説明

容器内の液体種別を判別する装置およびその制御方法

【課題】容器内部の液体種別を、容器の材質によらず、容器外部から迅速に判別できる技術を提供する。
【解決手段】アルミニウム製等導電性の容器201の外壁には可撓性のプラスチックフィルム202が該容器201に接触する態様で設けられ、このプラスチックフィルム202には電気抵抗素子からなる熱源203および温度センサ204が設けられている。熱源203がOFFの状態で容器201の表面温度を測定し、熱源203をたとえば2秒間ONにする。次に、たとえば0.5秒後の容器201の表面温度を測定し、先の測定結果との差を求める。その差が閾値より小さければ容器内液体は安全な水を主成分とする液体であると判断でき、青ランプを点灯する。差が閾値以上である場合には容器内液体は安全な水を主成分とする液体とは判断できないので、異常を示す赤ランプを点灯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の液体種別を判別する装置およびその制御方法に関し、特に容器内の液体が危険物ではない水を主成分とする液体であるか否かを判別する技術に適用して有効なものである。
【背景技術】
【0002】
航空機、電車、バス等の旅客輸送機関は旅客を安全に輸送する義務がある。特に、航空機における事故はその被害が甚大であり、安全性には高い注意を払う必要がある。そのため、航空機を利用する旅客にはX線画像撮影装置による手荷物検査、金属探知機あるいはボディチェックによる身体検査、必要に応じて尋問等を行い、悪意のある旅客を峻別して航空機の利用を拒否するようにしている。しかしながら、利用旅客の多さ、旅客への利便性を考慮すると、多大な時間をかけた厳密な検査あるいは尋問を旅客全員に施すことは困難である。一方、悪意のある旅客(たとえばテロリスト)はこれら検査をかいくぐって危険物を機内に持ち込もうとする。現状の手荷物検査等で発見できる危険物については特に問題を生じないものの、金属探知機、X線撮影で検知できない危険物、たとえばガソリン等の可燃液体などはこれを検知することが比較的困難である。ガソリン等の危険物液体はこれを市場で調達することが容易であり、さらに、危険物液体を市販飲料の容器(たとえばペットボトル)に充填したような場合には、真正な飲料との区別がつき難くなるので、悪意のある者には採用し易い危険行為であると言える。従って、これら危険行為に対する対策は十分に検討しておく必要がある。
【0003】
ガソリン等危険物液体と主成分が水である飲料とを識別するには、臭いを嗅ぐ等の官能検査その他各種の識別方法がある。しかし、航空機利用の際の手荷物検査では検査の迅速性が要求されるので非接触で迅速に検査できることが望ましい。そこで、本発明者らは、非接触かつ迅速な検査方法の一つとして、液体の種類による誘電率の相違を利用したペットボトル等絶縁体(誘電体)容器内の液体種別の判別手法を開発した。これら手法に係る発明は、本願の出願人と同一の出願人による特願2003−198046、あるいは、特願2003−385627に添付した明細書に記載されている。
【0004】
ところで、液体種類の判別手法としては、本発明者らによる前記発明で採用した液体種類による誘電率の相違のほか、液体種類による熱的特性の相違を活用する手法も考えられる。たとえば、特許文献1には、自動車のガソリンタンク等燃料タンクの内部に熱供給手段と温度変化測定手段を配置し、タンクの壁面側と燃料側の熱伝導材に伝達される熱の挙動からタンク内の燃料性状(たとえば沸点やT50値)を検出するセンサに関する技術が記載されている。また、特許文献2には、石油タンクや油供給路中の水等の混入を検出することを目的として、傍熱型流量検出器を流体判別器として利用する技術が開示されている。傍熱型流量計は発熱素子と流量検出素子(温度センサ)とを流体内に配置し、流体の流速によって流量検出素子の温度が変化する特性を利用した流速計であることは良く知られている。特許文献2の技術は、この傍熱型流量計の流速0における初期出力が傍熱型流量計に接している流体の熱特性に依存して変化する点に着目し、これを流体の識別に用いようとするものである。さらに、特許文献3には、容器の外面を加熱する加熱手段と加熱手段の近傍に配置した温度センサとを備える測定モジュールを利用した液位測定装置の技術が開示されている。この液位測定装置では複数の測定モジュールを容器外側に一列に付勢して配置し、容器内部に液がある場合と無い場合の容器外壁の熱挙動の相違からいずれの測定モジュールの間に液面が位置するかを検出しようとするものである。これら特許文献1〜3に記載の技術は、いずれも液体の熱的性質(液がない場合を含めて)を利用して液体の種別(液の有無)を判別しようとするものである。
【0005】
【特許文献1】特開平10−325815号公報
【特許文献2】特開2000−186815号公報
【特許文献3】特開2002−214020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の通り、航空機等の内部に持ち込む液体が危険物でないことの検査に適した検査装置として、本発明者らは、液体の種類による誘電率の相違を利用した容器内の液体種別の判別装置および判別手法を開発した。しかし、測定原理からも明らかなように、この手法は容器が絶縁体(誘電体)である場合にのみ適用できる。航空機等の内部に持ち込める飲料容器は、ペットボトルやガラス瓶等絶縁体に限られず、アルミ缶等導電性の金属容器もある。これら導電性の金属容器についてもペットボトル等と同様、迅速かつ非接触な検査が望まれる。
【0007】
一方、導電性の容器内の液体の種類判別には、前記した特許文献1〜3の技術を適用し得る。しかしながら、特許文献1および2に記載のセンサは何れも容器内部に設置されるものであり、前記したような機内持ち込み検査等検査の迅速性が要求される場合には適さない。しかも、特許文献1および2に記載の技術ではセンサを容器内部の液体に接触させる必要があり、未開封の飲料液体を開封するという一種の破壊検査となる。また、センサを飲料に接触させるのは衛生的にも好ましくない。このため機内持ち込み検査等に採用することはできない。機内持ち込み検査への適用を考慮すれば、やはり容器外部から容器内部の液体種別を判別できることが必須である。特許文献3に記載の技術は容器外部から液体性状(液体が存在するか否か)を測定することは可能である。しかし特許文献3の技術では液体が存在するか否かを検出できるのみであり液体の種別を判別することはできない。
【0008】
また、容器の材質がアルミニウム等の導電体であっても容器を開封することなく迅速に液体種別の判別が可能な手法として、ハロゲンランプ等の赤外線熱源を用いて非接触で測定する手法を採用する場合には幾つかの改善点があることを本発明者らは認識している。すなわち、ハロゲンランプ等の赤外線熱源による容器外壁の加熱では、容器外壁の形状や塗装等容器の外壁性状によって加熱状態が相違する問題があり、加熱部位近傍の温度を非接触で測定する方式では、容器外壁の形状等の影響を受けて測定値に含まれる誤差が大きくなる不具合が発生する可能性がある。また、ハロゲンランプを用いる場合には、ハロゲンランプの寿命によって装置の寿命が制限され、装置寿命を長寿命化する要請がある。さらに、加熱手段および温度測定手段を小型化することや、量産しやすい加熱手段および温度測定手段とすること等の要請がある。
【0009】
本発明の目的は、容器内部の液体種別を、容器の材質によらず、容器外部から迅速に、好ましくは非接触で判別できる技術を提供することにある。また、本発明の目的は、容器内部の液体種別を、容器の材質によらず、容器外部から迅速に判別できる液体判別手法において、容器外壁への安定した加熱、および、加熱部近傍の安定した温度測定を実現する手法を提供することにある。本発明の他の目的は、装置を長寿命化することにある。また、加熱部および温度計測部の小型化を実現することにある。さらに、量産化対応に優れた装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書で開示する発明は、以下の通りである。なお、本課題を解決するための手段の項で説明する発明を区別するために発明1、発明2のように発明に符号を付して表現する。ただし、この符号はあくまでも発明を指標するために付す便宜的なものであって発明の広狭や順番を表すものではない。本願発明1の容器内の液体種別を判別する装置は、容器の外部に配置する熱源と、前記熱源の近傍に配置され、前記容器の外壁温度を電圧または電流に変換する温度センサと、前記容器の内容物が危険である旨の警報を発することができる報知手段と、前記熱源への電力の供給を制御し、前記熱源に電力を供給する前または供給した時の時刻t1における前記温度センサの出力の値と前記時刻t1から所定の経過時間t2を経過した時刻t1+t2における前記温度センサの出力の値との差を、所定の閾値と比較し、前記報知手段に警報信号を出力する制御判定回路と、を含む。
【0011】
発明1の容器内の液体種別を判別する装置では、容器壁面の局所的な部分に熱源からの熱を一定時間供給する。そして、熱供給部分の近傍の容器壁面の温度変化を測定する。容器壁面に供給される熱の伝導モデルとして、容器(容器材料内)を伝わる経路と容器内の液体に伝わる経路の2つの経路によって熱が拡散される伝導モデルを考えることができる。また、容器壁の全面積に対して熱供給部分の面積が十分に小さく、着目している領域(温度の測定点)が熱供給部分に十分近いと仮定すると、熱が供給される容器壁は無限遠まで延びる平面板と考えることができ、スポット的に供給された熱は、熱供給点を中心に平面板の内部を放射状に熱拡散すると考えることができる。よって、熱供給点からの1次元の熱伝導モデルを考えれば、測定点の熱プロファイルを定性的に把握することが可能である。すなわち、熱供給点を中心に1次元フィンが放射状に配置されたと仮定して発明1の測定点における熱プロファイルを考察できる。
【0012】
今、点x0(x=0)に熱量Qの熱が供給されており、点x0での温度をTs、無限遠xの温度をTとすると、点xでの温度Tは、1次元フィンの熱伝導モデルより、数1のように表される。
【0013】
[数1]
T−T=(Ts−T)exp(−SQRT(hp/kA)x)
【0014】
ここで、expは自然対数、SQRTは二乗根、hは熱伝達率、pはフィン周囲長、kは金属の熱伝導度、Aはフィン断面積である。
【0015】
1次元フィンの片面にだけ液が接触し、他の面は断熱状態にあると仮定すると、周囲長pは、ほぼフィンの幅lとフィンの厚さtの和で表され、また、tはlに対して十分に小さな値なので、数1は、数2のように表される。
【0016】
[数2]
T−T=(Ts−T)exp(−SQRT(h/kt)x)
【0017】
熱伝達率hは物性値ではないので、概略の物性値の関数で表す。水平円柱の周囲が液体である時の平均熱伝達率(ヌセルト数)Nは、数3で表されるので、熱伝達率hは数4のように表せる。
【0018】
[数3]
(hl/λ)=N=0.1(lgν−2Cpμλ−11/3
【0019】
[数4]
h=0.1(λgCpρμ−11/3
【0020】
ここで、gは重力加速度、νは液の動粘度(=μ/ρ:ρは液の密度)、Cpは液の定圧比熱、μは液の粘度、λは液の熱伝導度である。
【0021】
数2を、T−T=(Ts−T)exp(−x/τ)と書き改めると、1次元フィンの距離xに関する温度の減衰(熱プロファイル)は、減衰定数τで特徴付けられ、数4を適用すると、τは数5のように表される。
【0022】
[数5]
τ=(ktμ1/3λ−2/3−1/3Cp−1/3ρ−2/31/2
【0023】
すなわち、フィン材料(容器)の熱伝導率k、あるいはフィン厚さ(容器厚さ)tが大きいとτは大きくなり、熱供給点から比較的遠い位置であっても温度の上昇を観測することができることがわかる。本発明1を適用する容器として、容器内の液体(水、あるいは、アルコールやガソリン等の可燃液体を想定する)の熱伝導率λより十分に大きい熱伝導率kの材料を選択すれば、あるいは、容器厚さtが十分に厚いものを採用すれば、熱供給点より離れた場所の温度を観測しても十分に機能することを示している。本発明1に好適な容器材料としては、アルミニウム、鉄等の金属を例示できる。これら金属の熱伝導率は容器内の液体より十分に大きい。本発明1において、熱供給部分から温度センサの観測点までの距離として数mmから数cmの範囲を想定している。
【0024】
