説明

容器蓋

【課題】気体の急激な流出及び内溶液の流出を抑制すること。
【解決手段】容器蓋1は、シェル6とライナー4とから構成されかつ上端にカール部50が形成された口頸部42を有する容器40に装着される。容器蓋1が装着されたた状態において、環状薄肉部36及び境界部37の下面が上側カール部52の上面乃至前記鉛直部54の上端部外周面54aに当接しかつ、環状外側垂下片38の下端部内周面38aが下側カール部56の外周面に当接するとともに、外周面部54の外周面54aと、環状厚肉部34の下面34a及び環状外側垂下片38の内周面38aとの間に環状の密封空間部Sが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部にカール部が形成されている口頸部を有する金属薄板製容器のための、金属薄板製シェルと合成樹脂製ライナーとから構成された容器蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー等の飲料のための容器として、上端にカールが形成されている口頸部を有する金属薄板製容器が広く実用に供されている。そして、このような容器のための容器蓋として、例えば、特許文献1に開示されているように、金属薄板製シェルと合成樹脂製ライナーとから構成された容器蓋が提案されている。シェルは円形天面壁と天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを有し、スカート壁の上部には周方向に間隔をおいて複数個の通気孔が形成されている。ライナーはシェルの天面壁の内面周縁部に沿って延在する環状シール部を有している。また、金属薄板製容器の主胴部の剛性は比較的小さく、容器内が減圧状態になると主胴部が局部的に陥没せしめられてしまうおそれがあるため、通常は、容器の口頸部に容器蓋を装着して口頸部を密封する際に、容器内に液体窒素を滴下し気化させて容器内を陽圧状態にせしめている。この状態で容器蓋は、これを容器の口頸部に被嵌し、シェルの肩領域を下方乃至半径方向内方に変形せしめてライナーの環状シール部を口頸部の上面乃至外周面に密接せしめることによって該口頸部に装着される。
【0003】
環状シール部は、口頸部の内周側に位置する環状リングと口頸部の外周側に位置する環状垂下片とを有している。口頸部に容器蓋を所要とおりに装着した状態において、環状垂下片の先端は、口頸部のカールの外周面より半径方向外方に位置付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−131341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の上記発明によれば、容器内の陽圧の解除による気体流に付随して、ライナーの内面に付着していた内溶液が急激に流動されても、ライナーの環状垂下片に衝突して下方に案内され、通気孔に向かって流動することが阻止されるので、通気孔から外部に噴き出して消費者の手に付着することが回避される。しかしながら、ライナーの環状垂下片に衝突して下方に案内された内溶液は、容器の口頸部に形成された雄螺条に向かって急激に流れ出て、容器の雄螺条を含む口頸部の表面乃至胴部の表面に比較的多量に残留するおそれがある。その結果、体裁上好ましくない場合が生ずるおそれがある。また、再度容器蓋を口頸部に装着した状態で持ち歩く場合などには、バッグや衣服などに付着するおそれもあるので、内溶液の、容器の口頸部の雄螺条に向かっての流出は、可能な限り抑制することが望ましいといえる。
【0006】
本発明の主目的は、容器内の陽圧の解除による気体流に付随して、ライナーの内面に付着していた内溶液が通気孔から外部に噴き出すことが阻止されるとともに、気体の、容器の口頸部の雄螺条に向かっての急激な流出を防止するとともに、内溶液の流出を抑制することを可能にする、新規な容器蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、金属薄板製シェルと合成樹脂製ライナーとから構成されかつ上端にカール部が形成された口頸部を有する金属製容器に装着される容器蓋であって、前記シェルは円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを有し、該スカート壁の上部には周方向に間隔をおいて複数個の通気孔が形成されており、前記ライナーは前記シェルの前記天面壁の内面周縁部に沿って延在する