説明

容器用の捩じ切り開封機構

【課題】スパウトの液通路の封止部材をキャップによって捩じ切って開封する形式のスパウト―キャップ組立において、封止部材の捩じ切りが完了したことを操作者に確実に感知させることができる捩じ切り開封機構を提供すること。
【解決手段】
回転中心線周りに一周する仮想円に沿って配置された両面突起と仮想円に沿って両面突起に対し相対的に移動可能な当接突起とを有し、両面突起と捩じ切り完了表現用当接突起のうちの一方の突起がスパウト2に固定され他方の突起がキャップ3に固定され、両面突起は半径方向の突出高さがほぼ等しい緩傾斜の摺動面と急傾斜のストッパー面とを円に沿って隣り合わせて有し当接突起は摺動面とストッパー面に当接可能であり、摺動面を当接突起が回転方向に通過した位置ではスパウト2とキャップ3との相対回転位置は封止部材15の捩じ切り完了位置以上でかつキャップ3の離脱を許容する離脱許容位置にあるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は流動性内容物を収容する容器に使用するスパウトとキャップからなる内容物注出部を捩じ切り開封するための捩じ切り開封機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器の内容物注出部材の構造のうちには、スパウトとキャップとから成る捩じ切り開封形式のものがある。例えば、輸液用容器は内容物として栄養剤や医薬剤等の輸液用剤を充填した容器で、その輸液用剤は輸液用容器からカテーテルを通して患者に注入される。
このような輸液用容器としては可撓性袋容器からなるパウチ容器が開発され、実用されている。輸液用容器の注出口部には液通路が閉じられているスパウトが取り付けられ、さらにその外側にキャップが装着されてスパウトを保護し、液通路の不時の開口を防いでいる。このスパウトとキャップがスパウト−キャップ組体を構成する。
内容物注出操作として輸液操作を行う場合には、キャップを外し、スパウトの注出口を開口させ、その注出口をカテーテルに接続する。この輸液操作を簡単にして装着者の負担を軽減させるための工夫として、スパウト―キャップ組体では次のような構成が採られている。
それはキャップの取り外し動作が同時にスパウトの注出口の開口動作となるような構成であって、そのような構成の従来の技術は特許文献1〜4に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−293361号
【特許文献2】特開2002−211593号
【特許文献3】実登2605789号
【特許文献4】特開2006−27662号
【特許文献5】特開平6−23013号
【特許文献6】特開2004−131086号
【特許文献7】特開2000−43908号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2ではスパウトの液通路の上端を封止部材で封止しておいて、このスパウトにキャップを外被させる。一方キャップ内部の上端にはスパウトの封止部材を受け入れることができる大きさの空所が設けられている。キャップが外被した状態では、スパウトの封止部材がキャップの空所に嵌入してスパウトとキャップは一体的に結合している。
容器から内容物を注出するときには、キャップを外す必要があるが、この動作としてキャップを回転させながら引き上げると、封止部材はキャップに保持されたままとなるので、封止部材はスパウトから捩じ切られ、注出口は開口する。しかしキャップの回転による封止部材の捩じ切りの完了が明確には判別できないので、キャップの無駄な回転が生じ易い。
次に引用文献3に記載されたスパウト―キャップ組体では、封止部材の縦溝とキャップ空所の縦溝が噛み合って封止部材をキャップが保持するのであるが、スパウトがカム機構を備えていて、キャップを回転させるとそのカム機構によってキャップが上昇する構成になっていて、結局封止部材とキャップは縦方向に相対変化が可能であるので、その結果として捩じ切った後の封止部材がキャップの空所から外れて脱落するおそれがある。
特許文献4に記載されたスパウト―キャップ組体では、封止部材のキャップからの脱落を防ぐ構造としている。
しかし、封止部材の捩じ切りが完了したことを操作者に感知させることは、開封時の誤操作を防ぐために大切なことであるが、これらの特許文献1〜4の技術ではスパウト―キャップ組体では、そのような操作の完了を操作者に感知させる手段が設けられていないので誤操作が発生しやすい。