また、数5より、液体の熱伝導率λおよび密度ρが大きいほどτに与える影響が大きいことがわかる。すなわち、液体の熱伝導率λおよび密度ρが大きくなるとτは小さくなり、熱供給量(Q)が一定であるなら観測点の冷却速度が大きいことを示す。よって、容器に充填される液体の種類が相違し、その熱的特性(特に熱伝導率λおよび密度ρ)が相違すれば、これをもとに液体の相違を検知することが可能であることを示す。
【0025】
上記考察の通り、容器内に液体を充填し、容器外壁の局部に熱を供給して、その熱供給部から比較的離れた観測点であっても、容器内部の液体の熱特性(特に熱伝導率λおよび密度ρ)を反映する温度変化を観測することができる。そして、本発明1では、熱供給前の温度と熱供給後の一定時間経過後の温度とを比較することによって容器内部の液体の種別を判別する。水の熱伝導率は0.63(W/mk)であり、エタノールおよび石油が各々0.18(W/mk)、0.15(W/mk)であることと比較すると水の熱伝導率の方が3.5倍以上大きい。よって、容器内部に水がある場合には観測点は冷却されやすく、容器内にエタノール、石油等の危険物液体がある場合には冷却され難い。そこで熱供給前後の温度差について予め閾値を設定し、これを超えた場合には安全であり、超えない場合は危険物であると判断し、警報を発することができる。
【0026】
また、本発明1では、外部から熱を供給し、容器外壁の温度測定を行って容器内部の液体種別を判別できるので、容器を開封する必要はなく、簡便に判定することが可能であり、航空機等機内持ち込み検査に非常に適している。さらに、容器外壁の温度測定は2回の測定で終了するので極めて簡便かつ迅速に容器内の液体種別を判別することが可能である。
【0027】
温度計測の結果からの液体種別の判別には、測定結果(温度センサの出力)をディジタルデータとして取り扱い、CPU等の情報処理装置を用いてソフトウェア的に処理することが可能である。この場合、制御判定回路として以下のような構成を採用できる。すなわち、前記制御判定回路には、タイマと、前記熱源に電力を供給できる電源回路と、前記報知手段に前記警報信号を出力する報知信号発生回路と、前記温度センサの出力をディジタルデータに変換するAD変換部と、プログラムおよびデータを記録するデータ記憶部と、前記データ記憶部に記録された前記プログラムに従って処理を実行する演算処理部とを有し、前記プログラムは、前記電源回路が前記熱源に電力を供給していないことを条件に前記タイマから現在時刻を取得しこれを時刻t1とするとともに、前記AD変換部からデータを取得しこれを値SO1として前記データ記憶部に記録する第1の手順と、前記電源回路への制御信号を前記熱源に電力を供給するオン信号に切替え、所定時間の経過後に、前記電源回路への制御信号を前記熱源に電力を供給しないオフ信号Mに切替える第2の手順と、前記タイマから現在時刻を取得し、取得した現在時刻が、前記時刻t1に経過時間t2を付加した時刻t1+t2を越えたかを判断する第3の手順と、前記第3の手順で現在時刻が時刻t1+t2を超えたと判断した場合に、前記AD変換部からデータを取得しこれを値SO2として前記データ記憶部に記録する第4の手順と、前記値SO1と前記値SO2との差SO2−SO1を演算し、前記差SO2−SO1を所定の閾値と比較する第5の手順と、前記第5の手順で前記差SO2−SO1と前記閾値とを比較した結果に応じて前記報知信号発生回路から前記警報信号を出力する第6の手順と、を前記演算処理部に実行させるもの、とすることができる。
【0028】
あるいは、温度センサの出力をアナログデータとして取り扱い、アナログ回路で閾値を超えたか否かの判断を行うことも可能である。この場合、前記制御判定回路には、測定開始の信号を受けてランプ電圧を生成するランプ回路と、前記ランプ回路の出力の絶対値が|V1|の時に前記温度センサの出力の値をラッチする第1ラッチ回路と、前記ランプ回路の出力の絶対値が前記|V1|より大きい|V2|の時に前記熱源への電力の供給を開始し、所定時間の経過後に前記電力の供給を停止する電源回路と、前記ランプ回路の電圧が前記|V2|より大きい|V3|になったときに前記温度センサの出力の値をラッチする第2ラッチ回路と、前記第1ラッチ回路および第2ラッチ回路の出力を各々入力とする差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力を所定の閾値と比較して前記報知手段に前記警報信号を出力する報知信号発生回路と、を含むことができる。
【0029】
なお、前記熱源および前記温度センサは、前記容器の壁から離して配置することが可能である。熱源としてはハロゲンヒータを例示でき、温度センサとしては赤外線サーモパイルを例示できる。熱源および温度センサを容器の外壁から離して配置することにより、迅速な判定を可能にするとともに、接触を必要とする場合の接触の仕方による熱抵抗の問題を回避することができる。すなわち、接触の場合には、押し付ける圧力や接触面の汚れ等によって熱抵抗が発生あるいは変化し、適切な測定ができなくなるあるいは測定の再現性が悪くなるという問題が発生する。本発明1では非接触で測定できるのでこれら問題の発生を回避することが可能になる。
【0030】
また、前記熱源と前記温度センサとの間に吸光性の遮熱部材を配置してもよい。遮熱部材により、測定の感度を向上できる。また、熱源がハロゲンヒータであり温度センサが赤外線サーモパイルである場合、遮熱部材によって赤外線を遮光する効果も期待できる。
【0031】
また、前記容器の配置を検知する容器センサを備え、前記容器センサからの信号を契機として判別を開始することができる。これにより、操作を簡便にすることができる。
【0032】
なお、上記した容器内の液体種別を判別する装置の発明1は、装置の制御方法の発明2として把握することも可能である。すなわち、容器の外部に配置する熱源と、前記熱源の近傍に配置され前記容器の外壁温度を電圧または電流に変換する温度センサと、前記容器の内容物が危険である旨の警報を発することができる報知手段と、制御判定回路と、を含む容器内の液体種別を判別する装置の制御方法であって、時刻t1において前記温度センサの出力の値を記憶しまたは保持するステップと、前記時刻t1以降の時刻t3において前記熱源への電力の供給を開始するステップと、前記時刻t3以降の時刻t4において前記熱源への電力の供給を停止するステップと、前記時刻t3以降の時刻t5において前記温度センサの出力の値を記憶しまたは保持するステップと、前記時刻t1における前記温度センサの出力の値と前記時刻t5における前記温度センサの出力の値との差を求めるステップと、前記差を所定の閾値と比較するステップと、前記差と前記閾値との比較の結果に応じて前記報知手段に前記警報を発するステップと、を有する制御方法である。
【0033】
上記制御方法の発明2において、時刻t5は、時刻t4以降の時刻とすることができる。つまり、1回目の温度測定の後熱供給を開始し熱供給を停止した後に2回目の温度測定を行う。熱源としてハロゲンヒータを、温度センサとして赤外線サーモパイルを採用したような場合、熱供給に伴う赤外線散乱光の影響を排除できる。
【0034】
本明細書では他の発明をも開示する。すなわち、本願で開示する発明3の容器内の液体種別を判別する装置は、容器に接触する単一または複数の可撓性のフィルムと、前記単一または複数のフィルムのうち一のフィルムに設けられた温度センサと、前記単一または複数のフィルムのうち前記温度センサが設けられたフィルムと同一または他のフィルムに設けられた熱源と、前記容器の内容物が危険である旨の警報を発することができる報知手段と、前記熱源に電力を供給する電力供給手段と、前記温度センサの出力を取得して比較値を演算し、前記比較値と所定の閾値とを比較する演算比較手段と、前記演算比較手段の比較の結果に応じて前記報知手段に警報信号を出力する警報信号出力手段と、前記電力供給手段、前記演算比較手段および前記警報信号出力手段を制御する制御手段と、を有する。
【0035】
このような容器内の液体種別を判別する装置の発明3では、熱源が可撓性フィルムに設けられ、この可撓性フィルムが容器外壁に接触するよう構成されるので、熱源から容器外壁への熱伝導が接触による固体内伝導によって実現され、安定に容器外壁を加熱することが可能になる。また、温度センサが可撓性フィルムに設けられ、この可撓性フィルムが容器外壁に接触するよう構成されるので、容器外壁からの熱が接触による固体内伝導によって温度センサに伝導され、安定した温度測定が実現される。また、熱源としてハロゲンランプを用いる必要がなく長寿命な電気抵抗素子を用いることが可能になるので装置寿命を長寿命化することも可能になる。さらに、可撓性フィルムに設けることが可能な熱源および温度センサの選択の幅は大きいので、小型化が容易になり、量産対応性も向上することが可能になる。
【0036】
可撓性フィルムに設けることが可能な熱源としては、電気抵抗素子、ペルチェ素子等の半導体素子、誘導加熱素子、半導体赤外レーザ等の光学素子を例示できるが、可撓性フィルム上に設けられる限り特に限定されない。電気抵抗素子を可撓性フィルム上にパターニングにより形成する場合、量産性、寿命、小型化、安定性等の観点から有利である。
【0037】
可撓性フィルムに設けることが可能な温度センサとしては、電気抵抗素子、熱電対、PN接合を有する半導体素子(バイポーラ半導体素子)その他温度に敏感な素子が例示できるが、可撓性フィルムに設けられる限り特に制限はない。電気抵抗素子を可撓性フィルム上にパターニングで形成する場合、量産性、寿命、小型化、安定性等の観点から有利である。
【0038】
可撓性フィルムとしては、ポリイミドフィルムを例示できる。ポリイミドは熱的、化学的に安定であり、特に熱源および温度センサを電気抵抗素子としてフィルム上にパターニングにより形成する場合には、耐酸化性を向上するようポリイミドフィルムで封止することができ、ポリイミドを用いる利点がある。ただし、可撓性フィルムの材料としてポリイミドに限定されるわけではない。他の材料として、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、アクリル、ポリテトラフルオロエチレンその他の有機樹脂が例示できる。
【0039】
前記した容器内の液体種別を判別する装置の発明3において、前記フィルムは前記容器が配置される面に向かって凸形状に湾曲して配置されるものであり、前記容器を配置することにより、前記フィルムの可撓性を利用して前記熱源および前記温度センサが前記容器の外壁に押圧されるものとすることができる。これにより、熱源および温度センサを容器外壁に押圧して、十分な接触面積を確保し、熱抵抗を低減することが可能になる。
【0040】
また、前記湾曲により形成される前記フィルムの湾曲表面が、前記容器の高さ方向の線分に沿って前記容器に接触する第1の構成、または、前記容器の周方向の線分に沿って前記容器に接触する第2の構成、の何れかの構成を有することができる。第1の構成の場合、熱源と温度センサの配置の自由度が高く、熱源と温度センサを別々のフィルムに分けて配置することが可能である。熱源と温度センサを別のフィルムに配置すれば、熱源から温度センサへの容器を介さない熱伝導を低減して測定の精度を向上することが可能になる。第2の構成の場合、容器を配置する際のフィルムの損傷の機会を低減することが可能になる。すなわち、通常、容器(飲料用アルミニウムボトルやペットボトル)を装置に配置する場合、容器を持った状態からこれを下に降ろすように配置するであろう。この際、湾曲表面のU字形状断面が容器の底面に対向するよう配置されていたとしたなら(第1の構成の場合)容器を下ろす際にその底面でフィルムのU字形状断面を引っ掛け、これを損傷する危険性が考えられる。しかし、第2の構成の場合には、容器底面に対向するのは湾曲表面の曲がった面であるため、引っ掛けるように容器を降ろそうとしてもフィルムの可撓性によって容器底面の引っ掛かりを吸収し、フィルムが損傷されることはない。
【0041】
また、前記フィルムは、前記容器の外壁に沿って配置されるようにしてもよい。つまり、フィルムをU字形状に配置するのは前記の場合と同じであるが、容器は湾曲したフィルムの凸部に接触するのではなく、U字形状の凹部に包み込まれるように配置される。この場合にもフィルムに配置された熱源と温度センサは容器外壁に密着し、容器の自重を用いるなら押圧することも可能になる。フィルムに可撓性があるため、容器外壁に沿うようフィルムが変形し、熱源と温度センサを容器の外壁に正確に密接させることが可能になる。
【0042】
また、前記温度センサの大きさは、前記熱源の大きさに比較して小さくできる。温度センサの大きさを小さくすることにより温度センサの熱容量を低減し、測定速度の向上および測定確度の向上を図ることが可能になる。