環状シール部を有し、前記カール部は上端に形成されている上側カール部と、該上側カール部から鉛直方向下方に延びる外周面部と、該外周面部の下端から内方に延びている下側カール部とからなり、容器蓋を容器の前記口頸部に被嵌し前記シェルの肩領域を下方乃至半径方向内方に変形させて前記ライナーの前記環状シール部を前記口頸部の前記カール部の上面乃至外周面に密接させることによって前記口頸部に装着される容器蓋において、前記環状シール部は、前記口頸部の内周側に位置する環状内側垂下部と、前記口頸部の外周側に位置する環状厚肉部と、該環状厚肉部と前記環状内側垂下部との間に位置する環状薄肉部と、該環状薄肉部から前記環状厚肉部にわたって厚みが増加する境界部と、前記環状厚肉部の外周縁部から一定の半径方向厚みをもって直線状に垂下する環状外側垂下片とを有し、該環状外側垂下片の内周面の下端と外周面の下端との間の面は、内周面側から外周面側に向かって下方に延びる傾斜面から形成され、容器蓋を前記口頸部に所要とおりに装着した状態において、前記環状薄肉部及び前記境界部の各々の下面が前記上側カール部の上面乃至前記外周面部の上端部外周面に当接しかつ、前記環状外側垂下片の下端部内周面が前記下側カール部の外周面に当接するとともに、前記外周面部の外周面と、前記環状厚肉部の下面及び前記環状外側垂下片の内周面との間に環状の密封空間部が形成される、ことを特徴とする容器蓋が提供される。
容器蓋を前記口頸部から離脱した後に、再び容器蓋を前記口頸部に装着するために前記口頸部に対し螺条係合して閉方向に回転させると、前記ライナーは、最初に前記環状外側垂下片の前記傾斜面が前記カール部の前記上側カール部の下端部外周面に当接しかつ前記環状外側垂下片の外周面の下端が前記外周面部の直上方乃至外方に位置付けられる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る容器蓋によれば、容器内の陽圧の解除による気体流に付随して、ライナーの内面に付着していた内溶液が通気孔から外部に噴き出すことが阻止されるとともに、気体の、容器の口頸部の雄螺条に向かっての急激な流出を防止するとともに、内溶液の流出を抑制することを可能にする。また環状外側垂下片を設けたにも拘わらず複雑な構成を有していないので、成形が容易であるとともに、気体の急激な流出を防止して、内溶液の流出を抑制するための、陽圧の減圧調整が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に従って構成された容器蓋の実施の形態の片側半分を断面で示す正面図(容器口頸部への装着前)である。
【図2】図1に示す容器蓋の円形天面壁とスカート部の境界部周辺を示す拡大断面図(容器口頸部への装着前)である。
【図3】図1に示す容器蓋を容器口頸部に被せ、密閉させるための成形を施した後の状態であって、容器蓋及び容器の片側半分を断面で示す正面図(容器蓋の容器口頸部への装着後)である。
【図4】図3に示す容器蓋の円形天面壁とスカート部の境界部周辺(容器の口頸部の開口を含む)を示す拡大断面図(容器蓋の容器口頸部への装着後)である。
【図5】図3に示す容器蓋を開方向に回転させてタンパーエビデント裾部が分離されかつ環状シール部とカール部上端面とのシールが解除されるとともに、環状外側垂下片の下端部内面がカール部の鉛直部の外面に当接した状態であって、容器蓋及び容器の片側半分を断面で示す正面図である。
【図6】図5に示す容器蓋の円形天面壁とスカート部の境界部周辺(容器の口頸部の開口を含む)を示す拡大断面図である。
【図7】容器蓋を口頸部から離脱した後に、再び容器蓋を口頸部に装着するために口頸部に接近させた状態であって、容器蓋及び容器の片側半分を断面で示す正面図である。
【図8】図7に示す容器蓋の円形天面壁とスカート部の境界部周辺(容器の口頸部の開口を含む)を示す拡大断面図である。
【図9】図1に示す容器蓋の円形天面壁とスカート部の境界部周辺を示す拡大断面図(容器口頸部への装着前)において、環状シール部の実施例における主要部分に寸法線及び符号を記入した拡大断面図である。
【図10】図4に示す拡大断面図における容器口頸部のカール部に寸法線及び符号を記入した拡大断面図である。
【図11】本発明に従って構成された容器蓋の実施例及び従来の容器蓋の一例について、液噴き量(g)及びリシール時における噛み込み発生数を調べた実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成された容器蓋の実施の形態を添付図面を参照して説明する。図1は、本発明に係わる容器蓋の部分断面図、図2は図1のライナーの環状シール部の拡大断面図である。
