説明

容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置及びその角度測定方法

【課題】容器蓋のブリッジの破断時における容器蓋の回転角を検出する容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置を提供すること。
【解決手段】容器蓋2のブリッジ切れ角度測定装置1は、容器蓋2を装着した容器を支持する容器クランパ32と、容器蓋32を把持し容器蓋32を開栓させる蓋チャック37と、容器蓋2の周方向破断ライン7のブリッジが破断される音を検知する集音マイク33と、集音マイク33の音から音圧レベルを測定する音圧レベル測定部48と、音圧レベル測定部48が測定したブリッジの破断時における測定音圧レベルと予め測定したブリッジが破断されていないときに発生する基準ノイズとの音圧レベル差によって、ブリッジの破断を判定するブリッジ破断判定部49と、ブリッジ破断判定部49がブリッジの破断を検出した時の容器蓋2の回転角を検出する破断角検出部51とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に装着されタンパーエビデントバンドを備えた容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置及びその角度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料容器の容器蓋には、いたずら防止等の見地から、開封履歴を明示する機能、即ちタンパーエビデント機能を備えた容器蓋が、各種飲料容器などの容器蓋として広く使用されている。
この種の容器蓋は、通常、天面壁とその周縁部から垂下しているスカート壁とからなる容器を有し、スカート壁には周方向に延在する周方向破断ラインが形成され、スカート壁はこの周方向破断ラインよりも上方の主部と下方のタンパーエビデントバンドとに区画されている。周方向破断ラインには、容器蓋の開栓時の回転により破断可能なブリッジが主部とタンパーエビデントバンドを連結している。
【0003】
このような容器蓋は飲料容器への装着により、容器のスカート壁内面が容器口部と嵌合することにより容器口部に装着され、キャップ本体のスカート壁内面に設けられた被係止部が、容器の口部と係合する。
開栓時において容器蓋が上昇すると、タンパーエビデントバンドは、その内周にある被係止部が容器口部に形成した係止突部(環状係止あご)に引っかかることによって上昇を阻止され、さらにキャップを上昇させるとキャップとタンパーエビデントバンド間のブリッジが破断する。こうして、一度容器口部に締結された後に開封されたキャップは、必ずタンパーエビデントバンドが破断されているため、開封履歴が明示される。
【0004】
タンパーエビデント機能を有する容器蓋は、いたずら防止や品質性を維持させるため、開栓時にブリッジが切断されてから容器蓋のシール機能を解除するようにしているものもある。したがって、タンパーエビデント機能とシール機能が正常に作用することが必要であり、飲料の製造工程後にタンパーエビデント機能やシール機能を検査したり、さらには市場に出回った製品を検査する機会が頻繁にあり、その都度、その一環としてブリッジが破断される時の容器蓋の回転角度が検査されている。
検査は、容器蓋の周方向破断ラインのブリッジについて、容器蓋が初期(閉止)状態から何度回転したら切断するかを検出するが、検査方法は人手によって視覚、聴覚あるいは指先の感触によって行われていた。人手によってそのような検査を行うと、個人の判断のバラつきなどや、その作業に手間がかかり、これらを軽減させるため、下記の特許文献1のようにブリッジが破断されるときの容器蓋の破断角が、機械にて検査できるトルク測定装置がある。
このトルク測定装置は、容器蓋の回転角度に応じたトルクの大きさを検知することができ、トルク測定装置によって、容器蓋の開栓時における回転角とトルクの大きさの変位、すなわちブリッジが破断するときのトルク変化によって、ブリッジの破断角度が分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−134076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のトルク測定装置は、測定すべき対象が金属蓋であるときは、ブリッジの破断角度を測定することができるが、合成樹脂で形成されている容器蓋は延性があり、破断時にブリッジが延びてしまうことに起因して、容器蓋の回転角が何度で破断されているのかは確認できなかった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、金属製及び樹脂製の容器蓋にかかわらず、ブリッジの破断時における容器蓋の回転角を検出