本体から簡単に剥離すること
【解決手段】 蓋材30の開封タブ32の内側に対向する容器本体20のフランジ24の内周側に内容物が漏洩しない接着力を有する容器本体20と蓋材30との強融着部2Aを形成するとともに、フランジ24において強融着部2Aより外周側に強融着部2Aより接着力の弱い容器本体と蓋材との弱融着部3を形成したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結される容器およびその密封方法に係り、特に、蓋材のタブを引くことにより容易に開封できる容器およびその密封方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開口部にフランジが周設されている容器本体と、開封タブが突設されており前記容器本体のフランジに熱融着される蓋材とを有する容器としては、従来より各種のものが知られている。
【0003】
このような容器において、容器の内容物を外気に触れさせないように密封性よく封入するためには、蓋材を容器本体のフランジに強固に熱融着すればよい。しかしながら、このように蓋材を容器本体のフランジに強固に熱融着すると、容器から内容物を取り出すために蓋材を容器本体から剥離させようとして蓋材のタブを引いても蓋材が容器本体から剥離しにくくなるという問題点があった。
【0004】
このような場合に、無理に蓋材のタブを引くと、容器本体が変形したり、内容物が液体の場合には内容物が周囲に飛散したりするおそれがあった。
【0005】
このような問題点を克服するものとして、容器本体のフランジに対向する蓋材の内面にエンボス加工を施して蓋材を容器本体のフランジに熱融着しても強力な接着力が生じないようにしたものがあった(例えば特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−355366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の容器においては、蓋材と容器本体のフランジとの接着力がフランジの全周において均一であったため、蓋材を容器本体のフランジから剥離しやすくすると、容器の内容物の密封性に問題の生じるおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、密封状態における凍結を前提として内容物の密封性を確実に維持し、しかも、蓋材を容器本体から簡単に剥離することのできる容器およびその密封方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、請求項1に係る本発明の容器の特徴は、開口部にフランジが周設されている容器本体と、開封タブが突設されており前記容器本体のフランジに熱融着される蓋材とを有し、内容物を収納した前記容器本体と前記蓋材とが密封状態で凍結される容器において、前記蓋材の開封タブの内側に対向する前記容器本体のフランジの内周側に前記内容物が漏洩しない接着力を有する前記容器本体と前記蓋材との強融着部を形成するとともに、前記フランジにおいて前記強融着部より外周側に前記強融着部より接着力の弱い前記容器本体と前記蓋材との弱融着部を形成したことにある。
【0010】
そして、このような構成を採用したので、前記強融着部の接着力により蓋材の剥離を防止して内容物の密封性を確保することになるし、前記弱融着部の接着力により蓋材のタブを引いたときに蓋材を容器本体のフランジから容易に剥離させることができる。
【0011】
そして、前記弱融着部は、複数本の線状の融着部と非融着部とが交互に連設されて形成されてもよいし、複数の点状の融着部が非融着部中に点在して形成されてもよいし、前記強融着部より接着力の弱い全面の融着部により形成されてもよい。
【0012】
請求項5に係る本発明の容器の密封方法の特徴は、開口部にフランジが周設されている容器本体と、開封タブが突設されており前記容器本体のフランジに熱溶融される蓋材とを有し、内容物を収納した前記容器本体と前記蓋材とが密封状態で凍結される容器の密封方法において、前記蓋材の開封タブの内側に対向する前記容器本体のフランジの内周側に前記内容物が漏洩しない接着力を有する前記容器本体と前記蓋材との強融着部を形成するとともに、前記フランジにおいて前記強融着部より外周側に前記強融着部より接着力の弱い前記容器本体と前記蓋材との弱融着部を形成するように、前記容器本体のフランジに前記蓋材を熱溶融して密封状態を形成し、前記タブを引いて前記弱融着部から前記容器本体と前記蓋材とが剥離されるようにしたことを特徴とする容器の密封方法。
【0013】
そして、このような構成を採用したので、請求項1に係る容器と同様、前記強融着部の接着力により蓋材の剥離を防止して内容物の密封性を確保することになるし、前記弱融着部の接着力により蓋材のタブを引いたときに蓋材を容器本体のフランジから容易に剥離させることができる。