このようなことから、この発明はスパウトの液通路の封止部材をキャップによって捩じ切って開封する形式のスパウト―キャップ組立において、封止部材の捩じ切りが完了したことを操作者に確実に感知させることができて、操作者の誤動作を防ぐことができるスパウト―キャップ組体の捩じ切り開封機構を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的に対応して、この発明の容器用の捩じ切り開封機構は容器の注出口部に取り付けられているスパウトと前記スパウトに装脱可能に装着するキャップとを備えて、前記スパウトの液通路を閉じる封止部材を前記キャップの回転中心線回りの回転によって捩じ切って開封する捩じ切り開封機構であって、
前記スパウトは、筒状の胴部内に基端で前記容器の内部と連通する前記液通路を有するとともに、前記液通路の先端は捩じ切り可能に前記スパウトの胴部に連結して前記液通路を封止する前記封止部材を備え、かつ、前記封止部材の捩じ切り完了位置を表現する捩じ切り開封表示機構を備え、
前記キャップは前記スパウトの前記胴部の少なくとも上部分を同心状に嵌入させることができる下端部が開放している筒状空所を形成する筒状壁を有し、
前記捩じ切り開封表示機構は、前記回転中心線周りに一周する仮想円に沿って配置された両面突起と前記仮想円に沿って相対的に移動可能な当接突起とを有し、両面突起と当接突起のうちの一方の突起が前記スパウトに固定され他方の突起が前記キャップに固定され、前記両面突起は半径方向の突出高さがほぼ等しい緩傾斜の摺動面と急傾斜のストッパー面とを前記円に沿って背中合せに有し前記当接突起は摺動面とストッパー面に当接可能であり、前記摺動面を前記当接突起が回転方向に通過した位置では前記スパウトと前記キャップとの相対回転位置は前記封止部材の捩じ切りが完了する捩じ切り完了位置を越えかつ前記キャップの離脱を許容する離脱許容位置にあるように構成されており、
前記筒状空所の上部において前記スパウトの前記封止部材と当接して前記封止部材に前記キャップの前記中心線回りの相対回転を伝達することが可能な回転伝達部と、前記筒状空所の上部において前記スパウトの前記封止部材を収容して保持可能な封止部材保持構造とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載された発明では、捩じ切り開封表示機構によって封止部材の捩じ切り完了位置を表現することができる。
この捩じ切り開封表示機構は緩傾斜の摺動面と急傾斜のストッパー面とを表裏に持つ両面突起の緩傾斜の摺動面上に当接突起をなぞらせて、傾斜面との接触点の高さの変化を利用して操作者に抵抗の変化を感得させ、捩じ切りの途中の状態変化及び捩じ切りの終了を擬似的に表現することができる。
この場合に、封止部材の捩じ切りの途中経過を示すことができれば、操作者に捩じ切り操作の終了段階が近づいたことも予期させて、操作者に手加減をする余裕を与えることができて、誤操作の回避に特に有効である。捩じ切りの途中経過や状態変化を表示するためには、斜面を利用して捩じ切りの操作抵抗変化を発生させることが有効である。
特許文献5〜7に示すように、操作突起を用いて容器と蓋体の逆転防止のロック機構を設けることがあるが、このロック機構はもっぱら逆転防止のために楔状突起の断崖絶壁状の屹立した側面を当接面として利用するもので、容器を蓋体との最終的な状態を表示すことができるが、途中の状態変化をしめすことができない。
【0007】
請求項2に記載された発明では、両面突起が2個以上設けられた場合に、相対した摺動面間に少なくとも1つ配置された当接突起と摺動面間の回転角度は封止部材の捩じ切りに要する回転角度以上であるので、その捩じ切りが確実である。
【0008】
請求項3に記載された発明では、両面突起が2個以上設けられ、相対する摺動面間のキャップ回転中心線周りの角度は封止部材の捩じ切りに要する回転角度の2倍以上であるので、その捩じ切りが確実である。
【0009】
請求項4に記載された発明では、捩じ切り開封操作において、キャップを取り外すのに必要な回転角度は45°〜130°に設定されているので、開封操作において封止部材を確実に捩じ切り開封することができる。
【0010】
請求項5に記載された発明では、キャップとスパウトの係合、解除を容易に行うことができる構造をとることができる。