【0043】
また、前記熱源を複数有し、前記温度センサが、前記複数の熱源の間に配置されるようにできる。複数の熱源を温度センサの周りに配置することにより、十分な熱量を容器外壁に与えることができ、また、測定速度を向上できる。
【0044】
なお、熱源および温度センサとして、フィルム上にパターニングされた電気抵抗素子が好適であることは前記したとおりである。この場合の素子の材料として、銅箔膜、タングステン薄膜、ドープドシリコン等半導体材料が例示できる。素子の抵抗値は、その材料選択による材料固有の抵抗率の選択、膜厚、パターニングした際の線幅等のサイズ選択により適宜設計が可能である。
【0045】
前記した容器内の液体種別を判別する装置の発明3において、前記制御手段は、時刻t1に前記熱源への電力を供給し、前記時刻t1より後の時刻t2に前記電力の供給を遮断するよう前記電力供給手段を制御し、時刻t3における前記温度センサの出力値O1と、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4における前記温度センサの出力値O2とを計測し、前記出力値O2と前記出力値O1とから前記比較値を演算するものとすることができる。すなわち、熱源による加熱の前後における容器外壁の温度変化から容器内部の液体種別を判別するものである。
【0046】
なお、発明3の場合にも、前記発明1について考察した熱プロファイルの検討結果を適用してその熱プロファイルを解釈できる。すなわち、1次元フィンの熱伝導モデルより、点xでの温度Tを数1、数2のように表し、水平円柱の周囲が液体である時の平均熱伝達率(ヌセルト数)Nを数3のように、熱伝達率hを数4のように表すと、1次元フィンの距離xに関する温度の減衰(熱プロファイル)を特徴付ける減衰定数τは数5のように表される。
【0047】
すなわち、フィン材料(容器)の熱伝導率k、あるいはフィン厚さ(容器厚さ)tが大きいとτは大きくなり、熱供給点から比較的遠い位置であっても温度の上昇を観測することができることがわかる。本発明3を適用する容器として、容器内の液体(水、あるいは、アルコールやガソリン等の可燃液体を想定する)の熱伝導率λより十分に大きい熱伝導率kの材料を選択すれば、あるいは、容器厚さtが十分に厚いものを採用すれば、熱供給点より離れた場所の温度を観測しても十分に機能することを示している。本発明3に好適な容器材料としては、アルミニウム、鉄等の金属を例示できる。これら金属の熱伝導率は容器内の液体より十分に大きい。本発明3において、熱供給部分から温度センサの観測点までの距離として数mmから数cmの範囲を想定している。
【0048】
また、数5より、液体の熱伝導率λおよび密度ρが大きいほどτに与える影響が大きいことがわかる。すなわち、液体の熱伝導率λおよび密度ρが大きくなるとτは小さくなり、熱供給量(Q)が一定であるなら観測点の冷却速度が大きいことを示す。よって、容器に充填される液体の種類が相違し、その熱的特性(特に熱伝導率λおよび密度ρ)が相違すれば、これをもとに液体の相違を検知することが可能であることを示す。
【0049】
上記考察の通り、容器内に液体を充填し、容器外壁の局部に熱を供給して、その熱供給部から比較的離れた観測点であっても、容器内部の液体の熱特性(特に特に熱伝導率λおよび密度ρ)を反映する温度変化を観測することができる。そして、本発明3では、熱供給前の温度と熱供給後の一定時間経過後の温度とを比較することによって容器内部の液体の種別を判別する。水の熱伝導率は0.63(W/mk)であり、エタノールおよび石油が各々0.18(W/mk)、0.15(W/mk)であることと比較すると水の熱伝導率の方が3.5倍以上大きい。よって、容器内部に水がある場合には観測点は冷却されやすく、容器内にエタノール、石油等の危険物液体がある場合には冷却され難い。そこで熱供給前後の温度差について予め閾値を設定し、これを超えた場合には安全であり、超えない場合は危険物であると判断し、警報を発することができる。
【0050】
また、本発明3では、外部から熱を供給し、容器外壁の温度測定を行って容器内部の液体種別を判別できるので、容器を開封する必要はなく、簡便に判定することが可能であり、航空機等機内持ち込み検査に非常に適している。さらに、容器外壁の温度測定は2回の測定で終了するので極めて簡便かつ迅速に容器内の液体種別を判別することが可能である。
【0051】
なお、発明3における前記制御手段は、時刻t1に前記熱源への電力を供給し、前記時刻t1より後の時刻t2に前記電力の供給を遮断するよう前記電力供給手段を制御し、前記容器を配置する時刻t5より前の時刻t6における前記温度センサの出力値O3と、前記時刻t5より後の時刻であって前記時刻t1より前の時刻t7における前記温度センサの出力値O4と、時刻t3における前記温度センサの出力値O1と、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4における前記温度センサの出力値O2とを計測し、前記出力値O4と前記出力値O3とから補正値を決定し、前記出力値O2と前記出力値O1と前記補正値とから前記比較値を演算するものとしてもよい。容器あるいは容器内の液体の温度が測定環境温度(つまり容器を設置する前の温度センサの温度)とかけ離れている場合は現実的によくあることである。すなわち、飲料がお茶やコーヒーである場合、それを温めて販売あるいは所持している場合は多々ある。このような場合、容器内液体の温度(容器外壁温度)の影響を受けて温度センサの温度がドリフトする。このようなドリフト値をセンサ出力値O3とO4との測定により予測し、補正したうえで判定を行うことができる。つまり、本構成の発明によれば、容器温度が環境温度からかけ離れた場合であっても補正することができ、正確な容器内液体の種別判定を行うことができる。
【0052】
容器温度の環境温度との相違によるセンサ出力のドリフト予想は、以下の構成によっても可能である。すなわち、発明3における前記制御手段は、時刻t1に前記熱源への電力を供給し、前記時刻t1より後の時刻t2に前記電力の供給を遮断するよう前記電力供給手段を制御し、前記容器を配置する時刻t5より前の時刻t6における前記温度センサの出力値O3と、時刻t3における前記温度センサの出力値O1と、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4における前記温度センサの出力値O2とを計測し、前記出力値O2と前記出力値O1と前記出力値O3とから前記比較値を演算することができる。つまり、前記出力値O3と、前記出力値O1または前記出力値O2とから前記した補正値を決定し、前記出力値O1と前記出力値O2と前記補正値とから前記比較値を演算する。補正値を求める際に前記したセンサ出力O4の測定をO1やO2の測定値によって代替することも可能ということである。
【0053】
あるいは、発明3において、前記熱源と前記温度センサとの間の距離に比較して大きな距離で前記熱源から離れて前記容器に接触するよう配置される第2の温度センサをさらに有し、前記制御手段は、時刻t1に前記熱源への電力を供給し、前記時刻t1より後の時刻t2に前記電力の供給を遮断するよう前記電力供給手段を制御し、時刻t3における前記温度センサの出力値O1と、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4における前記温度センサの出力値O2と、前記t4より前の時刻t8における前記第2の温度センサの出力値O5とを計測し、前記出力値O2と前記出力値O1と前記出力値O5とから前記比較値を演算することができる。つまり、前記出力値O5と、前記出力値O1または前記出力値O2とから前記した補正値を決定し、前記出力値O1と前記出力値O2と前記補正値とから比較値を演算する。容器温度自体を第2の温度センサによって測定し、この値を用いて補正を行うようにするものである。なお、第2の温度センサは、前記温度センサと同様に、フィルムにパターニングされた電気抵抗素子とすることができる。また、第2の温度センサは、前記温度センサおよび前記熱源が配置される位置から前記容器の周方向に変位した位置に配置することができる。
【0054】
また、発明3において前記容器の配置を検知する容器センサを備え、前記容器センサからの信号を契機として判別を開始することができる。これにより、操作を簡便にすることができる。
【0055】
なお、上記した容器内の液体種別を判別する装置の発明3は、装置の制御方法の発明4として把握することも可能である。すなわち、容器に接触する単一または複数の可撓性のフィルムと、前記単一または複数のフィルムのうち一のフィルムに設けられた温度センサと、前記単一または複数のフィルムのうち前記温度センサが設けられたフィルムと同一または他のフィルムに設けられた熱源と、前記容器の内容物が危険である旨の警報を発することができる報知手段と、前記熱源に電力を供給する電力供給手段と、前記温度センサの出力を取得して比較値を演算し、前記比較値と所定の閾値とを比較する演算比較手段と、前記演算比較手段の比較の結果に応じて前記報知手段に警報信号を出力する警報信号出力手段と、前記電力供給手段、前記演算比較手段および前記警報信号出力手段を制御する制御手段と、を含む容器内の液体種別を判別する装置の制御方法であって、時刻t3において前記温度センサの出力値O1を記憶しまたは保持するステップと、時刻t1において前記熱源への電力の供給を開始するステップと、前記時刻t1より後の時刻t2において前記熱源への電力の供給を停止するステップと、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4において前記温度センサの出力値O2を記憶しまたは保持するステップと、前記出力値O1と前記出力値O2とから前記比較値を求めるステップと、前記比較値と前記閾値とを比較するステップと、前記比較の結果に応じて前記警報信号を生成するステップと、を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法である。
【0056】
あるいは、前記同様の構成を有する液体種別を判別する装置の制御方法であって、前記容器を配置する時刻t5より前の時刻t6において前記温度センサの出力値O3を記憶しまたは保持するステップと、前記時刻t5より後の時刻t7において前記温度センサの出力値O4を記憶しまたは保持するステップと、前記時刻t7より後の時刻t3において前記温度センサの出力値O1を記憶しまたは保持するステップと、前記時刻t7より後の時刻t1において前記熱源への電力の供給を開始するステップと、前記時刻t1より後の時刻t2において前記熱源への電力の供給を停止するステップと、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4において前記温度センサの出力値O2を記憶しまたは保持するステップと、前記出力値O3と前記出力値O4とから補正値を決定するステップと、前記出力値O1と前記出力値O2と前記補正値とから前記比較値を求めるステップと、前記比較値と前記閾値とを比較するステップと、前記比較の結果に応じて前記警報信号を生成するステップと、を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法である。
【0057】
あるいは、前記同様の構成を有する液体種別を判別する装置の制御方法であって、前記容器を配置する時刻t5より前の時刻t6において前記温度センサの出力値O3を記憶しまたは保持するステップと、前記時刻t6より後の時刻t3において前記温度センサの出力値O1を記憶しまたは保持するステップと、前記時刻t6より後の時刻t1において前記熱源への電力の供給を開始するステップと、前記時刻t1より後の時刻t2において前記熱源への電力の供給を停止するステップと、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4において前記温度センサの出力値O2を記憶しまたは保持するステップと、前記出力値O1と前記出力値O2と前記出力値O3とから前記比較値を求めるステップと、前記比較値と前記閾値とを比較するステップと、前記比較の結果に応じて前記警報信号を生成するステップと、を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法である。
【0058】
