説明

容器入りコンニャク、およびコンニャクの調理方法

【課題】、電子レンジなどの電磁調理器で調理可能でありながらも、コンニャクの割れや硬化をなくすことのできる容器入りコンニャクを提供すること。
【解決手段】塊状に形成された複数の塊状コンニャクと、当該塊状コンニャクに対して味付する為の調味液と、少なくとも調理時に当該塊状コンニャクおよび調味液を収容するマイクロ波透過性の耐熱容器とからなり、当該調味液の塩分濃度が8.5質量%以上9.5質量%以下とし、また塊状コンニャクの全体容積に対する調味液の容積の割合を24容積%以上44容積%以下とした容器入りコンニャクとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入りのコンニャク食品に関し、特に電子レンジなどの電磁調理器を用いて、簡易且つ少量を、最適かつ均一に味付することのできる容器入りコンニャクと、その調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、単身所帯、二人所帯などの小人数所帯がますます増加する傾向にあり、このような小人数所帯では、1回の食事で消費する食事の量も少なくなる。加えて栄養・健康面を考慮すれば多品種少量摂取が望ましいことから、1食で消費される特定の惣菜の量も少ないことが望まれている。更に近年では共働き家庭も増加傾向に駆ることから、食事の準備(料理)に費やす時間も限られてきている。この様な背景から、近年では少量の惣菜を小分けして販売したり、或いは少量の惣菜を電子レンジにより簡易且つ短時間で調理することのできる惣菜が提案されている。
【0003】
特に電子レンジを使用して調理を行うことのできる電子レンジ用調理食品及びその製造方法については種々の技術が提案されており、例えば特許文献1(特開2003−180263号公報)が提案されている。この特許文献1では、魚、野菜、果実等の食品素材を組み合わせた電子レンジ用調理食品において、味噌、塩で加工調理した魚素材と野菜素材と組み合わせ、調理ダレを耐熱容器内に入れてある電子レンジ用調理食品が提案されている。
【0004】
ここで、従前における電子レンジは、本来食材や惣菜を加熱する為に使用されるのが一般的であり、加熱目的以外の調理には使用されていないのが一般的であった。しかしながら、近年では味付調理を行うためにも使用されている。
【0005】
例えば、特許文献2(特開2008−295383号公報)では、電子レンジ加熱を利用し、かつ食材の色、香り、食感等を損なうことなく、美味しい料理を調理できるようにするパウチ詰液状食品として、液状食品がパウチに充填密封されてなるパウチ詰液状食品であって、パウチが固形具材の投入口となるジッパー部と電子レンジによる加熱調理時に蒸気を排出する逆止弁機構を有し、固形具材の投入予定量が、液状食品に含まれる液状物1質量部に対して0.1〜9質量部であるパウチ詰液状食品が提案されている。
【0006】
更に特許文献3(特開2008−289408号公報)では、長時間加熱することなくおでん味がしみ込むおでんこんにゃくとして、こんにゃく粉とうま味、塩味および甘味を呈する各調味料を溶解した湯を混和攪拌してこんにゃく糊とし、水酸化カルシウムを加えて、ゲル化させたpH11以上の調味こんにゃくが提案されている。またこの文献には、調味料の添加量は、各調味料を合わせて、調味しようとする呈味に近い量であること、および電子レンジ加熱調理対応の調味こんにゃくであることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−180263号公報
【特許文献2】特開2008−295383号公報
【特許文献3】特開2008−289408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コンニャクの調理方法に関しては、山形県内における伝統的な料理で玉コンニャクを、醤油をベースとする調味料で煮て味付したものがある。かかる玉コンニャクの調理に際しては、コンニャクに味を染込ませる為に長時間煮付けることが必要であり、時間及び手間を要することから、これを短時間で調理できれば望ましいものとなる。
【0009】
そして食材乃至は惣菜の簡易且つ迅速な調理については、上記の通り従前においても電子レンジ等の電磁調理器で加熱し、また調理することが知られている。特にコンニャクに関しては、前記特許文献3に長時間加熱することなくおでん味がしみ込む技術が提案されている。
