説明

容器蓋

【課題】容器の口頸部(2)から離脱された容器蓋(10)が傾動せしめられても、ライナー(14)の下面に付着した液体が容器蓋から流出することが充分に防止乃至抑制される、金属薄板製シェル(12)と合成樹脂製ライナー(14)とから構成された容器蓋を提供する。
【解決手段】合成樹脂製ライナーの薄肉円形中央部(38)の下面周縁部と厚肉周縁部(40)の内周面上端部との間に周方向に間隔をおいて半径方向に延びる複数個のリブ(50)を配設する。リブ(50)の各々の周方向両側に位置する両側面は鉛直に延在せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天面壁とこの天面壁の周縁から垂下するスカート壁とを有する金属薄板製シェルと天面壁の内面に配設されている合成樹脂製ライナーとから構成された容器蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、近時においては、コーヒ等の飲料のための容器として、上端にはカールが形成され外周面には雄螺条が形成されている金属薄板製容器が広く実用に供されている。そして、特にかような金属薄板製容器に適した容器蓋として、下記特許文献1及び2に開示されている如く、金属薄板製シェルと合成樹脂製ライナーとから構成された容器蓋が提案されている。金属薄板製シェルは天面壁とこの天面壁の周縁から垂下するスカート壁とを有する。合成樹脂製ライナーは天面壁の内面に配設されており、薄肉円形中央部とこの中央部を囲繞する厚肉環状部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−139053号公報
【特許文献2】特開2003−175962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上述した形態の従来の容器蓋には次のとおりの解決すべき問題が存在する。例えば容器の口頸部を開封する前に容器に振動が加えられると、容器蓋におけるライナーの下面、特に薄肉円形中央部の下面周縁部に容器内の液体が付着し、そこに保持される傾向がある。ライナーの下面に付着した液体が容器内に落下することなくそこに保持される理由は必ずしも明確ではないが、ライナーの下面には微視的には相当な凹凸が存在し、かかる凹凸と液体の表面張力との協働による保持力等に起因するものと推定される。ライナーの薄肉円形中央部の下面周縁部に液体が保持された状態で容器の口頸部から容器蓋を離脱し、容器蓋を水平状態から傾動せしめると、ライナーの薄肉円形中央部の下面周縁部に付着している液体がライナーの下面に沿って周方向に流動して薄肉円形中央部の下面周縁部の特定角度部位、即ち最下部位に集中する。そして、液体が特定部位に集中して比較的大きな嵩になると、ライナーの下面に保持され得なくなって容器蓋から流出し、消費者の衣服に付着する等の問題を発生せしめる虞がある。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、上述した形態の容器蓋に改良を加えて、容器の口頸部から離脱された容器蓋が傾動せしめられても、ライナーの下面に付着した液体が容器蓋から流出することが充分に防止乃至抑制されるようになすことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、合成樹脂製ライナーの薄肉円形中央部の下面周縁部と厚肉周縁部の内周面上端部との間に周方向に間隔をおいて独特な形態の複数個のリブを配設することによって、上記主たる技術的課題が達成される。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する容器蓋として、 天面壁と該天面壁の周縁から垂下するスカート壁とを有する金属薄板製シェルと、該シェルの該天面壁の内面に配設された合成樹脂製ライナーとから構成され、該ライナーは薄肉円形中央部と該中央部を囲繞する厚肉環状部とを有し、該厚肉環状部は鉛直に延びる円筒状内周面を有する容器蓋において、
該中央部の下面周縁部と該厚肉環状部の内周面上端部との間には、周方向に間隔をおいて半径方向に延びる複数個のリブが配設されており、
該リブの各々は、該厚肉環状部の該内周面上端部に接続された外縁と該中央部の該下面周縁部に接続された上縁と半径方向外方に向かって下方に傾斜して延びる傾斜自由縁を有する略直角三角形状であり、周方向両側に位置する両側面は鉛直に延在する、ことを特徴とする容器蓋が提供される。
【0008】