【0011】
請求項6に記載された発明によれば、キャップに水切り孔や水切り溝部が設けられているので、洗浄工程における水切り、乾燥が容易である。
【0012】
請求項7に記載した発明によれば、キャップの回転伝達部の当接用面と封止部材の当接用面とのクリアランスがきわめて小さく設定されているので、封止部材の遊びが少なく、回転伝達部と封止部材との位置決めが確実であるので、回転伝達部から封止部材への回転力の伝達が確実で、封止部材の捩じ切りが確実に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下この発明の詳細を最良の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1から図6において1はスパウト−キャップ組体である。
スパウト−キャップ組体1は容器4の注出口部5に取り付けられるスパウト2とそれに外嵌するキャップ3とからなっている。スパウト2とキャップ3との間には後述する捩じ切り開封表示機構41と係止機構42と封止部材保持構造43が設けられている。
【0014】
図7から図12に示すように、スパウト2は連通する容器取付部6と胴部7とを有している。容器取付部6はスパウト2を容器4の注出口部5に液密に取り付ける部分で、容器4の注出口部5に差し込まれて、外周部8で容器4の素材と接着する。
胴部7は内部に液通路11(図12)を有しており、液通路11は基端部12が容器取付部6の液通路13(図7)と連通し、液通路13を介して容器4の内部と連通している。
胴部7の外周はカテーテルのチューブ(図示せず)に差し込む部分であるので、この部分には滑り止めの段部14が4段形成されている。液通路11の上端は封止部材15によって閉じられており、封止部材15は薄肉部16によって胴部7に連結しており、封止部材15を相対回転の中心線17の回りに捩じると薄肉部16が捩じ切れて封止部材15が胴部7から分離し、液通路11が開封する。この封止部材15を中心線17回りに回転させて捩じるための工具としては後述するキャップ3が機能するが、このキャップ3との結合を確実にして封止部材15とキャップ3との相対回転である空回りを防ぐために封止部材保持構造43が設けられている。
容器取付部6の直上にはガードつば30が設けられ、両端には乗越え防止突起85が設けられ、複数のスパウト2を製造後に搬送するときに、ガードつば30どうしが、互いに乗り上げないように阻止している。
【0015】
一方、キャップ3は図13から図19に示すように、筒状の筒状壁25を有し、筒状壁25はスパウト2の少なくとも上部分を同心状に嵌入させることができる円筒状の筒状空所27を形成するものであって、筒状空所27の上端は筒状壁25に固着または連接した天板28によって閉じられ、筒状空所27の下端29は開放である。筒状壁25は下部にある肩部33を境にして上方の小径部31と下方の大径部32とからなっている。キャップ3筒状壁25の上端部を貫通して水切り孔83が形成され(図14)、また筒状壁25の内面に水切り溝84(図17)が形成されている。
【0016】
前記の通りスパウトーキャップ組体1には捩じ切り開封表示機構41と係止機構42と封止部材保持構造43が設けられている。
【0017】
捩じ切り開封表示機構41はキャップ3に形成した両面突起51とスパウト2に形成した当接突起52とを備えている。当接突起52はキャップ3に取付けられている捩じ切り開封表示機構41の両面突起51と協働して封止部材15の捩じ切り完了位置を表現する機能を発揮するものである。両面突起51は図16、図20に示すように、キャップ3の下端29からやや上方において胴部7の内面に形成されていて、キャップ内筒の円弧面を含み中心線17周りに一周する仮想円53(図16、図20)に沿って配置されていて、半径方向の突出高さがほぼ等しい緩傾斜の摺動面54と急傾斜のストッパー面55を前記の円に沿って背中合せに隣り合せて有し、一方、当接突起52は前記円に沿ってスパウト2
【0018】
から半径方向外方に突出している。当接突起52は摺動面54とストッパー面55に当接可能であるが、比較的緩斜面の摺動面54に対してはキャップ3を力を入れて強く回せば当接突起52を弾性変形させながら摺動面54上を摺動して乗り越えることができ、ほとんど絶壁状の急傾斜をなしているストッパー面55に対してはその程度の力でキャップ3を回しても当接突起52が乗り越えることができない。両面突起51は円53に沿って少なくとも2個(図16、20では4個)配置されているがこのとき、当接突起52と摺動面54の間隔は封止部材15を回転させて薄肉部16を捩じ切るのに必要な回転角度以上であることが好ましい。