【0014】
前記弱融着部は、複数本の線状の融着部と非融着部とが交互に連設されて形成されてもよいし、複数の点状の融着部が非融着部中に点在して形成されてもよいし、前記熱溶融の際の押圧力を他の部位より弱くすることにより前記強融着部より接着力の弱い全面の融着部とされてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る容器および容器の密封方法によれば、内容物の密封性を確実に維持し、しかも、蓋材を容器本体から簡単に剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1ないし図7は、本発明の容器の実施形態を示すものである。本実施形態の容器1は内容物の充填後に凍結されるものであり、この容器1は、樹脂製の容器本体20を有している。この容器本体20は、図1に示すように、逆円錐台形の筒状胴部21を有しており、この筒状胴部21の下端部にはほぼ平面状の底板22が一体に形成されている。また、前記筒状胴部21の上端には開口部23が形成されている。そして、前記筒状胴部21の開口部23には、筒状胴部21の外側に位置し筒状胴部21と同心円状のフランジ24が一体に周設されている。
【0017】
一方、前記容器本体20のフランジ24に熱融着される熱溶融性樹脂からなる蓋材30が設けられている。この蓋材30は、図2に詳示するように、前記フランジ24の外径とほぼ同径の外径を有する蓋材本体31と、この蓋材本体31の外周に一体に突設されており蓋材30を前記容器本体20のフランジ24から剥離する際に指で摘むための開封タブ32とにより構成されている。
【0018】
ところで、本実施形態においては、前記蓋材30の開封タブ32の内側に対向する前記容器本体20のフランジ24の内周側には、後に封入される内容物が漏洩しないだけの接着力を有する前記容器本体20と前記蓋材30との強融着部2Aが形成されている。また、前記容器本体20のフランジ24において前記強融着部2Aより外周側には、前記強融着部2Aより接着力の弱い前記容器本体20と前記蓋材30との弱融着部3が形成されている。この弱融着部3は、図3に示すように前記強融着部2Aと線分4をもって接触している。また、前記蓋材30の開封タブ32の内側に対向しない部位の前記容器本体20のフランジ24のほぼ全域には、前記強融着部2Aと同様の接着力を有する強融着部2Bが前記強融着部2Aと一体に形成されている。
【0019】
なお、図4に示すように、前記弱融着部3と強融着部2Aとを円弧5をもって接触させるようにしてもよい。
【0020】
前記弱融着部3は、本実施形態においては、それぞれ複数本の線分状の融着部6と非融着部7とが交互に連設されて形成されている。前記非融着部7は、図5に示すように、前記容器本体20を固定型8上に載置した状態で、蓋材30をヒータ(図示せず)が内蔵されたシールヘッド9により加熱状態で押圧して熱融着する際に押圧力が生じないようにシールヘッド9の接触面10に押圧力の生じない複数の凹部11を非融着部7に対応するように形成しておけばよい。
【0021】
前記シールヘッド9の詳細が図6および図7に示されている。
【0022】
図6は、図3に示す弱融着部3を形成するためのシールヘッド9の接触面10の形状を示すものであり、各凹部11は、凹部11の整列方向において中央部のものが平面方向において最大長をなすように形成されている。
【0023】
また、図7は、図4に示す弱融着部3を形成するためのシールヘッド9の接触面10の形状を示すものであり、各凹部11は、平面方向においてそれぞれ等しい長さを有している。
【0024】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0025】
本実施形態の容器1を形成するには、容器本体20中に図示しない内容物を充填したうえで、容器本体20を固定型8上に載置し、この容器本体20上に蓋材30を位置して、この蓋材30により内容物を収納した容器本体20を被覆する。そして、固定型8の上方からヒータにより加熱したシールヘッド9を下降し、熱により溶融された蓋材30を容器本体20のフランジ24に熱融着する。このとき、前記シールヘッド9には、複数の凹部11が形成されているので、蓋材30の開封タブ32の内側に対向する前記容器本体20のフランジ24の外周側には、容器本体20と蓋材30との弱融着部3が形成されることになる。また、フランジ24のその他の部位には、容器本体20と蓋材30との強融着部2A,2Bが形成されることになる。
【0026】
ところで、前述したようにして弱融着部3が形成されても、この容器1はその後凍結されるものであるため、この弱融着部3を介して蓋材30が容器本体20から剥離するおそれはない。
