説明

容器入り飲料とその製造方法

【課題】コストが安く軽量の非耐熱性プラスチック容器に70℃以上の高温で液体を充填後に、熱収縮ラベルを装着することで、低コスト且つ軽量の容器入り飲料を製造するための技術の提供。
【解決手段】非耐熱性プラスチック容器に70℃以上の高温で液体を充填後、容器外周に熱収縮ラベルを装着して容器入り飲料を製造することを特徴とする容器入り飲料の製造方法。非耐熱性プラスチック容器は、胴体部の結晶化度が30%未満の非耐熱性プラスチックからなることが好ましく、非耐熱性プラスチックがポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載する。)ボトルなどのプラスチックボトルに飲料を充填し、プラスチックフィルム製のラベルを装着した容器入り飲料とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックボトルに飲料を充填し、プラスチックフィルム製の熱収縮ラベルを装着した容器入り飲料において、熱収縮ラベルの収縮を低温且つ短時間で行うためのものとして、特許文献1に開示された技術が提案されている。
特許文献1には、ポリエステル製のベースフィルムに印刷層が設けられたポリエステル製熱収縮ラベルであって、該ラベルの70℃温水中の初期3秒間における平均収縮速度が、3〜10%/秒、好ましくは5〜10%/秒であることを特徴とするポリエステル製熱収縮ラベルが開示されている。
【特許文献1】特開平11−115133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
PETボトル等のプラスチップボトルに飲料を70℃以上の高温で充填する場合、熱による変形や強度低下に耐えられるよう結晶化度30%以上の耐熱性プラスチック容器が使用されている。しかしながら、この種の耐熱性容器は質量が嵩み、コストも高いという欠点がある。
【0004】
一方、特許文献1に記載されているように、高温充填しない非耐熱性ポリエステル容器においては、低温且つ短時間で装着できる熱収縮ラベルを装着しているが、この特許文献1には、非耐熱性容器に、70℃以上の高温で液体を充填することについて記載されていない。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、コストが安く軽量の非耐熱性プラスチック容器に70℃以上の高温で液体を充填後に、熱収縮ラベルを装着することで、低コスト且つ軽量の容器入り飲料を製造するための技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明者らは検討を重ねた結果、コストが安く軽量の非耐熱性プラスチック容器であっても、70℃以上の高温で液体を充填後に、熱収縮ラベルを装着することにより、実用上問題の無い容器強度が達成できることを確認し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、非耐熱性プラスチック容器に70℃以上の高温で液体を充填後、容器外周に熱収縮ラベルを装着して容器入り飲料を製造することを特徴とする容器入り飲料の製造方法を提供する。
【0007】
本発明の容器入り飲料の製造方法において、非耐熱性プラスチック容器は、胴体部の結晶化度が30%未満の非耐熱性プラスチックからなることが好ましい。
【0008】
本発明の容器入り飲料の製造方法において、非耐熱性プラスチックは、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0009】
また本発明は、前述した本発明に係る容器入り飲料の製造方法により製造されたことを特徴とする容器入り飲料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コストが安く軽量の非耐熱性プラスチック容器に70℃以上の高温で液体を充填後に、熱収縮ラベルを装着することで、低コスト且つ軽量の容器入り飲料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の容器入り飲料の一実施形態を示す正面図であり、図中、符号1は容器入り飲料、2は非耐熱性容器、3は蓋、4は熱収縮ラベル、5は液体である。
【0012】
本実施形態の容器入り飲料1は、非耐熱性プラスチックからなる非耐熱性容器2に70℃以上の高温で液体5を充填し、この容器口部に蓋3を螺着し密栓した後、非耐熱性容器2外周に熱収縮ラベル4を装着して製造したものであることを特徴としている。
【0013】
本実施形態の容器入り飲料1において、非耐熱性容器は、胴体部の結晶化度が30%未満の非耐熱性プラスチックからなることが好ましい。また、この非耐熱性プラスチックは、PETであることが好ましい。
なお、非耐熱性容器2を構成する非耐熱性プラスチックとしては、本実施形態に限定されるものではなく、ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂とポリビニルアルコールとの複合材などの非耐熱性プラスチックを用いることもできる。
【0014】