【0011】
図1に示す容器蓋1は、金属薄板製のシェル2と合成樹脂製のライナー4とから構成されている。金属薄板製シェル2は、アルミニウム基合金薄板などから形成されており、円形天面壁6とこの円形天面壁6の周縁から垂下する略円筒形状のスカート壁8とを有する。シェル2の円形天面壁6は、全体が実質上水平に延在し、シェル2のスカート壁8の下部には、周方向に延在する弱化ライン10が形成されている。スカート壁8は、その弱化ライン10よりも上方に主部12が設けられ、それよりも下方にタンパーエビデントの裾部14が設けられている。
【0012】
上記の周方向弱化ライン10は、環状膨出部16の下部に形成され、周方向に間隔をおいて、該周方向に延びるスリット18とこれらのスリット18間に存在する橋絡部20とから構成されている。橋絡部20の長さは、スリット18の長さと比べて充分に短く形成され、破断を容易にしている。スカート壁8の上部には、天面壁6から間隔を空けて周方向に延びる円形溝部22が形成され、この円形溝部22よりも上側の領域には、周方向に凹凸が交互に存在する所謂、ナール24が形成されている。ナール24の凹部は上端縁が切断されてこの上端縁が半径方向内側に変位され、これによってスカート壁8の上端部には、周方向に間隔を開けた、比較的小さいスリット26が形成されている。
【0013】
ライナー4は、全体として円板形状であり、シェル2の円形天面壁6の内面に配設されている。ライナー4の材質は合成樹脂であり、図示の実施形態においては、後述する如く、ポリプロピレンを含む合成樹脂からなる。図2に示すように、ライナー4の中央部には薄肉の中央領域28が形成されており、その中央領域28を囲むように周辺領域には、環状シール部30が形成されている。環状シール部30は、後述する容器40の口頸部42の内周側に位置する環状内側垂下部32と、口頸部42の外周側に位置する環状厚肉部34と、環状厚肉部34と環状内側垂下部32との間に位置する環状薄肉部36と、環状薄肉部36から環状厚肉部34にわたって厚みが増加する境界部37と、環状厚肉部34の外周縁部から一定の半径方向厚みをもって直線状に垂下する環状外側垂下片38とを有している。環状外側垂下片38の内周面38aの下端と外周面38bの下端との間の面は、内周面38a側から外周面38b側に向かって下方に延びる傾斜面39から形成されている。
【0014】
環状内側垂下部32は、中央領域28の下面から直線状に垂下する内周面32aと、やや内方に傾斜して下方に延びる外周面32bと、外周面32bの下端から内周面32a側に向かって扇状に延びる湾曲下面32cと、湾曲下面32cの内周面32a側端部から内周面32aの下端に向かって水平に延びる下端面32dとを有している。本実施の形態では、環状内側垂下部32よりも環状外側垂下片38の突出量が小さい。また、環状薄肉部36は、ライナー4の中央領域28とほぼ同じ肉厚を有している。境界部37の下面37aは、環状薄肉部36の下面36aから環状厚肉部34の下面34aにわたって緩やかな曲面をなしている。環状厚肉部34の外周面34bと環状外側垂下片38の外面38bは、直径が同じ外周面上に位置付けられ、同一の円筒外周面を形成している。ライナー4の外周縁部であって、ほぼ環状シール部30が存在する外周縁部には、シェル2の円形天面壁6の内面との間に非接着領域Xが形成されており、ライナー4は、非接着領域Xを除く中央領域28が天面壁6の内面に接着されている。
【0015】
図3は、上述した容器蓋1と共に、この容器蓋1が装着される容器40の口頸部42を示している。容器40は、アルミニウム基合金薄板、クロム酸処理鋼薄板、あるいはブリキ薄板から形成することができる。容器40の口頸部42は全体として略円筒形状であり、その軸線方向中央部には雄螺条44が形成され、雄螺条44の下方には環状膨出形状である係止あご部46が形成されている。口頸部42の上部は、上方に向かって直径が漸次減少する円錐台形状の円錐面48を有し、口頸部42の上端にはカール部50が形成されている。図4をも参照して、カール部50は、口頸部42において、その上端側を口頸部42の半径方向の上側外方に湾曲させて形成した上側カール部52と、上側カール部から鉛直方向下方に延びる外周面部である鉛直部54と、鉛直部54の下端から半径方向の上側内方に湾曲させて形成した下側カール部56とから形成されている。実施形態において、下側カール部56は、完全に反転させられた半円形状をなしているが、部分的に反転させられた円弧形状であってもよい。