【0027】
そして、このような容器1の蓋材30を容器本体20から剥離するには、蓋材30の開封タブ32を指で摘んで開封タブ32を後方に反らせるようにして引っ張る。すると、開封タブ32の内側には、まず容器本体20と蓋材30との弱融着部3が位置しているので、この弱融着部3は、一度に剥離される範囲が広いにもかかわらず、弱融着部3における蓋材30を容器本体20のフランジ24から容易に剥離することができる。すると、その後は強融着部2A,2Bにより容器本体20と蓋材30とが融着されているが、弱融着部3において蓋材30が容器本体20から剥離されて蓋材30は剥離を継続しているので、強融着部2A,2Bにおいても蓋材30を容器本体20のフランジ24から容易に剥離することができる。
【0028】
このようにして、弱融着部3が蓋材30の開封タブ32の内側に位置しているので、蓋材30を容器本体20から簡単に剥離することができる。なお、蓋材30と容器本体20のフランジ24との間には全周にわたって強融着部2A,2Bが存在しているので、蓋材30を容器本体20から剥離しようとしないときにはこの強融着部2A,2Bの接着力により蓋材30の容器本体20からの剥離を防止して内容物の密封性を確保することができる。
【実施例1】
【0029】
開口部の外径70mmφ、内径62mmφでフランジ幅4mm、高さ40mm、底部の内径55mmφの容器本体としてのプラスチック製カップ(構成;ポリエチレン0.8mm厚)に65℃に加熱されたみかんゼリー液80ml(みかん果汁50%、水31%、液糖17%、ゲル化剤1.2%、クエン酸0.5%、フレーバー0.3%)を充填して、外径75mmφ(構成;ポリエチレン/ポリエステルラミネートフルム70μ)の蓋材本体としての円形フイルムの外周方向に蓋材本体の半径方向における長さ10mmの開封タブを設けた蓋材を熱溶融する際に、蓋材を加圧加熱してカップに加熱圧着させるためのシールヘッドの蓋材との接触面の形状を、図6に示すように、開封タブの周辺部には蓋材とカップが加熱圧着しない複数の凹部を設けたので、開封タブの幅方向における中央位置相当部とカップ上面中心位置相当部とを結ぶ直線(中心線)がカップの内周位置相当部と交叉する点を起点として、中心線に直角な直線の軌跡上から1mm外側に隔てた位置における新たな直線の軌跡上からカップの外周位置相当部との間に幅2mm、間隔2mmの線状に非圧着部分となる凹部を7本設けた形状の蓋材との接触面を有するシールヘッドの温度を170℃、熱融着時にシールヘッドに加わる圧力を3kg/cm、シールヘッドとカップとの接触時間を1.5秒に設定し、カップと蓋材を熱融着した。
【0030】
比較例1として、開封タブ付近に非圧着部を設けていない通常のシールヘッドを用いて、実施例1と同様に熱融着したものを作成した。
【0031】
そして、被験者10名による開封試験を行った結果、比較例1に対し実施例1は、開封初期に比較例1ほどの力を要せず、スムーズに開封することができた。 なお、実施例1においてシールヘッドのシール面は、平滑な形状のべタタイプとしたが、微細な凹凸を有するメッシュタイプ等であってもよい。
【実施例2】
【0032】
開口部の外径70mmφ、内径64mmφでフランジ幅3mm、高さ30mm、底部の内径56mmφの容器本体としての紙製カップ(構成;ポリエチレン18μ/紙カップ原紙220g/m/ポリエチレン37μ)に実施例1で使用した65℃に加熱されたみかんゼリー液70mlを充填して、外径75mmφ(構成;ポリエチレン/ポリエステルラミネートフルム70μ)の蓋材本体としてのフイルムの外周方向に蓋材本体の半径方向における長さ10mmの開封タブを設けた蓋材を熱融着する際に、蓋材を加圧加熱してカップ容器に加熱圧着させるためのシールヘッドの蓋材との接触面の形状を、図7に示すように、開封タブ周辺部では蓋材とカップが加熱圧着しない部分を設けるために、開封タブの中央位置相当部とカップ上面中心位置相当部を結ぶ直線(中心線)に対して左右に各15mm離間した位置の平行線の軌跡と、カップの内周と同心円で半径が1mm大きい円周の軌跡の外側の範囲で中心線と平行に幅2.5mm、間隔2.5mmの線状に非圧着部分となる凹部を6本設けた形状の蓋材との接触面を有するシールヘッドの温度を220℃、熱融着時にシールヘッドに加わる圧力を3.5kg/cm、シールヘッドとカップの接触時間を2秒に設定し、カップと蓋材を熱融着した。
【0033】
比較例2として、開封タブ付近に非圧着部を設けていない通常のシールヘッドを用いて、実施例2と同様に熱融着したものを作成した。被験者10名による開封試験を行った結果、比較例2に対し実施例2は、開封初期に比較例2ほどの力を要せず、スムーズに開封することができた。
【0034】
