説明

容器詰飲料

【課題】緑茶としての味わい、風味を有しつつ、薄肉化容器(ボトル)に詰めたような場合でも、すぐには変色の起こらない非重合体カテキン類含有緑茶フレーバー飲料を提供すること。
【解決手段】容器と、該容器に充填された飲料とを含む容器詰飲料であって、前記飲料が、非重合体カテキン類を10〜600ppm含有し、前記非重合体カテキン類の65質量%以上がガレート体である、容器詰飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非重合体カテキン類を含む容器詰飲料に関し、特に、緑茶フレーバーの容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への負荷の低減やコスト削減のために、容器詰飲料の容器(ペットボトル等)の軽量・薄肉化が検討されており、例えば、樹脂使用量を約30〜40質量%程度削減した薄肉のペットボトルも知られている(特許文献1等)。
【0003】
ところで、容器詰飲料としては、近年、緑茶系飲料が広く親しまれている。このような緑茶系飲料にはカテキン類が多く含まれるが、カテキン類含有飲料は保存中にカテキン類が酸化されて褐色に変色し、商品価値が低下するという問題がある。このような変色は、容器が軽量・薄肉化され、容器の酸素透過量や紫外線透過量が増えると、より起こりやすくなり、長期の消費期限を確保することが難しくなる。
【0004】
変色を防止するために、カテキン類を除去することも考えられるが、渋味、苦味といった緑茶ならではの風味・味わいはカテキン類によるものであり、カテキン類を除去したのでは、緑茶フレーバーは得られない。
そのため、これまでのところ、緑茶飲料を透明度の高い軽量・薄肉化ボトルに詰めた容器詰飲料は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−106064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、緑茶としての味わい、風味を有しつつ、薄肉化容器(ボトル)に詰めたような場合でも、長期間保存可能な(すぐには変色の起こらない)カテキン含有緑茶フレーバー飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、非重合体カテキン類の変色について鋭意研究した結果、緑茶風味の元である非重合体カテキン類(カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキンガレート(ECg)及びエピガロカテキンガレート(EGCg)等)のうち、ガレート体(没食子酸エステル)(カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等)は変色が起こりにくく、薄肉化容器に入れて長期間保存した場合でもクリアな色を保つことができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
容器と、該容器に充填された飲料とを含む容器詰飲料であって、
前記飲料が、非重合体カテキン類を10〜600ppm含有し、前記非重合体カテキン類の65質量%以上がガレート体である、容器詰飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄肉化容器に詰めて長期間保存してもすぐには変色しない、クリアな色合いのカテキン類含有飲料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】飲料に含まれる非重合体カテキン類のガレート体率と変色の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、非重合体カテキン類を10〜600ppm含有する容器詰飲料であり、非重合体カテキン類の65質量%以上がガレート体であるものである。
本発明の飲料は、特定の保健の目的を期待して摂取するいわゆる高濃度茶カテキン飲料ではなく、緑茶フレーバーを楽しむための飲料であるので、非重合体カテキン類の濃度(非重合体カテキン類の合計濃度)は、普通に煎れた緑茶に近い値かそれ以下であることが好ましく、例えば、10〜300ppmであってもよく、10〜100ppmであってもよい。
【0011】
本発明の飲料においては、非重合体カテキン類のうち、65質量%以上がガレート体である。ガレート体率([飲料に含まれる非重合体カテキン類のうちガレート体であるものの質量/飲料に含まれる全非重合体カテキン類の質量]×100)が65質量%を越えると、飲料の経時的な変色が大きくなる。