【0016】
容器40の口頸部42に容器蓋1を装着して口頸部42を密封するための装着手順の一例を図示しないで説明すると、次のとおりである。容器40内に液体飲料を充填した後に口頸部42に容器蓋1を被嵌するが、口頸部42を密封する際には、液体窒素を容器40内に導入して容器40の上端部に存在する空間の空気を容器40内から排除し、その後に、口頸部42に容器蓋1を被嵌する。この被嵌状態では、ライナー4の環状シール部30における環状内側垂下部32と環状外側垂下片38との間に形成されている環状溝における環状薄肉部36と境界部37とが、口頸部42の上側カール部52の上端に配置され、環状内側垂下部32の外周面32bの上部が口頸部42の上端部内周面に当接する。こうして、環状内側垂下部32は口頸部42内に侵入し、環状内側垂下部32の上部外周面32bが上側カール部52の内周面に圧接させられ、環状内側垂下部32の外周面32bと上側カール部52の内周面との間を仮シールする。これによって、液体窒素が気化することによって、容器40の内圧を高めて、容器40の変形が抑制される。
【0017】
次いで、不図示の押圧工具をシェル2の円形天面壁6に押圧させると共に、下方を向いた肩部を有する押圧部(不図示)を円形天面壁6とスカート壁8との境界部にある肩領域に作用させて、境界領域を下方及び半径方向内方に没入させる。このようにすると、ライナー4の環状シール部30が口頸部42のカール部50の上面乃至外周面に密接されて口頸部42の開口が密封される。この密封の詳細については後述する。ライナー4による口頸部42の開口の密閉処理が終了した後、更に、シェル2のスカート壁8に図示しない螺条形成工具を用い、スカート壁8の下方に向けて口頸部42の雄螺条44に沿って雌螺条60を形成する。また、スカート壁8のタンパーエビデント裾部14の下部を、図示しない係止工具によって、半径方向内方に強制して、裾部14を口頸部42の係止あご部46に係止させる。
【0018】
上記した如く、容器蓋1を容器40の口頸部42に所要とおりに装着した状態において(図3、図4)、ライナー4の環状シール部30における環状薄肉部36及び境界部37の各々の下面36a及び37aが、上側カール部52の上面乃至鉛直部54の上端部外周面に当接する。また、環状外側垂下片38の下端部内周面38aが下側カール部56の外周面に当接する。更にはまた、鉛直部54の外周面54aと、環状厚肉部34の下面34a及び環状外側垂下片38の内周面38aとの間に環状の密封空間部Sが形成される。環状外側垂下片38の最下端(外周面38bの下端)の位置は、容器蓋1のスリット26の高さと略同等乃至若干下方の位置に位置付けられる。
【0019】
次に、容器蓋1の作用について説明する。図3及び図4に示すように、容器蓋1を容器40の口頸部42に密閉させた状態、すなわち、容器蓋1を所要通り口頸部42に装着させた状態では、ライナー4の環状シール部30における環状内側垂下部32の外周面32bの上端部、環状薄肉部36及び境界部37の各々の下面36a及び37aが、上側カール部52の上端部内周面、上面乃至鉛直部54の上端部外周面に当接させられてしっかりとシールされるので、容器40内の陽圧及び内容液が外部に漏れることはない。
【0020】
容器40の口頸部42を初めて開放して内容物を消費する際には、容器蓋1を開方向に回転させる。これによって、口頸部42の雄螺条44と容器蓋1の雌螺条60との協働によって、容器蓋1は回転と共に上昇させられる。容器蓋1のタンパーエビデント裾部14は口頸部42の係止あご部46に係止されているので、上昇が阻止され、シェル2の周方向弱化ライン10の橋絡部20に相当な応力が生成され、周方向弱化ライン10が破断されて、タンパーエビデント裾部14がスカート壁8の主部12から分離される。タンパーエビデント裾部14が主部12から分離された後において、タンパーエビデント裾部14を口頸部42に残留させて、容器蓋1が口頸部42から離脱され、口頸部42が開放される。
【0021】