なお、実施例2においてシールヘッドのシール面は、平滑な形状のべタタイプとしたが、微細な凹凸を有するメッシュタイプ等であってもよい。
【0035】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0036】
例えば、弱融着部は、前述した実施形態においては、融着部と非融着部とにより構成したが、弱融着部を、複数の点状の融着部が非融着部中に点在して形成されるようにして構成してもよい。この場合、シールヘッドの接触面に多数の点状の突起を突設すればよい。
また、前記弱融着部を、強融着部より接着力の弱い全面の融着部により形成してもよい。この場合、シールヘッドの温度および圧力の少なくとも一方の数値を前述した両実施例より低下させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る容器の実施形態を示す分解斜視図
【図2】図1の蓋材の平面図
【図3】図1の容器における融着部の実施形態を示す説明図
【図4】図1の容器における融着部の他の実施形態を示す説明図
【図5】図1の容器における蓋材と容器本体との熱融着を行うための装置の実施形態を示す概略正面図
【図6】図3の融着部を形成するためのシールヘッドの構成を示す底面図
【図7】図4の融着部を形成するためのシールヘッドの構成を示す底面図
【符号の説明】
【0038】
1 容器
2A、2B 強融着部
3 弱融着部
6 融着部
7 非融着部
8 固定型
9 シールヘッド
20 容器本体
21 筒状胴部
22 底板
23 開口部
24 フランジ
30 蓋材
31 蓋材本体
32 開封タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部にフランジが周設されている容器本体と、開封タブが突設されており前記容器本体のフランジに熱融着される蓋材とを有し、内容物を収納した前記容器本体と前記蓋材とが密封状態で凍結される容器において、
前記蓋材の開封タブの内側に対向する前記容器本体のフランジの内周側に前記内容物が漏洩しない接着力を有する前記容器本体と前記蓋材との強融着部を形成するとともに、前記フランジにおいて前記強融着部より外周側に前記強融着部より接着力の弱い前記容器本体と前記蓋材との弱融着部を形成したことを特徴とする容器。
【請求項2】
前記弱融着部は、複数本の線状の融着部と非融着部とが交互に連設されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記弱融着部は、複数の点状の融着部が非融着部中に点在して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記弱融着部は、前記強融着部より接着力の弱い全面の融着部により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項5】
開口部にフランジが周設されている容器本体と、開封タブが突設されており前記容器本体のフランジに熱溶融される蓋材とを有し、内容物を収納した前記容器本体と前記蓋材とが密封状態で凍結される容器の密封方法において、
前記蓋材の開封タブの内側に対向する前記容器本体のフランジの内周側に前記内容物が漏洩しない接着力を有する前記容器本体と前記蓋材との強融着部を形成するとともに、前記フランジにおいて前記強融着部より外周側に前記強融着部より接着力の弱い前記容器本体と前記蓋材との弱融着部を形成するように、前記容器本体のフランジに前記蓋材を熱溶融して密封状態を形成し、前記タブを引いて前記弱融着部から前記容器本体と前記蓋材とが剥離されるようにしたことを特徴とする容器の密封方法。
【請求項6】
前記弱融着部は、複数本の線状の融着部と非融着部とが交互に連設されて形成されていることを特徴とする請求項5に記載の容器の密封方法。
【請求項7】
前記弱融着部は、複数の点状の融着部が非融着部中に点在して形成されていることを特徴とする請求項5に記載の容器の密封方法。
【請求項8】
前記弱融着部は、前記熱溶融の際の押圧力を他の部位より弱くすることにより前記強融着部より接着力の弱い全面の融着部とされていることを特徴とする請求項5に記載の容器の密封方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−298442(P2006−298442A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123715(P2005−123715)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(505126610)株式会社ニチレイフーズ (71)
【出願人】(504331657)株式会社ニチレイフーズ・プロ (8)
【Fターム(参考)】