【0019】
封止部材15を捩じ切るのに必要な回転角度はスパウト2を構成する材料によって若干の相違があるが、ポリエチレンで構成する場合は約45度〜130度である。
両面突起51は封止部材15の折取感を得たい角度、キャップ3の回転停止させたい角度により様々な配置があり、例えば、図21に示すように2個、図20に示すように4個または図22に示すように2個設け、これに対応して当接突起52は図21に示すように1
【0020】
個、図20及び図22に示すように2個設けるが適宜増やしてもよい。両面突起51を2個以上設けた場合に、当接突起52は両面突起51の相対する側(摺動面どうしが向いあう側)の間に配置され、当接突起51と両面突起の摺動面側との角度間隔(図21、22のθ1、θ2又はθ3)は封止部材15を捩じ切るのに必要な回転角度以上で、両面突起51の相対する側の角度間隔(図21のθ1+θ2、図22のθ1+θ3)はその必要な回転角度の2倍以上である。なお、図21でθ1=θ2であってもよい。
【0021】
スパウト2には捩じ切り開封表示機構41の板状の当接突起52が設けられている。すなわち、スパウト2の胴部7の表面からは板状の当接突起52が中心線17に垂直な方向に突出して形成されている。当接突起は52は中心線17側にむかう側、すなわち内方がわの側面がスパウト2に固着され、上端及び外側の側面が露出されたような形状となっている。当接突起52の下端も露出されたような形状でもよいが、本実施形態のように、補強用つば56が下方に存在する場合はそれと接続固着させたような形状が好ましい。
この場合は、補強用つば56の上端から当接突起52の上辺57までの高さh1(図8)はキャップ2がスパウト2に装着している状態において、補強用つば56の上面とキャップ3の筒状壁25の下端との距離h2(図2)より大きく設定されていて、キャップ3がスパウト2に装着している状態において上辺57は捩じ切り開封表示機構41の両端突起51と当接する位置に入る寸法をなしているが、図20に示すように、上辺57の直径方向の長さはd3で、d3は仮想円53の直径D1よりも小さくD1=d3+(幾分の長さt)+(幾分の長さt′)に設定されているので、当接突起52が筒状壁25の円53内に入る。
なおこの実施形態では、両面突起51をキャップ3に設け、当接突起52をスパウト2に設けているが、他の実施形態では逆に、両面突起51をスパウト2に設け、当接突起52をキャップ3に設けてもよい。なお補強つば56はスパウト2を製造後に吊り下げ搬送するために、下面が用いられることもある。
【0022】
次にスパウト―キャップ組体1には図5に示すように、係止機構42が設けられている。この係止機構42はスパウト2に対するキャップ3の打栓による装着を可能にするとともに、スパウト2とキャップ3が抜け出してはいけない回転角度位置にあるときにスパウト2とキャップ3の抜け出しを防止し、かつスパウト2からキャップ3を抜き取る場合にその抜き取りを許容するための機構であって、キャップの抜け出しに対して抵抗を与える機構を備えていて、スパウト2から回転中心線17に垂直な方向外側に延出しているスパウト側係止片61(図7、図8)とキャップ3から中心線17に垂直な方向内側に延出しているキャップ側係止片62(図17、図18)とをそれぞれ回転中心線17回りの所定の角度範囲に設け、スパウト側係止片61とキャップ側係止片62とは共に先端部に前記回転中心線17方向で干渉可能なアンダーカット部63、64を有していて、スパウト2とキャップ3が所定の相対角度位置に在る時に互いのアンダーカット部63、64が干渉してキャップ3の抜け出しを抑制する抜け出し抑制位置にあり、スパウト2とキャップ3が抜け出し抑制位置を外れた相対角度位置からなる抜け出し許容位置にあるときに互いのアンダーカット部63、64の干渉が外れてキャップ3の抜け出しを許容する。
【0023】
次にスパウト―キャップ組体1には封止部材保持構造43が設けられている。
この実施形態では図9に示すようにスパウト2では相対回転の中心線17に垂直な封止部材15の輪郭形状は円形の中心部71とその外側に放射状に突出する係止翼72をもった形状であり、かつ図8、図11に示すように中心部の円筒側面から下向きの係止庇73が張り出している。