ガレート体率は、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、最も好ましくは100質量%である。ガレート体率をこのような範囲とすると、非重合体カテキン類の経時酸化が起こりにくくなり、飲料を長期間保存しても変色の程度が小さく済む。
【0012】
本発明の非重合体カテキン類含有飲料の調製方法に限定はなく、例えば、緑茶抽出物から、非ガレート体カテキン類を除去することにより調製してもよい。その際、緑茶抽出物は、例えば、ツバキ科カメリア属の常緑樹の葉(緑茶葉)を常法に従って抽出することにより得ることができる。
また、本発明の非重合体カテキン類含有飲料は、水に(別途、調製/精製された)非重合体カテキン類ガレート体の製剤を添加することにより調製してもよい。この方法の方がガレート体率のコントロールが容易であるので好ましい。
【0013】
本発明の非重合体カテキン類含有飲料が、水に(別途、調製/精製された)カテキン製剤を添加することにより調製される場合、さらに、緑茶アロマを添加すると、緑茶抽出物により近い味わいとなることから好ましい。ここで、緑茶アロマとは、緑茶由来の又は合成により得られた、緑茶の香り(緑茶と同様の香り)を持つ物質(気体、液体又は固体)をいい、例えば、茶葉や緑茶抽出物を水蒸気蒸留するなどして得ることができる。茶葉や緑茶抽出物から緑茶アロマを回収する方法としては、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、特表2011−508034号公報に開示されている方法を好ましく採用することができる。
【0014】
その他、本発明の非重合体カテキン類含有飲料は、アミノ酸やカフェイン等の緑茶含有成分や、酸化防止剤、保存料、pH調整剤、品質安定剤、乳化剤、甘味料、酸味料、色素、香料、渋味抑制剤、その他容器詰飲料に一般に添加される各種添加剤を本発明の効果を妨げない範囲で含んでいてもよい。
また、本発明の非重合体カテキン類含有飲料のpHに限定はなく、例えば、5.0〜7.0とすることができる。
【0015】
本発明の非重合体カテキン類含有飲料は、ガラス容器(瓶)、金属缶容器、紙容器、プラスチック容器(ボトル)、パウチ容器、BIB(バッグインボックス)容器等の各種容器に充填される。充填に先立ち、又は、充填後に、必要に応じて殺菌処理を行ってもよい。殺菌処理に限定はなく、従来採用されている方法を採用することができる。
【0016】
飲料を充填する容器の種類に限定はないが、本発明の非重合体カテキン類含有飲料は、酸化による変色が起こりにくいので、軽量化・薄肉化したプラスチック容器(ボトル)に充填するのに適している。
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等を主成分として含む(「主成分として含む」とは、50質量%以上、好ましくは70質量%以上含むことをいう。)樹脂組成物からなる容器(ボトル)が好ましい。このとき、樹脂組成物には、植物由来成分を1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%程度添加してもよい。
容器の樹脂使用量としては、例えば、1.5g〜5g/100ml程度とすることができる。
【0017】
容器の厚さに限定はないが、一般的な非重合体カテキン類含有飲料であれば、最小厚みが300μm未満の薄肉化プラスチック容器に入れるとすぐに褐色に変色してしまうところ、本発明のカテキン類含有飲料は、このような容器に入れて保存しても短期間で変色するようなことはない。したがって、本発明のカテキン類含有飲料は、このような容器と有利に組み合せることができる。
本発明のカテキン類含有飲料であれば、充填容器の最小厚みが250μm以下、200μm以下、さらには100μm以下であっても、短期間で変色することはほとんどない。したがって、カテキン類含有飲料の変色という観点からは、容器の最小厚みの下限値に限定はない。ただし、容器の強度の観点からは、容器の最小厚みは10μm以上であることが好ましく、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは75μm以上である。
【0018】
一方、容器の胴体部(容器の首部(キャップ部を含む)、肩部及び底を除く部分)の最大厚みについては、軽量化という観点からは、500μm以下とすることが好ましく、より好ましくは450μm以下、さらに好ましくは400μm以下である。もっとも、容器の強度の観点からは、容器の胴体部の最大厚みは250μm以上であることが好ましく、より好ましくは350μm以上である。
なお、容器の胴体部の表面積のうち、上述のような最大厚みを有する部分、すなわち、厚みが250μm〜500μmである分厚い部分が占める割合は、容器の強度と軽量化の兼ね合いの観点から、5〜50面積%であることが好ましく、より好ましくは10〜40面積%、さらに好ましくは15〜30面積%である。