例えば、容器40内にコーヒーのような内容物、すなわち内容液を充填した後に液体窒素を強制的に充填することによって、容器40内が陽圧状態にされている場合、口頸部42の密封が開放される際に(シールブレークが行なわれる際に)、容器40内の陽圧状態にある気体が、シェル2のスカート壁8に形成されているスリット26及び容器40の口頸部42の雄螺条44に向かって急激に流出される傾向がある。ライナー4の内面、口頸部42のカール部50などに内容液が付着している状態では、その液体が気体に付随して急激に流出するおそれがある。液体が気体とともにスリット26及び容器40の口頸部42の雄螺条44に向かって急激に流出すると、液体が消費者の指先や衣服等に付着してしまうことがある。また、内溶液が、容器40の口頸部42の雄螺条44に向かって急激に流出するおそれがある。
【0022】
本発明に係る容器蓋1の上記実施形態においては、容器蓋1を、図3及び図4に示す装着状態から、初めて開方向に例えば、30°ないし100°回転させると、ライナー4の環状シール部30における環状内側垂下部32の外周面32bの上端部、環状薄肉部36及び境界部37の各々の下面36a及び37aと、上側カール部52の上端部内周面、上面乃至鉛直部54の上端部外周面との間の密封が開放される(シールブレークが行なわれる)。その瞬間に、容器40内の陽圧が解除されるので、気体が上記密封解除部から急激に排出されるが、この気体は、環状シール部30の外部に排気される前に、まず、上記環状の密封空間部S内に排気させられる。密封空間部Sの下端位置においては、環状外側垂下片38の下端部内周面38aが、下側カール部56の外周面乃至鉛直面54の外周面54aに当接しており、環状外側垂下片38の弾性変形により接触圧(シール圧)が装着時におけるよりも高くなっている。その結果、密封空間部S内に排気させられた気体は、まず、密封空間部S内の圧力を上昇させる。そして、該圧力が、環状外側垂下片38の下端部内周面38aの、鉛直面54の外周面54aに対するシールを解放するまで上昇すると、はじめて、環状外側垂下片38の下端部内周面38aと鉛直面54の外周面54aとの間から外部に、しかも口頸部42の円錐面48に向けて排気される。容器蓋1の更なる開方向への回転によって、環状外側垂下片38が上昇させられ、環状外側垂下片38の内周面38aの下端部は、鉛直部54の外周面54aに圧接されながら上昇移動させられる(図5及び図6参照)。この間に、徐々に圧力が低下した容器40内の気体は、環状外側垂下片38の内周面38aの下端部と鉛直部54の外周面54aとの接触部から徐々に排気させられる。
【0023】
上記説明から明らかなように、容器蓋1を、図3及び図4に示す装着状態から、初めて開方向に回転させて、環状シール部30とカール部50との間でシールブレークが行なわれても、容器40内の陽圧が急激に環状シール部30の外部に排気されることなく、徐々に排気されるので、容器40内の陽圧も徐々に減圧されてゆく。その結果、容器40内の陽圧の解除による気体流に付随して、ライナー4の内面に付着していた内溶液も急激に流出することなく、陽圧の徐々なる減圧に従って徐々に流出させられるので、流出量が抑制され、内溶液の流出も抑制される。また、容器40内の陽圧が最も高いシールブレーク時において、内溶液は、口頸部42の円錐面48に向けて流出されるので、成形時にスリット26が開かれることによって形成される通気孔から外部に噴き出すことも阻止されるとともに、内溶液の、容器40の口頸部42の雄螺条44に向かっての流出を抑制することを可能にする。
【0024】
上記容器蓋1において、環状シール部30は、環状内側垂下部32と、環状厚肉部34と、環状薄肉部36と、境界部37と、環状外側垂下片38とから構成され、複雑な構成を有していないため、ライナー4の成形が容易であるとともに、気体の、容器40の口頸部42の雄螺条44に向かっての急激な流出を防止すると共に、内溶液の流出を抑制することを可能にする。また、気体の急激な流出を防止して、内溶液の流出を抑制するための、陽圧の減圧調整が容易である。具体的には、例えば、環状外側垂下片38の半径方向厚みや硬度、密封空間部Sの容積などを適宜に設定することによって容易に調整可能である。
【0025】