する容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置及びその角度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置は上記目的を達成するために、天面壁と、該天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁とを具備し、該スカート壁は周方向破断ラインよりも上方の主部と下方のタンパーエビデントバンドとに区画され、前記主部の内周面には、容器の口部に設けられた雄螺条と係止する雌螺条が形成されており、前記タンパーエビデントバンドには、該雄螺条より下方に設けられた係止部と係止する被係止部が形成され、前記周方向破断ラインには、前記主部と前記タンパーエビデントバンドとを連結する破断可能なブリッジが前記周方向に間隔を空けて複数配設された容器蓋を、前記雌螺条を前記雄螺条に螺合せしめ、前記タンパーエビデントバンドの被係止部を係止部に係止することにより容器の口部に装着した状態から、容器蓋を開封方向に回転してブリッジが破断されるまでの回転角度を測定する容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置において、前記容器蓋を装着した容器を所定位置にて支持する容器クランパと、前記容器蓋を把持し該容器蓋を開封方向に回転させる蓋チャックと、前記容器蓋の周方向破断ラインのブリッジが破断される音を検知する集音マイクと、該集音マイクの音から周波数帯域毎の音圧レベルを測定する音圧レベル測定部と、該音圧レベル測定部が測定した容器蓋のブリッジ破断時に発生する音圧レベルによって、前記ブリッジの破断を判定するブリッジ破断判定部と、該ブリッジ破断判定部が前記ブリッジの破断を検出した時の前記容器蓋の回転角を検出する破断角検出部とを備えている。
上記容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置の前記容器蓋は合成樹脂製であって、前記ブリッジ破断判定部は、前記音圧レベルが所定の周波数の範囲内にて、前記ブリッジの破断測定時の音圧レベルが所定レベル以上であれば前記ブリッジが破断したと判定することができる。
上記容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置の前記ブリッジ破断判定部は、前記所定の周波数が8kHz以上で、前記ブリッジの破断測定時の音圧レベルが35dBを超えれば、前記ブリッジが破断されたと判定するようにすることが好ましい。
上記容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置の前記容器蓋は合成樹脂製であって、前記ブリッジ破断判定部は、前記音圧レベルが所定の周波数の範囲内にて、前記音圧レベル測定部が測定した測定すべき容器蓋のブリッジ破断時における測定音圧レベルと予め測定したブリッジが破断されていないときに発生する基準ノイズとの音圧レベル差によって、前記ブリッジの破断を判定することができる。
上記容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置の前記ブリッジ破断判定部は、前記所定の周波数が8kHz以上で、前記ブリッジ破断測定時の測定レベルと基準ノイズの音圧レベル差が15dB以上を超えれば、前記ブリッジが破断されたと判定することが好ましい。
また、本発明の容器蓋のブリッジ切れ角度測定方法は上記目的を達成するために、天面壁と、該天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁とを具備し、該スカート壁は周方向破断ラインよりも上方の主部と下方のタンパーエビデントバンドとに区画され、前記主部の内周面には、容器の口部に設けられた雄螺条と係止する雌螺条が形成されており、前記タンパーエビデントバンドには、該雄螺条より下方に設けられた係止部と係止する被係止部が形成され、前記周方向破断ラインには、前記主部と前記タンパーエビデントバンドとを連結する破断可能なブリッジが前記周方向に間隔を空けて複数配設された容器蓋を、前記雌螺条を前記雄螺条に螺合せしめ、前記タンパーエビデントバンドの被係止部を係止部に係止することにより容器の口部に装着した状態から、容器蓋を開封方向に回転してブリッジが破断されるまでの回転角度を測定する容器蓋のブリッジ切れ角度測定方法において、周方向破断ラインの近傍に前記ブリッジが破断される音を集音マイクによって検知する集音工程と、該集音マイクで検知した音から音圧レベルを周波数帯域毎に分離して測定する音圧レベル測定工程と、前記ブリッジの破断測定音の音圧レベルによって前記ブリッジの破断を判定するようにしたブリッジ破断判定工程と、該ブリッジ破断測定工程によって前