【0024】
一方、キャップ3の小径部31の上端近傍には封止部材保持部74と当接部75が設けられている。
【0025】
封止部材保持部74は中心線17方向の中央に向って突出する保持庇77を備えていて、それぞれの保持庇77は当封止部材保持部74内に入った封止部材15の側面から延出している係止庇73と係合して封止部材15を封止部材保持部74内に離脱することなく保持する。キャップ3をスパウト2に嵌め合わせる際は、保持庇77は係止庇73を乗り越えて係合する。
【0026】
当接部75は中心線17の回りに90゜の角度間隔を置いて筒状空所27内に突出してスパウト2側の封止部材15の側面に対向する当接部材76を備えていて、4個の当接部材76が協働してあたかも袋ナットのような機能を発揮して封止部材15を保持し封止部材15とキャップ3との中心線17回りの相対回転を阻止する。
当接部75内に封止部材15を収容した場合の封止部材15と当接部75との間の寸法関係、そのうちでも、封止部材15の長手寸法に相当する左右の係止翼72の全長と当接部75の内面との寸法関係は、特に当接部75から封止部材15に捩じ切りのための回転トルクを効率良く伝達するために重要である。
【0027】
すなわち図23に示すように、係止翼72の先端面82と当接部75の内面78との隙間の大きさd4が大きすぎる場合は、薄肉部16の強度が小さすぎる場合に、薄肉部16の変形を拘束する部材が存在しないので、図24に示すように、薄肉部が変形して、封止部材15が傾いてしまい、その結果、封止部材15と当接部材76とが正しく対向しなくなり、その結果当接部材76から封止部材15に回転トルクが正しく伝達しなくなり、薄肉部16の捩じ切りが円滑に行なわれず、また、係止庇73による封止部材15の保持も不確実になり易い。
【0028】
そこでこの発明では図25に示すように、当接部75の内面の径を小さくし、または係止翼72の先端面82間の寸法を大きくして係止翼72の先端82と当接部75の内面78との隙間d4を小さく、好ましくは0.3mmにする。
【0029】
こうすることにより、図27に示すように、当接部75の内面78が係止翼72と当接してその姿勢を拘束し、封止部材15が当接部材76に対して正しい対向した姿勢を維持し、当接部材76から封止部材15に回転トルクを正しく伝達して薄肉部16の捩じ切りを確実にすることができ、係止庇73による封止部材15の保持も確実になる。
またキャップ3には水切り孔83や水切り溝84が形成されているので、スパウト−キャップ組体1をレトルト処理した後の排水栓がよくなる。
【0030】
このスパウト−キャップ組体1にあっては、容器製造機械がスパウト2にキャップ3を装着する時にはスパウト2の当接突起52を検出してキャップ3に対して適切な方向、たとえば両面突起51の摺動面54間の中央の角度位置(図20、21)あるいはキャップ3の断面(図22)の対称線(図中上下方向の一点鎖線に対し90°をなす角に延出する向きとなるように当接突起52が嵌入するように装着すれば、キャップ3の封止部材保持部74にスパウト2の封止部材15を正しく入り込むように打栓して装着することができる。
【0031】
一方、操作者がスパウト2を開口して内容液を容器4から注出しようとするときに、キャップ3を中心線17の回りに回転させてスパウト2の当接突起52が両面突起51の摺動面54を昇ることによる抵抗感の変化及びストッパー面55を落下することによるクリック音の発生を確認すれば、封止部材15を支えている薄肉部16が完全に捩じ切られ、スパウト2が開封され、キャップ3を離脱させるのに適した回転角度範囲内に達していることを知ることができる。
【0032】
このように構成されたスパウト―キャップ組体1の作用は次の通りである。
容器の製造機械がスパウト2の当接突起52とキャップ3の両面突起51を検出して両面突起51の摺動面54間の中央の位置に当接突起52が位置するようにするなどしてキャップ3をスパウト2に中心線17の方向に打栓すれば、キャップ3の封止部材保持部74にスパウト2の封止部材15が正しく入り込み、封止部材15は各側面を当接部材76に囲まれ、かつ係止庇73に支えられて保持される。この時キャップ3のキャップ側係止片62はスパウト2のスパウト側係止片61にそれぞれのアンダーカット64、63で係止している。こうしてスパウト―キャップ組体1が完成する。