あるいは、前記同様の構成に、前記熱源と前記温度センサとの間の距離に比較して大きな距離で前記熱源から離れて前記容器に接触するよう配置される第2の温度センサの構成を加えた構成を有する液体種別を判別する装置の制御方法であって、時刻t3において前記温度センサの出力値O1を記憶しまたは保持するステップと、時刻t1において前記熱源への電力の供給を開始するステップと、前記時刻t1より後の時刻t2において前記熱源への電力の供給を停止するステップと、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4において前記温度センサの出力値O2を記憶しまたは保持するステップと、前記時刻t4より前の時刻t8において前記第2の温度センサの出力値O5を記憶しまたは保持するステップと、前記出力値O1と前記出力値O2と前記出力値O5とから前記比較値を求めるステップと、前記比較値と前記閾値とを比較するステップと、前記比較の結果に応じて前記警報信号を生成するステップと、を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法である。これら制御方法の発明4は、前記した装置の発明3において適用が可能である。
【発明の効果】
【0059】
本願発明1あるいは2によれば、容器内部の液体種別を、容器の材質によらず、容器外部から迅速に、好ましくは非接触で判別できる技術を提供できる。本願発明3あるいは4によれば、容器内部の液体種別を、容器の材質によらず、容器外部から迅速に判別できる液体判別手法において、容器外壁への安定した加熱、および、加熱部近傍の安定した温度測定を実現できる。また、装置を長寿命化することができ、加熱部および温度計測部の小型化を実現できる。さらに、量産化対応に優れた装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態1である容器内の液体種別を判別する装置の構成の一例を示したブロック図である。本実施の形態の容器内の液体種別を判別する装置は、容器101の外側に配置するハロゲンヒータ102、赤外線サーモパイル103、スリット104、遮熱板105、制御回路106、LED表示装置107a,107b,107c、容器センサ108を有する。
【0061】
容器101は、たとえばアルミニウム製等導電性の容器である。ハロゲンヒータ102は、スリット104の開口部を介して赤外線を容器101の表面に照射する熱源である。ハロゲンヒータ102により容器101の表面の照射領域に熱エネルギが供給される。赤外線サーモパイル103は熱電対を直列に多数接続し、冷接点をケース側に、温接点を赤外線吸光部材に接触させた非接触の温度センサである。赤外線サーモパイル103はハロゲンヒータ102から2cm程度離れた場所に設置する。
【0062】
スリット104は、ハロゲンヒータ102の照射光が、容器101の表面の局所領域に照射されるよう制限するための光学部材である。数mmの円形または角型の開口を持つ部材を適用できる。遮熱板105はハロゲンヒータ102から赤外線サーモパイル103への熱伝導を遮断する。
【0063】
制御回路106は、ハロゲンヒータ102への電力供給を制御し、赤外線サーモパイル103の出力を計測して容器内の液体種別の判別を行う。また、制御回路106にはLED表示装置107a,107b,107cが接続され、判別結果をLED表示装置107a,107b,107cに表示する。
【0064】
制御回路106には、CPU(中央演算処理装置)109、熱源駆動回路110、AD変換器111、ROM(リードオンリーメモリ)112、RAM(ランダムアクセスメモリ)113、タイマ114、容器検出回路115、表示制御回路117を含む。CPU109は汎用的な演算処理装置であり、所定のプログラムに従って処理を実行できる。熱源駆動回路110はCPU109によって制御され、ハロゲンヒータ102への電力を供給する。AD変換器111は赤外線サーモパイル103の出力をディジタルデータに変換し、データはCPU109に出力される。容器検出回路115は、容器センサ108を制御し、図示しない容器支持部材に容器101が配置されたことをまた配置されていないことを検知する。タイマ114はCPU109によって制御され、時間の経過を計測する場合に用いる。RAM113はデータの一時記憶装置である。ROM112からロードしたプログラムやデータを保持し、また、プログラムの実行に利用するワークエリアを確保する。ROM112は、本装置で用いるプログラムやデータを記録する。ROM112に代えてハードディスクドライブ等他のメモリ装置を利用することも可能である。ROM112に記録される制御プログラムの動作については後述する。なお、ROM112に記録される制御プログラムはそれ自体無形のものではあるが、ROM112に記録され、本装置のハードウェア資源と一体となって有機的に本装置を構成し、後述のような液体種別の判別機能を発現する以上、制御プログラムも本発明の装置を構成する発明特定のための構成要件である。表示制御回路117は、LED表示装置107a,107b,107cの表示を制御する。
【0065】
LED表示装置107a,107b,107cは後に説明する本装置の状態や本装置による容器101内の液体種別の測定結果を表示する。たとえばLED表示装置107aは緑色、LED表示装置107bは青色、LED表示装置107cは赤色である。なお、ここでは装置の状態や測定結果をLED表示装置107a,107b,107cで報知(表示)する例を説明するが、その他任意の報知手段を適用することが可能である。たとえば液晶表示装置によるメッセージの表示、異常検知の場合のブザー発音による発報等が適用できる。
【0066】
容器センサ108は、容器101が容器支持部材に配置されたことを検出するためのセンサである。たとえば発光部および受光部を持つ光センサを例示できる。また、近接センサ等他のセンサを利用することも可能である。
【0067】
図2は、本実施の形態1の装置において、容器表面の温度がどのように変化するかを示した図である。横軸に時間、縦軸にセンサ出力をとって、時間に対する温度変化(センサ出力の変化)をグラフで示している。時刻t3でハロゲンヒータ102をONにし(熱源駆動回路110からの電力供給を開始し)、時刻t4でハロゲンヒータ102をOFFにする(熱源駆動回路110からの電力供給を停止する)。ハロゲンヒータ102のONとともに容器101の表面温度が上昇し(センサ出力が高くなり)、ハロゲンヒータ102をOFFにすると容器101の表面温度が次第に低下する。ここで、ライン118は容器101内の液体をエタノールにした場合の容器101表面の熱プロファイルであり、ライン119は容器101内の液体を水にした場合の容器101表面の熱プロファイルである。先に考察したように、液体の熱伝導率が高いほど、容器101表面の冷却速度は高い。このため、水は熱が与えられたとしても速やかに冷却されるので容器101表面の温度はあまり高くならず(ライン119)、一方、エタノールは熱伝導率が水に比較して小さいので、同量の印加熱量で容器表面の温度が水より高くなる。ハロゲンヒータ102をOFFにした場合の冷却の速度も水の方が若干高くなる。この結果、時刻t5における容器101の表面温度にセンサ出力としてΔVの差を生じることになる。
【0068】
そこで、本実施の形態の装置では、熱印加の前後での容器101表面の温度変化に着目し、容器内部の液体種別の判別をしようとするものである。時刻t1と時刻t5における容器表面温度を測定し、その差を求め、所定の閾値を設定して、しきい値より大きければ水ではない(アルコールや石油、ガソリンのような危険物)と判断し、閾値より小さければ安全な水(水を主成分とする飲料)と判断する。閾値は、前記した差ΔVの値を実測し、水に期待される差の値にΔV/2を加えた値とすることができる。なお、実際にハロゲンヒータ102をONにすると容器101の表面からの赤外線の反射により赤外線サーモパイル103には大きなノイズが発生するが、説明を明確にするため、図2ではこのノイズを除去した状態で表示している。
【0069】
図3は、本実施の形態1の容器内の液体種別を判別する装置における容器内液体の判別方法の一例を説明したフローチャートである。なお、以下に説明する処理は、その手順をコンピュータプログラムによって実現することが可能であり、このプログラムは前記したROM112に記録される。本明細書においてプログラムもROM112その他の記憶装置に記録される限り本発明の装置の一部を構成するものとする。また、以下の説明ではコンピュータプログラムによって下記処理を実行する例を説明するが、シーケンス制御、ハードウェアによる自動制御等他の制御手段によって同様の処理が実現できることは勿論である。
【0070】
まず、ステップ120で容器101が検出されるかを判断する。ここで容器が検出されていない場合には待機状態であることを示す緑ランプを点灯し(ステップ121)、容器が検出されなくなるまでステップ120を繰り返す。容器が検出されると、ステップ122に進む。
【0071】
ステップ122では温度センサ(赤外線サーモパイル103)の出力測定を行う。出力値(アナログ値)はAD変換器111によってディジタル値に変換され、測定値AとしてたとえばRAM113に記録する。
【0072】
次に、たとえば0.5秒の待機を行い(ステップ123)、ハロゲンヒータ102をONにする熱源駆動回路110への制御信号(ON信号)を生成する(ステップ124)。次に、ステップ125でたとえば2秒経過したかを判断し、2秒経過した場合にはステップ126でハロゲンヒータ102をOFFにする(熱源駆動回路への制御信号をOFF信号にする)。
【0073】
次に、たとえば0.5秒の待機を行い(ステップ127)、温度センサ(赤外線サーモパイル103)の出力測定を行う(ステップ128)。出力値(アナログ値)はAD変換器111によってディジタル値に変換され、測定値BとしてたとえばRAM113に記録する。
【0074】
次に、変数Aと変数Bの差を求め、この値が所定の閾値より大きいか小さいかを判断する(ステップ129)。ステップ129でB−Aが閾値より小さい場合、容器内液体は安全な水を主成分とする液体であると判断でき、青ランプを点灯する(ステップ131)。逆に、ステップ129でB−Aが閾値以上であると判断した場合、容器内液体は安全な水を主成分とする液体とは判断できないので、異常を示す赤ランプを点灯する(ステップ130)。なお、ステップ130、131ではたとえば2秒程度の待機時間を設定して操作者が報知内容を認識する時間を確保する。その後、ステップ120に戻り上記処理を繰り返す。以上のようにして、容器内液体の種類を判別することが可能である。
【0075】
本実施の形態の容器内の液体種別の判別装置では、アルミニウム製等金属容器であっても内容物液体の種別を簡単に判別することが可能である。判別は容器101を装置にセットすることにより開始し、青または赤ランプの点灯によって内容物が水を主成分とする安全なものかそうでないかを簡単に判別できる。また、1回の測定は数秒で終了し、機内持ち込み等の検査のように迅速な処理が要求される検査に活用してメリットが大きい。
【0076】
なお、前記で例示したハロゲンランプの照射時間や待機時間はあくまでも例示であり、適宜変更することは可能である。
【0077】
以上、本発明を実施の形態1として具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態1に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0078】