記ブリッジが破断されたと判定した時の前記容器蓋の破断回転角を検出する破断角検出工程とを含むようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置は、容器蓋を装着した容器を所定位置にて支持する容器クランパと、前記容器蓋を把持し該容器蓋を開栓方向に回転させる蓋チャックと、前記容器蓋の周方向破断ラインのブリッジが破断される音を検知する集音マイクと、該集音マイクの音から周波数領域毎の音圧レベルを測定する音圧レベル測定部と、該音圧レベル測定部が測定した容器蓋のブリッジ破断時に発生する音圧レベルによって、前記ブリッジの破断を判定するブリッジ破断判定部と、該ブリッジ破断判定部が前記ブリッジの破断を検出した時の前記容器蓋の回転角を検出する破断角検出部とを備えたので、ブリッジが破断したときの容器蓋の回転角を自動的に検出できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置で測定される容器蓋の正面図(その中心線より左半分は断面図)である。
【図2】図1の容器蓋が容器に装着された状態の正面図(その中心線より左半分は断面図)である。
【図3】本発明の実施形態における容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置の装置本体の正面図と制御部のブロック図である。
【図4】図3に示すブリッジ切れ角度測定装置で測定した容器蓋がブリッジを切断していない状態の該装置の駆動音を含むノイズの周波数毎の音圧レベルを示す線図である。
【図5】前後に重なる二重棒グラフであって、前段の棒グラフは容器蓋が5℃にある状態でブリッジが破断されたときの線図であって、後段の棒グラフは図4に示す線図であって、容器蓋のブリッジが破断されていない装置本体のノイズのみ示す線図である。
【図6】前後に重なる二重棒グラフであって、前段の棒グラフは容器蓋が23℃にある状態でブリッジが破断されたときの線図であって、後段の棒グラフは図4に示す線図であって、容器蓋のブリッジが破断されていない装置本体のノイズのみ示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態による容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置について、図面を参照しながら説明する。
初めに、本発明のブリッジ切れ角度測定装置によって、ブリッジ切れが測定される容器蓋について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は、本発明に係る容器蓋の正面図であって、その中心線より左半分はその断面図であり、図2は容器蓋が容器に装着された状態の正面図であり中心線より左側がその断面図である。
容器蓋2は、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂などから形成されており、円板形状の天面壁5とこの天面壁5の周縁から垂下する略円筒形状のスカート壁6とを有する。
円形天面壁5は、全体が実質上水平に延在し、天面壁5の内面には2条の環状シール壁、即ち内側環状シール壁15及び外側環状シール壁16が形成されている。
【0011】
スカート壁6の下部には周方向に延在する周方向破断ライン7が形成されている。スカート壁6には、その周方向破断ライン7よりも上方に主部8を設け、主部8の下部にタンパーエビデントバンド10を設けている。
主部8は、肉厚の等しい筒状の周壁部17と周壁部17から半径方向外側に僅かに突出する複数の突条18が形成されている。突条18はスカート壁6の上下方向に直線状に延びるリブ形状であって、主部8の全周に亘って多数形成される。主部8の内周面には、螺旋方向に雌螺条20が形成されている。
【0012】
周方向破断ライン7は、周方向に間隔をおいて形成されたスリット12とこれらのスリット12間に存在するブリッジ14とから構成されている。ブリッジ14は、主部8とタンパーエビデントバンド10を上下方向に連結し、本実施形態では、ブリッジ14は周方向に等間隔に配置されている。ブリッジ14の周方向長さ(幅)はスリット12の周方向長さと比べて充分に短く形成され、破断を容易にしている。
タンパーエビデントバンド10の内周面には被係止部21が形成されている。被係止部21は、周方向に間隔をおいてタンパーエビデントバンド10の内周面から上方に向かって半径方向内方に傾斜して突出するように形成し、隣接する被係止部21間には隙間が存在する。
【0013】
図2に上部のみを示す容器23は、ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂或いはガラスから形成され、その頂面が開口された円筒形状の容器口部24を有する。容器口部24の外周面には、雄螺条25、この雄螺条25の下方に位置する環状係止部26、及び環状係止部26の下方に位置する環状ネックリング27が形成されている。