リブは周方向に等角度間隔をおいて6個以上配設されているのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の容器蓋においては、容器蓋が傾斜せしめられても、ライナーの薄肉円形中央部の下面周縁部に付着している液体が周方向に流動することが複数個のリブの存在によって阻止され、かくして 液体がライナーの薄肉円形中央部の下面周縁部の特定角度部位に液体が集中して容器蓋から流出することが充分に防止乃至抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態を、これが適用される容器の口頸部と共に、一部を断面で示す正面図。
【図2】図1の一部を拡大して示す拡大断面図。
【図3】図1に示す容器蓋の底面図。
【図4】図1の容器蓋を図1の容器の口頸部に装着した状態を、一部を断面で示す正面図。
【図5】図4の一部を拡大して示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態について更に詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態と共に、かかる容器蓋が適用される容器の口頸部の典型例が図示されている。クロム酸処理鋼薄板、アルムニウム基合金薄板或いはブリキ薄板の如き適宜の金属薄板から形成することができる容器の口頸部2は、全体として略円筒形状であり、その軸線方向中央部には雄螺条4が形成され、かかる雄螺条4の下方には環状膨出形状である係止あご部6が形成されている。口頸部2の上部は上方に向かって直径が漸次減少する円錐台形状にせしめられており、口頸部2の上端には外巻カール8が形成されている。カール8は、断面図において、上方に延び、上方及び半径方向外方に向かって円弧状に延び、下方及び半径方向外方に向かって円弧状に延び、下方に延び、下方及び半径方向内方に向かって円弧状に延び、そして更に上方及び半径方向内方に向かって円弧状に延びている。かような口頸部2を備えた金属製容器自体は周知であるので、金属製容器自体についての詳細な説明は本明細書においては省略する。
【0013】
図1を参照して説明を続けると、全体を番号10で示す容器蓋は、金属薄板製シェル12と合成樹脂製ライナー14とから構成されている。金属薄板製シェル12は適宜の金属薄板、好ましくは厚さが0.15乃至0.30mm程度であるアルミニウム基合金薄板、から形成されており、円形天面壁16とこの天面壁16の周縁から垂下する略円筒形状のスカート壁18とを有する。
【0014】
図示の実施形態においては、シェル12の天面壁16はその全体が実質上水平に延在せしめられている。シェル12のスカート壁18の下部には周方向弱化ライン20が形成されており、スカート壁18は周方向弱化ライン20よりも上方の主部22と周方向弱化ライン20よりも下方のタンパーエビデント裾部24とに区画されている。図示の実施形態においては、スカート壁18の下部には環状膨出部26が形成されており、上記周方向弱化ライン20は環状膨出部26に配設されており、周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリット28とこれらのスリット28間に存在する橋絡部30とから構成されている。スカート壁18の上部には環状溝部32が形成されている。スカート壁18の、上記環状溝部32よりも上方の領域には、周方向に凹凸が交互に存在する所謂ナール34が形成されている。ナール34における凹部の上端縁は切断されて半径方向内側に変位せしめられており、これによってスカート壁18の上端部には周方向に間隔をおいて複数個の比較的小さい開口36が形成されている。
【0015】
図1と共に図2を参照して説明を続けると、合成樹脂製ライナー14は全体として円板形状であり、シェル12の天面壁16の内面に配設されている。かかるライナー14は、適宜の合成樹脂、例えばSEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)ブロック共重合体を含有するスチレン系エラストマを、軟化乃至溶融状態でシェル12の天面壁16の内面に供給し、かかる合成樹脂に成形型を押圧せしめて所謂型押成形することによって好都合に形成することができる。
【0016】