【0010】
しかしながら、当該特許文献3でコンニャクに味を染込みやすくしているのは、コンニャクの成分を工夫することによりよるものであり、もっぱら電子レンジなどの電磁調理器で調理される為の工夫は十分に行われていない。
【0011】
そこで本発明では、特にコンニャクを短時間で調理することのできる容器入りコンニャク、およびその調理方法を提供することを第一の課題とする。
【0012】
また、電子レンジなどの電磁調理器で味付調理を行った場合、その温度上昇具合やマイクロ波の影響により、従前の調味液では十分な味付を行い得ないものとなっていた。
そこで本発明では、電子レンジなどの電磁調理器での味付けに適した調味液を有する容器入りコンニャクを提供することを第二の課題とする。
【0013】
更に、コンニャクはコンニャクイモを原料として製造されるものであり、これを電子レンジなどの電磁調理器で過熱した場合には、マイクロ波の影響により割れが生じ、また硬くなってしまうことから、コンニャク本来の食味を損なわずに味付調理するのが困難であった。
【0014】
そこで本発明は、電子レンジなどの電磁調理器で調理可能でありながらも、コンニャクの割れや硬化をなくすことのできる容器入りコンニャクを提供することを第三の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、前記課題を念頭において鋭意研究を行った結果、電子レンジ等の電磁調理器を使用して、簡易且つ迅速に調理できるのみならず、さらに最適な味に調理することのできる容器入りコンニャクを開発し、本発明を完成するに至ったものである。
【0016】
即ち本発明では、上記課題の少なくとも何れかを解決する為に、塊状に形成された複数の塊状コンニャクと、当該塊状コンニャクに対して味付する為の調味液と、少なくとも調理時に当該塊状コンニャクおよび調味液を収容するマイクロ波透過性の耐熱容器とからなり、当該調味液の塩分濃度が8.5質量%以上9.5質量%以下である容器入りコンニャクを提供する。
【0017】
本発明に係る容器入りコンニャクを、電子レンジなどの電磁調理器具で調理する場合、その調理時間は大幅に短縮されることになるが、その分、従前における火で煮詰めた場合のような加熱時間も短縮される。その結果、塩分濃度が8.5質量%未満の調味液を使用した場合には、コンニャクに対して十分に味をしみこませることができず、これでは電磁調理器用の製品として適さないことになる。
【0018】
また、調味液の塩分濃度が9.5質量%を超えると、電磁調理器による味付を行った場合でも、塊状のコンニャクに対して均等な味付を行うことができず、部分的に味が濃かったり、薄くなったりしてしまう。これは多くの場合に使用されるであろう電子レンジでは、一旦調理時間をセットして作動させた後においては、均等な味付の為にかき混ぜるなどの動作を行うことができない為である。また、調味液の塩分濃度が9.5質量%を超えてしまうと、調理直後であれば適度な食味を呈することになるが、調理後、1〜6分程経過してしまうと、調理対象であるコンニャクの特質上、調味液が染み込んでしまい、濃い味付になってしまう。よって、第一の本発明に係る容器入りコンニャクでは、コンニャク自体の特性を考慮した上で、調味液の塩分濃度が9.5質量%以下とすることが必要である。
【0019】
そして従前に様に火で煮詰めた調理の場合には、その調味液の塩分濃度が9.5質量%を超える場合には、煮詰まってしまい、場合によっては焦げ付いてしまうこともあるが、本発明では特に容器入りコンニャクとし、これを電磁調理器で調理可能としていることから、焦げ付くおそれは無くなる。
【0020】
よって電磁調理器、特に電子レンジで味付調理する為の容器入りコンニャクとしては、本発明で提供するように調味液の塩分濃度を8.5質量%以上9.5質量%とすることが必要であり、望ましくは8.8質量%以上9.2質量%とする。
【0021】
上記調味液は、少なくとも塩分を含み、常温(5〜35℃)で液体又はゲル状態を呈するものとして製造される。但し、多くの場合、コンニャクに対する風味や食味をより望ましいものとするために、甘味成分や旨味成分などの各種調味料を配合することもできる。
【0022】