容器23に容器蓋2を装着する際には、容器口部24に容器蓋2を被嵌し、容器蓋2を閉方向に回転させる。すると、容器口部24の雄螺条25に容器蓋2の雌螺条20が螺合され、容器蓋2は回転に応じて下降する。雌螺条20と雄螺条25とが充分に螺合されると、容器蓋2のタンパーエビデントバンド10に形成されている被係止部21は、弾性的に変形されて容器口部24の環状係止部26を通過し、しかる後に弾性的に復元して環状係止部26に係止される。容器蓋2の天面壁5の内面に形成されている内側環状シール壁15、外側環状シール壁16は、容器口部24の内周面、外周面及び頂面に密接され、これによって容器口部24が密封される。
【0014】
図3は、本発明の容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置(以下、角度測定装置ともいう)を示す。
角度測定装置30は、主として装置本体31、容器クランパ32、集音マイク33、制御部34及び出力部としてのモニター35を備えている。
装置本体31は、容器蓋2を保持する蓋チャック37を備え、蓋チャック37は容器蓋2の外周面を保持し、周方向破断ライン7よりも上側の部分を保持し、周方向破断ライン7の部分を蓋チャック37の外側に位置させる。蓋チャック37は、上下方向へ昇降可能であり、サーボモータ38の回転により容器蓋2を回転させることができる。サーボモータ38と蓋チャック37との間には、減速機39が連結されている。
【0015】
装置本体31の下部には、容器クランパ32が配設されている。容器クランパ32は図示しない搬送路に連結され、搬送路は容器23に容器蓋2が装着された蓋付容器1を順次搬送する。容器クランパ32は一対のアーム41と、該アーム41を前進−後退移動させる空圧式のシリンダロッド42を備えている。シリンダロッド42によりアーム41を前進移動させると、容器23の外周部をアーム41が保持し、容器23を固定することができる。容器23が固定された状態では、容器23の軸心と蓋チャック37の軸心が同一軸上に配置され、蓋チャック37が下降することによって、蓋チャック37が容器蓋2を保持する。こうして、容器23を容器クランパ32でロックし、蓋チャック37で容器蓋2を保持した後に、蓋チャック37が回転することによって、容器蓋2を開栓する。
【0016】
容器蓋2の周方向破断ライン7の近傍には、集音(騒音)マイク33が配設されている。集音マイク33は、装置本体31で容器蓋2を開栓するときに、容器蓋2のブリッジ14の破断音を集音する役割を果たす。集音マイク33は、広帯域の領域に渡って、音を集音することができる。装置本体31を配設する場所は、このブリッジ切れの角度測定に必要な装置のみ配設し、他の場所から突発的な外部ノイズがは入らないようにする。好ましくは、装置本体31を設置している測定室の外部からノイズが入らないような防音設備内で測定する。
集音マイク33は、図3に示す制御部34の破断検出部47に電気的に接続される。破断検出部47は音圧レベル測定部48と判定部49とを備えている。音圧レベル測定部48では、例えば、集音マイク33で検出された音声信号を任意の周波数帯域毎に分割して、該周波数帯域毎の音圧レベルを測定できる。
【0017】
判定部49では、音圧レベル測定部48で得た周波数帯域毎の音圧レベルの差から、ブリッジ14が破断されたか否かを判断する。判定部49には、装置本体31が発生する固有のノイズ、例えば、サーボモータ38の制御音や、減速機39、キャップチャック37などの回転音などのノイズが、周波数帯域毎の音圧レベルで記憶されている。以下、この装置本体31の固有のノイズを基準ノイズと呼ぶ。
装置本体31の基準ノイズは、蓋チャック37の回転速度の変化によってノイズが変動するような場合は、計測時における蓋チャック37の回転速度は、基準ノイズの測定時における蓋チャック回転速度条件と同じにする。また、計測時においては、蓋付容器1の搬送など他の関連機器の稼動を必要最小限に留める。
【0018】
サーボモータ38はサーボモータドライバ50で駆動され、サーボモータドライバ50は、サーボモータ38の回転数及び回転角を制御する。したがって、サーボモータドライバ50は、サーボモータ38の回転数と回転角、これに加えて減速機39の減速比から蓋チャック37の回転角、すなわち容器蓋2の回転角及び回転速度が把握できる。サーボモータドライバ50は、破断角検出部51に蓋チャック37の回転角を連続的に出力するようにしている。
一方、上述した判定部49では、ブリッジ14が破断したときの時間を検出し、破断角検出部51に出力している。破断角検出部51では、ブリッジ14が破断されたときのタイミングに対応する蓋チャック37の回転角、すなわち容器蓋2のブリッジ14の破断角度を検出できる。破断角検出部51は、この情報をモニター35に出力する。