結晶化度が30%以上のプラスチックは、耐熱性が良好なので、本発明における「非耐熱性プラスチック」の範疇には含まれない。この結晶化度が30%以上のプラスチックは、本発明において用いる非耐熱性プラスチックと比べ、容器とした場合に質量が増し、またコストが増加してしまう。
【0015】
本実施形態の容器入り飲料1において、熱収縮ラベル4としては、従来周知の熱収縮ラベルの中から適宜選択して用いることができ、例えば、ポリエステル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリオレフィン系フィルムなどのフィルム基材に印刷層が設けられた熱収縮ラベルを用いることができる。この熱収縮ラベル4の装着方法は、限定されないが、例えば、容器胴部より大径の円筒状のラベルを、液体充填後の非耐熱性容器2の外側に被せ、該ラベルを加熱して熱収縮させ、非耐熱性容器2に装着する方法が好ましい。
【0016】
なお、本発明の容器入り飲料において、非耐熱性容器の形状は円筒状に限らず、角筒状などとしてもよい。
また、非耐熱性容器2に充填する液体としては、特に限定されず、70℃以上の高温で充填する各種の飲料の中から適宜選択し得る。
以下、実施例により本発明の効果を実証する。
【実施例】
【0017】
[比較例1]
非耐熱性プラスチックとして、三井化学社製、PET(商品名SA135)を用い、PETボトル製造装置(SIDEL社製、SBO1 LABO)を用いて容量500mLの非耐熱性ボトルを作製した。得られたボトルの質量は、24gであった。充填前の該ボトルの胴部径寸法は、φ68.0mmとした。
比較例1では、前記の通り作製した非耐熱性ボトルに、75℃に加熱した蒸留水を500mL充填し、容器口部に樹脂製キャップを装着して密栓し、熱収縮ラベルを装着せずに容器入り飲料を製造した。
【0018】
[実施例]
比較例1で作製した非耐熱性ボトル(質量24g)を用い、この非耐熱性ボトルに、75℃に加熱した蒸留水を500mL充填し、容器口部に樹脂製キャップを装着して密栓した後、熱収縮ラベル(1軸延伸ポリエステル系フィルム、厚さ45μm、白色の印刷層有り、熱収縮前の72.6mm)を被せ、スチームトンネルによって該ラベルを加熱して熱収縮させ、非耐熱性ボトルの胴部に装着し、図1に示す容器入り飲料を製造した。
【0019】
[比較例2]
従来よりホットパック充填に用いている耐熱性ボトル(結晶化度34%)を用いた。ボトルの質量は、26gであった。充填前の該ボトルの胴部径寸法は、前記非耐熱性ボトルと同じく、φ68.0mmとした。
この耐熱性ボトルに、75℃に加熱した蒸留水を500mL充填し、容器口部に樹脂製キャップを装着して密栓し、比較例1と同様に、熱収縮ラベルを装着せずに容器入り飲料を製造した。
【0020】
前記比較例1,2及び実施例のそれぞれの容器入り飲料に対して、次の横圧縮変形量測定試験を行い、その結果を比較した。
<横圧縮変形量測定試験>
それぞれの容器入り飲料のボトル側面を58.8Nの荷重で押した時の変形量を計測した。この横圧縮変形量は、自動販売機適性の代用特性値として用いられる。
【0021】
[結果]
前記横圧縮変形量測定試験の測定結果は、次の通りであった。
・比較例1(ボトル質量24g、ラベル無し)の横圧変形量は、6.08mm。
・実施例(ボトル質量24g、ラベル有り)の横圧変形量は、4.09mm。
・比較例2(ボトル質量26g、ラベル無し)の横圧変形量は、4.11mm。
【0022】
前記結果から、本発明に係る実施例では、コストが安く軽量の非耐熱性プラスチック容器に70℃以上の高温で液体を充填後に、熱収縮ラベルを装着することで、自動販売機適性の代用特性値である横圧縮変形量が2mm程度軽減することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の容器入り飲料の一実施形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…容器入り飲料、2…非耐熱性容器、3…蓋、4…熱収縮ラベル、5…液体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非耐熱性プラスチック容器に70℃以上の高温で液体を充填後、容器外周に熱収縮ラベルを装着して容器入り飲料を製造することを特徴とする容器入り飲料の製造方法。
【請求項2】
非耐熱性プラスチック容器は、胴体部の結晶化度が30%未満の非耐熱性プラスチックからなることを特徴とする請求項1に記載の容器入り飲料の製造方法。
【請求項3】
非耐熱性プラスチックがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項2に記載の容器入り飲料の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の容器入り飲料の製造方法により製造されたことを特徴とする容器入り飲料。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−90995(P2009−90995A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262036(P2007−262036)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】