また、本発明では前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、マイクロ波透過性の耐熱容器と、当該耐熱容器内に収容された複数の塊状のコンニャクおよび調味液とからなり、当該塊状コンニャクの全体容積に対する調味液の容積の割合が、24容積%以上44容積%以下である容器入りコンニャクを提供する。
【0023】
本発明において塊状コンニャクを電子レンジなどの電磁調理器で調理する場合、マイクロ波が調味液に作用するのみならず、直接塊状コンニャクにも作用する事になる。その結果、過度に加熱された塊状コンニャクが部分的に固まってしまい、また内部の気泡の膨張などにより、内部に割れが生じてしまう。このような加熱による硬化やわれなどが発生してしまうと、コンニャク本来の食感が損なわれてしまうことになる。
【0024】
そこで、この様なコンニャクの硬化や割れを避ける為、およびコンニャクに対する味付を確実に行うためには、塊状コンニャクの全体容積に対する調味液の容積の割合を上記のように調整する必要がある。
【0025】
即ち、塊状コンニャクの全体容積に対する調味液の容積の割合(以下、「容積比」という)が24容積%未満であると、調味液の分量が少なくなり、電子レンジから発せられるマイクロ波が直接塊状コンニャクに照射される。このとき、温度上昇は調味液よりも固体であるコンニャクの方が早く温まることから、塊状コンニャクに直接マイクロ波が照射されることで当該コンニャクの温度が高くなり過ぎ、割れや硬化などの問題が生じる。更に、当該調味料の配合量が少な過ぎるとコンニャクに対する均等な味付が困難になるとの問題も生じる。そこで、本発明では、当該容積比を24容積%以上とすることで、コンニャクの温度が上昇し過ぎる前に、調味液を沸騰させて泡状にし、当該コンニャクの温度を適度に管理するものである。
【0026】
一方で、塊状コンニャクの全体容積に対する調味液の容積の割合が44容積%を超えてしまうと、コンニャクに対する味付を行い得る程度に、十分に調味液を加熱するまでに多くの時間を要してしまい、この加熱時間により塊状コンニャクの内部温度は上昇し、同じように割れや硬化の問題が発生してしまう。また、容積比が44容積%を超えてしまうと、液体である調味液の加熱に時間を要してしまい、調理時間の短縮効果が少ないとの問題もある。
【0027】
よって本発明では、電子レンジなどの電磁調理器具から出力されるマイクロ波で、固体で加熱しやすく且つ割れや硬化の問題が生じるコンニャクに対して調理を行うためには、塊状コンニャクの全体容積に対する調味液の容積の割合を24容積%以上44容積%以下にする必要がある。容積比をこのように調整することにより、マイクロ波により当該調味液が泡沫状になって塊状コンニャクを包み、これにより満遍なく味付を行うことができ、かつ前記課題を解決することができる。
【0028】
上記本発明に係る容器入りコンニャクに使用される容器は、例えば袋状のものであっても良いが、望ましくは自立可能な耐熱容器が使用される。即ち、本発明に係る容器入りコンニャクでは、袋状のものに塊状コンニャクと個別包装した調味液を収容し、電磁調理器で調理する際には、これらを別の容器に移して調理することもできる。また利用者が手軽に調理することを考慮すれば、マイクロ波透過性の耐熱容器であって、更にそのまま電磁調理器で使用できるように、自立可能に形成された容器を使用することが望ましい。この自立可能な容器としては、袋体であって開封後に自立可能なように整形できるものの他、丼、椀、皿などの食器形状に形成することができる。また耐熱容器であるから、少なくとも90℃〜110℃での耐熱性を有する合成樹脂、木、竹などを用いて形成することができる。また、このような耐熱性容器は、前記塊状コンニャク、個別包装された調味液と共に、これらを収容する袋などの容器内に入れて別に提供することもできる。
【0029】
そして、かかる自立可能な耐熱容器は、更に調理に際して塊状コンニャクを収容する収容空間を具備する必要がある。かかる収容空間は、調理時に収容する塊状コンニャクの大きさや数に応じて適宜調整することができるが、望ましくは容器中に収容した塊状コンニャクが2段以上に積み重なるような大きさに形成されることが望ましい。塊状コンニャクを2段以上に積み重ねることにより、調味液の液面から突き出るコンニャクの数を減じ、これにより割れや固化の問題を解決する為である。
【0030】