【0019】
次に、容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置の具体的な測定手順について、最初のブリッジの破断を検出する手順を説明する。
図3を参照にして、ブリッジ切れ角度を測定すべき蓋付容器1が図示しない搬送手段によって、測定装置本体31の直下に搬送される。測定装置本体31では、容器クランパ32のアーム41が後退位置から前進位置に移動し、蓋付容器1を固定する。次いで、上昇位置に待機していた蓋チャック37が下降し、容器蓋2を保持する。
集音マイク33が、容器蓋2の周方向破断ライン7の高さに位置付けられる。なお、当初から集音マイク33を固定して配置してもよい。
【0020】
蓋チャック37が回転し、容器蓋2を開方向に回転すると、容器蓋2の雌螺条20が容器口部24の雄螺条25に沿って螺旋方向へ移動され、容器蓋2は上昇する。容器蓋2のタンパーエビデントバンド10は、その内周面に配設されている被係止部21が容器口部24の環状係止部26に係止され(図2参照)、上昇移動が阻止されている。一方、スカート壁6の主部8は雌螺条20が緩む方向に回転して上昇し、周方向破断ライン7のブリッジ14に、相当な引っ張り(あるいはせん断)応力が生成され、やがてブリッジ14が破断される。
具体的には、蓋チャック37を回転させる速度は、3rpm程度の速さである。一般的な容器蓋2であれば、複数あるブリッジ14の1つが最初に破断するときの角度は、200〜240度±20〜30度程度となるように設定してある。したがって、最初のブリッジ14が破断されるまでは、約10秒程度かかる。
【0021】
集音マイク33は、容器蓋2の回転直後若しくはブリッジ14が破断されると予測される数秒前から周方向破断ライン7の周辺の音を集音し、ほぼ連続的に集音データを音圧レベル測定部48に送信する(ブリッジ破断の集音工程)。
音圧レベル測定部48では、集音データの音をリアルタイムで音声フィルタによって周波数毎に分離し、周波数毎の音圧レベルを測定する。そして、そのデータを判定部49に送信する(音圧レベル測定工程)。
判定部49では、音圧レベル測定部48によって測定された周波数毎の音圧レベル(以下、これを測定音圧レベルという)が所定レベル以上(周波数が8kHz以上)で、ブリッジ破断測定時の音圧レベルが35dB以上を超えれば、ブリッジが破断されたと判定する。
【0022】
通常では、蓋付容器1から容器蓋2が開栓されるときには、冷蔵保存状態か常温のいずれかである。そこで、蓋付容器1が冷蔵保存状態であって、容器蓋2が5℃の場合と、常温時の23℃として、容器蓋2のブリッジ14の破断試験を行った。
図4は、装置本体31の蓋チャック37を回転させたときに発生するノイズを集音マイクで採取した基準ノイズの周波数毎の音圧レベルであり、縦軸に音圧レベルをdBで示し、横軸に周波数帯域を対数表示で示す。図に示すように、当初低音域から音圧レベルが上昇し、ほぼ800Hzで音圧レベルが最大となり、それ以後多少の上下はあるが高音域にかけて音圧レベルが下降するのが確認できる。
なお、この基準ノイズの測定は、蓋付容器1をセットした状態でタンパーエビデントバンドが形成されていない容器蓋を開栓したときのノイズを基準ノイズとしてもよい。または、蓋チャック37を空回りさせた状態で行い、装置本体31から発生する蓋チャック37の周辺の基準ノイズを測定してもよい。
ただし、装置本体31は、蓋チャック37の回転時におけるノイズができるだけ一定に近く、ほぼ一定レベル内に定まっていることが必要である。
【0023】
図5は、蓋付容器1(及び容器蓋2)を約5℃の低温で保存した状態で、容器蓋2の破断音を測定した結果を示す。前後の棒グラフのうち、前段の棒グラフが5℃でブリッジ14が切断されたときの周波数毎の音圧レベル(測定音圧レベル)を示し、後段の棒グラフが図4に示したものと同じ基準ノイズを示す。その結果、周波数領域が8kHz以上では、基準ノイズの音圧レベルが35dBに達しないことが分かる。一方、ブリッジ14が破断されたときの破断音は周波数が8kHz以上では、全て35dB以上(及び40dB以上)を超えていることが確認できた。
したがって、試験結果から、容器蓋2が約5℃である場合は、周波数が8kHz以上よりも高い周波数領域で、測定音圧レベルが35dB以上になったことが確認できればブリッジ14が破断されたと判定することができる。そこで、判定部49に予め比較対象として35dBの数値を記憶させておけば、判定部49はブリッジ14の破断の有無を判定できる。
【0024】