図7及び図8を参照して、容器蓋1を容器40の口頸部42から離脱した後に、再び容器蓋1を口頸部42に装着するために口頸部42に対し螺条係合して(容器蓋1の雌螺条60を口頸部42の雄螺条44に係合して)閉方向に回転させることによりリシールすることが行なわれる。容器蓋1のこのような閉方向への回転によって、ライナー4は、最初に環状シール部30の環状外側垂下片38の傾斜面39がカール部50の上側カール部52の下端部外周面に対し当接しかつ環状外側垂下片38の外周面38bの下端が鉛直部54の直上方乃至若干外方に位置付けられる。この状態から、容器蓋1を閉方向へ更に回転させると、容器蓋1の口頸部42に対する相対的な下降により、環状外側垂下片38の傾斜面39がカール部50の上側カール部52の下端部外周面に対し、接線方向外側下方に向かって円滑に案内され、環状外側垂下片38は半径方向外方に拡大するよう、徐々に弾性変形しながら鉛直部54の外周面54aに回転しながら移動させられる。その結果、環状外側垂下片38がカール部50の上側カール部52の上面に噛み込む不具合が防止される。この噛み込みを好適に防止するためには、後述するとおり、ライナー4の材料硬度、環状外側垂下片38の肉厚、突出長さなどが適宜に設定される。
【0026】
次に、本発明の容器蓋1の実施例及び従来の容器蓋の一例について、液噴き量(g)及びリシール時における噛み込み発生数を調べた実験結果について図11に示されている表を参照して説明する。容器蓋1の構成は、図1〜図4を参照して説明したとおりであり、ライナー4の環状シール部30の主要な部分の寸法(図9及び図10参照)は次のとおりである(成形前の寸法)。
環状薄肉部36の厚みT1:0.575mm
環状薄肉部36と環状厚肉部34との差厚T2:0.4mm
(したがって、環状厚肉部34の厚みは0.975mm)
環状外側垂下片38の内周面38aの突出長さL1:1.115mm
(環状厚肉部34の下面34aからの突出長さ)
環状外側垂下片38の外周面38bの突出長さL2:1.7mm
(環状薄肉部36の下面36aからの突出長さ)
環状外側垂下片38の半径方向厚みT3:0.4mm:
環状外側垂下片38の傾斜面39の傾斜角度θ:30°
(水平面に対する傾斜角度θ)
カール部50の上下方向全長L3:2.3mm(通常は2.1〜2.5mmの範囲で使用される)
(上側及び下側カール部52及び56の最上面と最下面との間の長さ)
なお、実験に使用した従来の容器蓋の一例は、図1に示すライナー4の環状内側垂下部32の外側が環状薄肉部36と環状厚肉部34のみにより構成された形状を有するライナーを備えた容器蓋である。
【0027】
図11の表に示されているように、従来の容器蓋の一例においては、ショアD硬度(JISK6253)における硬度D57を有するライナーを使用した。また、本発明容器蓋1の実施例においては、それぞれ硬度D52、D55及びD57を有する3種類のライナーを使用した。硬度D57を有するライナー(従来及び本発明)を構成する材料の配合比率(重量パーセント)は、ポリプロピレン62.5%、スチレン系エラストマー37.5%、硬度D55を有するライナーは、ポリプロピレン56.0%、スチレン系エラストマー44.0%、硬度D52を有するライナーは、ポリプロピレン50.0%、スチレン系エラストマー50.0%である。そして、上記スチレン系エラストマーは、それぞれにおいて、SEBS(スチレンエチレンブタジエンスチレン共重合体)と流動パラフィンとが6:4の割合で含まれている。
【0028】
リシール時における噛み込み発生数は、60本の充填品をそれぞれ開栓してシール動作を行った結果、噛み込みが発生した本数である。硬度D57を有するライナーを備えた従来の容器蓋及び硬度D55及び硬度D57を有するライナーを備えた本発明の容器蓋においては、噛み込みは発生しなかった。しかしながら、硬度D52を有するライナーを備えた本発明の容器蓋においては、2本発生した。これは、容器蓋の閉栓の仕方を、通常よりも乱暴に行なうなど、多様に行った結果であり、その少ない頻度からみても、実用上は、特に問題とするほどではない。
【0029】
開栓時における液噴き量(g)[グラム]は、それぞれ後に説明する測定方法により、容器ごとに10回づつ行った結果を示すもので、MAXは、そのうちの最大値を示している。従来の容器蓋を備えた容器のMAXが2.86gであるのに対し、硬度D55を有するライナーを含む本発明の容器蓋を備えた容器のMAXは1.65gと、上記従来のMAXの半分以下の量であった。他方、硬度D57を有するライナーを含む本発明の容器蓋を備えた容器のMAXは2.59gであるが、それでも上記従来のMAXよりは少ない量である。また、硬度D52を有するライナーを含む本発明の容器蓋を備えた容器については、リシール時における噛み込み発生数の実験結果を確認したことから、測定はしなかった。