更に、本発明に係る塊状コンニャクは、板状に形成されたコンニャクでも、短冊状に形成されたコンニャクでも、更に三角形に形成されたコンニャクでも良いが、望ましくは球体に形成された玉コンニャクが使用される。これは、電子レンジなどの電磁調理器で味付を行う場合、加熱開始後はかき混ぜることができないことになるが、塊状コンニャク同士が面で接した場合には、その部分に調味液が十分に回り込むことができず、味付が不均一になってしまうおそれがあり、一方で個々の塊状コンニャクが球体に形成されていれば、隣り合うコンニャク同士はより小さい面で接することになり、更に個々の塊状コンニャク同士間に調味液を流通させる空間を最大限確保でき、これにより均一な味付を行うことができる為である。また、この様に、個々の塊状コンニャクに調味液を均一に行き渡らせ、更に隣り合うコンニャク同士の接触面積を小さくする為には、当該球状に形成された塊状コンニャクは、直径25mm以上40mm以下の範囲の玉コンニャクとする事が望ましい。
【0031】
そして本発明では、前記課題の少なくとも何れかの課題を解決する為に、マイクロ波により加熱する調理器具を用いてコンニャクを調理する方法であって、容器内に複数の塊状コンニャクと調味液を入れて加熱し、調味液を泡沫状態にして塊状のコンニャクを煮るコンニャクの調理方法を提供する。
【0032】
かかる調理方法においては、電磁調理器から発せられるマイクロ波により調味液が泡沫状になり、これが塊状コンニャクを包んで、更にマイクロ波が塊状コンニャクを加熱して膨張させることから、調味液が効率的にコンニャク内部にも行き渡り、よって迅速に中まで味が染み通ったコンニャクを調理することができる。
【0033】
更に本発明では、上記コンニャクの調理法法において、前記調味液は、全ての塊状コンニャクが、その高さの1/3以上を前記調味液中に存在する分量で使用されることが望ましい。
全てのコンニャクが、その高さの3分の1以上を調味液中に存在させておけば、これにマイクロ波を照射しても、調味液の表面側が迅速に煮立って発泡し、これが塊状コンニャクを覆うことになる。その結果、コンニャクが高温になり過ぎることが無くなり、割れや硬化の問題を解消することができる。
【0034】
更にこの容器入りコンニャクをマイクロ波で調理する場合には、一般に市販されている電子レンジにおいて500W〜600Wの出力で調理を行うことが望ましい。これは、コンニャクは一般に水の中に入れた状態で提供され、季節の変化等に起因する周囲の温度により、コンニャク自体の温度も変化してしまうことになるが、約500W〜600W前後の出力であれば、このような調理開始前のコンニャクの温度に関係なく、調理時間をほぼ一定に設定することができる為である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態に係る容器入りコンニャクを示しており、(A)は当該容器入りコンニャクの構成を示す内部透視斜視図、(B)は当該容器入りコンニャクの調理状態を示す内部透視斜視図
【図2】容器入りコンニャクに使用される容器と、他の材料の使用量を示す略図
【図3】他の実施の形態に係る容器入りコンニャクを示す内部透視斜視図
【図4】更に他の実施の形態に係る容器入りコンニャクを示す内部透視斜視図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る容器入りコンニャクを、図面に示す幾つかの実施の形態を参照しながら説明する。
【0037】
図1は、1つの実施の形態に係る容器入りコンニャクを示しており、(A)は当該容器入りコンニャクの構成を示す内部透視斜視図、(B)は当該容器入りコンニャクの調理状態を示す内部透視斜視図である。この図1に示すように、当該容器入りコンニャクは、底面が展開して自立することのできる耐熱性を有する袋体30(所謂自立型ポリ袋)とで構成されている。
【0038】
この袋体30(自立型ポリ袋)は、底面を展開した場合に自立することができるように構成されており、自立した状態において、約12個の玉コンニャク10を上下に複数段に重ねることができる程度の水平断面積に形成されている。かかる袋体30には、本実施の形態では、約3.6cmの容積の玉コンニャク10を12個収容しており、その結果、当該塊状コンニャク10全体の体積を約43.2cmとしている。また、調味液20は、醤油をベースとし、砂糖などを加えて味を調え、更に旨味成分として動物又は植物由来の成分が含まれている。かかる調味液20の塩分濃度は水分100gあたり、9.07gの塩分を配合して形成されている(約9.07質量%)。
【0039】