図6は、蓋付容器1(及び容器蓋2)を約23℃の常温で、容器蓋2の破断音を測定した結果を示す。前後の棒グラフのうち、前段の棒グラフが23℃でブリッジ14が切断されたときの周波数毎の音圧レベル(測定音圧レベル)を示し、後段の棒グラフが図4に示したものと同じ基準ノイズを示す。その結果、周波数領域が8kHz以上では、基準ノイズの音圧レベルが35dBに達しないことが分かる。一方、ブリッジ14が破断されたときの破断音は周波数が8kHz以上では、全て35dB以上(及び50dB以上)を超えていることが確認できた。
したがって、試験結果から、容器蓋2が約5℃である場合は、周波数が8kHz以上よりも高い領域で、測定音圧レベルが35dB以上になったことが確認できればブリッジ14が破断されたと判定することができる。そこで、判定部49に予め比較対象として35dBの数値を記憶させておけば、判定部49はブリッジ14の破断の有無を判定できる。
【0025】
図5及び図6に示す結果から、容器蓋2が冷却されているか常温であるかにかかわらず、ブリッジ14の破断を測定するには、周波数領域が8kHz以上で、測定音圧レベルが35dB以上あれば、ブリッジ14の破断と判定できることが確認できた。
さらに容器蓋2の冷却時、常温時にかかわらず、12.5kHz周辺の周波数帯(10kHz〜15kHz)では基準ノイズの音圧レベルが小さくなるので、測定の確実さがより向上すると共に40dB以上の音圧レベル差があり、測定時において特に誤りが生じない周波数領域であると考えられる。
なお、ブリッジ14の破断を判定するときの手法として、例えば、棒グラフで示した1つの棒グラフの領域(例えば図5の12,5kHzで示す1つの棒グラフ領域c)のみをサンプルにとって判定することもできるし、複数の棒グラフの領域(例えば図5に示す4つの棒グラフa〜dを含む領域)をサンプルにとって、ブリッジ14の破断を判定することもできる。ただし、サンプルを多く採った方が測定精度が向上することは当然である。
【0026】
このように、判定部49では、音圧レベル測定部48から送信された音声信号の音圧レベルが、35dB以下であれば、ブリッジ14は破断されていないと判定する(ブリッジ破断判定工程)。
そして、ブリッジ14の最初の1つが破断され、音圧レベルが35dBを越えると、判定部49はブリッジ14が破断されたと判定し、破断角検出部51に破断信号を出力する。破断角検出部51では、破断信号を入力したときの容器蓋2の初期位置から周方向へ回転した回転角を、サーボモータドライバ50から信号として受け取り容器蓋2の破断角を検出する(破断角検出工程)。
【0027】
しかる後においては、周方向破断ライン7の破断によってスカート壁6の主部8から切り離されたタンパーエビデントバンド10を容器口部24に残留させて、容器蓋2のタンパーエビデントバンド10以外の部分は、回転と共に上昇されて容器口部24から離脱され、容器23が開封される。
このように、本実施形態における容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置は、周方向破断ライン7のブリッジ14について、最も先に破断されたときの容器蓋2の破断回転角を、自動的に測定できる。
なお、最も先に破断されたブリッジの破断角の他、全てのブリッジが破断されるときの破断角を、引き続き測定してもよい。この場合は、音圧レベルが、測定周波数領域で最後に35dB以下となったときに、全てのブリッジが破断された判定できる。
【0028】
次に、容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置の他の具体的な測定手順について、最初のブリッジの破断を検出する手順を説明する。なお、本測定手順で説明しない内容については、上記測定手順と同じであり、上記測定手順で用いた図4〜図6を参照して説明する。
この場合、判定部49では、音圧レベル測定部48によって測定された周波数毎の音圧レベル(以下、これを測定音圧レベルという)と、予め判定部49に記憶している基準ノイズの音圧レベルと比較する。容器蓋2はブリッジ14が破断されていないときには、容器蓋2の開栓動作における音のみが発生し、ブリッジ14が破断されたときには、開栓動作の音と破断音が生じる。
【0029】
図5に示す試験結果から周波数帯領域の8kHz未満の領域では、測定音圧レベルと基準ノイズのdB差がほぼ10dB以下であるのに対し、周波数が8kHzを超える領域では15dB以上の差があることが確認できた。
この試験結果から、容器蓋2が約5℃である場合は、測定音圧レベルと基準ノイズの音圧レベル差が8kHzよりも高音域で、かつ音圧レベル差が15dB以上あれば、ブリッジ14が破断されたと判定できる。
図6の試験結果から周波数帯領域の2kHz未満の周波数領域では、測定音圧レベルと基準ノイズのdB差が10dB以下であるのに対し、3.15kHzを越える領域では20dB以上の差があることが確認できた。