【0033】
次にスパウト―キャップ組体1を開封する場合には、スパウト2に対してキャップ3を中心線17の回りに回転するとキャップ3が封止部材15の各側面85a〜dのうち2側面(85aと85c、あるいは85bと85d(図26参照))をキャップ3を平面から見た円の接線方向に押すので、封止部材15は中心線17の回りに回転され、薄肉部16で捩じ切られ、液通路11は開封する。
【0034】
スパウト2の当接突起52が両面突起51の摺動面54を昇ることによる摩擦抵抗感の増加及びストッパー面55を落下することによる摩擦抵抗感の消滅とクリック音の発生によって操作者はキャップ3を引き抜くのに適した状態に達したことを感知し、開封したスパウト2からキャップ3を引き抜いて離脱させることができる。さらにストッパー面55により回し過ぎを防止し、またキャップ3が引き抜ける位置にあることを操作者に感知させることができる。この時スパウト―キャップ組体1の封止部材15は捩じ切られキャップ3の封止部材保持部74内に保持される。
このように、この発明によればスパウトの液通路の封止部材をキャップによって捩じ切って開封する形式のスパウト―キャップ組体において、打栓時のスパウトとキャップの位置合せが容易で、封止部材をキャップの空所に正しい姿勢で嵌合させることができ、また封止部材の捩じ切りが完了したことを操作者に確実に感知させることができて、操作者の誤動作を防ぐことができ、また、捩じ切った封止部材を脱落させることなしに確実にキャップ内に保持させることができるスパウト―キャップ組体の捩じ切り開封機構を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】スパウト―キャップ組体の正面図
【図2】スパウト―キャップ組体の側面図
【図3】スパウト―キャップ組体の平面図
【図4】スパウト―キャップ組体の底面図
【図5】図3におけるA−A断面図
【図6】図3におけるC−C断面図
【図7】スパウトの正面図
【図8】スパウトの側面図
【図9】スパウトの平面図
【図10】スパウトの底面図
【図11】図9におけるC−C断面図
【図12】図9におけるA−A断面図
【図13】キャップの正面図
【図14】キャップの側面図
【図15】キャップの平面図
【図16】キャップの底面図
【図17】図16におけるA−A断面図
【図18】図16におけるB−B断面図
【図19】図16におけるC−O−D断面図
【図20】捩じ切り開封表示機構の断面説明図
【図21】他の捩じ切り開封表示機構の断面説明図
【図22】他の捩じ切り開封表示機構の断面説明図
【図23】スパウト−キャップ組体の縦断面図
【図24】封止部材が大きく傾いた状態を示す縦断面図
【図25】他のスパウト−キャップ組体の縦断面図
【図26】図25におけるA−A断面図
【図27】封止部材が小さく傾いた状態を示す縦断面図
【符号の説明】
【0036】
1 スパウト−キャップ組体
2 スパウト
3 キャップ
4 容器
5 注出口部
6 容器取付部
7 胴部
8 外周部
11 液通路
12 基端部
13 液通路
14 滑り止めの段部
15 封止部材
16 薄肉部
17 中心線
25 筒状壁
27 筒状空所
28 天板
29 下端
30ガードつば
31 小径部
32 大径部
33 肩部
41 捩じ切り開封表示機構
42 係止機構
43 封止部材保持機構
51 両面突起
52 当接突起
53 仮想円
54 摺動面
55 ストッパー面
56 補強用つば
57 上辺
61 スパウト側係止片
62 キャップ側係止片
63 スパウト側アンダーカット
64 キャップ側アンダーカット
71 中心部
72 係止翼
73 係止庇
74 封止部材保持部
75 当接部
76 当接部材
77 保持庇
78 内面
82 先端面
83 水切り孔
84 水切り溝
85 a〜d封止部材の側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の注出口部に取り付けられているスパウトと前記スパウトに装脱可能に装着するキャップとを備えて、前記スパウトの液通路を閉じる封止部材を前記キャップの回転中心線回りの回転によって捩じ切って開封する捩じ切り開封機構であって、