更に、この容器入りコンニャクは、耐熱容器としての袋体30に収容される塊状の玉コンニャク10及び調味液20と、更に袋体30内に敷き置かれた塊状コンニャク10の上に載せられる落し蓋(図示せず)を伴うこともできる。かかる落し蓋は、望ましくは複数の孔が穿たれたシート状に形成されており、少なくとも調味液20を行き渡らせることのできる材料および形状に形成される。かかる落し蓋は、プラスチックや不織布、或いは表面処理が行われた布帛などを用いて形成することができる。ただし、この落し蓋は任意の構成である。
【0040】
以上の通り、袋体30として形成された耐熱容器内には、複数の玉コンニャク10、調味液20が収容され、任意に落し蓋が収容されることになるが、これらは流通の段階において、個別に包装することもできる。例えば調味液20を小さな袋体内に密閉することができ、また塊状コンニャク10も別途袋体内に収容することができ、更に耐熱容器を伴って、これらをまとめて袋内に収容することもできる。更に、塊状コンニャク10は耐熱容器内において水中に収容し、個別包装した調味液20はこの水中に存在させることもできる。
【0041】
以上のように構成された容器入りコンニャクは、加熱調理に際して塊状コンニャク10および調味液20を耐熱容器30内に充填する。そしてこれを電子レンジ内に入れてマイクロ波を照射することにより、調味液20が沸騰し、沸騰した泡が塊状コンニャク10の全体に満遍なく行き渡る。なお、仮に落し蓋を使用した場合には、調味液20が少量であっても、当該落し蓋により調味液20をより均等に行き渡らせることができるようになる。
【0042】
そして上記のように、約3.6cmの容積の玉コンニャク10を12個使用した例においては、電子レンジの出力を600Wにした状態で、約5分30秒間、マイクロ波を照射することにより、均等に味付され、かつ割れや硬化を可能な限り抑えた味つきの玉コンニャク10が完成する。
【0043】
図2は、この容器入りコンニャクに使用される容器と、他の材料の使用量との関係を示す略図である。この図において、調味液20の使用量は高さAとなる量であり、大凡均等に敷き詰めた玉コンニャク10は高さBとなるように、その充填量や袋体30の水平断面積が調整される。更に当該袋体30の高さはDである。このように構成された容器入りコンニャクにマイクロ波を照射すると、調味液20は発泡して、この発泡した部分22は高さがCとなる所まで盛り上がる。このとき、袋体30の高さDが十分でなければ、吹き零れてしまうことがあるため、当該袋体30の高さDは、使用する調味液20の高さAの3倍以上で、特に3.3〜5.3倍に調整されるのが望ましい。
【0044】
更に図3および4は他の実施の形態に係る容器入りコンニャクを示す、内部透視斜視図である。図3に示す容器入りコンニャクは、特に耐熱容器として、樹脂を用いて形成された器状の容器30'が使用されており、この中には、それぞれ個別包装された調味液20と玉コンニャク10とが収容されている。かかる容器入りコンニャクでは、調理に際して袋体30内に水と共に収容された玉コンニャク10の水を切って容器30'内にあけ、その上に調味液20を注ぎいれる。この状態でマイクロ波を照射することにより、前述の通り、均等に味付され、且つ割れや硬化の発生を許容できる程度におさめた玉コンニャク10を作ることができる。
【0045】
一方、図4は、図3と同じく保形成性を有する器状に形成された容器30'内を使用するが、玉コンニャク10はこの器状の容器30'内に水と共に収容されている。よって、このように形成した場合には、当該容器30'に対する蓋の組み合わせが液密になるように形成される必要がある。そして使用に際しては、容器30'内の水を捨てて、これに個別包装された調味液20をいれ、そして前述の通り、マイクロ波を照射することにより、均等に味付された玉コンニャク10を作ることができる。
【実施例1】
【0046】
以下では、本発明に係る容器入りコンニャクについて、その効果を明らかにする為に実験を行った。この実施例において使用した容器入りコンニャクは、以下の通りである。
【0047】
「実験例1」
直径約3.6cm(24.4cm)の玉コンニャクを12個使用した。かかる玉コンニャク全体の容積は、約292.8cmであった。一方、調味液は、醤油、砂糖、ダシ成分を用いて製造し、その塩分濃度を9.07質量%(調味液1)、9.07質量%(調味液2)、および12.01質量%(調味液4)に調整して、夫々について、実験を行った。かかる調味液は、玉コンニャク全体容積約292.8cmに対して、それぞれ約100cm使用した。