試験結果から、容器蓋2が常温である場合は、測定音圧レベルと基準ノイズの音圧レベル差が3.15kHzよりも高音領域で音圧レベル差が20dB以上あれば、ブリッジ14が破断されたと判定できる。
そこで、容器蓋2が約5℃である場合は、判定部49に予め比較対象として基準ノイズと測定音圧レベルとの音圧レベル差が判定できる周波数が8kHz以上で、15dBの数値を記憶させておけば、判定部49はブリッジ14の破断の有無を判定できる。また、容器蓋2が常温(23℃)である場合は、判定部49に予め比較対象として基準ノイズと測定音圧レベルとの音圧レベル差が判定できる周波数が3.15kHz以上で、20dBの数値を記憶させておけば、判定部49はブリッジ14の破断の有無を判定できる。
【0030】
このように測定結果から、容器蓋2のブリッジ14の破断音について、容器蓋2が低温にある状態と常温にある状態とでは、破断音の音圧レベルが異なることが確認でき、ブリッジ14が低温で破断されたときよりも高温で破断されたときの方が高周波領域で破断音は大きいことが確認できた。そして、容器蓋2が低音よりも常温にあるときの方が測定音圧レベルと基準ノイズの音圧レベル差が大きいことが確認でき、測定するには容器蓋2が常温であるときの方が判定しやすい。
【0031】
図5及び図6に示す結果から、容器蓋2が冷却されているか常温であるかにかかわらず、ブリッジ14の破断を測定するには、周波数領域が8kHz以上で、測定音圧レベルと基準ノイズの音圧レベル差が15dB以上あれば、ブリッジ14の破断と判定できることが確認できた。
さらに、容器蓋2の冷却時、常温時にかかわらず、12.5kHz周辺の周波数帯(12.5kHz〜16kHz)では基準ノイズの音圧レベルが小さくなり、かつ測定音圧レベルが大きく測定の確実さがより向上するし測定時において特に誤りが生じない周波数領域であると考えられる。
【0032】
そして、ブリッジ14の最初の1つが破断されると、音圧レベルと基準ノイズとの音圧レベル差によって、判定部49はブリッジ14が破断されたと判定し、破断角検出部51に破断信号を出力する。こうして、本実施形態における容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置は、周方向破断ライン7のブリッジ14について、最も先に破断されたときの容器蓋2の破断回転角を、自動的に測定できる。
なお、最も先に破断されたブリッジの破断角の他、全てのブリッジが破断されるときの破断角を、引き続き測定してもよい。この場合は、基準ノイズと測定ノイズの差が、8kHz以上の周波数領域で15dB以下となったときに、全てのブリッジが破断された判定できる。
【0033】
以上、本発明を実施形態に基づいて添付図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、更に他の変形あるいは変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、合成樹脂製の容器蓋2を例にあげたが、周方向破断ラインにブリッジがあれば、金属性の容器蓋でも、本発明は実施できる。
基準ノイズの周波数帯域毎の音圧レベルは、予め判定部49に記憶されているが、装置本体31の基準ノイズの測定は、測定する毎に計測してもよい。すなわち、蓋チャック37を空回りさせた状態で行い、装置本体31から発生する蓋チャック37の周辺の基準ノイズを測定する。
【0034】
なお、本実施形態で説明した集音マイク33、及び該集音マイク33で検知した音から音圧レベルを各周波数毎に分離してリアルタイムに音圧レベルを測定する音圧レベル測定部48に相当する装置としては、例えば株式会社小野測器製の精密騒音計LA−5560、リアルタイムオクターブ分析装置LA−0552が使用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 蓋付容器
2 容器蓋
7 周方向破断ライン
10 タンパーエビデントバンド
12 スリット
14 ブリッジ
21 被係止部
23 容器
30 ブリッジ角度測定装置
31 装置本体
32 容器クランパ
33 集音マイク
34 制御部
37 蓋チャック
38 サーボモータ
47 破断検出部
48 音圧レベル測定部
49 判定部
50 サーボモータドライバ
51 破断角検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面壁と、該天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁とを具備し、該スカート壁は周方向破断ラインよりも上方の主部と下方のタンパーエビデントバンドとに区画され、
前記主部の内周面には、容器の口部に設けられた雄螺条と係止する雌螺条が形成されており、前記タンパーエビデントバンドには、該雄螺条より下方に設けられた係止部と係止する被係止部が形成され、