たとえば、前記実施の形態1では、CPU109を備えた制御回路106によるソフトウェアを用いた制御の例を説明した。しかし、図4に示すように温度センサ(赤外線サーモパイル103)の出力をアナログデータとして取り扱い、アナログ演算を行う電子回路によって制御回路130を構成することも可能である。図4に示す制御回路130では、容器101の配置を容器センサ108が検知するとランプ回路131によってランプ電圧を発生し、これをコンパレータ132に入力する。コンパレータ132では参照電圧V1,V2,V3(V1<V2<V3)を参照して、入力がV1に達すればラッチ回路1(134)へのラッチ制御信号をONにする。ラッチ回路1(134)では、ラッチ制御信号のONを受けてそのときのセンサ出力をラッチする。ラッチ回路1(134)の出力は差動増幅器136の−入力に入力する。コンパレータ132の入力がV2に達すれば、コンパレータ132は熱源駆動回路133への制御信号をONにする。熱源駆動回路133は制御信号のONを受けてハロゲンヒータ102をONにし、たとえば2秒後にこれをOFFにする。コンパレータ132の入力がV3に達すれば、コンパレータ132はラッチ回路2(135)へのラッチ制御信号をONにする。ラッチ回路2(135)では、ラッチ制御信号のONを受けてそのときのセンサ出力をラッチする。ラッチ回路2(135)の出力は差動増幅器136の+入力に入力する。差動増幅器136は入力電圧の差を増幅して出力する。差動増幅器136の入力はコンパレータ137に入力する。コンパレータ137では、閾値電圧Vthを参照して、入力がVthより大きければ赤色のLED表示装置107cを点灯し、入力がVth以下であれば青色のLED表示装置107bを点灯する。なお、コンパレータ137では、コンパレータ132に入力される電圧(ランプ電圧)がV3になって出力される制御信号(ラッチ回路2(135)へのラッチ制御信号)が入力されなければLED表示装置107bあるいは107cの表示(赤あるいは青の表示)が為されず、それ以外の場合は待機である緑の表示(LED表示装置107aの点灯)をするようにしておく。これによりランプ電圧がV3になった時点での判定を赤あるいは青のランプ点灯で表示できる。
【0079】
また、前記した実施の形態1では、温度センサとして赤外線サーモパイルを例示したがこれに限られず、熱電対、感温抵抗素子、その他任意の温度センサを用いることができる。また、熱源もハロゲンヒータに限られず、発熱抵抗体、ぺルチェ素子、赤外線レーザ等、任意の熱源を用いることができる。
【0080】
また、前記実施の形態1では、温度センサと熱源が容器から離れて配置されている例を説明した。判定処理の迅速性と判定再現性の観点から温度センサと熱源が容器から離れて配置されている方が好ましいことは前記の通りであるが、本発明は必ずしも温度センサと熱源が容器から離れている必要はない。温度センサおよび熱源あるいはいずれか一方が容器に接触されているものであっても、勿論かまわない。
【0081】
また、前記実施の形態1では、容器101としてアルミニウム製等の金属製の容器を例示した。しかし、容器の熱伝導率が容器内液体の熱伝導率より十分大きく、あるいは、容器の厚さが十分に厚いものである限り、容器の材料は金属製には限られない。ペットボトル等非金属の材料で構成される容器であっても本発明の液体判別装置とその制御方法を適用することが可能である。なお、容器の熱伝導率および厚さの要件は、容器外壁の温度観測点が加熱領域からどれくらい離れているかに依存する。温度観測点が加熱領域に十分近い場合は、容器熱伝導率は容器内の液体の熱伝導率と同程度で十分であり、容器厚さも実用的なペットボトルの厚さ程度で十分である。
【0082】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2を図面に基づいて詳細に説明する。図5は、本発明の一実施の形態2である容器内の液体種別を判別する装置(以下液体判別装置とする)の構成の一例を示したブロック図である。本実施の形態2の液体判別装置は、容器201の外壁に接触する可撓性のフィルム202、フィルム202に設けられた熱源203、フィルム202に設けられた温度センサ204、制御回路206、LED表示装置207a,207b,207c、容器センサ208を有する。
【0083】
容器201は、たとえばアルミニウム製等導電性の容器である。本実施の形態2の液体判別装置は導電性容器に適用して好適であるが、容器201は導電性容器には限られない。たとえばペットボトル等の絶縁性容器であっても本実施の形態2の液体判別装置を適用できる。また、容器201のサイズ、形状は任意である。後に説明するように、フィルム202に設けられた熱源203および温度センサ204が容器外壁に当たる形状、大きさである限り容器201の形状大きさは任意である。ただし、少なくともフィルム202に設けられた熱源203および温度センサ204が当たる容器外壁部分の内部には液体が接触するよう満たされている必要はある。
【0084】
フィルム202は可撓性のたとえばプラスチックフィルムである。たとえばポリイミドを適用できる。ポリイミドフィルムは適度な可撓性と弾力性を有し、また、熱的、化学的にも安定であるため本発明のフィルム202として選択することが好ましい。しかし、フィルム202の材料としてポリイミドに限定されるわけではなく、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂その他のプラスチックを任意に適用できる。さらに、プラスチックに限られず、紙、薄膜ガラス等可撓性を有する絶縁体であれば任意に適用できる。なお、フィルム202は後に説明するように容器201に物理的に接触するよう配置される。
【0085】
熱源203は、後に詳しく説明するようにフィルム202にパターニングされた電気抵抗素子である。熱源203の機能的な要件は、フィルム202に設置することが可能なもので、かつ、適切な熱量を適切な制御下で発生させることができることであり、そのような要件を満たすものであれば本実施の形態2の熱源203として任意に選択できる。たとえば、ペルチェ素子、半導体レーザ、誘導加熱素子(被加熱体および誘導素子)等が例示できる。
【0086】
温度センサ204は、後に詳しく説明するようにフィルム202にパターニングされた電気抵抗素子である。温度センサ204の機能的な要件は、フィルム202に設置することが可能なもので、かつ、温度に敏感な(温度変化に対し十分な出力信号が検出できる)素子であることであり、そのような要件を満たすものであれば本実施の形態2の温度センサ204として任意に選択できる。たとえば、熱電対、半導体素子のPN接合等が例示できる。
【0087】
制御回路206は、熱源203への電力供給を制御し、温度センサ204の出力を計測して容器内の液体種別の判別を行う。また、制御回路206にはLED表示装置207a,207b,207cが接続され、判別結果をLED表示装置207a,207b,207cに表示する。
【0088】
制御回路206には、CPU(中央演算処理装置)209、熱源駆動回路210、AD変換器211、ROM(リードオンリーメモリ)212、RAM(ランダムアクセスメモリ)213、タイマ214、容器検出回路215、定電流回路216、表示制御回路217を含む。CPU209は汎用的な演算処理装置であり、所定のプログラムに従って処理を実行できる。熱源駆動回路210はCPU209によって制御され、熱源203への電力を供給する。AD変換器211は温度センサ204の出力をディジタルデータに変換し、データはCPU209に出力される。容器検出回路215は、容器センサ208を制御し、図示しない容器支持部材に容器201が配置されたことをまた配置されていないことを検知する。タイマ214はCPU209によって制御され、時間の経過を計測する場合に用いる。RAM213はデータの一時記憶装置である。ROM212からロードしたプログラムやデータを保持し、また、プログラムの実行に利用するワークエリアを確保する。ROM212は、本装置で用いるプログラムやデータを記録する。ROM212に代えてハードディスクドライブ等他のメモリ装置を利用することも可能である。ROM212に記録される制御プログラムの動作については後述する。なお、ROM212に記録される制御プログラムはそれ自体無形のものではあるが、ROM212に記録され、本装置のハードウェア資源と一体となって有機的に本装置を構成し、後述のような液体種別の判別機能を発現する以上、制御プログラムも本発明の装置を構成する発明特定のための構成要件である。定電流回路216は、本実施の形態2の温度センサ204に定電流を供給する。本実施の形態2の温度センサ204として例示する電気抵抗素子はパッシブ素子であるためそれ自体信号を出力するわけではない。定電流回路216によって一定電流を温度センサ204(電気抵抗素子)に供給することによって抵抗値を電圧として検出できる。温度センサとしてそれ自体出力電圧(信号)を発するアクティブ素子を用いる場合には定電流回路216は必要ではない。表示制御回路217は、LED表示装置207a,207b,207cの表示を制御する。
【0089】
LED表示装置207a,207b,207cは後に説明する本装置の状態や本装置による容器201内の液体種別の測定結果を表示する。たとえばLED表示装置207aは緑色、LED表示装置207bは青色、LED表示装置207cは赤色である。なお、ここでは装置の状態や測定結果をLED表示装置207a,207b,207cで報知(表示)する例を説明するが、その他任意の報知手段を適用することが可能である。たとえば液晶表示装置によるメッセージの表示、異常検知の場合のブザー発音による発報等が適用できる。
【0090】
容器センサ208は、容器201が容器支持部材に配置されたことを検出するためのセンサである。たとえば発光部および受光部を持つ光センサを例示できる。また、近接センサ等他のセンサを利用することも可能である。
【0091】
図6は、本実施の形態2の液体判別装置の容器配置部の一例を示した概略斜視図である。容器配置部218には、容器201が設置されるステージ218aを有し、ステージ218aの中央部には容器201の配置位置を整合するスリット218bが設けられる。スリット218bの内部にはU時形状の湾曲されたフィルム202がU字形状の凸を上にして配置される。
【0092】
容器201は、破線で図示するようにその上部を奥側にして、スリット218bに一部落ち込むように配置される。容器201はスリット218bに対して整合するので、容器外壁がフィルム202に確実に接触するようその配置位置が容易に整合される。
【0093】
また、ステージ218aは図示するように斜めに配置される。これにより、容器201の底部が前面板218cに当たるよう容器201を安定に配置できる。前面板218cには容器201の底部が確実に当たるようストッパを設けてもよい。なお、ステージ218aを斜めに配置することは、容器201も斜めに配置されることを意味し、容器201内の液体残量が少ない場合であっても液体が容器底部に集まるメリットがある。このような場合、フィルム202を容器201の底部近傍に配置することにより、液体残量が少ない場合であってもフィルム202の熱源203および温度センサ204の当たる容器の部分に液体が存在する確率が高くなる。このため、容器201内の液体残量が少ない場合、あるいは容器201の大きさが異なる場合であっても、確実に液体種別の判別を行うことが可能になる。
【0094】
図7は、U字形状に湾曲させ凸部を上にして配置したフィルム202を示した斜視図である。湾曲の凸部(つまり容器201の当たる部分)には熱源203および温度センサ204が設けられる。
【0095】
図8は、容器201が図6の容器配置部218に配置されたときのフィルム202の状態を示した断面図である。容器201を配置する前の状態のフィルム202を破線で示す。図示するようにフィルム202は可撓性を有するため、容器201を配置することによりフィルム202の凸部が押し下げられ、フィルム202の凸部が容器201の外壁形状に沿うように変形される。このため、熱源203および温度センサ204は確実に容器201の外壁に当たり、容器外壁との接触を確保することができる。また、フィルム202に可撓性があるため、熱源203および温度センサ204は、容器201に押圧されることになる。この結果、接触部の熱抵抗を低減し、安定な熱供給と温度測定を実現できる。
【0096】
図9(a)は、フィルム202に設けられた熱源203および温度センサ204の一例を示した平面図である。熱源203および温度センサ204はフィルム202上にパターニングにより形成された電気抵抗素子である。熱源203および温度センサ204は、各々の端子203a,204aに各々の配線203b,204bを介して接続されている。端子および配線も含めてパターニングされていることは勿論である。熱源203および温度センサ204と各端子203a,204aおよび配線203b,204bはパターニングされた後、フィルム202と同じ材料または他の材料によってシールドされていることも言うまでもない。パターニングの製造方法については周知であり、ここでの説明は省略する。熱源203、温度センサ204、各端子203a,204aおよび配線203b,204bの材料としては、銅、タングステン等の金属、ドープドシリコン等の半導体材料を例示できる。
【0097】
図9(b)は図9(a)のB部を拡大して示した一部平面図である。熱源203は、図示するように細いパターンをジグザグに形成することにより構成できる。パターンの線幅は設計事項であり、必要な熱量と材料固有の抵抗率に応じて適宜設計できる。温度センサ204の部分についても同様である。