【0048】
そしてこの玉コンニャクと調味液とを、当該玉コンニャクが二段に並ぶ程度の水平断面積を有する耐熱容器に入れ、これを電子レンジの出力を600Wで、5分30秒間加熱した。この加熱過程においては、加熱開始から4分30秒後に、調味液が泡状になって玉コンニャクを包んでいた。
【0049】
その結果、調理された直後の玉コンニャクを9人のパネラーで試食し、味付の妥当性を「うすい」、「丁度良い」、「塩辛い」の三段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
「実験例2」
実験例1と同じ方法で調理した玉コンニャクを、調理後、それぞれの調味液中に浸したまま5分間放置し、5分後の玉コンニャクを9人のパネラーで試食し、味付の妥当性を「うすい」、「丁度良い」、「塩辛い」の三段階で評価した。その結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
「考察」
以上の実験結果から、調味液の塩分濃度を9.07質量%にすると、調理後、おおよそ食するであろう5分後の食味が適切になる。
【0054】
「実験例3」
この実験では、塊状コンニャクの全体容積に対する調味液の割合の観点から、加熱時におけるコンニャクの割れ及び硬化の有無を評価した。
即ち、直径約3.6cm(24.4cm)の玉コンニャクを12個使用し、その全体の容積を約292.8cmとし、。一方、調味液は、塩分濃度を9.07質量%に調整して約50cm使用した。これを実験例1と同じく、当該玉コンニャクが二段に並ぶ程度の水平断面積を有する耐熱容器に入れ、これを電子レンジの出力を600Wで、5分30秒間加熱した。
その結果、調理された直後の玉コンニャクは、当初、調味液の表面に出ている部分において硬化している所があり、更にコンニャク内部に割れが複数発生して、コンニャク本来の食味(煮た状態のコンニャクの食味)を失っていた。
【0055】
「実験例4」
この実験でも、塊状コンニャクの全体容積に対する調味液の割合の観点から、加熱時におけるコンニャクの割れ及び硬化の有無を評価した。
本実験例では、直径約3.6cm(24.4cm)の玉コンニャクを3個使用し、その全体の容積を約73.2cmとし、。一方、調味液は、塩分濃度を9.07質量%に調整して約100cm使用した。これらを耐熱容器に入れ、これを電子レンジの出力を600Wで、3分間加熱した。
その結果、調理された直後の玉コンニャクは、表面における硬化は存在しないものの、コンニャク内部に割れが複数発生し、コンニャク本来の食味(煮た状態のコンニャクの食味)を失っていた。
【符号の説明】
【0056】
10 塊状コンニャク(玉コンニャク)
20 調味液
30 袋体(耐熱容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状に形成された複数の塊状コンニャクと、当該塊状コンニャクに対して味付する為の調味液と、少なくとも調理時に当該塊状コンニャクおよび調味液を収容するマイクロ波透過性の耐熱容器とからなり、
当該調味液の塩分濃度が8.5質量%以上9.5質量%以下であることを特徴とする、容器入りコンニャク。
【請求項2】
マイクロ波透過性の耐熱容器と、当該耐熱容器内に収容された複数の塊状のコンニャクおよび調味液とからなり、
当該塊状コンニャクの全体容積に対する調味液の容積の割合が、24容積%以上44容積%以下であることを特徴とする、容器入りコンニャク。
【請求項3】
前記塊状コンニャクは、直径25mm以上40mm以下の範囲の球状に形成された玉コンニャクである、請求項1又は2に記載の容器入りコンニャク。
【請求項4】
マイクロ波により加熱する調理器具を用いてコンニャクを調理する方法であって、
容器内に複数の塊状コンニャクと調味液を入れて加熱し、調味液を泡沫状態にして塊状のコンニャクを煮ることを特徴とする、コンニャクの調理方法。
【請求項5】
前記調味液は、全ての塊状コンニャクが、その高さの1/3以上を前記調味液中に存在する分量で使用される、請求項4に記載のコンニャクの調理方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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