ライナー14は薄肉円形中央部38とかかる中央部38を囲繞する厚肉環状部40とを有する。中央部38の厚さは全体に渡って実質上同一でよく、中央部38の下面は実質上水平に延在せしめられている。一方、厚肉周縁部40は、下方に突出する外側環状突条44、同様に下方に突出する内側環状突条46、及び外側環状突条44と内側環状突条46との間に位置する介在部48を有する。図示の実施形態における外側環状突条44は、実施上鉛直に延びる円筒状外周面44a、実質上水平に延びる下面44b及び半径方向内側に向かって上方に傾斜する円錐台形状の内周面44cを有する。内側環状突条46は、半径方向内方に向かって下方に傾斜する円錐台形状上部、実質上鉛直に延びる円筒形状中間部及び断面形状が円弧状である下部から構成された外周面46a、実質上水平に延びる下面46b及び実質上鉛直に延びる円筒状内周面46cを有する。介在部48の下面は実質上水平に延在する。内側環状突条46の円筒状内周面46cの上端と薄肉円形中央部38の下面周縁とは、断面において曲率半径が小さい弧状をなす接続部によって接続されている。
【0017】
図2及び図3を参照することによって明確に理解されるとおり、
本発明に従って構成された容器蓋10においては、ライナー14における薄肉円形中央部38の下面周縁部と厚肉周縁部40の内側環状突条46の内周面46cの上端部との間には、周方向に間隔をおいて半径方向に延びる複数個、好ましくは等角度間隔をおいて6個以上、のリブ50が配設されていることが重要である。図示の実施形態においては、等角度間隔をおいて12個のリブ50が形成されている。リブ50の各々は、内側環状突条46の内周面46cに接続された外縁50aと中央部38の下面に接続された上縁50bと半径方向外方に向かって下方に傾斜して延びる傾斜縁50cとを有する略直角三角形状であり、その周方向両側に位置する両側面は鉛直に延在する
【0018】
容器内に液体飲料を充填した後に口頸部2に容器蓋10を装着して口頸部2を密封する際には、図1及び図2に図示する如く、口頸部2に容器蓋10を被嵌する。かくすると、ライナー14における外側環状突条44の内周面44cの上部乃至介在部48の下面が口頸部2のカール8の外周面上端乃至上面に接触せしめられる。ライナー14の内側環状突条46の外周面46aはカール8の内周面に近接して位置する。次いで、図4及び図5に明確に図示する如く、平坦な下面を有する押圧工具52を天面壁16に押圧せしめると共に、下方を向いた肩部56を有する押圧工具54を天面壁16とスカート壁18との境界領域に作用せしめて、かかる境界領域を下方及び半径方向内方に没入せしめる。かくすると、図1及び図2と図4及び図5とを比較参照することによって明確に理解される如く、ライナー14の厚肉周縁部40における介在部48が下降せしめられてカール8の上面乃至内周面上部に密接されると共に、外側環状突条44の内周面44cがカール8の外周面上半部に押圧せしめられ、かくして口頸部2が密封される。更に、スカート壁18に螺条形成工具58を作用せしめてスカート壁18に形成されている環状溝部32から下方に向けて口頸部2の雄螺条4に沿ってスカート壁18に雌螺条60を形成し、そしてまたスカート壁18のタンパーエビデント裾部24に係止工具62を作用せしめてタンパーエビデント裾部24を半径方向内側に強制して口頸部2の係止あご部6に係止せしめる。押圧工具52及び54、螺条形成工具58並びに係止工具62の構成並びにこれらによる蓋締加工は当業者には周知の形態でよく、従ってこれらについての詳細な説明は本明細書においては省略する。
【0019】
図4及び図5に図示する如く、口頸部2に容器蓋10を所要とおりに装着した状態においても、ライナー14の内側環状突条46の外周面46aはカール8の内周面に密接せしめられることなく若干の間隔をおいて近接せしめられているのが好適である。内側環状突条46の外周面46aがカール8の内周面に密接せしめられると、後述するとおりにして口頸部2を開封する際に必要なトルクが過大になる傾向がある。他方、内側環状突条46の外周面46aがカール8の外周面から比較的大きく離隔せしめられると、例えば容器に振動が加えられた時に内側環状突条46の外周面46aとカール8の内周面との間に液体が捕捉される傾向が発生する。そして、口頸部2を開封する際に容器内が加圧状態である場合、口頸部2から容器蓋10を離脱する際に容器内の圧力が、内側環状突条46の外周面46aとカール8の内周面との間に捕捉された液体に作用し、かかる液体を容器蓋10のシェル12に形成されている開口36を通して外部に飛散せしめてしまう或いはシェル12のスカート壁18の内周面乃至容器の口頸部2の外周面に付着せしめてしまう等の虞がある。
【0020】