前記スパウトは、筒状の胴部内に基端で前記容器の内部と連通する前記液通路を有するとともに、前記液通路の先端は捩じ切り可能に前記スパウトの胴部に連結して前記液通路を封止する前記封止部材を備え、かつ、前記封止部材の捩じ切り完了位置を表現する捩じ切り開封表示機構を備え、
前記キャップは前記スパウトの前記胴部の少なくとも上部分を同心状に嵌入させることができる下端部が開放している筒状空所を形成する筒状壁を有し、
前記捩じ切り開封表示機構は、前記回転中心線周りに一周する仮想円に沿って配置された両面突起と前記仮想円に沿って相対的に移動可能な当接突起とを有し、両面突起と当接突起のうちの一方の突起が前記スパウトに固定され他方の突起が前記キャップに固定され、前記両面突起は半径方向の突出高さがほぼ等しい緩傾斜の摺動面と急傾斜のストッパー面とを前記円に沿って背中合せに有し前記当接突起は摺動面とストッパー面に当接可能であり、前記摺動面を前記当接突起が回転方向に通過した位置では前記スパウトと前記キャップとの相対回転位置は前記封止部材の捩じ切りが完了する捩じ切り完了位置を越えかつ前記キャップの離脱を許容する離脱許容位置にあるように構成されており、
前記筒状空所の上部において前記スパウトの前記封止部材と当接して前記封止部材に前記キャップの前記中心線回りの相対回転を伝達することが可能な回転伝達部と、前記筒状空所の上部において前記スパウトの前記封止部材を収容して保持可能な封止部材保持構造とを有することを特徴とする容器の捩じ切り開封部の構造。
【請求項2】
前記両面突起が2個以上設けられ、前記当接突起の少なくとも1つは、相対する前記摺動面間に配置されており、前記当接突起と摺動面間の前記中心線回りの角度は前記封止部材を捩じ切り開封するのに必要な前記回転中心回りの回転角度以上であることを特徴とする請求項1記載の容器の捩じ切り開封部の構造。
【請求項3】
前記両面突起が2個以上設けられており、前記相対する摺動面間の前記中心線回りの角度は前記封止部材を捩じ切り開封するのに必要な前記回転中心回りの回転角度の2倍以上であることを特徴とする請求項1記載の容器の捩じ切り開封部の構造。
【請求項4】
前記封止部材を捩じ切り開封するのに必要な前記回転中心回りの回転角度は45°〜130°であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1記載の容器の捩じ切り開封部の構造。
【請求項5】
前記スパウトと前記キャップの間に設けられていて前記キャップの抜け出しに対して抵抗を与える係止機構を備えていて、前記係止機構は前記スパウトから前記回転中心線に垂直な方向外側に延出しているスパウト側係止片と前記キャップから前記中心線に垂直な方向内側に延出しているキャップ側係止片とをそれぞれ前記回転中心線回りの所定の角度範囲に設け、前記スパウト側係止片と前記キャップ側係止片とはともに先端部に前記回転中心線方向で干渉可能なアンダーカット部を有していて前記スパウトと前記キャップが所定の相対角度位置に在る時に互いのアンダーカット部が干渉して前記キャップの抜け出しを抑制する抜け出し抑制位置にあり、前記スパウトと前記キャップが前記抜け出し抑制位置を外れた相対角度位置からなる抜け出し許容位置にあるときに互いのアンダーカット部の干渉が外れて前記キャップの抜け出しを許容するように構成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1記載の容器の捩じ切り開封部の構造。
【請求項6】
前記キャップの前記筒状壁を貫通して水切り孔が形成され、およびまたは前記筒状壁の下部の内面には下端開放の水切り溝部が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1記載の容器の捩じ切り開封部の構造。
【請求項7】
未捩じ切り開封状態における前記回転伝達部の当接用面と前記封止部材の当接用面とのクリアランスは0.3mm以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1記載の容器の捩じ切り開封部の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−46184(P2009−46184A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216186(P2007−216186)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】