【0019】
また、容器の酸素透過度にも限定はないが、一般的なカテキン類含有飲料であれば、酸素透過度が0.008cc/day・100ml・atm以上の容器に入れるとすぐに褐色に変色してしまうところ、本発明のカテキン類含有飲料は、このような容器に入れて保存しても短期間で変色するようなことはない。したがって、本発明のカテキン類含有飲料は、このような容器と有利に組み合せることができる。
本発明のカテキン類含有飲料であれば、充填容器の酸素透過度が、0.01cc/day・100ml・atm以上、0.015cc/day・100ml・atm以上、さらには0.02cc/day・100ml・atm以上であっても、短期間で変色することはほとんどない。
【0020】
さらに、容器の紫外線透過率にも限定はないが、一般的なカテキン類含有飲料であれば、紫外線(波長360nm)透過率が70%以上の容器に入れると変色が進みやすいが、本発明のカテキン類含有飲料は、このような容器に入れて保存しても短期間で変色するようなことはない。したがって、本発明の非重合体カテキン類含有飲料は、このような容器と有利に組み合せることができる。
本発明のカテキン類含有飲料であれば、充填容器の紫外線(波長360nm)透過率が75%以上であっても問題はなく、さらには80%以上であっても短期間で変色することはほとんどない。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明の容器詰飲料について以下の実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
[実施例A−C、比較例D、E]
逆浸透膜処理水に、表1に示す組成の非重合体カテキン類組成物を、その合計濃度(非ガレート体換算濃度)が50ppmとなるように添加し、よく攪拌して溶解水(カテキン含有飲料)を得た。
得られた溶解水280mlをポリエチレンテレフタレートボトル(容量:280ml、酸素透過度:0.025cc/day・280ml・atm)に充填したものを、各溶解水につき4本ずつ用意し、80℃で10分間殺菌した後、1週間冷蔵保存するか、或は、58℃において1、2又は3週間保存した。
保存後の各溶解水の色調をLab色差計(日本電色工業株式会社 Spectro Color Meter SQ2000)を用いて測定し、冷蔵保存したものの値との差ΔEを求めた。なお、ΔEが大きいほど変色が大きいことを意味する。
結果を表1及び図1に示す。
【表1】

【0022】
表1及び図1より、ガレート体の割合が65質量%以上、とりわけ98質量%以上であると、変色(ΔE)が小さくなることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、非重合体カテキン類を含有しながらも、長期保存による変色の低減された飲料を提供することができるので、緑茶飲料や、緑茶フレーバー水等の緑茶風味飲料に好ましく利用できる。とりわけ、軽量化・薄肉化された容器や、酸素透過度、紫外線透過度の大きい容器に充填される容器詰飲料に好ましく利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、該容器に充填された飲料とを含む容器詰飲料であって、
前記飲料が、非重合体カテキン類を10〜600ppm含有し、前記非重合体カテキン類の65質量%以上がガレート体である、容器詰飲料。
【請求項2】
前記容器が、最小厚みが300μm未満のプラスチック容器である、請求項1に記載の容器詰飲料。
【請求項3】
前記容器の酸素透過度が0.008cc/day・100ml・atm以上である、請求項1又は2記載の容器詰飲料。
【請求項4】
前記容器の紫外線(波長360nm)透過率が70%以上である、請求項1〜3いずれか1項に記載の容器詰飲料。
【請求項5】
前記飲料が、さらに、緑茶アロマを含む、請求項1〜4いずれか1項に記載の容器詰飲料。

【図1】
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【公開番号】特開2012−217356(P2012−217356A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83874(P2011−83874)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(391026058)ザ コカ・コーラ カンパニー (238)
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
【Fターム(参考)】