容器の口頸部2を開封して内容物を消費する際には、容器蓋10を開方向即ち図4において上方から見て反時計方向に回転せしめる。かくすると、口頸部2の雄螺条4と容器蓋10の雌螺条60との協働によって容器蓋10は回転と共に上昇せしめられる。しかしながら、容器蓋10のシェル12におけるタンパーエビデント裾部24は口頸部2の係止あご部6に係止されている故に上昇が阻止され、これによってシェル14の周方向弱化ライン20の橋絡部30に相当な応力が生成され、周方向破断ライン20が破断されてタンパーエビデント裾部24がスカート壁18の主部22から分離される。周方向破断ライン20が破断されてタンパーエビデント裾部24がスカート壁18の主部22から分離された後においては、タンパーエビデント裾部24を口頸部2に残留せしめて容器蓋10が口頸部2から離脱され、口頸部2が開封される。口頸部2の開封操作段階において、シェル12に形成されている開口36が所謂通気孔として機能する。
【0021】
例えば容器の口頸部2を開封する前に容器に振動が加えられると、容器蓋10におけるライナー14の下面、特に薄肉円形中央部38の下面周縁部に、容器の内容物である液体が付着し、そこに保持される傾向がある。かかる状態において、口頸部2から容器蓋10を離脱せしめ、次いで容器蓋10を実質上水平な状態から傾動せしめると、薄肉円形中央部38の下面に保持されている液体が最下部位に向かって周方向に流動せしめられる傾向がある。しかしながら、本発明に従って構成された容器蓋10においては、ライナー14における薄肉円形中央部38の下面周縁部と厚肉周縁部40の内側環状突条46の内周面46cの上端部との間に、周方向に間隔をおいて複数個のリブ50が配設されている故に、液体の周方向流動が効果的に阻止される。従って、ライナー14の薄肉円形中央部38の周縁部の特定角度部位、即ち最下部位に液体が集中せしめられてしまって容器蓋10から流出してしまうことが充分効果的に防止乃至抑制される。
【0022】
容器内の内容物の一部のみを消費した場合には、口頸部2から離脱せしめた容器蓋10を再び口頸部2に被嵌して閉方向即ち図4において上方から見て時計方向に回転せしめて口頸部2の雄螺条4に容器蓋10の雌螺条60を再び螺合せしめ、かくして口頸部2に再び容器蓋10を装着して口頸部2を一時的に密封することができる。図示の実施形態においては、口頸部2から容器蓋10を離脱せしめて口頸部2を開封する際には周方向破断ライン20が周方向全体に渡って破断されタンパーエビデント裾部24がスカート壁18の主部22から完全に分離されるが、所望ならばタンパーエビデント裾部24に1個乃至複数個の軸線方向破断ラインを配設し、口頸部2から容器蓋10を離脱して口頸部2を開封する際には、周方向破断ライン20は完全に破断されることなく一部が残留せしめられ、軸線方向破断ラインが破断されることによってタンパーエビデント裾部24が無端環状から有端帯状に展開され、タンパーエビデント裾部24を含む容器蓋10の全体が口頸部2から離脱されるようになすこともできる。
【符号の説明】
【0023】
2:容器の口頸部
10:容器蓋
12:シェル
14:ライナー
16:シェルの天面壁
18:シェルのスカート壁
38:ライナーの薄肉円形中央部
40:ライナーの厚肉周縁部
44:外側環状突条
46:内側環状突条
48:介在部
50:リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面壁と該天面壁の周縁から垂下するスカート壁とを有する金属薄板製シェルと、該シェルの該天面壁の内面に配設された合成樹脂製ライナーとから構成され、該ライナーは薄肉円形中央部と該中央部を囲繞する厚肉環状部とを有し、該厚肉環状部は鉛直に延びる円筒状内周面を有する容器蓋において、
該中央部の下面周縁部と該厚肉環状部の内周面上端部との間には、周方向に間隔をおいて半径方向に延びる複数個のリブが配設されており、
該リブの各々は、該厚肉環状部の該内周面上端部に接続された外縁と該中央部の該下面周縁部に接続された上縁と半径方向外方に向かって下方に傾斜して延びる傾斜自由縁を有する略直角三角形状であり、周方向両側に位置する両側面は鉛直に延在する、ことを特徴とする容器蓋。
【請求項2】
該リブは周方向に等角度間隔をおいて6個以上配設されている、請求項記載の容器蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−159091(P2010−159091A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101139(P2010−101139)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【分割の表示】特願2004−113104(P2004−113104)の分割
【原出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】