【0030】
上記実験結果から、本発明の容器蓋のライナーのショアD硬度Zは、
D53≦Z≦D56
の範囲であることが好ましいといえる。
また、開栓時における液噴きを抑制するため及び噛み込みを防止するためには、
L1=1.115mm±0.4mm
T3=0.4mm±0.2mm、更に好ましくは、T3=0.4mm±0.15mm、
θ=30°±10°
であることが好ましい。
更にシール性などを考慮すると、
T1=0.575mm±0.15mm、
T2=0.4mm±0.15mm、
であることが好ましい。
【0031】
上記液噴き量(g)[グラム]の測定は、次の方法によって行ったものである。すなわち、予め重量測定した未開栓の各容器において、縦方向に2回/秒の振動を5回繰り返して行った後、該容器を正立させ、3秒経過後に正立状態から30°傾け、容器蓋を120°まで一気に開栓する。噴出したり垂れたりして容器の口頸部及び胴部などに付着した液体を拭き取った状態で重量測定する。容器蓋を容器から離脱して、容器蓋の側面及び容器に付着した液体を拭き取ってから重量測定する。上記測定結果から、容器蓋の外に噴出した液体の量を算出する。
【符号の説明】
【0032】
1:容器蓋
2:金属薄板製シェル
4:合成樹脂製ライナー
6:円形天面壁
8:円筒形スカート壁
26:スリット
30:環状シール部
32:環状内側垂下部
34:環状厚肉部
36:環状薄肉部
37:境界部
38:環状外側垂下片
39:傾斜面
40:容器
42:口頸部
50:カール部
52:上側カール部
54:鉛直部(外周面部)
56:下側カール部
S:環状の密封空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板製シェルと合成樹脂製ライナーとから構成されかつ上端にカール部が形成された口頸部を有する金属製容器に装着される容器蓋であって、前記シェルは円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを有し、該スカート壁の上部には周方向に間隔をおいて複数個の通気孔が形成されており、前記ライナーは前記シェルの前記天面壁の内面周縁部に沿って延在する環状シール部を有し、前記カール部は上端に形成されている上側カール部と、該上側カール部から鉛直方向下方に延びる外周面部と、該外周面部の下端から内方に延びている下側カール部とからなり、容器蓋を容器の前記口頸部に被嵌し前記シェルの肩領域を下方乃至半径方向内方に変形させて前記ライナーの前記環状シール部を前記口頸部の前記カール部の上面乃至外周面に密接させることによって前記口頸部に装着される容器蓋において、
前記環状シール部は、前記口頸部の内周側に位置する環状内側垂下部と、前記口頸部の外周側に位置する環状厚肉部と、該環状厚肉部と前記環状内側垂下部との間に位置する環状薄肉部と、該環状薄肉部から前記環状厚肉部にわたって厚みが増加する境界部と、前記環状厚肉部の外周縁部から一定の半径方向厚みをもって直線状に垂下する環状外側垂下片とを有し、該環状外側垂下片の内周面の下端と外周面の下端との間の面は、内周面側から外周面側に向かって下方に延びる傾斜面から形成され、
容器蓋を前記口頸部に所要とおりに装着した状態において、前記環状薄肉部及び前記境界部の各々の下面が前記上側カール部の上面乃至前記外周面部の上端部外周面に当接しかつ、前記環状外側垂下片の下端部内周面が前記下側カール部の外周面に当接するとともに、前記外周面部の外周面と、前記環状厚肉部の下面及び前記環状外側垂下片の内周面との間に環状の密封空間部が形成される、
ことを特徴とする容器蓋。
【請求項2】
容器蓋を前記口頸部から離脱した後に、再び容器蓋を前記口頸部に装着するために前記口頸部に対し螺条係合して閉方向に回転させると、前記ライナーは、最初に前記環状外側垂下片の前記傾斜面が前記カール部の前記上側カール部の下端部外周面に当接しかつ前記環状外側垂下片の外周面の下端が前記外周面部の直上方乃至外方に位置付けられる、請求項1記載の容器蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−82463(P2013−82463A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222111(P2011−222111)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】