【0098】
なお、図9の例では、熱源203と温度センサ204とを各1個、ほぼ同じ大きさで設ける例を示したが、他の好適な変形例も例示できる。図10〜図12は、フィルム202に設けられた熱源203および温度センサ204の変形例を示した平面図である。図10に示す変形例では、温度センサ204の大きさを熱源203に比較して小さくパターニングしている。このため、温度センサを熱容量を小さくして温度測定の応答速度を向上できる。図11に示す変形例では、熱源203を複数設け、温度センサ204を挟むように配置してパターニングしている。この場合、十分な熱量を供給することが可能となり、判定を高速にまた正確に行うことができる。図12の変形例は、熱源203と温度センサ204を設けるフィルム202を分割した例である。この場合、容器201を経由しない熱流のパス、つまりフィルム202を伝導する熱流のパスを遮断して、測定の精度あるいは確度を高めることができる。
【0099】
また、前記例では、フィルム202の配置として、フィルム202をU字形状に湾曲させその凸部を上にして配置する例を示しているが、フィルム202の配置態様としては他の例も例示できる。たとえば、フィルム202をU字形状に湾曲させその凸部を下、つまり凹部を上にして配置することもできる。この場合、容器201の自重を利用してフィルムを容器外壁に沿うように変形させることができる。
【0100】
また、図13に示すように、フィルム202の配置を図6の場合のフィルム配置に対して90度回転させた配置とすることもできる。つまり、容器201の周方向にフィルム202の接触部が沿うように配置する。この場合、容器201を配置する際のフィルム202の損傷の機会を低減できる。つまり、容器201を図示のように配置するとすれば、容器201の底部がフィルム202に当たるように配置される場合があるであろう。この場合、図6のようにフィルム202を配置すると湾曲したフィルムの断面に容器201の底部が引っ掛かる場合がある。このようなフィルム断面への引っ掛かりはフィルム202を損傷する危険性がある。しかし、図13のようにフィルム202を配置すると、容器201の底部がフィルム202に当たったとしても、フィルム202の湾曲面への当たりであり、湾曲面が変形するだけで損傷されることはない。なお、図13のように配置した場合の熱源203および温度センサ204のパターニングに例を図14に示す。
【0101】
図15は、本実施の形態2の液体判別装置において、容器表面の温度がどのように変化するかを示した図である。横軸に時刻、縦軸にセンサ出力をとって、時刻の変化に対する温度の変化(センサ出力の変化)をグラフで示している。時刻t1で熱源203をONにし(熱源駆動回路210からの電力供給を開始し)、時刻t2で熱源203をOFFにする(熱源駆動回路210からの電力供給を停止する)。熱源203のONとともに容器201の表面温度が上昇し(センサ出力が高くなり)、熱源203をOFFにすると容器201の表面温度が次第に低下する。ここで、ライン219aは容器201内の液体をエタノールにした場合の容器201表面の熱プロファイルであり、ライン219bは容器201内の液体を水にした場合の容器201表面の熱プロファイルである。先に考察したように、液体の熱伝導率が高いほど、容器201表面の冷却速度は高い。このため、水は熱が与えられたとしても速やかに冷却されるので容器201表面の温度はあまり高くならず(ライン219b)、一方、エタノールは熱伝導率が水に比較して小さいので、同量の印加熱量で容器表面の温度が水より高くなる。熱源203をOFFにした場合の冷却の速度も水の方が若干高くなる。この結果、時刻t4における容器201の表面温度にセンサ出力としてΔVの差を生じることになる。
【0102】
そこで、本実施の形態2の液体判別装置では、熱印加の前後での容器201表面の温度変化に着目し、容器内部の液体種別の判別をしようとするものである。時刻t3と時刻t4における容器表面温度を測定し、その差を求めて比較値とし、所定の閾値を設定して、比較値が閾値より大きければ水ではない(アルコールや石油、ガソリンのような危険物)と判断し、比較値が閾値より小さければ安全な水(水を主成分とする飲料)と判断する。閾値は、前記した差ΔVの値を実測し、水に期待される差の値にΔV/2を加えた値とすることができる。なお、実際に熱源203をONにするとノイズが発生する場合があるが、説明を明確にするため、図15ではこのノイズを除去した状態で表示している。
【0103】
なお、図15では、比較値を求めるための第1回目の測定時刻として時刻t1より前の時刻(図15では時刻t3)を例示し、第2回目の測定時刻として時刻t2より後の時刻(図15では時刻t4)を例示している。しかし、容器内液体の熱的特性が反映されるような比較値が得られる限り測定のタイミングは前記した時刻t3や時刻t4には限られない。たとえば、第1回目の測定時刻として、時刻t1と同時または時刻t1より後の時刻を採用できる。あるいは、第2回目の測定時刻として、第1回目の測定時刻より後の任意の時刻(ただし第1回目の測定時刻が時刻t1より前である場合は第2回目の測定時刻は時刻t1より後であることが必要である)が採用できる。つまり、時刻t1を挟んだあるいは時刻t1と時刻t2との間の容器表面温度の上昇途中や、時刻t2を挟んだ容器表面温度の変化中や、時刻t2以降の容器表面温度の下降途中の任意の測定区間(第1回目の測定と第2回目の測定の間の時間)選択できる。
【0104】
図16は、本実施の形態2の容器内の液体判別装置における容器内液体の判別方法の一例を説明したフローチャートである。なお、以下に説明する処理は、その手順をコンピュータプログラムによって実現することが可能であり、このプログラムは前記したROM212に記録される。本明細書においてプログラムもROM212その他の記憶装置に記録される限り本発明の装置の一部を構成するものとする。また、以下の説明ではコンピュータプログラムによって下記処理を実行する例を説明するが、シーケンス制御、ハードウェアによる自動制御等他の制御手段によって同様の処理が実現できることは勿論である。
【0105】
まず、ステップ220で容器201が検出されるかを判断する。ここで容器が検出されていない場合には待機状態であることを示す緑ランプを点灯し(ステップ221)、容器が検出されなくなるまでステップ220を繰り返す。容器が検出されると、ステップ222に進む。
【0106】
ステップ222では温度センサ204の出力測定を行う。温度センサ204の出力値(O1)はアナログ値であり、AD変換器211によってディジタル値に変換され、値AとしてたとえばRAM213に記録する。
【0107】
次に、たとえば0.5秒の待機を行い(ステップ223)、熱源203をONにする熱源駆動回路210への制御信号(ON信号)を生成する(ステップ224)。次に、ステップ225でたとえば2秒経過したかを判断し、2秒経過した場合にはステップ226で熱源203をOFFにする(熱源駆動回路への制御信号をOFF信号にする)。
【0108】
次に、たとえば0.5秒の待機を行い(ステップ227)、温度センサ204の出力測定を行う(ステップ228)。温度センサ204の出力値(O2)はアナログ値であり、AD変換器211によってディジタル値に変換され、値BとしてたとえばRAM213に記録する。
【0109】
次に、値Aと値Bの差を求め、この差値(比較値)が所定の閾値より大きいか小さいかを判断する(ステップ229)。ステップ229でB−Aが閾値より小さい場合、容器内液体は安全な水を主成分とする液体であると判断でき、青ランプを点灯する(ステップ231)。逆に、ステップ229でB−Aが閾値以上であると判断した場合、容器内液体は安全な水を主成分とする液体とは判断できないので、異常を示す赤ランプを点灯する(ステップ230)。なお、ステップ230、231ではたとえば2秒程度の待機時間を設定して操作者が報知内容を認識する時間を確保する。その後、ステップ220に戻り上記処理を繰り返す。以上のようにして、容器内液体の種類を判別することが可能である。
【0110】
なお、前段落で説明したとおり、第1回目のセンサ出力の測定(値Aの測定)と第2回目のセンサ出力の測定(値Bの測定)のタイミングは、容器内液体の熱的特性が反映されるような比較値が得られる限り任意である。つまり、ステップ222の値Aの測定は、ステップ224の電源ONの後であってもよいし、また、ステップ228の値Bの測定はステップ226の電源OFFの前であってもよい。さらに、ステップ222およびステップ228の値Aおよび値Bの各測定は、ステップ226の電源OFFの後であってもよい。ただし、値Aと値Bの測定の間には適当な時間が必要である。また、容器表面温度が下降局面にあるときの測定では比較値B−Aの値が負数になるのでステップ229のおける判断ではB−Aの絶対値を採る必要がある。
【0111】
本実施の形態2の容器内の液体種別の判別装置では、アルミニウム製等金属容器であっても内容物液体の種別を簡単に判別することが可能である。判別は容器201を装置にセットすることにより開始し、青または赤ランプの点灯によって内容物が水を主成分とする安全なものかそうでないかを簡単に判別できる。また、1回の測定は数秒で終了し、機内持ち込み等の検査のように迅速な処理が要求される検査に活用してメリットが大きい。
【0112】
また、本実施の形態2の液体種別の判別装置では、熱源203および温度センサ204を可撓性のフィルム202上にパターニングにより形成し、フィルム202をU字形状に湾曲させて熱源203および温度センサ204の部分が容器201に接触するように配置する。このため、容器201と熱源あるいは温度センサとの間には直接接触が確保され、安定な熱供給および温度測定が実現される。さらに、熱源および温度センサをフィルム上にパターニングにより形成するので、小型化が容易であり量産性にも優れる。また、安定な素子を熱源および温度センサに用いることができるので装置の長寿命化が図れる。
【0113】
なお、前記で例示した熱源のオンオフ時間や待機時間はあくまでも例示であり、適宜変更することは可能である。
【0114】
以上、本発明を実施の形態2として具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0115】
たとえば、前記実施の形態2では、容器温度が環境温度とほぼ等しい場合の制御方法を例示している。しかし、容器温度が環境温度と相違する場合は実用においては良くあることである。このような場合、以下のような改良を付加することができる。
【0116】
まず、図17を用いて、容器温度が環境温度と相違した場合のセンサ出力について説明する。容器201が配置される時刻をt5とすれば、t5以前のセンサ出力は環境温度に相当する出力値になっており、t5において容器201が配置されたとき、センサ出力は破線で図示するように上昇する。ここで破線240aは容器温度がたとえば50℃、破線240bは容器温度がたとえば40℃、破線240cは容器温度がたとえば30℃の場合であり、容器温度が高いほど高い値に漸近するようセンサ出力が上昇する。このようなセンサ出力の変動が存在する状況では、前記した制御の測定によっては正確な判定ができない恐れがある。このため、容器温度に起因するセンサ出力の変動がなくなった段階で判定制御を行うことが望ましい。しかし、判定には迅速性が要求されるので、容器201が配置された後速やかに判定できることが要請される。
【0117】
そこで、次に、容器温度に起因するセンサ出力の変動が存在する場合に容器表面を加熱したときの熱プロファイルを考察する。図18において実線で示したのは、センサ出力の変動が存在する状況において容器表面を一定時間加熱した場合のセンサ出力を示したグラフである。破線は、容器温度に起因するセンサ出力の変動である。時刻t1において熱源203をONにし時刻t2において熱源203をOFFにするとする。また、センサ出力の測定を時刻t3(前記実施の形態2のセンサ出力O1の測定(測定値は値A))と時刻t4(前記実施の形態2のセンサ出力O2の測定(測定値は値B))で行うとする(なお、このセンサ出力の測定時刻t3,t4は、前記したように変更可能である)。この場合、容器温度に起因するセンサ出力の変動(ベースラインの変動)ΔVbが時刻t4およびt3における測定値の差ΔVに含まれることになる。このΔVbが閾値とのマージンに対して無視できない場合、判定の有効性が疑われる。よって、何らかの方法でΔVbを測定しあるいは予測してΔVbを補正し判定を行えばよい。