前記周方向破断ラインには、前記主部と前記タンパーエビデントバンドとを連結する破断可能なブリッジが前記周方向に間隔を空けて複数配設された容器蓋を、
前記雌螺条を前記雄螺条に螺合せしめ、前記タンパーエビデントバンドの被係止部を係止部に係止することにより容器の口部に装着した状態から、
前記容器蓋を開封方向に回転してブリッジが破断されるまでの回転角度を測定する容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置において、
前記容器蓋を装着した容器を所定位置にて支持する容器クランパと、
前記容器蓋を把持し該容器蓋を開封方向に回転させる蓋チャックと、
前記容器蓋の周方向破断ラインのブリッジが破断される音を検知する集音マイクと、
該集音マイクの音から周波数帯域毎の音圧レベルを測定する音圧レベル測定部と、
該音圧レベル測定部が測定した容器蓋のブリッジ破断時に発生する音圧レベルによって、前記ブリッジの破断を判定するブリッジ破断判定部と、
該ブリッジ破断判定部が前記ブリッジの破断を検出した時の前記容器蓋の回転角を検出する破断角検出部とを備えたことを特徴とする容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置。
【請求項2】
前記容器蓋は合成樹脂製であって、前記ブリッジ破断判定部は、前記音圧レベルが所定の周波数の範囲内にて、前記ブリッジの破断測定時の音圧レベルが所定レベル以上であれば前記ブリッジが破断したと判定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置。
【請求項3】
前記ブリッジ破断判定部は、前記所定の周波数が8kHz以上で、前記ブリッジ破断測定時の音圧レベルが35dBを超えれば、前記ブリッジが破断されたと判定するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置。
【請求項4】
前記容器蓋は合成樹脂製であって、前記ブリッジ破断判定部は、前記音圧レベルが所定の周波数の範囲内にて、前記音圧レベル測定部が測定した容器蓋のブリッジ破断時における測定音圧レベルと予め測定したブリッジが破断されていないときに発生する基準ノイズとの音圧レベル差によって、前記ブリッジの破断を判定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置。
【請求項5】
前記ブリッジ破断判定部は、前記所定の周波数が8kHz以上で、前記ブリッジ破断測定時の音圧レベルと基準ノイズの音圧レベル差が15dBを超えれば、前記ブリッジが破断されたと判定するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の容器蓋のブリッジ切れ角度測定装置。
【請求項6】
天面壁と、該天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁とを具備し、該スカート壁は周方向破断ラインよりも上方の主部と下方のタンパーエビデントバンドとに区画され、
前記主部の内周面には、容器の口部に設けられた雄螺条と係止する雌螺条が形成されており、前記タンパーエビデントバンドには、該雄螺条より下方に設けられた係止部と係止する被係止部が形成され、
前記周方向破断ラインには、前記主部と前記タンパーエビデントバンドとを連結する破断可能なブリッジが前記周方向に間隔を空けて複数配設された容器蓋を、
前記雌螺条を前記雄螺条に螺合せしめ、前記タンパーエビデントバンドの被係止部を係止部に係止することにより容器の口部に装着した状態から、
容器蓋を開封方向に回転してブリッジが破断されるまでの回転角度を測定する容器蓋のブリッジ切れ角度測定方法において、
周方向破断ラインの近傍に前記ブリッジが破断される音を集音マイクによって検知する集音工程と、
該集音マイクで検知した音から音圧レベルを周波数帯域毎に分離して測定する音圧レベル測定工程と、
前記ブリッジの破断測定音の音圧レベルによって前記ブリッジの破断を判定するようにしたブリッジ破断判定工程と、
該ブリッジ破断測定工程によって前記ブリッジが破断されたと判定した時の前記容器蓋の破断回転角を検出する破断角検出工程とを含む容器蓋のブリッジ切れ角度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−237025(P2010−237025A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85132(P2009−85132)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】