【0118】
図19は、ベースラインに変動がある場合の判定制御の一例を示したフローチャートである。まず、プログラムの開始において値T0を「0」に初期化し(ステップ250)、容器を検出する前の温度センサの出力測定を行う(ステップ251)。ここでのセンサ出力の測定値(O3)を図16のステップ222等と同様に値T1としてたとえばRAM213に記録する。前の測定値である値T0との差が所定値以下であるかどうかを判断してセンサ出力の安定を確認する(ステップ252、253)。センサ出力が安定していたなら、容器の検出を行い、容器が検出されないときには測定可能である旨の緑ランプの点灯を行う(ステップ254〜256)。なお、センサ出力の安定確認の測定においては、次回測定における前回測定値とするため、値T1を前回の値T0としてバッファ等に記録する(ステップ253,255)。容器が検出されたなら、たとえば0.5秒の待機(ステップ257)の後、センサ出力の測定を行う(ステップ258)。ここでのセンサ出力の測定値(O4)を前記同様値T2としてたとえばRAM213に記録する。値T2と値T1との差からベースラインの変動ΔVbに相当する補正値Cを決定する(ステップ259)。なお、補正値Cの決定においては、予め記録した補正テーブル260を参照できる。ただし、補正の手法は補正テーブル260を用いるものに限られず、値T1および値T2から適当なモデル関数を用いて演算により求めるものであってもかまわない。補正値Cの決定後、図16の場合と同様に値A(センサの出力値O1)、値B(センサの出力値O2)を測定する(ステップ261〜266)。ただし、ここでは容器配置から適当な時間が経過しているので図16におけるステップ223の待機は必要ではない。値Aおよび値Bの測定の後、補正値Cを加味して閾値との大小関係を判断する(ステップ267)。つまり、測定値B−測定値Aから補正値Cを減算し閾値との大小を判断する。ステップ268および269については図16のステップ230および231と同様である。このような制御により、ベースラインに変動があった場合であっても、正確な判定を行うことが可能になる。なお、容器内部の液体の熱特性を反映する比較値が得られる限り、値Aの測定および値Bの測定のタイミングは任意であることは、前記の場合と同様である。
【0119】
なお、前記図19の制御において、値T2の測定(センサの出力値O4の測定)は必ずしも必要ではない。つまり、値T2の代わりに値Aあるいは値Bを用いて補正値Cを求めることができる。すなわち、値T1と値Aまたは値T1と値Bとから補正値Cを決定することができ、この補正値Cと値Aと値Bとから比較値を求めることができる。なお、補正値Cの決定に際し、補正テーブルを用いることができること、適当なモデル関数を用いて演算により求めることができることは、前記同様である。
【0120】
あるいは、図20に示すように、実施の形態2の温度センサとは別に熱源203から十分に離れた位置に第2の温度センサ270を配置することが可能である。温度センサ270の出力測定のためにAD変換機271および定電流回路272を備える。この場合、値Aの測定および値Bの測定の各測定タイミングで第2の温度センサによる容器温度を測定し、ベースラインの変動を実測することが可能である。なお、第2の温度センサ270の測定タイミングは前記の場合に限られず任意である。この場合測定タイミングに応じた補正値Cの補正テーブルあるいは補正計算が必要である。
【0121】
前記例では、CPU209を備えた制御回路206によるソフトウェアを用いた制御の例を説明した。しかし、図21に示すように温度センサの出力をアナログデータとして取り扱い、アナログ演算を行う電子回路によって制御回路280を構成することも可能である。図21に示す制御回路280では、容器201の配置を容器センサ208が検知するとランプ回路281によってランプ電圧を発生し、これをコンパレータ282に入力する。コンパレータ282では参照電圧V1,V2,V3(V1<V2<V3)を参照して、入力がV1に達すればラッチ回路1(284)へのラッチ制御信号をONにする。ラッチ回路1(284)では、ラッチ制御信号のONを受けてそのときのセンサ出力をラッチする。ラッチ回路1(284)の出力は差動増幅器286の−入力に入力する。コンパレータ282の入力がV2に達すれば、コンパレータ282は熱源駆動回路283への制御信号をONにする。熱源駆動回路283は制御信号のONを受けて熱源203をONにし、たとえば2秒後にこれをOFFにする。コンパレータ282の入力がV3に達すれば、コンパレータ282はラッチ回路2(285)へのラッチ制御信号をONにする。ラッチ回路2(285)では、ラッチ制御信号のONを受けてそのときのセンサ出力をラッチする。ラッチ回路2(285)の出力は差動増幅器286の+入力に入力する。差動増幅器286は入力電圧の差を増幅して出力する。差動増幅器286の入力はコンパレータ287に入力する。コンパレータ287では、閾値電圧Vthを参照して、入力がVthより大きければ赤色のLED表示装置207cを点灯し、入力がVth以下であれば青色のLED表示装置207bを点灯する。なお、コンパレータ287では、コンパレータ282に入力される電圧(ランプ電圧)がV3になって出力される制御信号(ラッチ回路2(285)へのラッチ制御信号)が入力されなければLED表示装置207bあるいは207cの表示(赤あるいは青の表示)が為されず、それ以外の場合は待機である緑の表示(LED表示装置207aの点灯)をするようにしておく。これによりランプ電圧がV3になった時点での判定を赤あるいは青のランプ点灯で表示できる。なお、センサ出力を得るために定電流回路288を備える。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本願の発明は、航空機等交通輸送手段の内部に持ち込む飲料容器の内容物を、容器を開封することなく簡便確実にその安全性を判定する装置あるいは方法に関するものである。よって、本願発明は容器内容物を検査する検査機器産業で利用可能なものである。また、本願発明の容器内液体種別の判別装置は航空機業界等交通輸送機関で利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の一実施の形態1である容器内の液体種別を判別する装置の構成の一例を示したブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態1である装置において、容器表面の温度がどのように変化するかを示した図である。
【図3】本発明の一実施の形態1である容器内の液体種別を判別する装置における容器内液体の判別方法の一例を説明したフローチャートである。
【図4】本発明の容器内の液体種別を判別する装置の構成の他の例を示したブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態2である容器内の液体種別を判別する装置の構成の一例を示したブロック図である。
【図6】本実施の形態2の液体判別装置の容器配置部の一例を示した概略斜視図である。
【図7】U字形状に湾曲させ凸部を上にして配置したフィルム202を示した斜視図である。
【図8】容器201が図6の容器配置部218に配置されたときのフィルム202の状態を示した断面図である。
【図9】図9(a)は、フィルム202に設けられた熱源203および温度センサ204の一例を示した平面図であり、図9(b)は図9(a)のB部を拡大して示した一部平面図である。
【図10】フィルム202に設けられた熱源203および温度センサ204の変形例を示した平面図である。
【図11】フィルム202に設けられた熱源203および温度センサ204の変形例を示した平面図である。
【図12】フィルム202に設けられた熱源203および温度センサ204の変形例を示した平面図である。
【図13】本実施の形態2の液体判別装置の容器配置部の他の例を示した概略斜視図である。
【図14】図13の場合の熱源203および温度センサ204のパターニング例を示す平面図である。
【図15】本実施の形態2の液体判別装置において、容器表面の温度がどのように変化するかを示した図である。
【図16】本実施の形態2の容器内の液体判別装置における容器内液体の判別方法の一例を説明したフローチャートである。
【図17】容器温度が環境温度と相違した場合のセンサ出力の一例を示したグラフである。
【図18】容器温度が環境温度と相違した場合のセンサ出力の一例を示したグラフである。
【図19】ベースラインに変動がある場合の判定制御の一例を示したフローチャートである。
【図20】本発明の一実施の形態である容器内の液体種別を判別する装置の構成の他の例を示したブロック図である。
【図21】本発明の一実施の形態である容器内の液体種別を判別する装置の構成のさらに他の例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0124】
101…容器、102…ハロゲンヒータ、103…赤外線サーモパイル、104…スリット、105…遮熱板、106…制御回路、107a…LED表示装置、107b…LED表示装置、107c…LED表示装置、108…容器センサ、109…CPU、110…熱源駆動回路、111…AD変換器、112…ROM、113…RAM、114…タイマ、115…容器検出回路、117…表示制御回路、130…制御回路、131…ランプ回路、132…コンパレータ、133…熱源駆動回路、134,135…ラッチ回路、136…差動増幅器、137…コンパレータ、201…容器、202…フィルム、203…熱源、204…温度センサ、203a,204a…端子、203b,204b…配線、206…制御回路、207a,207b,207c…LED表示装置、208…容器センサ、209…CPU、210…熱源駆動回路、211…AD変換器、212…ROM、213…RAM、214…タイマ、215…容器検出回路、216…定電流回路、217…表示制御回路、218…容器配置部、218a…ステージ、218b…スリット、218c…前面板、260…補正テーブル、270…第2の温度センサ、271…AD変換機、272…定電流回路、280…制御回路、281…ランプ回路、282…コンパレータ、283…熱源駆動回路、284…ラッチ回路1、285…ラッチ回路2、286…差動増幅器、287…コンパレータ、288…定電流回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に接触する単一または複数の可撓性のフィルムと、
前記単一または複数のフィルムのうち一のフィルムに設けられた温度センサと、
前記単一または複数のフィルムのうち前記温度センサが設けられたフィルムと同一または他のフィルムに設けられた熱源と、
前記容器の内容物が危険である旨の警報を発することができる報知手段と、
前記熱源に電力を供給する電力供給手段と、
前記温度センサの出力を取得して比較値を演算し、前記比較値と所定の閾値とを比較する演算比較手段と、
前記演算比較手段の比較の結果に応じて前記報知手段に警報信号を出力する警報信号出力手段と、
前記電力供給手段、前記演算比較手段および前記警報信号出力手段を制御する制御手段と、
を有する容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項2】
前記フィルムは前記容器が配置される面に向かって凸形状に湾曲して配置されるものであり、
前記容器を配置することにより、前記フィルムの可撓性を利用して前記熱源および前記温度センサが前記容器の外壁に押圧される請求項1記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項3】
前記湾曲により形成される前記フィルムの湾曲表面が、前記容器の高さ方向の線分に沿って前記容器に接触する第1の構成、または、前記容器の周方向の線分に沿って前記容器に接触する第2の構成、の何れかの構成を有する請求項2記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項4】
前記フィルムは、前記容器の外壁に沿って配置される請求項1記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項5】
前記温度センサの大きさは、前記熱源の大きさに比較して小さい請求項1〜4の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項6】
前記熱源を複数有し、前記温度センサが、前記複数の熱源の間に配置される請求項1〜5の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項7】
前記熱源および前記温度センサは、前記フィルムにパターニングされた電気抵抗素子である請求項1〜6の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
時刻t1に前記熱源への電力を供給し、前記時刻t1より後の時刻t2に前記電力の供給を遮断するよう前記電力供給手段を制御し、
時刻t3における前記温度センサの出力値O1と、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4における前記温度センサの出力値O2とを計測し、
前記出力値O2と前記出力値O1とから前記比較値を演算するものである請求項1〜7の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
時刻t1に前記熱源への電力を供給し、前記時刻t1より後の時刻t2に前記電力の供給を遮断するよう前記電力供給手段を制御し、
前記容器を配置する時刻t5より前の時刻t6における前記温度センサの出力値O3と、前記時刻t5より後の時刻であって前記時刻t1より前の時刻t7における前記温度センサの出力値O4と、時刻t3における前記温度センサの出力値O1と、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4における前記温度センサの出力値O2とを計測し、
前記出力値O4と前記出力値O3とから補正値を決定し、
前記出力値O2と前記出力値O1と前記補正値とから前記比較値を演算するものである請求項1〜7の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項10】
前記制御手段は、
時刻t1に前記熱源への電力を供給し、前記時刻t1より後の時刻t2に前記電力の供給を遮断するよう前記電力供給手段を制御し、
前記容器を配置する時刻t5より前の時刻t6における前記温度センサの出力値O3と、時刻t3における前記温度センサの出力値O1と、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4における前記温度センサの出力値O2とを計測し、
前記出力値O2と前記出力値O1と前記出力値O3とから前記比較値を演算するものである請求項1〜7の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項11】
前記熱源と前記温度センサとの間の距離に比較して大きな距離で前記熱源から離れて前記容器に接触するよう配置される第2の温度センサをさらに有し、
前記制御手段は、
時刻t1に前記熱源への電力を供給し、前記時刻t1より後の時刻t2に前記電力の供給を遮断するよう前記電力供給手段を制御し、
時刻t3における前記温度センサの出力値O1と、前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4における前記温度センサの出力値O2と、前記時刻t4より前の時刻t8における前記第2の温度センサの出力値O5とを計測し、
前記出力値O2と前記出力値O1と前記出力値O5とから前記比較値を演算するものである請求項1〜7の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項12】
前記第2の温度センサは、前記フィルムにパターニングされた電気抵抗素子である請求項11記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項13】
前記第2の温度センサは、前記温度センサおよび前記熱源が配置される位置から前記容器の周方向に変位した位置に配置される請求項11または12記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項14】
前記容器の配置を検知する容器センサを備え、前記容器センサからの信号を契機として判別を開始する請求項1〜13の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項15】
容器に接触する単一または複数の可撓性のフィルムと、前記単一または複数のフィルムのうち一のフィルムに設けられた温度センサと、前記単一または複数のフィルムのうち前記温度センサが設けられたフィルムと同一または他のフィルムに設けられた熱源と、前記容器の内容物が危険である旨の警報を発することができる報知手段と、前記熱源に電力を供給する電力供給手段と、前記温度センサの出力を取得して比較値を演算し、前記比較値と所定の閾値とを比較する演算比較手段と、前記演算比較手段の比較の結果に応じて前記報知手段に警報信号を出力する警報信号出力手段と、前記電力供給手段、前記演算比較手段および前記警報信号出力手段を制御する制御手段と、を含む容器内の液体種別を判別する装置の制御方法であって、
時刻t3において前記温度センサの出力値O1を記憶しまたは保持するステップと、
時刻t1において前記熱源への電力の供給を開始するステップと、
前記時刻t1より後の時刻t2において前記熱源への電力の供給を停止するステップと、
前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4において前記温度センサの出力値O2を記憶しまたは保持するステップと、
前記出力値O1と前記出力値O2とから前記比較値を求めるステップと、
前記比較値と前記閾値とを比較するステップと、
前記比較の結果に応じて前記警報信号を生成するステップと、
を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法。
【請求項16】
容器に接触する単一または複数の可撓性のフィルムと、前記単一または複数のフィルムのうち一のフィルムに設けられた温度センサと、前記単一または複数のフィルムのうち前記温度センサが設けられたフィルムと同一または他のフィルムに設けられた熱源と、前記容器の内容物が危険である旨の警報を発することができる報知手段と、前記熱源に電力を供給する電力供給手段と、前記温度センサの出力を取得して比較値を演算し、前記比較値と所定の閾値とを比較する演算比較手段と、前記演算比較手段の比較の結果に応じて前記報知手段に警報信号を出力する警報信号出力手段と、前記電力供給手段、前記演算比較手段および前記警報信号出力手段を制御する制御手段と、を含む容器内の液体種別を判別する装置の制御方法であって、
前記容器を配置する時刻t5より前の時刻t6において前記温度センサの出力値O3を記憶しまたは保持するステップと、
前記時刻t5より後の時刻t7において前記温度センサの出力値O4を記憶しまたは保持するステップと、
前記時刻t7より後の時刻t3において前記温度センサの出力値O1を記憶しまたは保持するステップと、
前記時刻t7より後の時刻t1において前記熱源への電力の供給を開始するステップと、
前記時刻t1より後の時刻t2において前記熱源への電力の供給を停止するステップと、
前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4において前記温度センサの出力値O2を記憶しまたは保持するステップと、
前記出力値O3と前記出力値O4とから補正値を決定するステップと、
前記出力値O1と前記出力値O2と前記補正値とから前記比較値を求めるステップと、
前記比較値と前記閾値とを比較するステップと、
前記比較の結果に応じて前記警報信号を生成するステップと、
を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法。
【請求項17】
容器に接触する単一または複数の可撓性のフィルムと、前記単一または複数のフィルムのうち一のフィルムに設けられた温度センサと、前記単一または複数のフィルムのうち前記温度センサが設けられたフィルムと同一または他のフィルムに設けられた熱源と、前記容器の内容物が危険である旨の警報を発することができる報知手段と、前記熱源に電力を供給する電力供給手段と、前記温度センサの出力を取得して比較値を演算し、前記比較値と所定の閾値とを比較する演算比較手段と、前記演算比較手段の比較の結果に応じて前記報知手段に警報信号を出力する警報信号出力手段と、前記電力供給手段、前記演算比較手段および前記警報信号出力手段を制御する制御手段と、を含む容器内の液体種別を判別する装置の制御方法であって、
前記容器を配置する時刻t5より前の時刻t6において前記温度センサの出力値O3を記憶しまたは保持するステップと、
前記時刻t6より後の時刻t3において前記温度センサの出力値O1を記憶しまたは保持するステップと、
前記時刻t6より後の時刻t1において前記熱源への電力の供給を開始するステップと、
前記時刻t1より後の時刻t2において前記熱源への電力の供給を停止するステップと、
前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4において前記温度センサの出力値O2を記憶しまたは保持するステップと、
前記出力値O1と前記出力値O2と前記出力値O3とから前記比較値を求めるステップと、
前記比較値と前記閾値とを比較するステップと、
前記比較の結果に応じて前記警報信号を生成するステップと、
を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法。
【請求項18】
容器に接触する単一または複数の可撓性のフィルムと、前記単一または複数のフィルムのうち一のフィルムに設けられた温度センサと、前記単一または複数のフィルムのうち前記温度センサが設けられたフィルムと同一または他のフィルムに設けられた熱源と、前記容器の内容物が危険である旨の警報を発することができる報知手段と、前記熱源に電力を供給する電力供給手段と、前記温度センサの出力を取得して比較値を演算し、前記比較値と所定の閾値とを比較する演算比較手段と、前記演算比較手段の比較の結果に応じて前記報知手段に警報信号を出力する警報信号出力手段と、前記電力供給手段、前記演算比較手段および前記警報信号出力手段を制御する制御手段と、前記熱源と前記温度センサとの間の距離に比較して大きな距離で前記熱源から離れて前記容器に接触するよう配置される第2の温度センサと、を含む容器内の液体種別を判別する装置の制御方法であって、
時刻t3において前記温度センサの出力値O1を記憶しまたは保持するステップと、
時刻t1において前記熱源への電力の供給を開始するステップと、
前記時刻t1より後の時刻t2において前記熱源への電力の供給を停止するステップと、
前記時刻t3および前記時刻t1より後の時刻t4において前記温度センサの出力値O2を記憶しまたは保持するステップと、
前記時刻t4より前の時刻t8において前記第2の温度センサの出力値O5を記憶しまたは保持するステップと、
前記出力値O1と前記出力値O2と前記出力値O5とから前記比較値を求めるステップと、
前記比較値と前記閾値とを比較するステップと、
前記比較の結果に応じて前記警報信号を生成するステップと、
を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法。
【請求項19】
前記熱源および前記温度センサは、前記フィルムにパターニングされた電気抵抗素子である請求項15〜18の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置の制御方法。
【請求項20】
前記熱源、前記温度センサおよび前記第2の温度センサは、前記フィルムにパターニングされた電気抵抗素子である請求項18記載の容器内の液体種別を判別する装置の制御方法。
【請求項21】
前記容器内の液体種別を判別する装置には、前記容器の配置を検知する容器センサを備え、
前記容器センサからの信号の受信を契機として処理を開始する請求項15〜20の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−3548(P2007−3548A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279762(P2006−279762)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【分割の表示】特願2005−516610(P2005−516610)の分割
【原出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】